特許第6348850号(P6348850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348850シートベルト装置及びシートベルト装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348850
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】シートベルト装置及びシートベルト装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20180618BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20180618BHJP
   B60R 22/14 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B60R21/18
   B60R21/237
   B60R22/14
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-3524(P2015-3524)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-128304(P2016-128304A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 治彦
(72)【発明者】
【氏名】浮田 優
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 隆
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−230807(JP,A)
【文献】 特開2007−223409(JP,A)
【文献】 特開2008−056030(JP,A)
【文献】 特開2007−038796(JP,A)
【文献】 特開2013−184559(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0125700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/18
B60R 21/237
B60R 22/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに着座した乗員に装着されるウェビングと、
前記ウェビングに沿って設けられ、内部にガスが供給されることによって膨張展開するエアバッグと、
前記エアバッグに沿って延在すると共に少なくとも一方が前記ウェビングの一部を構成し、かつ短手方向一方側の端部に前記エアバッグの一部及び他の一部がそれぞれ固定される第1カバー部材及び第2カバー部材を有し、前記第1カバー部材の短手方向の両端部と前記第2カバー部材の短手方向の両端部とが長手方向に沿って縫製されることによって前記エアバッグが配置されるスペースを内部に形成し、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との縫製部が前記エアバッグ側に配置されたエアバッグカバーと、
を備えたシートベルト装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、該エアバッグの短手方向に三つ折り以上に折畳まれており、
前記エアバッグの短手方向他方側の端部及び短手方向の中間部が、前記第1カバー部材の短手方向一方側の端部及び前記第2カバー部材の短手方向一方側の端部にそれぞれ固定されている請求項1記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材の少なくとも一方の短手方向の端部の厚みが短手方向の中間部の厚みに比して薄く設定されている請求項1又は請求項2記載のシートベルト装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシートベルト装置の製造方法に適用され、
前記エアバッグの一部及び他の一部を前記第1カバー部材の短手方向一方側の端部及び前記第2カバー部材の短手方向一方側の端部にそれぞれ固定するエアバッグ固定工程と、
前記エアバッグを折畳むエアバッグ折畳工程と、
前記第1カバー部材の短手方向の両端部と前記第2カバー部材の短手方向の両端部とを縫製することによって前記エアバッグカバーを形成する縫製工程と、
前記エアバッグカバーを折返して内部に前記エアバッグを配置させる折返工程と、
を有するシートベルト装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト装置及びシートベルト装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗員の腰部及び胸部をそれぞれ支持するウェビング(シートベルト)と、ウェビング内に設けられたエアバッグと、を備えたシートベルト装置が開示されている。当該文献に記載された技術によれば、車両の衝突時に、ウェビング内に設けられたエアバッグがウェビング幅方向に膨張展開することによって、乗員の胸部をより広い面積で支持することが可能となっている。
【0003】
