特許第6348857号(P6348857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6348857有害低密度廃棄物処理方法及び有害低密度廃棄物処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6348857
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】有害低密度廃棄物処理方法及び有害低密度廃棄物処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20180618BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20180618BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20180618BHJP
   F23G 5/02 20060101ALI20180618BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B09B3/00 302A
   C08J11/12ZAB
   B09B3/00 301W
   B09B3/00 303E
   F23G5/00 115Z
   F23G5/02 C
   F23G5/44 B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-37060(P2015-37060)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-159190(P2016-159190A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503408381
【氏名又は名称】ジャパン・リサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】三好 史洋
(72)【発明者】
【氏名】平田 修一
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬司
(72)【発明者】
【氏名】林 昭彦
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−088102(JP,A)
【文献】 特開2001−276790(JP,A)
【文献】 特開2012−081421(JP,A)
【文献】 特開平08−012801(JP,A)
【文献】 特開2016−160272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00− 5/00
C08J 11/00−11/28
B29B 17/00−17/04
F23G 5/00、5/02、5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物をガス化改質溶融炉により無害化処理する有害低密度廃棄物処理方法において、
有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮装置の圧縮空間で圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形する圧縮工程と、
ブロックをガス化改質溶融炉へ向け前方に送る送り工程と、
送られてきたブロックをガス化改質溶融炉で熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化溶融工程とを備え、
圧縮工程及び送り工程は、該送り工程で送られた複数のブロックから成るブロック列を有害低密度廃棄物ブロック及び他の廃棄物ブロックが混在するように形成することを特徴とする有害低密度廃棄物処理方法。
【請求項2】
有害低密度廃棄物は、ヘキサブロモシクロドデカンを含有する発泡ポリスチレン材であることとする請求項1に記載の有害低密度廃棄物処理方法。
【請求項3】
有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化処理する有害低密度廃棄物処理装置において、
有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
ブロックを熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部からガス化改質溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、有害低密度廃棄物の供給と及び他の廃棄物の供給とを別時期に受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりもガス化改質溶融炉へ向け前方位置で筒状部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられており、次の(イ)〜(ホ)の一連の動作を繰り返した後、次の(イ)及び(ロ)の動作を行い、有害低密度廃棄物ブロックを前後の他の廃棄物ブロックで挟持した状態で一体的にガス化改質溶融炉に向け前方へ送ることを特徴とする有害低密度廃棄物処理装置。
(イ)圧縮支持盤を閉じてから圧縮空間へ他の廃棄物を供給し、圧縮手段で該他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで他の廃棄物ブロックを成形する。
(ロ)圧縮支持盤を開けて、上記(イ)で成形した他の廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ハ)圧縮手段を圧縮支持盤の位置よりも後方へ後退させてから該圧縮支持盤を閉じ、有害低密度廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記有害低密度廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで有害低密度廃棄物ブロックを成形する。
(ニ)圧縮支持盤を開けて、上記(ハ)で成形した有害低密度廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ホ)圧縮手段を後退させる。
【請求項4】
有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化処理する有害低密度廃棄物処理装置において、
有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
