(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記(B)成分を前記(A)成分100質量部に対し、2〜12質量部添加するとともに、前記(D)成分が(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm〜400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、前記(D1)成分とは異なる(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm〜280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有し、前記(A)成分が、エネルギー線硬化性官能基数が10〜20の範囲である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、前記(D1)成分と前記(D2)成分の添加比が質量比で3:97〜45:55の範囲であり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を1〜12質量部添加することを特徴とするエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物、耐候性ハードコートフィルムの各形態について具体的に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
[エネルギー線硬化型樹脂組成物]
【0021】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)エネルギー線硬化型オリゴマーと、(B)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種と、(C)ヒンダードアミン系光安定剤と、(D)光重合開始剤と、を含有するものである。各成分について以下に詳細に説明する。
【0022】
[(A)成分]
本発明で使用される(A)成分は、エネルギー線硬化型オリゴマーである。
【0023】
ここでエネルギー線硬化型オリゴマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となる(メタ)アクリル系オリゴマーが特に好ましく使用される。この(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。なお、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを指す。
【0024】
(A)成分において使用されるエネルギー線硬化型オリゴマーは、質量平均分子量は1,000〜20,000が好ましい。質量平均分子量が1,000未満である場合には柔軟性が不足するからであり、20,000を超えた場合には塗膜硬度が不足するからである。柔軟性と塗膜硬度の観点から質量平均分子量は、1,000〜10,000であることが更に好ましい。
【0025】
(A)成分において使用されるエネルギー線硬化型オリゴマーは、エネルギー線硬化性官能基数が10〜20である多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなるものであることが好ましい。このオリゴマーを使用することにより、塗膜硬度を保ちながら柔軟性も保持する効果が奏される。エネルギー線硬化性官能基数が10未満の場合には塗膜硬度が不足し、20を超えた場合には柔軟性が不足するからである。エネルギー線硬化性官能基数は、塗膜硬度と柔軟性の観点から10〜16の範囲が更に好ましい。
【0026】
[(E)成分]
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物においては、(A)成分に加えて、(E)成分として更にエネルギー線硬化型モノマーを用いることもできる。この場合、(E)成分の割合は、(A)成分と(E)成分の合計に対して40質量%未満となるようにするのが好ましい。このような範囲とすることにより、後述する耐湿性試験における基材密着性をより向上させることができるからである。(E)成分としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等を好適に挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0027】
上記の(E)成分以外にも、(E)成分として、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートといった疎水性の2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用することも好ましい。これらのモノマーを使用することにより後述する耐湿性試験における基材密着性をより向上させることができるからである。
【0028】
[(B)成分]
本発明で使用される(B)成分は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤の中から選ばれる少なくとも1種である。これらのものは、UVA(波長320〜400nm)領域に吸収を有するものであるため、後述するUVA340ランプを用いた耐候性試験で良好な結果を示すことができる。なお、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の方がUVA領域の吸収が大きいため、耐候性試験において良好な結果を得ることができる。なお、
【0029】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(2−(オクチルオキシカルボニル)エチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−(ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス(2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)−5’−メチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
トリアジン系化合物の代表例としては、2−(4−ヘキシロキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(4−オクチロキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,5−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(3−(2−エチルヘキシロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(3−ドデシロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0031】
