特許第6348658号(P6348658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348658天然石の外観を具現する多孔性セラミックタイル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348658
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】天然石の外観を具現する多孔性セラミックタイル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20180618BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   C04B38/00 303Z
   C04B38/00 304Z
   C04B38/08 D
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-512385(P2017-512385)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公表番号】特表2017-527518(P2017-527518A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】KR2015009261
(87)【国際公開番号】WO2016036146
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0116856
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン,ボンギュ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ギルホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン,サンフン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジュンウク
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−002678(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/069802(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0068207(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0204682(US,A1)
【文献】 特開2002−285691(JP,A)
【文献】 特開平03−297604(JP,A)
【文献】 特開2002−249372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00
C04B 33/14
C04B 33/20
B28B 3/00− 5/12
E04F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のセラミックタイル用粒子を含み、
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、それぞれ相異なる装飾効果の具現材料を含み、
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、装飾効果の具現材料、γ-アルミナ、及び母物質を含み、
前記装飾効果の具現材料は、顔料、金属薄片、金属粉末、グリッター粉末及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、少なくとも一つを含み、
前記母物質100重量部に対して前記装飾効果の具現材料を0.1重量部ないし20重量部含み、
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、それぞれ相異なる色の顔料を含み、前記2以上のセラミックタイル粒子に与えられた色が一緒に複合的に色感を具現する、
ことを特徴とする多孔性セラミックタイル。
【請求項2】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、複数の素粒子形態であり、前記素粒子が集合した構造を含む、請求項1に記載の多孔性セラミックタイル。
【請求項3】
前記2以上のセラミックタイル用粒子の平均粒径が50μm以上である、請求項1に記載の多孔性セラミックタイル。
【請求項4】
前記母物質は、粘土、黄土、白土及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、少なくとも一つを含む、請求項1に記載の多孔性セラミックタイル。
【請求項5】
前記γ-アルミナは平均粒径が2nmないし50nmであるメソ孔(mesopore)を含む、請求項1に記載の多孔性セラミックタイル。