ブロックを熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部からガス化改質溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、有害低密度廃棄物の供給と及び他の廃棄物の供給とを別時期に受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりもガス化改質溶融炉へ向け前方位置で筒状部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられており、次の(イ)〜(へ)の一連の動作を繰り返した後、次の(イ)及び(ロ)の動作を行い、有害低密度廃棄物ブロックを前後の他の廃棄物ブロックで挟持した状態で一体的にガス化改質溶融炉に向け前方へ送ることを特徴とする有害低密度廃棄物処理装置。
(イ)圧縮支持盤を閉じてから圧縮空間へ他の廃棄物を供給し、圧縮手段で該他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで他の廃棄物ブロックを成形する。
(ロ)圧縮支持盤を開けて、上記(イ)で成形した他の廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ハ)圧縮手段を圧縮支持盤の位置よりも後方へ後退させてから該圧縮支持盤を閉じ、有害低密度廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記有害低密度廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで有害低密度廃棄物ブロックを成形する。
(ニ)圧縮支持盤を開けて、上記(ハ)で成形した有害低密度廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ホ)上記(ハ)及び上記(ニ)を複数回繰り返す。
(へ)圧縮手段を後退させる。
【請求項5】
有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化処理する有害低密度廃棄物処理装置において、
有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
ブロックを熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部からガス化改質溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、有害低密度廃棄物の供給と及び他の廃棄物の供給とを別時期に受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりもガス化改質溶融炉へ向け前方位置で筒状部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられており、次の(イ)及び(ロ)の動作を行った後、次の(ハ)〜(ホ)の一連の動作を繰り返し、有害低密度廃棄物ブロックを前後の他の廃棄物ブロックで挟持した状態で一体的にガス化改質溶融炉に向け前方へ送ることを特徴とする有害低密度廃棄物処理装置。
(イ)圧縮支持盤を閉じてから圧縮空間へ他の廃棄物を供給し、圧縮手段で該他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで他の廃棄物ブロックを成形する。
(ロ)圧縮支持盤を開けて、上記(イ)で成形した他の廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ハ)圧縮手段を圧縮支持盤の位置よりも後方へ後退させてから該圧縮支持盤を閉じ、有害低密度廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記有害低密度廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで有害低密度廃棄物ブロックを成形する。
(ニ)圧縮支持盤を閉じたまま、圧縮手段を後退させてから他の廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで、上記(ハ)で成形した有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックとが一体をなす複合ブロックを成形する。
(ホ)圧縮支持盤を開けて、上記(ニ)で成形した複合ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害低密度廃棄物を無害化処理するための有害低密度廃棄物処理方法および有害低密度廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、廃棄物処理場の不足が顕著化しており、一般廃棄物あるいは産業廃棄物の多くは、発生したままの姿で、あるいは何らかの事前処理の上、焼却処理し減容化した後に、埋立などの最終処分が行われる場合が多い。上述した焼却処理の方法として種々の方法が挙げられるが、近年、焼却場における発生ガス中のダイオキシン類など有害物質の管理が問題となっている。例えば、廃棄物を発生したままで処理すると、焼却のための炉内の高温酸化雰囲気にもちこまれることで有害物としてのダイオキシン類が発生してしまう。そこで、炉内の高温雰囲気で上記ダイオキシン類を分解することで炉外へのダイオキシン類の排出を防止する処理方法が求められている。このような高温処理が可能な廃棄物処理方法として、例えば特許文献1に開示された廃棄物処理方法が挙げられる。この特許文献1に開示されているプロセスは、かかる処理を高速で行うために、廃棄物を圧縮成形して圧縮ブロックを形成して減容化した後、この圧縮ブロックを乾燥し、ガス化改質溶融炉に装入して、熱分解、ガス化、ガス改質し、不燃分、灰分を溶融して、燃料ガスおよびスラグ、金属を得る廃棄物処理プロセスである。この廃棄物処理方法は、種々の形態で発生する一般廃棄物、産業廃棄物を圧縮機で回分的に圧縮成形して処理するため、汎用性の高い方法であると考えられる。
【0003】
ところで、近年、省エネルギーなどの観点から、保温断熱性に優れた発泡ポリスチレン断熱材の使用量が増えており、例えば建築材や畳床材として用いられており、その用途から難燃性の特性が必要とされている。上記発泡ポリスチレン断熱材には、臭素系難燃剤の一種であるヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が樹脂用難燃剤として含まれていることが多い。該HBCDは、自然界で分解されにくく、生物の体内に蓄積されやすいので、一部の動物に長期毒性を有することが懸念されることから、平成25年4月から5月に開催された残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)第6回締約国会議において、POPs条約の附属書A(廃絶)に追加されることになった。日本では化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)における第一種特定化学物質に指定されている(公布:平成26年3月19日)。そして、HBCDを含む製品に対する規制が行われるようになり、HBCDを含む製品の廃棄物を処理することも規制の対象となっている。
