特許第6348589号(P6348589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348589硬化性ポリウレタンコーティング組成物及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348589
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】硬化性ポリウレタンコーティング組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20180618BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20180618BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20180618BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D163/00
   C09D7/61
   C08G59/14
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-530150(P2016-530150)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公表番号】特表2017-503035(P2017-503035A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】CN2013087893
(87)【国際公開番号】WO2015077927
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー・シェン
(72)【発明者】
【氏名】フー・ツァン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ウー
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−524746(JP,A)
【文献】 特開2008−144171(JP,A)
【文献】 特開平01−203474(JP,A)
【文献】 特公昭48−029530(JP,B1)
【文献】 特開2004−331987(JP,A)
【文献】 特開2003−055558(JP,A)
【文献】 特公昭49−005213(JP,B1)
【文献】 特公昭49−042903(JP,B1)
【文献】 特開2002−080564(JP,A)
【文献】 特公平06−102770(JP,B2)
【文献】 特表平11−512122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0192423(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0139685(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103073689(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102482392(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
C08G 59/14
C09D 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含むイソシアネート反応性成分であって、前記ポリオールが、エポキシ成分とエポキシ反応性成分との反応生成物であって、前記エポキシ反応性成分のエポキシ反応性基対前記エポキシ成分のエポキシ基のモル比が0.95:1〜1.5:1であ前記エポキシ成分が1分子当たり少なくとも2のエポキシ官能価を有する1つ以上のエポキシ樹脂を含む、反応生成物であり、前記エポキシ反応性成分がカシューナッツ殻液を含む、イソシアネート反応性成分と、
1分子当たり少なくとも2のイソシアネート官能価を有するイソシアネート化合物を含む、イソシアネート成分と、を含む、硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
顔料及び/または体質顔料を更に含む、請求項1に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
10%〜70%の顔料体積濃度を有する、請求項2に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
前記カシューナッツ殻液が、カルダノール、カルドール、またはこれらの混合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項5】
前記エポキシ成分が、前記エポキシ成分の全重量を基準として、1分子当たり少なくとも2のエポキシ官能価を有するエポキシ樹脂を90重量%〜100重量%で含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリオールが、前記ポリオールの重量を基準として、1重量%以下のエポキシ基含有量を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
前記ポリオールの重量を基準として、90重量%〜100重量%の前記ポリオールが、分子1個あたり少なくとも2個のヒドロキシル基を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリオールが、分子1個あたり3個以下のヒドロキシル基を有する第1のポリオールと、分子1個あたり少なくとも4個のヒドロキシル基を有する第2のポリオールとの混合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項9】
前記エポキシ成分が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、またはこれらの混合物を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項10】
a)前記イソシアネート反応性成分の全イソシアネート反応性基対b)前記イソシアネート成分の全イソシアネート基のモル比が、0.5:1〜2:1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項11】
前記エポキシ反応性成分の前記エポキシ反応性基対前記エポキシ成分の前記エポキシ基のモル比が、0.95:1〜1.1:1である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項12】
触媒、溶媒、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、またはこれらの混合物を更に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の前記硬化性コーティング組成物を調製する方法であって、
