特許第6348569号(P6348569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348569物理的に分離されないマルチセルデバイスのための方法および構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348569
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】物理的に分離されないマルチセルデバイスのための方法および構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0475 20140101AFI20180618BHJP
【FI】
   H01L31/04 550
【請求項の数】25
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-503051(P2016-503051)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-512399(P2016-512399A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014029296
(87)【国際公開番号】WO2014144755
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】61/793,328
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515257508
【氏名又は名称】エムティーピーヴィ・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100168594
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ボレゴ,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】グレイフ,ポール
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04933021(US,A)
【文献】 米国特許第03994012(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051085(US,A1)
【文献】 米国特許第05164019(US,A)
【文献】 米国特許第04278473(US,A)
【文献】 米国特許第04933022(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するマルチセルデバイスであって、
基板と、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、前記基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間のマルチセル電流フローを有するオーミック接触と、
前記基板上に設けられた複数のセルであって、前記セルの側面が隣り合うように、互いに離隔された複数のセルと
を備え、
前記複数のセルの各セルはPN接合部を含み、該PN接合部はそのP型材料とN型材料との間に光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を与え、前記P型材料と前記N型材料とは交互配置され、
前記マルチセル電流フローを流すためのバス部を有するバス構造を備え、個々のバス部は、前記複数のセルが物理的に分離されないように、前記複数のセルの1つの第1の側面から前記複数のセルの別の1つの隣り合う側面に向かって前記基板上で延び、
前記各セルのPN接合部は、各PN接合部内の前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直な向きであるように配向され、前記セル間の電気的絶縁をもたらす、マルチセルデバイス。
【請求項2】
前記複数のセルの前記PN接合部が、並列に接続される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記P型材料と前記N型材料とは長方形であり、個々の前記複数のセルの前記PN接合部のP+領域とN+領域との間の間隔が、個々の前記複数のセルの長さよりも小さく、前記拡散場が強くなるように形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
個々の前記複数のセルの前記PN接合部のP+領域とN+領域との間の間隔が、前記セルの幅よりも小さい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記交互配置されたセルの各PN接合セルの長さが、それぞれの前記セルのP+領域とN+領域との間の間隔の10倍よりも大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記基板が、均質のバルク半導体材料、エピタキシャル層を有する基板、および薄いエピタキシャル層を有する半絶縁性材料からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記マルチセルデバイスが、光起電デバイスである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