【0004】
HBCDを含有する有害廃棄物としては、建築用発泡ポリスチレン断熱材の廃棄物があり、例えば、建設時に発生する端材や建物の解体時に発生する断熱材廃棄物や畳廃材などが挙げられる。このようなHBCDを含有する有害廃棄物の処理方法について、HBCDを高温加熱し、分解して無害化することが検討されている。また、建築用発泡ポリスチレン断熱材の廃棄物は嵩密度が50kg/m以下であり、嵩ばるためその処理効率が低いことが問題となっている。例えば、発泡ポリスチレン材の処理方法の一つとして、特許文献2のような処理方法が知られている。この特許文献2では、ブロック状の発泡スチロール材を粉砕し、加熱溶融して得られた発泡スチロール溶融液をさらに加熱蒸発させてガス化し、燃料ガスとして回収する処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−79252
【特許文献2】特開2000−079379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の処理方法により、HBCDを含有する発泡ポリスチレン廃棄物を処理してHBCDを分解し無害化処理しようとすると、発泡スチロール材を粉砕そして加熱溶融して溶融液とする前処理を行う必要があるので、工程が複雑となり、設備コストや運転コストが嵩むという問題がある。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、複雑な工程を要することなく、有害低密度廃棄物を加熱分解して無害化する有害低密度廃棄物処理方法及び有害低密度廃棄物処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、有害低密度廃棄物処理方法に関しては、次の第一発明により、そして有害低密度廃棄物処理装置に関しては次の第二発明ないし第四発明によりそれぞれ解決される。
【0009】
<第一発明>
第一発明は、有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物をガス化改質溶融炉により無害化処理する有害低密度廃棄物処理方法において、有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮装置の圧縮空間で圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形する圧縮工程と、ブロックをガス化改質溶融炉へ向け前方に送る送り工程と、送られてきたブロックをガス化改質溶融炉で熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融工程とを備え、圧縮工程及び送り工程は、該送り工程で送られた複数のブロックから成るブロック列を有害低密度廃棄物ブロック及び他の廃棄物ブロックが混在するように形成することを特徴としている。本発明において、有害低密度廃棄物に対する他の廃棄物としては、例えば一般廃棄物や産業廃棄物をいう。
【0010】
第一発明では、上記ブロック列は有害低密度廃棄物ブロック及び他の廃棄物ブロックが混在するように形成されており、該ブロック列を形成するブロックがガス化改質溶融炉に順次供給され、炉内で有害低密度廃棄物及び他の廃棄物が熱分解、ガス化そしてガス改質される。このように有害低密度廃棄物は熱分解、ガス化そしてガス改質されることにより無害化処理される。この第一発明では、廃棄物の熱分解、ガス化そしてガス改質に先立って行われる前処理は廃棄物の圧縮によるブロックの成形のみであり、前処理として従来のような複雑な工程を要しない。
【0011】
第一発明において、有害低密度廃棄物は、ヘキサブロモシクロドデカンを含有する発泡ポリスチレン材であることとしてもよい。
【0012】
<第二発明>
第二発明は、有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化処理する有害低密度廃棄物処理装置において、有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、ブロックを熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融炉と、上記圧縮装置の筒状部からガス化改質溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、上記圧縮装置は、有害低密度廃棄物の供給と及び他の廃棄物の供給とを別時期に受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりもガス化改質溶融炉へ向け前方位置で筒状部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられており、次の(イ)〜(ホ)の一連の動作を繰り返した後、次の(イ)及び(ロ)の動作を行い、有害低密度廃棄物ブロックを前後の他の廃棄物ブロックで挟持した状態で一体的にガス化改質溶融炉に向け前方へ送ることを特徴としている。
(イ)圧縮支持盤を閉じてから圧縮空間へ他の廃棄物を供給し、圧縮手段で該他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで他の廃棄物ブロックを成形する。
(ロ)圧縮支持盤を開けて、上記(イ)で成形した他の廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ハ)圧縮手段を圧縮支持盤の位置よりも後方へ後退させてから該圧縮支持盤を閉じ、有害低密度廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記有害低密度廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで有害低密度廃棄物ブロックを成形する。
(ニ)圧縮支持盤を開けて、上記(ハ)で成形した有害低密度廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ホ)圧縮手段を後退させる。
【0013】
<第三発明>
