(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストン駆動機構が、アクチュエータとしてモータを有するものであって、前記(a4)のステップでは、前記出力パラメータとして前記モータの回転速度を検出する、請求項2に記載の薬液注入装置の制御方法。
前記(a6)のステップで再設定される新たな注入速度が、時間の経過とともに上昇するパターン、減少するパターン、およびそれらの組合せのパターンの少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液注入装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、図面に表された1つの具体的な形態に基づいて説明を行うが、各構成要素の具体的構成は特定のもの限定されるものではない。変形例については、他の図面を参照しつつ後述するものとする。
【0027】
この出願の一側面に係る発明は、例えば
図12〜
図16に示す注入条件の設定方式および注入動作を特徴としているが、まず初めに、薬液注入装置の構成やGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を通じた注入条件の設定方式について説明するものとする。
【0028】
〔薬液注入装置の構成〕
本実施形態の薬液注入システム500は、
図1に示すように、患者に薬液として少なくとも造影剤を注入する血管造影用の薬液注入装置100を有している。薬液注入システム500は、また、患者の透視画像を撮像する撮像装置300を備えていてもよい。
【0029】
薬液注入装置100は、シリンジ200が装着される注入ヘッド110と、それに有線または無線で接続されたコンソール150と、注入ヘッド110およびコンソール150に接続される電源ユニット148と、を備えていてもよい。
【0030】
このような構成の場合、一例で、
図2に示すように、撮像装置300および注入ヘッド110が検査室内に配置され、コンソール150が操作室内に配置され、電源ユニット148が機械室内に配置されてもよい。各室は壁によって仕切られていてもよく、検査室と操作室との間には窓が設けられていてもよい。
【0031】
電源ユニット148の配置位置に関し、他の形態では、電源ユニット148は操作室内に配置されてもよい。または、電源ユニット148は検査室内に配置されてもよい。
【0032】
なお、注入ヘッド110とコンソール150とが、あるいは注入ヘッド110とコンソール150と電源ユニット148とが一体的に構成された薬液注入装置としてもよい。このような薬液注入装置が検査室内に配置されてもよい。ここで、「一体的に構成」とは、必ずしも1つの筐体内にすべての機器が収められている必要はなく、各機器が隣接して配置され、医師または医療従事者によって一体的に移動されるような構成をも含むものである。例えば、可動式のスタンドに注入ヘッド110およびコンソール150(必要に応じて電源ユニット148も)に相当するものが搭載された薬液注入装置としてもよい。
【0033】
他の形態では、注入ヘッドに電気的に接続されるバッテリーが、可動式の保持手段に搭載されて、自由に移動可能に構成されていてもよい。また、バッテリーに車輪等が設けられ、それにより該バッテリーが移動可能に構成されていてもよい。バッテリーとしては一例でDCバッテリーを利用できる。
【0034】
1.血管造影用シリンジ
血管造影用のシリンジ200は、一例で、筒状のシリンダ部材210と、その内部にスライド自在に挿入されたピストン部材(プランジャ)220とを有している。血管造影用のシリンジ200としては市販のものを利用してもよい。シリンジ200の容量は、例えば100ml〜200ml程度であってもよい。
【0035】
シリンダ部材210の材質は、樹脂、ガラス、または金属等であってもよい。シリンダ部材210は、基端部が開口しており、基端部付近にシリンダフランジ211aが形成されていてもよい。シリンダフランジ211aの輪郭形状は、どのようなものであっても構わないが、例えば、円形、楕円形、多角形、またはそれらの形状の一部を変形させたもの(例えばIカット形状、Dカット形状など)であってもよい。
【0036】
シリンダ部材210の先端部は閉じており、細長く突出した導管部(ノズル部)211bが形成されていてもよい。導管部211bの先端には、薬液チューブを接続するためのルアーロック構造が形成されていてもよい。シリンダ部材210の先端部は、平坦面であってもよいし、先端側向かって突出した略円錐状であってもよい。
【0037】
ピストン部材220は、いわゆるロッドレスタイプのものであってもよい。ピストン部材220の背面には、ロッドあるいはピストン駆動機構のラム部材を、直接または間接的に連結するための係止突起214が形成されていてもよい。
【0038】
この係止突起214の形状は、どのようなものであっても構わないが、一例で、シリンジの軸方向に延在する軸部材とその軸部材の端部に形成された円板状部とを有するものであってもよい。別の形態では、所定の間隔をあけてピストン部材220の背面に配置された一対のL字型部材からなるものであってもよい。ピストン部材220の材質は、特に限定されないが、樹脂、金属、またはそれらとゴムの組合せなどであってもよい。
【0039】
血管造影用のシリンジ200には、一般に、製品の保証耐圧が設定されている。保証耐圧は一例で1000psi等であることもある。シリンジ200は、滅菌済みのディスポーザブル製品として流通するものであってもよい。シリンジ200は、単品で、または、所定の付属品と組合せで包装袋に収容されていてもよい。
【0040】
なお、シリンジは予め薬液が充填されたプレフィルドタイプであってもよいし、空シリンジに薬液を吸引して使用する吸引式のものであってもよい。
【0041】
2.保護ケース
血管造影用のシリンジ200は、
図3に例示するような保護ケース240内に挿入された状態で注入ヘッド110に装着されるものであってもよい。このような保護ケース240としては、一例で、円筒形の中空の本体部材241を有するものであってもよい。本体部材241は、先端側が閉じ、後端側が開口した構成となっている。シリンジ200は保護ケース240の後端側の開口から挿入される。本体部材241の閉塞した先端面にはシリンジの導管部211bを通すための開口部241aが形成されている。限定されるものではないが、開口部241aは、先端面の中心部に位置するように形成されていてもよい。
【0042】
保護ケース240の基端部には、フランジ部241bが形成されていてもよい。このフランジ部241bには、保護ケースの上下を判別するためのインジケータが形成されていてもよい。インジケータは例えば突起部であってもよい。この突起部に、例えば、「上側(UPSIDE)」のような刻印がなされていてもよい。フランジ部241bは、注入ヘッド側の保持構造(例えばクランパ機構)によって保持されるのに適した形状および/または強度に設計されていることが好ましい。保護ケース240の材質は、特に限定されないが、樹脂、ガラス、金属等であってもよい。
【0043】
3.識別部材
保護ケースおよび/またはシリンジには、当該保護ケースおよび/またはシリンジの種類を識別するための1つまたは複数の識別部材(識別手段)が設けられていてもよい。識別手段としては、所定のデータキャリア部材であってもよい。データキャリア部材としては、ICタグ、バーコード、または磁性体等を利用するものであってもよい。
【0044】
識別される情報、または、記憶される情報としては、下記の少なくとも1つまたは組合せであってもよい:
(1)シリンジに関する情報
−シリンジの識別情報
−シリンジの耐圧
−シリンダ部材の内径
−ピストン部材のストローク、等
(2)シリンジに充填された薬液の情報
−名称(例えば製品名)
−ヨード量などの成分情報
−消費期限
−薬液容量、等
(3)保護ケースに関する情報
−保護ケースの識別情報
−保護ケースの耐圧、等
(4)固有のユニークID
【0045】
4.延長チューブ
シリンジの導管部先端には、延長チューブが連結される。2つのシリンジが使用される場合、延長チューブは、いわゆるT字管またはY字管であってもよい。このような延長チューブとしては、一例で、一方のシリンジの導管部から延長チューブの分岐部まで延びる第1のチューブ部分と、他方のシリンジの導管部から分岐部まで延びる第2のチューブ部分と、分岐部から患者に向けて延びるメインチューブ部分とを有するものであってもよい。
【0046】
延長チューブの先端側には、種々のカテーテルが交換可能に接続される。カテーテルが患者体内に導入された状態で、注入ヘッドを動作させ1つまたは複数のシリンジ内の薬液を薬液を押し出すことで、カテーテルを通じて、血管内に薬液が注入される。
【0047】
シリンジ内に薬液を吸引する場面では、シリンジの導管部先端に、シリンジ内に薬液を吸引するための吸引チューブが取り付けられてもよく、吸引チューブとしては、例えば先端側が湾曲して全体としてJ形状に形成されたものと利用してもよい。
【0048】
5.注入ヘッド
注入ヘッド110は、一例で、前後方向に長さを有するような筐体を有し、その筐体の前端側に、1つまたは複数のシリンジが装着されるものであってもよい。注入ヘッド110は、単一のシリンジを保持するシングルタイプのものであってもよいし、2本のシリンジを保持するデュアル(二筒式)タイプのものであってもよい。
【0049】
注入ヘッド110は、1つまたは複数のピストン駆動機構130と、そのピストン駆動機構130を制御するようにそれ(それら)に電気的に接続された1つまたは複数の制御ユニット144と、を有するものであってもよい。
【0050】
(ピストン駆動機構)
ピストン駆動機構は、駆動源であるモータと、そのモータの回転出力を直線運動に変換する運動変換機構と、その運動変換機構によって動かされシリンジのピストン部材を前進または後退させるラム部材(プレッサー部材)とを有するものであってもよい。このようなピストン駆動機構としては、薬液注入装置で一般に用いられる公知の機構を用いることができる。なお、モータ以外のアクチュエータを駆動源としてもよい。
【0051】
ピストン駆動機構はシリンジの本数に応じて2系統設けられていてもよく、この場合、一方が造影剤シリンジ用で他方が生理食塩水シリンジ用であってもよい。各ピストン駆動機構は、独立して動作可能に構成されており、これらは、制御ユニットからの制御信号にしたがって、同時にまたは別々に動作可能となっている。
【0052】
典型的なピストン駆動機構の動作としては、次のようなものが挙げられる:
−薬液注入(ラム部材の前進)
−薬液吸引(ラム部材の後退)
「薬液注入」では、所定のモータ制御信号にしたがってモータを動作させラム部材を前進させることにより、設定された注入プロトコル(注入条件)に従った薬液注入を行う。
「薬液吸引」では、所定の制御信号にしたがってモータを動作させピストン部材を後退させることにより、シリンジ内に薬液を吸引する。
【0053】
なお、プレフィルドシリンジの場合には、薬液吸引は実施しなくてよい。
