特許第6348810号(P6348810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348810LED照明装置およびLED照明装置用透光性チューブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348810
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】LED照明装置およびLED照明装置用透光性チューブ
(51)【国際特許分類】
   F21V 3/00 20150101AFI20180618BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20180618BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20180618BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20180618BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180618BHJP
【FI】
   F21V3/00 320
   F21V3/02 400
   F21V3/06 131
   F21S2/00 230
   F21Y115:10
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-187088(P2014-187088)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-62657(P2016-62657A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 克彦
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−017228(JP,A)
【文献】 特開2013−058316(JP,A)
【文献】 特開2012−043558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 3/00
F21S 2/00
F21V 3/02
F21V 3/06
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に線状に配設された複数のLED素子と、
略角筒状の形状を有し、該角筒状の第1側面を前記LED素子に対向させて、前記基板を内部に収容する透光性チューブとを有するLED照明装置であって、
前記透光性チューブは、
前記LED素子に対向する前記第1側面が透明であり、
前記第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分が半透明または不透明である、
LED照明装置。
【請求項2】
基板上に線状に配設された複数のLED素子と、
略角筒状の形状を有し、該角筒状の第1側面を前記LED素子に対向させて、前記基板を内部に収容する透光性チューブとを有するLED照明装置であって、
前記透光性チューブは、
前記LED素子に対向する前記第1側面が透明であり、
前記第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分に拡散剤が添加されていることを特徴とする、
LED照明装置。
【請求項3】
前記透光性チューブは、断面が略長方形の略四角筒状の形状を有する、
請求項1または2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記LED照明装置は、前記LED素子の発光面と前記透光性チューブの第1側面の間に、LED素子からの光を集光する集光部材をさらに有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記透光性チューブは、前記集光部材を固定するための突条を内面に有する、
請求項4に記載のLED照明装置。
【請求項6】
前記第1側面および前記集光部材の表面のうち、LED素子からの光が通過するいずれかの面に微小な凹凸が形成されている、
請求項4または5に記載のLED照明装置。
【請求項7】
前記LED照明装置は、前記透光性チューブを収容する外部筐体をさらに有し、
前記透光性チューブは、前記第1および第2稜部分に対して前記第1側面とは反対側の側面に、前記外部筐体に固定するための張出し部を外面に有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項8】
前記透光性チューブが熱可塑性樹脂からなる、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がポリメタクリル酸メチル樹脂を主成分とする、
請求項に記載のLED照明装置。
【請求項10】
前記透光性チューブが押出成形により成形された押出成形体である、
請求項8または9に記載のLED照明装置。
【請求項11】
前記第1および第2稜部分が、前記第1側面から連続する透明相と、半透明または不透明相との多層によって構成される、
請求項1〜10のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項12】
前記複数のLED素子は、前記基板上に1列に線状に配設される、
請求項1〜11のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項13】
前記透光性チューブは、
前記第1側面の全光線透過率が60%以上、ヘーズ率が10%以下であり、
前記第1および第2稜部分の全光線透過率が20%以上、ヘーズ率が20%以上である、
請求項1〜12のいずれか一項に記載のLED照明装置。
【請求項14】
略角筒状の形状を有し、該角筒状の第1側面が透明であり、
