(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(c)を構成する多価アルコールが、ポリアルキレングリコール、グリセリン及びソルビタンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の鋼板用リンス剤組成物。
前記成分(a)、前記成分(b)と前記成分(c)の質量比が、成分(a)/〔成分(b)+成分(c)〕で0.80以上9.0以下である請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
更に、炭素数が6以上22以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド及び炭素数が1以上9以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
前記洗浄工程(1)及びすすぎ工程(2)は、鋼板を搬送する連続したラインとして設けられ、鋼板の搬送速度が、30m/分以上1000m/分以下である、請求項6又は7に記載の鋼板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<鋼板用リンス剤組成物>
本実施形態の鋼板用リンス剤組成物(以下、鋼板用リンス剤組成物αといい、単にリンス剤組成物αともいう)は、前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(a)と、前記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(b)と、炭素数12以上22以下の脂肪酸と水酸基数が2以上6以下の多価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種である成分(c)を含有する。
【0010】
本実施形態の鋼板用リンス剤組成物αは、前記特許文献1に記載されている成分(a)及び成分(b)を含有する。そして、前記特許文献1に比べて蒸気コストの低減及び短時間でのすすぎ処理効果を向上するために、本実施形態の鋼板用リンス剤組成物αは更に成分(c)を含有するものである。本実施形態の鋼板用リンス剤組成物αは、従来のリンス剤よりも、低温におけるすすぎ処理でも水切り性に優れ、また、短時間のすすぎ処理でも水切り性に優れる。このような効果を発現する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0011】
成分(a)のカチオン性化合物が鋼帯に吸着することで、鋼帯表面が疎水化され、十分な水切り性を示す。成分(b)は、成分(a)よりも低濃度でミセルを形成しやすく、成分(b)のミセル中に成分(a)、さらには成分(c)も取り込んだミセルを形成すると考えられる。そして、ミセル中の成分(a)が鋼板表面に吸着する際に、成分(c)も鋼板にエステル基及びさらには水酸基により鋼板表面に吸着することで、成分(c)の疎水基によって、水切り性が更に向上すると考えられる。一般的に鋼板製造のラインスピードが増速するとリンス剤組成物の各成分の吸着量が低下する傾向があるが、成分(a)の吸着量の増加及と成分(c)の吸着によって十分な水切り性が維持されると考えられる。
【0012】
〔成分(a)〕
成分(a)は、前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の有機のカチオン性化合物であり、好ましくはアルキルアミンの酸塩及びアルキルアンモニウム塩であり、より好ましくはアルキルアミンの酸塩である。
【0013】
前記一般式(1)において、R
1は炭素数6以上であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。当該R
1としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、ヘキシル基、オクチル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基が好ましく、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基がより好ましい。
【0014】
前記一般式(1)において、R
2は水素原子、又は炭素数1以上、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは16以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基又はアルケニル基がより好ましい。当該R
2としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基等が挙げられる。R
2は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、水素原子が好ましい。
【0015】
R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、水素原子が好ましい。
【0016】
X
−の具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、酢酸、乳酸もしくはクエン酸等の有機酸からプロトンを除去した有機陰イオン、炭素数1以上5以下のアルキルサルフェートイオン(CH
3SO
4−、C
2H
5SO
4−、C
3H
7SO
4−等)、アルキル炭酸イオン(CH
3CO
3−)、アルキルホスフェートイオン等を挙げることができ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン及びCH
3CO
3−等の有機陰イオンが好ましく、有機陰イオンがより好ましい。
【0017】
前記成分(a)として、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジミリスチルアミン、デシルオクチルアミン、ラウリルオクチルアミン、ラウリルアミン、ラウリルジメチルアミン、ミリスチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、パルミチルアミン、パルミチルジメチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルジメチルアミン、オレイルアミン、オレイルジメチルアミンの酸中和物あるいは4級化物(4級アンモニウム塩)が挙げられる。酸中和物の場合は、R
2、R
3、R
4の内、少なくとも1つは水素原子となる。
【0018】
酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン−2−カルボン酸、コハク酸等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、塩酸及び酢酸が好ましく、酢酸がより好ましい。また、4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0019】
前記成分(a)は、炭素数が6以上22以下のモノアルキルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のモノアルキルメチルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のモノアルキルジメチルアミンの酸中和物、炭素数が1以上22以下のジアルキルメチルアミンの酸中和物、炭素数が1以上22以下のジアルキルジメチルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のアルキルトリメチルアンモニウム、炭素数が1以上22以下のジアルキルアンモニウム等が挙げられる。具体的には、ラウリルアミンの塩酸塩、ステアリルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、ヘキシルアミンの酢酸塩、ベヘニルアミンの酢酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ミリスチルアミンの酢酸塩、パルミチルアミンの酢酸塩、ステアリルアミンの酢酸塩、オレイルアミンの酢酸塩、ジオクチルアミンの塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、ヘキシルアミンの酢酸塩、オクチルアミンの酢酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ヘキサデシルアミンの酢酸塩、オレイルアミンの酢酸塩、ステアリルアミンの酢酸塩、ベヘニルアミンの酢酸塩、ヘキシルアミンの塩酸塩、オクチルアミンの塩酸塩、ラウリルアミンの塩酸塩、ヘキサデシルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、ステアリルアミンの塩酸塩、ベヘニルアミンの塩酸塩が好ましく、ヘキサデシルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの酢酸塩がより好ましい。