ポリオールを含むイソシアネート反応性成分であって、前記ポリオールが、エポキシ成分とエポキシ反応性成分との反応生成物であって、前記エポキシ反応性成分のエポキシ反応性基対前記エポキシ成分のエポキシ基のモル比が0.95:1〜1.5:1であ前記エポキシ成分が1分子当たり少なくとも2のエポキシ官能価を有する1つ以上のエポキシ樹脂を含む、反応生成物であり、前記エポキシ反応性成分がカシューナッツ殻液を含む、イソシアネート反応性成分と、
1分子当たり少なくとも2のイソシアネート官能価を有するイソシアネート化合物を含む、イソシアネート成分と、を混和することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性コーティング組成物、及び硬化性コーティング組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、船舶及び保護コーティング(M&PC)に広く使用される、最も重要なクラスの熱硬化性ポリマーのうちの1つである。二成分ポリウレタン組成物は、典型的には上塗り剤として使用されるが、その不十分な防食特性及び比較的高い費用に起因して、下塗り剤としての使用には通常は好適ではない。
【0003】
ビスフェノールAエポキシ樹脂及び硬化剤(例えば、ポリアミド及びフェナルカミン)を含むコーティング組成物は、二成分ポリウレタン組成物よりも良好なその防食特性及び低い費用に起因して、下塗り剤としてM&PC用途に広く使用されている。しかしながら、かかるエポキシコーティング組成物は不利益を有する。ポリアミド硬化剤を含むエポキシコーティング組成物は通常、低温、例えば5℃未満では、硬化に時間がかかるか、または硬化に失敗する。この低い硬化温度の制限は、結果として、かかるコーティング組成物が低温条件で塗布される場合に、生産の遅延及び/または亀裂もしくは基板からの分離などのコーティング膜における欠陥をもたらし得る。フェナルカミン硬化剤は、より低い温度でエポキシ樹脂を硬化することができ、ポリアミド硬化剤が提供し得る乾燥速度よりも高速の乾燥速度を提供することができる。残念なことに、フェナルカミン硬化剤とエポキシ樹脂との組み合わせは、通常、結果として得られるコーティング膜の可撓性を犠牲にする。可撓性はコーティング膜が亀裂に耐えるための重要な特性のうちの1つである。加えて、エポキシ系の下塗り剤は、通常、ポリウレタン系の下塗り剤よりも、ポリウレタン系の上塗り剤との親和性が不良である。
【0004】
したがって、下塗り剤用途に好適であり、従来のコーティング組成物と関連する課題のない硬化性コーティング組成物を提供することが望ましい。かかるコーティング組成物は、結果として得られるコーティング膜の可撓性を犠牲にすることなく、低温硬化特性を提供し、高速の乾燥速度を有することが望ましい。また、かかるコーティング組成物は、ビスフェノールAエポキシ樹脂を含むコーティング組成物と比較して同等または更に良好な防食特性を持つコーティング膜を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定のポリオールを含むイソシアネート反応性成分と、少なくとも2のイソシアネート官能価を有するイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分とを組み合わせる、新規の硬化性ポリウレタンコーティング組成物を提供する。特定のポリオールは、エポキシ反応性基対エポキシ基のモル比が0.95:1〜1.5:1である、カシューナッツ殻液とエポキシ成分との反応生成物である。本発明のコーティング組成物の低温硬化特性は、エポキシコーティング組成物を含有するフェナルカミンの低温硬化特性と同等であり、エポキシコーティング組成物を含有するポリアミドの低温硬化特性よりも良好であると同時に、結果として得られるコーティング膜の可撓性及び耐衝撃性を維持する。本発明の硬化性コーティング組成物は、高速の乾燥速度、例えば、以下の実施例の節に記載の試験方法に従って、1.5時間以下の不粘着時間及び3.5時間以下の硬化乾燥時間を有する。本発明のコーティング組成物はまた、ビスフェノールAエポキシ樹脂に基づくコーティング組成物と比べて同等またはより良好な防食特性を持つ、本コーティング組成物から作製されたコーティング膜も提供する。
【0006】
第1の態様では、本発明は、ポリオールを含むイソシアネート反応性成分であって、該ポリオールが、エポキシ反応性成分のエポキシ反応性基対エポキシ成分のエポキシ基のモル比が0.95:1〜1.5:1である、エポキシ成分とエポキシ反応性成分との反応生成物であり、該エポキシ反応性成分がカシューナッツ殻液を含む、イソシアネート反応性成分と、少なくとも2のイソシアネート官能価を有するイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、を含む、硬化性コーティング組成物を提供する。
【0007】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の硬化性コーティング組成物を調製する方法を提供する。本方法は、
ポリオールを含むイソシアネート反応性成分であって、該ポリオールが、エポキシ反応性成分のエポキシ反応性基対エポキシ成分のエポキシ基のモル比が0.95:1〜1.5:1である、エポキシ成分とエポキシ反応性成分との反応生成物であり、該エポキシ反応性成分がカシューナッツ殻液を含む、イソシアネート反応性成分と、少なくとも2のイソシアネート官能価を有するイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と、を混和することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の硬化性コーティング組成物は、イソシアネート成分及びイソシアネート反応性成分を含む。
【0009】
本発明において有用なイソシアネート反応性成分はポリオールを含む。本発明において有用なポリオールであるカシューナッツ殻液で修飾したポリオール(以下CMEポリオールと称する)は、エポキシ成分と、カシューナッツ殻液(CNSL)を含むエポキシ反応性成分とを含む反応混合物の反応生成物である。
【0010】
CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ反応性成分は、エポキシ反応性成分の全重量を基準として、CNSLを、少なくとも50重量パーセント(重量%)、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または更には100重量%で含み得る。CNSLは、カシューナッツ処理の副生成物である。CNSLを、加熱プロセス(例えば、カシューナッツからの抽出時に)、脱炭酸プロセス、及び/または蒸留プロセスに供することで、CNSLが、カルダノールを主成分として含み、カルドール、メチルカルドール、及び/またはアナカルド酸を更に含み得るようにしてもよい。
【0011】
本発明において有用なCNSLはカルダノールを含む。CNSL中のカルダノールの濃度は、CNSLの全重量を基準として、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または更には100重量%であってもよい。
【0012】
本発明において有用なCNSLはカルドールを更に含んでもよい。CNSL中のカルドールの濃度は、CNSLの全重量を基準として、0重量%以上、5重量%以上、及び同時に、50重量%以下、30重量%以下、または更には15重量%以下であってもよい。
