(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のコイル巻き線によって生成される前記誘導される電界の前記所定の方向及び/又は向きは前記第1のコイル巻き線によって生成される前記誘導される電界の前記所定の方向及び/又は向きと異なる、請求項1に記載のmTMSコイルデバイス。
前記コイル巻き線は該コイル巻き線のうちの少なくとも1つによって生成される前記電界の少なくとも前記所定の方向においてオーバーラッピングする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のmTMSコイルデバイス。
前記第1のコイル巻き線及び前記第2のコイル巻き線は各々、対称軸及び中心点を有し、該第1のコイル巻き線及び該第2のコイル巻き線は、該第1のコイル巻き線及び該第2のコイル巻き線の中心点がオーバーラッピングするとともに該第1のコイル巻き線及び該第2のコイル巻き線の各々の前記対称軸間に或る角度を有するように配置される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のmTMSコイルデバイス。
前記第1のコイル巻き線及び前記第2のコイル巻き線は各々、対称軸及び中心点を有し、前記第1のコイル巻き線及び前記第2のコイル巻き線は該第1のコイル巻き線及び該第2のコイル巻き線の中心点がオーバーラッピングしないように配置される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のmTMSコイルデバイス。
前記第1のコイル巻き線及び前記第2のコイル巻き線のうちの一方のコイル巻き線の前記中心点の位置は他方のコイル巻き線の前記中心点の位置に対して調節可能である、請求項9又は10に記載のmTMSコイルデバイス。
前記コイル巻き線のうちの一方は他方のコイル巻き線の上に積重されるが、該他方のコイル巻き線と電気的に絶縁される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のmTMSコイルデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は多チャネル経頭蓋磁気刺激(mTMS)コイルデバイス10の一例を示している。mTMSコイルデバイス10はケーシング14を有している。ケーシング14は入力/戻りケーブル布線12のための入力ケーブル開口部16を有している。mTMSコイルデバイス10は実際の入力/戻りケーブル布線12を含む場合もあるし、含まない場合もある。加えて、2つ以上の開口部16及び/又は2つ以上の入力/戻りケーブル布線12が存在する場合がある。
【0014】
mTMSコイルデバイス10のケーシング14内には少なくとも2つのコイル巻き線が存在する。標準的な経頭蓋磁気刺激(TMS)コイル巻き線の一例が
図2に示されている。実線及び破線の双方が標準的なコイル巻き線20をともに形成しているワイヤを表している。実線で表されているコイル状に巻かれているワイヤ21は、破線で表されているコイル状に巻かれているワイヤ22の電流とは逆の方向に通過する電流を有する。逆とは、電流フローの、時計回り又は反時計回りの方向のいずれかを意味する。実線及び破線に関する同じ決まりが、他の決まりが記載されていない限り、本出願を通して適用される。
【0015】
標準的なコイル巻き線20は入力線24と戻り線26とを有する。入力線24はコイル巻き線20に電流を導入するためのものである。戻り線26は電流を、例えば、電力貯蔵媒体、例えば、コンデンサー又はコンデンサーバンクへ戻すためのものである。いくつかの実施態様において、戻り線26は、例えば、電力消費媒体、例えば電力抵抗器又は電力トランジスタに電流を戻すのに用いることができる。他の実施態様において、電流のいくらかの部分はコンデンサーバンクに戻ることができる一方、その残りは、散逸素子へと渡される。入力線24は、常にではないが、通常は渡り線(crossing wire)23に接続される。同様に、戻り線26は、通常は渡り線25に接続される。渡り線については以下でより詳細に検討する。
【0016】
図3において一例として示されるように、効率的なコイル巻き線30が、本明細書において更に提示される。概して、効率的なコイル巻き線30は上記で標準的なコイル巻き線20に対して検討したものと同じ構造を有する。このコイル巻き線は、そのワイヤを通って第1の方向に電流が流れる第1のワイヤ31と、そのワイヤを通って第1の方向とは逆の第2の方向に電流が流れる第2のワイヤ32とを有する。コイルを形成するワイヤ31及び32は、通常はそれぞれ渡り線33及び35によって、それぞれ入力線34及び戻り線36に接続される。コイルワイヤ31及び32の設計は標準的なコイル巻き線20を凌ぐ高効率化につながる。加えて、渡り線の設計はコイルワイヤの設計とともに、又はコイルワイヤの設計に替わって高効率化をもたらすことができる。これらの利点は以下でより詳細に検討する。ほとんどの図面が