【請求項6】
前記メソ孔(mesopore)の気孔の体積が0.001cm3/gないし0.1cm3/gである、請求項5に記載の多孔性セラミックタイル。
【請求項7】
前記多孔性セラミックタイルは、平均粒径が10nmないし10μmである気孔を含む、請求項1に記載の多孔性セラミックタイル。
【請求項8】
相異なる装飾効果の具現材料を含む2種のセラミックタイル用組成物を混合してセラミック成形体を形成する段階;
前記セラミック成形体を乾式プレス成形を行って多孔性セラミックタイルを製造する段階;
前記成形された多孔性セラミックタイルを乾燥する段階;
前記乾燥した多孔性セラミックタイルに釉薬で施釉する段階;及び
前記施釉された多孔性セラミックタイルを焼成する段階を含み、
前記2種のセラミックタイル用組成物は、装飾効果の具現材料、γ-アルミナに相転移するアルミニウムソース、及び母物質をボールミルして混合、粉砕した後、噴霧乾燥(spray drying)工程によって形成され、
前記装飾効果の具現材料は、顔料、金属薄片、金属粉末、グリッター粉末及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、少なくとも一つを含み、
前記母物質100重量部に対して前記装飾効果の具現材料を0.1重量部ないし20重量部含み、
前記焼成により、前記2種のセラミックタイル用組成物を2種のセラミックタイル用粒子に変形させ、
前記2種のセラミックタイル用粒子は、それぞれ相異なる色の顔料を含み、前記2種のセラミックタイル粒子に与えられた色が一緒に複合的に色感を具現する、
ことを特徴とする多孔性セラミックタイルの製造方法。
【請求項9】
前記γ-アルミナに相転移されるアルミニウムソースは、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム二水和物及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、一つ以上である、請求項8に記載の多孔性セラミックタイルの製造方法。
【請求項10】
前記焼成する段階は、800℃ないし1000℃の温度で1分ないし15分間行われる、請求項8に記載の多孔性セラミックタイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天然石の外観を具現する多孔性セラミックタイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイルとは、床と壁などの表面を被覆するために作った平板状の粘土質焼成製品であって、普通は表面積に比べて非常に薄くて、釉薬を塗ったり注いで釉薬処理施したり、または釉薬処理を施していない製造工程の中で赤熱以上の温度で化学反応、改質及び成分の溶融によってセラミック本体の機械的特性の実質的変化を誘発させる加熱処理をすることで、特別な物理的性質及び特徴を有するようにしたものを言う。前記タイルとしては、内装タイル、外装タイル、モザイクタイル、耐酸タイル、床タイル、塩田タイル、クォリータイルなどがある。
【0003】
タイルは様々な性能を持っていて、比較的施工も簡単であり、施工後に亀裂を起こしたり変色することがほとんどなく、特に耐久性が優秀であるため、構造物の表面を被覆して保護するために最も良い材料で、特に衛生的でなければならないキッチン、トイレ、風呂場、洗面場などに多く活用される。
【0004】
一般に、タイルは建築用仕上げ材である外装または内装材として表面を飾ることに使われ、建築物の美的効果を高めるために使われる材料なので、表面の色相や模様が美しくなければならない。したがって、最近は装飾性に優れたタイルの開発が活発化している傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一具現例は、それぞれの組成物が相異なる装飾効果の具現材料を含むことで、天然石の外観を具現する多孔性セラミックタイルを提供する。
【0006】
本発明の他の具現例は、前記多孔性セラミックタイルの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一具現例において、2以上のセラミックタイル用粒子を含み、前記2以上のセラミックタイル用粒子は、それぞれ相異なる装飾効果の具現材料を含む多孔性セラミックタイルを提供する。
【0008】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、それぞれ相異なる色の顔料を含み、前記2以上のセラミックタイル粒子に与えられた色が一緒に複合的に色感を具現することができる。
【0009】
前記装飾効果の具現材料は、顔料、金属薄片、金属粉末、グリッター粉末及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、少なくとも一つを含んでもよい。
【0010】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、複数の素粒子形態で、前記素粒子が集合した構造を含んでもよい。