マルチセルデバイス内のセルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するための方法であって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触を提供するステップと、
相互に接続され、かつ交互配置された構成で、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔された複数のセルを前記基板上に設けるステップと、
前記複数のセルの各セルを、光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を有するPN接合部を含むように形成するステップと、
前記セルのすべての前記電気的絶縁を実質的に作り出すための隣り合うセルの少なくとも1対の間を物理的に分離せずに、前記各セルのPN接合部を、各PN接合セル内の前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直であるように配向するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記PN接合部が、拡散、イオン注入、およびメサエッチングからなる群から選択される工程によって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
再結合損失を最小限に抑えるために、光子吸収が捕集接合部の近くで発生するように前記基板上のエピタキシャル層にPN接合部を形成するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
セルの電気的絶縁を実質的に作り出すためのセルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するマルチセルデバイスであって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触と、
前記基板上に設けられ、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔され、隣り合うセルの側面の間に延びるそれぞれのバスによって相互に接続された複数のセルと
を備え、
前記複数のセルの各セルは、光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を有し、
前記各セルは、他のセルから電気的絶縁を提供するように構成されて配向され、前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直である、マルチセルデバイス。
【請求項12】
前記基板内の電界の方向に対する前記複数のセルの各セルの向きが、前記複数のセルの各セルの電気的絶縁を提供する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数のセルの個々のP+領域とN+領域との間の間隔が、それぞれの前記セルの長さよりも小さい、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数のセルの個々のP+領域とN+領域との間の間隔が、それぞれの前記セルの幅よりも小さい、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数のセルの個々の長さが、前記セルのP+領域とN+領域との間の間隔の10倍よりも大きい、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
マルチセルデバイス内のセルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するための方法であって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触を提供するステップと、
相互に接続され、かつ交互配置された構成で、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔された複数のセルを前記基板上に設けるステップと、
前記複数のセルの各セルを、光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を含むように形成するステップと、
前記拡散場が前記セルの電気的絶縁を提供するように、前記各セルを、各セル内の前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直であるように配向するステップと
を含む方法。
【請求項17】
セルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するマルチセルデバイスであって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触と、
前記基板上に設けられ、相互に接続され、かつ交互配置された構成で、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔された複数のセルと
を備え、
前記複数のセルの各セルはPN接合部を含み、該PN接合部はそのP型材料とN型材料との間に光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を与え、
前記交互配置されたセルの各PN接合セルの長さが、前記セルのP+領域とN+領域との間の間隔の10倍よりも大きいことによって高いブロッキング場および弱い寄生場が提供され、