図3に関して検討したような効率的なコイル巻き線設計を示しているが、本発明は任意のコイル巻き線設計に適用することができる。
【0017】
図4及び
図5は本発明の単純な例を示している。
図4は第1のコイル巻き線40及び第2のコイル巻き線42を示している。第1のコイル巻き線及び第2のコイル巻き線の双方はそれぞれの電力入力線及び電力戻り線とともに示されている。コイル巻き線40によって生成される磁界によって誘導される電界の方向が41として示されている。同様に、コイル巻き線42によって生成される磁界によって誘導される電界の方向が43として示されている。
図4において、第1のコイル巻き線及び第2のコイル巻き線は互いに対して90度に向けられる。同様に、生成される電界の方向は互いに垂直である。
【0018】
コイル巻き線40によって生成される磁界によって誘導される電界の方向41はTMSコイルデバイスにおける通常の電流技術の例であり、この場合、動作中にコイルを通過する電流の方向を自由に選択することができない。換言すれば、通常のシステムにおいて電流波形の振幅は変えられるが、電流波形は1つ1つのパルスが同じ極性を有している。一方、TMSデバイスの回路部がコイル内の電流の方向を反転させる例においては、その結果としての電界の方向も、現在示されている角度から最大180度まで広げることができる。加えて、これらは直接生成される磁界及び誘導される電界を有する最も基本的な8の字コイル巻き線の例のうちのいくつかである。他のコイル巻き線の設計によって、誘導される電界の様々なタイプ及び向きが作成される。それらのうちのいくつかを以下で説明する。
【0019】
本明細書において検討されるコイル巻き線の各々は、そのコイル巻き線を電流が通過したときに磁界及び誘導された電界を生成するためのものである。加えて、多数のコイル形状の例が本明細書において検討されている一方、mTMSコイルデバイスにおいて、使用中に或る程度の変形が発生する場合もあるが、各コイルの形状は本質的に同じである。したがって、各コイル巻き線は電流がそのコイルを通過するときに少なくとも1つの所定の方向及び向きの電界を生成させるためのものである。上記で述べたように、コイル巻き線は一意の所定の方向及び/又は向きを有する2つ以上の電界を生成させるためのものである。例えば、上記で検討したように、電流をコイル内で反転させたとき、もたらされる電界は所定のように元々の電界とは違うものになる。
【0020】
図5は第2のコイル巻き線42と部分的にオーバーラッピングする第1のコイル巻き線40を示している。
図4に示すような互いに対する向きでの2つのコイル巻き線40及び42の組合せ50は、コイル巻き線40及び42内の電流の相対的な振幅に依拠して、51によって示されている電界生成の範囲をもたらす。加えて、コイル巻き線40及び42の各々の戻り線がそれぞれ46a及び46bで示されている。
【0021】
2つのコイル巻き線40及び42を部分的にオーバーラッピングさせることによって、2つの個々の電界を各コイル巻き線から1つずつ発生させることが可能であり、これにより結果として所望の電界を生成する。コイル巻き線の各々を別々に制御することによって、関係するコイル巻き線の各々の所定の方向及び向きの間で結果としての電界の範囲を実質的に連続とすることが可能である。コイル巻き線40及び42の例を用いると、コイル巻き線を通る電流の方向を反転させる可能性がない場合、コイル間を90度にして配置したとき、結果としての範囲51は90度である。
【0022】
コイル巻き線40及び42の異なる組合せ60を有する同様の例が
図6に示されている。組合せ60において、コイル巻き線42はコイル巻き線40から120度回転されている結果、61にて表されているように、結果としての電界の範囲は120度になっている。
【0023】
図5及び
図6の双方に示されているように、コイル巻き線の各々は本質的に同じ形状、例えば効率的な8の字形状を有しているが、異なる向きになっている。しかしながら、少なくとも
図7に関して以下で検討するように、異なる形状を有するコイル巻き線を用いることも可能である。
【0024】
図5及び
図6の例に示すように、コイルの各々は対称軸と中心点とを有している。通常、コイル巻き線は、例えば
図7a〜
図7fに示すように或る対称軸を有している。加えて、すべてのコイル巻き線は或る中心点を有しており、その中心点は質量中心、又は幾何学的中心である場合がある。
【0025】
本発明のいくつかの例によれば、コイル巻き線の少なくとも2つ、又はコイル巻き線の各々は対称軸と中心点とを有している。オーバーラッピングするコイルの組合せは数多くの方式でオーバーラッピングさせることができる。1つの方式は、コイル巻き線の中心点がオーバーラッピングし、それぞれの対称軸間に角度があることである。別の方式は、例えばコイル巻き線の中心点がオーバーラッピングしないように、それらの中心点を互いからオフセットさせることである。
【0026】