第三発明は、有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化処理する有害低密度廃棄物処理装置において、有害低密度廃棄物及び他の廃棄物をそれぞれ圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、ブロックを熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融炉と、上記圧縮装置の筒状部からガス化改質溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、上記圧縮装置は、有害低密度廃棄物の供給と及び他の廃棄物の供給とを別時期に受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりもガス化改質溶融炉へ向け前方位置で筒状部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられており、次の(イ)〜(へ)の一連の動作を繰り返した後、次の(イ)及び(ロ)の動作を行い、有害低密度廃棄物ブロックを前後の他の廃棄物ブロックで挟持した状態で一体的にガス化改質溶融炉に向け前方へ送ることを特徴としている。
(イ)圧縮支持盤を閉じてから圧縮空間へ他の廃棄物を供給し、圧縮手段で該他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで他の廃棄物ブロックを成形する。
(ロ)圧縮支持盤を開けて、上記(イ)で成形した他の廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ハ)圧縮手段を圧縮支持盤の位置よりも後方へ後退させてから該圧縮支持盤を閉じ、有害低密度廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記有害低密度廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで有害低密度廃棄物ブロックを成形する。
(ニ)圧縮支持盤を開けて、上記(ハ)で成形した有害低密度廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ホ)上記(ハ)及び上記(ニ)を複数回繰り返す。
(へ)圧縮手段を後退させる。
【0014】
<第四発明>
第四発明は、有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化処理する有害低密度廃棄物処理装置において、有害低密度廃棄物及び有害物質を含まない他の廃棄物をそれぞれ圧縮成形して有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックからなるブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、ブロックを熱分解、ガス化、ガス改質し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化改質溶融炉と、上記圧縮装置の筒状部からガス化改質溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、上記圧縮装置は、有害低密度廃棄物の供給と及び他の廃棄物の供給とを別時期に受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりもガス化改質溶融炉へ向け前方位置で筒状部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられており、次の(イ)及び(ロ)の動作を行った後、次の(ハ)〜(ホ)の一連の動作を繰り返し、有害低密度廃棄物ブロックを前後の他の廃棄物ブロックで挟持した状態で一体的にガス化改質溶融炉に向け前方へ送ることを特徴としている。
(イ)圧縮支持盤を閉じてから圧縮空間へ他の廃棄物を供給し、圧縮手段で該他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで他の廃棄物ブロックを成形する。
(ロ)圧縮支持盤を開けて、上記(イ)で成形した他の廃棄物ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
(ハ)圧縮手段を圧縮支持盤の位置よりも後方へ後退させてから該圧縮支持盤を閉じ、有害低密度廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記有害低密度廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで有害低密度廃棄物ブロックを成形する。
(ニ)圧縮支持盤を閉じたまま、圧縮手段を後退させてから他の廃棄物を圧縮空間へ供給し、圧縮手段で上記他の廃棄物を圧縮支持盤に向け前方へ押し出して圧縮することで、上記(ハ)で成形した有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックとが一体をなす複合ブロックを成形する。
(ホ)圧縮支持盤を開けて、上記(ニ)で成形した複合ブロックを圧縮手段で圧縮支持盤の位置よりも前方へ押し出す。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、有害低密度廃棄物及び他の廃棄物それぞれを圧縮して成形された有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックが、有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックとが混在した状態でブロック列が形成され、ブロック列を形成するブロックがガス化改質溶融炉へ順次供給され、炉内で熱分解、ガス化そして改質される。したがって、廃棄物の熱分解、ガス化そしてガス改質に先立って行われる前処理は廃棄物の圧縮によるブロックの成形のみであり、前処理として従来のような複雑な工程を要することがないので、設備コストや運転コストの増大を抑制することができる。また、有害低密度廃棄物を圧縮して有害低密度廃棄物ブロックとして、これをガス化改質溶融炉へ供給するので、嵩高い有害低密度廃棄物を効率よく無害化処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係る有害低密度廃棄物の処理装置の概要構成図である。
図2】(A)〜(C)は、第一実施形態に係る処理装置の動作開始直後における他の廃棄物ブロックの圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
図3】(A)〜(F)は、図2(C)に続いて行われる有害低密度廃棄物ブロックの圧縮送り工程及び他の廃棄物ブロックの圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