【0020】
成分(a)の濃度は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、5mg/kg以上が好ましく、10mg/kg以上がより好ましく、12mg/kg以上が更に好ましく、そして、過剰の成分(a)が鋼板に付着して、その後の焼鈍工程やメッキ工程の障害とならないようにする観点から、1000mg/kg以下が好ましく、800mg/kg以下がより好ましく、500mg/kg以下が更に好ましく、300mg/kg以下がより更に好ましく、150mg/kg以下がより更に好ましく、100mg/kg以下がより更に好ましく、70mg/kg以下がより更に好ましい。
【0021】
〔成分(b)〕
成分(b)は、前記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。
【0022】
前記一般式(2)において、A
1Oは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を意味する。これらのうち、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基が好ましい。A
1Oが複数種あってもよく、その場合はブロック結合、ランダム結合、交互結合などが使用でき、ブロック結合及び/又はランダム結合が好ましく、ランダム結合がより好ましい。
【0023】
前記一般式(2)において、R
5は炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。アルキル基としては例えばデシル基、sec−デシル基、ラウリル(ドデシル)基、sec−ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられ、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基が好ましく、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基がより好ましい。前記一般式(2)において、mは、平均付加モル数を示し、1以上、好ましくは3以上、より好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは35以下、より更に好ましくは30以下である。
【0024】
具体的には、成分(b)として、以下のものから選ばれる1又はそれ以上のものが挙げられる。
【0025】
C
j1H
2j1+1−O(EO)
p1H
C
j1H
2j1+1−O(EO)
q1(PO)
r1H、(但し、EOとPOがブロック付加したもの)
C
j1H
2j1+1−O(PO)
r1(EO)
q1H、(但し、EOとPOがブロック付加したもの)
C
j1H
2j1+1−O(EO)
s1(PO)
t1(EO)
u1H、(但し、EOとPOがブロック付加したもの)
C
j1H
2j1+1−O(EO)
q1(PO)
r1H(但し、EOとPOがランダム付加したもの)
【0026】
前段落の式中、EOはエチレンオキシ基(C
2H
4O)、POはプロピレンオキシ基(C
3H
6O)、j1は10以上20以下の整数、p1、q1、r1、s1、t1、u1は、それぞれ平均付加モル数であり、p1は3以上40以下の数、q1は1以上40以下の数、r1は1以上40以下の数、s1は1以上30以下の数、t1は1以上30以下の数、u1は1以上30以下の数、q1+r1は3以上100以下の数、s1+t1+u1は3以上100以下の数である。
【0027】
更に好ましくは、以下のものから選ばれる1又はそれ以上のものが挙げられる。
C
18H
35O(EO)
4H、C
12H
25O(EO)
5(PO)
2(EO)
5H、C
14H
29O(EO)
7(PO)
2(EO)
7H、C
16H
33O(EO)
7(PO)
2(EO)
7H、C
16H
33O(EO)
10(PO)
12H、C
18H
37O(EO)
10(PO)
9H、C
18H
37O(EO)
8(PO)
6H(但し、EOとPOがランダム付加したもの)、C
18H
37O(EO)
12(PO)
21H(但し、EOとPOがランダム付加したもの)、C
18H
37O(EO)
15(PO)
15H(但し、EOとPOがブロック付加したもの)、C
18H
37O(EO)
8(PO)
21H(但し、EOとPOがランダム付加したもの)。
【0028】
なお、(EO)、(PO)は、特に記載しなければ、この順にブロック付加していることを示す。
【0029】
リンス剤組成物α中の成分(b)の濃度は、成分(a)の吸着を促進し、鋼板の疎水化を促進させる観点から、1mg/kg以上が好ましく、3mg/kg以上がより好ましく、そして、その後の焼鈍工程やメッキ工程の障害とならないようにする観点から、500mg/kg以下が好ましく、300mg/kg以下がより好ましく、200mg/kg以下が更に好ましく、100mg/kg以下がより更に好ましく、80mg/kg以下がより更に好ましく、50mg/kg以下がより更に好ましい。
【0030】
成分(a)と成分(b)の質量比は、撥水性を発現し、鋼板表面の水の付着を抑制する観点から、(a)/(b)で0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、2.0以上がより更に好ましく、そして、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、7.0以下が更に好ましい。
【0031】
〔成分(c)〕
成分(c)は、炭素数12以上22以下の脂肪酸と水酸基数が2以上6以下の多価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種である。
【0032】
成分(c)を構成する脂肪酸の炭素数は12以上22以下であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、そして、好ましくは20以下である。成分(c)を構成する脂肪酸は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸が好ましく、直鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸がより好ましい。脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、ステアリン酸、オレイン酸がより好ましい。
【0033】
成分(c)を構成する多価アルコールは、水酸基数が2以上6以下であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして好ましくは5以下である。多価アルコールとしては、ポリアルキレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、ポリアルキレングリコール、グリセリン、ソルビタンが好ましく、ソルビタンがより好ましい。また、ポリアルキレングリコールのアルキレングリコールの炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。ポリアルキレングリコールのアルキレングリコールの平均重合度は、1以上であり、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0034】