図5を例にとると、電流がコイル40のみを通って流れたとき、結果としての電界は方向41となる。同様に、電流がコイル42のみを通って流れたとき、結果としての電界は方向43となる。一方、電流が双方のコイルを通って同時に流れた場合、結果としての電界は双方の個々の電界の和となり、方向41及び43の間の任意のものとすることができる。各コイル巻き線内の電流が動作中に反転可能である例においては、結果としての電界は360度の範囲内の任意の角度で生成することが可能である。
【0027】
コイル巻き線は同じ形状及び同じ特徴とすることが可能である一方で、それらのコイル巻き線は
図7a〜
図7gに示すように異なるものとすることもできる。必ずしも必要ではないが、コイル巻き線は本明細書において1次コイル巻き線及び2次コイル巻き線として検討される。しかしながら、本明細書におけるコイル巻き線の記載内容に関係なく、コイル巻き線の任意のものは、動作中、他のコイル巻き線と等しいか、又は他のコイル巻き線に対して従位的とすることが可能である。
【0028】
例として、第1のコイル巻き線71は1次コイル巻き線であり、第1の1次誘導電界を生成するためのものである。8の字コイルはTMSコイルデバイスにおいて標準的なコイルであるので、本明細書において、第1のコイル巻き線として用いられる。しかしながら、任意の他のコイル巻き線を第1のコイル巻き線とみなすことも可能である。このとき、1つ又は複数の追加の2次コイル巻き線を第1のコイル巻き線とオーバーラッピングさせ、2次電界を発生させることが可能である。
【0029】
したがって、2次コイル巻き線によって生成される電界の所定の方向及び/又は向きは、通常、第1のコイル巻き線の方向及び/又は向きとは異なる。さらに、2次コイル巻き線は第1の1次電界の或る特性を変えるための電界を生成させるためのものとみなすことが可能である。例えば、1つ又は複数の2次コイル巻き線は第1のコイル巻き線の電界の方向、位置及び/又は向きを、一緒に又は別個に変えるためのものとすることが可能である。同様に、コイルは物理的にオーバーラッピングするが、通常、それらのコイルはコイル巻き線のうちの少なくとも1つによって生成される電界の少なくとも所定の方向でオーバーラッピングする。
【0030】
一方、以下でより詳細に検討するように、図には示さないが、本発明の例は互いに完全にオーバーラッピングする1つ又は複数の同一のコイル巻き線を備えることが可能である。このことの可能な使用法の1つは、様々な利点のために、異なる時点に及び/又は同時にパルスを別個に制御することである。
【0031】
オーバーラッピングする様々なタイプのコイル、及びそれらのコイルがオーバーラッピングする方式によって、その組合せが、結果としての電界に対して有する制御のタイプが決まる。
【0032】
図7a〜
図7gにおいて、電流は破線のワイヤ内で反時計回りに流れ、黒の実線のワイヤ内で時計回りに流れている。これらのワイヤは曲面に対して算定されたものであり、正距方位図法を用いて平面に投影されている。正確なコイル巻き線の形状は選択された曲率、ターゲットの深さ、最大のコイルサイズ及び他の様々な変数に依存し得る。この依存性は様々な組において、1次微分に関して僅かに変化している形状に見られる。ここで、この変化はコイルを生成するのに用いられた数値アルゴリズムに起因する。コイルにおける巻き数は所望の特性を有するコイルを製造するために変化させることができることに留意されたい。
【0033】
図4〜
図6はここで0次微分と呼ばれるコイル巻き線40及び42を示している。検討したように、これらのコイル巻き線を組み合せることによって電界の回転を可能にする。
【0034】
図7aは0次微分コイル巻き線71及び1次微分コイル巻き線72を示している。これらのコイル巻き線を組み合せることによって結果としての電界のターゲット位置の垂直方向の調節を可能にする。
【0035】
図7bは0次微分コイル巻き線71及び1次微分コイル巻き線73を示している。これらのコイル巻き線を組み合せることによって結果としての電界のターゲット位置の水平方向の調節を可能にする。
【0036】
図7cは、1次微分コイル巻き線74を挟み込んでいる、異なる向きに置かれた2つの0次微分コイル巻き線71及び75を示している。これらの3つのコイル巻き線を組み合せることによって結果としての電界のターゲット位置及び向きの補正を可能にする。
【0037】
図7dは、異なる向きに置かれた2つの0次微分コイル巻き線71及び75を、1次微分コイル巻き線73とともに示している。これらの3つのコイル巻き線を組み合せることによって結果としての電界の向きの補正とともにターゲット位置の調節を可能にする。
【0038】
図7eは、1次微分コイル巻き線72を挟み込んでいる、異なる向きに置かれた2つの0次微分コイル巻き線71及び75を、1次微分コイル巻き線73とともに示している。これらの4つのコイル巻き線を組み合せることによって結果としての電界の向きの補正とともにターゲット位置の水平方向及び垂直方向の調節を可能にする。
【0039】