図4】(A)〜(F)は、第二実施形態における複数回の有害低密度廃棄物ブロックの圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
図5】(A)〜(C)は、図4(F)に続いて行われる他の廃棄物ブロックの圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
図6】(A)〜(E)は、第三実施形態における複合ブロックの圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る有害低密度廃棄物の処理装置の構成を示す。該処理装置の具体的な構成を説明する前に、まず、該処理装置による有害低密度廃棄物の処理の概略を説明する。
【0018】
処理装置は、有害物質を含み嵩密度が50kg/m以下である有害低密度廃棄物を無害化するための装置である。該処理装置では、圧縮装置にて、有害低密度廃棄物と他の廃棄物のそれぞれを別個に圧縮して成形した有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックとを、ガス化改質溶融炉の熱分解部に順次供給する。該熱分解部では、酸素含有ガスが導入され、有害低密度廃棄物ブロックは他の廃棄物ブロックと共に熱分解、ガス化、ガス改質され、この結果、有害低密度廃棄物が無害化される。以下、有害低密度廃棄物と他の廃棄物を特に区別する必要がない場合には、説明の便宜上、これらを単に「廃棄物」と総称する。
【0019】
本実施形態において、有害物質は、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)であり、有害低密度廃棄物は、例えばHBCD含有発泡ポリスチレン材である。また、他の廃棄物は、例えば一般廃棄物や産業廃棄物である。
【0020】
図1は、本実施形態に係る有害低密度廃棄物の処理装置1の構成を示す図である。以下、図1にもとづいて処理装置1の構成について説明する。
【0021】
処理装置1には、廃棄物投入装置10、圧縮装置20、トンネル式加熱炉30、ガス化改質溶融炉50が設けられている。廃棄物投入装置10は、圧縮装置20内へ上方から有害低密度廃棄物と他の廃棄物とを別時期に投入するものであり、該廃棄物投入装置10は、廃棄物を受け入れるホッパ11と、該ホッパ11の底部をなし開閉自在な蓋部12とを有している。該廃棄物投入装置10は、蓋部12が開位置にあるときに圧縮装置20と連通し、廃棄物を圧縮装置20内へ投入する。有害低密度廃棄物及び他の廃棄物は、ばらけた状態であり、クレーンなどにより廃棄物投入装置10に投入される。
【0022】
上記廃棄物投入装置10の下方には、有害低密度廃棄物及び他の廃棄物を別個に圧縮してブロックを成形し、さらには、該ブロックを加熱炉30へ向けて前方に押して送り出す圧縮装置20が設けられている。該圧縮装置20は、ホッパ11の下方位置で水平方向に延びる筒状部21と、該筒状部21内を前後方向(図1にて左右方向)で往復動する圧縮手段としての圧縮ヘッド22と、該ホッパ11よりも下流位置(図1にて右方側)で上下方向に往復動して筒状部21の下流側開口を開閉する板状の圧縮支持盤23とを有している。圧縮支持盤23は後述する加熱炉30の上流側開口を開閉するゲートを兼ねている。上記筒状部21は、その内壁断面が、後述する加熱炉30の内壁断面と同形かつ同一寸法で形成されている。
【0023】
上記圧縮装置20は、圧縮支持盤23が下降位置にて筒状部21の下流側開口を塞いだ閉状態で、圧縮ヘッド22が圧縮支持盤23へ向けて近づくように前方(図にて右方)へ移動することにより、該圧縮ヘッド22と圧縮支持盤23とで、ホッパ11から投入された廃棄物を圧縮してブロックを成形する。具体的には、圧縮装置20は、他の廃棄物を圧縮して他の廃棄物ブロックP1を成形し、有害低密度廃棄物を圧縮して有害低密度廃棄物ブロックP2を成形する。他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2の成形は、回分的(バッチ的)に行われる。上記圧縮ヘッド22は、圧縮支持盤23が上昇位置にあって開状態となっているときには、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2を押して、上記圧縮支持盤23の位置よりも前方にまで、送り出す機能をも有している。
【0024】
上記圧縮装置20の下流側には、該圧縮装置20の筒状部21に接続されトンネル式加熱炉30(以下、「加熱炉30」という)が水平方向に延びて設けられている。該加熱炉30は外部から加熱されており、上記圧縮装置20から供給された他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2が該加熱炉30内で乾燥されるようになっている。該加熱炉30の下流側端部は、ガス化改質溶融炉50の装入口51と接続されており、乾燥後の上記他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2を該装入口51からガス化改質溶融炉50内へ供給可能となっている。
【0025】
ガス化改質溶融炉50は、上下方向に延びる鉛直部分と、該鉛直部分の下部から水平方向に延びる水平部分とを有している。上記上下方向に延びる部分は、その略下半部が熱分解部52として形成されており、略上半部がガス改質部53として形成されている。また、上記水平部分は溶融部54として形成されている。
【0026】
上記熱分解部52では、他の廃棄物ブロックP1及び有害低密度廃棄物ブロックP2が混在し堆積して廃棄物堆積層Qが形成され、該廃棄物堆積層Qの有害低密度廃棄物及び他の廃棄物が熱分解によりガス化されると共に不燃分と灰分が溶融されて溶融物とされるようになっている。有害低密度廃棄物が熱分解される際に含有される有害物質が熱分解され無害化される。ガス化改質溶融炉50の側壁の下部には、上記廃棄物堆積層Q内に酸素含有ガスを供給する第一酸素含有ガス供給口55が設けられている。上記溶融物は、主として溶融スラグと溶融金属である。
【0027】
上記ガス改質部53では、後述するように、上記熱分解部52で廃棄物堆積層Qから発生したガスが改質されて改質ガスが生成される。ガス化改質溶融炉50の側壁の上部側には、ガス改質部53内に、ガス改質のための酸素含有ガスを供給する複数の第二酸素含有ガス供給口56が設けられている。
【0028】
上記溶融部54では、上記熱分解部52で生成された溶融物が加熱されて該溶融物に含まれる炭素等がガス化されて除去される。ガス化改質溶融炉50の水平部分の上壁には、上記溶融部54に燃料ガスを供給し燃料ガスの燃焼熱により溶融物を加熱する燃料ガス供給口57が設けられている。また、該溶融部54には、上記溶融物を外部へ排出するための溶融物排出口58が下方へ延びて設けられている。
【0029】