また、下記特許文献1に記載されたシートベルト装置は、エアバッグが一対のウェビングの間に配置され、また一対のウェビングの短手方向の両端部が当該ウェビングの長手方向に沿って縫製されることによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−230807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたシートベルト装置では、一対のウェビングの縫製部が乗員側に露出しているため、当該ウェビングの意匠性が低下すると共に乗員がウェビングに触れた際の質感が悪化することが考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、ウェビングの意匠性が低下することを抑制すると共に乗員がウェビングに触れた際の質感が悪化することを抑制することができるシートベルト装置及びシートベルト装置の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のシートベルト装置は、車両用シートに着座した乗員に装着されるウェビングと、前記ウェビングに沿って設けられ、内部にガスが供給されることによって膨張展開するエアバッグと、前記エアバッグに沿って延在すると共に少なくとも一方が前記ウェビングの一部を構成し、かつ短手方向一方側の端部に前記エアバッグの一部及び他の一部がそれぞれ固定される第1カバー部材及び第2カバー部材を有し、前記第1カバー部材の短手方向の両端部と前記第2カバー部材の短手方向の両端部とが長手方向に沿って縫製されることによって前記エアバッグが配置されるスペースを内部に形成し、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との縫製部が前記エアバッグ側に配置されたエアバッグカバーと、を備えている。
【0008】
請求項2記載のシートベルト装置は、請求項1記載のシートベルト装置において、前記エアバッグは、該エアバッグの短手方向に三つ折り以上に折畳まれており、前記エアバッグの短手方向他方側の端部及び短手方向の中間部が、前記第1カバー部材の短手方向一方側の端部及び前記第2カバー部材の短手方向一方側の端部にそれぞれ固定されている。
【0009】
請求項3記載のシートベルト装置は、請求項1又は請求項2記載のシートベルト装置において、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材の少なくとも一方の短手方向の端部の厚みが短手方向の中間部の厚みに比して薄く設定されている。
【0010】
請求項4記載のシートベルト装置の製造方法は、前記エアバッグの一部及び他の一部を前記第1カバー部材の短手方向一方側の端部及び前記第2カバー部材の短手方向一方側の端部にそれぞれ固定するエアバッグ固定工程と、前記エアバッグを折畳むエアバッグ折畳工程と、前記第1カバー部材の短手方向の両端部と前記第2カバー部材の短手方向の両端部とを縫製することによって前記エアバッグカバーを形成する縫製工程と、前記エアバッグカバーを折返して内部に前記エアバッグを配置させる折返工程と、を経て請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシートベルト装置を製造する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のシートベルト装置では、ウェビングが乗員に装着された状態において、エアバッグ内にガスが供給されると、当該エアバッグが膨張する。そして、当該エアバッグが、エアバッグカバーを構成する第1カバー部材と第2カバー部材との縫製部を破断させた後、当該エアバッグがさらに膨張して展開する。
【0012】
ここで、本シートベルト装置では、エアバッグカバーを構成する第1カバー部材と第2カバー部材との縫製部がエアバッグ側に配置されている。すなわち、上記縫製部が、乗員から視認されない位置に配置されていると共に触れられない位置に配置されている。これにより、ウェビングの意匠性が低下することを抑制することができると共に乗員がウェビングに触れた際の質感が悪化することを抑制することができる。
【0013】
請求項2記載のシートベルト装置では、エアバッグ内にガスが供給されると、三つ折り以上に折畳まれたエアバッグが当該エアバッグの幅方向に展開しながら膨張する。ここで、本発明では、エアバッグの短手方向一方側の端部は、第1カバー部材及び第2カバー部材のいずれにも固定されていないことにより、エアバッグの短手方向一方側の端部の移動が、第1カバー部材及び第2カバー部材によって妨げられることが抑制される。これにより、本発明では、エアバッグの短手方向一方側の端部が、第1カバー部材の短手方向一方側の端部と第2カバー部材の短手方向一方側の端部との縫製部を破断させる力を高めることができる。すなわち、本発明によれば、エアバッグの展開速度が低下することを抑制することができる。
【0014】
請求項3記載のシートベルト装置では、第1カバー部材及び第2カバー部材の少なくとも一方の短手方向の端部の厚みを上記のように設定することにより、第1カバー部材と第2カバー部材とが重合わされて縫製される部分の厚みが厚くなることを抑制することができる。これにより、乗員がウェビングに触れた際の質感が悪化することを抑制することができる。
【0015】