前記拡散場が前記セルの電気的絶縁を提供するように、前記各セルのPN接合部は、各PN接合部内の前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直であるように配向される、マルチセルデバイス。
【請求項18】
マルチセルデバイス内のセルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するための方法であって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触を提供するステップと、
相互に接続され、かつ交互配置された構成で、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔された複数のセルを前記基板上に設けるステップと、
前記複数のセルの各セルを、光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を有するPN接合部を含むように形成するステップと、
前記セルの長さを前記セルの間隔のよりも少なくとも10倍長くすることによって、高いブロッキング場、弱い寄生場、および基板における寄生抵抗の増大を提供するステップと、
前記拡散場が前記セルの電気的絶縁を提供するように、前記各セルのPN接合部を、各PN接合セル内の前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直であるように配向するステップと
を含む方法。
【請求項19】
セルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するマルチセルデバイスであって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触と、
前記基板上に設けられ、相互に接続され、かつ交互配置された構成で、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔された複数のセルと
を備え、
前記複数のセルの各セルは、光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を有し、
前記交互配置されたセルの各PN接合セルの長さが、前記セルのP+領域とN+領域との間の間隔の10倍よりも大きいことによって高いブロッキング場および弱い寄生場が提供され、
前記拡散場が前記セルの電気的絶縁を提供するように、前記各セルは、前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直であるように配向される、マルチセルデバイス。
【請求項20】
マルチセルデバイス内のセルを物理的に分離せずに前記セルの電気的絶縁を提供するための方法であって、
前記マルチセルデバイス上の2つの外部接続部のためのオーミック接触であって、前記マルチセルデバイスは電位、基板内の電界、および前記2つの外部接続部の間の電流フローを有するオーミック接触を提供するステップと、
相互に接続され、かつ交互配置された構成で、各々が互いに直に隣接するように互いに離隔された複数のセルを前記基板上に設けるステップと、
前記複数のセルの各セルを、光生成またはバイアス生成キャリアの存在によってもたらされる拡散場を含むように形成するステップと、
前記セルの長さを前記セルの間隔のよりも少なくとも10倍長くすることによって、高いブロッキング場、弱い寄生場、および基板における寄生抵抗の増大を提供するステップと、
前記拡散場が前記セルの電気的絶縁を提供するように、前記各セルを、各セル内の前記拡散場がマルチセル電流フローおよび前記2つの外部接続部の間の前記基板内の電界に対して垂直であるように配向するステップと
を含む方法。
【請求項21】
基板と、
前記基板上の第1のバスバーであって、第1の軸に沿って延びる、第1のバスバーと、
前記基板上の第1のセルであって、前記第1のバスバーの第1の側面に直接に接続される、第1のセルと、
前記基板上の第2のセルであって、前記第1のバスバーが前記第1のセルから前記第2のセルへ延びるように、前記第1のバスバーの第2の側面に直接に接続される、第2のセルと、
を備え、
前記第1のセルは、前記第2のセルと直に隣接し、各セルは、長尺状に連続するP型領域を有し、当該P型領域は、前記第1の軸と垂直である第2の軸に沿って、長尺状に連続するN型領域と交互配置され、前記P型領域および前記N型領域は、複数のPN接合部を形成するための小さな分離距離を有し、前記小さな分離距離は前記第2の軸に沿って高い拡散場を生じさせて、前記複数のセルの電気的絶縁を実質的に作り出すための前記セルの間で前記セルを物理的に分離せずに前記第1のセルと前記第2のセルとの電気的絶縁をもたらす、半導体デバイス。
【請求項22】
前記第1のセルに接続される第2のバスバーと、前記第2のセルに接続される第3のバスバーと、を更に備える、請求項21に記載の半導体デバイス。
【請求項23】
前記基板上の第3のセルであって、前記第3のバスバーに接続される第3のセルを更に備え、前記第3のセルは、複数のN型領域と交互配置される複数のP型領域を有し、当該複数のP型領域および当該複数のN型領域は、前記第3のセルの電気的絶縁をもたらすように配向されて構成された複数のPN接合部を形成する、請求項22に記載の半導体デバイス。
【請求項24】
前記第2のバスバーに接続される第1のオーミック接触と、前記第3のバスバーに接続される第2のオーミック接触と、を更に備え、前記第1のオーミック接触と前記第2のオーミック接触との間の電流フローを有する外部接続部を提供する、請求項22に記載の半導体デバイス。