(B)成分の添加量は、前記(A)成分100質量部に対して2〜12質量部の範囲であることが必要である。2質量部未満では耐候性が劣ることとなるからであり、また、12質量部を超える場合は、塗膜硬度及び基材密着性が劣ることとなるからである。耐候性、塗膜硬度と基材密着性の観点から2.5〜10質量部の範囲であることが好ましく、3〜8質量部であることが更に好ましい。なお、前記(A)成分の他、(E)成分としてエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(B)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0032】
[(C)成分]
本発明で使用される(C)成分は、ヒンダードアミン系化合物である。このものを添加することにより、紫外線照射により発生したラジカルを効率的に補足することができるので耐候性を向上させることができる。(C)成分としては、例えば、4−ペゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヘキサノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、サバシン酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、サバシン酸−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、フタル酸−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)、トリメシン酸−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
(C)成分の添加量は、前記(A)成分100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲であることが好ましい。0.05質量部未満では耐候性が劣るからであり、また、5質量部を超える場合は、耐擦傷性が劣ることとなるからである。耐候性と耐擦傷性の観点から0.5〜3質量部の範囲であることが好ましい。なお、前記(A)成分の他、(E)成分としてエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(C)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0034】
[(D)成分]
本発明で使用される(D)成分は(D1)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm〜400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、(D2)メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm〜280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤と、をそれぞれ少なくとも1種以上含有するものである。これら2種類の光重合吸収剤を添加することにより、各々単独で用いた場合よりも耐湿性に関して大幅な相乗効果が見られる点が本発明の特徴の一つである。
【0035】
本発明で使用される(D)成分の添加量は、前記(A)成分の合計100質量部あたり、1〜15質量部の範囲であることが好ましい。1質量部未満では塗膜硬度及び基材密着性が不足するからであり、また、15質量部を超える場合は、この成分同士の再結合による硬化阻害に伴い基材密着性が不足するからである。塗膜硬度、基材密着性の点から3〜12質量部の範囲であることが更に好ましい。なお、前記(A)成分の他(E)成分として更にエネルギー線硬化型モノマーを用いた場合には、前記(D)成分の配合量は、(A)成分であるエネルギー線硬化型オリゴマーと(E)成分であるエネルギー線硬化型モノマーの合計量100質量部あたりの添加量を指す。
【0036】
[(D1)成分]
本発明で使用される(D1)成分は、メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.01%質量溶液における340nm〜400nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤をいう。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
(D1)成分は市販品を使用することができ、例えばイルガキュア651、907、819、369、379、1800、784、ダロキュア4265、ルシリンTPO(以上、BASF社製)等を挙げることができる。
【0038】
[(D2)成分]
本発明で使用される(D2)成分は、メタノール又はアセトニトリルに溶解させた0.001質量%溶液における220nm〜280nmの波長範囲における吸光度の最大値が0.1以上である光重合開始剤をいう。例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、オキソフェニル酢酸メチル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(4−メチルビニル)フェニル]プロパノン等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0039】
(D2)成分は市販品を使用することができ、例えばイルガキュア184、651、500、2959、127、754、907、1800、ダロキュア1173、MBF(以上、BASF社製)、イサキュアKIP150、KIP100F、ONE、(以上、ランベルティ社製)等を挙げることができる。
【0040】
このような(D)成分は、耐湿性向上の観点から、前記(D1)成分を有する光重合開始剤の添加量が前記(D2)成分を有する光重合開始剤の添加量と同量若しくは少量とすることが好ましい。(D1)成分と(D2)成分の添加割合は質量比で3:97〜45:55の範囲であることが特に好ましい。なお、(D)成分は、1種類の光重合開始剤で、(D1)成分と(D2)成分の光重合開始波長領域を有するものもあるが、本発明においては少なくとも(D1)成分を有するものと(D2)成分を有するものの2種類を用いる必要がある。よって、このような(D1)成分と(D2)成分を有する1種類の光重合開始剤を用いる場合であっても、もう1種類別の光重合開始剤を用いらなければならない。このように2種類の光重合開始剤を含有することにより、紫外線吸収性能を有するエネルギー線硬化型樹脂組成物であっても、硬化させた際に耐擦傷性に優れ、耐湿性に優れた塗膜を得ることができる。
【0041】
更に、本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、他の樹脂、溶剤や光重合開始助剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、顔料、防汚剤、微粒子、滑剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、可塑剤、流動調整剤、分散剤、離型剤等の添加剤等を添加し、それぞれ目的とする機能を付与することも可能である。
【0042】