【0011】
前記2以上のセラミックタイル用粒子の平均粒径が約50μm以上であってもよい。
【0012】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、装飾効果の具現材料、γ-アルミナ、及び母物質を含んでもよい。
【0013】
前記母物質100重量部に対し、装飾効果の具現材料を約0.1重量部ないし約20重量部含んでもよい。
【0014】
前記母物質は、粘土、黄土、白土及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、少なくとも一つを含んでもよい。
【0015】
前記γ-アルミナは、平均粒径が約2nmないし約50nmであるメソ孔(mesopore)を含んでもよい。
【0016】
前記メソ孔(mesopore)の気孔の体積が約0.001cm3/gないし約0.1cm3/gであってもよい。
【0017】
前記多孔性セラミックタイルは、平均粒径が約10nmないし約10μmである気孔を含んでもよい。
【0018】
本発明の他の具現例において、相異なる装飾効果の具現材料を含む2種のセラミックタイル用組成物を混合してセラミック成形体を形成する段階;前記セラミック成形体を乾式プレス成形を行って多孔性セラミックタイルを製造する段階;前記成形された多孔性セラミックタイルを乾燥する段階;前記乾燥した多孔性セラミックタイルに釉薬で施釉する段階;及び前記施釉された多孔性セラミックタイルを焼成する段階を含む、多孔性セラミックタイルの製造方法を提供する。
【0019】
前記2種のセラミックタイル用組成物は、装飾効果の具現材料、γ-アルミナに相転移することができるアルミニウムソース、及び母物質をボールミルして混合、粉砕した後、噴霧乾燥(spray drying)工程によって形成してもよい。
【0020】
前記γ-アルミナに相転移することができるアルミニウムソースは、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム二水和物及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、一つ以上であってもよい。
【0021】
前記焼成段階は、約800℃ないし約1000℃の温度で約1分ないし約15分間行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
前記多孔性セラミックタイルは、天然石の外観を具現することで、より優れた自然美を表すことができ、室内インテリア用として使用可能である。
【0023】
前記多孔性セラミックタイルの製造方法を通じて、花崗岩と類似する外観を有すると同時に、湿度調節機能及び耐久性に優れた多孔性セラミックタイルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】多孔性セラミックタイル及び製造方法を図式化して示したものである。
図2】本発明の一具現例の多孔性セラミックタイルを写真機で撮影して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるもので、これによって本発明は制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0026】
多孔性セラミックタイル
本発明の一具現例において、2以上のセラミックタイル用粒子を含み、前記2以上のセラミックタイル用粒子は、それぞれ相異なる装飾効果の具現材料を含む多孔性セラミックタイルを提供する。
【0027】
最近、室内インテリアに対する大衆の関心が高まっている中で、視覚的に露出頻度の高いタイルなどにも自然な感じの色相及び柄が与えられた製品が注目を浴びている。
【0028】
このような風潮により、室内インテリア用タイルとして、花崗岩、大理石などの天然素材の仕上げ材などが多く使われる。しかし、天然石素材の仕上げ材は最も自然美をよく表すが、加工し難く、価格競争力が確保できないという短所があった。
【0029】
一方、セラミックタイルは前記天然石素材に比べて相対的に大量生産が可能で安価であるが、タイル表面の釉薬によってタイル表面の色相が主に決定されるため、色相及び柄が単純で、相対的に不自然な外観に限っているという問題点があった。
【0030】
特に、タイル表面に釉薬を施す工程の特性上、様々な色を同時に適用することが困難であり、花崗岩、大理石などの天然石素材の、自然ながら複合的な外観を表すことが困難であった。
【0031】
ここで、前記多孔性セラミックタイルは2以上のセラミックタイル用粒子を含み、前記2以上のセラミックタイル用粒子は、相異なる装飾効果の具現材料を含むところ、天然石の外観を具現することができるし、優れた自然美が与えられ、室内インテリア用として使用可能である。
【0032】
例えば、前記2以上のセラミックタイル用粒子は、第1のセラミックタイル用粒子、第2のセラミックタイル用粒子を含んでもよく、各々は後述する第1のセラミックタイル用組成物、第2のセラミックタイル用組成物によって形成されてもよい。
