特許第6348812号(P6348812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348812無線通信システム、無線通信方法、親局装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348812
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、親局装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20180618BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20180618BHJP
   H04W 84/08 20090101ALI20180618BHJP
【FI】
   H04W4/06
   H04W24/04
   H04W84/08
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-191265(P2014-191265)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-63462(P2016-63462A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】和田 晋二
【審査官】 ▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−80645(JP,A)
【文献】 特開平11−136742(JP,A)
【文献】 特開2014−35604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる通信エリアを有する少なくとも第1と第2の無線システムを有し、
前記第1と第2の無線システムは、各々に親局と複数の子局を有し、
前記第1の無線システムの親局は、前記第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数が設定でき、
前記第2の無線システムの親局が通信不能時に、設定された前記第2の無線システムの放送エリア識別コードと周波数に切り替えて放送を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記第1の無線システムの親局は現用系と予備系の無線部を有し、
前記第1の無線システムの親局は、予備系の無線部に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、
前記第2の無線システムの親局が通信不能時に、無線部の現用系と予備系を切り替えて放送を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
互いに異なる通信エリアを有する少なくとも第1と第2の無線システムを有し、前記第1と第2の無線システムは各々に親局と複数の子局を有し、前記第1の無線システムの親局は前記第2の無線システムの親局が通信不能時に前記第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、該設定された前記第2の無線システムの放送エリア識別コードと周波数で放送を行うことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信方法において、前記第1の無線システムの親局は現用系と予備系の無線部を有し、前記第1の無線システムの親局は前記第2の無線システムの親局が通信不能時に予備系の無線部に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、前記予備系の無線部から放送を行うことを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
互いに異なる通信エリアを有する少なくとも第1と第2の無線システムを有し、
前記第1と第2の無線システムは、各々に親局と複数の子局を有し、
前記第1の無線システムの親局は、前記第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数が設定でき、前記第2の無線システムの親局が通信不能時に、前記設定された前記第2の無線システムの放送エリア識別コードと周波数に切り替えて放送を行うことを特徴とする無線通信システムの親局装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信システムの親局装置において、
前記第1の無線システムの親局は現用系と予備系の無線部を有し、
前記第1の無線システムの親局は、予備系の無線部に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、前記第2の無線システムの親局が通信不能時に、無線部の現用系と予備系を切り替えて放送を行うことを特徴とする無線通信システムの親局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線通信方法、親局装置に関し、特に市町村などにおける同報無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、災害に備えて市町村防災デジタル通信システムが整備されてきている。この市町村防災デジタル通信システムは、親局(または基地局や中継局)と屋外子局または戸別受信機との間の音声通報または文字表示装置が取り付けられた情報端末装置への文字メッセージによる情報を伝達する。
【0003】
先行技術としては、親局の機能が失われた場合に、同報通信等の指令通信を可能とする防災無線システムについての技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
他の先行技術としては、2つ以上の異なる自治体の防災システムを統合する必要がある場合に、それぞれの仕様が異なることを考慮して中継無線設備により防災無線システムを統合する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、市町村などにおける同報無線システムとして、社団法人電波産業会が策定したARIB STD−T86(非特許文献1)にて定められた市町村デジタル同報通信システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−236650号公報
【特許文献2】特開2008−172839号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】市町村デジタル同報通信システム、ARIB STD−T86、社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような親局装置(または基地局や中継局)と子局間で通信を行う無線通信システムにおいて、親局装置が使用不可能な状態になると、システム全体が機能しなくなる。