図7fは、異なる向きに置かれた2つの0次微分コイル巻き線75及び71を、異なる向きに置かれた3つの1次微分コイル巻き線76及び2つの1次微分コイル巻き線73とともに示している。これらの5つのコイル巻き線を組み合わせることによって、電流回路部が電流波形の極性を反転させることが可能か否かに依拠して、結果としての電界の任意の向きに沿って可能な向きの範囲内でのターゲット位置の水平方向及び垂直方向の調節が可能になる。
【0040】
図7gは12コイルの直交層カバレッジ(orthogonal layer coverage)コイルアレイの例を示している。このコイルアレイは大きな薄いオーバーラッピングコイルを有することが可能である。図面から読み取れるように、個々のコイルはすべてが対称軸を有しているわけではないが、すべてが中心を有している。
【0041】
これまでの例のすべてにおいて、コイル巻き線をオーバーラッピングする理想的な方法は、それらのコイル巻き線が実質的にオーバーラッピングするように、コイル巻き線の中心点を整列することである。
図8はmTMSコイルデバイス80のケーシング81a内に収容されている組み合わされたコイル82の例である。組み合わされたコイル82は
図5に示されたコイルと同様に、各々のコイルが入力線84及び85と、戻り線87及び86とを有している。本例において、2つのケーブルの戻り線87及び86はコネクター88を介して単一の戻り線89に接続されている。本例のmTMSコイルデバイス80の単一の戻り線及び入力線はケーブル布線81b内に収容されている。この単一の戻り線については以下でより詳細に検討する。
【0042】
図8の例において見られるように、第1のコイル巻き線及び第2のコイル巻き線はケーシング81a内において部分的にオーバーラッピングしているだけである。本質的に、これらのコイル巻き線は1つのコイル巻き線が他のコイル巻き線の上に積重されている。通常、これらのコイル巻き線は互いに電気的に絶縁されている。しかし、これらのコイル巻き線の一部分は、例えば、組合せ82の各々のコイル巻き線の戻り線87及び86を接続するコネクター88を介して電気的に接続することができる。
【0043】
ほとんどの場合、2次コイルの位置及び向きは第1のコイル巻き線の位置及び向きに対して固定される。例えば、ナビゲーションTMS刺激において用いられる場合、生成されている電界を正確に知るために、刺激中、コイルデバイス内のすべてのコイル巻き線の位置及び向きを知ることが重要である。一方、動作中、1つ又は複数のコイルの位置及び/又は向きは別のコイル巻き線又はいくつかの巻き線に対して調節することが可能である。こうした例において、各コイルの位置及び向きが既知であるか又は導出可能であることは重要である。動作中に2つ以上のコイル間の物理的な関係を調節できることによって、結果としての電界の全体的な制御に制御の追加の度合いを付加する。こうした例のいくつかを以下で説明する。
【0044】
加えて、複数のコイルの組合せは、通常、複数のコイルの中心点を整列しオーバーラッピングさせることを伴うことが説明されているが、それらの中心点はオフセットさせることもできる。中心点をオーバーラッピングさせるとき、任意の中心点、例えば、対称の中心又は重心を選択することが可能である。
【0045】
3つ以上のコイル巻き線を有する組合せにおいて、すべてのコイル巻き線が他のすべてのコイル巻き線とオーバーラッピングする必要はない。すべてのコイル巻き線がオーバーラッピングすることができる一方、1つのコイルが、互いとオーバーラッピングしない2つの離れたコイルとオーバーラッピングする場合もある。加えて、オーバーラッピングしない更なるコイルを他のコイルのいずれともオーバーラッピングしないmTMSコイルデバイスのケーシング内に収容することが可能である。
【0046】
1次コイル及び2次コイル並びに電界を説明してきたが、通常の実施態様において、1つのコイルが他のコイルより著しく強いわけではない。これらの通常の実施態様において、それらのコイルが単に1次又は2次として呼ばれる場合があるが、それらのコイルのすべてがほぼ等しく重要である。
【0047】
コイルの組合せは、通常、或る地点における、フォーカルTMSコイルによって誘導される2D/3Dベクトル電界の低次数空間微分の組合せ又は近似的組合せである。2Dに関しては、これは例えば、
図7a〜
図7gに示しているコイル巻き線、又は同様のこうした2D設計のコイル巻き線の任意の組合せとすることが可能である。この組合せは線形の組合せ、例えば、コンポーネントのコイル巻き線の和と差との対とすることが可能である。また、この組合せは非線形の組合せ、例えば、1つのコイル巻き線からの1つの半コイル及び別のコイル巻き線からの別の半コイルの組合せとすることも可能である。この組合せは基本的なコイル形状の空間微分として派生したものではないコイル巻き線から構成することも可能である。
【0048】