成分(c)中のエステル基の数は、1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。
【0035】
脂肪酸と多価アルコールとのエステルの水酸基のエステル化率は、エステル化合物中の〔エステル基の数/多価アルコールの水酸基の数〕で、好ましくは0.16以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上であり、好ましくは0.80以下である。
【0036】
エステルとしては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノミリスチレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリプロピレングリコールモノオレート、ポリブチレングリコールモノオレート、グリセロールモノオレート、グリセロールジオレート、ベンタエリスリトールモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレート等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは、ポリエチレングリコールモノオレート、グリセロールモノオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、より好ましくはポリエチレングリコールモノオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、更に好ましくはソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレートであり、低濃度でも水切り性を発現する観点から、より更に好ましくはソルビタントリオレートである。
【0037】
リンス剤組成物α中の成分(c)の濃度は、鋼板の疎水化を促進させる観点から、1mg/kg以上が好ましく、3mg/kg以上がより好ましく、そして、その後の焼鈍工程やメッキ工程の障害とならないようにする観点から、500mg/kg以下が好ましく、300mg/kg以下がより好ましく、200mg/kg以下が更に好ましく、100mg/kg以下がより更に好ましく、50mg/kg以下がより更に好ましく、30mg/kg以下がより更に好ましく、10mg/kg以下がより更に好ましい。
【0038】
前記成分(b)と前記成分(c)の質量比は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、成分(b)/成分(c)で好ましくは0.20以上、より好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.80以上であり、そして、好ましくは9.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.2以下である。
【0039】
前記成分(a)、前記成分(b)と前記成分(c)の質量比は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、[成分(a)/〔成分(b)+成分(c)〕]で、好ましくは0.80以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.6以上であり、好ましくは9.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.2以下、より更に好ましくは2.5以下である。
【0040】
リンス剤組成物αは、前記成分(a)、前記成分(b)、前記成分(c)を含有する水系組成物であり、水系媒体として水が用いられる。水としては、脱イオン水、イオン交換水、水道水、工業用水等が好ましく用いることができる。
【0041】
〔成分(d)〕
リンス剤組成物αは、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、更に、下記一般式(3):
【化2】
(式中、R
6は炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A
2Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、e、f及びgはそれぞれA
2Oの平均付加モル数を表す。nは重合数を示し、1以上3以下の数である。e、f、g個のA
2Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)で表されるアルキルグルコシドから選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(4):
R
7−O−(A
3O)
hH (4)
(式中、R
7は炭素数1以上9以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A
3Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、hは平均付加モル数を示し、1以上100以下の数である。h個のA
3Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種からなる群から選ばれる少なくとも1種である成分(d)を含有するのが好ましい。
【0042】
[一般式(3)で表されるアルキルグルコシド]
前記一般式(3)において、R
6は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、炭素数が好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、更に好ましくは10以上であり、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは22以下であり、より好ましくは16以下であり、更に好ましくは14以下であり、濃縮液の配合安定性の観点から直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。当該R
6としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基がより好ましい。
【0043】
前記一般式(3)において、A
2Oは、同一又は異なって、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の2以上4以下のアルキレンオキシ基を示す。前記一般式(3)において、A
2Oは、濃縮液の配合安定性の観点から、好ましくはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。
【0044】
前記一般式(3)において、e、f、gはA
2Oの平均付加モル数を示し、それぞれ0以上5以下の数であり、好ましくは0以上3以下、更に好ましくは0以上2以下である。e、f、g個のA
2Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。
【0045】
前記一般式(3)において、nは重合数を示し、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上、そして好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下である。
【0046】
[一般式(4)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル]
前記一般式(4)において、A
3Oは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を意味する。これらのうち、エチレンオキシ基が好ましい。A
3Oが複数種あってもよく、その場合はブロック結合、ランダム結合、交互結合などが使用でき、ブロック結合及び/又はランダム結合が好ましく、ランダム結合がより好ましい。
【0047】
前記一般式(4)において、R