【請求項25】
前記マルチセル電流フローを流すために、隣り合うセルの対向する側面の間に延びるバスを提供するステップを更に含む、請求項8の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]開示される本発明は、共通基板上のマルチセル光起電半導体デバイスに関する。大きな光電流が生成される共通基板上の複数のモノリシックセルの使用は、同じ面積で製作される単一のセルまたは複数の相互接続された単一のセルデバイスよりも望ましい。モノリシックマルチセル構造の使用により、直列ストリングで接続されたセルの数によって線形的に出力電流が低減し、出力電圧が増大する。内部抵抗損失が電流の二乗に比例して低減されるので、高レベルの照明時のマルチセルデバイスにおける総内部電力損失は、大幅に低減される。
【背景技術】
【0002】
[0002]共通基板上のマルチセルデバイスの製作において、個々のセルは、互いに電気的に分離されなければならない。従来技術においては、電気的分離は、セル間の物理的誘電体バリアの使用によって作り出され、それによって製作費用および複雑さが増大する。本明細書に説明する本発明は、物理的分離を使用せずに共通基板上に形成することができる複数のダイオードストリングを提供する。開示される本発明は、マルチセルモノリシックデバイス内のセル間に電気的分離を達成するために物理的分離バリアを使用することを必要としない。本発明は、ダイオードを個別のPおよびN接合部を用いて製作することができる半導体材料を含むデバイスに適用可能である。
【0003】
[0003]従来技術においては、マルチセルデバイスは、セル間の電気的分離を達成するのに物理的なトレンチを利用する。ほとんどの実用的なトレンチ製作工程は、マルチセルデバイス中に複数のエピタキシャル層の組み込みを必要とする。複数のエピタキシャル層には複雑な製作条件があるので、複数のエピタキシャル層の要求は、トレンチ製作費に加えて処理費用をさらに増大させ、その実装には、一般に、高度に熟練した技術者の参加を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明は、個々のPN接合セルを分離する誘電体トレンチを必要とすることなく、マルチセルデバイスを製作することを可能にする。個々のPN接合セルのそれぞれは、P型材料とN型材料との間に吸収領域および拡散場(diffusion field)を含む。吸収領域および拡散場は、光子の吸収および濃度勾配によって生成された正孔および電子の結果として形成される。濃度勾配は、PおよびN領域による光子の捕集によってもたらされる。本発明の明細書および請求の範囲における簡単のため、「拡散場」という用語は、キャリアの動きのすべてをまとめ、含むのに使用される。キャリアの動きは、光子によるそれらの生成、および拡散工程による捕集領域へのそれらの移動の結果として起きる。拡散工程は、少数キャリアの場合のように濃度勾配によって起きるか、または多数キャリアの場合のように電荷中性の要求のために起きる。主なキャリア電流である寄生電流を妨害する、またはブロックする本発明の正確なメカニズムは、拡散場に関連付けられる。これは、実験によって、電極の向きが間違った方向にある場合には寄生電流の妨害またはブロックが起きないことが示されているためである。正孔および電子は、P型およびN型材料上のオーミック接触によって捕集され、PN接合セル両端の出力光電流および順方向バイアス電圧をもたらす。マルチセルデバイスは、光生成キャリアを効率よく捕集するために、end−to−end構成で配置され、かつ交互配置されたPN接合セルのパターンに依拠する。電気的分離は、PN接合セルを横断する光電流フローまたは順方向バイアス電流フローによって作り出された拡散場が、PN接合セル間の総電流フローの方向、吸収領域へのマルチセルオーミック接触間の電圧差によって作り出された電界の方向、およびマルチセルデバイスの2つの外部接続部間の寄生電流フローの方向を横切るように、複数のPN接合セルを構成することによって達成される。それゆえ、マルチセルデバイス出力とマルチセルデバイス入力との間の方向のいかなる寄生電流および電界も、それらの間の横断関係のために、PN接合セルによって生成された光電流に対してごくわずかな影響しかもたない。この横断関係が、セルを電気的に絶縁する。
【0005】
[0005]この実装の利点は、共通基板上にマルチセルデバイスを製造するための工程の複雑さが少ないことである。それは、エピタキシャル技術およびトレンチ分離を使用せずにマルチセルデバイスを製造する、唯一の知られているやり方を提供する。本発明は、接合セルを堆積させた薄いエピタキシャル層を用いて半絶縁性基板上にマルチセルデバイスを製作するのに採用することができ、捕集接合セルの近くでの吸収を可能にする。単純なエピタキシャル層は、物理的なトレンチ工程に必要なエピタキシャル層よりずっと複雑でなく、安価である。
【0006】
[0006]本明細書の本発明の説明において、ダイオードという用語は、N型とP型の両方の材料にオーミック接触を有するデバイスにおいて光子を吸収するための吸収領域がある従来の光起電のケースを表すとともに、デバイス内の吸収領域への複数の交互配置されたN型およびP型のオーミック接触があるケースを表す。後者のケースは、典型的には、交互配置構造と呼ばれ、交互配置構造の第1の端部において複数のN型オーミック接触が第1の共通バスバー構成に接続され、上記交互配置構造の第1の端部の反対側にある上記交互配置構造の第2の端部において複数のP型オーミック接触が第2の共通バスバー構成に接続される。交互配置構造は、キャリアがオーミック接触において捕集されるまでにドリフトしなければならない距離を最小限に抑える設計配置を有するため、一般に、光生成キャリアの捕集効率を増大させるために採用される。
