(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部および前記凹部は、それぞれ円筒形であり、それぞれの中心を軸心として、前記第1通信ブロックと前記第2通信ブロックが相対回動自在に、前記凸部が前記凹部に嵌入されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の近接無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発明者が得た知見>
上記特許文献1においては、通信を行うコイルと、給電を行うコイルとが近接して同一平面上に設けられている。これは装置の作成の容易性を鑑みたものと推察される。
ところで、電磁界結合を用いた非接触通信は、低い電力(数mW程度)で高速大容量のデータ転送が可能という特徴を有する。
【0010】
一方、給電アンテナでは、そこに大電力(数十W程度)を流して、一方の装置から他方の装置に給電するのが一般的となっている。
そのため、特許文献1に示す構成において、コスト削減や装置のサイズダウンを狙ってフェライト材を用いないこととした場合には、通信アンテナを用いた通信が、給電アンテナを用いた当該通信に比して大電力の電力送信の影響を受けて、失敗する可能性が高いという問題があることに発明者らは気づいた。例えば、電力送信が、データ通信に対するノイズになったり、通信アンテナと給電アンテナとが不要に結合したりして、データ通信ができなかったりといった事態が発生する可能性がある。これは、2種類のデータ通信を行う場合に、一方で大電力を用いてデータ通信を行う場合に、他方のデータ通信に対して影響を与えることになる。
【0011】
特許文献1に記載のカメラ装置を、例えば、防犯用のカメラとして用いる場合などには、通信に失敗し、撮像データの転送に失敗すると、防犯上問題があると言わざるを得ない。
そこで、発明者らは二つの筐体からなる装置において、一方の筐体から他方の筐体に電力を非接触の近接無線通信により送信しつつ、データ転送も非接触の近接無線通信により送信できる手法を考案した。
【0012】
以下、本発明に係る近接無線通信装置の一実施態様について図面を用いながら説明する。
<実施の形態1>
<構成>
図1(a)は、近接無線通信装置100の外観図である。また、
図1(b)は、近接無線通信装置100の分解斜視図である。
【0013】
図1(a)および
図1(b)に示すように、近接無線通信装置100は、第1筐体110と第2筐体120とからなり、第1筐体110の円柱状の凸部130が、第2筐体120の円柱状に凹入して形成される凹部140に嵌合して成る。第2筐体120は、カメラ220を備える。近接無線通信装置100は、例えば、第1筐体110の底面を施設の天井等に固着させて、監視カメラ等として用いることができる。
【0014】
第1筐体110の回動軸150は、
図1には図示していないが、第1筐体110内部のモーターに接続され、モーターが駆動することにより回動する。その結果、回動軸150が第2筐体120に嵌合し、接着されることにより、第2筐体120が第1筐体110に対して回動することとなる。近接無線通信装置100では、第2筐体120は、第1筐体110に対して、回動軸150のいずれの回転方向にも無限回転できるように構成されている。したがって、近接無線通信装置100は、周囲360度を撮像可能である。
【0015】
図2は、
図1における近接無線通信装置100を、第2筐体120の円形の天面の中心を通るA−A'線で切断した場合の断面図である。
図2に示すように、第1筐体110は、多層基板構造を有し、その第1層216a上にAC電源、イーサネット(登録商標)、電源制御部213、ネットワーク部214が配されている。また、第2層216b上には給電部212が、第3層216c上には受信部211が、第4層216d上には給電アンテナ112(
図2の112a、112b)が、第5層216e上には通信アンテナ111が配されている。第1筐体110の各構成は、
図2に示す接続関係で接続されている。
図1、
図2に示すように、通信アンテナ111、給電アンテナ112は回動軸150を中心とするループアンテナである。
【0016】
第2筐体120も、多層基板構造を有し、第2筐体120の底面(第2筐体120が第1筐体110に対向する対向面)に受電アンテナ122a、122bを、底面の凹部140の底面(へこみ部分)に通信アンテナ121が配されている。第2筐体120の第1層224a上には送信部221が、第2層224b上には受電部222が、第3層224c上にはカメラ制御部223が、第4層224d上にはカメラ220が配されている。第2筐体120の各構成は、
図2に示す接続関係で接続されている。
図1、
図2に示すように、通信アンテナ121、受電アンテナ122は回動軸150を中心とするループアンテナである。
【0017】
第1筐体110の凸部(突部)130についてその突出部分と裾部、および、第2筐体120の凹部140についてその凹入部と非凹入部で、所定の距離Gdp(ここでは10mm程度)の高低差を設ける。すなわち、第1筐体110において、通信アンテナ111と給電アンテナ112それぞれが配される平面は、
図2の高さ方向(回動軸150の軸方向)で、所定の距離Gdpだけ離間するように、通信アンテナ111と給電アンテナ112とを配している。同様に第2筐体120において、通信アンテナ121と受電アンテナ122それぞれが配される平面は、
図2の高さ方向(回動軸150の軸方向)で、所定の距離Gdpだけ離間している。
【0018】
ここで、通信アンテナ111、121の形状、構成例を
図4を用いて、給電アンテナ112、受電アンテナ122の形状、構成例について
図5を用いて説明する。
図4は、通信アンテナ111、121の形状の一例を示す図である。通信アンテナ111、121は、ここでは、カメラからの撮像データを伝送するために用いられるアンテナであり、例えばFullHD(ex. 横1920×縦1080×16bit(YUV420)×60fps)のRAWデータであれば約2Gbpsでのデータ伝送用に用いる。送信側および受信側の通信アンテナ111と121とは、同じ形状、巻き数のものが使用可能である。