組合せのコイル巻き線は、1つ又は複数の他のコイル巻き線に対して直交させることができるが、コイルの非直交組合せも可能である。直交性は、結果として相互インダクタンスをゼロにすることを可能にする。加えて、直交性は、結果として、誘導される電流パターンの空間において、コイル巻き線のリード線の場(lead field)が直交することを可能にする。
【0049】
コイル巻き線の効率はコイル巻き線のワイヤの形状及びワイヤ寸法によって影響を受ける可能性がある。TMSに加えて、コイルの組合せに関する他の使用法がある。脳磁図(MEG)等の用途に関しては、細いワイヤ、例えば、0.1mm程度以下の直径を有するワイヤが理想的である可能性がある。TMS等の用途に関しては、ワイヤ直径は大電流に適応するのに十分でなければならない。しかしながら、太いワイヤは、所望のターゲットへの距離が増加することと、巻き数が減少することとに起因して、より大きな電流を必要とする場合がある。したがって、コイル巻き線の直径はコイルデバイスの意図する用途に基づいて選択することが可能である。
【0050】
加えて、コイル巻き線のワイヤの寸法はコイル巻き線の経路に沿って変化させることができる。したがって、いくつかの区間において、例えば、より細い渡り線又は平坦化したワイヤさえも用いることが可能である。こうして、より細いコイル及び/又はより多く積重可能なコイル巻き線を生成することが可能である。
【0051】
コイル巻き線の交差領域は、例えばいくつかの部分において、より細いワイヤを有するようにして、変えることが可能である。さらに、例えば渡り線が90度ねじれる場所では非円形の単線(filament)を用いることが可能である。こうした用法は、円形単線より薄い交差厚を維持しながらより多くのコイル巻き数を可能にする。
【0052】
本明細書において検討されるとき、ワイヤは非ゼロのコンダクタンスを有する任意の材料を意味する。加えて、ワイヤを用いて周囲のものから絶縁された導電経路を形成することが可能である。その材料は高温Tc超電導若しくは低温Tc超電導材料又は通常の導電性材料とすることが可能である。
【0053】
本明細書において説明されるmTMSコイルデバイスは対象物の脳の上又は脳内のターゲットのロケーションを刺激するために用いることが可能である。刺激のエレクトロニクスはIGBTトランジスタ、MOSFET、サイリスタ又は他の適切なコンポーネントを備えることができる。刺激電流波形の極性は固定とすることもできるし、制御可能とすることもできる。制御可能とする場合、例えばリレー又はトランジスタを用いて制御可能にすることができる。極性切替えを可能にする回路設計の一例が2010年6月3日に出願された米国仮特許出願第61/830,181号の
図9内に記載されており、その特許出願の全体が本明細書の一部をなす。
【0054】
刺激のエレクトロニクスにおけるチャネル数はmTMSデバイス内のコイルの数以下とすることできる。各コイルはそれ自身のエレクトロニクス及びコンデンサー(複数の場合もある)を有することができる。エレクトロニクスチャネルがコイルよりも少ない場合、そのエレクトロニクスは所与の時間に所与の刺激を送達する必要があるコイルに接続することができる。所望のコイルへの接続は、手動で、又は例えばスイッチを用いて電子的に変更することが可能である。
【0055】
エレクトロニクスはmTMSコイルデバイス内のコイルの組合せへの電流の全体的な流れを制御するコントローラーを備えることができる。1つのコントローラーは、コイル巻き線の電力入力線の各々の電流を別個に制御するために存在することが可能である。加えて、少なくとも1つのコントローラーが少なくとも2つのコイル巻き線の電力入力線内の電流を制御することが可能である。
【0056】
加えて、本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書において開示されている実施形態及び例のうちの任意のものによるmTMSコイルを制御する方法が存在する。
【0057】
第1のコイル巻き線の電力線を通る第1の電流を制御することによってmTMSコイルを制御して、第1の電界を生成することが可能である。上記で検討したように、検討の目的で、第1の電界は1次電界とみなすことが可能である。
【0058】
加えて、少なくとも1つの第2の電力線を通る少なくとも1つの第2の電流を別々に制御することによって1次電界の位置、方向及び/又は向きを変更して、少なくとも1つの2次電界を誘導する少なくとも1つの2次磁界を生成することが可能である。
【0059】
また、1次電界の位置、方向及び/又は向きは、第2のコイル巻き線の位置及び/又は向きを第1のコイル巻き線に対して調節することによっても変更することが可能である。
【0060】
本方法は、例えば
図7a〜
図7gに示される複数のコイル巻き線の制御を含むことが可能である。
【0061】
さらに、本方法は異なるターゲット点及び/又は向きを有する少なくとも2つの磁気パルスを生成するステップを含むことが可能である。この生成は同じロケーション及び/又は向きにあるmTMSコイルデバイスを用いて行うことが可能である。例えば、