【0013】
本発明において有用なCNSLは、Beijing Huada Saigao Co.,Ltd.から市販され得る。いくつかの実施形態では、本発明で使用されるCNSLは脱炭酸CNSLである。脱炭酸CNSLは、少なくとも1つの蒸留プロセスに曝され得る。
【0014】
CNSLに加えて、CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ反応性成分はまた、フェノール及び/またはフェノール誘導体を含んでもよい。好適なフェノール及びフェノール誘導体の例としては、ベンゼンジオール、クレゾール、ノニルフェノール、ブチルフェノール、ドデシルフェノール、ナフトール系化合物、フェニルフェノール系化合物、ヘキサクロロフェン系化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。使用時、これらのフェノール及びフェノール誘導体は、エポキシ反応性成分の全重量を基準として、40重量%以下、20重量%以下、または更には10重量%以下の量で存在し得る。
【0015】
CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ成分は、1つ以上のエポキシ樹脂を含み得る。エポキシ樹脂の骨格は、飽和もしくは不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式構造、またはこれらの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂骨格は芳香族である。エポキシ樹脂は、単量体または重合体であり得る。エポキシ樹脂は、多官能性アルコール、フェノール、脂環式カルボン酸、芳香族アミン、またはアミノフェノールと、エピクロルヒドリンとの反応生成物に基づき得る。エポキシ成分中の好適なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;レゾルシノールジグリシジルエーテル;パラアミノフェノールのトリグリシジルエーテル;エピクロルヒドリンと、o−クレゾールノボラック、炭化水素ノボラック、フェノールノボラック、もしくはこれらの混合物との反応生成物;またはこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の芳香族エポキシ樹脂は、エポキシ成分として使用される。これらの実施形態では、エポキシ成分は、エポキシ成分の全重量を基準として、芳香族エポキシ樹脂を、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または更には100重量%で含み得る。好ましい実施形態では、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが使用される。CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ成分は、少なくとも2のエポキシ官能価(「分子1個あたりのエポキシド部分」)、2〜10のエポキシド官能価、2〜6エポキシ官能価、または2〜4エポキシ官能価を有する、1つ以上のエポキシ樹脂を含み得る。好ましい実施形態では、エポキシ成分は、エポキシ成分の全重量を基準として、少なくとも2のエポキシ官能価を有する1つ以上のエポキシ樹脂を、90重量%〜100重量%で含む。エポキシ成分中のエポキシ樹脂は、80〜1,000グラム毎当量(g/eq)、130〜800g/eq、または170〜600g/eqのエポキシ当量(EEW)を有し得る。本明細書におけるEEWは、以下の実施例の節に記載の試験方法に従って測定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ成分は、以下の式(I)を有する第1のエポキシ樹脂を含み、
【0017】
【化1】
【0018】
式中、aは0〜1である。
【0019】
本発明において有用な第1のエポキシ樹脂は、一般的には液状エポキシ樹脂である。本明細中の用語「液状エポキシ樹脂」は、室温(21〜25℃)でいかなる溶媒をも添加せずに液状であるエポキシ樹脂を指す。第1のエポキシ樹脂は、170g/eq以上、180g/eq以上、または更には190g/eq以上、及び同時に、260g/eq以下、250g/eq以下、220g/eq以下、210g/eq以下、または更には195g/eq以下のEEWを有し得る。好適な市販の第1のエポキシ樹脂としては、例えば、全てThe Dow Chemical Companyより入手可能である、D.E.R.(商標)331(D.E.R.はThe Dow Chemical Companyの商標である)、D.E.R.332、D.E.R.330、及びD.E.R.383エポキシ樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ成分は、以下の式(II)を有する第2のエポキシ樹脂を含み、
【0021】
【化2】
【0022】
式中、bは、2〜5、好ましくは2〜3である。
【0023】
本発明において有用な第2のエポキシ樹脂は、一般的に固形エポキシ樹脂である。本明細書中の用語「固形エポキシ樹脂」は、室温でいかなる溶媒をも添加せずに固形状のエポキシ樹脂を指す。第2のエポキシ樹脂は、350g/eq以上、400g/eq以上、または更には450g/eq以上、及び同時に、750g/eq以下、600g/eq以下、または更には550g/eq以下のEEWを有し得る。好適な市販の第2のエポキシ樹脂としては、例えば、The Dow Chemical Companyより入手可能であるD.E.R.671エポキシ樹脂が挙げられる。
【0024】
好ましい実施形態では、CMEポリオールを調製するために使用されるエポキシ成分は、第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂との混合物を含む。第1のエポキシ樹脂の濃度は、エポキシ成分の全重量を基準として、0重量%〜100重量%、または30重量%〜70重量%であり得る。第2のエポキシ樹脂の濃度は、エポキシ成分の全重量を基準として、0重量%〜100重量%、または30重量%〜70重量%であり得る。
【0025】
CMEポリオールを調製するために使用される反応混合物中では、エポキシ反応性成分のエポキシ反応性基対エポキシ成分のエポキシ基のモル比は、コーティング組成物の性能に直接関係する。エポキシ反応性基対エポキシ基のモル比は、0.95:1以上、0.98:1以上、0.99:1以上、または更には1:1、及び同時に、1.5:1以下、1.2:1以下、1.1:1以下、または更には1.05:1以下であり得る。驚くことに、上記のモル比の反応混合物から作製されたCMEポリオールは、十分な乾燥特性及び防食性能を持つコーティング組成物を提供することができる。
【0026】