本発明の目的は、親局装置が使用不可能な状態になったとき、別の親局装置を借用して放送を実施出来るシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線通信システムは、互いに異なる通信エリアを有する少なくとも第1と第2の無線システムを有し、第1と第2の無線システムは、各々に親局と複数の子局を有し、第1の無線システムの親局は第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数が設定でき、第2の無線システムの親局が通信不能時に、設定された第2の無線システムの放送エリア識別コードと周波数に切り替えて放送を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、第1の無線システムの親局は現用系と予備系の無線部を有し、第1の無線システムの親局は予備系の無線部に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、第2の無線システムの親局が通信不能時に、無線部の現用系と予備系を切り替えて放送を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の無線通信方法は、互いに異なる通信エリアを有する少なくとも第1と第2の無線システムを有し、前記第1と第2の無線システムは各々に親局と複数の子局を有し、第1の無線システムの親局は第2の無線システムの親局が通信不能時に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、該設定された第2の無線システムの放送エリア識別コードと周波数で放送を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の無線通信方法は、上述の無線通信方法であって、第1の無線システムの親局は現用系と予備系の無線部を有し、第1の無線システムの親局は第2の無線システムの親局が通信不能時に予備系の無線部に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、予備系の無線部から放送を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の無線通信システムの親局装置は、互いに異なる通信エリアを有する少なくとも第1と第2の無線システムを有し、第1と第2の無線システムは、各々に親局と複数の子局を有し、第1の無線システムの親局は第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数が設定でき、第2の無線システムの親局が通信不能時に、前記設定された前記第2の無線システムの放送エリア識別コードと周波数に切り替えて放送を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の無線通信システムの親局装置は、上述の親局装置であって、第1の無線システムの親局は現用系と予備系の無線部を有し、第1の無線システムの親局は、予備系の無線部に第2の無線システムの親局の放送エリア識別コードと周波数を設定し、第2の無線システムの親局が通信不能時に、無線部の現用系と予備系を切り替えて放送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線システムにおいて、親局装置同士の相互補助システムが構築でき、簡易ながら親局装置の二重化システムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例である無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明で使用される無線装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明で使用される記憶部に記憶している市区町村名に対応した市区町村コードと周波数のテーブルを説明するための図である。
図4】本発明の一実施例である無線通信システムの市区町村情報を設定するための表示部について説明するための図である。
図5】本発明の一実施例である無線通信システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例である無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、無線通信システムは、A市親局110がA市通信エリア11内の複数の子局である屋外子局114−1と戸別受信機115−1と通信を行い、B市親局120がB市通信エリア12内の複数の子局である屋外子局124−1と戸別受信機125−1と通信を行い、C市親局130がC市通信エリア13内の複数の子局である屋外子局134−1と戸別受信機135−1と通信を行う。
A市親局110が通信可能なエリアはA市親局通信可能エリア10である。
なお、各親局は中継局を介して各子局と通信を行ってもよい。
【0018】
A市親局110は、操作部111と無線装置112と記憶部113を有している。
B市親局120は、操作部121と無線装置122と記憶部123を有している。
C市親局130は、操作部131と無線装置132と記憶部133を有している。
例えば、扱者1は、A市親局110の操作部111を操作して、無線装置112から子局である屋外子局114−1および戸別受信機115−1に音声通報または文字メッセージによる情報を送信する。
記憶部113,123,133は親局に必要な情報や音声通報用定型情報等を記憶している。
【0019】
次に、図2を用いて無線装置112の構成について説明する。
図2は本発明で使用される無線装置の概略構成を示すブロック図である。
無線装置112は、無線部現用系1121と無線部予備系1122で構成されている。
無線部現用系1121は、通常、子局である屋外子局114−1および戸別受信機115−1に音声通報または文字メッセージによる情報を送信する。
無線部予備系1122は、無線部現用系1121が保守または故障時に子局である屋外子局114−1および戸別受信機115−1に音声通報または文字メッセージによる情報を送信する。
なお、無線装置122と無線装置132は無線装置112と同様の構成である。
【0020】
次に、図3を用いて記憶部113に記憶している一部の情報について説明する。
図3は本発明で使用される記憶部に記憶している市区町村コードと周波数のテーブルを説明するための図である。市区町村コードは各親局が放送を行うエリアを識別するためのコードである。
本テーブルは、市区町村名に市区町村コードと周波数が対応している。
例えば、A市は市区町村コードが“23432”であり、周波数が“68.820MHz”である。
本テーブルは、新規登録や更新ができるものである。
【0021】
次に、図4を用いて本発明の一実施例である表示部について説明する。
図4は本発明の一実施例である無線通信システムの市区町村情報を設定するための表示部について説明するための図である。