7は炭素数1以上、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、そして、9以下、好ましくは8以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。アルキル基としては例えばヘキシル基、オクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。前記一般式(4)において、hは、平均付加モル数を示し、2以上、好ましくは4以上、そして、30以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
【0048】
具体的には、一般式(4)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、以下のものから選ばれる1又はそれ以上のものが挙げられる。
【0049】
C
j2H
2j2+1−O(EO)
p2H
C
j2H
2j2+1−O(EO)
q2(PO)
r2H、(但し、EOとPOがブロック付加したもの)
C
j2H
2j2+1−O(PO)
r2(EO)
q2H、(但し、EOとPOがブロック付加したもの)
C
j2H
2j2+1−O(EO)
s2(PO)
t2(EO)
u2H、(但し、EOとPOがブロック付加したもの)
C
j2H
2j2+1−O(EO)
q2(PO)
r2H(但し、EOとPOがランダム付加したもの)
【0050】
前段落の式中、EOはエチレンオキシ基(C
2H
4O)、POはプロピレンオキシ基(C
3H
6O)、j2は1以上9以下の整数、p2、q2、r2、s2、t2、u2は、それぞれ平均付加モル数であり、p2は3以上40以下の数、q2は1以上40以下の数、r2は1以上40以下の数、s2は1以上30以下の数、t2は1以上30以下の数、u2は1以上30以下の数、q2+r2は3以上100以下の数、s2+t2+u2は3以上100以下の数である。
【0051】
更に好ましくは、以下のものから選ばれる1又はそれ以上のものが挙げられる。
C
4H
9O(EO)
4H、C
6H
13O(EO)
4H、C
8H
17O(EO)
4H、C
8H
17O(EO)
2H、C
8H
17O(EO)
6H、C
8H
17O(EO)
8H、C
8H
17O(EO)
11H、C
8H
17O(EO)
20H、C
8H
17O(EO)
30H。
【0052】
なお、(EO)、(PO)は、特に記載しなければ、この順にブロック付加していることを示す。
【0053】
リンス剤組成物α中の成分(d)の濃度は、濃縮液の配合安定性の観点から、3.5mg/kg以上が好ましく、3.7mg/kg以上がより好ましく、そして、鋼板表面の撥水化の観点から、200mg/kg以下が好ましく、配合安定性の観点から、150mg/kg以下がより好ましく、35mg/kg以下が更に好ましい。
【0054】
前記リンス剤組成物αは、本実施形態の効果がある範囲で、更に、消泡剤、キレート剤、防腐剤などを含有してもよい。また、前記リンス剤組成物αは、鋼帯表面の撥水化の観点から、pHが3以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、そして、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。
【0055】
<鋼板の製造方法>
前記リンス剤組成物αは、鋼板の製造に用いることができる。前記リンス剤組成物αを用いた鋼板の製造方法は、冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、前記洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、前記すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に前記リンス剤組成物αを用いる。
【0056】
〔冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)〕
洗浄工程(1)では、常法の条件に従って、鋼板に付着する圧延油等の汚れを洗浄剤により洗浄する。鋼板は、いずれの金属であってもよいが、乾燥を促進させ防錆する観点から鉄を対象とすることが好ましい。洗浄剤として、例えば特開平10−280179号公報、特開平10−324900号公報に記載されているようなアルカリ洗浄剤を用いることができる。
【0057】
アルカリ洗浄剤は、アルカリ剤を含有する水溶液が用いられる。アルカリ剤は、油汚れの除去性を確保するため、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。アルカリ剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。二種以上の水溶性アルカリ剤を組み合わせてもよい。アルカリ剤の含有量は、アルカリ洗浄剤中、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0058】
アルカリ洗浄剤には、アルカリ剤に加えて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤;鉄石けん等の汚れに作用して鉄イオン等をキレートし、脂肪酸石けんにして汚れを溶解し易くして、洗浄性を向上させるキレート剤;保存時の安定性と、保存後の効果の安定性を確保する観点から、脂肪族カルボン酸又はその塩等を加えることができる。また、当該アルカリ洗浄剤には任意の添加剤を加えることができ、例えば、一般的に使用されている洗浄性を向上させる有機ビルダー等の添加剤を、コストの上昇等を考慮した上で配合することができる。アルカリ洗浄剤中の、アルカリ剤以外の成分の割合は適宜に決定されるが、アルカリ剤1質量部に対して、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。また、アルカリ洗浄剤は、アルカリ剤およびアルカリ剤以外の成分を含む不揮発分の割合が、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0059】
洗浄工程(1)としては、浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄等が挙げられる。電解洗浄は洗浄液中で鋼板をプラス(又はマイナス)にし、直流電流を流す洗浄方法であり、電流により鋼板から発生する酸素(又は水素)の気泡を利用し、物理力により鋼板に付着した油汚れや鉄粉などの固体汚れを取る工程である。また、鋼板表面に生成した酸化被膜を酸洗浄剤により除去する酸洗浄でも良い。
【0060】
〔洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)〕
すすぎ工程(2)では、前記洗浄工程(1)を施した後の鋼板を水又はリンス剤ですすいで洗浄剤及び残存している圧延油を除去するが、低温におけるすすぎ処理でも水切り性を向上し鋼板の乾燥性を向上する観点から、当該すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理に前記リンス剤組成物αを用いる。
【0061】
すすぎ工程(2)では、リンス剤を昇温するのにかかるエネルギーコストを低減するために、前記リンス剤組成物αを、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下、より更に好ましくは30℃以下で用いる。下限は特にないが、通常5℃以上である。
【0062】
すすぎ工程(2)では、1以上のすすぐ処理を含むことができるが、乾燥工程に至る前の最後のすすぎ処理で前記鋼板に前記リンス剤組成物αを接触させ、前記洗浄工程(1)が施された前記鋼板を処理する。2以上のすすぐ処理を含む場合は、すすぎ工程(2)でリンス剤組成物α以外のリンス剤や水を用いてリンス処理をすることができるが、すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理ではリンス剤組成物αを用いることが好ましい。
【0063】
すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理で行われるリンス剤組成物αを用いたリンス剤処理の具体例としては、ブラシしながらスプレーして前記鋼板をすすぐブラシリンス処理、スプレーしてブラシせずに前記鋼板をすすぐスプレーリンス処理、その他、前記鋼板を浸漬してすすぐ浸漬リンス処理があげられる。これらの中でも、リンス剤組成物αを効率よく鋼板に作用させる観点から、浸漬リンス処理及び/又はスプレーリンス処理が好ましく、リンス剤組成物αを鋼板に直接効率的に作用させることができる点で、スプレーリンス処理がより好ましい。また、リンス剤組成物αでスプレー処理し、スプレー処理後に鋼板表面から留出したリンス剤組成物αを浸漬槽に導入し、再利用することができる。