本発明において有用なCMEポリオールは、イソシアネート成分中でのイソシアネート基との反応のために、エポキシ由来の骨格、及び少なくとも2個の第2級イソシアネート反応性基、つまり第2級ヒドロキシル(OH)基を有する。エポキシ骨格は、構成要素として働き、CMEポリオールのヒドロキシル官能価及び化学構造を決定し得る。いくつかの実施形態では、CMEポリオールの重量を基準として、CMEポリオールの90重量%〜100重量%が、分子1個あたり少なくとも2個のヒドロキシル基を有する。好ましい実施形態では、CMEポリオールは、分子1個あたり3個以下のヒドロキシル基を有する第1のCMEポリオールと、分子1個あたり少なくとも4個、または更には分子1個あたり5個以上のヒドロキシル基を有する第2のCMEポリオールとの混合物を含み、CMEポリオールの合成は、上記の第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂との混合物を使用して実行される。驚くことに、かかるCMEポリオールは、乾燥特性、可撓性、及び耐衝撃性のバランスのとれた特性をもたらす。
【0027】
CNSLによって提供されるエポキシ反応性基は、エポキシ成分のCMEポリオールへの十分な転換を可能にし得る。CMEポリオール中に残ったエポキシ基残基は、CMEポリオールの重量を基準として、1重量%以下、0.5重量%未満、0.1重量%未満、または更には0.05重量%未満であり得る。
【0028】
本発明において有用なCMEポリオールは、実施例の節に記載の試験方法に従って、少なくとも5,000g/eq、少なくとも10,000g/eq、または更には少なくとも50,000g/eq以上のEEWを有し得る。CMEポリオールは、100〜800g/eq、200〜600g/eq、または300〜500g/eqのヒドロキシル当量(「OHEW」)を有し得る。本明細書におけるOHEWは、以下の実施例の節に記載の試験方法に従って計算される。
【0029】
本発明において有用なCMEポリオールの合成は、CNSLのフェノール基(複数可)とエポキシ成分のエポキシ基との間の開環反応を含む。例えば、CMEポリオールは、開環エポキシ樹脂とのカルダノール連結を含み、これが、開環されたエポキシ樹脂とカルダノールとの間のエーテル結合をもたらす。
【0030】
いくつかの実施形態では、CMEポリオールは、以下の式(III)を有する化合物を含んでもよく、ここで、CMEポリオールの合成は、2個のエポキシド部分及び樹脂骨格を有するエポキシ樹脂とカルダノールとを使用して実行され、
【0031】
【化3】
【0032】
式中、Rは、−C1531、−C1529、−C1527、及び−C1525から選択される、15個の炭素を持ち0〜3個のC=C結合(複数可)を含有する直鎖アルキルである。CMEポリオールは、異なるR基を有するカルダノールを様々に含むカルダノール混合物に由来し得る。式(III)中のエポキシは樹脂骨格である。
【0033】
好ましい実施形態では、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びカルダノールを使用するCMEポリオールの合成は、以下の反応段階を含み、
【0034】
【化4】
【0035】
式中、cは、0〜5、好ましくは0〜3であり、Rは、式(III)において既に定義したものと同じである。
【0036】
様々なエポキシ樹脂及びカルダノールを使用して合成されるCMEポリオール構造の他の例としては、以下のものが挙げられ、
【0037】
【化5】
【0038】
式中、nは、0〜3であり、上記のCMEポリオール中のRは、式(III)において既に定義したものと同じである。
【0039】
CMEポリオールIは、芳香族ポリエポキシド系樹脂及びカルダノールを使用して合成される。CMEポリオールIIは、フェニルジエポキシド樹脂及びカルダノールを使用して合成される。CMEポリオールIIIは、脂肪族エポキシ樹脂及びカルダノールを使用して合成される。
【0040】
イソシアネート反応性成分中のCMEポリオールの合わせた濃度は、イソシアネート反応性成分の全重量を基準として、50重量%以上、60重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、または更には100重量%であってもよい。
【0041】
本発明において有用なCMEポリオールを調製するにあたり、エポキシ反応性成分とエポキシ成分との間の反応は、多くの既知の方法、例えば、CNSL中の活性水素原子がエポキシ成分のエポキシド基と反応する修飾反応に従って、実施することができる。上記の修飾反応は、溶媒の存否にかかわらず、加熱及び混合することで実施し得る。好適な溶媒の例としては、ケトン(メチルイソブチルケトン及び/またはメチルアミルケトンなど)、トルエン、キシレン、エステル、またはこれらの混合物が挙げられる。反応温度は、20℃〜260℃、80℃〜200℃、または100℃〜180℃であり得る。一般的に、修飾反応の完了時間は、5分〜24時間、30分〜8時間、または30分〜4時間の範囲に及んでもよい。好ましくは、触媒が、修飾反応中に添加される。修飾反応に好適な触媒の例としては、塩基性無機試薬、ホスフィン、第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、及び第3級アミンが挙げられる。好ましくは、修飾反応に好適な触媒としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、イミダゾール、またはトリエチルアミンが挙げられる。本発明において有用な触媒は、エポキシ成分の全重量を基準として、0.001重量%〜3重量%、0.01重量%〜1.5重量%、または0.05重量%〜1.5重量%の量で使用され得る。
【0042】
本発明において有用なイソシアネート反応性成分は、コーティング技術分野において既知である1つ以上の追加のポリオールを更に含んでもよい。追加のポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、またはこれらの混合物であり得る。追加のポリオールは、石油系構成要素(例えば、ポリアクリル酸、ポリエステル、及び/またはポリエーテル)、または天然油(例えば、ヒマシ油)由来の構成要素を有してもよい。追加のポリオールは、イソシアネート反応性成分の全重量を基準として、0重量%〜50重量%、25重量%以下、または更には10重量%以下の量で存在し得る。
【0043】
本発明の硬化性コーティング組成物はまた、イソシアネート成分を含む。イソシアネート成分は、少なくとも2のイソシアネート官能価を有する少なくとも1つのイソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物のイソシアネート官能価は、2〜8または2〜6の範囲であり得る。好適なイソシアネート化合物の例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、MDIのより高い官能相同体(「ポリマーMDI」と一般に表される)、2,4−トルエンジイソシアネート及び2,6−トルエンジイソシアネートなどのトルエンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリス(p−イソシアナトフェニル)メタン、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’、5’5’−テトライソシアネート、これらの異性体、これらのポリマー誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、芳香族イソシアネート化合物が使用される。好ましいイソシアネート化合物は、1)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその異性体、それらのポリマー誘導体、もしくはそれらの混合物、2)TDI及びそのポリマー誘導体、または3)1)と2)との混合物である。最も好ましいイソシアネート化合物は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、その異性体、及びポリマーMDIである。好適な市販のイソシアネート化合物としては、例えば、ISONATE(商標)、PAPI(商標)、及びVORANATE(商標)イソシアネート化合物が挙げられ、これらは全てThe Dow Chemical Companyより入手可能である(ISONATE、PAPI、及びVORANATEは、The Dow Chemical Companyの商標である)。