ガス化改質溶融炉50の頂部には、該頂部に形成された改質ガス排出口59から延びガス改質部53で生成された改質ガスを炉外へ排出するためのガスダクト60が設けられている。ガスダクト60の下流側には、上記処理装置1とは別装置として形成された、上記改質ガスを冷却するとともに酸洗浄そしてアルカリ洗浄する冷却洗浄装置(図示せず)、冷却そして洗浄された改質ガスに脱硫処理を施す脱硫処理装置(図示せず)、そして改質ガスの除湿等を行うガス精製装置(図示せず)が設けられている。かくして、改質ガスは洗浄、脱硫、精製されて、燃料ガスとして利用可能とされる。
【0030】
以下、上述の形態の処理装置1による廃棄物の処理における廃棄物のガス化改質溶融炉への供給について、図2(A)〜(C)及び図3(A)〜(F)をも参照しつつ説明する。図2(A)〜(C)は、処理装置1の動作開始直後における廃棄物投入装置10及び圧縮装置20の動作を、順を追って示す図である。また、図3(A)〜(F)は、図2(C)に続いて行われる廃棄物投入装置10及び圧縮装置20の動作を、順を追って示す図である。後述するように、本実施形態では、他の廃棄物ブロックP1の圧縮成形及び前方への送出しと、有害低密度廃棄物ブロックP2の圧縮成形及び前方への送出しとが交互に行われる。以下、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2を圧縮成形し、該他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2を前方へ送る一連の工程を「圧縮送り工程」という。
【0031】
(1)まず、図2(A)に見られるように、圧縮装置20の圧縮支持盤23を下降させて閉位置にもたらし筒状部21の前方を塞いだ閉状態とし、蓋部12が開位置にあるホッパ11から筒状部21へ、ばらけた状態の他の廃棄物P1’を落下供給する。次に、図2(B)に見られるように、圧縮ヘッド22を前進させて、この他の廃棄物P1’を圧縮支持盤23との間で圧縮して他の廃棄物ブロックP1を成形する。そして、図2(C)に見られるように、圧縮支持盤23を上昇させ開位置にもたらし、上記圧縮ヘッド22で他の廃棄物ブロックP1を該圧縮支持盤23よりも前方の位置へ送り出す。以下、図2(A)〜(C)で示される一連の工程を、必要に応じて「初期圧縮送り工程」という。
【0032】
(2)他の廃棄物ブロックP1を送り出した後、図3(A)に見られるように、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置にもたらし、ばらけた状態の有害低密度廃棄物P2’をホッパ11から筒状部21へ落下供給する。次に、図3(B)に見られるように、圧縮ヘッド22を前進させて、この有害低密度廃棄物P2’を圧縮支持盤23との間で圧縮して有害低密度廃棄物ブロックP2を成形する。このとき有害低密度廃棄物が発泡ポリスチレン材である場合には、大幅に減容される。
【0033】
(3)次に、図3(C)に見られるように、圧縮支持盤23を上昇させ開位置にもたらし、上記圧縮ヘッド22で有害低密度廃棄物ブロックP2を前方へ送り出し、その前方に位置する他の廃棄物ブロックP1の後面に密着する位置にもたらす。
【0034】
(4)しかる後、図3(D)に見られるように、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置とし、両者の間に、上記ホッパ11から、ばらけた状態の他の廃棄物P1’を落下投入する。次に、図3(E)に見られるように、上記圧縮ヘッド22を前進させることで、他の廃棄物P1’を閉位置の圧縮支持盤23との間で圧縮して他の廃棄物ブロックP1を成形する。この図3(D)そして図3(E)で示された、他の廃棄物P1’を圧縮して他の廃棄物ブロックP1を形成する要領は、上記(1)で示した初期圧縮送り工程における他の廃棄物ブロックP1の成形の場合と同じである。
【0035】
(5)次に、図3(F)に見られるように、圧縮支持盤23を開位置にもたらし、圧縮ヘッド22によって上記他の廃棄物ブロックP1を該圧縮支持盤23よりも前方へ送り出して、有害低密度廃棄物ブロックP2の後面に接面させると共に、該有害低密度廃棄物ブロックP2をその前方に位置する他の廃棄物ブロックP1との間で挟持するようにしてこれらを前方に送り出す。
【0036】
(6)しかる後、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置にもたらし、次の工程サイクルとして、図3(A)〜(F)の順に示される上記(2)〜(5)の動作を繰り返す。
【0037】
他の廃棄物ブロックP1,有害低密度廃棄物P2を圧縮成形する工程においては、ブロック成形のための圧力を、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2がその形状を容易には崩されない程度に緻密となるようにするのに十分な圧力に設定することが好ましい。
【0038】
本実施形態では、圧縮ヘッド22の前進により前方へ送られた複数の他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2から成るブロック列は、図1に見られるように他の廃棄物ブロックP1と有害低密度廃棄物ブロックP2とが一つずつ交互に存在することにより形成される。したがって前方の他の廃棄物ブロックP1と後方の他の廃棄物ブロックP1との間で挟持された有害低密度廃棄物ブロックP2は、両他の廃棄物ブロックP1と共に、同様にして前方へ送られる後続のブロックにより押し出されて加熱炉30内を前進し、ガス化改質溶融炉50まで到達して該ガス化改質溶融炉50の熱分解部52の空間へ、次々と落下して行く。
【0039】
本実施形態では、筒状部21の内壁断面が加熱炉30の内壁断面と同形かつ同一寸法で形成されているので、上記他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2の断面形状は、加熱炉30の入口の内壁断面と同形、同一寸法であり、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2は加熱炉30の内壁と接触状態を保ったまま押し込まれるようになり、したがって、加熱炉30の入口で該他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2により加熱炉内雰囲気をシールできる。他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2は、順次新しいブロックが押し込まれる毎に、加熱炉30内を滑りながらガス化改質溶融炉50の装入口51へ向けて移動する。
【0040】