図8のmTMSコイルデバイス80を用いて、双方の8の字コイル内の電流を制御することによって、ケーシングの同じ位置及び向きから複数のパルスを発射することが可能であるが、
図5に関して考察したように、結果としての磁界からの誘導される電界の方向は異なっている。
【0062】
加えて、短時間、例えば200マイクロ秒〜2秒の時間内に複数の、すなわち2つ以上の磁気パルスを得ることが可能である。少なくとも2つのコイル巻き線が同時に磁界を生成するように、コイル巻き線を制御することが可能である。加えて、少なくとも2つのコイル巻き線が同じ周波数の磁界を生成するように、コイル巻き線を制御することが可能である。こうして、少なくとも2つのコイル巻き線は各パルスにおいて互いの誘導する電界に影響を与えることができる。様々なパルスに対して様々に制御することによって、誘導される電界は、mTMSコイルデバイスを物理的に移動させる必要なく、迅速に変化させることが可能である。
【0063】
加えて、少なくとも2つのコイル巻き線が異なる周波数の磁界を生成するように、少なくとも2つのコイル巻き線を制御することが可能である。例えば、1つのコイル巻き線が10Hzのパルスを生成することが可能である一方で、別のコイル巻き線が5Hzのパルスを生成することが可能である。したがって、いくつかのパルスはオーバーラッピングすることができる一方で、他のパルスはオーバーラッピングしない。さらに、少なくとも2つのコイル巻き線のパルスが全くオーバーラッピングしないように、又は稀にしかオーバーラッピングしないように、それらのコイル巻き線を制御することが可能である。こうした例を用いて、2つの完全にオーバーラッピングする又は部分的にオーバーラッピングするコイルを交互に配置すること(staggering)によってパルスレートを増加させることが可能である。
【0064】
更なる変形形態が可能である。例えば、組合せの或るコイル(複数の場合もある)を2相方式で制御することができる一方、その組合せにおける他のコイル(複数の場合もある)は単層方式で制御される。或るコイル(複数の場合もある)は、より速いパルスを生成する別のコイル(複数の場合もある)に比べて遅いパルスを生成することができる。本質的に発振し、異なる周波数、異なる共振周波数を有するか、又は別様で異なる2つのパルスを生成することが可能である。
【0065】
本方法は、mTMSコイルデバイスのロケーション及び/又は向きを求めるステップを更に含むことが可能である。さらに、本方法は、誘導される電界及び/又は生成される磁界に関してターゲットの所望のロケーション及び向きを求めるステップを含むことが可能である。これらのステップはナビゲーションTMSの通常のステップとすることが可能である。次に、複数のコイル巻き線からの磁界の生成を別個に制御することによって、ターゲットサイトにおいて所望の向きを有する所望の磁界及び/又は誘導される電界を生成することが可能である。
【0066】
或る方法は、生成される磁界/電界に関して新たなターゲットロケーション及び/又は向きを選択するステップと、mTMSコイルデバイスの第1のコイル巻き線及び第2のコイル巻き線からの磁界の生成を別個に制御して、mTMSコイルデバイスのロケーション又は向きを調節することなく新たなターゲットのための所望の磁界/電界を生成するステップとを含むことも可能である。
【0067】
本発明によるmTMSコイルデバイスを用いない場合、TMSデバイスを用いる人は、TMSコイルデバイスの物理的な位置及び物理的な向きの双方を位置合わせして所望の刺激を生成する必要がある。刺激中にユーザーが動いた場合、TMSコイルデバイスを1つの位置に安定させるのに支障が生じた場合、又はそのデバイスを用いる上でそれ以外の困難が生じた場合、オペレーター要員によって正確な所望の刺激を提供することはかなり難しいこととなる可能性がある。本発明のデバイス及び方法を用いることにより、コイル巻き線の組合せに応じて、ユーザーはmTMSコイルデバイスを所望のロケーション近くに概ね位置合わせする必要があるだけであり、システムは様々なコイル巻き線の制御を通じて不適切な任意の位置合わせを補償することが可能である。
【0068】
また、本明細書に記載の方法は、一時的又は非一時的なコンピューター可読媒体上に記憶されたコンピュータープログラム製品によって実行することも可能である。
【0069】
また、更なる実施形態はプロセッサ及び/又はコンピューターを含むことが可能である。コンピューターの例は、例えば、従来のコンピューター、その1つ又は複数の変形形態、例えば、移動電話、タブレット、又はカスタム化されたデバイスである。刺激ターゲット及びパラメーターを制御するコンピュータープログラム製品及び/又は制御エレクトロニクスを含むこともできる。
【0070】