図4では、コイル型のアンテナを一例として記載しており、その形状は、縦・横ともに20mm程度の大きさで、箔幅100μmの配線を一定の間隔を開けながら巻き数3の矩形の形状をベースに角を45度ずつ折る形状を採用している。このような形状を採用することで非接触の近接無線通信により高速な通信を可能としている。ただし、通信用アンテナには上記のような八角形状の矩形だけでなく、円形や方形、多角形など様々な形状を採ることができ、使用する伝送レートや通信距離等に応じ、また通信特性を考慮して形状や大きさ、箔幅や基板材質等を決定するものであるため、これに限るものではない。
【0019】
図5は、実施の形態1における近接無線通信装置100の給電アンテナ112および受電アンテナ122の形状の一例を示す図である。
給電アンテナ112、受電アンテナ122は、第1筐体110から第2筐体120に向けて電力を送信するためのアンテナであり、ここでは、第2筐体120に含まれるカメラ220を含む各部の動作電力を送受信するために用いている。一般的には、比較的低い周波数で電力を送受信するため、1Gbps以上のデータ通信アンテナに比べて、より大きな径のアンテナを用いるのが一般的である。
図5では、一例としてコイル型アンテナを記載しており、外径100mm程度、内径70mm程度の円形状に巻き、巻き数6として記載しているが、使用する周波数や給電距離や給電電圧等に応じ、またアンテナ特性を考慮して形状や大きさを決定するものであるため、これに限るものではない。
【0020】
なお、
図4に示す通信アンテナ111、121と
図5に示す給電アンテナ112、受電アンテナ122は、上述した寸法からもわかるように、近接無線通信装置100の天頂側から平面でみた場合に、給電アンテナ112、受電アンテナ122の内部に通信アンテナ111、121が収まるように、それぞれの寸法が定められる。つまり、本実施の形態においては、通信アンテナ111、121の外径は、給電アンテナ112、122の内径よりも短くなる。
【0021】
ここから、近接無線通信装置100の機能構成について説明する。
図3は、近接無線通信装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、近接無線通信装置100の第1筐体110は、通信アンテナ111と、給電アンテナ112と、受信部211と、給電部212と、電源制御部213と、ネットワーク部214と、モーター215とを備える。
【0022】
受信部211は、通信アンテナ111を介して、第2筐体120から送信されてきたカメラ220により撮像された撮像データを受信し、ネットワーク部214に伝達する機能を有する。
給電部212は、電源制御部213からの電力の供給を受けて、給電アンテナ112を介して、第2筐体120へ数十Wの電力の送電制御を行う機能を有する。給電アンテナ112から受電アンテナ122に対しては、非接触の近接無線通信により電力が送電されるが、その一種として誘導起電力による送電を行っても良い。
【0023】
電源制御部213は、電源の入力を受け、第1筐体110の各回路へ電源を供給する機能を有する。
ネットワーク部214は、外部のネットワークと接続するためのインターフェースであり、外部のネットワークに受信部211から伝達されたカメラ220の撮像データを送信する機能を有する。
【0024】
モーター215は、
図1に示す回動軸150を右回転および左回転のいずれの回転方向にも無限回転可能に構成されており、図示していない制御部により、予め定められたルーチンに従って、稼働する。なお、モーター215の制御方法については、近接無線通信装置100の用途に応じて様々にあり、ここでは、その詳細は割愛する。このモーター215が稼働することにより、回動軸150が回転し、これに連動して、第2筐体120が、第1筐体110に対して回転する。なお、回動軸150の回動例は一例でありこれに限定されるものではなく、回動軸150を回動させる構成は様々であり、例えば、特許文献1に記載の回動機構を利用してもよい。
【0025】
一方、
図3に示すように、近接無線通信装置100の第2筐体120は、通信アンテナ121と、受電アンテナ122と、カメラ220と、送信部221と、受電部222と、カメラ制御部223とを備える。
カメラ220は、カメラ制御部223からの制御により、近接無線通信装置100の周囲の様子を撮影し、撮影して得られる撮像データを送信部221に伝達する機能を有する。
【0026】
送信部221は、カメラ220から伝達された撮像データを、通信アンテナ121を介して、数mW程度の電力で、第1筐体110に送信する機能を有する。
受電部222は、受電アンテナ122を介して、第1筐体110から送信された電力を受け取り、第2筐体120の各部に給電する機能を有する。なお、受電部222は、受電した電力を蓄積するための蓄電池、あるいは、キャパシタを備えていてもよい。蓄電池ないしはキャパシタを備えていれば、給電を受けていないタイミングでもある程度第2筐体120を稼働させることができる。
【0027】
カメラ制御部223は、撮影の開始や終了などをカメラ220に指示して、カメラ220を制御する機能を有する。なお、この制御はユーザが逐次指示することとしてもよいし、予め定められたプログラムルーチンにより行われてもよい。
図6は、本発明に係る近接無線通信装置100のアンテナ配置に関する思想を示す概念図である。
図6に示す概念図は、
図1〜
図3において示した構成を簡略化したものである。なお、
図6においては、
図4や
図5に示した形ではなく、アンテナも簡略化して示す。
【0028】
図6に示すように、第1筐体110において、通信アンテナ111と給電アンテナ112とは、所定の距離Gdpだけ離間して配されるように構成されている。
同様に、第2筐体120において、通信アンテナ121と受電アンテナ122とは、所定の距離Gdpだけ離間して配されるように構成されている。
図1、
図2に示したように、通信アンテナ111は通信アンテナ121に近接し、受電アンテナ122よりも高い位置(z軸方向で、通信アンテナ121寄りの位置)に存在することになる。
【0029】
つまり、通信アンテナ対の嵌合面と、給電アンテナ・受電アンテナ対の嵌合面とは、z軸方向において、所定の距離Gdpのギャップが存在することになる。これにより、通信アンテナと給電アンテナとを同一平面上に配する場合に比して、通信アンテナ対と給電アンテナ・受電アンテナ対との電気的結合の発生を抑制することができるので、通信アンテナによる通信をより安定して行える。
【0030】