既述したように、加熱炉30は外部から加熱されており、内部は昇温され、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2の移動、昇温過程において、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2中の水分が蒸発され乾燥される。そして、乾燥された他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2は、ガス化改質溶融炉50の装入口51から該ガス化改質溶融炉50の熱分解部52内へ装入そして供給される。
【0041】
上述のような他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2を成形する圧縮工程によって、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2を緻密にして加熱炉30内での移動や熱分解部52への供給の際に崩れることなくブロック形状を維持することができる。したがって、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2により廃棄物堆積層Qを形成した状態で(図1参照)、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2同士間に空隙ができてガス上昇のための流路を形成するようになり、この空隙を通して廃棄物堆積層Q内のガス流れを良好にすることができる。
【0042】
上記熱分解部52内へ供給された他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2は、上述のように、廃棄物堆積層Qを形成する(図1参照)。該廃棄物堆積層Qでは、熱分解部52の下部に設けられた第一酸素含有ガス供給口55から該廃棄物堆積層Q中へ酸素含有ガスが供給される。この結果、有害低密度廃棄物と他の廃棄物中の固定炭素などの可燃物が燃焼して、その熱エネルギーで有害低密度廃棄物ブロックP2と他の廃棄物ブロックP1の揮発分が揮発して熱分解される。この熱分解により、有害低密度廃棄物ブロックP2中の有害物質が熱分解され無害化される。また、有害低密度廃棄物と他の廃棄物が熱分解されて一酸化炭素、水素、炭化水素、二酸化炭素等へのガス化が行われ、さらにガス改質されると共に、他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2の不燃分(金属など)、灰分が溶融して溶融物が生成される。改質されたガスは洗浄、脱硫、精製されて、燃料ガスとして利用可能とされる。
【0043】
また、熱分解部52の下部に接続された溶融部54では、燃料ガス供給口57から供給される燃料ガスが燃焼して生成する高温燃焼ガスで上記溶融物が加熱され、該溶融物に含まれる微量の炭素などがガス化して除去され、該溶融物は溶融物排出口58から溶融スラグ、そして溶融金属として排出される。
【0044】
以上のように、本発明によれば、他の廃棄物ブロックP1と有害低密度廃棄物ブロックP2とが混在した状態でガス化改質溶融炉50へ順次供給され、炉内の熱分解部52で熱分解、ガス化そしてガス改質される。したがって、廃棄物の熱分解そしてガス化に先立って行われる前処理は廃棄物の圧縮による他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2の成形のみであり、前処理として従来のような複雑な工程を要することがないので、設備コストや運転コストの増大を抑制することができる。
【0045】
また、有害低密度廃棄物を圧縮して有害低密度廃棄物ブロックP2として、他の廃棄物ブロックP1で有害低密度廃棄物ブロックP2を挟持しながらこれらをガス化改質溶融炉へ送って該ガス化改質溶融炉50で熱分解するため、大量の有害低密度廃棄物を効率的に無害化処理することができる。
【0046】
<第二実施形態>
第一実施形態では、圧縮ヘッド22の前進により前方へ送られた複数の他の廃棄物ブロックP1、有害低密度廃棄物ブロックP2から成るブロック列は、図1に見られるように他の廃棄物ブロックP1と有害低密度廃棄物ブロックP2とが一つずつ交互に存在することにより形成されていたが、第二実施形態では、他の廃棄物ブロックP1同士間に複数の有害低密度廃棄物ブロックP2が連続して配されるようにしてブロック列が形成されており、この点で第一実施形態と異なっている。
【0047】
以下、第二実施形態について、第一実施形態との相違点である、有害低密度廃棄物ブロック及び他の廃棄物ブロックのそれぞれの圧縮送り工程の順序を、図4(A)〜(C)及び図5(A)〜(F)にもとづいて説明する。第二実施形態に係る処理装置は第一実施形態に係る処理装置1(図1参照)と同じ構成であるので、第二実施形態の装置構成については第一実施形態と同じ符号を用いて説明を省略する。
【0048】
後述するように、本実施形態では、第一実施形態と同様の初期圧縮送り工程(図2(A)〜(C)参照)によって他の廃棄物ブロックP1を成形して前方へ送った後、複数回(本実施形態では二回)の有害低密度廃棄物ブロックP2の圧縮送り工程と、この複数回の圧縮送り工程に続いて行われる一回の他の廃棄物ブロックP1の圧縮送り工程とが行われる。図4(A)〜(F)は、上記初期圧縮送り工程に続いて行われる複数回の有害低密度廃棄物ブロックP2の圧縮送り工程を、順を追って示す図である。また、図5(A)〜(C)は、図4(F)に続いて行われる他の廃棄物ブロックP1の圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
【0049】
(1)まず、既述した第一実施形態と同様に、初期圧縮送り工程(図2(A)〜(C)参照)を行い、他の廃棄物ブロックP1を圧縮成形し前方へ押し出す。
【0050】
(2)他の廃棄物ブロックP1の送り出し後、図4(A)に見られるように、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置にもたらし、ばらけた状態の有害低密度廃棄物P2’をホッパ11から筒状部21へ落下供給する。次に、図4(B)に見られるように、圧縮ヘッド22を前進させて、この有害低密度廃棄物P2’を圧縮支持盤23との間で圧縮して有害低密度廃棄物ブロックP2を成形する。
【0051】
(3)次に、図4(C)に見られるように、圧縮支持盤23を上昇させ開位置にもたらし、上記圧縮ヘッド22で有害低密度廃棄物ブロックP2を前方へ押し出し、その前方に位置する他の廃棄物ブロックP1の後面に密着する位置にもたらす。
【0052】
(4)次に、図4(D),(E)に見られるように、上記(2)と同様の要領で、有害低密度廃棄物P2’を供給し、有害低密度廃棄物ブロックP2を成形する。
【0053】
(5)図4(F)に見られるように、上記(3)と同様の要領で、圧縮ヘッド22により有害低密度廃棄物ブロックP2を前方へ押し出し、その前方に位置する有害低密度廃棄物ブロックP2の後面に密着する位置にもたらす。