請求項4記載のシートベルト装置の製造方法によれば、上記のエアバッグ固定工程、エアバッグ折畳工程、縫製工程、及び折返工程を経ることにより、エアバッグカバーを構成する第1カバー部材と第2カバー部材との縫製部が、乗員から視認されない位置に配置されると共に触れられない位置に配置される。これにより、ウェビングにおいてエアバッグが設けられた部分の意匠性が低下することを抑制することができると共に乗員がウェビングに触れた際の質感が悪化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車両用シート及びシートベルト装置をシート前方側から見た正面図である。
図2】シートベルト装置単体を示す平面図である。
図3図2に示された3−3線に沿って切断したシートベルト装置の断面を拡大して示す拡大断面図である。
図4】ウェビングを構成する第1ウェビング構成部材の断面を示す断面図である。
図5】エアバッグ単体を示す平面図である。
図6図5に示された6−6線に沿って切断したエアバッグの断面を拡大して示す拡大断面図である。
図7図1及び図2に示されたシートベルト装置の製造工程におけるエアバッグ固定工程を示す断面図である。
図8図1及び図2に示されたシートベルト装置の製造工程におけるエアバッグ折畳工程及び縫製工程を示す断面図である。
図9】(A)はウェビングが乗員に装着されている状態を模式的に示すシートベルト装置の断面図であり、(B)はエアバッグの膨張展開が完了した状態を模式的に示すシートベルト装置の断面図である。
図10】(A)はウェビングが乗員に装着されている状態を模式的に示す他の形態のシートベルト装置の断面図であり、(B)はエアバッグの膨張展開が完了した状態を模式的に示す他の形態のシートベルト装置の断面図である。
図11】他の形態のエアバッグを備えたシートベルト装置を示す図3に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図8を用いて本発明の実施形態に係るシートベルト装置について説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印UPは上方向、矢印RHは右方向、矢印LHは左方向をそれぞれ示すものとする。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態のシートベルト装置10は、所謂ミニバンタイプの車両の2列目に設けられた車両用シートとしてのセパレートシート12(以下単に「シート12」という)に設けられている。以下、先ずシート12の概略の構成について説明し、次いで本実施形態の要部であるシートベルト装置10の構成について説明する。
【0019】
(シート12の概略の構成)
シート12は、乗員Pの臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、乗員Pの背部を支持すると共にシートクッション14の後端部に傾倒可能に取付けられたシートバック16と、乗員Pの頭部を支持すると共にシートバック16の上端部に取付けられたヘッドレスト18と、を備えている。
【0020】
シートクッション14は、表皮材に被われたシートクッションパッドがシートクッションフレーム20に取付けられることによって構成されており、またシートクッションフレーム20の下端部には、図示しないアッパレールが取付けられている。このアッパレールが車体のフロアに設けられたロアレールに沿って移動することによって、シート12を車両前後方向にスライドさせることが可能となっている。また、シートクッションフレーム20の左側には、タング28が保持されるバックル30が固定されており、シートクッションフレーム20の右側には、ウェビング24の長手方向一方側の端部を支持するアンカ32が固定されている。
【0021】
シートバック16は、表皮材に被われたシートバックパッドがシートバックフレーム22に取付けられることによって構成されており、またシートバックフレーム22の上端部かつ右側の端部には、ウェビング24を巻取る巻取装置26及びウェビング24が挿通されるショルダアンカ27が固定されている。
【0022】
(シートベルト装置10の構成)
図1及び図2に示されるように、シートベルト装置10は、ウェビング24と、ウェビング24を巻取る巻取装置26と、ウェビング24が挿通される挿通孔を有するタング28及びタング28を着脱可能に支持するバックル30と、ウェビング24の端部を支持するアンカ32と、を備えている。また、図2及び図3に示されるように、シートベルト装置10は、ウェビング24の内部に配置されたエアバッグ34を備えている。
【0023】
図3に示されるように、ウェビング24は、長尺帯状に形成された第1カバー部材としての第1ウェビング構成部材38及び第2カバー部材としての第2ウェビング構成部材40を含んで構成されている。図4に示されるように、第1ウェビング構成部材38は、合成繊維を織上げることによって構成されており、この第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38A及び短手方向他方側の端部38Bの厚みT1は、当該第1ウェビング構成部材38の短手方向の中間部38Cの厚みT2に比して薄く設定されている。なお、第2ウェビング構成部材40の構成は第1ウェビング構成部材38の構成と同一である。
【0024】