前記第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分が半透明または不透明であり、
内部にLED素子を収容し、前記第1側面を該LED素子に対向させて配置されることが予定される、
LED照明装置用透光性チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置、およびLED照明装置に用いられる透光性チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明装置は、従来の蛍光灯や白熱灯に比べて、消費電力が少ない、寿命が長いといったメリットがあり、近年様々な用途で使用されている。LED照明装置においては、LED素子(以下、単にLEDともいう)が配設された基板や電気回路を保護するために、基板の前面を覆う透光性カバーや、基板全体を内部に収容する透光性チューブが設けられる。
【0003】
LEDから出射する光は、カバー、チューブ等の透光性部材を透過して外部に照射されるため、これらの透光性部材は用途に応じて透明、乳白色等の半透明または不透明のものが用いられる。照明の輝度を高くすることや、間接照明用などで光を遠くまで照射することが求められる場合は、LEDからの光が拡散しないように、透明な透光性部材が用いられる。また、光をより遠くまで照射するために、LEDと透光性部材の間に、LEDからの光を集光するためのレンズ等が用いられることがある。
【0004】
上記の透光性部材として透明なものを用いる場合、その断面形状によって透過光の屈折方向が乱され、装置から光が出射する方向によって光強度の大小が生じることがある。その結果、特定の方向への出射光強度が落ち込むと、照明によって照らされる照射面に黒い影の筋が生じることがあった。特許文献1には、LEDの前面に透明なカバーを設けたLED照明装置において、カバーの押出成形時の幅方向の厚みむらに起因して影の筋が生じることへの対策として、カバーとLEDの距離を適切に規定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−138715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたLED照明装置がカバーの微小な厚みむらによる影の筋の防止に有効であるとしても、カバーの形状自体に起因するより大きな散乱に対しては効果が得られない。例えば、カバーが鋭利なまたは曲率の大きなR形状の角を有する場合、その角を透過した光は屈折により散乱する。その結果、LED照明装置から出射する光の強度が特定の方向で小さくなり、照射面に黒い影の筋が生じることがあった。
【0007】
本発明は、以上を考慮してなされたものであり、高い輝度および長い照射距離を確保しながら、照射面での影の筋の発生を防止することが可能な、LED照明装置および透光性チューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、光の主な透過面を透明にし、チューブの角部を半透明または不透明とする。
【0009】
本発明のLED照明装置は、基板上に線状に配設された複数のLED素子と、略角筒状の形状を有し、該角筒状の第1側面を前記LED素子に対向させて、前記基板を内部に収容する透光性チューブとを有する。そして、前記透光性チューブは、前記LED素子に対向する第1側面が透明であり、前記第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分が半透明または不透明である。
【0010】
ここで、第1側面がLED素子に対向するとは、第1側面がLEDの発光面に相対することをいい、LEDから発する光束の中心線である光軸は第1側面を貫通する。
【0011】
このような構成により、LEDから出射した光の大部分は、透明な第1側面を通過するため、輝度が高く、光を遠くまで照射することが可能となる。また、第1および第2稜部分が半透明または不透明であるため、LED素子からの光は、稜部分を透過する際に拡散され、照射面に影の筋が生じることがない。
【0012】
本発明の他のLED照明装置は、基板上に線状に配設された複数のLED素子と、略角筒状の形状を有し、該角筒状の第1側面を前記LED素子に対向させて、前記基板を内部に収容する透光性チューブとを有する。そして、前記透光性チューブは、前記LED素子に対向する前記第1側面が透明であり、前記第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分に拡散剤が添加されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成により、LEDから出射した光の大部分は、透明な第1側面を通過するため、輝度が高く、光を遠くまで照射することが可能となる。また、第1および第2稜部分に拡散剤が添加されているため、LED素子からの光は、稜部分を透過する際に拡散され、照射面に影の筋が生じることがない。
【0014】
好ましくは、前記透光性チューブは、断面が略長方形の略四角筒状の形状を有する。
【0015】
好ましくは、前記LED照明装置は、前記LED素子の発光面と前記透光性チューブの第1側面の間に、LED素子からの光を集光する集光部材をさらに有する。
【0016】
これにより、光をより遠くまで照射することができる。さらに、LED素子からの光を集光すると、チューブ形状による透過光の散乱の影響がより大きくなり、照射面に影の筋がより生じやすくなるので、本発明の効果が大きい。
【0017】
また、集光部材を設ける場合は、好ましくは、前記透光性チューブは、前記集光部材を固定するための突条を内面に有する。
【0018】
好ましくは、前記LED照明装置は、前記透光性チューブを収容する外部筐体をさらに有し、前記透光性チューブは、前記第1および第2稜部分に対して前記第1側面とは反対側の側面に、前記外部筐体に固定するための張出し部を外面に有する。