【0054】
(6)次に、図5(A)〜(C)に見られるように、上記初期圧縮送り工程(図2(A)〜(C)参照)と同様の要領で、他の廃棄物ブロックP1を圧縮成形し前方へ押し出し、その前方に位置する有害低密度廃棄物ブロックP2の後面に密着する位置にもたらす。
【0055】
(7)しかる後、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置にもたらし、次の工程サイクルとして、図4(A)〜(F)そして図5(A)〜(C)の順に示される上記(2)〜(6)の作動を繰り返す。この結果、他の廃棄物ブロックP1同士間に二つの有害低密度廃棄物ブロックP2が連続して配されたブロック列が形成されていくこととなる。
【0056】
本実施形態では、他の廃棄物ブロックP1同士間に複数の有害低密度廃棄物ブロックP2が連続して配されるようにしたので、第一実施形態と比べて、短期間で多くの有害低密度廃棄物ブロックP2を該ガス化改質溶融炉50の熱分解部52へ供給でき、有害低密度廃棄物の無害化処理の効率を向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、ブロック列にて連続して配される有害低密度廃棄物ブロックP2が二つである場合について説明したが、連続する有害低密度廃棄物ブロックP2の個数を必要に応じて、さらに増加させてもよい。その場合には、連続する有害低密度廃棄物ブロックP2の個数に相当する回数だけ、上記(2)〜(5)の作動を繰り返すこととなる。
【0058】
<第三実施形態>
第一及び第二実施形態では、有害低密度廃棄物及び他の廃棄物のいずれか一方のみを圧縮して別個のブロックが成形されていたが、第三実施形態では、有害低密度廃棄物と他の廃棄物とが一体をなす複合ブロックが成形されており、この点で第一実施形態と異なっている。
【0059】
以下、第三実施形態について、第一及び第二実施形態との相違点である、上記複合ブロックの圧縮送り工程の順序を、図6(A)〜(E)にもとづいて説明する。第三実施形態に係る処理装置は第一実施形態に係る処理装置1(図1参照)と同じ構成であるので、第三実施形態の装置構成については第一実施形態と同じ符号を用いて説明を省略する。
【0060】
後述するように、本実施形態では、第一実施形態と同様の初期圧縮送り工程(図2(A)〜(C)参照)によって他の廃棄物ブロックP1を成形して前方へ送った後、有害低密度廃棄物ブロックと他の廃棄物ブロックとが一体をなす複合ブロックP3の圧縮送り工程が繰り返される。図6(A)〜(E)は、上記初期圧縮送り工程に続いて行われる複合ブロックP3の圧縮送り工程を、順を追って示す図である。
【0061】
(1)まず、既述した第一実施形態と同様に、初期圧縮送り工程(図2(A)〜(C)参照)を行い、他の廃棄物ブロックP1を圧縮成形し前方へ押し出す。
【0062】
(2)他の廃棄物ブロックP1を送り出した後、図6(A)に見られるように、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置にもたらし、ばらけた状態の有害低密度廃棄物P2’をホッパ11から筒状部21へ落下供給する。次に、図6(B)に見られるように、圧縮ヘッド22を前進させて、この有害低密度廃棄物P2’を圧縮支持盤23との間で圧縮して有害低密度廃棄物ブロックP2を成形する。
【0063】
(3)次に、図6(C)に見られるように、圧縮支持盤23を閉状態としたまま、ばらけた状態の他の廃棄物P1’をホッパ11から筒状部21へ落下供給する。そして、図6(D)に見られるように、圧縮ヘッド22を前進させて、この他の廃棄物P1’を前方の有害低密度廃棄物ブロックP2の後面との間で圧縮することにより、該有害低密度廃棄物ブロックP2と他の廃棄物ブロックP1とが一体をなす一つの複合ブロックP3を成形する。
【0064】
(4)次に、図6(E)に見られるように、圧縮支持盤23を上昇させ開位置にもたらし、上記圧縮ヘッド22で複合ブロックP3を前方へ押し出し、その前方に位置する他の廃棄物ブロックP1の後面に密着する位置にもたらす。
【0065】
(5)しかる後、圧縮ヘッド22を圧縮支持盤23の位置よりも後方へ後退させ、圧縮支持盤23を閉位置にもたらし、次の工程サイクルとして、図6(A)〜(E)の順に示される上記(2)〜(4)の動作を繰り返す。この結果、先頭の他の廃棄物ブロックP1に続いて複数の複合ブロックP3が連続して配されたブロック列が形成されていくこととなる。図6(D),(E)に見られるように、複合ブロックP3は前半部が有害低密度廃棄物ブロックP2から成る層で形成され、後半部が他の廃棄物ブロックP1から成る層で形成されているので、ブロック列全体を見たとき、先頭の他の廃棄物ブロックP1に続いて、有害低密度廃棄物ブロックP2から成る層と他の廃棄物ブロックP1から成る層とが一つずつ交互に配された状態となっている。
【0066】
本実施形態では、既述したように、一つの複合ブロックP3を圧縮成形する際に、有害低密度廃棄物ブロックP2を圧縮成形した後、該有害低密度廃棄物ブロックP2を前方へ送ることなく、他の廃棄物ブロックP1を上記有害低密度廃棄物ブロックP2と一体的に圧縮成形して複合ブロックP3を成形し、該複合ブロックP3を前方へ送っている。したがって、本実施形態によれば、第一実施形態のように有害低密度廃棄物ブロックP2を圧縮成形して前方へ送った後、他の廃棄物ブロックP1を圧縮成形して前方へ送る場合と比べて、有害低密度廃棄物ブロックP2の送り工程が省略されている分だけ、ブロック成形の処理効率を向上させることができる。
【0067】
<実施例>
HBCD含有濃度が約4500mg/kgであり、嵩密度が28kg/mである有害低密度廃棄物としてのHBCD含有発泡ポリスチレン材を、図1に示される処理装置で処理した。ガス化改質溶融炉内にてHBCDは約1200℃で分解された。その結果、ガス精製装置から排出された精製ガスのHBCD含有濃度は0.00000017mg/mNとなった。上記処理装置に供給したHBCD含有発泡ポリスチレン材のHBCD含有量と、排出される精製ガス、ガス洗浄水の処理水、スラグ等のHBCD含有量を測定、算出してHBCD分解率を算出したところ、HBCD分解率は99.99995%であり、ほぼ全てのHBCDが分解された。
【符号の説明】
【0068】
1 処理装置(有害低密度廃棄物処理装置)
11 ホッパ部
20 圧縮装置
21 筒状部
22 圧縮手段(圧縮ヘッド)
23 圧縮支持盤
30 加熱炉
50 ガス化改質溶融炉
P1 他の廃棄物ブロック
P2 有害低密度廃棄物ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6