【0033】
前記装飾効果の具現材料は、顔料、金属薄片、金属粉末、グリッター粉末及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、少なくとも一つを含んでもよい。前記2以上のセラミックタイル用組成物が前記多様な装飾効果の具現材料を含むことで複合的な視覚的効果を発揮することができる。
【0034】
例えば、前記第1のセラミックタイル用粒子と第2のセラミックタイル用粒子は、相異なる色の顔料を含み、前記第1のセラミックタイル用粒子と第2のセラミックタイル用粒子に与えられた色が一緒に複合的に色感を具現することができる。
【0035】
顔料は固有色を有する着色剤であり、前記第1、2のセラミックタイル用粒子が含む顔料それぞれの色が複合的色感を具現することで、天然石の外観、具体的に花崗岩、大理石などの天然外観を示すことができる。
【0036】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、複数の素粒子形態で、前記素粒子が集合した構造を含んでもよい。
【0037】
後述する多孔性セラミックの製造方法によれば、相異なる装飾効果の具現材料を含む2以上のセラミックタイル用組成物がそれぞれ形成された後、これを混合することでセラミック成形体を形成し、前記セラミック成形体が焼成段階を経ることで2以上のセラミックタイル用粒子が形成されてもよいので、前記2以上のセラミックタイル用粒子は、素粒子形態であってもよい。
【0038】
具体的に、前記2以上のセラミックタイル用粒子の平均粒径は50μm以上、例えば、50μmないし1,000μmであってもよい。平均粒径は、前記粒子の任意の領域で測定された直径の平均値を意味し、粒子の平均粒径を前記範囲内となるように調節することでタイルの外観を変えることができ、色相が異なる粒子の混合効果が最大化され、天然石の外観効果を向上させることができる。
【0039】
具体的に、前記粒子の平均粒径が約50μm未満であると、視認性が足りないため視覚的効果が微々たるものであり、約1,000μmを超える場合は、視認性が強すぎて他の粒子との境界が明確となり、調和している外観を表現しにくいことがある。
【0040】
前記粒子は、相異なる装飾効果の具現材料を含み、色感または質感の発現が相違する素粒子形態で、前記タイルは前記素粒子が成形、乾燥、施釉、焼成段階などを経ながら集合した構造を含んでもよい。
【0041】
前記集合した構造は2以上の色感または質感が相違する具現材料を含むもので、一つの色相を具現するセラミックタイル用粒子で形成された従来の多孔性セラミックタイルに比べて優秀な自然美を示すことができる。
【0042】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、装飾効果の具現材料、γ-アルミナ、及び母物質を含んでもよい。その他、プリット、融剤、解膠剤、充填剤、増粘剤、抗菌剤、抗カビ剤、数値安定剤などの添加物が機能性物質としてさらに含まれてもよい。具体的に、前記母物質100重量部に対し、装飾効果の具現材料を約0.1重量部ないし約20重量部含んでもよい。後述する製造方法のように、幾つかの段階を経て多孔性セラミックタイルが製造されるので、装飾効果の具現材料の含量を調節し、最終製品で色感または質感を発現させることができる。
【0043】
前記装飾効果の具現材料を約0.1重量部未満含む場合は視認性が低下する恐れがあり、約20重量部を超えて含む場合は原材料費が上昇し、強度低下による破損の恐れがあり、前記範囲の含量を含むことが視覚的効果及び物理的安定性の確保という点で有利である。
【0044】
例えば、前記第1のセラミックタイル用粒子は、母物質100重量部に対して5重量部ないし10重量部の装飾効果の具現材料を、前記第2のセラミックタイル用粒子は、母物質100重量部に対して5重量部ないし10重量部の装飾効果の具現材料を含んでもよい。
【0045】
前記母物質は、前記多孔性セラミックタイルを構成する基礎母材になる物質、つまり、タイル内で骨組みの役割をする物質であって、前記母物質は粘土、白土、黄土及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、一つ以上であってもよい。
【0046】
前記母物質の含量は特に制限されることではなく、多孔性セラミックタイルの適用分野及び用途に応じてその他の添加物が添加されることによりその含量が変わることがあるが、例えば、前記母物質は前記セラミックタイル用全体組成物100重量部に対し、約10重量部ないし約70重量部を含んでもよい。前記範囲の母物質を含むことにより、前記多孔性セラミックタイルに適切な成形性及び焼結性を与えることができ、ひいては機械的安定性を確保することができる。
【0047】