【0019】
好ましくは、前記透光性チューブが熱可塑性樹脂からなる。より好ましくは、前記熱可塑性樹脂がポリメタクリル酸メチル樹脂を主成分とする。さらに好ましくは、これら熱可塑性樹脂からなる前記透光性チューブが押出成形により成形された押出成形体である。
【0020】
これらの材料または製造方法を採用することにより、本発明の構成をより容易に実現することができる。
【0021】
好ましくは、前記第1および第2稜部分が、前記第1側面から連続する透明相と、半透明または不透明相との多層によって構成される。
【0022】
これにより、積層する半透明または不透明相の厚さによって、稜部分の拡散性を容易に制御することができる。さらに、透光性チューブが押出成形体である場合には、透明相および半透明・不透明相を一体押出成形することにより、容易に製造することができる。
【0023】
また、前記複数のLED素子は、基板上に1列に線状に配設されていてもよい。
【0024】
このような場合には、照射面に影の筋がより生じやすいので、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0025】
好ましくは、前記透光性チューブおよび前記集光部材の表面のうち、LED素子からの光が通過するいずれかの面に微小な凹凸が形成されている。
【0026】
LED照明装置が集光部材を有する場合は、カバーの微小な厚みむらによっても照射面に影の筋が生じやすくなる。光が通過するいずれかの面に微小な凹凸を形成することによって影の筋の発生を防止することができる。
【0027】
好ましくは、前記透光性チューブは、前記第1側面の全光線透過率が60%以上、ヘーズ率が10%以下であり、前記第1および第2稜部分の全光線透過率が20%以上、ヘーズ率が20%以上である。
【0028】
ここで全光線透過率は、JISK7361−1:1997によって測定する値である。また、ヘーズは、JISK7136:2000によって測定する値である。
【0029】
本発明のLED照明装置用カバーは、略角筒状の形状を有し、該角筒状の第1側面が透明であり、前記第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分が半透明または不透明であり、内部にLED素子を収容し、前記第1側面を該LED素子に対向させて配置されることが予定される。
【0030】
このような構成のカバーを用いることによって、輝度が高く、照射面に影の筋が生じることがないLED照明装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のLED照明装置またはLED照明装置用カバーによれば、高い輝度および長い照射距離を確保しながら、照射面での影の筋の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態のLED照明装置の断面図である。
図2図1の一部拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態のLED照明装置の全体斜視図である。
図4】本発明の一実施形態のLED照明装置のLED基板の斜視図である。
図5】本発明の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のLED照明装置の実施形態を図に基づいて説明する。
【0034】
図1において、本実施形態のLED照明装置10は、LED22が配設された基板20と集光部材40とを有し、基板および集光部材は透光性チューブ30の内部に収容されている。透光性チューブはさらに金属製の筐体50に収容されている。
【0035】
LED照明装置10の全体は、図3に示すように、細長く棒状に構成されている。LED照明装置の大きさは特に限定されないが、透光性チューブ30の光が透過する部分の幅が15〜80mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。このような寸法では、照射面に影の筋が生じやすく、本発明による効果が大きいからである。LED照明装置の長さは、典型的には300〜1500mmである。
【0036】
基板20は、図4に示すように、その片面に電気回路部21を介してLED22が直線状に1列に配設されている。基板20は、強度や放熱性の点から、アルミニウム、銅等の金属板や熱伝導性樹脂板が好ましく用いられる。基板の形状は特に限定されず、例えば平板や断面がコの字状であってもよい。本実施形態の基板20では、裏面に放熱を促進するためのフィンが設けられ、長手方向に垂直な断面が櫛状に形成されている。裏面とは、LED素子を配設した面とは反対側の面のことである。基板20の厚みは通常0.4〜3.2mmである。
【0037】
電気回路部21は、LEDに電圧を供給するための配線回路であり、一般的なプリント基板やフレキシブルプリント基板を用いることができる。
【0038】
電気回路部21上には、LED22が直線状に、所定の間隔をあけて1列に配設されている。LEDの数と間隔は、必要な明るさ等に応じて適宜決定することができる。
【0039】
図1において、外部筐体50の材料および構造は特に限定されない。好適には、放熱性や加工性に優れるアルミ、スチール、ステンレススチール等の金属によって構成することができる。
【0040】
図1において、LED22の発光面側(図の上側)には、LEDからの光を集光する集光部材40が設けられている。本実施形態の集光部材40はレンズであり、照明装置10の長手方向に垂直な断面における光の広がり(照射角度、ビーム角)が小さくなるように、LED22から出た光を集光する。
【0041】