刺激ターゲットは、例えば、所与の刺激の向き及び幅を有する単一の刺激ロケーション、若しくは異なる刺激の組(例えば、異なる方向、強度、持続時間又は幅を有する刺激)を有する単一の刺激ロケーションとみなすことが可能であるか、又は、刺激ターゲットは、いくつかの空間的に別個の刺激されるロケーションからなるか、若しくはそれらのロケーションを含むことができる。様々なターゲットを同時に、又は所望の遅延を有して刺激することが可能である。いくつかのターゲットを同時に刺激することが可能である一方、いくつかは別々に刺激される。刺激シーケンスはユーザーによって指定することも可能であるし、アルゴリズムに従って算出することもできる。また、反復TMS(repetitive TMS)が本枠組み内にオプションとして含まれる。
【0071】
ターゲットが刺激されるとき、コンピュータープログラム製品は所望の刺激をターゲットに送達するために必要なコイル巻き線電流及び/又はそれらの波形を算出することができる。算出手順は、例えば、球状頭部モデル、境界要素法又は有限要素法に基づくことができる。この算出は本質的に所与の刺激の前にオンラインで行うことも可能であるし、この算出は、ルックアップテーブルを用いることと、あらかじめ算出したパラメーター値(例えば、電流振幅/波形がスケーリングされる必要がある場合、可能な補正項を有する)を用いることとに基づくことも可能であり、後者はオフライン算出とみなすことが可能である。
【0072】
多重コイル巻き線構成によって、コイル(複数の場合もある)を移動させること(又は回転させること)なく刺激ターゲット(又は刺激の向き)を変えることが可能になる。この刺激ターゲット(複数の場合もある)は、ユーザーがコンピュータープログラム製品、コンピュータープログラムパラメーターを用いることによって、又はコイルを所望の位置に移動させることによって指定することができる。これによって、mTMSコイルの刺激することが可能なターゲット範囲が限定されている場合、例えば、mTMSコイルが或る特定の方向のみを刺激することが可能である場合、刺激領域を変えること/刺激の向きを変えることが可能になる。
【0073】
コンピュータープログラム製品は、例えば、対象物の頭部/脳のMRI、CT画像、写真又はCADモデル等の解剖学上の画像を含むことができ、その画像上にユーザーは所望の刺激ターゲットをマーキングすることができる。したがって、コンピュータープログラム製品はユーザーがどのターゲットを刺激したいかを知ることが可能である。また、コンピュータープログラム製品は、刺激されているターゲットを追跡することができる。
【0074】
電子的なターゲット設定(targeting)ではコイルの動き又は頭部の動きを考慮に入れることができる。これは頭部及びコイルのそれぞれの位置を測定することに基づくことができる。したがって、コイル及び頭部が互いに対して動いたとき、コンピュータープログラム製品はそれに従って刺激パラメーターを調節し、それにより、所望の刺激、例えば所与の電界強度がターゲットに送達される。この種の調節は、コイルが対象物の頭部に適合するように調節されるときにも、例えばコイルを変形させること、又はコイルモジュールを位置合わせすることによって実行することが可能である。mTMSコイル又は1組のmTMSコイルのうちの1つがターゲット領域を部分的にしかカバーしていない場合、コンピュータープログラム製品はユーザーがコイルをターゲットに十分近く位置決めするのを支援して、それにより所望の刺激をターゲットに送達することができる。
【0075】
上記で述べたように、刺激シーケンスはユーザー指定のパターンに基づくこともできるし、例えばシステムからのフィードバック、例えば測定された脳波(EEG)データ、又は筋肉からの電気的な信号を用いてアルゴリズム的に設計することもできる。mTMSデバイスはEEG又は刺激システムにフィードバックを与えることが可能な他の生理学的な測定モダリティーとともに用いることができる。このフィードバックは(EEGデータのように)自動的とすることもできるし、オペレーターによって与えることもできる。また、フィードバックは、所与のタスク、例えばオブジェクトに名前を付けることにおいて、例えば、対象物/患者のパフォーマンスに基づくこともできる。このフィードバックデータを用いて、次の刺激(又は後の時間に発生する刺激のうちのいくつか)のためのパラメーターを調節/選択することが可能である。
【0076】
さらに、上記で述べたように、複数のコイル巻き線が単一の戻り線を共有することができる。例えば、mTMSコイルデバイスはケーシング内に少なくとも2つのコイル巻き線を備えることができる。各コイル巻き線が電力入力線を有することが可能である。各コイル巻き線の電力入力線は別々にすることもできるし、2つ以上のコイル巻き線間で共有することもできる。さらに、少なくとも2つのコイル巻き線が単一の、共有電力戻り線を有する。
【0077】
いくつかのコイル巻き線を有するmTMSコイルデバイスにおいて、いくつかのコイル巻き線は各自の戻り線を有することができ、いくつかのコイル巻き線は共通の戻り線を共有することができる。
図8は、2つのコイルの組合せ82を有し、単一の電力戻りケーブル89を共有しているmTMSコイルデバイスの例を示している。
【0078】
コイル巻き線の各々は別々の電力戻り線、例えば