よって、特許文献1のように通信アンテナと給電アンテナとを同一平面に配した場合に比して、通信アンテナの対と、給電アンテナ対とのそれぞれによる非接触通信が他方の非接触通信に対して影響を与えないようにすることができる。特に、小さい電力で行うデータ通信に対する大電力の送信を行う給電のための通信が与える影響を小さくすることができる。つまり、両アンテナ対を同一平面上に配する場合よりも、通信アンテナの対が給電アンテナ対との電磁界の結合の可能性を抑制することができる。したがって、フェライト素材といった磁界を制御するための素子を用いることなく、給電を行いつつも、第1筐体110と第2筐体120との間のデータ通信の精度を向上させることができる。
<動作>
ここで、近接無線通信装置100の動作について簡単に説明する。
【0031】
近接無線通信装置100の電源制御部213からの電力供給を受けた給電部212は、非接触の近接無線通信を用いて、給電アンテナ112を介して、電力を第2筐体120に送信する。
第2筐体120の受電部222は、受電アンテナ122を介して、電力を受信し、受信した電力を第2筐体120の各部に供給する。
【0032】
一方、第2筐体120のカメラ制御部223は、ユーザからの入力や、所定のアルゴリズムに従って、カメラ220に撮影を指示する。
カメラ220は、カメラ制御部223からの指示に従って、撮影を行う。そして、撮影により得られる撮像データを送信部221に伝達する。
送信部221は、カメラ220から撮像データを受け取ると、非接触の近接無線通信を用いて、そのままのデータを、通信アンテナ121を介して、第1筐体110に送信する。なお、撮像データのそのままのデータとは、変調や符号化を施していないデータのことであり、いわゆる(デジタル)ベースバンドデータのことである。
【0033】
受信部211は、送信部221から非接触の近接無線通信により送信された撮像データを、通信アンテナ111を介して受信し、受信した撮像データをネットワーク部214に伝達する。
ネットワーク部214は、接続されている外部のネットワークに受け取った撮像データを、予め定められた方式に従って、符号化、変調して、送信する。送信先の装置は、予め定められている。
【0034】
なお、給電とデータ通信とは同時並行的に実行可能であるが、データ通信に関しては、給電が実行されておらず、受電部222のキャパシタ等に電力が残っていない場合には、送信部221が稼働しないため、データ通信は行われない。
<実施の形態2>
本実施の形態2においては、実施の形態1よりも、さらに通信精度を高めることができる構成について説明する。
【0035】
上記実施の形態1においては、通信アンテナと給電アンテナとを互いに異なる平面に配することで、通信アンテナの通信精度を高めることとしたが、この構成に加え、更なる工夫をすることで、通信アンテナ間と給電アンテナ間との非接触通信が互いに与える影響を抑制し、通信精度を高めることができる構成を示す。
具体的には、少なくとも通信アンテナと給電アンテナとの間に、磁性体を設ける。実施の形態1においては、フェライト材を設けずとも、通信が劣化することを抑制することができると説いたが、更に、通信の確度を向上させたい場合には、本実施の形態2に示すように、磁性体を設けてもよい。以下、その手法を説明する。
【0036】
図7は、実施の形態2に係る近接無線通信装置700の断面図である。
ここでは、実施の形態1の近接無線通信装置100と共通する構成については、同じ符号を付し、説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
本実施の形態2に係る近接無線通信装置700は、実施の形態1と同様二つの筐体、即ち、第1筐体710と第2筐体720とから成る。
【0037】
第1筐体710と第2筐体720とは、第1筐体110と第2筐体120と同様に、回動軸150を介して、互いに回動自在に接続されている。
第1筐体710は、実施の形態1に示した第1筐体110と異なり、更に、磁性体731(731a、731b)、732(732a、732b)、733、734を備える。
また、第2筐体720は、実施の形態1に示した第2筐体120と異なり、更に、741(741a、741b)、742(742a、742b)、743を備える。
【0038】
磁性体731、732、741、742は、円筒状に形成されており、磁性体733、743は、円形の平板状に形成されている。また、磁性体734は、円環状に形成されている。
これらの磁性体は、アンテナ間で発生する磁界の磁力が一方から他方への影響を及ぼさないよう、いわば避雷針のような機能を果たすとともに、渦電流の発生を低減する目的で配される。
【0039】
また、近接無線通信装置700は、第1筐体710と第2筐体720との間であって、給電アンテナ112(112a、112b)と受電アンテナ122(122a、122b)との間に円環状の磁性体735を備え、通信アンテナ111と通信アンテナ121との間に円環状の磁性体736を備える。なお、磁性体735、736は、第2筐体720が第1筐体710に対して回動できるように、第1筐体710と第2筐体720とのうちいずれか一方にのみ接着される。
【0040】
逆に通信アンテナ対や給電アンテナ対との間に磁性体(735、736)を配することによって、そこに磁界を発生しやすくし、通信アンテナ111−121間の結合度合や給電アンテナ112−受電アンテナ122間の結合度合いを強めることもできる。
なお、
図7の断面図では、第2筐体720の凹部から、第1筐体710の凸部に向けて、筐体が少し突出する構成を示しているが、これは、凹部の構成の一例を示すものに過ぎない。
<実施の形態3>
上記実施の形態1、2においては、2対のアンテナ(通信アンテナ対と、受給電アンテナ対)を備える構成例を示した。しかし、近接無線通信装置が備えるアンテナ対は2対に限定しなくともよい。
【0041】
本実施の形態3においては、近接無線通信装置が3対のアンテナを備える構成例を示す。
図8は、実施の形態3に係る近接無線通信装置800におけるアンテナ配置の配置例を示す概念図であり、
図9は、近接無線通信装置800の機能構成図である。
基本的な構造は、実施の形態1に示した近接無線通信装置100と同様であるが、第1筐体から第2筐体に送信するためのアンテナ対と、第2筐体から第1筐体に送信するためのアンテナ対との2種類の通信アンテナを備えている点が異なる。
【0042】
以下、本実施の形態3に係る近接無線通信装置について