【0044】
a)イソシアネート反応性成分の全イソシアネート反応性基対b)イソシアネート成分の全イソシアネート基のモル比は、0.5:1〜2:1、0.8:1〜1.2:1、または0.9:1〜1.1:1であり得る。
【0045】
本発明の硬化性コーティング組成物は、1つ以上の顔料及び/または体質顔料を含んでもよい。好適な顔料及び体質顔料の例としては、酸化鉄、炭酸カルシウム、沈降シリカ、炭酸マグネシウム、タルク、亜鉛粉末、リン酸亜鉛、二酸化チタン(TiO)、カーボンブラック、メタロイド材料を含む金属材料、長石粉末、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、硬化性コーティング組成物は、リン酸亜鉛、亜鉛粉末、またはこれらの混合物などの防食性顔料を含む。硬化性コーティング組成物における顔料及び/または体質顔料の合わせた濃度は、硬化性コーティング組成物の全重量を基準として、10重量%以上、20重量%以上、または更には30重量%以上、及び同時に、90重量%以下、80重量%以下、または更には70重量%以下であり得る。
【0046】
本発明の硬化性コーティング組成物は、10%以上、15%以上、または更には20%以上、及び同時に、70%以下、55%以下、45%以下、または更には40%以下の顔料体積濃度(PVC)を有し得る。本明細書におけるPVCは、以下の実施例の節に記載の方法に従って計算される。
【0047】
本発明の硬化性コーティング組成物は、1つ以上の触媒を更に含んでもよい。本明細書における触媒は、イソシアネート基をイソシアネート反応性基と反応させてポリウレタンを形成するために一般に使用されるものである。触媒は、イソシアネート成分中か、またはイソシアネート反応性成分中にあってもよい。好適な触媒の例としては、第三級アミン、第二級アミンから形成されたマンニッヒ塩基、窒素含有塩基、アルカリ金属水酸化物、アルカリフェノラート、アルカリ金属アルコラート、ヘキサヒドロチアジン、有機金属化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。存在する場合は、触媒は、硬化性コーティング組成物の全重量を基準として、0.0001重量%〜4重量%、0.001重量%〜0.5重量%、または0.01重量%〜0.1重量%の量で使用され得る。
【0048】
本発明の硬化性コーティング組成物はまた、1つ以上の反応性希釈剤、非反応性希釈剤、またはこれらの混合物を含んでもよい。イソシアネート成分の粘度は、その中に希釈剤を混合することによって減少させることができる。好適な反応性希釈剤の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはこれらの混合物が挙げられる。好適な非反応性希釈剤の例としては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、またはこれらの混合物が挙げられる。存在する場合は、反応性希釈剤及び非反応性希釈剤の合わせた濃度は、硬化性コーティング組成物の全重量を基準として、0重量%〜50重量%、5重量%〜30重量%、または5重量%〜20重量%であり得る。
【0049】
本発明の硬化性コーティング組成物はまた、1つ以上の溶媒を含んでもよい。好適な溶媒の例としては、キシレン、トルエン、エステル、鉱油、ナフサ、またはこれらの混合物が挙げられる。使用される場合は、溶媒は、硬化性コーティング組成物の全重量を基準として、5重量%〜60重量%、または8重量%〜30重量%の量で存在し得る。
【0050】
上記の成分に加えて、本発明の硬化性コーティング組成物は、以下の添加剤のうちのいずれか1つ、または以下の添加剤の組み合わせを更に含む:着色剤、流動化剤、紫外線(UV)安定剤、抗酸化剤、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、分散剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、及び練り展色材。これらの添加剤は、硬化性コーティング組成物の全重量を基準として、0重量%〜5重量%、または1重量%〜3重量%の合わせた量で存在してもよい。
【0051】
本発明の硬化性コーティング組成物は、コーティング技術分野で既知の技法を使用して調製され得る。硬化性コーティング組成物は、イソシアネート反応性成分をイソシアネート成分と混和することによって、反応混合物から調製することができる。他の任意選択の化合物は、その全体が、または部分的に、イソシアネート成分及び/もしくはイソシアネート反応性成分と混合されて、添加され得る。いくつかの実施形態では、任意選択の添加剤成分の一部分は、反応混合物が形成される前にイソシアネート反応性成分に添加され、別の部分は、別個に反応混合物に添加される。
【0052】
本発明の硬化性コーティング組成物は、はけ塗り、浸し塗り、ロール、及び噴霧を含む既存の手法によって塗布することができる。硬化性コーティング組成物は、噴霧によって塗布されることが好ましい。空気ミスト化噴霧、空気噴霧、無気噴霧、高容積低圧噴霧、静電ベル塗布などの静電スプレーなどの、標準的な噴霧技法及びそれを噴霧する機器、ならびに手動または自動方法を使用することができる。
【0053】
エポキシ樹脂及びポリアミド硬化剤を含むコーティング組成物と比較して、本発明の硬化性コーティング組成物は、結果として得られるコーティング膜の可撓性を犠牲にすることなく、より高速の乾燥速度及びより良好な低温硬化特性を有する。本発明の硬化性コーティング組成物はまた、エポキシ樹脂及びフェナルカミン硬化剤を含む組成物と比較した場合に、同等の低温硬化特性を示し、本組成物から作製されるより良好な可撓性及び耐衝撃性を持つコーティング膜を提供する。硬化性コーティング組成物はまた、ビスフェノールAエポキシ樹脂系コーティング組成物のコーティング膜と比較した場合に、同等またはより良好な防食特性を持つコーティング膜を提供する。硬化性コーティング組成物はまた、結果として得られるコーティング膜の鋼への引き剥がし接着強度が、以下の実施例の節に記載の試験方法に従って5メガパスカル(MPa)をはるかに上回ることから明らかであるように、鋼基板への良好な接着性を提供し得る。
【0054】