表示部400は操作部111に備えられている液晶等の表示装置である。
なお、表示部400はタッチパネルやPC(Personal Computer)等であってもよい。
【0022】
表示部400がA市親局110の操作部111に備えられたものである場合、通常、表示部400はA市の情報がデフォルトとして設定されている。
例えば、表示部400は、市区町村名の設定ボックス401には“A市”がデフォルトとして設定され、市区町村コードの設定ボックス404には“23432” がデフォルトとして設定され、周波数の設定ボックス405には“68.820MHz” がデフォルトとして設定されている。
【0023】
A市親局110は、通信エリアが広いため、例えば、隣接するB市通信エリア12の一部または全部がA市親局通信可能エリア10となる。
このため、A市親局110は、B市親局120が災害等で通信不能状態になった場合、B市の代替親局となることが可能である。
【0024】
次に、A市親局がB市の代替親局となるための表示部400の設定方法について説明する。
表示部400は、代替親局となるための設定メニューを有する。
設定メニューは、市区町村名、市区町村コード、周波数等である。
設定メニューの設定方法は、直接入力とリストからの選択の2種類がある。
【0025】
設定メニューの直接設定方法は、キーボード等から市区町村名の入力ボックス401に“B市”と入力し、市区町村コードの入力ボックス404に“23555”と入力し、周波数の入力ボックス405に“60.250MHz”と入力し、設定407を押下する。
【0026】
設定メニューのリストからの選択設定方法は、市区町村名のプルダウン402を押下することにより、市区町村名リスト403が表示されるので、“B市”を選択し、設定407を押下する。
設定407が押下されると、表示部400は、市区町村名の入力ボックス401に“B市”、市区町村コードの入力ボックス404に“23555”、周波数の入力ボックス405に“60.250MHz”と表示する。
【0027】
なお、代替親局となる設定を行う場合は、設定時、誤設定等を防ぐため、パスワードの入力を求めてもよい。表示部400はパスワード入力ボックス406がある。
また、代替親局となる設定を行っている場合、表示部400は“他親局設定中”等の警告表示408を行ってもよい。
【0028】
次に、本発明の一実施例に係る動作について図5を用いて説明する。
図5は本発明の一実施例である無線通信システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【0029】
扱者1がA市親局110の無線部予備系1122をB市の代替親局に設定変更するため、操作部111の表示部400でB市の設定を行う(501)。
操作部111は無線部予備系1122にB市の市区町村コード“23555”と、周波数“60.250MHz”を送信する(502)。
無線部予備系1122はB市の市区町村コード“23555”と周波数“60.250MHz”の設定等を行い(503)、操作部111に設定完了連絡を行う(504)。
【0030】
次に、A市親局110がA市屋外子局114−1に通報する場合の動作について説明する。
扱者1が通報を行うに際し、操作部111に対して呼出(505)の操作を行う。
操作部111が無線部現用系1121に呼出要求(506)を送出すると、無線部現用系1121はA市屋外子局114−1に対して呼出起動(507)を行う。
【0031】
扱者1は操作部111からA市屋外子局114−1に音声送話を行うと、A市屋外子局114−1のスピーカから音声を出力する(508)。
扱者1は終話を行うため、操作部111に対して終話(509)の操作を行う。
操作部111が無線部現用系1121に終話要求(510)を送出すると、無線部現用系1121はA市屋外子局114−1に対して終話信号(511)を送信する。
【0032】
次に、A市親局110がB市の代替親局とするための、A市の無線装置112の現用系と予備系を入れ替える設定について説明する。
通常、無線装置112は無線部現用系1121から報知情報を送信しているため、A市親局110をB市の代替親局とするためには、B市の親局情報を設定している無線部予備系1122を現用系に設定変更する必要がある。
【0033】
扱者1が無線部の入れ替えに際し、操作部111に対して無線部切替(512)の操作を行う。
操作部111が無線部現用系1121に無線部切替要求(513)を送出する。無線部現用系1121は無線部予備系に設定変更し(515)、無線部予備系1122に無線部切替要求(514)を送出する。無線部予備系1122は無線部現用系に設定変更する(516)。
【0034】
次に、A市親局110がB市の代替親局としての運用について説明する。
扱者1がB市屋外子局124−1に通報を行うに際し、操作部111に対して呼出(517)の操作を行う。
操作部111が無線部予備系1122に呼出要求(518)を送出すると、無線部予備系1122はB市屋外子局124−1に対して呼出起動(519)を行う。
【0035】
B市屋外子局124−1は無線部予備系1122から呼出起動を受け、スピーカから音声を出力する(520)。なお、無線部予備系1122に登録されている市区町村コードと周波数がB市の設定になっているため、無線部予備系1122が呼出起動を行っても、A市屋外子局114−1はスピーカから音声を出力しない。
扱者1は終話を行うため、操作部111に対して終話(521)の操作を行う。
操作部111が無線部予備系1122に終話要求(522)を送出すると、無線部予備系1122はB市屋外子局124−1に対して終話信号(523)を送信する。
【0036】
図5の一実施例は、無線装置112が現用系と予備系の二重系になっているため、現用系にA市の設定を行い、予備系にB市の設定を行い、無線部を切り替えることにより、A市とB市を切り替えて運用することができる。
【0037】
他の一実施例として、市区町村の自治体間で事前に代替親局の運用について合意が出来るならば、操作部に隠しメニューとして代替親局となるグループを登録してもよい。
【0038】
本発明の実施形態である無線通信システムは、市町村防災無線システムにおいて、隣接する市町村で親局装置の相互補助システムが構築でき、簡易ながら親局装置の二重化システムを構築できる。
【0039】
以上本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、上記以外の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
10:A市親局通信可能エリア、11:A市通信エリア、12:B市通信エリア、13:C市通信エリア、110:A市親局、120:B市親局、130:C市親局、111,121,131:操作部、112,122,132:無線装置、113,123,133:記憶部、114−1,124−1,134−1:屋外子局、115−1,125−1,135−1:戸別受信機、1121:無線部現用系、1122:無線部予備系。
図1
図2
図3
図4
図5