【0064】
ブラシリンス処理においては、ブラシロール間又はブラシロールと搬送ロール間に、鋼板を搬送させながら、鋼板およびブラシロールにリンス剤組成物αをスプレーすることにより、鋼板にリンス剤組成物αを接触させる。ブラシロールの回転速度は100回転/分以上が好ましく、500回転/分以上がより好ましく、そして、1200回転/分以下が好ましく、1000回転/分以下がより好ましい。
【0065】
スプレーリンス処理においては、鋼板にリンス剤組成物αを直接スプレーして、鋼板にリンス剤組成物αを接触させる。スプレーの条件は、スプレー圧が0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましく、0.1MPa以上が更に好ましく、そして、3MPa以下が好ましく、2MPa以下がより好ましく、1.5MPa以下が更に好ましく、1MPa以下がより更に好ましい。スプレー量は0.01m
3/時間以上が好ましく、0.05m
3/時間以上がより好ましく、0.1m
3/時間以上が更に好ましく、そして、100m
3/時間以下が好ましく、50m
3/時間以下がより好ましく、10m
3/時間以下が更に好ましい。スプレー時間(スプレーリンス処理における接触時間)は0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましく、1秒以上が更に好ましく、そして、30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
【0066】
浸漬リンス処理においては、リンス剤組成物αへの浸漬時間は、1秒以上5秒以下が好ましく、シャワーする場合は、スプレー圧0.05MPa以上1.5MPa以下で、0.1秒以上5秒以下が好ましい。
【0067】
すすぎ工程(2)で2以上のすすぐ処理を含む場合において、水やリンス剤組成物α以外のリンス剤で前記鋼板を処理する場合は、水やリンス剤組成物α以外のリンス剤でブラシリンス処理しリンス剤組成物αで浸漬リンス処理をする方法及び水やリンス剤組成物α以外のリンス剤で浸漬リンス処理しリンス剤組成物αでスプレーリンス処理をする方法が好ましい。鋼板の乾燥の負荷を低減する観点から、水で処理した後リンス剤組成物αで処理することがより好ましい。具体的には、水でブラシリンス処理しリンス剤組成物αで浸漬リンス処理をする方法及び水で浸漬リンス処理しリンス剤組成物αでスプレーリンス処理をする方法がより好ましい。
【0068】
また、例えば、水やリンス剤組成物α以外のリンス剤で処理する場合、用いる水の温度は、エネルギーコストを低減するために、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、より更に好ましくは30℃以下である。水で処理する方法としては鋼板を水やリンス剤に浸漬してもよく、シャワーなどですすぎ洗いをしてもよい。
【0069】
ブラシリンス処理においては、ブラシロール間又はブラシロールと搬送ロール間に、鋼板を搬送させながら、鋼板およびブラシロールにスプレーすることにより、鋼板に水やリンス剤を接触させる。ブラシロールの回転速度は100回転/分以上が好ましく、500回転/分以上がより好ましく、そして、1200回転/分以下が好ましく、1000回転/分以下がより好ましい。
【0070】
スプレーリンス処理においては、鋼板に水やリンス剤を直接スプレーして、鋼板に水やリンス剤を接触させる。スプレーの条件は、スプレー圧が0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましく、0.1MPa以上が更に好ましく、そして、3MPa以下が好ましく、2MPa以下がより好ましく、1.5MPa以下が更に好ましく、1MPa以下がより更に好ましい。スプレー量は0.01m
3/時間以上が好ましく、0.05m
3/時間以上がより好ましく、0.1m
3/時間以上が更に好ましく、そして、100m
3/時間以下が好ましく、50m
3/時間以下がより好ましく、10m
3/時間以下が更に好ましい。スプレー時間(スプレーリンス処理における接触時間)は0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましく、1秒以上が更に好ましく、そして、30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
【0071】
また、すすぎ工程(2)で鋼板を水やリンス剤に浸漬処理する場合、鋼板の水やリンス剤への浸漬時間は、0.5秒以上が好ましく、1秒以上がより好ましく、そして、10秒以下が好ましく、5秒以下がより好ましい。
【0072】
前記洗浄工程(1)及びすすぎ工程(2)は、通常、鋼板を搬送する連続したラインとして設けられる。鋼板の搬送速度は、通常、30m/分以上、鋼板の生産性の観点から、好ましくは50m/分以上、より好ましくは100m/分以上、更に好ましくは300m/分以上であり、そして、1000m/分以下、好ましくは800m/分以下であり、かかる搬送ライン速度を考慮して、前記洗浄工程(1)及びすすぎ工程(2)における、各処理時間が設定される。
【0073】
更に、乾燥工程(3)での負荷を低減する観点から、リンス剤組成物αを用いたリンス剤処理と乾燥工程(3)の間に、リンス剤組成物αを用いたリンス剤処理された鋼板の表面を地面に対して略垂直に保持する処理を行うことが好ましい。この処理により、リンス剤組成物αで撥水性を付与された鋼板表面の水が重力によって落下し鋼板表面に残留する水の量が低減される。略垂直に保持する時間は、鋼板表面の水分量を低減する観点から、1秒以上が好ましく、3秒以上がより好ましく、そして、鋼板の搬送の観点から、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。
【0074】
〔前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)〕
乾燥工程(3)では、前記すすぎ工程(2)が施され、リンス剤組成物αが付着している鋼板を乾燥させる。当該乾燥工程(3)では、常法の条件に従って、リンス剤組成物αが付着した鋼板を乾燥させる。オーブン等の高温での乾燥手段でのエネルギーを低減する観点から、リンス剤組成物αを用いたリンス剤処理の後、乾燥工程(3)の初めに、鋼板表面に空気等の気体を噴射し、鋼板上の水分を吹き飛ばす処理を行うことが好ましい。乾燥工程における乾燥手段としては、例えば80℃以上150℃以下、好ましくは120℃以下のオーブンに入れる方法が挙げられる。また、これらの温度に調整した空気等の気体を鋼板表面に噴射する方法が挙げられる。乾燥時間は、例えば、鋼板を搬送する連続したラインにおける加熱機の数を低減でき、エネルギーコストを低減する観点から、60秒以下が好ましく、40秒以下がより好ましく、20秒以下がより好ましい。鋼板工場の製造設備では、80℃以上150℃以下、好ましくは120℃以下で3秒から10秒加熱し乾燥させる方法が挙げられる。
【0075】
洗浄後に得られる鋼板は自動車用鋼板や缶詰などの飲料用鋼板、家電用鋼板など様々な用途に用いることができる。
【0076】
上述した実施形態に関し、本明細書は更に以下の組成物、及び製造方法を開示する。
<1>下記一般式(1):
【化3】
(式中、R
1は炭素数6以上22以下の炭化水素基を示し、R
2は水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基、R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を示す。X
―は無機アニオンあるいは有機アニオンを示す。)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(a)と、下記一般式(2):
R
5−O−(A
1O)
mH (2)
(式中、R