図8、9を参照しながら説明する。なお、実施の形態1と共通する機能については、説明を省略する。
<構成>
近接無線通信装置800は、実施の形態1、2と同様に、第1筐体810と第2筐体820とが回動自在に接続して成る。
【0043】
図8は、実施の形態3に係る近接無線通信装置800のアンテナ配置に関する概念図である。
図8に示すように、第1筐体810は、通信アンテナ811と、給電アンテナ812と、通信アンテナ813を備える。本実施の形態3においては、給電アンテナ812は、上記実施の形態1において通信アンテナ111が配されていた位置に配される。そして、通信アンテナ811と、通信アンテナ813は、上記実施の形態1において、給電アンテナ112が配されていた位置に、交互に複数配される。そして、図示していないが、給電アンテナ812の中心、複数の通信アンテナ811、813がなす円の中心を回動軸(
図8におけるz軸が回動軸に相当する)が通る。
図8に示すように、給電アンテナ812が配されている平面と、通信アンテナ811、813が配されている平面とは、実施の形態1、2と同様に、所定の距離Gdpだけ離間している。なお、通信アンテナ811と通信アンテナ813とは、隣接し、同一平面に配されるが、ともに通信に用いる電力は数mW程度であり、互いの通信に与える影響は少ない。なお、
図8において、横線のハッチングを入れている円は、全て通信アンテナ811であり、右斜線のハッチングを入れている円は、全て通信アンテナ813である。
【0044】
また、第2筐体820は、通信アンテナ821と、受電アンテナ822と、通信アンテナ823を備える。本実施の形態3においては、受電アンテナ822は、上記実施の形態1において通信アンテナ121が配されていた位置に配される。そして、通信アンテナ821と、通信アンテナ823は、上記実施の形態1において、受電アンテナ122が配されていた位置に、交互に複数配される。そして、図示していないが、受電アンテナ822の中心、複数の通信アンテナ821、823がなす円の中心を回動軸(
図8におけるz軸が回動軸に相当する)が通る。受電アンテナ822が配されている平面と、通信アンテナ821、823が配されている平面とは、
図8に示すように、また、実施の形態1、2と同様に、所定の距離Gdpだけ離間している。通信アンテナ821と通信アンテナ823とは、隣接し、同一平面に配されるが、ともに通信に用いる電力は数mW程度であり、互いの通信に与える影響は少ない。なお、
図8において、横線のハッチングを入れている円は、全て通信アンテナ821であり、右斜線のハッチングを入れている円は、全て通信アンテナ823である。
【0045】
実施の形態1の
図6と比較すればわかるように、近接無線通信装置100が1種類の通信アンテナを備える構成であったのに対し、近接無線通信装置800は、2種類の通信アンテナを備えており、通信に用いる周波数と給電に用いる周波数との関係から、アンテナの径が給電アンテナのそれよりも小さくなる複数の通信アンテナを、給電アンテナの周囲に配する構成を採ることとなる。
【0046】
なお、
図8における通信アンテナ811と通信アンテナ821は互いに対向し、通信アンテナ813と通信アンテナ823は互いに対向する必要がある。そのため、近接無線通信装置800において回動軸が、通信アンテナ811の中心と通信アンテナ811、813が形成する円の中心とを結ぶ線および通信アンテナ813の中心と通信アンテナ811、813が形成する円の中心とを結ぶ線がなす内角の2倍の角度を一回動角として回動するようにモーター215を制御する。
【0047】
図9は、近接無線通信装置800の機能構成を示す機能ブロック図である。ここでは、
図1に示した近接無線通信装置100と同等の機能を果たす機能部には同じ符号を付し、説明を省略する。
図9に示すように第1筐体810は、モーター215と、通信アンテナ811と、給電アンテナ812と、通信アンテナ813と、受信部911と、給電部912と、送信部913と、ネットワーク部914と、電源制御部915とを備える。
【0048】
受信部911は、通信アンテナ811を介して、第2筐体820から送信されてきたカメラ220により撮像された撮像データを受信し、ネットワーク部914に伝達する機能を有する。
給電部912は、電源制御部915からの電力の供給を受けて、給電アンテナ812を介して、第2筐体820へ数十Wの電力の送電制御を行う機能を有する。給電アンテナ812から受電アンテナ822に対しては、非接触の近接無線通信により電力が送電されるが、その一種として誘導起電力による送電を行っても良い。
【0049】
ネットワーク部914は、外部のネットワークと接続するためのインターフェースであり、外部のネットワークに受信部911から伝達されたカメラ220の撮像データを送信する機能を有する。また、ネットワーク部914は、外部から取得したカメラ220の制御情報を送信部913に伝達する機能を有する。
電源制御部915は、電源の入力を受け、第1筐体810の各回路へ電源を供給する機能を有する。
【0050】
一方、
図9に示すように、近接無線通信装置800の第2筐体820は、カメラ220と、通信アンテナ821と、受電アンテナ822と、通信アンテナ823と、送信部921と、受電部922と、受信部923と、カメラ制御部924とを備える。
送信部921は、カメラ220から伝達された撮像データを、通信アンテナ821を介して、数mW程度の電力で、第1筐体810に送信する機能を有する。
【0051】
受電部922は、受電アンテナ822を介して、第1筐体810から送信された電力を受け取り、第2筐体820の各部に給電する機能を有する。なお、受電部922は、受電した電力を蓄積するための蓄電池、あるいは、キャパシタを備えていてもよい。蓄電池ないしはキャパシタを備えていれば、給電を受けていないタイミングでもある程度第2筐体820を稼働させることができる。
【0052】
受信部923は、通信アンテナ823を介して、第1筐体810から送信されてきたカメラ220の制御情報を受信し、カメラ制御部924に伝達する機能を有する。
カメラ制御部924は、受信部923から受け取った制御情報に基づいて、撮影の開始や終了などをカメラ220に指示して、カメラ220を制御する機能を有する。
<動作>
実施の形態3に係る近接無線通信装置800は、実施の形態1に係る近接無線通信装置100が行う給電動作および撮像データを第2筐体から第1筐体に送信する通信動作に加えて、以下の処理を行う。
