(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のドラフト装置を使用する場合、作業室で発生する塵埃等の粒子の量や重さによって作業口からの空気の吸込み速度を調整したい場合があるが、従来は吸込み速度を調整するために、例えば空気を吸引するファンの回転速度を制御することで行える。
しかし、例えば薬品調剤のために薬局等で使用される簡易なドラフト装置では、ファンの回転速度を調整するための制御装置によってコスト高になるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、作業口からの空気の吸込み速度をファンの回転速度を調整することなく容易に調整することができるドラフト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のドラフト装置は、ファンおよびフィルタを有し、前記ファンによって前面側から内部に空気を吸入し、前記フィルタによって空気を濾過して外部に排気する装置本体と、
この装置本体の前面側に取り付けられた左右一対の側壁部と、
前記装置本体に、一対の前記側壁部間において上下に回動可能に取り付けられた天井部とを備え、
前記天井部は、前記装置本体の前面に対する角度を調整して保持可能となっていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ドラフト装置を作業台等の台の上面に設置することで、装置本体、一対の側壁部および天井部との間に前記台の上面側において作業空間が形成される。そして、側壁部間で上下に回動可能な天井部を装置本体の前面に対する角度を調整して保持することによって、天井部の先端縁部と両側壁部の先端縁部と台の上面とで囲まれる作業口の流路断面積を調整できる。
装置本体に設けられているファンの回転数を一定にした場合、天井部の角度を大きくして流路断面積を大きくするほど作業口からの空気の吸込み風速が遅くなり、逆に天井部の角度を小さくして流路断面積を小さくするほど作業口からの空気の吸込み速度が速くなる。
このように、天井部の装置本体の前面に対する角度を調整することによって、作業口からの空気の吸込み速度をファンの回転速度を調整することなく容易に調整できる。
【0008】
本発明の前記構成において、前記天井部には、横方向に延在するスリットが設けられていてもよい。
【0009】
このような構成によれば、スリットから作業空間に吸い込まれた空気が、作業口から作業空間に吸い込まれ、装置本体の前面および天井部の内面で反射して渦を巻こうとする空気に作用することで、渦流の発生を抑制できる。このため、効率的にファンによって前面側から内部に空気を吸入し、フィルタによって空気を濾過して排気できる。
【0010】
また、本発明の前記構成において、前記側壁部が前記装置本体に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、側壁部を装置本体から取り外すことによって、ドラフト装置の持ち運びや収納が容易となる。
【0012】
また、本発明の前記構成において、前記側壁部が前記装置本体の前面側に折り畳み可能に設けられていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、側壁部を装置本体の前面側に折り畳むことによって、ドラフト装置の持ち運びや収納が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、天井部の回転角度を調整することによって、ファンの回転速度を調整することなく作業口からの空気の吸込み速度を容易に調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るドラフト装置1は、
図1および
図2に示すように、装置本体2と、この装置本体2の前面側に取り付けられた左右一対の側壁部3,3と、装置本体2の前面6aに取り付けられた天井部5とを備えている。
そして、このようなドラフト装置1を作業台等の台11の上面に設置することで、装置本体2、一対の側壁部3,3および天井部5との間に、台11の上面側において作業空間Sが形成されるようになっている。
【0017】
装置本体2は、直方体箱状のケーシング6、このケーシング6の内部に設けられたファン7およびフィルタ8を備えている。
ケーシング6の上面には、開口部が設けられ、この開口部にパンチングメタル等のスクリーン部材9が取り付けられている。また、ケーシング6の上側の内部には、スクリーン部材9の直下にファン7が設けられている。このファン7は、吸い込んだ空気を回転軸と直交する方向に排気するようになっている。ファン7の外周側は、スクリーン部材9側を除いてケーシング6の内壁で囲まれているため、ファン7から排気される空気はスクリーン部材9を通過して外部に排気されるようになっている。
なお、装置本体2の上面には、図示しない電源スイッチや、ファン7の回転数をコントロールする図示しないダイヤルが設けられている。
【0018】
また、ケーシング6の前面6a、つまり装置本体2の前面6aの略下半分には、開口部が設けられ、この開口部にパンチングメタル等のスクリーン部材10が着脱可能に取り付けられている。このスクリーン部材10を取り外すことによって前記開口部が露出されるようになっている。
また、ケーシング6の下側の内部には、スクリーン部材10の背面側にフィルタ8が設けられている。
【0019】
フィルタ8は作業空間Sで発生する塵埃等の粒子や有害な気体を捕集することで空気を濾過するものであり、例えば、
図3に示すように、4段重ね構造となっている。