集光部材40の材質は、透明性の高いものが好ましく、光学ガラス、各種樹脂等を用いることができる。樹脂の例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル酸エステル樹脂;ポリメタクリルスチレン(MS)等のメチルメタクリレート・スチレンの共重合樹脂;シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のシクロオレフィン系樹脂などが挙げられる。中でも、透明性の点から、PMMA樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
透光性チューブ30は、基板20、電気回路部21、LED22、集光部材40を内部に収容して保護する。チューブ形状の透光性部材を用い、電気系統を内部に収容することにより、照明装置に防水性を持たせることが容易となる。これにより、屋外で使用可能なLED照明装置の設計が容易となる。
【0043】
透光性チューブ30は、断面が略長方形の略四角筒状に一体成形されている。その略四角筒状の第1側面31は透明であり、LED22および集光部材40に対向して設けられている。すなわち、第1側面がLEDの発光面に相対し、LEDが発する光の強度が最大となる光軸23が第1側面を貫通している。これにより、LEDからの光の大部分は集光部材40で集光されて、第1側面を透過して外部に照射される。第1側面が透明な材質で構成されることによって、透過光が拡散によって発散せず、光をより遠くまで照射することが可能となる。
【0044】
第1側面に連なる前記角筒状の第1および第2稜部分32、33は半透明または不透明である。第1および第2稜が第1側面と同じく透明に形成されていると、LED22からの透過光は屈折により散乱し、照明装置10から光が出射する方向によって光強度の大小を生じ、照射面に影の筋が生じることになる。本実施形態では第1および第2稜が半透明または不透明であるため、透過光が拡散されるので、照射面に影の筋が生じない。
【0045】
図2において、第1側面31は1つの透明相36で構成されている。そして、第2稜部分33は、第1側面31と連続する透明相36と、半透明または不透明相37とが積層されて構成されている。第1稜部分32も同様に構成されている。本実施形態では、この透明相36は、透光性チューブ30の全周にわたって連続しており、第1および第2稜部分に半透明または不透明相37が積層されている。
【0046】
図1において、透光性チューブ30の外面には、第1および第2稜部分32、33に対して第1側面31とは反対側の側面に、第1および第2稜部分にそれぞれ近接して、外部筐体50に固定するための2つの張出し部34が形成されている。また、透光性チューブ30の内面には、集光部材40を固定するための2つの突条35が形成されている。
【0047】
透光性チューブ30を構成する材料には、透光性である種々の材料を用いることができるが、製造の容易さ、コストの点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル樹脂;ポリカーボネート;アクリルニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリスチレン、メチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂、透明アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂等のスチレン系樹脂;シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のシクロオレフィン系樹脂等を用いることができる。なかでも、透明性や耐衝撃性に優れることから、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂を用いることがより好ましい。
【0048】
また、第1側面31を構成する透明相36と第1および第2稜部分32、33の一部を構成する半透明または不透明相37には、異なる材料を用いてもよいし、同じ材料を用いて、光拡散剤の添加等によって拡散性を調整してもよい。例えば、透明相36にPMMA樹脂を用い、半透明または不透明相37に、同じPMMA樹脂に光拡散剤を添加したものを用いてもよい。光拡散剤は、透過する光を拡散させ得る材料であり、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機微粒子、ポリメチルメタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリスチレン等の有機微粒子等が挙げられる。光拡散剤の平均一次粒径は0.1〜100μmが好適である。
【0049】
透光性チューブ30の透光性の程度は、部材の全光線透過率によって評価することができる。全光線透過率は、JISK7361−1:1997によって測定することができる。また、透明性または拡散性の程度は、部材のヘーズ率によって評価することができる。ヘーズ率は、JISK7136:2000によって測定することができる。当該JISにおいて、ヘーズ率とは、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から2.5度以上それた透過光の百分率と定義されている。
【0050】
なお、全光線透過率およびヘーズ率の測定には平板状の試料が必要である。実際の透光性カバーから平板状の試料を切り出すことができない場合は、試料を加熱・プレス等によって平板状に変形するか、同一の材料・相構成の平板を別途作製して測定すればよい。
【0051】
透光性カバー30の第1側面31の全光線透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が小さいと、LEDから出射される光の利用効率が下がるし、材料による吸収が大きいとLED照明装置が熱くなるからである。なお、全光線反射率は部材の屈折率に依存するが、例えばPMMAの場合には約8%であるので、全光線透過率は、通常最大でも約92%である。