【0053】
第1筐体810のネットワーク部914は、外部のネットワークからカメラ220を制御するための制御情報を受信し、送信部913に伝達する。
第1筐体810の送信部913は、伝達された制御情報を通信アンテナ813を介して、非接触の近接無線通信により、第2筐体820に送信する。
第2筐体820の受信部923は、送信部913から送信された、カメラ220を制御するための制御情報を、通信アンテナ813を介して送信する。
【0054】
第2筐体820の受信部923は、受信した制御情報をカメラ制御部924に伝達する。
カメラ制御部924は伝達された制御情報に基づいてカメラ220を制御する。カメラ220で撮像された撮像データは上記実施の形態1と同様に送信部921から第2筐体820に送信される。
【0055】
このように、本実施の形態3に係る近接無線通信装置800は、送信部921から受信部911への撮像データの送信、給電部912から受電部922への給電のための通信、送信部913から受信部923への制御情報の送信という3種の通信を同時並行に行うことができる。近接無線通信装置800において、通信アンテナと給電アンテナ(受電アンテナ)との間に所定の距離Gdpだけ離間されているので、給電のための通信が、データ通信に対する影響を極力抑制することができる。
<変形例>
上記実施の形態に従って、本発明に係る近接無線通信装置について説明してきたが、本発明はこれに限られるものではない。以下、本発明の思想として含まれる各種変形例について説明する。
【0056】
(1)上記実施の形態においては、第2筐体120にモーター215を備える構成としたが、第1筐体110が第2筐体120に対して回動自在に構成されていれば、モーター215は、第1筐体110が備えることとしてもよい。
また、第1筐体110と第2筐体120とが回動するようモーター215を設けることとしたが、手動で回動することとしてもよい。この場合には、回動軸150やモーター215は不要となる。
【0057】
また、回動ではなく、凸部130と凹部140の形状に応じて、嵌合の仕方が変化し、近接無線通信装置100の形状状態が変化するものであってもよい。例えば、凸部130が六角柱であり、凹部140がこれに嵌合するように六角柱状の凹みになるように構成してもよい。そして、第1筐体110と第2筐体120とをユーザの手により抜き差しし、六角柱状の凸部130と六角柱状の凹部140とをユーザの望む形で嵌合するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、凸部と凹部とが、それぞれ、第1筐体と第2筐体の中心に設ける例を示しているが、これもその限りではなく、凸部と凹部の周囲において上記実施の形態に示したアンテナの配置関係を維持できれば、第1筐体や第2筐体それぞれの対向面の端部寄りに凸部や凹部が設けられてもよい。
(2)上記実施の形態においては、近接無線通信装置100の一例として、カメラ220で取得した画像データを通信アンテナを用いて非接触の近接無線通信により送受信し、電力を給電アンテナを用いて非接触の近接無線通信により送受信するものを示した。
【0059】
しかし、近接無線通信装置100は、これに限るものではなく、2つのアンテナにより、非接触の近接無線通信により、データ通信および給電を行うもので、それぞれの通信に用いるアンテナが同一平面上に配されないように構成されているものあれば、どのようなものであってもよい。
(3)上記実施の形態においては、回動軸150は、第1筐体110と第2筐体120の中心に位置する例を開示したが、これはその限りではない。回動箇所は、近接無線通信装置100の用途や設計思想に応じて、その箇所はどこにあってもよく、その際に、給電アンテナと通信アンテナとの配置関係が
図6や
図8に示す位置関係になるようになっていればよい。
【0060】
(4)上記実施の形態1においては、通信アンテナが給電アンテナ(受電アンテナ)の内側にくるように構成しているが、これはその限りではなく、その配置が逆であってもよい。
上記実施の形態1において、アンテナの径は、使用する周波数に応じて変化することを説明した。そのため、通信アンテナおよび給電アンテナで使用する周波数によっては、通信アンテナの径が給電アンテナ(受電アンテナ)の径を上回ることもあり得る。
【0061】
(5)上記実施の形態においては、回動軸150の軸方向における通信アンテナと給電アンテナと間の距離Gdpは、まず、シミュレーションで給電アンテナから各位置における電磁界の放射量を算出し、通信の受信用ICのスペックのS/N比(Signal to Noise ratio)内に収まるように仮の距離Gdpを割り出す。その後、実機相当の近接無線通信装置100を作成し、通信アンテナにおける実際のS/N比を計測する。そして、そのS/N比が受信用ICの許容スペック内に収まっているかを確認しつつ、仮の距離Gdpを調整することにより、実際の距離Gdpを決定する。
【0062】
しかし、これはGdpの決定の一手法に過ぎず、その他の手法をとることとしてもよい。
例えば、電源供給アンテナとデータ通信アンテナ間の結合が磁界に起因するものとした場合、コイル周辺に分布する磁界の広がりは、コイル径に依存する。上記電源供給アンテナの径Dpとデータ通信アンテナの径Ddの内、値が小さい方をDsとした場合、上記所定の距離Gdpは、Dsの10分の1以上になるように決める方法もある。
【0063】
一方、電源供給アンテナとデータ通信アンテナ間の結合が電界に起因するものとした場合、コイル周辺に分布する強い電界は、コイルを形成する配線間の間隙幅に依存することから、上記電源供給アンテナ内の配線間隙幅の最小値Spとデータ通信アンテナ内の配線間隙の最小値Sdの内、値が小さい方をSsとした場合、上記所定の距離Gdpは、Ssの10分の1以上になるよう決める方法もある。
【0064】
このように上記所定の長さのずれGdpを決定する方法を記載したが、必ずしもこの方法を取る必要はなく、給電アンテナおよび通信アンテナとの電力比により上記所定の距離Gdpを決定するなど、別の方法でもよい。例えば、給電アンテナと通信アンテナにおいて様々な電力での送受信を行い、それぞれの場合における好適な所定の距離Gdpをシミュレーションにより割り出しておき、電力比毎の好適な所定の距離Gdpを定める表を作成しておく。そして、給電アンテナと通信アンテナとで実際に使用するそれぞれの電力の電力比から、所定の距離Gdpを、当該表を用いて割り出すこととしてもよい。