5は炭素数10以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A
1Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、mは平均付加モル数を示し、1以上100以下の数である。m個のA
1Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(b)と、炭素数12以上22以下の脂肪酸と水酸基数が2以上6以下の多価アルコールとのエステルから選ばれる少なくとも1種である成分(c)とを含有する、鋼板用リンス剤組成物。
【0077】
<2>前記R
1が、炭素数6以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、そして、22以下であり、好ましくは18以下である直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である、前記<1>に記載の鋼板用リンス剤組成物。
<3>前記R
1が、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基がより好ましく、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基が更に好ましい、前記<1>又は<2>に記載の鋼板用リンス剤組成物。
<4>前記R
2が水素原子、又は炭素数1以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは16以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下であり、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは直鎖のアルキル基又はアルケニル基である、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<5>前記R
2が、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基が好ましく、水素原子がより好ましい、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<6>前記R
3及びR
4が、同一又は異なって、水素原子又はメチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1以上3以下の炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<7>X
−が、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、酢酸、乳酸もしくはクエン酸等の有機酸からプロトンを除去した有機陰イオン、炭素数1以上5以下のアルキルサルフェートイオン(CH
3SO
4−、C
2H
5SO
4−、C
3H
7SO
4−等)、アルキル炭酸イオン(CH
3CO
3−)、アルキルホスフェートイオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン及びCH
3CO
3−等の有機陰イオンがより好ましく、有機陰イオンが更に好ましい、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<8>前記成分(a)が、炭素数が6以上22以下のモノアルキルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のモノアルキルメチルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のモノアルキルジメチルアミンの酸中和物、炭素数が1以上22以下のジアルキルメチルアミンの酸中和物、炭素数が1以上22以下のジアルキルジメチルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のアルキルトリメチルアンモニウム、炭素数が1以上22以下のジアルキルアンモニウムが好ましい、前記<1>〜<7>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<9>前記成分(a)が、ラウリルアミンの塩酸塩、ステアリルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、ヘキシルアミンの酢酸塩、ベヘニルアミンの酢酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ミリスチルアミンの酢酸塩、パルミチルアミンの酢酸塩、ステアリルアミンの酢酸塩、オレイルアミンの酢酸塩、ジオクチルアミンの塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドが好ましく、ヘキシルアミンの酢酸塩、オクチルアミンの酢酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ヘキサデシルアミンの酢酸塩、オレイルアミンの酢酸塩、ステアリルアミンの酢酸塩、ベヘニルアミンの酢酸塩、ヘキシルアミンの塩酸塩、オクチルアミンの塩酸塩、ラウリルアミンの塩酸塩、ヘキサデシルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、ステアリルアミンの塩酸塩、ベヘニルアミンの塩酸塩がより好ましく、ヘキサデシルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの酢酸塩が更に好ましい、前記<1>〜<8>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<10>成分(a)の鋼板用リンス剤組成物中の濃度が、5mg/kg以上が好ましく、10mg/kg以上がより好ましく、12mg/kg以上が更に好ましく、そして、1000mg/kg以下が好ましく、800mg/kg以下がより好ましく、500mg/kg以下が更に好ましく、300mg/kg以下がより更に好ましく、150mg/kg以下がより更に好ましく、100mg/kg以下がより更に好ましく、70mg/kg以下がより更に好ましい、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<11>前記R
5が、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下である、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<12>前記アルキル基が、デシル基、sec−デシル基、ラウリル(ドデシル)基、sec−ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、パルミチル基、ステアリル基が好ましく、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基がより好ましく、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基が更に好ましい、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<13>前記mが、1以上、好ましくは3以上、より好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは35以下、より更に好ましくは30以下である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<14>前記成分(b)の鋼板用リンス剤組成物中の濃度が、1mg/kg以上が好ましく、3mg/kg以上がより好ましく、そして、500mg/kg以下が好ましく、300mg/kg以下がより好ましく、200mg/kg以下が更に好ましく、100mg/kg以下がより更に好ましく、80mg/kg以下がより更に好ましく、50mg/kg以下がより更に好ましい、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<15>前記成分(a)と前記成分(b)の質量比((a)/