【0054】
(制御ユニット)
制御ユニット144は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)とメモリとインターフェース等を有し、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムを実行することで様々な機能を実現するものであってもよい。制御ユニット144は、CPU、ROM、RAM、およびI/F等のハードウェアを有しプログラムが装されたワンチップマイコンであってもよい。
【0055】
制御ユニット144は、後述する注入ヘッドの各種要素に電気的に接続されている。そして、制御ユニット144は一例で下記のような処理を行うように構成され(プログムされ)たものであってもよい:
−各種センサからの信号に基づいて所定の演算処理を行う
−ピストン駆動機構に対して所定のモータ制御信号を送り、動作を制御する
−ディスプレイ等に所定の情報を表示させる
−物理ボタン等の入力装置を通じた操作者からの入力を受け付ける
−ヒータの動作を制御する、等
【0056】
(各種センサ)
注入ヘッド110は、各種センサ145として次のようなもののうち1つまたは複数を有してもよい:
−1つまたは複数の圧力センサ
−1つまたは複数のシリンジ検出センサ(磁石センサ、ホールセンサ等)
−1つまたは複数の傾斜センサ
−1つまたは複数のロータリエンコーダ
−1つまたは複数のモータ電流検出器、等
【0057】
(a1)圧力センサ
圧力センサは、例えばピストン部材を押す圧力を検出するためのものであり、これにより、薬液の圧力推定値を求めることができる。圧力センサは、一例でロードセルであってもよい。ロードセルは、ピストン駆動機構のラム部材がピストン部材を押す圧力を検出できるような位置に設けられていればよい。
【0058】
ロードセルの検出結果を利用して、例えば、薬液を注入しているときの薬液の圧力の推定値を求める場合、その算出は、針のサイズ、薬液の濃度、注入条件なども考慮して行われてもよい。
【0059】
他の態様では、薬液の圧力を直接的に検出する圧力センサなどを有していてもよい。
【0060】
(a2)シリンジ検出センサ
シリンジ検出センサは、シリンジおよび/または保護ケースが装着されたか否かを検出する、あるいは、どのような種類のシリンジおよび/または保護ケースが装着されたかを判定するのに用いられるものである。このようなセンサとしては、接触式または非接触式のいずれであってもよく、例えば次のようなものを利用できる:
−物理的な接触を利用した接触センサ
−電気的に対象物を検出する電気センサ
−磁気センサ
−ホールセンサ
−光センサ
−近接センサ、等
【0061】
(a3)傾斜センサ
傾斜センサは、注入ヘッドの傾きを検出する。一般に、この種の注入ヘッドは、その前端側(つまりシリンジ側)が上方となるような姿勢でシリンジ内への薬液吸引が実施される。一方、薬液注入は、注入ヘッドの前端側が相対的に下方となるような姿勢(先端側をやや下に向けた姿勢)で実施される。傾斜センサの検出結果を用いることで、例えば、望ましくない姿勢での薬液吸引または薬液注入することを防止することも可能である。
【0062】
(a4)ロータリエンコーダ
ピストン駆動機構のモータの回転数および/または回転方向を検出するためのロータリエンコーダ等が設けられていてもよい。
【0063】
(a5)モータ電流検出器
ロードセル等を用いずモータ電流に基づいて薬液の圧力推測値を算出することも可能である。この方式においては、モータ電流検出器により、モータの動作中、モータ電流を監視し、そのモータ電流に基づいて薬液の圧力推定値を求める。
【0064】
(注入ヘッドの他の構成要素)
注入ヘッドは、さらに、次のようなもののうち1つまたは複数を有してもよい:
−1つまたは複数のシリンジヒータ(147a)
−1つまたは複数のヘッドディスプレイ(147b)
−1つまたは複数のヘッド状況表示部
−1つまたは複数の手動操作されるノブ(マニュアルノブ)
−1つまたは複数の物理ボタン(入力装置、147c)
−1つまたは複数のクランプ機構
−1つまたは複数のシリンジ受け部(保護カバー受け部)
−1つまたは複数のRFID通信デバイス
−1つまたは複数のデータレシーバ
−1つまたは複数のデータトランスミッタ、等
【0065】
(b1)ヒータ
ヒータは、シリンジ内の薬液を所定温度に保温するためのものである。ヒータの形態および発熱方式はどのようなものであっても構わないが、一例として、シート状のヒータを利用してもよい。シート状のヒータは、保護ケースの外周面に近接するように、注入ヘッドのシリンジ受け部(保護ケース受け部)に設けられていてもよい。
【0066】
(b2)ディスプレイ等
所定の情報を表示するためのディスプレイが注入ヘッドに設けられていてもよい。ディスプレイは、例えば、注入ヘッドの筐体の一部に設けられていてもよい。あるいは、筐体とは別体に用意されたサブディスプレイであってもよい。
【0067】
ディスプレイは、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Organic Electro−Luminescence)ディスプレイ等を利用した表示部であってもよいが、LED(Light Emitting Diode)を利用した表示部であってもよい。
【0068】
このディスプレイに表示される内容としては、特に限定されないが、次のようなものであってもよい:
−注入動作中の所定の状態表示
−注入予定の薬液注入条件
−注入された薬液注入条件
−薬液注入量
−薬液圧力
−注入速度、等
【0069】
例えば、注入ヘッドの筐体の一部に、注入ヘッドの所定の状態を操作者に知らせるための所定の発光部が設けられていてもよい。光源としては、一例でLED(Light Emitting Diode)等を利用できる。このような発光部は、ヘッド状況表示部
としての機能を有し、発光色や発光パターンを変化させることにより、注入ヘッドの種々の状況を操作者に知らせることができる。
【0070】
(b3)物理ボタン
物理ボタンとしては、特に限定されないが、次のようなものであってもよい:
−ラム部材を前進させるための前進ボタン
−ラム部材を後退させるための後退ボタン
−前進ボタンまたは後退ボタンと同時に押すことでラム部材の移動速度を早くするアクセラレータボタン
−ヘッドの動作を停止させる停止ボタン、等
【0071】
これらの物理ボタンは注入ヘッド筐体の上面、側面、下面、後端面等に適宜配置可能である。二筒式の注入ヘッドの場合、一方のピストン駆動機構のための物理ボタンの配置と、他方のピストン駆動機構のための物理ボタンの配置とが非対称となっていてもよい。
【0072】
(b4)クランプ機構
クランプ機構は、保護ケースのフランジ部を保持する機構であり、例えば、一対の保持部材でフランジ部分を両側から挟み込んでフランジ部を保持するものであってもよい。このような保持部材は、一例で、各々略円弧形状に形成され所定の軸周りに回動して開閉するものであってもよい。他の形態では、一端側が軸支されその軸周りに回動して開閉するように構成された単一の部材を有し、その部材でフランジ部をロックするものであってもよい。
【0073】
(b5)マニュアルノブ
マニュアルノブは、それを操作(例えば回転操作)することで、ラム部材を手動で前進または後退移動させるためのものである。ピストン駆動機構が2系統設けられている場合、それぞれのピストン駆動機構ごとに1つずつマニュアルノブが設けられていてもよい。マニュアルノブは、一例で、注入ヘッドの、後端部、側部、上部、下部などに配置することができる。
【0074】
(b6)RFID通信デバイス
シリンジまたは保護カバーにICタグなどのデータ保持手段が付されている場合には、同タグの情報を読み取る無線通信デバイスが設けられていてもよい。この無線通信デバイスは、単にICタグからデータの読取りを行うRFIDリーダであってもよいし、または、ICタグにデータの書込みを行うことも可能なRFIDリーダ/ライタであってもよい。
【0075】
(b7)データレシーバ
データレシーバは、有線または無線により、外部から注入ヘッドに対して送信されたデータを受けるためのものである。データレシーバは、一例で、次のようなデータを外部から受けるようになっていてもよい:
−撮像装置によって生成された任意のデータ
−病院システムによって生成された任意のデータ、等
【0076】
(b8)データトランスミッタ
データトランスミッタは、有線または無線により、注入ヘッドから外部に対して所定のデータを送り出すためのものである。
【0077】
データレシーバおよびデータトランスミッタの通信プロトコルは、通信の相手方である他の機器との通信方式を考慮して適宜好適なものを採用すればよい。なお、外部機器との通信を行うデータトランスミッタ等はコンソールに設けられていてもよい。
【0078】
データトランスミッタにより注入ヘッドから外部に送信可能なデータとしては、次のようなものの1つまたは複数であってもよい:
−使用された造影剤の名称等(造影剤識別情報)
−造影剤の注入総量
−造影剤の注入時間
−造影剤の注入圧力
−造影剤の注入速度、等
【0079】
また、次のようなものの1つまたは複数:
−患者の識別情報(例えば患者ID)
−検査識別情報(例えば検査ID)
−撮像時刻に関する情報、等
このような情報は、上述した造影剤に関する情報と組み合わせて送信されてもよい。
【0080】
注入ヘッド110およびコンソール(詳細下記)は、外部機器と通信を行うための通信部(不図示)が設けられている。この通信部を介して外部機器から入力された注入条件に応じて、造影剤の注入量や注入の速度等を調節するようにピストン駆動機構が動作制御されるように構成されていてもよい。
【0081】
(b9)異常検出について
上記のような各種センサを利用して、次のようなもののうち1つまたは複数の注入異常を検出可能に構成されていることが好ましい:
−ピストン駆動機構が正常に動作しないことによる注入異常
−シリンジが注入ヘッドに正常に搭載されていないことによる注入異常
−シリンジ内に注入動作を行うに足りる造影剤が残存していないことによる注入異常
−カテーテルや注射針が患者に正常に挿入されていないことによる注入異常
−薬液経路の途中でキンクが生じているなどに起因した注入異常
−検出される薬液の圧力値が所定の範囲(上限および下限を有する所定範囲、または、所定の上限リミット、所定の下限リミットなど)にないという注入異常、等
【0082】
−薬液注入時、例えば、薬液経路が詰まったりしている場合には、ピストン駆動機構の駆動力が所定範囲を上回ることとなる。他方、注入針が患者から抜けているような場合には、駆動力が所定範囲を下回ることとなる。このような駆動力の変化をみることによって、薬液が正常に注入されているか否を検知できる。
−センサにより、所定量の薬液が正常に装填されていないことが検知された場合、その検知結果が通信部から外部に送信されてもよい。
−その他、例えば、延長チューブの途中に圧力を測定する圧力センサを設け、薬液が所定の圧力で注入されているかを検知してもよい。
【0083】
6.コンソール