光重合開始助剤としては、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、多官能チオール化合物等を挙げることができる。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。溶剤については特に限定はないが、前記(A)成分と反応し得る官能基を含まないものであれば好適に用いることができる。
【0043】
好ましい溶媒としてはトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒:その他の公知の有機溶剤を挙げることができる。
【0044】
使用する有機溶媒の種類は同時に添加される前記(A)、(B)、(C)、(D)成分等との溶解性を考慮して決められるが、乾燥時の残存溶媒の残りにくさの点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン等の沸点が120℃以下の有機溶媒が好ましい。これらのものは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。溶剤使用量は特に限定はないが、組成物粘度が採用する塗工方式に適した粘度になるように調整することが好ましい。好ましい使用量としては組成物全体の5〜90質量%であり、より好ましくは10〜85質量%、更に好ましくは20〜80質量%である。
【0045】
レベリング剤としてはアクリル系化合物、高沸点溶剤、フッ素系化合物、シリコーン系化合物等を挙げることができるが、表面を鏡面に仕上げる点でフッ素系化合物、シリコーン系化合物が好ましい。酸化防止剤としてはフェノール系化合物等を、重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、前記イソシアネート類、メラミン化合物等を挙げることができる。微粒子は、シリカ、炭酸カルシウム等の無機微粒子及びポリメチルメタクリレートやポリスチレン等の有機微粒子等を挙げることできる。防汚剤はフッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合物を挙げることができ、防汚性能よりフッ素系化合物が好ましい。
【0046】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物は上述した(A)、(B)、(C)、(D)成分、さらには必要に応じて、(E)成分、溶剤、並びに添加剤を任意の順序で添加することにより得ることができる。以下、本発明において前記各種成分を添加した液をハードコート液と呼ぶことがある。
【0047】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物を基材フィルムの少なくとも片面に塗布する工程を含む製法で得ることが出来る。このため、本発明のハードコートフィルムには、ハードコート層を両面に塗布したもの、ハードコート層を塗布していない基材フィルム面に粘着剤層、印刷層を塗布したものも含まれることになる。
【0048】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を用いることが出来る。なお、エネルギー線硬化型樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、易接着層の塗布による処理、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理等の表面処理を施してもよい。基材フィルムにはエネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する前にあらかじめ片面又は両面に粘着剤層や意匠性付与のための印刷やコーティングが付与されていてもよい。
【0049】
塗布には公知の方法、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スピンコート法、フローコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、刷毛塗り等を用いることができる。
【0050】
エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度が塗布に適した粘度より高ければ溶剤を用いて粘度調整をしてもよい。使用可能な溶剤は上述のとおりである。
【0051】
エネルギー硬化型樹脂組成物で溶剤を含む場合には、塗布後に乾燥を行う必要がある。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がポリエチレンテレフタレートフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜100℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機を異なる温度、風速に設定してもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をマイルドにするのが好ましい。塗布厚みに特に制限はないが乾燥後膜厚が1〜20μmになるように塗工するのが好ましい。より好ましくは1〜15μm、更に好ましくは1〜10μmである。
【0052】
本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等を挙げることができる。紫外線により硬化させる場合、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置等が調整される。高圧水銀灯を使用する場合、80〜160W/cm
2のエネルギーを有するランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置を使用するのが好ましい。
【0053】
本発明のハードコートフィルムのハードコート層は、JIS K−5400に規定の鉛筆硬度が、2H以上、さらには、3H以上に調整されていることが好ましい。鉛筆硬度が所定値以上に調整されていることにより、ハードコート層の表面が傷つくことを効果的に防止することができる。
【0054】
このようなハードコート層は#0000のスチールウールを3cm
2円柱治具へかぶせて巻いたものを、加重500gをかけた状態で、30往復、より好ましくは50往復、特に好ましくは70往復以上させたときに傷を生じることがないように調整されていることが好ましい。このように調整することで、必要な耐擦傷性を確保することができる。
【0055】
本発明のハードコートフィルムは、ASTM G−154に規定の耐候性試験の12サイクル経過後の黄変度(Δb)が1.0未満、より好ましくは、0.5未満であることが望ましい。黄変度(Δb)とは耐候性試験後のb値(b1)から試験前のb値(b0)を減じた値を示す。また、ASTM G−154に規定の耐候性試験の12サイクル経過後の基材密着性がJIS K−5400に基づき90/100以上であることが好ましい。黄変度(Δb)と基材密着性をこのように調整することにより耐候性の良好なハードコートフィルムを得ることができる。
【0056】
本発明のハードコートフィルムは、温度60℃、湿度90%の環境下で500時間後のJIS K−5400に規定の基材密着性が90/100以上、より好ましくは100/100であることが好ましい。このように調整することにより耐湿性の良好なハードコートフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。又、実施例中、特に断りがない限り部は質量部を示す。