図3に示されるように、第1ウェビング構成部材38の短手方向の両端部38A,38Bと第2ウェビング構成部材40の短手方向の両端部40A,40Bとが長手方向に沿って縫製された後に折返されることによって、エアバッグ34が配置されるスペースAが内部に形成されたエアバッグカバーとしてのウェビング24が構成されている。また、本実施形態では、ウェビング24において内部にエアバッグ34が配置されていない部分も第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40によって構成されている。すなわち、ウェビング24において内部にエアバッグ34が配置されていない部分も2層の帯状部材(第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40)によって構成されている。
【0025】
また、本実施形態では、第1ウェビング構成部材38の短手方向の両端部38A,38Bと第2ウェビング構成部材40の短手方向の両端部40A,40Bとが縫製された後に折返されることによって、第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38Aと第2ウェビング構成部材40の短手方向一方側の端部40Aとの縫製部H1及び第1ウェビング構成部材38の短手方向他方側の端部38Bと第2ウェビング構成部材40の短手方向他方側の端部40Bとの縫製部H2がエアバッグ34側に配置されるようになっている。
【0026】
図2に示されるように、以上説明したウェビング24の長手方向一方側の端部にはアンカ32が固定されている。また、ウェビング24の長手方向他方側の端部は、巻取装置26の図示しないスプールに固定されており、このスプールが回転することによってウェビング24が巻取装置26内に収容される(巻取られる)ようになっている。また、本実施形態では、ウェビング24においてエアバッグ34が固定された部位は、スプールに巻取られないようになっている。
【0027】
図1に示されるように、ウェビング24が巻取装置26から引出されて、当該ウェビング24が挿通されたタング28がバックル30に支持されることによって、ウェビング24がシート12の左側と右側との間に掛渡される。これにより、ウェビング24がシート12に着座した乗員Pの身体に装着されるようになっている。また、車両の緊急時(例えば衝突時)には、巻取装置26がスプールからのウェビング24の引出しをロックする。なお、シート12に着座した乗員Pの体型は、AM50ダミーと同体型であり、また乗員Pは、標準使用状態に設定されたシート12に標準姿勢で着座している。
【0028】
ウェビング24がシート12に着座した乗員Pに装着された状態では、当該ウェビング24がタング28への挿通部分で折返されている。ウェビング24におけるタング28とアンカ32との間の部分が、乗員Pの腰部を支持するラップウェビング24A(ラップベルト)とされており、ウェビング24におけるショルダアンカ27とタング28との間の部分が、乗員Pの腰部から肩にかけての部分を支持するショルダウェビング24B(ショルダベルト)とされている。また、本実施形態では、ショルダウェビング24Bとされる部分において、第1ウェビング構成部材38(図3参照)が乗員P側に配置されるようになっている。
【0029】
図5及び図6に示されるように、エアバッグ34は、ウェビング24(図2参照)の長手方向を長手方向とする矩形状に形成されており、またエアバッグ34は、内部にガスが供給された際に膨張する部分(膨張部S)と膨張しない部分Tとを無縫製で織上げられることにより形成されている。具体的には、エアバッグ34の外周端部42、及び後述する第1島部44及び第2島部46が膨張しない部分Tとされている。また、当該膨張しない部分Tを除く部位は、ウェビング24の厚み方向に2重とされており、これによりエアバッグ34の内部にガスが供給された際に当該部位(膨張部S)が膨張可能となっている。
【0030】
エアバッグ34の短手方向の中間部には、複数の第1島部44及び複数の第2島部46が設けられている。第1島部44及び第2島部46は、エアバッグ34の長手方向を長手方向とする矩形状に形成されており、また複数の第1島部44及び複数の第2島部46は、エアバッグ34の長手方向に沿って間隔を空けて配置されている。さらに、複数の第1島部44と複数の第2島部46とは、エアバッグ34の短手方向に間隔を空けて配置されており、また本実施形態では、複数の第1島部44及び複数の第2島部46が、エアバッグ34の膨張部Sを当該エアバッグ34の短手方向に三等分する位置にそれぞれ配置されている。
【0031】
図2に示されるように、エアバッグ34の長手方向の寸法は、シート12に着座した乗員Pの腰部を支持するラップウェビング24A及び乗員Pの腰部から肩にかけての部分を支持するショルダウェビング24Bの長さに対応する寸法とされている。また、膨張展開時のエアバッグ34の短手方向の寸法は、ウェビング24の幅よりも幅広の寸法とされている。なお、図中に示された線Fは、ウェビング24が乗員Pに装着された状態において、ウェビング24及び当該ウェビング24に取付けられたエアバッグ34がタング28によって折返される位置を示している。
【0032】
図5に示されるように、エアバッグ34の長手方向一方側の端部は、インフレータ36(図1参照)が発生したガスが導入される導入部48とされている。なお、エアバッグ34の導入部48に図示しないインナチューブを挿入することにより、インフレータ36が発生したガスがインナチューブを通じてショルダウェビング24B側に優先的に流れるように構成してもよい。また、このインナチューブを設けるか否かについては、エアバッグ34の膨張特性(膨張過程)等を考慮して適宜設定すればよい。
【0033】