コンソール150は、
図1に示すように、1つまたは複数のディスプレイ151と、1つまたは複数の制御ユニット153と、種々の入力装置(157a〜157c)等を有している。コンソール150の物理的な形態は、特に限定されないが、例えば1つまたは複数の筐体を有するものであってもよい。一例で、1つの筐体内に制御ユニット153が配置されるとともに、その筐体前面にディスプレイ151が配置されたような一体型のコンソールとしてもよい。
【0084】
ただし、筐体の形態は何ら限定されるものではない。コンソール150が使用される場面に応じて適宜好ましい筐体形状としてもよい。例えば、次のようなものであってもよい:
−テーブルに配置されて使用されるのに適した据置型の筐体形状、
−所定の支持部材あるいは壁などに好適に取り付けることができる筐体形状(例えば背面側が略フラットに形成された薄型の筐体)、等。
【0085】
コンソールのディスプレイは、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Organic Electro−Luminescence)ディスプレイ等を利用した表示部であってもよい。また、タッチパネル式ディスプレイであってもよい。タッチパネル式ディスプレイは、表示装置と入力装置の両方としての役割を果たす。
【0086】
(制御ユニット)
制御ユニット153は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)とメモリとインターフェース等を有しており、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、様々な機能を実現する。制御ユニット153は、CPU、ROM、RAM、およびI/F等のハードウェアを有しプログラムが装されたワンチップマイコンであってもよい。
【0087】
制御ユニット153は、実装されたプログラムにしたがって多数の機能を有するが、コンソールの機能としては、一例で次のようなものが挙げられる:
−注入プロトコル設定GUI表示機能
−注入プロトコル設定機能
−注入中の画面表示機能
−注入後の画面表示機能
−入力検出機能
−注入制御機能、等
【0088】
なお、コンピュータプログラムはコンソールが有する所定の記憶領域に予め記憶されたものであってもよいし、ネットワーク等を通じて外部からダウンロードされ所定の記憶領域に記憶されるものであってもよいし、あるいは、スロットに挿入された情報記憶媒体から読み取られるものであってもよい。
【0089】
上記の機能は、それぞれ、コンピュータプログラムにより制御ユニット内に構成される、注入プロトコル設定GUI表示部、注入プロトコル設定部、注入中の画面表示部、注入後の画面表示部、入力検出部、注入制御部によって実現されてもよい。
【0090】
注入プロトコル設定GUI表示機能は、注入プロトコルを設定するためのGUI画面をディスプレイに表示する。具体的には、身体区分アイコン、撮像領域アイコン、血管部位アイコン等を表示し、また、血管部位アイコンが選択された場合には所定の薬液注入条件をディスプレイに提示する。注入プロトコル設定機能は、上記のように提示された薬液注入条件が医師または医療従事者によって確認/修正された後、その内容を注入プロトコルとして設定する。注入中の画面表示機能は、薬液の注入中に、静止画像もしくはアニメーション画像等をディスプレイに表示する。また、薬液の注入中に、薬液の圧力情報をディスプレイに表示する。注入後の画面表示機能は、実施した薬液注入に関する情報を、ディスプレイに表示する。入力検出機能は、タッチパネルや物理ボタン等(一例)を通じて行われる医師または医療従事者からの入力を受け付ける。注入制御機能は、設定された注入プロトコルにしたがってピストン駆動機構を動作させ、薬液の注入を実施する。ピストン駆動機構の一方のみを動作させること、および、両方を同時に動作させることを行うものであってもよい。
【0091】
制御ユニット153は、さらに、次のような機能を有していてもよい:
−注入履歴生成機能
−注入履歴出力機能
【0092】
注入履歴生成機能は、注入履歴データを生成する機能である。「注入履歴データ」としては、例えば、次のようなものの一つまたは複数であってもよい:
−注入作業ごとに固有の識別情報である注入作業ID
−注入開始および終了の日時
−薬液注入装置の識別情報
−前述の注入条件である薬液や撮像部位の識別情報、等
【0093】
上記データのフォーマットはテキストデータ形式であってもよい。または、上記データのフォーマットはDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格方式、および/または、医療情報交換の標準規格であるHL7規格(Health Level 7規格)であってもよい。
【0094】
注入履歴出力機能は、注入履歴データを外部に送信する機能に相当するものであってもよい。具体的には、外部の所定の機器および/またはネットワークにデータを送信するものであってもよい。注入履歴データのみならず、例えば、シリンジまたは保護ケースのICタグから取得した薬液、シリンジ、または保護ケースのデータ等を外部に送信するようにしてもよい。
【0095】
(入力手段/入力装置)
コンソール150は、入力手段として、例えば、ハンドスイッチ157a、操作ボタン157b、スロット157c等を有していてもよい。
【0096】
ハンドスイッチ157aは、コンソールに有線または無線で接続され操作者の手元で操作されるものであり、押しボタン式のスイッチ等を有するものであってもよい。
【0097】
操作ボタン157bとしては、例えば、コンソール150の筐体に設けられた1つまたは複数の物理的ボタンであってもよい。これらの物理的ボタンは、一例で筐体の前面に設けられていてもよい。
【0098】
スロット157cは、所定の情報記憶媒体が差し込まれる部分であり、コンソールはこの情報記憶媒体から所定のデータを読み込むことができる。
【0099】
限定されるものではないが、電源ユニット148にフットスイッチ157d(
図2参照)が接続されており、このフットスイッチ157dを操作することで注入ヘッド110および/またはコンソール150の動作が制御されるように構成されていてもよい。
【0100】
なお、フットスイッチ157dは、他の形態では、コンソール150に接続されてもよい。あるいは、フットスイッチ157dが注入ヘッド110に接続されてもよい。
【0101】
(コンソールのその他の構成要素)
−コンソールは、音および/または音声を出力するためのスピーカ等(不図示)を有していてもよい。
−コンソールは、音声を入力するためのマイク等(不図示)を有していてもよい。
【0102】
7.撮像装置
撮像装置300としては、例えば従来公知の血管造影装置等を利用することができる。撮像装置300は、ベッドに横たわった患者の所定の血管部位の撮像を行うCアーム等を含む撮像部304と、その制御を行う制御ユニット303と、1つまたは複数の読影モニタ305を有するものであってもよい。
【0103】
Cアームは、一方の端部にX線管が設けられ反対側の端部に例えばFPD(Flat Panel Detector、平面検出器)が設けられたものであってもよい。1つまたは複数のCアームを有する血管造影装置であってもよい。読影モニタ305としては、例えば、4つまたは6つのモニタが並んで配置されたようなものであってもよい。読影モニタ305は、一例で、検査室内に配置されてもよい。
【0104】
撮像装置と薬液注入装置とは、有線または無線により互いに接続され、所定の通信プロトコルによりデータ通信できるように構成されていてもよい。撮像装置および薬液注入装置は連動可能に構成されていることも好ましい。すなわち、薬液注入装置の所定の動作をトリガとして、その動作と同時に、または、その動作に対して所定の時間間隔をあけたタイミングで撮像装置の所定の動作が行われるように構成されていてもよい。逆に、撮像装置の所定の動作をトリガとして、その動作と同時に、または、その動作に対して所定の時間間隔をあけたタイミングで薬液注入装置の所定の動作が行われるように構成されていてもよい。
【0105】
血管造影の場合、カテーテル先端が目的の血管部位付近に到達した状態で造影剤が注入されるものであるので、薬液注入装置を動作させてピストン部材を前進させるとすぐに、目的の血管内に造影剤が送り込まれることとなる。そのため、適切なタイミングで撮像を行えるように、撮像装置と薬液注入装置とが連動するようになっていることが一般的である。
【0106】
上記のような連動を実現するための通信プロトコルとしては、一例で、CAN(コントローラエリアネットワーク)をベースにしたCANopenプロトコルを利用してもよい。
【0107】
8.注入プロトコルの設定
次に、本実施形態の薬液注入装置100での注入プロトコルの設定の一例について、図面5〜
図8を参照しながら説明する。
【0108】
なお、
図5〜
図8は、ディスプレイに表示されたGUIを通じて操作者が注入プロトコルを設定する手順を主に説明するためのものであり、ここでは一例として「注入速度」・「注入量」のパラメータを決定する方式が描かれているが、後述する「注入時間」・「注入量」を優先的に決定する方式においても、こうしたGUIを用いて条件の入力を行うことができる。
【0109】
(ステップS1)
まず、例えば、操作者がコンソール150に対して所定の入力操作を行うことにより、ディスプレイ151に
図5に示すような画面が表示される(ステップS1)。「所定の入力操作」としては、例えば、コンソール150の使用を開始するためにコンソールの物理的ボタン等を押すこと等であってもよい。
【0110】
図5に示すように、このGUI画面は、一例で、画面上部に、所定の情報やアイコン等を表示するスペースである横長の表示領域721を含んでいてもよい。このような表示領域721は、画面上部ではなく、側部、下部等に表示してもよい。また、横長形状に限定されず、矩形、縦長形状、多角形等の表示としてもよい。
【0111】
図5に示すように、このGUI画面は、装着されたシリンジの薬液残量を示す残量表示部725を含んでいてもよい。残量表示部725は、画面上部左側、画面上部中央部、画面上部右側、画面中部左側、画面中部中央部、画面中部右側、画面下部左側、画面下部中央部、画面下部右側のいずれに表示されてもよいが、この例では、画面上部右側に表示されている。
【0112】
図5に示すように、このGUI画面は、複数の身体区分アイコン701a〜701dが全体として人型の形状に表示された人体画像701を含んでいてもよい。
【0113】
この例では、人体の正面視形状を水平方向(横方向)に表示した画像としているが、他の形態では、鉛直方向(縦方向)の表示としてもよい。また、正面視形状ではなく、人体の側面視形状を、横方向または縦方向で表示するようにしてもよい。このような人体画像は、画面のサイズに対してどのような大きさであっても構わないが、例えば、
図5の例の場合、画面サイズ(幅)に対する全体の長さ(身長に相当する長さ)が50%以上としてもよい。
【0114】