【0007】
[0007]セル間を物理的に分離せずに製作されるマルチセルデバイスでは、マルチセルデバイスのセル間の抵抗接続部として概略的に表される、望ましくない寄生電流がみられる。高濃度にドープされた交互配置領域のおよそ半分は、吸収体と同じ極性であり、それとのオーミック接触を形成するのに使用される。高濃度にドープされた交互配置領域の残りの半分は、吸収体の反対の極性であり、セルダイオードを形成する。共通基板とのオーミック接続部は、物理的な分離がない場合、電位寄生抵抗経路を形成する。本発明によって説明される方法なしでは、この寄生経路は、デバイスの所望の出力に対向する電流を導通させることになる。
【0008】
[0008]開示される本発明は、拡散場が個々の接合セルを電気的に分離する働きをするように配置された、交互配置PN接合セルのパターンを使用する。拡散場は、光生成またはバイアス生成のいずれかであり得る。これによって、個々の接合セル間を物理的に分離しないマルチセルデバイスが生成される。PN接合セルは、拡散、イオン注入、またはメサエッチングによって形成されうる。具体的には、交互配置された接触領域間の拡散場および電流は、デバイス全体にわたってセルからセルまで流れる電流の方向に対して垂直に配向される。本発明によるデバイスによって達成される絶縁は、製作されたデバイスを用いて実験的に実証されている。拡散場が寄生電流の経路に対して垂直に形成されるとき、寄生電流の影響は最小限に抑えられ、電気的絶縁は物理的分離によってもたらされる絶縁とおよそ同等になる。これに対して、望ましくない代替的な構成では、交互配置された接触接合領域間の拡散場および電流が、デバイス全体にわたってセルからセルまで流れる電流の方向、および寄生抵抗経路に対して平行に配向される。この望ましくない構成において、交互配置領域は、デバイスの所望の出力に対向する大電流を導通させ、デバイスはマルチセルデバイスとして機能しない。
【0009】
[0009]開示される本発明は、大幅に薄くした基板にトレンチを形成するといったような極端なことをせずに、バルク非エピタキシャル基板でマルチセル機能を達成するための唯一の知られている手段を提供する。
【0010】
[0010]本発明のこれらのおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面に従ってよりよく理解されることになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】[0011]図1Aは、セル間に物理的な分離を提供するためのトレンチを採用した、従来技術のマルチセルデバイスの断面図である。
図1B】[0012]図1Bは、マルチセルデバイスの等価的な略図である。
図2A】[0013]図2Aは、交互配置パターンの向きが電界を横断するために有効なセルの絶縁を提供しないマルチセルデバイスの配置を示す図である。
図2B】[0014]図2Bは、図2Aに示すストリングのマルチセルデバイスの等価回路を示す図である。
図3A】[0015]図3Aは、交互配置パターンの向きが拡散場を横断することによって有効なセルの絶縁を提供するマルチセルデバイスの配置を示す図である。
図3B】[0016]図3Bは、マルチセルデバイスの等価的な略図である。
図4】[0017]物理的に分離せずに、拡散場を横断することによって有効なセルの絶縁を提供する交互配置パターンの配向構成を有するマルチセルデバイスから取られた実験データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0018]図1Aを参照すると、図1Aは、半絶縁性材料の基板上のエピタキシャル層を示す。図1Aに示すように、共通基板上の従来技術のマルチセルデバイスは、セル間に絶縁体または物理的バリアを形成することによってデバイスが電気的に分離されることを必要とする。基板材料の極めて高い抵抗性は、セルを垂直に絶縁する。図示するように、水平方向の絶縁は、通常は、エピタキシャル層を貫通して基板材料中にトレンチを切り込むことによって達成される。
【0013】
[0019]図1Aは、セル間に物理的分離を提供するためにトレンチを採用した従来技術のマルチセルデバイス100の断面図を示す。図1Bは、マルチセルデバイス100の等価の略図を示す。図1Aは、P型吸収領域110、112、114中に形成されたN+オーミック接触領域124、134、144およびP+オーミック接触領域122、132、142を示す。これらの領域は、元々は、半絶縁性基板開始ウェーハ116上に成長させた単一のエピタキシャル層であった。高抵抗性の材料である、このタイプの基板を使用すると、セルに垂直な絶縁が提供される。図示するように、単一のエピタキシャル層は、トレンチ構造128、138によってセル126、136、146に分割されている。トレンチは、二酸化ケイ素118で裏打ちされて、水平方向の絶縁および上面の絶縁を提供する。金属皮膜層120、130、140、150は、デバイス100の外部および内部の接続を提供する。直列ストリング接続だけが示されている。図1Aに示す構成よりもさらにずっと複雑なトレンチ128、138と、複数のエピタキシャル層との両方を利用する、従来技術のよく知られたマルチセル方法がある。この方法は、横方向捕集層として一般に知られているものを採用する。従来技術の断面と対照的に、本発明は、単一のエピタキシャル層を使用することができるが、トレンチまたは多層エピタキシャル製作に伴う複雑さを有さない。
