【実施例1】
【0015】
本発明の第1実施形態に係るワークチャック装置を、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
本実施形態のワークチャック装置100は、例えば、ワーク整列部材Pに整列配置されたマイクロ(テスト)チューブ等の多数のワークWの中から、所定のワークWをピッキングして複数のワーク整列部材Pの間で移載するような用途に用いられる。
ワーク整列部材Pは、例えば、
図1に示すように、上方が解放され内部が極低温環境に維持された低温槽Fの底部に載置されており、上方からワークチャック装置100がアプローチしてワークWをピッキングして移載作業が行われる。
【0016】
ワークチャック装置100は、
図2乃至
図4に示すように、ベース部材110と、ワークWの上端の凹部に挿入され、拡径することで保持する保持部材120と、保持部材120を作動させる開閉手段とを有しており、図示しない移動機構によって少なくとも水平面内および垂直方向の3方向に自在に移動可能に構成されている。
保持部材120は、
図3に示すように、垂直方向に延びる管状部124の先端にスリット125を設けることで弾性的に径方向に変位可能とした保持部123を設けてなり、保持部123の内周面には拡径用テーパー部121、保持部123の直上の外周面には縮径用テーパー部122が設けられている。
【0017】
また、保持部123は、直接ワークWの上端の凹部と当接した際に保持を確実に行うため、
図3に示すように、外周に凹凸形状が付されている。
なお、本実施形態で保持されるワークWは、
図6に示すように、チューブ状の本体のキャップcapの頂部側に凹部が設けられている。
凹部は、下方に行くほど拡がる形状とするのが望ましい。
また、凹部を上方から見た形状は、
図6のc1乃至c3に示すもの等、どのような形態であってもよく、その形態に応じて保持部123の形状を適宜設定すればよい。
【0018】
保持部材120の保持部123を開閉動作させる開閉手段は、拡径部材130、縮径部材140および切離部材150と、それらを軸方向に移動させるアクチュエータ113、114、115によって構成されている。
拡径部材130、保持部材120の管状部124、縮径部材140および切離部材150は、
図4に示すように、全て管状に形成されて同軸に配置されている。
また、
図2に示すように、保持部材120の管状部124がベース部材110に固定され、拡径部材130、縮径部材140および切離部材150が、それぞれ個別にベース部材110に配置されたアクチュエータ113、114、115によって軸方向移動可能に構成されている。
また、拡径部材130は排出部材を兼ねており、先端側から、検知回路によってワークWの接触や有無を検知する検知手段(図示せず)が設けられている。
なお、拡径部材130は最内周に配置されるため、管状ではなく中実の棒状に形成されていてもよい。
【0019】
以上のように構成された本発明の第1実施形態に係るワークチャック装置100の動作について説明する。
ベース部材110は移動機構(図示せず)に固定されており、ワークチャック装置100の保持部材120の保持部123がワーク整列部材Pに整列配置されたワークWに対して上方からアクセス可能に設置されている。
まず、
図5に示すように、ワークチャック装置100はワーク整列部材Pに整列配置されたワークWの上方で、かつ保持部材120の保持部123がチャックすべきワークWの上方凹部の直上に位置するように水平面内で移動し、当該位置から保持すべきワークWに向かって垂直方向下方に移動する。
【0020】
次に、
図2に示すアクチュエータ113、114を作動させ、拡径部材130、縮径部材140を保持部材120に対して相対的に上昇させる。
上昇した拡径部材130の先端部は、保持部材120の保持部123の内周面に設けられた拡径用テーパー部121に当接し、保持部123が外方に拡がりワークWの上方凹部の内面を確実に保持した状態となる。
この状態から、移動機構(図示せず)によってベース部材110を垂直方向上方に移動させることで、ワークWが保持部材120に保持された状態でワーク保持部材Pから上方にピックアップされる。
【0021】
この上方移動と同時にアクチュエータ115を作動させ、切離部材150を下方に突出させることで、突出した切離部材150の先端部によって、保持されたワークWの周囲のワークWの上面を押さえることができる。
このことで、ワークWが霜等によって周囲のワークWと固着しているような場合でも、周囲のワークWを上方に引っ張ることなく、目的のワークWのみを確実に分離して上方に取り出すことができる。
これらの動作において、低温に維持された低温槽等に収容されたワークWに対して、外形がワークWの直径よりわずかに大きい程度の細く滑らかな円筒形状の部分のみが冷凍槽等に進入するようにすることで、アクチュエータ113、114、115を常温部で動作させることが可能となるとともに、ワークWの周囲の空気の乱れを抑制し、低温槽等の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
このように目的のワークWを確実に保持してワーク整列部材Pから上方にピックアップした状態で、移動機構(図示せず)によって当該ワークWを、他のワーク整列部材Pの目的の位置の上方まで移動させ、上方からワーク整列部材Pに挿入して、ワークWを解放する。
ワークWの解放時には、アクチュエータ113、114を作動させ、拡径部材130、縮径部材140を保持部材120に対して相対的に下降させる。
下降した縮径部材140の先端部は、保持部材120の保持部123の外周面に設けられた縮径用テーパー部122に当接し、保持部123が内方に縮径し、ワークWの保持を解除する。