このような横型の人体画像701は、画面の中心付近、中心部より上寄りの位置、または中心部より下寄りの位置のいずれに表示されてもよいが、この例では、中心部より上寄りの位置に表示されている。なお、人体画像が縦型の場合、人体画像は、画面の中心付近、中心部より左寄りの位置、または中心部より下寄りの位置のいずれに表示されてもよい。
【0115】
複数の身体区分アイコン701としては、頭部701a、胸部701b、腹部701c、下肢部701dを含んでいてもよい。なお、これらのうち一部のみを表示するようにしてもよい。また、これらのうち任意の複数をまとめて1つの表示としてもよい。
【0116】
(ステップS2)
以下、胸部手技の場合を例として説明する。
【0117】
図5のGUI画面において、胸部の身体区分アイコン701bを選択すると、
図6に示すように、一例で、その区分がハイライトされた状態(反転表示状態)となり、かつ、心臓を示すマークが表示される。
【0118】
また、選択された胸部(心臓部)701bに対応する複数の血管部位アイコン703a〜703cが表示される。血管部位アイコン703a〜703cは、次のような検査部位であってもよい:
−LVG:左心室(Left Ventricle)
−LCA:左冠状動脈(LCA:left coronary artery)
−RCA:右冠状動脈(RCA:Right coronary artery)
【0119】
なお、アイコン703a〜703cの内容としては必ずしも血管部位に限定されるものではない。他の形態においては、臓器名称などをも含む造影部位や撮像手技名であってもよい。
【0120】
複数の血管部位アイコン703a〜703cは、人体画像701の上側、下側、右側、左側のいずれに表示されてもよいが、この例では、下側に表示されている。
【0121】
このように、アイコン703a〜703cが人体画像701の下側に表示される場合、操作者は、身体区分の選択およびそれに続く血管部位の選択という動作を一連の流れとして操作できる、言い換えれば、それらの動作をGUI上で行い易いという利点がある。更に、後述するように、本実施形態では、注入条件のパラメータがアイコン703a〜703cの下側に表示されるようになっていてもよい。この場合、身体区分の選択、血管部位の選択、およびその後のパラメータ修正という動作を一連の流れとして実施し易いという利点がある。
【0122】
複数の検査部位アイコン703a〜703cは、縦方向または横方向のいずれの方向に並べて表示してもよいが、この例では、横方向に並べて表示されている。
【0123】
より具体的には、血管部位アイコン703a〜703cの表示順序が、その血管造影の一般的なルーチン(詳細後述)に対応する順序となるように表示されることも好ましい。ここでは、LVG、LCA、RCAの順でアイコンが並んでいるが、これは、この血管造影における一般的なルーチンがLVG、LCA、RCAの順であることを意味している。
【0124】
当然ながら、医師は、これらの順番に拘束されることなく検査を行うことが可能であるし、これら以外の血管造影を行ってもよい。
【0125】
なお、胸部の場合、上記項目である身体区分アイコン701bを選択した段階で、下位項目である血管部位アイコン703a〜703cようになっているが、例えば腹部の身体区分アイコン701cを選択した場合には、中位項目である撮像領域アイコン(詳細は
図10を参照して後述する)が表示され、その後、下位項目である血管部位の順で表示されるようになっている。
【0126】
(ステップS3)
図6の画面において、例えば、LVGのアイコン703aを選択すると、
図7に示すように、LVG(左心室造影)用に予め設定された注入条件715が画面に表示される。LVGのアイコン703aを選択した場合、そのアイコン703aがハイライトされた状態(反転表示状態)となるようになっていてもよい。また、選択されたアイコン703aが、他のアイコン703b、703cよりもやや大きいサイズで表示されるようになっていてもよい。
【0127】
注入条件としては、限定されないが、次のようなものの一部または全部含んでもよい:
−注入速度
−注入量
−ディレイ
−圧力リミット
−立上り時間(ライズタイム)
【0128】
「注入速度」とは、薬液の注入速度であり、その単位は一例で[ml/sec]である。
「量」とは、注入する薬液量であり、その単位は一例で[ml]である。
「ディレイ」とは、薬液の注入開始時刻と撮像装置による撮像開始時刻との間の時間差であり、その単位は一例で[sec]である。薬液注入開始から所定時間経過後に撮像が開始される場合と、薬液注入開始の所定時間前から撮像が開始されている場合とがある。
「圧力リミット」は、注入する薬液の圧力の上限値となるものであって、使用されるカテーテルの種類等に基づいて決定される。その単位は一例で[psi]、[kg/cm
2]、[MPa]等である。
【0129】
この例では、上記のようなパラメータが、それぞれアイコンとして表示されていてもよい。これらのアイコンの一部または全部は、好ましくは、操作者がそれを選択して数値を修正することができるようになっていてもよい。
【0130】
例えば、アイコンを押すと、テンキー画像、数値増減用の画像ボタン、またはそれらの組合せが表示され、医師または医療従事者がそうした画像を操作することで数値の変更を行えるようになっていてもよい。
【0131】
なお、音声入力機能により、数値の修正が行えるようになっていてもよい。音声入力機能は、例えば、注入ヘッドまたはコンソールに設けられたマイクと、注入ヘッドまたはコンソールの制御ユニットの機能の1つとして設けられた音声認識機能とを利用して実現することができる。
【0132】
このように音声認識を利用する場合、次のような利点が得られる。すなわち、血管造影においては医師によってカテーテルの操作が行われるところ、音声認識によれば、入力操作のために物理的ボタンやタッチパネル等に触れる必要がなく、衛生的である。
【0133】
他の形態では、人の動き(ジェスチャ等)を非接触で認識するジェスチャ認識機能を利用してもよい。ジェスチャ認識機能は、カメラなどの画像認識手段と、注入ヘッドまたはコンソールの制御ユニットの機能の1つとして設けられたジェスチャ解析機能とによって実現されるものであってもよい。
【0134】
再び
図7を参照すると、この画面では、表示領域721内にスタンバイアイコン721aが表示されている。限定されるものではないが、このスタンバイアイコン721aは、一例で、所定の血管部位アイコン703a〜703cを選択したタイミングで現れるようになっていてもよい。
【0135】
(ステップS4〜ステップS6)
図7の画面において、例えば、医師または医療従事者が注入条件を確認した後(ステップS4)、または、医師または医療従事者が必要に応じて注入条件を変更した後(ステップS5)、スタンバイアイコン721aを押すことにより、注入プロトコルが設定され、その注入プロトコルで薬液注入を行うことができる状態となる。スタンバイアイコン721aを押すと、
図8のように、同アイコン内の表示が「スタートOK」に切り替わるようになっていてもよい。
【0136】
限定されるものではないが、スタンバイアイコン721aをさらにもう1度押すことにより、注入が開始されるように構成されていてもよい。
【0137】
(ステップS7)
画面の表示が、上記のように「スタートOK」に切り替わった後、医師または医療従事者が所定の入力を行うことにより、設定された注入プロトコルに従った薬液注入が実施される。「所定の入力」としては、例えば次のようなものが挙げられる:
−ハンドスイッチの操作
−連携しているアンギオグラフィ撮像装置に対する所定の操作
【0138】
なお、
図8の画面では表示されていないが、注入条件を再修正するため
図8の画面から
図7の画面に戻るための「戻る」アイコン(不図示)が画面に表示されるようになっていてもよい。
【0139】
薬液注入中は、例えば
図9に示すような注入実行中をあらわす画像が表示されてもよい。この例では、画面上部の表示領域721内に現在選択されている身体区分を確認することができる人体画像アイコン721bが表示されている。人体画像アイコンに関して、選択箇所を視認し易いように、選択されている箇所がハイライトされた状態(反転表示状態)となるようにしてもよい。現在の血管部位の情報(「LVG」)も表示されている。一例で、この「LVG」の情報は、文字情報として表示領域721内に表示されてもよい。
【0140】
他の形態では、この「LVG」の情報は、画面における表示領域721外の任意の位置に表示されてもよい。文字情報だけでなく、図柄等の画像が表示されてもよい。
【0141】
表示領域721中には、また、薬液注入注であることを示す「注入中」の文字が表示されていてもよい。
【0142】
図9の画面では、また、医師または医療従事者が薬液注入中であることを視覚的に確認しやすいように、シリンジ画像716aとそのシリンジ先端から吐出されるように描かれた複数の液滴画像717aとが表示されていてもよい。液滴画像717aは、薬液注入中、アニメーション表示されるように構成されていてもよく、アニメーション表示の一例としては、それぞれの液滴の色を時間とともに段階的に変化させていき、液滴が前方に押し出されていることが視覚的に理解できるようなものであってもよい。
【0143】
図9の画面では、薬液注入条件の情報(速度、量、ディレイ時間)、薬液注入中の情報(経過時間、薬液残量)等が表示されていてもよい。
図9の画面では、また、薬液注入中の圧力を表示するための圧力表示ウィンドウ713が表示されてもよい。この圧力表示ウィンドウ713内には、複数セグメントを含む圧力表示部713aが表示されており、圧力に応じてセグメントの色が変わるようになっている。圧力表示部713aの上部には600[psi]、800[psi]、1200[psi]等の情報が表示されていてもよい。また、圧力リミットがどれくらいであるかを視覚的に確認しやすいように、圧力リミット表示713bが表示されていてもよく、この圧力リミット表示713bは例えば三角形形状や矢印形状といった図形表示であってもよい。
【0144】
薬液注入注、注入を中断する必要が生じた場合には、例えば、
−ハンドスイッチの操作(例えば押下)を解除する
−フットスイッチの操作(例えば押下)を解除する
−注入ヘッドのいずれかのボタンを押す
−コンソールの停止ボタン(一例)を押す
などの操作により、注入が停止するようになっていてもよい。
【0145】
なお、ハンドスイッチの一例としては、操作者によって握られる筐体に、注入動作を開始させるためのスタートボタンと、注入動作を停止させるストップボタンとが別々に設けられたようなものであってもよい。または、1つのボタンのオン/オフを切り替えることで操作されるものや、1つのボタンを押下している間のみ入力信号を発するようなものであってもよい。
【0146】
(腹部の血管造影)
続いて、