【0065】
(6)上記実施の形態2においては、2種類の通信アンテナと、給電アンテナで、その配置する平面を異ならせる構成を開示した。当該構成において、2種類の通信アンテナは、同一平面上に配置する構成を示しているが、これはその限りではない。通信アンテナと給電アンテナとの関係と同様に、2種類の通信アンテナも異なる平面に配置する構成にしてもよい。
【0066】
即ち、実施の形態3の第1筐体810において、通信アンテナ811と通信アンテナ813とが別の円周上に配され、かつ、通信アンテナ811と通信アンテナ813の間に段差ができるように構成してもよい。また、第2筐体820においても同様に通信アンテナ821と通信アンテナ823とが別の円周上に配され、かつ、通信アンテナ821と通信アンテナ823の間に段差ができるように構成してもよい。そして、通信アンテナ811と通信アンテナ821が対向し、通信アンテナ813と通信アンテナ823が対向するように構成されていればよい。
【0067】
(7)上記実施の形態においては、特に記載していないが、撮像データの送受信においては、符号化、変調などを施すことなく、生のデータを送受信することとしたが、これはその限りではない。撮像データは符号化や変調などの処理を施してから送受信することとしてもよい。
(8)上記実施の形態において、
図2や
図7の断面図に示す各機能部の配置例は一例であり、これに限定されるものではない。
【0068】
近接無線通信装置は、
(i)第1筐体110における通信アンテナと給電アンテナとの回動軸方向の距離がGdpだけ離間し、
(ii)第2筐体120における通信アンテナと給電アンテナとの回動軸方向の距離がGdpだけ離間し、
(iii)第1筐体110の通信アンテナ111と、第2筐体120の通信アンテナ121とが、互いに結合して、通信ができる程度に近接し、
(iv)第1筐体110の給電アンテナ112と、第2筐体120の受電アンテナ122とが、給電可能な程度に近接する、
という4つの条件を満たす構成になっていれば、その他の構成については、どのような配置になっていてもよい。このとき、なるべく、近接無線通信装置における回動の妨げにならない部品配置にするとよい。
【0069】
(9)上記実施の形態2において、近接無線通信装置に磁性体を配する例を示している。ここで、磁性体を円筒状、円盤状としているが、磁性体の形状はこれらに限定されるものではない。
これらの磁性体は、発生する磁界を誘導できるものであれば、どのような形状であってもよい。例えば、実施の形態2において、通信アンテナ間の磁性体は、円盤状ではなく、方形状であってもよい。あるいは、実施の形態2において、給電アンテナ間の磁性体は、ドーナツ状ではなく、方形の磁性体を給電アンテナに沿う形で円周状に複数配するようにしてもよい。
【0070】
また、円筒状の磁性体については、円筒状ではなくともよく、円弧を描く板状の磁性体を複数配することとしてもよい。あるいは、単なる板状の磁性体を円周上に配することとしてもよいし、円筒状ではなく角筒状の磁性体を用いてもよい。
また、磁性体は、例えば、
図10(a)や
図10(b)に示すように配置することとしてもよい。
図10(a)、(b)は、アンテナと磁性体の配置のみを示した近接無線通信装置の断面図である。
【0071】
図10(a)に示す近接無線通信装置1000は、第1筐体1010と第2筐体1020とが互いに嵌合して成る。
第1筐体1010は、通信アンテナ1011と、給電アンテナ1012a、1012bと、磁性体1031、1032a、1032bを備える。
また、第2筐体1010は、通信アンテナ1021と、受電アンテナ1022a、1022bと、磁性体1041、1042a、1042bを備える。
【0072】
第1筐体1010の凸部および第2筐体1020の凹部は
図10(a)に示す形状を有する。
第1筐体1010と第2筐体1020とが嵌合している状態で、通信アンテナ1011と通信アンテナ1021は対向し、給電アンテナ1012aと受電アンテナ1022aおよび給電アンテナ1012bと受電アンテナ1022bとが対向するように構成されている。
【0073】
そして、磁性体1031と磁性体1041とで、通信アンテナ対1011‐1021を囲うように構成されている。同様に、磁性体1032aと磁性体1042aとで、給電アンテナ対1012a‐1022aを囲うように構成され、磁性体1032bと磁性体1042bとで、給電アンテナ対1012b‐1022bを囲うように構成されている。
その他の構成については、実施の形態1や実施の形態3に準ずるものとして省略する。
【0074】
図10(b)に示す近接無線通信装置1050は、第1筐体1060と第2筐体1070とが互いに嵌合して成る。
第1筐体1060は、通信アンテナ1061と、給電アンテナ1062a、1062bと、磁性体1081、1082a、1082bを備える。
また、第2筐体1070は、通信アンテナ1071と、受電アンテナ1072a、1072bと、磁性体1091、1092a、1092bを備える。
【0075】
第1筐体1060の凸部および第2筐体1070の凹部は
図10(b)に示す形状を有する。
第1筐体1060と第2筐体1070とが嵌合している状態で、通信アンテナ1061と通信アンテナ1071は対向し、給電アンテナ1062aと受電アンテナ1072aおよび給電アンテナ1062bと受電アンテナ1072bとが対向するように構成されている。
【0076】
そして、磁性体1081と磁性体1091とで、通信アンテナ対1061‐1071を囲うように構成されている。同様に、磁性体1082aと磁性体1092aとで、給電アンテナ対1062a‐1072aを囲うように構成され、磁性体1082bと磁性体1092bとで、給電アンテナ対1062b‐1062bを囲うように構成されている。
その他の構成については、実施の形態1や実施の形態3に準ずるものとして省略する。
【0077】
図10(a)や
図10(b)に示すように、凸部および凹部の形状が異なったとしても、その形状に応じて、給電アンテナ対と通信アンテナ対との間に段差を設け、各アンテナ対を囲うように磁性体を配置することで、給電アンテナと通信アンテナとの不要な結合を低減し、より安定した電力通信とデータ通信とを両立することができる。
(10)上記実施の形態においては、通信アンテナや給電アンテナは、銅箔からなると説明したが、これはその限りではない。第1筐体と第2筐体間の非接触無線通信が実行できれば、これ以外のアンテナを用いてもよい。