なお、保持部材120の保持部123が弾性によりワークWの凹部より小さな径となる状態に設定した場合には、縮径部材140を省略しても、拡径部材130による拡径を解除するだけでワークWの保持を解除することが可能である。
【0023】
この状態から、移動機構(図示せず)によってベース部材110を垂直方向上方に移動させることで、ワークWをワーク整列部材Pに残して、保持部材120の保持部123が上方に移動してワークWの凹部から離脱する。
この上方移動の際に、さらにアクチュエータ113を作動させ、排除部材を兼ねた拡径部材130を下降させることで、突出した拡径部材130の先端部によってワークWの上面を押さえて、保持部材120の保持部123に引きずられることなく、ワークWを確実にワーク整列部材P上で解放することができる。
【0024】
また、排除部材を兼ねた拡径部材130の先端側にワークWの接触や有無を検知する検知手段が設けられており、前述したワークWの保持動作の開始時に、拡径部材130、縮径部材140の作動前に一旦拡径部材130を下降させることで、目的の位置に確実にワークWが存在するか否かを検出することが可能となる。
さらに、前述したワークWの解放時に、ワークWの上面を押さえた状態でワークWとの接触を検知し、ベース部材110の上昇中にワークWの接触の検知が終了することで、確実に解放動作が完了したことを検出することも可能となる。
【実施例2】
【0025】
本発明の第2実施形態に係るワークチャック装置を、
図7、
図8に基づいて説明する。
本実施形態のワークチャック装置は、第1実施形態のものと同様、例えば、ワーク整列部材Pに整列配置されたマイクロ(テスト)チューブ等の多数のワークWの中から、所定のワークWをピッキングして複数のワーク整列部材Pの間で移載するような用途に用いられる。
また、同様に、ベース部材と、ワークWの上端の凹部に挿入され、拡径することで保持する保持部材220と、保持部材220を作動させる開閉手段とを有しており、図示しない移動機構によって少なくとも水平面内および垂直方向の3方向に自在に移動可能に構成されている。
【0026】
保持部材220は、
図7に示すように、2つの環状部226を上下方向で圧縮することで弾性的に径方向に変形可能とした6つの保持部223を設けてなる。
また、保持部材220は、
図8aに示すように、第2軸部材270に外嵌して、下端の環状部226が支持され、第1軸部材260に上端を上端の環状部226が下方に押圧されるように配置される。
なお、本実施形態で保持されるワークWは、第1実施形態と同様に、
図6に示すようにチューブ状の本体のキャップcapの頂部側に凹部が設けられている。
凹部は、下方に行くほど拡がる形状とするのが望ましい。
また、凹部を上方から見た形状は、
図6のc1乃至c3に示すもの等、どのような形態であってもよく、その形態に応じて保持部223の形状や数を適宜設定すればよい。
【0027】
保持部材220の保持部223を開閉動作させる開閉手段は、第1軸部材260、第2軸部材270および切離部材250と、それらを軸方向に移動させるアクチュエータによって構成されている。
第1軸部材260、第2軸部材270および切離部材250は、全て管状に形成されて同軸に配置されている。
また、第1軸部材260がベース部材に固定され、第2軸部材270および切離部材250が、それぞれ個別にベース部材に配置されたアクチュエータによって軸方向移動可能に構成されている。
また、第2軸部材270は排出部材を兼ねており、先端側から、検知回路によってワークWの接触や有無を検知する検知手段(図示せず)が設けられている。
なお、第2軸部材270は最内周に配置されるため、管状ではなく中実の棒状に形成されていてもよい。
【0028】
以上のように構成された本発明の第2実施形態に係るワークチャック装置の動作について説明する。
なお、ベース部材の移動、切離部材250の動作、検知手段の動作は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
保持部材220の保持部223は、上下に圧縮しない状態ではチャックすべきワークWの上方凹部より小さな径に設定されている。
保持部223がワークWの上方凹部に挿入された状態でアクチュエータを作動させ、第2軸部材270を上昇させると、保持部223が外方に拡がりワークWの上方凹部の内面を確実に保持した状態となる。
ワークWの解放時には、アクチュエータを作動させ、第2軸部材270を下降させることで保持部223が弾性によりワークWの凹部より小さな径に戻りワークWの保持を解除する。
また、第1軸部材260の下端と保持部材220の上方の環状部226を固定しておけば、さらにアクチュエータを作動させ、排除部材を兼ねた第2軸部材270を下降させることで、突出した第2軸部材270の先端部によってワークWの上面を押さえて、ワークWが保持部材220の保持部223に引きずられることなく、ワークWを確実に解放することができる。
【0029】
本発明に係るワークチャック装置は、上述の実施形態のものに限定されるものではなく、個々の具体的な構成はいかなるものであってもよい。
例えば、上述した第1実施形態では、保持部材120の保持部123を3本のスリット125で3方向に拡径するものとしたが、2方向以上であれば何方向であってもよい。
また、スリット125の配置間隔も、円周上に等間隔でなくてもよい。
さらに、保持部123はワークとの接触部に凹凸加工を施したものや緩衝部材を有するものであってもよい。
また、上述した第2実施形態では、保持部材220の保持部223を6方向に拡径するものとしたが、2方向以上であれば何方向であってもよい。
また、
図8bに示すように、保持部材220bをゴム等の弾性材料で構成してもよい。
さらに、本発明に係るワークチャック装置により把持されるワークは、創薬研究用試料や薬品等を収容したバイアル瓶やマイクロチューブ等に限定されるものではなく、各種組立機械、工作機械等のワークの把持に用いられてもよい。