(b))が、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、2.0以上がより更に好ましく、そして、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、7.0以下が更に好ましい、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<16>前記成分(c)を構成する脂肪酸の炭素数が12以上22以下であり、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、そして、好ましくは20以下である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<17>前記成分(c)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等が好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸がより好ましく、ステアリン酸、オレイン酸が更に好ましい、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<18>前記成分(c)を構成する多価アルコールが、水酸基数が2以上6以下であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして好ましくは5以下である前記<1>〜<17>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<19>前記多価アルコールが、ポリアルキレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトールが好ましく、ポリアルキレングリコール、グリセリン、ソルビタンがより好ましく、ソルビタンが更に好ましい、前記<18>に記載の鋼板用リンス剤組成物。
<20>前記ポリアルキレングリコールのアルキレングリコールの炭素数が、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である、前記<19>に記載の鋼板用リンス剤組成物。
<21>ポリアルキレングリコールのアルキレングリコールの平均重合度が、1以上であり、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である、前記前記<19>又は<20>に記載の鋼板用リンス剤組成物。
<22>前記成分(c)中のエステル基の数が、1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である、前記<1>〜<21>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<23>前記成分(c)の脂肪酸と多価アルコールとのエステルの水酸基のエステル化率が、エステル化合物中の〔エステル基の数/多価アルコールの水酸基の数〕で、好ましくは0.16以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.25以上であり、好ましくは0.8以下である、前記<1>〜<22>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<24>前記エステルが、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノミリスチレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリプロピレングリコールモノオレート、ポリブチレングリコールモノオレート、グリセロールモノオレート、グリセロールジオレート、ベンタエリスリトールモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレートが好ましく、ポリエチレングリコールモノオレート、グリセロールモノオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレートがより好ましく、ポリエチレングリコールモノオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレートが更に好ましく、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレートがより更に好ましく、ソルビタントリオレートがより更に好ましい、前記<1>〜<23>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<25>前記成分(c)の鋼板用リンス剤組成物中の濃度が、1mg/kg以上が好ましく、3mg/kg以上がより好ましく、500mg/kg以下が好ましく、300mg/kg以下がより好ましく、200mg/kg以下が更に好ましく、100mg/kg以下がより更に好ましく、50mg/kg以下がより更に好ましく、30mg/kg以下がより更に好ましく、10mg/kg以下がより更に好ましい、前記<1>〜<24>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<26>前記成分(b)と前記成分(c)の質量比(成分(b)/成分(c))が、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.40以上、更に好ましく0.80以上であり、そして、好ましくは9.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.2以下である、前記<1>〜<25>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<27>前記成分(a)と、前記成分(b)及び前記成分(c)の質量比([成分(a)/〔成分(b)+成分(c)〕])が、好ましくは0.80以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.6以上であり、好ましくは9.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.2以下、より更に好ましくは2.5以下である、前記<1>〜<26>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<28>更に、前記一般式(3)(式中、R
6は炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A
2Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、e、f及びgはそれぞれA
2Oの平均付加モル数を表す。nは重合数を示し、1以上3以下の数である。e、f、g個のA
2Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)で表されるアルキルグルコシドから選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(4)(式中、R
7は炭素数1以上9以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A
3Oは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、hは平均付加モル数を示し、1以上100以下の数である。h個のA
3Oはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種からなる群から選ばれる少なくとも1種である成分(d)を含有するのが好ましい、前記<1>〜<27>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<29>前記R
6が、炭素数が好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、更に好ましくは10以上であり、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは22以下であり、より好ましくは16以下であり、更に好ましくは14以下である、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい、前記<1>〜<28>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<30>前記A