【0058】
(塗膜硬度)
JIS K−5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、ハードコートフィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度でセットし、上から1000gの荷重をかけて5mm程度引っかき、5回中4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さで表した。
【0059】
(耐擦傷性)
耐スチールウール試験として、#0000のスチールウールを3cm
2円柱治具へ被せて巻いたものを本発明のハードコート層上に載せ、加重500gをかけた状態で往復させた。キズが最初に発生した直前の回数を記録した。
【0060】
(耐候性)
ASTM G−154に準拠し、QUV紫外線蛍光促進機(Q−LAB社製)を使用して60℃の環境下で8時間UVA340ランプを用い紫外線を照射後、50℃の環境下で4時間結露させる。これを1サイクルとして12サイクル行った。12サイクル後の黄変度(Δb)を分光測色計(商品名:CM−5、コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定(後述する表1〜4において耐候性(Δb)と記載)すると共に、基材密着性(後述する表1〜4において耐候性(密着)と記載)をJIS K−5400に基づき評価した。
【0061】
(耐湿性)
温度60℃、湿度90%R.H.(相対湿度)の環境下で500時間後の基材密着性をJIS K−5400に基づき評価した。
【0062】
各実施例、比較例で用いた(A)成分〜(E)成分は以下のとおりである。
【0063】
(A1)成分:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:アートレジンUN−904、根上工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:10、質量平均分子量4900)である。
【0064】
(A2)成分:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:アートレジンUN−3320HS、根上工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:15、質量平均分子量4900)である。
【0065】
(B1)成分:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(商品名:ULS−1933D、一方社油脂工業社製)である。
【0066】
(B2)成分:トリアジン系紫外線吸収剤(商品名:チヌビン477、BASF社製)である。
【0067】
(C)成分:ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:チヌビン765、BASF社製)である。
【0068】
(D1)成分:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、BASF社製)である。
【0069】
(D2)成分:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、BASF社製)である。
【0070】
(E)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートモノマー(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製、エネルギー線硬化性官能基数:6、質量平均分子量578)である。
【0071】
他の紫外線吸収剤:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(商品名:LS−907、一方社油脂工業社製)である。
【0072】
レベリング剤:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:BYK−331、ビックケミー・ジャパン社製)
【0073】
実施例1
(A1)100質量部、(B1)5質量部、(C)1質量部、(D1)3質量部、(D2)4質量部に、レベリング剤0.25質量部、メチルエチルケトン(MEK)75質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)75質量部を加え、撹拌、添加することにより固形分が43%のハードコート液を調製した。次に、この塗工液を、厚さ188μmのPETフィルム(商品名:コスモシャインA4300、東洋紡社製)の表面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で2分乾燥、高圧水銀等を300mJ/cm
2照射で硬化することにより膜厚6μmのハードコート層を形成した。このものの物性を表1に示す。
【0074】
実施例2〜13および参考例1〜4
表1〜3に示す組成のエネルギー線硬化型樹脂組成物をそれぞれ用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。これらのハードコートフィルムの物性を表1〜3に示す。
【0075】
比較例1〜6
表4に示す組成のハードコート液をそれぞれ用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。これらのハードコートフィルムの物性を表4に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
(評価)
表1〜3を見ると、実施例1〜13および参考例1〜4の何れにおいても鉛筆硬度は3Hであり、塗膜硬度に優れていることが理解できる。また、耐擦傷性の評価においても何れも30回を超えており、耐擦傷性に優れていることが理解できる。実施例4を見ると、(C)成分の添加量が少量であるため他の実施例と比較して耐候性の点でやや不足する結果となった。参考例1においては、(D1)成分の配合量が(D2)成分の配合量よりも多いため耐湿性がやや不足していることが理解できる。参考例1と4を見ると、(A1)成分の一部を(E)成分に置き換えたことにより、耐湿性が向上していることが理解できる。
【0081】
一方、表4を見ると比較例1では(B1)成分の配合量が少ないため、耐候性に劣ることが理解できる。比較例2においては、(B1)成分の配合量が多いため、耐擦傷性、耐候性の基材密着性、耐湿性に劣ることが理解できる。比較例3においては、(C)成分を添加していないため耐候性の黄変度(Δb)の評価において劣ることが理解できる。比較例4、5において、(D1)成分と(D2)成分とを併用していないため、耐湿性、耐擦傷性が著しく劣ることが理解できる。なお、比較例4、5と実施例1とを比較すると、実施例1は(D1)成分と(D2)成分を併用することにより、耐擦傷性と耐湿性が著しく向上することも理解できる。比較例6を見ると他の紫外線吸収剤を使用したことにより、耐候性、耐湿性において劣っていることが理解できる。