【0052】
また、第1側面31は透明であり、そのヘーズ率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である。照明装置10に求められる輝度と照射距離を確保するためである。
【0053】
透光性カバー30の第1および第2稜部分32、33の全光線透過率は、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上である。これら稜部分についても全光線透過率は大きい方が好ましい。しかし、第1および第2稜部分は拡散性を有するため、後方散乱によって反射が、材料内を通過する光の経路が長くなることによって吸収が増えるため、全光線透過率は第1側面のそれよりもどうしても小さくなる。また、LED22から第1および第2稜部分に照射される光量は第1側面のそれよりも小さいため、全光線透過率が小さくなることの悪影響は、第1側面よりも軽微である。
【0054】
また、第1および第2稜部分32、33は半透明または不透明であり、そのヘーズ率は、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、特に好ましくは70%以上である。なお、本実施形態では、図2に示すとおり、積層された半透明または不透明相37の厚さが一定ではない。このような場合は、第1および第2稜部分のヘーズ率は、その最大値が上記範囲にあればよい。
【0055】
第1側面31および集光部材40の表面のうち、LEDからの光が通過する少なくとも1つの面には、しぼ加工などにより、微小な凹凸が形成されていることが好ましい。例えば、図1においては、第1側面の外表面、内表面、集光部材の上面41等に微小凹凸を形成することができる。これにより、透光性チューブ30の製造精度が悪く、例えば、押出成形時の幅方向の厚みむらがある場合でも、その厚みむらに起因する照射面への影の筋の発生を防止することができる。なお、このように微小な凹凸を形成する場合も、それによって透明性が失われないこと、すなわち光が拡散されないことが重要である。
【0056】
透光性チューブ30の製造方法は特に限定されないが、材料として熱可塑性樹脂を用いる場合は、押出成形によって製造することが好ましい。押出成形によれば、長手方向(押出方向)に断面形状がほぼ同一な細長い成形体を容易に製造することができるからである。また、押出成形によれば、異なる組成の材料からなる透明相36および半透明または不透明相37を、1回の一体押出成形で成形可能であり、両相の密着性が優れる点でも好ましい。この一体押出成形法は、各相を形成する樹脂のそれぞれを溶融・混練して押し出し、押し出された複数の樹脂を1つのダイス内で一体化させる方法である。
【0057】
集光部材40の製造方法は、射出成形、押出成形、削り出し等、特に限定されない。
【0058】
ここで、本実施形態のLED照明の効果をまとめると、次のとおりである。
【0059】
図5はLED照明装置の前方に斜めに広がる照射面60に到達する光束(光強度)の分布を示したものである。まず、図5Aに示すように、LED照明装置11の透光性チューブ38の全体が透明である場合は、第2稜部分39を透過した光が屈折によって乱され、照射面上の光束の分布グラフに明瞭な谷61が生じ、この位置に影の筋が生じる。LEDは、厳密には面発光素子であるが、素子が小さく点光源に近いため、従来の蛍光灯や白熱灯よりもこのような現象が起こりやすい。これに対して、図5Bに示す本実施形態のLED照明装置10では、第2稜33を透過した光が拡散し、光束の分布グラフの谷をなだらかにし、照射面60上に影の筋が生じることがない。
【0060】
このような影の筋は、透光性チューブの形状も含めたLED照明装置全体の設計により回避することができる。しかしながら、入念な設計を行ったとしても、実際には、透光性チューブの製造精度や予期せぬ迷光によって、影の筋が発生することがある。したがって、本実施形態のように透光性チューブの第1および第2稜部分に拡散性を持たせることによって、LED照明装置の設計や透光性チューブの製造がより容易になるというメリットも得られる。なお、透光性チューブ全体を半透明または不透明にすると、LED照明装置の輝度が下がり、照射距離が短くなるので、本発明の課題を達成することができない。
【0061】
本発明は、上記の実施形態や実施例に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0062】
例えば、複数のLEDが線状に配設されるとは、LEDが直線上に位置する場合には限られず、LEDが波線上や円弧等の曲線上に位置してもよい。
【0063】
例えば、LEDは2列以上に配設されていてもよい。LEDが2列以上に配設された場合は、長手方向に垂直な断面において光源が2か所以上に分散するため、照射面での影の筋は比較的発生しにくくなるが、本発明が適用されることは妨げられない。
【0064】
また、透光性チューブの形状は厳密な多角筒形には限られず略多角筒状であればよく、例えば、各側面が滑らかな曲面であってもよい。
【0065】
また、第1および第2稜部分の構造は、透明相と半透明または不透明相の2層構成には限られず、半透明または不透明相の単層からなっていてもよいし、2層より多くの相が積層されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10、11 LED照明装置
20 基板
21 電気回路部
22 LED素子
23 LED素子の光軸
30、38 透光性チューブ
31 第1側面
32 第1稜部分
33、39 第2稜部分
34 張出し部
35 突条
36 透明相
37 半透明または不透明相
40 集光部材
41 集光部材の上面
50 外部筐体
52 シール部材
60 照射面
61 光束分布グラフの谷
図1
図2
図3
図4
図5