前記2以上のセラミックタイル用粒子は、γ-アルミナを含むことで、調湿機能を具現することができる。前記粒子は、装飾効果の具現材料によって優れた天然石の外観効果と同時に、γ-アルミナによって優れた湿度調節機能及び耐久性を有することができ、これにより室内インテリア用として使われる場合、室内の空気質を管理することができる。
【0048】
前記γ-アルミナは転移状態のアルミナとして調湿機能を与えることができる。一定した熱処理によって他の構造相へと変異することが可能であり、広い比表面積と微細な気孔ホールを持っているため、分離膜、触媒、触媒担体及び吸着剤として優れた特性を示すことができる物質である。
【0049】
前記γ-アルミナは、表面に気孔を含むことで、優れた調湿及び脱臭機能を有することができる。これによって、前記γ-アルミナは湿度が高いときは気孔を通じて湿気を吸収して室内の湿度を低くする機能を果たし、逆に湿度が低いときは気孔内に貯蔵されていた湿気を放出して室内の湿度を高める機能を果たす。
【0050】
また、前記γ-アルミナは常用γ-アルミナを使うこともできるが、費用節減及び効率性の側面において、より具体的には低価のアルミニウムソースを熱処理によって相転移させたγ-アルミナを使うことができる。
【0051】
具体的に、前記2以上のセラミックタイル用粒子は、γ-アルミナを含むことで吸湿性、防湿性を持つようになり、室内湿度を調節する機能を発揮することができ、結露発生の抑制及びカビ等の微生物の発育を抑制することができる。
【0052】
例えば、前記γ-アルミナは、前記母物質100重量部に対して約5重量部ないし約40重量部、具体的に約10重量部ないし約35重量部を含んでもよい。前記γ-アルミナが前記母物質100重量部に対して約5重量部未満の場合、十分な調湿機能を表しにくくなる恐れがあり、約40重量部を超える場合、多孔性セラミックタイルの焼結強度が低下するにつれ、タイルの強度が低下するおそれがある。
【0053】
前記γ-アルミナは平均粒径が2nmないし50nmであるメソ孔(mesopore)を含んでもよい。前記タイルの吸放湿量が50g/m2を超える場合、吸湿、防湿効果に対する実効性が増加するので、前記γ-アルミナが平均粒径約2nmないし約50nmであるメソ孔を含むことで、前記タイルの吸放湿量が50g/m2を超えることができる。前記メソ孔が前記範囲外にある場合、γ-アルミナの吸放湿性が微々たるものであって、湿度調節効果がほとんどない。
【0054】
通常の天然石素材の仕上げ材は、その内部に均一な平均粒径を有するメソ孔を含みづらく、人為的に前記仕上げ材の内部にメソ孔を含ませることも技術的に不可能である。但し、前記多孔性セラミックタイルは、後述する製造方法によってタイルの内部に一定の平均粒径を有するメソ孔を含ませることができる。
【0055】
ここで、前記γ-アルミナがメソ孔を含むことにより、吸放湿量が50g/ m2を超えることができ、優れた湿度調節機能を発揮すると同時に天然石の外観を自然に表現することができる。
【0056】
具体的に、前記「平均粒径」はそれぞれのメソ孔の任意の領域で測定された気孔直径の平均値を意味するので、前記メソ孔の平均粒径が約2nm未満の場合、吸湿は可能であるが防湿ができないため湿度調節に限界があり、約50nmを超える場合、吸放湿性を発揮することができない。
【0057】
前記メソ孔(mesopore)の気孔の体積が0.001cm3/gないし0.1cm3/gであってもよい。前記「平均粒径」はBET(Brunauer-Emmet-Teller)によって測定することができ、前記「気孔の体積」はγ-アルミナの単位重量当たりに含むメソ孔の体積を測定して計算することができる。前記メソ孔が前記気孔の体積を維持することで、湿度調節できる機能領域(functional site)を保有することに有利であり、十分な湿度調節を発揮することができる。
【0058】
前記多孔性セラミックタイルは、平均粒径が約10nmないし約10μmである気孔を含んでもよい。前記気孔は前記多孔性セラミックタイル自体の気孔であって、前記気孔が約10nm未満であれば空気の出入りが容易ではないため、吸湿性、防湿性による湿度調節機能が制限されることがあり、前記気孔が10μmを超える場合、最終タイルの組職緻密度が低くなり、強度が弱くなって破損されやすくなる。
【0059】
多孔性セラミックタイルの製造方法
本発明の他の具現例は、相異なる装飾効果の具現材料を含む第2種のセラミックタイル用組成物を混合してセラミック成形体を形成する段階;前記セラミック成形体を乾式プレス成形して多孔性セラミックタイルを製造する段階;前記成形された多孔性セラミックタイルを乾燥する段階;前記乾燥された多孔性セラミックタイルに釉薬で施釉する段階;及び前記施釉された多孔性セラミックタイルを焼成する段階を含む、多孔性セラミックタイルの製造方法を提供する。
【0060】
図2は、本発明の一具現例の多孔性セラミックタイルを写真で撮影して表したものである。
【0061】
まず、相異なる装飾効果の具現材料を含む2種のセラミックタイル用組成物を混合してセラミック成形体を形成する段階を含んでもよい。
【0062】