図8の戻り線87及び86を有することができ、ここでは、多チャネルTMSコイルデバイスは、別々の電力戻り線86及び87を共有電力戻り線89に接続する少なくとも1つのコネクター88を更に備えている。
【0079】
さらに、
図8において見られるように、電力戻り線86及び87は互いの近く及び/又は互いにオーバーラッピングする向きにすることが可能である。電力戻り線の経路はケーシング内に別々に配置することが可能であり、及び/又はそれらの望ましいロケーションはコイル巻き線自体の中に設計することが可能である。
【0080】
本明細書において多チャネル経頭蓋磁気刺激(mTMS)コイルデバイスが説明されており、本デバイスは、ケーシング内に少なくとも2つのコイル巻き線を備え、各コイル巻き線は電力入力線を有し、少なくとも2つのコイル巻き線は単一の、共有電力戻り線を有する。mTMSコイルデバイスはすべてのコイル巻き線に共有電力戻り線を共有させることもできる。また、mTMSコイルデバイスは単一の電力戻り線を有することもできる。mTMSコイルデバイスは、コイル巻き線の各々が別々の電力戻り線を有するようにすることもでき、多チャネルTMSコイルデバイスは別々の電力戻り線を共有電力戻り線に接続する少なくとも1つのコネクターを更に備える。また、mTMSコイルデバイスは、互いの近く又は互いにオーバーラッピングする向きにされた少なくとも2つのコイル巻き線の電力戻り線を有することもできる。mTMSコイルデバイスは少なくとも2つのコイル巻き線を収納するケーシングを更に備えることもできる。また、mTMSコイルデバイスはコイル巻き線毎に1つの電力入力ケーブルと、電力入力ケーブルより少なくとも1つ少ない戻りケーブルとを備えるケーシングを有することもできる。mTMSコイルデバイスは、互いに分離した少なくとも2つのコイル巻き線の電力入力ケーブルを有することもできる。mTMSコイルデバイスは互いに積重させたコイル巻き線を有することもできる。また、mTMSコイルデバイスは実質的に異なる形状を有する少なくとも2つのコイル巻き線を有することもできる。
【0081】
開示される本発明の実施形態は、本明細書において開示される特定の構造、プロセスステップ又は材料に限定されるのではなく、当業者によって認識されるようなその均等物に拡張されることは理解されたい。また、本明細書において利用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ用いられており、制限することは意図していないことも理解されたい。
【0082】
本明細書を通して「一実施形態」又は「1つの実施形態」を参照することは、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して種々の場所において「一実施形態では」又は「1つの実施形態では」という言い回しが現れても、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているとは限らない。
【0083】
本明細書において用いられるとき、複数の物品、構造的要素、組成的要素及び/又は材料は、便宜上、共通のリストにおいて提示される場合がある。しかしながら、これらのリストは、そのリストの各構成要素が個別の、かつ特有の構成要素として個々に識別されるかのように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストの個々の構成要素は、それとは反対に示されない限り、単に共通のグループにおいて提示されることだけに基づいて同じリストの任意の他の構成要素と事実上同等であると解釈されるべきではない。さらに、本発明の種々の実施形態及び例は、本明細書において、その種々の構成要素に代わる代替形態とともに参照される場合がある。そのような実施形態、例及び代替形態は、互いに事実上同等と解釈されるべきではなく、本発明の別々の独立した表現とみなされるべきであることは理解されたい。
【0084】
さらに、説明された特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切なやり方で組み合わせることができる。以下の説明において、本発明の実施形態を完全に理解してもらうために、長さ、幅、形状等の例のような数多くの具体的な詳細が与えられる。しかしながら、それらの具体的な詳細のうちの1つ若しくは複数を用いることなく、又は他の方法、構成要素、材料等を用いて、本発明を実施できることは、当業者は認識されよう。他の事例では、本発明の態様を曖昧にするのを避けるために、既知の構造、材料又は動作は詳細には図示又は説明されない。
【0085】
上記の例は1つ又は複数の特定の応用形態において本発明の原理を例示するが、発明能力を訓練することなく、また、本発明の原理及び概念から逸脱することなく、実施態様の形態、使用法及び細部に関して数多くの変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除いて、制限されることは意図していない。