図10を参照して腹部の血管造影について説明する。腹部、頭部、下肢部等についても、基本的には上述した胸部と同様の方式で注入プロトコルの設定、薬液注入の実施を行うことが可能である。ただし、この実施形態では、腹部については、「腹腔動脈」、「腎臓」、「肝臓」のような、中位項目である撮像領域アイコン702a〜702cが先ず表示され、そのうちの1つを選択すると、その撮像領域に対応した血管部位のアイコン703a〜703cが表示されるようになっている。
【0147】
撮像領域アイコンとしては、特に限定されるものではないが、例えば腹腔動脈(702a)、腎臓(702b)、肝臓(702c)等であってもよい。各アイコン702a〜702cは、それぞれの臓器ないし血管を模式的に表した図形型に表示されていてもよく、これにより、医師または医療従事者が視覚的に容易に選択することが可能となる。
【0148】
3つのアイコン702a〜702cは、選択された身体区分アイコン(ここでは腹部、アイコン701c)上に重なるように表示されてもよい。3つのアイコン702a〜702cが、選択された身体区分アイコン内に収まるように表示されてもよいが、
図10のように、選択された身体区分アイコンよりもやや広い領域(一点鎖線参照)内で表示されるようになっていてもよい。
【0149】
この一点鎖線で示す領域の表示に関し、当該領域は、例えば不透明色で表示されてもよいし、または、半透明色(したがって身体区分アイコンが部分的に僅かに視認できる)であってもよい。さらに、当該領域の縁部分がグラデーション状(縁に近い程淡い色となる)に表示されてもよい。図の例では、一点鎖線は矩形に表示されているが、そのコーナー部に丸みを持たせたような表示態様としてもよい。
【0150】
色彩については何ら限定されるものではなく自由に設定可能である。例えば、一点鎖線部分を青色とし、未選択のアイコンを白色としてもよい。
【0151】
なお、アイコン702a〜702cのうちいずれかが選択された場合、その選択されたアイコンが反転表示となるなどして、そのアイコンが選択されたものであることが一目で分かるようになっていてもよい。具体的な一例としては、選択されたアイコンが白色から青色となり、他方、一点鎖線の背景画像が青色から白色に切り替わるような表示態様などが挙げられる。
【0152】
これらのアイコン702a〜702cのうちいずれか1つを選択することにより、それに対応した1つまたは複数の血管部位アイコン703a〜703cが表示されることとなる。それ以降の、各血管造影のための注入プロトコル設定、薬液注入の実行、および注入結果の表示等については、上述した内容と同様の手順で実施することが可能であるので、詳細な説明は省略するものとする。
【0153】
図15の例において、当然ながら、撮像領域アイコン702a〜702cの表示数を増減させてもよい。また、撮像領域アイコン702a〜702cについてもこれに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。本発明の他の形態においては、撮像領域アイコンに関して次のような変更を採用しうるものである:
−腹部以外の身体区分(頭部、胸部、下肢部)においても、その身体区分に含まれる臓器等を表した撮像領域アイコンが表示され、その1つを選択することで、対応する血管部位アイコンが表示される、
−複数の撮像領域アイコンが表示される場合に、それらを、検査のルーチンにしたがった順序で表示する、
−上記説明では、身体区分アイコンの選択の後、撮像領域アイコンの選択を行うことを説明した。しかし、身体区分アイコンが表示されず初期画面から撮像領域アイコンが表示されているようなGUI画面としてもよい。この場合であっても、撮像領域アイコンの選択の後、所定の血管部位アイコンが表示され、その血管部位アイコンを選択することで予め登録された所定の注入条件が表示される。
【0154】
上述のような注入プロトコルの設定方式によれば、各種血管部位に対する注入プロトコルを設定するために、従来のような、メモリリストからの選択ではなく、次のような手順で行うことができる。すなわち、まず、ディスプレイのGUI上で目的の身体区分アイコン(必要であれば撮像区分アイコン)を選択し、次いで、血管部位アイコンを選択する。これにより、その血管部位に対応して事前に登録された所定の注入条件が提示されるので、これを確認し、または必要に応じて修正することにより、注入プロトコルを設定することができる。
【0155】
メモリリストから1つの条件を選択する従来のような方式では、メモリリスト中の各条件が部位ごとにグループ化されていなかったり、リスト中の条件が単なる数値データであったりして、選択したい条件を選び出すのに時間や手間がかかることがあった。しかしながら、本実施形態のような方式によれば、身体区分や撮像領域といったグループを先ず選び、そして、その中の血管部位が選択される。したがって、例えば、現在の検査(例えば胸部)に全く関連のない別の血管部位(例えば頭部の血管部位)を選択してしまうようなこともない。しかも、アイコンを選択して身体区分や撮像領域、また、血管部位を選択できるので操作性よく、直感的に選択を行うことが可能となる。
【0156】
次に、本発明の一形態の薬液注入装置100での注入条件の設定および注入動作の一例について、
図12〜
図18を参照しながら、特に
図14のフローチャートに沿いつつ説明する。
【0157】
まず、フローチャートのステップS11において、注入条件の設定を行う。この設定は、例えばコンソールのディスプレイに表示されたGUIを通じて実施することができる。具体的には、例えば操作者が「注入量(ml)」および「注入時間(sec)」の情報を入力する。GUIは、どのようなものであっても構わないが、注入量の情報を入力するためのウィンドウまたはアイコンと、注入時間の情報を入力するためのウィンドウまたはアイコンとを含むものであってよい。なお、より具体的なGUIの例については他の図面を参照して後述する。
【0158】
次いで、コンソールは、入力された上記注入量(ml)および注入時間(sec)の情報に基づき、注入速度(ml/sec)を計算する。
図12(A)では、一例で、注入量が20mlで、注入時間が5.0secと入力された場合の注入パターンが例示されており、この場合、注入速度は4.0ml/secに設定されることとなる。
【0159】
−なお、実際の注入条件の決定は、撮像する部位や、患者の体重といった様々な要素が考慮される。上記した実施形態のように、撮像する部位に対応して時間−量の情報が予めプログラムされていてもよい。この場合、操作者による注入量および注入時間の数値を省くことが可能となる。当然ながら、コンソール(または他の制御ユニット)は、操作者による修正および/または確認のための入力を受け付けるように構成されていることも好ましい。
−
図12(A)のパターンは説明の都合上、注入パターンを非常に簡素化したものであるが、このような単純な矩形の注入パターンではなく、注入開始直後の速度の立ち上がりをなだらかにするようなサブファンクションが設けられていてもよい。すなわち、このサブファンクションにより、例えば、注入開始後、所定の目標速度までの到達時間が0.5秒後、1秒後、1.5秒後、2秒後などと設定されるようになっていてもよい(注入パターンは矩形ではなく片側を略台形としたような形状となる)。なお、「立ち上がりをなだらかにする」ためのカーブとしては、直線的に増加するカーブであってもよいし、曲線的に増加するカーブであってもよいし、それらの組合せであってもよい。
−
図12では、単一の造影剤注入フェーズのみが描かれているが、当然ながら、1つまたは複数の追加の注入フェーズ(造影剤、生理食塩水、またはそれらの同時注入)が用いられてもよい。
−上記のような注入条件は、
図12のようにグラフのような態様で例えばディスプレイ上に可視化されてもよいが、必須ではない。
【0160】
再び、
図14のフローチャートの説明に戻り、操作者による注入条件の設置後、ステップS12において注入が開始される。例えば、操作者により所定の注入開始ボタン(不図示)が操作されることにより、設定された上記注入条件に従ってピストン駆動機構130の駆動源(モータ)が動作制御され、薬液がシリンジから押し出される。
【0161】
薬液の注入中、ステップS13において、薬液注入装置100が例えばモータのエンコーダ(不図示)の出力を監視し、それに基づいて、モータの回転数が所定の回転速度に達したか否かを判定するものであってもよい。ステップS13でモータが所定の回転速度に達したと判定された場合、すなわち、薬液注入速度が所定の値に達したと推定された場合、次のステップに進む。なお、ここでは時間t1に所定の注入速度となったものとする。
【0162】
ステップS14では、時間t1から注入完了時間t2までの残時間(
図13参照)を求める。また、注入すべき薬液の注入残量を求める。「残時間」については、例えば、(t2−t1)を計算することにより求めてもよい。「注入残量」については、例えば、注入すべき量(ここでは例えば20ml)の情報と、時間t1までに注入した量の情報とに基づき、算出してもよい。
【0163】
「時間t1までに注入した量の情報」は、例えば、ピストン駆動機構のラム部材の移動量(言い換えれば、シリンジのピストン部材の進出量)に少なくとも基づいて算出してもよい。ラム部材の移動量を示す情報としてはどのようなものを用いてもよいが、例えば、注入開始後からのモータの回転数の情報や、所定の検出器で検出した実際のラム部材(あるいはピストン部材)の移動量の情報などを利用してもよい。
【0164】
その後、ステップS15で、上記ステップで求めた「残時間」(例えば4.0sec)と、「注入残量」(例えば18ml)とに基づいて、新たな注入速度(4.5ml/sec)を算出、設定する。
【0165】
そして、
図13に示すように、それ以後(t1−t2)は、新しい注入速度(4.5ml/sec)で薬液注入を継続する(ステップS16)。薬液注入は、当初設定された注入完了時間t2となったところで完了する。
【0166】
上記のような薬液注入方法においては、注入完了時間t2までに、当初設定した注入量の全量を患者に向けて注入し終えることができる。すなわち、「注入速度」および「注入量」に基づいて注入条件を設定する方式では、注入速度が所定の値に達するまでに遅れが生じた場合であっても、その注入工程における注入速度は一定のままであったため、その遅れに対応する量の薬液を注入するために、
図12(B)に示すように、注入時間(t2′:t2+α〔sec〕)が長くなる方式であった。
【0167】
これに対して本実施形態のような注入方式によれば、当初設定した注入完了時間t2)までに、所定の薬液量を押し出し終えることができるので、医師が望むようなタイミングでの造影効果が得られる。また、他の撮像機器等との連携の観点から言えば、このような方式によれば所定の注入時間内に造影剤を押し出し終えることができることから、関心部位に造影剤が到達する時間に大幅な遅れも生じず、そのため、撮像装置による良好な撮像結果を得られることとなる。
【0168】
上記では、時間(t1〜t2)の新たな注入速度を一定としたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、次のように種々の注入パターンを採用することができる。