最終製品である多孔性セラミックタイルに天然石の外観の自然な色相及び柄を持たせるため、相異なる効果の具現材料を含む前記2種のセラミックタイル用組成物を混合させてもよい。
【0063】
具体的に、前記2種のセラミックタイル用組成物は、装飾効果の具現材料、γ-アルミナに相転移できるアルミニウムソース、及び母物質をボールミルして混合、粉砕した後、噴霧乾燥(spray drying)工程によって形成してもよい。
【0064】
例えば、母物質100重量部に対してそれぞれ異なる色を発する無機顔料を約5重量部ないし約10重量部、γ-アルミナに相転移できるアルミニウムソースを約5重量部ないし40重量部投入して原料を混合することができる。
【0065】
ボールミルを利用して前記混合物を均一な混合及び適正の大きさに粉砕することができ、粉砕するときは、水、有機バインダー、分散剤及び消泡剤などを適切な量で添加することができる。
【0066】
前記粉砕された混合物が適切な粘度を有するスラリー状になると、噴霧乾燥工程を通じて球状粒子を持つ顆粒粉末形態の2種のセラミックタイル用組成物を製造することができる。
【0067】
前記無機顔料の含量を調節することにより、組成物が具現しようとする色相及び質感を制御することができ、前記γ-アルミナに相転移することができるアルミニウムソースの含量を調節することで、最終タイルの内部に含まれる2種のセラミックタイル用粒子内のγ-アルミナの含量を調節して耐久性及び湿度調節機能を発揮させることができる。
【0068】
前記γ-アルミナに相転移することができるアルミニウムソースは、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム二水和物及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれたもののうち、一つ以上であってもよい。具体的に、アルミニウムトリヒドロキシド、塩化アルミニウムなどを使うことができる。
【0069】
前記製造されたセラミック成形体を乾式プレス成形する段階を通じて多孔性セラミックタイルを製造することができる。前記製造されたセラミック成形体、つまり、顆粒粉末形態の前記第1、2セラミックタイル用組成物の混合物を乾式プレス金型に投入して望む形状のセラミック成形体を製造することができる。
【0070】
その後、前記成形された多孔性セラミックタイルを乾燥する段階を含んでもよい。前記乾燥する段階において、乾燥温度が特に制限されることはないが、約200℃ないし約250℃の温度で乾燥を行うことができ、この場合、高温のガス連続炉を通過する短い時間に成形体が変形または素地が破損するような不具合を抑制することができる。
【0071】
前記乾燥された多孔性セラミックタイルは、釉薬で施釉する段階を含んでもよい。前記段階は多孔性セラミックタイルの表面に釉薬を施すためであって、施釉方法に特に制限があるのではなく、釉薬のスラリーを利用する湿式法、釉薬の乾粉または顆粒、プリットのコレットを利用する乾式法などを使うことができる。
【0072】
例えば、前記釉薬のスラリーに無機顔料、有色添加剤の含量を少なくすることで、第1、2のセラミックタイル用組成物が具現する色感をよく見えるようにし、前記色感の発現の妨害を最小化することができる。
【0073】
具体的に、前記釉薬は、水、プリット、増粘剤、分散剤を基本組成物にすることができ、前記基本組成物に茶色の無機顔料または黒の無機顔料などをさらに追加することができる。このとき、加えられる無機顔料は、基本組成物100重量部を基準にして5重量部であってもよい。
【0074】
または、前記釉薬に別途の追加無機顔料を含まなくてもよい。このように別途の追加無機顔料を含まなくても優れた天然石外観を具現することができる。
【0075】
最後に、前記施釉された多孔性セラミックタイルを焼成する段階を含んでもよい。焼成とは、組み合わされた原料を加熱して硬化性物質を作る操作を意味し、前記多孔性セラミックタイルに熱を加えて焼成過程を経ることにより、多孔性セラミックタイルが含む2種のセラミックタイル用組成物を2種のセラミックタイル用粒子に変形して焼成することができる。具体的に、焼成段階を通じて前記γ-アルミナに相転移することができるアルミニウムソースの相転移が起きて、平均粒径が約2nmないし約5nmのメソ孔を含むγ-アルミナになり、前記メソ孔によって湿度を調節することが可能である。
【0076】
前記2種のセラミックタイル用組成物が焼成段階で変形された前記2種のセラミックタイル用粒子に関する事項は前述のとおりである。
【0077】
前記焼成段階は、約800℃ないし約1000℃の温度で約1分ないし約15分間行うことができる。前記温度で焼成することにより、γ-アルミナに相転移することができるアルミニウムソースがγ-アルミナに転移されることで吸放湿性が向上されるので、具体的に、前記2種のセラミックタイル用組成物が前記2種のセラミックタイル用粒子に変形することができる。また、前記範囲の温度で施工された時、タイルが適正強度を確保するので、施工中の破損が最小化される。
【0078】