【0078】
例えば、
図11に示すように、給電アンテナ1001および受電アンテナ1111を、直列型のLC回路で構成することとしてもよい。
給電アンテナ1101は、コイル部分1102と共振用のコンデンサ1103とで構成しており、コイルは巻き数6で記載しているが、配線1104を束ねた構成でもよい。
同様に、受電アンテナ1111は、コイル部分1112と共振用のコンデンサ1113とで構成しており、コイルは巻き数6で記載しているが、配線1114を束ねた構成でもよい。なお、ここでは、直列型のLC回路で記載しているが、並列型のLC回路でもよい。また給電アンテナのコイル1102の大きさは100mm×100mm程度とし、受電アンテナのコイル1112の大きさは、80mm×80mm程度の大きさとし、上記実施の形態に示した場合とは異なり、給電アンテナのコイルより小さいものを用いているが、使用する周波数によりコイルの大きさや線材、またコンデンサの容量等によって、給電アンテナと受電アンテナとの大きさの差を調整することができる。よって、近接無線通信装置における給電アンテナと受電アンテナの配置やその大きさにある程度の自由度が生まれることから、近接無線通信装置の設計が容易になる。
【0079】
(11)上記実施の形態においては、特に記載しなかったが、ここで、通信アンテナと給電アンテナのアンテナ特性について説明する。
図11(a)は本実施の形態における周波数ごとの伝送効率を記載している。アンテナで使用する周波数を変えて、伝送効率を調べると、2つの周波数f1およびf2において効率が比較的よい特性が得られることがある。これらの周波数の低いほうを奇モード伝送、周波数の高いほうを偶モード伝送とした場合に、それぞれのモードにおいて
図11(b)および(c)のような磁界の発生の仕方をする。
【0080】
奇モード伝送ではアンテナの中心位置で磁界強度が強くなるのに対して、偶モード伝送ではアンテナ勘合部分で磁界強度が強くなるため、本実施の形態における給電アンテナにおいては、偶モード伝送を用いるほうがデータ通信アンテナに対する電磁界結合が弱くなり、データ通信アンテナでのノイズの影響が小さくなり、給電アンテナと通信アンテナとの共存がしやすくなる。
【0081】
この偶モード伝送と、奇モード伝送とにおける磁性体の配置について給電アンテナと通信アンテナとの共存がよりしやすくなる効果が得られる場合を、
図11を用いて説明する。
図13(a)、(b)、(c)においては、アンテナ周辺における磁性体の配置方法に関する例を記載している。
図13(a)では、上記奇モード伝送および偶モード伝送のいずれにも効果が高いが、
図13(b)に関しては奇モード伝送が、
図13(c)に関しては偶モード伝送で効果を発揮すると考えられる。
【0082】
なお、
図13におけるアンテナは、給電アンテナ−受電アンテナ対、通信アンテナ対のいずれであってもよく、この図では、図の見易さを考慮して両方の対は示していない。
(12)上記実施の形態においては、第1筐体と第2筐体とから成る近接無線通信装置を開示しているが、第1筐体や第2筐体は、筐体として閉じた構造でなくともよく、特許文献1のように、円盤状の据付部と、其れに対して対向する蓋状の旋回部が対向する形であってもよく、この時に、通信アンテナと給電アンテナ(受電アンテナ)との間で段差ができる構造(所定の距離Gdpだけ離間する構造)になってさえいればよい。
【0083】
(13)
図4および
図5に記載のアンテナは、プリント基板上に形成される配線で実現してもよいし、絶縁した素線を複数本束ねたリッツ線を用いてもよい。配線表面を導電率の高い導体で選択的に被覆してもよいし、同様に配線表面を磁性体でメッキする事でも特性の向上が得られる。また、特に電源供給・受給に用いるアンテナ配線は、z軸方向に複数層に積層されて形成されてよい。この場合、通信アンテナ111が、所定の回転軸を中心として最近接する受電アンテナ122の面に対し、上記所定の回転軸の軸方向に所定の長さだけずれることで、本願の効果を得ることが可能である。同様に、通信アンテナ121に関しても、給電アンテナ112の面に対して所定の長さだけずれることで本願の効果を得ることが可能である。
<補足>
以下、本発明に係る近接無線通信装置の一実施例と、その効果について説明する。
【0084】
(A)本発明に係る近接無線通信装置は、第1通信ブロックとこれに近接する第2通信ブロックとからなる近接無線通信装置であって、前記第1通信ブロックは、前記第2通信ブロックと対向する面の一部が突出され、その突出頂部に第1アンテナが、裾部を含む非突出部に第2アンテナが配され、前記第2通信ブロックは、前記第1通信ブロックの前記凸部に対応する部位が凹入され、その底面に第3アンテナが、非凹入部に第4アンテナが配され、前記第1通信ブロックと前記第2通信ブロックが前記凸部を前記凹部に嵌入させて、前記第1アンテナと前記第3アンテナ、前記第2アンテナと前記第4アンテナとを近接させた状態でこれらのアンテナ間で非接触の近接無線通信を行うこととする。
【0085】
第1アンテナと第2アンテナとを凸部の突出部分と非突出部分に配することにより、第1アンテナと第2アンテナとをある程度離間させることができる。同様に、第3アンテナと第4アンテナとの間もある程度離間させることができる。
したがって、非接触無線通信のための第1アンテナと第3アンテナとの結合により発生する磁界と、第2アンテナと第4アンテナとの結合により発生する磁界との間にある程度の距離を空けることができるので、第1アンテナと第2アンテナとの間の結合が発生しにくくなる。
【0086】
その結果、第1アンテナと第3アンテナとの間で行う第1の非接触近接無線通信と、第2アンテナと第4アンテナとの間で行う第2の非接触近接無線通信とを、互いに対する影響を低減しつつ、行うことができる。また、フェライト材等の磁性体を用いていないので特許文献1に比して装置全体を小さくすることができ、フェライト材を用いないことによるコスト削減という効果も奏する。更に、凹凸が嵌合する構造によりアンテナの位置調整も容易に行え、通信精度の向上に貢献する。
【0087】
なお、ここで、通信ブロックとは通信機能を有する素体を言い、各アンテナは、通信ブロックの内部に有していても、外部に装着してあってもよい。また、アンテナを通信ブロックの内部に配する場合には、アンテナ間の非接触の近接無線通信が行える程度には、通信ブロックと通信ブロックの対向面近傍に配することとする。