図3に示されるように、以上説明したエアバッグ34は、第1島部44及び第2島部46に対応する位置で折曲げられることによって当該エアバッグ34の短手方向に三つ折りで折畳まれている。また、本実施形態では、エアバッグ34の短手方向一方側の部位34Aが、当該エアバッグ34の中間部34Bと短手方向他方側の部位34Cとの間に配置されるように折畳まれている。また、エアバッグ34がウェビング24内に配置された状態において、エアバッグ34の短手方向他方側の部位34Cが、第1ウェビング構成部材38側に配置されるようになっている。
【0034】
また、ウェビング24内に配置されたエアバッグ34の短手方向他方側の端部34Dが、第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38Aに縫製により固定されており、さらにエアバッグ34の第1島部44が第2ウェビング構成部材40の短手方向一方側の端部40Aに縫製により固定されている。
【0035】
(シートベルト装置10の製造方法)
次に、図3図7及び図8を用いて前述のシートベルト装置10の製造方法について説明する。
【0036】
図7に示されるように、先ず、エアバッグ34の短手方向他方側の端部34Dを第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38Aに縫製することによって固定する。また、エアバッグ34の第1島部44を第2ウェビング構成部材40の短手方向一方側の端部40Aに縫製することにより固定する(エアバッグ固定工程)。
【0037】
次いで、図8に示されるように、エアバッグ34を第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40の幅よりも狭い寸法となるように三折りで折畳む(エアバッグ折畳工程)。なお、折畳まれたエアバッグ34の形状を保持するために、当該工程において、接着剤等をエアバッグ34の所定の箇所に塗布してもよい。
【0038】
次いで、第1ウェビング構成部材38と第2ウェビング構成部材40とを対向させて、第1ウェビング構成部材38の短手方向の両端部38A,38Bと第2ウェビング構成部材40の短手方向の両端部40A,40Bとを縫製することによってウェビング24を構成する(縫製工程)。ここで、本実施形態では、第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38Aにおいてエアバッグ34の短手方向他方側の端部34Dが接合された部分よりも当該第1ウェビング構成部材38の短手方向の中間部側の部位と、第2ウェビング構成部材40の短手方向一方側の端部40Aにおいてエアバッグ34の第1島部44が接合された部分よりも当該第2ウェビング構成部材40の短手方向の中間部側の部位と、を縫製する。
【0039】
次いで、図3に示されるように、ウェビング24を折返すことによって当該ウェビング24の内部にエアバッグ34を配置させる(折返工程)。
【0040】
以上の工程を経た後に、前述の巻取装置26、タング28、及びアンカ32(図2参照)をウェビング24に取付ける工程を経ること等によってシートベルト装置10が製造される。
【0041】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0042】
図1及び図9(A)に示されるように、ウェビング24が乗員Pに装着された状態において、エアバッグ34内にガスが供給されると、当該エアバッグ34が膨張する。そして、図9(B)に示されるように、当該エアバッグ34が、第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38Aと第2ウェビング構成部材40の短手方向一方側の端部40Aとの縫製部H1を破断させた後、当該エアバッグ34がウェビング24(第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40)と乗員Pとの間において膨張展開する。
【0043】
ここで、図3に示されるように、本実施形態のシートベルト装置10では、エアバッグ34を覆う第1ウェビング構成部材38と第2ウェビング構成部材40との縫製部H1,H2がエアバッグ34側に配置されている。すなわち、上記縫製部H1,H2が、乗員Pから視認されない位置に配置されていると共に触れられない位置に配置されている。これにより、ウェビング24の意匠性が低下することを抑制することができると共に乗員Pがウェビングに触れた際の質感が悪化することを抑制することができる。また、当該構成では、第1ウェビング構成部材38と第2ウェビング構成部材40との縫製部H1,H2がタング28や乗員P等と摺接することによる摩耗を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態のシートベルト装置10では、エアバッグ34内にガスが供給されると、三つ折りで折畳まれたエアバッグ34が当該エアバッグ34の幅方向に展開しながら膨張する。ここで、本実施形態では、エアバッグ34の短手方向一方側の端部34Eは、第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40のいずれにも固定されていないことにより、エアバッグ34の短手方向一方側の端部34Eの移動が、第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40によって妨げられることが抑制される。