前記焼成は約1分ないし約15分間行うことができる。前記焼成時間外の場合、焼成が充分に行われない場合もある。
【0079】
図2は、前記多孔性セラミックタイルの製造方法によって形成された多孔性セラミックタイルを写真機で撮影したもので、前記タイルは花崗岩、大理石と類似する外観を示すことが分かる。
【0080】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記の実施例は本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0081】
<実施例及び比較例>
実施例
粘土40重量部、白の具現のための青色無機顔料(CP−201B、Zr(SiO4)70%、SiO220%、ZrO210%)0.2重量部、白の具現のための緑色無機顔料(CP−302B、Cr2375%、SiO225%で構成される)0.4重量部、γ-アルミナに相転移されるアルミニウムトリヒドロキシド13重量部、ガラスプリット4重量部に炭酸カルシウム13重量部、水30.4重量部を配合し、ボールミル過程の粉砕及び混合を通じて得られたスラリーを噴霧乾燥し、球状の顆粒粉末である第1のセラミックタイル用組成物を製造した。
【0082】
粘土38重量部、黒色の具現のための無機顔料(FCS-33735、Cr1xFe1.66x04x約99%)5重量部、γ-アルミナに相転移されるアルミニウムトリヒドロキシド13重量部、ガラスプリット4重量部に炭酸カルシウム13重量部、水30.4重量部を配合し、ボールミル過程の粉砕及び混合を通じて得られたスラリーを噴霧乾燥し、球状の顆粒粉末である第2のセラミックタイル用組成物を製造した。
【0083】
次いで、前記第1、2のセラミックタイル用組成物を3:7の割合で混合することでセラミック成形体を形成した後、前記セラミック成形体を乾式プレス成形を行って、横、縦、厚さがそれぞれ5cm、5cm、0.6cmである多孔性セラミックタイルを製造した。前記成形された多孔性セラミックタイルを200℃の恒温チャンバーで約20分くらい乾燥した。その後、前記乾燥された多孔性セラミックタイルにスプレーガンを活用して釉薬を塗布した。具体的に、前記釉薬は、水41重量部、プリット52重量部、増粘剤6重量部、分散剤1重量部を含み、別途の追加無機顔料を含まない。前記釉薬は、約3〜10g/ m2の水準に乾燥されたタイルの上に塗布した。次に、電気加熱炉(Furnace)に投入し、850℃の温度で5分間焼成することで、第1、2のセラミックタイル用粒子を含む多孔性セラミックタイルを製造した。
【0084】
比較例1
第1のセラミックタイル用組成物で成形体を形成した後、多孔性セラミックタイルを製造したことを除いて、前記実施例と同様の方法で多孔性セラミックタイルを製造した。
【0085】
比較例2
γ-アルミナに相転移するアルミニウムトリヒドロキシドを除いて混合物を形成し、第1のセラミックタイル用組成物を製造した後、前記第1のセラミックタイル用組成物で成形体を形成し、多孔性セラミックタイルを製造したことを除いて、前記実施例と同様の方法で多孔性セラミックタイルを製造した。
【0086】
<実験例1> - 多孔性セラミックタイルの色相具現効果
前記実施例及び比較例の多孔性セラミックタイルの色相を肉眼で観察して天然石の外観の具現可否を評価した。
【表1】
【0087】
前記表1を参考すれば、実施例は第1、2のセラミックタイル用組成物を用いて形成されたもので、第1のセラミックタイル用組成物のみを使って形成された比較例1、2に比べて天然石外観の具現が優秀であった。
【0088】
<実験例2> - 多孔性セラミックタイルの吸放湿性及び屈曲強度測定
前記実施例及び比較例の多孔性セラミックタイルの吸放湿量及び屈曲強度を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0089】
1)吸放湿量:25℃の温度及び相対湿度(Relative Humidity、RH)50%の条件で、24時間前記実施例及び比較例の多孔性セラミックタイルを放置し、再び25℃の温度及びRH75%の条件で12時間維持して重量差を測定し、再び25℃の温度及びRH50%の条件で12時間維持した後、重量差を測定して、その平均値を表面積で割ってg/ m2値に換算して計算した。
【0090】
2)屈曲強度:屈曲強度を測定するために3点曲げ強度法を用い、横、縦がそれぞれ約5cm、5cm、高さが0.5cmである直方体模様のタイルを3個ずつ作った後、破壊し始めるまで力を加えて曲げ強度を測定した。
【0091】
【表2】
【0092】
前記表2を参考すれば、第1、2のセラミックタイル用組成物を使って形成された実施例が、第1のセラミックタイル用組成物を使って形成された比較例1、2に比べて吸放湿量及び強度が優れることが分かった。
【0093】
また、比較例2の第1のセラミックタイル用組成物はγ-アルミナを含まないので、吸放湿量が顕著に低くて実效的吸放湿性を保有することができず、機能性室内の建築資材として活用することが困難である。
図1
図2