【0014】
[0020]図2Aを参照すると、図2Aは、交互配置されたパターンが有効な電気的または物理的分離を提供しない、マルチセルデバイス200の接合配置を示す。セル225、235、245、255の拡散場290での電流の経路と、総電流フロー280とは並列であり、概して、寄生電流の経路およびデバイス200を流れる出力電流280と同じ方向にある。セルは、内側では金属皮膜230、240、250によって、外側では金属皮膜220、260によって、端と端が接続される。図2Aのストリングの等価回路を、図2Bに示す。デバイスの出力を低下させる、寄生帰還抵抗260中の電流は対向されない。この構成200は、分離場を提供せず、効果のない構成の一例である。これは非常に効果のない分離方法であり、不十分な結果が与えられる。簡単のために、セルごとに1対の接合部だけを示す。しかし、セルは、バスバーによって接続された複数の交互配置された接合部を含みうる。
【0015】
[0021]図3Aを参照すると、図3Aは、PN交互配置接合部の選択的配置および向きによって、開示される本発明による効果的な電気的絶縁を提供する、マルチセルデバイス300の上面図を示す。図3Aは、直列構成で接続された4つのセル322、332、342、352を示す。セル322、332、342、352は、各々、並列に接続された交互配置接合部を有する。これらのセルまたはサブセルは、バスバー330、340、350によって接続されることで、出力電圧を増大させ、内部損失を最小限に抑える。セルは外部接続部320、360を有する。図3Bは、マルチセルデバイス300の等価的な略図を示す。図3Aに示すように、拡散場電流フロー390は、総電流フロー380、基板内に存在する電界、および寄生経路の方向に対して垂直である。拡散場および拡散電流390のこの垂直な向きは、基板内の電界に対向し、トレンチなどの物理的分離を使用せずに、物理的分離によってもたらされるのにおよそ等しい電気的分離がもたらされる。
【0016】
[0022]図4を参照すると、図4は、開示される本発明による物理的分離のない、共通のバルク基板上に製作された5つのダイオードのストリングの順方向および逆方向の特性を示す。3つの曲線は、3つの別々のダイオードストリングから生成されている。達成された電圧は、ゲルマニウム材料の予測される順方向電圧に一致する。単一のゲルマニウムダイオードは、順方向バイアスでおよそ200mVの電圧を有する。したがって、実験的に示された、ダイオードのストリングからのおよそ1ボルトの累計電圧は、図4に示すように、順方向にバイアスされた、5つの電気的に分離されたダイオードのストリングから予測されるものである。電気的分離が達成されなかった場合、試験されたストリング(共通基板上の)の出力は、内部抵抗を直列にした、単一の順方向にバイアスされたダイオードに類似し、結果として電圧出力がより低くなる。
【0017】
[0023]本明細書に提供される、本発明の図は、主として光起電デバイスの動作に基づく。しかし、本発明は、光起電デバイスに制限されず、任意の目的に使用される順方向にバイアスされたダイオードのストリングに等しく好適に適用される。
【0018】
[0024]開示される本発明による図3のような採用された構成の効果と同様に、図2に採用された構成に効果がないことは、実験によって確認されている。実験例に基づくと、従来技術による物理的分離と、開示される本発明によってもたらされた拡散場によって可能とされる電気的分離とでは、性能に顕著な差はない。概して、本発明による電気的分離は、セルのP+領域とセルのN+領域との分離距離が、接合部の長さに対して相対的に小さい、交互配置されたダイオード構成を設けることによって改善される。セルのP+領域とセルのN+領域との間の小さな分離距離は、高い拡散場が得られるために好ましい。好ましい実施形態においては、分離距離は、公称5〜50マイクロメートルであり、セルの長さは、少なくとも分離距離の10倍である。一般的に言えば、これらの寸法およびこの寸法の比が、高いブロッキング場および弱い寄生場を提供する。
【0019】
[0025]物理的に分離することなくバルク基板上のマルチセルデバイスの出力電流を改善しようとする過程で、いくつかのセルの配置が実験的に試験された。優れた結果が図3Aおよび3Bに示す配置に対して得られ、デバイスの形状によりセル間を物理的に分離することなくマルチセルの機能がもたらされた。本発明の好ましい実施形態において、個々のセルは、同様の接合部がバスバーによって接続される、交互配置された接合部の構造によって形成される。セル間のバスバー接続は、最初から最後までの寸法を有するダイオードストリングを形成するように、PとNとが交互になる。セル内の個々の接合部は、ダイオードストリングの最初から最後までの寸法の方向に対して平行な長手寸法を有する。接合部は、拡散、イオン注入、ショットキーバリア、または他の知られている工程によって形成することができる。本発明の好ましい実施形態は、代替方法では、共通基板上のマルチセルデバイスとして説明され、各セルの接合部およびオーミック接触領域が交互配置された長い指の形になっており、これらの指の長手方向は、共通基板と指のいくつかとのオーミック接触によって形成された寄生経路の長手方向に対して平行であり、これらの指の長手方向は、ダイオードストリングの最初から最後までの経路に対して平行である。
図1A-1B】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4