【0169】
図15(A)は、上記説明のとおり、時間t1後の新たな注入速度を一定としたものである。
【0170】
図15(B)は、時間t1〜t2の間の前半に速度のピークがある例を示している。この例では、具体的には、時刻t1′までは、時間の経過とともに注入速度が単調増加(直線的であってもよいし、曲線的であってもよい)し、その後は、時間の経過とともに注入速度が単調減少(直線的であってもよいし、曲線的であってもよい)している。
【0171】
なお、ピークとなる時刻t1′は、時間t1〜t2の中間より前半であってもよいし、ほぼ中間であってもよいし、後半であってもよい。
【0172】
図15(C)は、注入速度が時間の経過とともに段階的に変わる例を示している。時間t1〜t2に、2つ、3つ、4つまたは5つ以上の複数のフェーズが設定されている。各フェーズにおける注入速度は、一定であってもよいし、時間とともに増加または減少するものであってもよい。
図15(C)では、時刻t1〜t2の間の前半に速度のピークがある例を示しているが、
図15(D)のように、後半に速度のピークが来るようなパターンとしてもよい。
【0173】
(注入速度の上限検出)
図16に示すように、時間t1後に新たな注入速度を計算した際(ここでは
図15(B)のようなパターンを例示する)、計算された新たな速度が、予め設定された所定の速度上限値Vmaxを超過しているか否かを判定するステップを実施してもよい。例えば、造影剤を注入する部位や、使用するカテーテル等によっては、注入速度が速すぎると血管や臓器を損傷させたり、カテーテル先端が体内で勢い良く動いてしまうといった可能性もあり得る。そこで、このような場合には、計算された速度と速度上限値Vmaxとの比較を行い、設定される注入速度がそれを超えないようにするようにしてもよい。こうすることで、上記問題を防止することができる。
【0174】
なお、そのような判定は、コンソール150により自動的に行われるようになっていてもよい。コンソール150は、上限値を超えている場合に、アラートを発するように構成されていてもよい。アラートの一態様としては、ディスプレイにメッセージやアイコン等を表示するようなものであってもよい。それと併せて、または別個独立に、音または音声によるアラートを発してもよい。また、コンソール150は、上限値を超えない範囲で、注入速度を設定するように構成されていてもよい。
【0175】
また、上記における速度上限Vmax(速度リミット)は、種々の観点から適宜設定しうるものであるが、一例として、その速度で注入した場合に想定される薬液の圧力が所定の上限値(圧力リミット)以下となるような値に設定されてもよい。すなわち、設定最大圧力を上回らない速度が自動的に設定される構成となっていてもよい。
【0176】
(注入条件記録)
上述したような実施形態によれば、操作者が一旦設定した薬液の注入条件が、実際の薬液注入の状況に応じて装置により自動的に変更されることとなる。したがって、薬液注入装置は、実施した注入条件のデータ(例えば
図13のような注入パターン)を所定の記憶領域に保存するように構成されていてもよい。
【0177】
一例として、コンソール内に設けられたハードディスクやメモリといった記憶装置にデータを保存してもよい。あるいは、薬液注入装置が、外部にそのようなデータを送信する機構を有していてもよい。例えば、有線または無線のLANを経由して、他の医療機器および/またはコンピュータにデータが送られ、それら医療機器および/またはコンピュータに記憶される構成も考えられる。LANにかぎらず、インターネット等の通信網を介して、他の医療機器および/またはコンピュータにデータが送られてもよい。
【0178】
(GUIの一例)
上記のような注入条件の設定方式をアンギオグラフィ検査用のコンソールで使用する場合、例えば、
図17のようなGUIを利用することも可能である。このGUIは、基本的には
図10や
図8に示したものと類似しているが、所定の部位アイコン(例えば703a)を選択した場合に、予めプログラムされた注入量(6ml)と注入時間(3.0sec)が自動的に表示され、また、それらに基づいて計算された注入速度(2.0ml/sec)が表示されている。
【0179】
ここで、注入量および注入時間については、それぞれ、数値を変更できるように構成されていてもよい。例えば、アイコンを選択すると、テンキーが表れそれを操作することにより数値を入力できるようになっていてもよい。また、カーソル等により数値を増加または減少させることができるように構成されていてもよい。
【0180】
また、コンソール150が音声認識機能を有しており、音声認識により操作者の声の認識してデータの入力、変更および/または確認が行える構成であることも好ましい。
【0181】
上記方式の薬液注入では、前述のとおり、注入の途中で注入速度が変わることになる。そこで、
図18に示すように、ディスプレイ上に速度インジケータ715vが表示されており、この速度インジケータ715vがリアルタイムで現在の注入速度を示すような構成としてもよい。速度インジケータ715vとしては、どのような画像であっても構わないが、例えば複数のセグメントを配列したようなものであってもよい。
【0182】
9.医用検査システム
本発明の一形態に係る薬液注入システムは、医用検査システムの一部を構成するものであってもよい。
図11は、医用検査システムの一例を模式的に示す図である。この医用検査システムは、ネットワーク上に接続された次のような構成要素を備えている:
−薬液注入システム500
−病院情報システムであるHIS(Hospital Information System)901
−放射線科情報システムであるRIS(Radiology Information System)902
−画像保存サーバであるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)903
−データ処理装置である画像ビューワ904
−情報の出力を行うプリンタ905、等
【0183】
なお、上記構成はあくまで一例であって、図示されている全ての要素が本発明に必須というわけではない。
【0184】
各機器の接続は、例えば、LAN(Local Area Network)、専用線、インターネット回線などの通信回線を介して行われてもよい。また、この医用検査システムは、デジタル医用画像に関する標準規格であるDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠したものであってもよい。
【0185】
撮像装置の制御ユニットは例えば次のような機能の少なくとも1つを有するものであってもよい:
−取得した画像に対して識別情報(画像ID)を付与する、
−取得した画像に対して撮像時刻情報を付与する、
−患者の透視画像のデータを外部に送信する、
−実施した透視撮像(一回の検査)における曝射時間のデータを外部に送信する、
−実施した透視撮像(一回の検査)における曝射量のデータを外部に送信する、
−実施した透視撮像の識別情報を外部に送信する、
−任意のデータを、HIS、RIS、PACSの少なくともいずれかに送信する、
−任意のデータを、薬液注入装置に送信する、
−任意のデータを、画像ビューアに送信する、
−任意のデータを、プリンタに送信する。
【0186】
HIS901は、電子カルテシステム、オーダエントリーシステム、在庫管理システム医事会計システム等を統合した院内システムである。もっとも、これらのうちの一部をHISから独立したシステムとして構築してもよい。
【0187】
会計システムは、例えば、当該システムが設置されている病院内などにおける患者が受けた検査費用等について取り扱うものであってもよい。在庫管理システムは、例えば、撮像装置で消費される部材や、薬液注入装置で消費される部材(例えば造影剤シリンジや生理食塩水シリンジ等)の在庫について管理するものであってもよい。
【0188】
RIS902は、例えば、患者に対して撮像を行うための撮像オーダデータを管理するものであってもよい。この撮像オーダデータは、例えば次のような情報の少なくとも1つを含むものであってもよい:
−固有の識別情報である撮像作業ID
−透視撮像装置の識別情報
−患者の識別情報
−撮像を実施した日時、等
【0189】
PACS903は、患者の透視画像データを保存するためのものである。PACS903は、一例で、専用のコンピュータプログラムが実装されているデータベースサーバとして構成されていてもよい。PACS903は、次のような機能の少なくとも1つを有するものであってもよい:
−撮像装置から受信した画像データを保存する
−ワークステーション(画像ビューア)に対して保存している所定のデータを送信する
−接続されている所定の画像閲覧装置(不図示)に対して保存している所定のデータを送信する、等
【0190】
画像ビューア904は、一例でワークステーションとして構成されていてもよく、例えば、透視画像等を閲覧するのに使用されるものであってもよい。
【0191】
このワークステーションは、一例でコンピュータ等から構成され、具体的には、コンピュータ本体と、その内部に設けられた制御ユニットと、記憶デバイスと、表示デバイスと、入力装置等を備えるものであってもよい。なお、制御ユニットや記憶デバイスの配置位置は特に限定されるものではなく、コンピュータ本体の内部または外部のいずれに配置されていてもよい。表示デバイスは、制御ユニットにより制御されて、検査データや撮像画像などの各種のデータを表示する。表示デバイスは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などにより構成される。入力装置としては、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティックなどの任意のデバイスが挙げられる。表示デバイスがタッチ式ディスプレイである場合には、該タッチパネル式ディスプレイが入力装置の役割も兼用することとなる。記憶部デバイスは、各種のデータを記憶する。記憶部デバイスは、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成されてもよい。
【0192】
他の形態においては、画像ビューワは、タブレット端末のような携帯可能なデバイスであってもよい。この携帯可能なデバイスは、筐体内にプロセッサ部、メモリ、記憶デバイス等が内蔵され、一例でタッチパネル式であるディスプレイに所定の情報を表示する。
【0193】
プリンタ905は、ネットワークを介してシステム内の各機器と接続されている。例えば、薬液注入システム500に備わる機器からの指令を受けて、所定の情報が紙媒体にプリントアウトできるように構成されていてもよい。他の形態では、例えば、画像ビューア904からの指令を受けて、所定の情報が紙媒体にプリントアウトできるように構成されていてもよい。
【0194】
プリンタ905のネットワークへの接続または他の機器への接続は、有線または無線方式のいずれであっても構わない。プリンタの使用に関し、例えば:
−注入した結果をプリントアウトしてもよい。
−