本発明の硬化性コーティング組成物は、様々な基板に塗布及び接着することができる。基板の例としては、木材、金属、プラスチック、発泡体、石材、弾性基板、ガラス、コンクリート、またはセメンティオス基板が挙げられる。本発明の硬化性コーティング組成物は、船舶及び保護コーティング、自動車コーティング、木材コーティング、コイルコーティング、プラスチックコーティング、粉体コーティング、缶コーティング、及び土木建築コーティングなどの様々なコーティング用途に好適である。硬化性コーティング組成物は特に、重防食下塗り剤に好適である。硬化性コーティング組成物は、単独で、または他のコーティングと組み合わせて使用して、多層コーティングを形成することができる。例えば、多層コーティングは、本発明の硬化性コーティング組成物を、下塗り剤、タイコート、及び任意選択で上塗り剤として含んでもよい。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明の実施形態を例解する。実施例中の全ての部及び割合は、別途記載されない限りは重量を基準とする。実施例では以下の材料を使用する。
【0056】
Beijing Huada Saigao Co.,Ltd.より入手可能なカシューナッツ殻液(「CNSL」)は、CNSLの全重量を基準として、カルダノールを約95重量%で含む。
【0057】
D.E.R.331エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、182〜192g/eqのEEWを有する。
【0058】
D.E.R.383エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、176〜183g/eqのEEWを有する。
【0059】
D.E.R.671エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、470〜550g/eqのEEWを有する。
【0060】
D.E.R.671−X75は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのキシレン溶液であり、470〜550g/eqのEEWを有する。
【0061】
エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(「触媒A1」)を触媒として使用する。
【0062】
PAPI27ポリマーMDIは、2.7のイソシアネート官能価を有する。
【0063】
D.E.R.331、D.E.R.383、D.E.R.671、D.E.R.671−X75、触媒A1、及びPAPI27は全て、The Dow Chemical Companyより入手可能である。
【0064】
Aldrichより入手可能なジブチル錫ジラウレート(DBTL)を触媒として使用する。
【0065】
キシレンは、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltdより入手可能な溶媒である。
【0066】
VERSAMID(商標)115硬膜剤は、ポリアミド硬膜剤であり、Cognis Corporationより入手可能である。
【0067】
CARDOLITE(商標)NC 541LV硬膜材は、フェナルカミン硬膜材であり、Cardolite Corporationより入手可能である。
【0068】
BYK Chemicalより入手可能なBYK(商標)300は、ポリエーテルで修飾されたポリシロキサンであり、レベリング剤として使用する。
【0069】
BYK Chemicalより入手可能なDISPERBYK(商標)−163は、高分子量のセグメント化コポリマーであり、湿潤及び分散添加剤として使用する。
【0070】
BYK Chemicalより入手可能なBYK(商標)066Nは、ポリシロキサンであり、消泡剤として使用する。
【0071】
CRAYVALLEYより入手可能なCRAYVALLAC(商標)Ultraは、ポリアミドワックスであり、チキソトロープ剤として使用する。
【0072】
TiOは、顔料として使用し、DuPontより入手可能である。
【0073】
タルクは、顔料として使用し、Shanghai Wanjiang Chemical Companyより入手可能である。
【0074】
シリカは、顔料として使用し、Dongsheng Chemicalより入手可能である。
【0075】
以下の標準的な分析機器及び方法を実施例にて使用する。
【0076】
エポキシド当量(EEW)分析
標準滴定法を使用して、様々なエポキシ樹脂中のエポキシドパーセントを決定する。使用する滴定法は、Jay,R.R.,「Direct Titration of Epoxy Compounds and Aziridines」,Analytical Chemistry,36,3,667〜668(1964年3月)に記載の方法と類似している。この方法の本適合では、慎重に秤量した試料(試料重量は0.17〜0.25グラムの範囲に及ぶ)をジクロロメタン(15ミリリットル(mL))に溶解させ、続いて酢酸中の臭化テトラエチルアンモニウム溶液(15mL)を添加した。3滴のクリスタルバイオレット指示薬(酢酸中、0.1%重量/体積)で処理した結果として得られた溶液を、メトローム665ドジマット滴定装置(Brinkmann)上で、酢酸中の0.1N過塩素酸で滴定した。酢酸中(15mL)にジクロロメタン(15mL)及び臭化テトラエチルアンモニウム溶液から構成されるブランクを滴定することで、溶媒バックグラウンドに対する補正を提供した。エポキシドパーセント及びEEWは以下の等式を使用して計算する。
エポキシド%=[(滴定試料mL)−(滴定ブランクmL)]×(0.4303)/(滴定された試料のグラム)
EEW=43023/[エポキシド%]
【0077】
CMEポリオールの算出OHEW
CMEポリオールのOHEW値を、以下の等式に従って計算する。
OHEW=(m+m)/(n+n)、
式中、mは、エポキシ成分の質量(グラム)であり、mは、エポキシ反応性成分の質量(グラム)であり、nは、エポキシ成分中のヒドロキシル基のモルであり、nは、エポキシ成分のエポキシ基と理論的に反応するエポキシ反応性成分中のエポキシ反応性基のモルである。
【0078】
顔料体積濃度(「PVC」)
塗料のPVCを以下のように計算する。
【0079】
【数1】
【0080】
粘度
部分A及び部分Bを2分間完全に混合させた後、25℃でBrookfield粘度計(6#回転子、毎分750回転(rpm))を使用してコーティング組成物の初期混合粘度を測定する。
【0081】
引き剥がし接着強度
コーティング組成物を、サンドブラストで仕上げたパネル上に塗膜し、7日間室温で硬化させる。得られたコーティング膜は、80〜100μmの厚さを有する。膜の引き剥がし接着強度をISO 4624法に従って測定する。
【0082】
円錐形マンドレル可撓性試験
円錐形マンドレル可撓性を、ASTM D 522法に従って実施する。評価するコーティング組成物を、Qパネル上に直接噴霧し、7日間室温で硬化させる。亀裂長が小さいほど、コーティング膜の可撓性は良好である。
【0083】
塩水噴霧試験
コーティング組成物の塩水噴霧試験をASTM B117法に従って実施する。
【0084】