(B)上記(A)に係る近接無線通信装置において、前記凸部および前記凹部は、それぞれ円筒形であり、それぞれの中心を軸心として、前記第1通信ブロックと前記第2通信ブロックが相対回動自在に、前記凸部が前記凹部に嵌入されていることとしてもよい。
【0088】
これにより、近接無線通信装置において、第2通信ブロックは、第1通信ブロックに対して回動自在に回転することができる。よって、例えば、360度を監視する監視カメラなどにおいて、撮像と撮像データの転送の利便性を高めることができる。
(C)上記(B)に係る近接無線通信装置において、前記第1通信ブロックはモーターを備え、前記軸心位置に、その一端が前記モーターと軸結され、前記軸心に沿って突設した回転軸が、前記凹部の軸心位置を通り、前記第2通信ブロックに連結され、前記モーターの駆動により、前記第1通信ブロックと前記第2通信ブロックが相対回動することとしてもよい。
【0089】
これにより、近接無線通信装置において、第2通信ブロックは、第1通信ブロックに対して回動自在に回転することができる。よって、例えば、360度を監視する監視カメラなどにおいて、撮像と撮像データの転送の利便性を高めることができる。また、モーターがあることにより、ユーザの手を煩わすことなく回動を行える。
(D)上記(B)に係る近接無線通信装置において、前記第1アンテナと前記第2アンテナのうち、いずれか一方がデータ通信を行う通信アンテナであり、他方が給電を行う給電アンテナであり、前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、前記給電が前記データ通信の妨げにならない所定の距離だけ離間していることとしてもよい。
【0090】
これにより、より大きい電力を用いる給電の、通信に対する影響を抑制することができ、給電とデータ通信の両方を並行して実行することができる。
(E)上記(D)に係る近接無線通信装置において、前記第1アンテナは、通信アンテナであり、前記第2アンテナは、給電アンテナであり、前記第3アンテナは、通信アンテナであり、前記第4アンテナは、受電アンテナであることとしてもよい。
【0091】
通常、給電には、データ通信で用いる周波数よりも低い周波数での通信により行う。そのため、この場合には、給電アンテナは、通信アンテナよりも径が大きくなる。そこで、第1アンテナを通信アンテナとし、第2アンテナを給電アンテナとし、第3アンテナを通信アンテナとし、第4アンテナを受電アンテナとすることで、近接無線通信装置の作成を容易にすることができる。
【0092】
(F)上記(D)に係る近接無線通信装置において、前記第1アンテナは、給電アンテナであり、前記第2アンテナは、通信アンテナであり、前記第3アンテナは、受電アンテナであり、前記第4アンテナは、通信アンテナであり、前記第2アンテナは、前記裾部の前記軸心を中心とする同心円上に間隔をあけて複数配され、前記第4アンテナは、前記非凹入部の前記軸心を中心とする同心円上に間隔をあけて複数配され、前記第1通信ブロックは、更に、前記裾部の前記軸心を中心とする同心円上の隣り合う第2アンテナの間に、前記第2アンテナが前記第4アンテナと行う通信とは別の通信を行うための第5アンテナが複数配され、前記第2通信ブロックは、更に、前記非凹入部の前記軸心を中心とする同心円上の隣り合う第4アンテナの間に、前記第4アンテナが前記第2アンテナと行う通信とは別の通信を行うための第6アンテナが複数配され、前記第5アンテナと前記第6アンテナとの間で、非接触の近接無線通信を行うこととしてもよい。
【0093】
これにより、近接無線通信装置は、第1通信ブロックと第2通信ブロックとの間で、給電のための通信の他、2種類のデータ通信を行うことができるので、近接無線通信装置の利便性を高めることができる。
(G)上記(B)に係る近接無線通信装置において、前記第1通信ブロックは、更に、一方のアンテナ対の非接触の近接無線通信により発生する磁界が他方のアンテナ対の非接触の近接無線通信に与える影響を抑制するための磁性体を備えることとしてもよい。
【0094】
これにより、第1アンテナと第3アンテナとの間で行われる通信が、第2アンテナと第4アンテナとの間で行われる通信に影響を及ぼす可能性を低減することができる。また、その逆に、第2アンテナと第4アンテナとの間で行われる通信が、第1アンテナと第3アンテナとの間で行われる通信に影響を及ぼす可能性も低減することができる。
(H)上記(G)に係る近接無線通信装置において、前記第2通信ブロックは、更に、一方のアンテナ対の非接触の近接無線通信により発生する磁界が他方のアンテナ対の非接触の近接無線通信に与える影響を抑制するための磁性体を備えることとしてもよい。
【0095】
これにより、第1アンテナと第3アンテナとの間で行われる通信が、第2アンテナと第4アンテナとの間で行われる通信に影響を及ぼす可能性を低減することができる。また、その逆に、第2アンテナと第4アンテナとの間で行われる通信が、第1アンテナと第3アンテナとの間で行われる通信に影響を及ぼす可能性も低減することができる。
(I)上記(H)に係る近接無線通信装置において、前記磁性体は、前記アンテナ対を囲うように前記第1通信ブロックおよび前記第2通信ブロックに配されることとしてもよい。
【0096】
これにより、アンテナ対で発生する磁界の、他方のアンテナ対に対する影響を、より大きく低減することができる。したがって、アンテナ対とアンテナ対との間の結合を発生しにくくすることができる。
(J)上記(B)に係る近接無線通信装置において、前記近接無線通信装置は、更に、前記第1アンテナと前記第3アンテナとの間に磁性体を備え、当該磁性体は、前記第1アンテナと前記第3アンテナとの非接触の近接無線通信を補強することとしてもよい。
【0097】
これにより、第1アンテナと第3アンテナとの間での結合がしやすくなり、第1アンテナと第3アンテナとの間の通信をより安定した状態で行うことができる。
(K)上記(B)に係る近接無線通信装置において、前記近接無線通信装置は、更に、前記第2アンテナと前記第4アンテナとの間に磁性体を備え、当該磁性体は、前記第1アンテナと前記第3アンテナとの非接触の近接無線通信を補強することとしてもよい。
【0098】
これにより、第2アンテナと第4アンテナとの間での結合がしやすくなり、第2アンテナと第4アンテナとの間の通信をより安定した状態で行うことができる。