図13のような「時間」・「量」優先注入方式における実際に使用した注入条件のグラフまたは数値データをプリントアウトしてもよい。
【0195】
医用検査システムに関し、例えば:
−注入した結果が、ネットワーク経由でカルテ情報に関連付けられてもよい。具体的には、例えば、そのような関連付けにより、薬剤請求が間違いなく確実に実施されるようになっていてもよい。また、血管造影の記録の一部として造影剤投与履歴が保存されてもよい。
−ネットワークに入ることで、透視画像、身体モニタ情報(カテラボ)、注入情報の1つまたは複数を一元的にモニタで把握し、治療や画像診断の総合判断を迅速・確実に実施できる。
【0196】
(造影剤情報の利用例)
また、HISの在庫管理システムに関し、次のような構成としてもよい。すなわち、在庫管理システムにおいては、(a)どの造影剤がどの程度使用され、造影剤の在庫量がどのような状況になっているか、および/または、(b)その状況に基づいて所定の造影剤についての補充の必要が否か等がシステムによって自動的に判定されるものであってもよい。
【0197】
上記の様な判定は、例えば、造影剤の名称等(造影剤識別情報)、造影剤の注入総量、造影剤の注入時間、及び造影剤の注入速度(単位時間当りの注入スピード)等の情報に基づいて、行われるものであってもよい。このような造影剤に係る情報は、薬液注入装置からHISに対して直接送信されてもよいし、他の1つまたは複数の機器を経由して送信されるようになっていてもよい。
【0198】
(検査情報の利用例)
また、検査で使用したカテーテルの情報に関し、次のような構成としてもよい。すなわち、検査で使用した1つまたは複数のカテーテルについての情報を、医用検査システム内の所定の記憶領域に記憶するようにしてもよい。カテーテルについての情報としては、例えば、次のようなものを利用可能である:
−カテーテルの種類(識別情報)
−直径(フレンチ)等のサイズ情報(カテーテルの太さ情報)
−使用本数、等。
【0199】
カテーテルの情報は、カテーテル名称テーブルのような表形式で保存されてもよい。また、カテーテルの情報が、例えば、検査で用いた薬液注入装置の情報に関連付けて保存されても良い。また、カテーテルの情報が、実施した注入プロトコルの情報に関連付けて保存されてもよい。
【0200】
薬液注入装置としては、1つまたは複数のディスプレイにそのようなカテーテルと注入プロトコルとの対応付けに関する情報(一例で表形式)を表示するように構成されていてもよい。また、所定の注入プロトコルが選択された場合に、その注入プロトコルに関連付けられたカテーテル(例えば、その注入プロトコルに推奨されるカテーテル、あるいは、前回その注入プロトコルで使用されたカテーテル)をディスプレイに表示するように構成されていてもよい。これにより、医師または医療従事者は、その注入プロトコルで使用するべきカテーテルを知ることが可能となる。
【0201】
〔CT用の薬液注入装置等〕
本発明は、アンギオグラフィ用の薬液注入装置に必ずしも限定されるものではない。例えば、
図19、
図20に示すような薬液注入装置にも適用可能である。
【0202】
薬液注入装置D100は、可動式スタンドD111の上部に回動自在に保持された二筒式の注入ヘッドD110を備えている。この注入ヘッドD110は、各凹部D120aに対して、一例として、シリンジのシリンダフランジおよびその近傍を保持するシリンジアダプタS121、S122を介してシリンジが装着される。
【0203】
コンソールD150は、一例で、ケーブルD102により注入ヘッドD110に接続されている。表示ユニットD151はタッチパネル式ディスプレイである。操作パネルD159としては複数の物理ボタンが配置されていている。例えば、コンソール正面にホームボタン(物理ボタン)が設けられており、このホームボタンを押すと、画面上に、複数のアイコンが配列されたホーム画面が表示されるように構成されていてもよい。ハンドユニットD157は、コンソールD150に有線接続され、作業テーブル上などで使用される。
【0204】
注入ヘッドD110には、2つのシリンジD200C、D200Pが並列に取外し自在に装着されてもよい。以下の説明では、シリンジ2D00C、D200Pを区別せずに単に「シリンジD200」ということもある。シリンジD200は、中空筒状のシリンダ部材(外筒などとも言う)D221と、そのシリンダ部材D221にスライド自在に挿入されたピストン部材(プランジャ部材などとも言う)D222とを有している。シリンジD200としては、例えば、CT用、MRI用のものを使用することができる。その耐圧性能は、一例で、1.0MPa以上または1.5MPa以上などであってもよい。シリンダ部材D221は、その基端部にシリンダフランジD221aが形成されるとともに先端部に導管部2D21bが形成されたものであってもよい。ピストン部材D222をシリンダ部材D221内に押し込むことにより、シリンジ内の薬液が導管部D221bを介して外部に押し出される。
【0205】
シリンダ部材D221の少なくとも薬液(液体)が収納される部分は、内部の薬液の残量を視認できるように、透光性を有するもの、すなわち透明または半透明であるのが好ましい。シリンダ部材の外周面には、薬液の残量を表示し得る目盛りが付されていてもよい。シリンダ部材の最大容量(言い換えればシリンジの最大容量)は、特に限定されず、収納される薬液等の種類や用途によって適宜決定されるが、造影剤注入においては50ml〜200ml程度のものが多い。もっとも、これに限定されるものではなく、10ml、20ml〜500ml程度のものであってもよい。シリンダ部材221の外径は、その容量にも依存するが、例えばφ20mm以上、φ30mm以上、φ35mm以上、φ45mm以上などであってもよい。シリンダ部材221の長さ(基端のフランジ部分から先端の突出部分まで)は、100mm以上、150mm以上、170mm以上、200mm以上などであってもよい。
【0206】
ピストン部材D222の先端のガスケット部分は、シリンダ部材D221内で軸方向に摺動するものような弾性材料であれば特にその素材は限定されるものではない。一例で、弾性材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマー等を利用してもよい。ガスケット部分の外周部に、1つまたは複数のリング状のシール部材が設けられていてもよい。シール部材は、例えばOリングを利用できるが、これに限定されるものではない。
【0207】
シリンジD200の一部(特には、シリンダ部材D221の一部)に、1つまたは複数のICタグD225が付されていてもよい。ICタグに関しては、上記説明で述べた事項の一部または全部をこの種の薬液注入装置においても適用することができる。
【0208】
(
図20の注入ヘッド)
注入ヘッドD110は、一例として前後方向に長く延びるような筐体を有しており、この筐体の上面先端側に、それぞれシリンジD200C、D200Pが載せられる2つの凹部D120aが形成されたものであってもよい。凹部D120aは、シリンジ保持部として機能する部分である。凹部D120aに対しては、シリンジD200が直接装着されてもよいし、または、所定のシリンジアダプタを介して装着されてもよい。
【0209】
シリンジアダプタ(不図示)は、シリンジを個別に保持するものであってもよいし、2本のシリンジを一緒に保持するものであってもよい。
【0210】
注入ヘッドD110は、2系統のピストン駆動機構130を有していてもよい。その他、上記説明で述べたような各種のセンサ等を搭載していてもよい。ピストン駆動機構130のラム部材は、その先端部にピストンフランジを保持する1つまたは一対の係止爪を保持するものであってもよい。ラム部材を覆う蛇腹状のカバーが設けられていてもよい。
【0211】
シリンジにICタグD225が付されている場合には、注入ヘッドD110は、
図3に示すように、同ICタグD225の情報を読み取るおよび/または同ICタグD225に情報を書き込むリーダ/ライタ145を有していてもよい。このリーダ/ライタ145は、シリンジD200が装着される凹部D120aに設けられていてもよい。なお、リーダ/ライタ145は、ICタグD225の情報を読み取る機能のみを有するものであってもよい。
【0212】
(種々の変更例)
以上、本発明について幾つかの形態を参照して説明したが当然ながら、本明細書で開示する技術事項はその内容が相反しないかぎり適宜組み合わせることができる。また、本発明は上記内容に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0213】
(p1)情報記憶媒体であるカード媒体から薬液注入装置に注入条件に関するデータを読み込んでもよい。情報記憶媒体としては各種製品を使用することが可能である。注入条件に関するデータは、外部のデータベースサーバに記憶されたものをオンラインでダウンロードすることも可能である。このようなデータとしては、時間・量優先の注入条件設定方式を実現するためのGUIデータ、および/または、検査部位に対応した時間・量の数値データ等であってもよい。
(p2)装着される薬液シリンジの造影剤の種類を判定することで造影剤の種類の入力操作を無用とし、作業負担を軽減することが可能である。
【0214】
薬液注入装置およびそれを含むシステム等については、上記内容に限定されるものではなく、更に例えば下記のように種々変更可能である:
(p3)シリンジ等のICタグが、そのシリンジを加温するかどうかの情報を含んでいてもよい。
(p4)シリンジ等のICタグから読み取られた情報の少なくとも一部の項目をプリンタ等を用いて印刷する。または、シリンジ等のICタグから読み取られた情報の少なくとも一部の項目と薬液の注入履歴データとを少なくとも含むデータを、プリンタ等を用いて印刷する。
(p5)使用後のシリンジが廃棄されたかどうかの情報をシステム内の所定の管理サーバで管理する。
(p6)薬液注入装置のコントローラユニットの機能により、注入中の薬液圧力の推定値を、ロードセルとモータ電流との両方を用いて算出してもよい。
(p7)注入プロトコル設定用画面において、画面上に所定のヘルプボタンが表示され、それを押すと、動作や画面上の表示についてのヘルプテキスト、ペルプ画像、音声としてのヘルプガイダンス、またはこれらの組合せが表示されるように、薬液注入装置の制御ユニットが構成される。
(p8)画面において表示される各種数値データの単位は適宜変更可能である。例えば、圧力については「Kg/cm
2」と「psi」と「MPa」のうち少なくとも2つを切替可能であってもよい。
(p9)コンソールの画面の一部に、造影剤名称(製品名など)を表示させる。薬液注入装置のコンピュータがこのような機能を有する。
(p10)コンソールの画面の一部に、そのコンソールが他の機器の接続されているか、または、接続されかつ連動する状態となっているかなどのステータスを表示する。薬液注入装置のコンピュータがこのような機能を有する。
【0215】
(p11)空のシリンジに薬液を吸引する方式の場合では、薬液注入装置は次のように構成されてもよい:
−シリンジを注入ヘッドにセットして、吸引チューブを薬液ボトル等に接続した状態で、所定のボタンを押すとガスケット(ピストン部材、プランジャ)が前進してエア抜きを行う。ここで、所定のボタンとしては具体的な一例でオートフィルボタンであってもよい。
−次いで、薬液の吸引を行う。
−このステップとしては、まず、薬液を途中まで吸引する(すなわち、目的量の全量を引くのではなく、一部のみを引く)。
−次いで、再度エア抜きの動作を行う。
−その後、目的量となるまで薬液の吸引を継続する。この吸引は、上記最初の吸引速度と同じであってもよいし、そより速い速度であってもよい。その後、シリンジのピストン部材を少量前進させることで準備が完了する。
【0216】
(p12)注入ヘッドに傾斜センサが内蔵されている薬液注入装置としてもよい。この場合、制御ユニットは、次の処理の一部または全部を行う:
−注入ヘッドが略垂直となっている状態(言い換えれば、シリンジが搭載されるヘッド前方が鉛直上方を向いた状態)かどうかを判定する。
−注入ヘッドが略垂直となっている状態の場合、オートフィル動作の実施を許容する。そうでない場合にはオートフィル動作は禁止する。
−注入ヘッドが水平姿勢もしくは前方が相対的に低くなった姿勢かどうかを判定する。
−これらの姿勢であって場合、薬液の注入動作を許容する。そうでない場合には、注入動作は禁止する。
【0217】
(p13)延長チューブからのエア抜きのための動作としては、Aシリンジ(造影剤)側のピストン駆動機構を動作させ、次いで、Bシリンジ(生理食塩水)側のピストン駆動機構を動作させさせてもよい。あるいは、Aシリンジ(造影剤)側のピストン駆動機構とBシリンジ(生理食塩水)側のピストン駆動機構とを同時に動作させさせてもよい。エア抜きの動作としてオートパージと呼ばれるような機能が備わっていてもよい。
【0218】
(p14)注入ヘッドとコンソールとは、ケーブルで接続されてもよいが、無線方式の通信ユニット等を介して接続されていてもよい。この場合、通信ユニットは、注入ヘッドに外付けされてもよいし、内蔵されてもよい。同様に、通信ユニットは、コンソールに外付けされてもよいし、内蔵されてもよい。
(p15)有線または無線のリモートコントローラを用いて、検査室の外部から薬液注入装置の所定の動作をコントロール可能な薬液注入装置。この場合、無線の方式としては、赤外線を用いる方式であってもよいし、無線LAN、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を用いるものであってもよい。
(p16)コントロールされる動作としては、例えば、装置の電源オン/電源オフ等をはじめとしてどのようなものであっても構わない。他の例としては、注入ヘッドの任意の動作の開始および/または停止がリモートコントローラでコントロールされてもよい。
(p17)コンソールを小型化したようなコントロールユニット(例えば1つまたは複数のボタンおよび/またはディスプレイを有するようなものであってもよい)が、注入ヘッドの近傍に配置された薬液注入装置。このようなコントロールユニットは、一例で、注入ヘッドと一緒に可動式スタンド上に保持されてもよい。または、例えばこのようなコントロールユニットは、注入ヘッドと一緒に天井懸垂式のアームに保持されてもよい。
【0219】
なお、本明細書で云う各種の構成要素(デバイス、装置、手段、部、ユニットなど)は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていてもよい。一つの構成要素が複数の部材で形成されていてもよい。ある構成要素が他の構成要素の一部であってもよい。ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していてもよい。
【0220】
ここで、本発明において、制御ユニット(コンピュータユニット、制御回路、プロセッサユニット)内の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、ハードウェアにより実現するものでも、ソフトウェアにより実現されるものでも何れでも構わない。例えば、ある構成要素が、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより実現された処理装置、これらの組合せ、等として実現することができる。
【0221】
機器を相互接続するためのネットワークシステムは、様々なものを利用でき、例えば、LAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、CAN(キャンパスエリアネットワーク)、WWW(ワールドワイドウェブ)等、または、それらのうち任意の組合せであってもよい。
【0222】
本出願は以下の発明を開示する(なお、括弧内の符号は本発明を何ら限定的に解釈するものではない):
1.ピストン駆動機構を動作させてシリンジ内の薬液を所定の注入条件に従って押し出す薬液注入装置の制御方法であって、前記薬液は少なくとも造影剤であり、
(a1)所定の1つのフェーズにおける注入条件を設定するための(i)そのフェーズで注入すべき造影剤の注入量の情報と(ii)そのフェーズの注入時間の情報とに関する操作者からの入力を受け付けるステップと、
(a2)入力された注入量および注入時間の情報に基づく注入条件を作成するステップと、
(a3)その注入条件に従って薬液注入を開始するステップと、
(a4)薬液注入中、造影剤の注入速度が所定の基準値に達したかどうかを判定するステップと、
(a5)注入速度が前記所定の基準値に達した場合に、(i)注入すべき造影剤残量と、(ii)当初設定された前記注入完了時間までの残時間とを求めるステップと、
(a6)前記造影剤残量と前記残時間とに基づいて、前記残時間内に前記造影剤残量をシリンジから押し出し終えるための新たな注入速度を計算するステップと、
(a7)以降、その新たな注入速度に従って薬液注入を継続するステップと、
を有する薬液注入装置の制御方法。
【0223】
2.前記(a4)のステップでは、前記ピストン駆動機構のアクチュエータの出力パラメータを検出する、上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0224】
3.前記ピストン駆動機構が、アクチュエータとしてモータを有するものであって、前記(a4)のステップでは、前記出力パラメータとして前記モータの回転速度を検出する、上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0225】
4.前記(a6)のステップで再設定される新たな注入速度が、一定である、上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0226】
5.前記(a6)のステップで再設定される新たな注入速度が、速度が互いに異なる複数のフェーズを有する、上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0227】
6.前記(a6)のステップで再設定される新たな注入速度が、時間の経過とともに上昇するパターン、減少するパターン、およびそれらの組合せのパターンの少なくとも1つを含む、上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0228】
7.さらに、
(a8)前記(a5)のステップで再設定される新たな注入速度が、所定の速度リミットを超えているか否かを判定するステップを有する、
上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0229】
8.前記所定の速度リミットは、その速度で薬液を注入した場合の薬液の圧力が所定の上限値を超えないような値に設定されている、
上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0230】
9.さらに、
(a9)薬液の注入中、薬液注入速度をリアルタイムにディスプレイに表示するステップを有する、
上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0231】
10.シリンジ内の薬液を所定の注入条件に従って押し出すピストン駆動機構(130)と、
そのピストン駆動機構に電気的に接続された制御ユニット(153)と、
を備える薬液注入装置であって、
前記薬液は少なくとも造影剤であり、
前記制御ユニット(153、144)は、
(a1)所定の1つのフェーズにおける注入条件を設定するための(i)そのフェーズで注入すべき造影剤の注入量の情報と(ii)そのフェーズの注入時間の情報とに関する操作者からの入力を受け付け、
(a2)入力された注入量および注入時間の情報に基づく注入条件を作成し、
(a3)その注入条件に従って薬液注入を開始し、
(a4)薬液注入中、造影剤の注入速度が所定の基準値に達したかどうかを判定し、
(a5)注入速度が前記所定の基準値に達した場合に、(i)注入すべき造影剤残量と、(ii)当初設定された前記注入完了時間までの残時間とを求め、
(a6)前記造影剤残量と前記残時間とに基づいて、前記残時間内に前記造影剤残量をシリンジから押し出し終えるための新たな注入速度を計算し、
(a7)以降、その新たな注入速度に従って薬液注入を継続する、
ように構成されている、薬液注入装置。
【0232】
11.前記制御ユニットは、
前記(a4)の動作で、前記ピストン駆動機構のアクチュエータの出力パラメータを検出するように構成されている、上記記載の薬液注入装置。
【0233】
12.前記ピストン駆動機構が、アクチュエータとしてモータを有するものであって、
前記制御ユニットは、
前記(a4)の動作で、前記出力パラメータとして前記モータの回転速度を検出するように構成されている、上記記載の薬液注入装置。
【0234】
13.前記制御ユニットは、
前記(a6)の動作で、新たな注入速度を一定速度として設定するように構成されている、上記記載の薬液注入装置。
【0235】
14.前記制御ユニットは、
前記(a6)の動作で、新たな注入速度を、速度が互いに異なる複数のフェーズを有するものとして設定するように構成されている、上記記載の薬液注入装置。
【0236】
15.前記制御ユニットは、
前記(a6)の動作で、新たな注入速度を、時間の経過とともに上昇するパターン、減少するパターン、およびそれらの組合せのパターンの少なくとも1つを含むものとして設定するように構成されている、上記記載の薬液注入装置。
【0237】
16.前記制御ユニットは、さらに、
(a8)前記(a6)の動作で、新たな注入速度が所定の速度リミットを超えているか否かを判定する、
ように構成されている、上記記載の薬液注入装置。
【0238】
17.前記所定の速度リミットは、その速度で薬液を注入した場合の薬液の圧力が所定の上限値を超えないような値に設定されている、
上記記載の薬液注入装置の制御方法。
【0239】
18.前記制御ユニットは、さらに、
(a9)薬液の注入中、薬液注入速度をリアルタイムにディスプレイに表示させる、
ように構成されている、上記記載の薬液注入装置。