2Oが、同一又は異なって、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の2以上4以下のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基がより好ましく、エチレンオキシ基が更に好ましい、前記<1>〜<29>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<31>前記A
3Oが、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基がより好ましい、前記<1>〜<30>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<32>前記R
7が炭素数1以上、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、好ましくは9以下、より好ましくは8以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい前記<1>〜<31>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<33>リンス剤組成物α中の成分(d)の濃度が、3.5mg/kg以上が好ましく、3.7mg/kg以上がより好ましく、200mg/kg以下が好ましく、150mg/kg以下がより好ましく、35mg/kg以下が更に好ましい、前記<1>〜<32>のいずれかに記載の鋼板用リンス剤組成物。
<34>冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、前記洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、前記すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に前記<1>〜<33>いずれかに記載の鋼帯用リンス剤組成物を用いる、鋼板の製造方法。
<35>前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理が、浸漬リンス処理及び/又はスプレーリンス処理が好ましく、スプレーリンス処理がより好ましい<34>に記載の鋼板の製造方法。
<36>前記洗浄工程(1)及びすすぎ工程(2)が、鋼板を搬送する連続したラインとして設けられ、鋼板の搬送速度が、好ましくは30m/分以上、より好ましくは50m/分以上、更に好ましくは100m/分以上、より更に好ましくは300m/分以上であり、好ましくは1000m/分以下、より好ましくは800m/分以下である、<34>又は<35>に記載の鋼板の製造方法。
<37>前記<1>〜<33>いずれかに記載の組成物の鋼板の製造への使用。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0079】
[実施例A−1〜A−68、B−1〜B−13、比較例A−1〜A〜11、B−1〜B−4]
〔洗浄剤の調製〕
水酸化ナトリウム2質量%、グルコン酸ナトリウム0.16質量%、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.05質量%、ポリオキシエチレンドデシルエーテル0.1質量%、ポリアクリル酸ナトリウム0.05質量%、水97.64質量%を添加混合した水溶液を洗浄剤Aとして使用した。
【0080】
〔リンス剤組成物の調製〕
水を60℃に加温して成分(a)となるオレイルアミンと酢酸、(b)成分である非イオン界面活性剤及び表1〜6に示した(c)成分を各成分の合計量が18質量%になる量を添加し、オレイルアミンが溶解するまで混合することにより濃縮液を調整した。試験の際には表の濃度に希釈(4500倍)して用いた。
【0081】
表1〜12のC
18H
37O(EO)
12(PO)
21H(ランダム)とは、ステアリルアルコール1モルに対しエチレンオキシド12モルとプロピレンオキシド21モルとをランダム付加した化合物(HLB1.9)であり、前記一般式(2)において、R
5が炭素数18の直鎖のアルキル基、A
1Oがエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基、mが33である。表1のC
18H
37O(EO)
8(PO)
6H(ランダム)とは、ステアリルアルコール1モルに対しエチレンオキシド8モルとプロピレンオキシド6モルとをランダム付加した化合物であり、一般式(2)において、R
5が炭素数18の直鎖のアルキル基、A
1Oがエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基、mが14である。また、表1〜12の(EOx)〔ただしxは数字〕はエチレンオキシドの平均付加モル数がxの化合物、(Cy)〔ただしyは数字〕は炭素数がyのアルキル基、(Cy−z)〔ただしy及びzは数字〕は、炭素数がyからzのアルキル基の混合物を示す。
【0082】
〔水切り性の評価〕
<洗浄工程:アルカリ洗浄>
縦70mm、横100mmにカットした厚さ0.7mmの冷間圧延鋼板(汚れ:鉄粉及び圧延油)を、アルカリ洗浄槽内の洗浄剤Aに浸漬(浸漬時間2秒)し、アルカリ洗浄槽から引き上げた。
【0083】
<洗浄工程:電解洗浄>
前記アルカリ洗浄工程を施した鋼板を、電解洗浄槽内の前記洗浄剤Aに浸漬し、電解洗浄(電解時間1秒、負極と正極のスイッチング間隔が各0.5秒、電流密度10A/dm
2)し、電解洗浄槽から引き上げた。
【0084】
<洗浄工程:ブラシ洗浄>
前記電解洗浄工程を施した後の鋼板を、ノズル(株式会社いけうち社製スプレーノズル1/4MVE11578)を用い、スプレー圧0.2MPa、スプレー量5L/分で水(25℃)をスプレーしながら、ブラシロール洗浄試験機(昭和工業株式会社製、ナイロンブラシ、ブラシ回転数600回転/分、ブラシ圧下量2.5mm、鋼板送り速度100m/分)でブラシ洗浄を行った。
【0085】
<すすぎ工程:スプレーリンス処理>
前記ブラシ洗浄工程を施した後の鋼板を、ノズル(株式会社いけうち社製スプレーノズル1/4MJ100NBW)を用い、スプレー圧0.2MPa、スプレー量5L/分で表1〜12に示したリンス剤組成物(25℃)を鋼板にスプレーした。そして、リンス剤処理した鋼板の表面が地面に対して垂直になるようにして5秒間保持した。実施例B−1〜B−3及び比較例B−1は鋼板の送り速度を100m/分に、実施例B−4〜B−6及び比較例B−2は鋼板の送り速度を500m/分で行った以外は、鋼板の送り速度は60m/分で行った。
【0086】
<乾燥工程>
前記すすぎ工程を施した後の鋼板に対して、ウインゴ精機株式会社製のEDMドライヤーを用いて乾燥を行った。乾燥操作は、ドライヤーのスイッチをHEAT側にしてノズルから10cm程度離した位置で約15秒間乾燥させ、目視上鋼板表面の水滴がなくなるように水分を除去した。なお、鋼板の生産では、通常、この後更に鋼板を加熱して乾燥が行われる。
【0087】
<付着水量の測定>
すすぎ工程直後に鋼板の質量とエアブロー後の鋼帯の質量を測定した。その差分、即ち下記式により付着水量を算出し、単位面積当たりの付着水量(g/m
2)を求めた。
[付着水量(g)]=[すすぎ工程後の鋼帯質量(g)]−[エアブロー後の乾燥鋼帯質量(g)]
【0088】
<配合安定性の評価>
濃縮液を配合後、目視にて液の濁りを以下の基準で評価した。透明な液であるほど配合安定性に優れる。
A:配合直後及び室温で一週間後も透明
B:配合直後は透明だが、室温で一週間後は濁りがある
C:配合直後から濁りがある
【0089】
結果を表1〜12に示した。なお、表6の結果は用いた汚れが付着した冷間圧延鋼板のロットが異なるため、表1〜5、及び7〜12の水切り性とは直接対比ができない。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】