顔料含有コーティング組成物については、コーティング組成物を、サンドブラストで仕上げた鋼製パネル上に塗膜し、7日間室温で硬化させる。得られた膜は70〜100μmの厚さを有する。塗膜したパネルを、その後、膜を通過させてスクライブし、水平線をパネルの中心に合わせて裸の鋼を露わにする。スクライブしたパネルを、次に、塩水噴霧箱中に2,000時間定置する。次に、2000時間の塩水噴霧曝露後の切断端部からのクリーページの測定をASTM B117/D 1654−92法に従って実施した。クリーページが短いほど、防食特性は良好である。
【0085】
透明コーティング組成物については、透明コーティング組成物を、Qパネル上に塗膜し、7日間室温で硬化させる。得られた膜は、40〜60μmの厚さを有する。塗膜したパネルを、その後、塩水噴霧箱中に200時間定置する。その後、200時間の塩水噴霧曝露後の塗膜パネル上の錆びつきの程度を、ASTM D610−01試験方法に従って評価する。
【0086】
乾燥特性
BYK乾燥記録装置を使用して、ASTM D5895法に従いコーティング組成物の不粘着時間及び硬化乾燥時間を記録する。評価するコーティング組成物をガラスパネルに塗布し、次に、ガラスパネルを、室温にて乾燥させるためにBYK乾燥タイマーに設置する。
【0087】
低温硬化特性
コーティング組成物の低温硬化特性を、以下のように、溶媒二重擦り(double rub)技法によって評価する。
【0088】
コーティング組成物を、Qパネル上に塗布し、すぐに冷蔵庫に入れ、4日間0℃で硬化させて、40〜50μmの厚さの膜を形成させる。200グラム(g)のハンマーを綿布で包む。綿布を、まずメチルエチルケトン(MEK)で飽和させ、その後、膜全体に擦りつける。一定の前後運動を使用し、ハンマーの重量のみが塗膜パネルに力を適用するようにする。膜を貫通し裸の金属が露出するまで、この運動を続ける。1回の前後運動を1回のMEK二重擦りとみなす。最後に、MEK二重擦りの数を記録する。MEK二重擦りの数が多いほど、低温硬化特性は良好である。
【0089】
耐衝撃性
ASTM 2794法に従って、耐衝撃性を実施する。評価するコーティング組成物を錫プレート上に直接噴霧して、コーティング膜を形成する。コーティング膜は40〜50μmの平均厚さを有する。
【0090】
ポリオールAの合成
264gのD.E.R.331エポキシ樹脂及び418gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=1/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を160℃にゆっくりと上昇させた。約5時間後に反応を停止させた。得られたポリオールAは黄色がかった液体であった。
【0091】
ポリオールBの合成
400gのD.E.R.671エポキシ樹脂及び231gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=1/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を160℃にゆっくりと上昇させた。約5時間後に反応を停止させた。得られたポリオールBは黄色がかった樹脂であった。
【0092】
ポリオールCの合成
180gのD.E.R.383エポキシ樹脂及び300gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=1/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を180℃にゆっくりと上昇させた。約7時間後に反応を停止させた。ポリオールCを得た。
【0093】
ポリオールD−X70の合成
475gのD.E.R.671エポキシ樹脂及び300gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=1/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。D.E.R.671エポキシ樹脂を溶解させた後、500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を180℃にゆっくりと上昇させた。約7時間後に反応を停止させた。次に、270gのキシレンを、結果として得られた反応生成物中に添加して、ポリオールD−X70を得た。
【0094】
ポリオールEの合成
73.7gのポリオールC及び26.3gのポリオールD−X70を混合することで、100gのポリオールEを調製した。
【0095】
ポリオールFの合成
180gのD.E.R.383エポキシ樹脂及び330gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=1.1/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を180℃にゆっくりと上昇させた。約9時間後に反応を停止させて、ポリオールFを得た。
【0096】
ポリオールG−X70の合成
475gのD.E.R.671エポキシ樹脂及び330gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=1.1/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。D.E.R.671エポキシ樹脂を溶解させた後、500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を180℃にゆっくりと上昇させた。約9時間後に反応を停止させた。次に、270gのキシレンを、結果として得られた反応生成物に添加して、ポリオールG−X70を得た。
【0097】
上で得たこれらのポリオールの特性を表1に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1〜6及び比較例A〜B 透明コーティング組成物
実施例1〜6のポリウレタンコーティング組成物及び比較例A〜Bのエポキシコーティング組成物を、表2に記載する配合に基づいて調製した。
【0100】
実施例1〜6のポリウレタンコーティング組成物を以下のように調製した。上で調製した特定のポリオール、PAPI27、及びキシレンを混合し、約10分間撹拌した。その後、DBTL触媒を、結果として得られた混合物中に添加し、2分間更に撹拌して、それぞれ、実施例1〜6のコーティング組成物を得た。
【0101】
比較例A〜Bのエポキシコーティング組成物を以下のように調製した。D.E.R.671−X75溶液、硬膜材(VERSAMID 115またはCARDOLITE NC 541LV)、及びキシレンを合わせて混合し、約10分間撹拌して、比較例A〜Bのコーティング組成物を得た。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例1〜2及び比較例A〜Bのコーティング組成物を、上記の試験方法に従って、低温硬化特性について評価した。表3に示すように、実施例1のコーティング組成物から作製したコーティング膜は、本業界で低温硬化用途に一般に使用されるエポキシコーティング組成物を含有するフェナルカミンから作製した膜(比較例B)のMEK二重擦りの数と同様の数のMEK二重擦りを示した。具体的には、実施例2のコーティング組成物から作製した膜上のMEK二重擦りの数は、70に達した。対照的に、エポキシコーティング組成物を含有するポリアミドから作製したコーティング膜(比較例A)は、0℃での4日間の硬化後に割れた。表3における結果は、本発明のポリウレタンコーティング組成物が、比較例Bのエポキシコーティング組成物と比べて同等またはより良好な低温硬化特性を有し、比較例Aのエポキシコーティング組成物と比べてより良好な低温硬化特性を有することを示す。