これにより、本実施形態では、エアバッグ34の短手方向一方側の端部34Eが、第1ウェビング構成部材38の短手方向一方側の端部38Aと第2ウェビング構成部材40の短手方向一方側の端部40Aとの縫製部H1を破断させる力を高めることができる。すなわち、本実施形態によれば、エアバッグ34の展開速度が低下することを抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のシートベルト装置10では、第1ウェビング構成部材38の短手方向の両端部38A,38B及び第2ウェビング構成部材40の短手方向の両端部40A,40Bの厚みT1が、第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40の短手方向の中間部38C,40Cの厚みT2に比して薄く設定されている。これにより、第1ウェビング構成部材38と第2ウェビング構成部材40とが重合わされて縫製される部分の厚みが厚くなることを抑制することができる。その結果、乗員Pがウェビング24に触れた際の質感が悪化することを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、乗員Pとウェビング24との間にエアバッグ34が配置される構成とされていることにより、エアバッグ34の内圧を有効に乗員Pの拘束に活用することができる。
【0047】
また、本実施形態では、エアバッグ34の膨張展開完了時に、第1ウェビング構成部材38の短手方向他方側の端部38Bと第2ウェビング構成部材40の短手方向他方側の端部40Bとが縫製部H2によって繋がれたまま、第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40がエアバッグ34の短手方向に沿って広がるように展開する。これにより、より広い面積でエアバッグ34を支持することが可能となっている。
【0048】
さらに、本実施形態では、エアバッグ34がウェビング24(第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40)に固定縫製されているため、乗員Pからエアバッグ34に荷重が入力された際に、当該エアバッグ34がウェビング24に対してずれることを抑制することができる。これにより、乗員Pの拘束性能を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、乗員Pとウェビング24(第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40)との間にエアバッグ34が配置される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示されるように、乗員Pとエアバッグ34との間にウェビング24(第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40)が配置される構成としてもよい。すなわち、当該構成では、エアバッグ34は、ウェビング24の幅を広げるためのアクチュエータとして機能する。そして、当該構成では、乗員Pをウェビング24によってより広い面積で支持する(拘束する)ことが可能となっている。
【0050】
また、本実施形態では、三つ折りで折畳まれたエアバッグ34が当該エアバッグ34の幅方向に展開しながら膨張する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示されるように、二つ折りで折畳まれたエアバッグ34が当該エアバッグ34の幅方向に展開しながら膨張するように構成することもできる。このように、エアバッグ34の折畳み方はエアバッグ34の幅や膨張特性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0051】
さらに、本実施形態では、エアバッグ34を覆うエアバッグカバーとして機能するウェビング24を第1ウェビング構成部材38及び第2ウェビング構成部材40によって構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、乗員Pを拘束する帯状のウェビング構成部材と帯状のカバー部材とを縫製することによって、エアバッグ34を覆うエアバッグカバーを構成することもできる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 シートベルト装置
12 セパレートシート(車両用シート)
24 ウェビング(エアバッグカバー)
34 エアバッグ
34B エアバッグの短手方向他方側の中間部
34D エアバッグの短手方向他方側の端部
38 第1ウェビング構成部材(第1カバー部材)
38A 第1ウェビング構成部材の短手方向一方側の端部
38B 第1ウェビング構成部材の短手方向他方側の端部
38C 第1ウェビング構成部材の短手方向の中間部
40 第2ウェビング構成部材(第2カバー部材)
40A 第2ウェビング構成部材の短手方向一方側の端部
40B 第2ウェビング構成部材の短手方向他方側の端部
40C 第2ウェビング構成部材の短手方向の中間部
44 第1島部(エアバッグの短手方向他方側の中間部)
図1
図2
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図5
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図9
図10
図11