【0104】
【表3】
【0105】
実施例1〜2及び比較例A〜Bのコーティング組成物を、透明コーティング組成物について上に記載した塩水噴霧試験に従って、防食特性についても評価した。200時間の塩水噴霧曝露後の塗膜パネル上の錆びつきの程度を表4中で報告した。表4に示すように、実施例1〜2のコーティング組成物から作製したコーティング膜は、200時間の塩水噴霧曝露後の比較例A〜Bのエポキシコーティング組成物から作製された膜のものよりも小さい錆びついた領域(それぞれ、0.03%及び0.1%)及び小さい錆びついたスポット(それぞれ、錆度9−S及び8−G)を示した。表4における結果は、発明のポリウレタンコーティング組成物が、比較例A〜Bのエポキシコーティング組成物よりも良好な防食特性を有することを示す。
【0106】
【表4】
【0107】
実施例1〜2及び比較例A〜Bのコーティング組成物を、それから作製したコーティング膜の耐亀裂性能についても、上記の円錐形可撓性試験に従って評価した。コーティング膜は、約50μmの平均厚さを有した。表5に示すように、実施例1及び2のコーティング組成物から作製した膜は、それぞれ、膜表面上の亀裂を示さなかったか、または1.5センチメートル(cm)未満の亀裂長を示した。対照的に、比較例Bのエポキシコーティング組成物から作製した膜は、14cm超の亀裂長を示した。表5における結果は、実施例1〜2のコーティング組成物が、比較例Aと同等の可撓性、及び比較例Bよりも良好な可撓性を提供することを示す。
【0108】
【表5】
【0109】
実施例1〜2及び比較例A〜Bのコーティング組成物を、それから作製したコーティング膜の耐衝撃性についても、上記の耐衝撃性試験に従って評価した。コーティング膜の耐衝撃特性を表6に報告した。実施例1のコーティング組成物から作製したコーティング膜の順衝撃強度と逆衝撃強度との両方は、比較例A〜Bのコーティング組成物から作製したコーティング膜のものよりもはるかに高かった。実施例2のコーティング組成物から作製した硬化した膜の耐衝撃性は、比較例Aの耐衝撃性と比較し、比較例Bの耐衝撃性よりもはるかに良好であった。
【0110】
【表6】
【0111】
実施例3〜6のコーティング組成物の乾燥特性を上記の方法に従って評価し、表7中で報告した。表7に示すように、実施例3〜6のコーティング組成物の不粘着時間及び硬化乾燥時間は全て短く、M&PC業界にとって許容可能であった。実施例3〜6のコーティング組成物から作製したコーティング膜も、M&PC業界の要件を満たすのに十分に短い亀裂長を示した。
【0112】
【表7】
【0113】
実施例7〜8 塗料
実施例7〜8の塗料を、表8に記載の配合に基づいて、部分Aと部分Bとを混合することによって調製した。部分Aは、高速分散器を使用して、部分A中の全ての成分を混合することによって調製した。PAPI27及びDBTLキシレン溶液を混合して、部分Bを得た。
【0114】
【表8】
【0115】
実施例7〜8の塗料及び結果として得られたコーティング膜の特性を、上記の試験方法に従って評価し、表9中で報告した。
【0116】
実施例7及び8の塗料の初期混合粘度は、それぞれ、76センチポアズ(cps)及び42cpsであり、これは低く、空気噴霧または無気噴霧のために許容可能であった。
【0117】
塗料を、顔料含有コーティング組成物について上に記載した塩水噴霧試験に従って評価した。得られたコーティング膜は、60〜80μmの厚さを有した。表9に示すように、実施例7の膜はわずか1.6cmの亀裂長を示し、実施例8の膜は表面亀裂を示さなかった。これは、本発明の塗料から作製されたコーティング膜が良好な可撓性を有し、業界の要件を満たすことを示す。
【0118】
加えて、これらの膜の引き剥がし接着強度は、20MPaより大きく、業界の要件(通常は5MPa)を満たした。これは、本発明のコーティング組成物が、鋼基板への良好な接着性を提供し得ることを示す。
【0119】
表9に示すように、2,000時間の塩水噴霧曝露後のこれらの膜は、スクライブしていない表面領域上の気泡または錆つき、及び短いクリーページを示さず、これは、実施例7〜8の塗料の良好な防食特性を示す。更に、実施例8の塗料から作製した膜のクリーページ(2mm)は、実施例7のクリーページ(3mm)よりも更に短く、これは、実施例8が、実施例7よりも更に良好な防食特性を有することを示す。
【0120】
【表9】
【0121】
US20100/331454A1に開示されているものと実質的に同一の比較ポリオールHの合成
180gのD.E.R.383エポキシ樹脂及び240gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=0.8/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を160℃にゆっくりと上昇させた。約5時間後に反応を停止させて、比較ポリオールHを得た。比較ポリオールHの特性を表10に示した。
【0122】
US20100/331454A1に開示されているものと実質的に同一の比較ポリオールIの合成
180gのD.E.R.383エポキシ樹脂及び150gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=0.5/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を160℃にゆっくりと上昇させた。約5時間後に反応を停止させて、比較ポリオールIを得た。比較ポリオールIの特性を表10に示した。
【0123】
比較ポリオールJの合成
180gのD.E.R.383エポキシ樹脂及び480gのCNSL(エポキシ樹脂のCNSL/エポキシ基のOH基のモル比=0.6/1)を、機械攪拌器を持つ反応器中に充填し、90℃に加熱した。500ppmの触媒A1を反応器中に添加し、温度を160℃にゆっくりと上昇させた。約7時間後に反応を停止させて、比較ポリオールJを得た。比較ポリオールJの特性を表10に示した。
【0124】
【表10】
【0125】
実施例9及び比較例C〜E 塗料
実施例9及び比較例C〜Eの塗料を、表11に記載の配合に基づいて、部分Aと部分Bとを混合することによって調製した。これらの塗料全ては、35%のPVC値、及び75%の固形分を有した。
【0126】
【表11】
【0127】
上の塗料の乾燥特性を、上記の試験方法に従って評価し、表12中で報告した。部分A及び部分Bの混合から10分後に、塗料をガラスストリップ上に塗布した。表12に示すように、ポリオールCを含む塗料は、比較ポリオールE、比較ポリオールF、または比較ポリオールJをそれぞれ含む比較例C〜Eの塗料よりもはるかに高速である室温での不粘着時間及び硬化乾燥時間を示した。
【0128】
【表12】