すなわち、フィルタ8は、フィルタケース8aを備え、このフィルタケース8aの内部に、粗不織布で形成された第1フィルタ層8b、中性能不織布で形成された第2フィルタ層8c、HEPAフィルタ等の高密度フィルタで形成された第3フィルタ層8dおよび保護シートで形成された保護層8eが設けられた構成となっている。フィルタケース8aは前面と背面とに開口部を備え、前面側に第1フィルタ層8bが配置され、背面側に保護層8eが配置されている。また、フィルタ8には有害な気体を除去するガスフィルタを配置してもよい。さらに、フィルタ8はディスポーザブル(使い捨て)仕様とすることが好ましい。
【0020】
粗不織布で形成された第1フィルタ層8bは、20μm以上の粒子を捕集可能であり、除塵効率は50〜70%となっている。中性能不織布で形成された第2フィルタ層8cは5〜10μm以上の粒子を捕集可能であり、除塵効率は80〜90%となっている。高密度フィルタで形成された第3フィルタ層8dは1μm以上の粒子を捕集可能であり、除塵効率は99%以上となっている。このような積層構造によって、その層の上流側のフィルタの寿命を延長可能となっている。保護シートで形成された保護層8eは高密度フィルタを保護することで、交換時に高密度フィルタの強度を保持できるようになっている。
【0021】
このような構成のフィルタ8は、第1フィルタ層8bをスクリーン部材10に対向させた状態でフィルタケース8aがケーシング6の下側の空間に嵌め込まれ、フィルタケース8aの背面の上下端部はケーシング6に設けられた受面6c,6cに当接されている。また、フィルタケース8aは、その下端部をケーシング6の底部に蝶番12によって取り付けることで、蝶番12を軸として前後に回動可能となっている。
また、フィルタケース8aの上部にはブラケット8fが設けられ、このブラケット8fに係止アーム8gが上下に回動可能に取り付けられている。係止アーム8gは下方に向けて付勢されており、その先端部がケーシング6に設けられた係止部6dに係止されることで、フィルタケース8aの回動を阻止するようになっている。
したがって、フィルタ8は、スクリーン部材10を取り外して、ケーシング6の前面下側の開口部を露出させるとともに、係止アーム8gを上側に回転させて係止部6dから外したうえで、蝶番12を軸として前側に回転させることで、ケーシング6からほぼ真横に寝かした状態で突出させることができるようになっている。
【0022】
また、ケーシング6の背面側には、上下に亘って空気流路6bが設けられており、この空気流路6bの下部はフィルタ8の背面側に開口しており、空気流路6bの上部はファン7の背面側に開口している。そして、ファン7は、それを順方向に回転させることで、空気流路6bを上方に向かって空気が流通するように、設定されている。このため、ファン7を順方向に回転させると、作業空間S内の空気はフィルタ8を通って空気流路6bを上方に流通し、ファン7によって吸い込まれて、スクリーン部材9を通過して外部に排気される。
【0023】
また、左右一対の側壁部3,3は、透光性および導電性を有するガラスまたは樹脂によって略台形板状に形成されており、装置本体2の前面6aとほぼ直角に配置されるとともに、装置本体2の前面6aの左右縁部側にそれぞれ配置されている。また、側壁部3の上辺部は装置本体2の前面6aから遠ざかるほど下方に傾斜しており、下辺部は装置本体2の底面とほぼ等しい高さに位置し、ほぼ水平に設けられている。したがって、ドラフト装置1を台11の上面に設置すると、装置本体2の底面と側壁部3,3の下辺部が当該上面に当接されるので、ドラフト装置1を台11の上面に安定的に設置できる。
また、側壁部3の先端縁部および基端縁部は、それぞれ下辺部に対して直角に配置されている。また、
図1に示すように、側壁部3の基端縁部には矩形板状の挿入部3aが設けられており、この挿入部3aは、装置本体2のケーシング6の側壁の内側に当該ケーシング6の上下に亘って形成された溝に挿脱可能に挿入されている。これによって、側壁部3は装置本体2に着脱可能に取り付けられている。
【0024】
天井部5は、透明なガラスまたは樹脂によって長方形板状に形成されており、その基端縁部がトルク蝶番15,15によって装置本体2の前面6aの上縁部に上下に回動可能に取り付けられている。このトルク蝶番15は、天井部5を上下に回動可能に支持するとともに、装置本体2の前面6aに対する天井部5の角度を調整して保持可能としている。つまり、天井部5はトルク蝶番15,15によって上下に回動可能で、かつ、所望の回動位置で保持されるようになっている。このように天井部5は所望の回動位置で保持されるが、これに代えて、所定の回動角度ごとに段階的に保持されるようになっていてもよい。
また、天井部5の左右の長さは、左右一対の側壁部3,3の対向する内面間の距離とほぼ等しいか、若干短くなっており、これによって、天井部5の左右側縁部は側壁部3,3の内面に沿って上下に移動可能となっている。このようにして、天井部5は、装置本体2に側壁部3,3間において上下に回動可能に取り付けられるとともに、装置本体2の前面6aに対する角度を調整して保持可能となっている。
【0025】
また、天井部5は、その左右側縁部が側壁部3,3の上辺部とほぼ等しい位置にあるときに、天井部5の先端縁部が側壁部3,3の先端縁部の上端間に位置するようになっている。このとき、天井部5は最も上側に回転して、装置本体2の前面6aに対する角度が最大となっており、天井部5の先端縁部と両側壁部3,3の先端縁部と台11の上面とで囲まれる作業口の流路断面積が最も大きい状態となる。
一方、この状態から天井部5がトルク蝶番15,15を軸として側壁部3,3間において下方に回転することによって、装置本体2の前面6aに対する角度が次第に小さくなって、前記作業口の流路断面積が次第に小さくなる。
【0026】
このような構成のドラフト装置1を使用する場合、ドラフト装置1を作業台等の台11の上面に設置することで、装置本体2、一対の側壁部3,3および天井部5との間に台11の上面側において作業空間Sが形成される。
そして、ファン7を作動させた状態で、作業空間Sで所定の作業を行う際に、側壁部3,3間で上下に回動可能な天井部5の角度(装置本体2の前面6aに対する角度)を調整することによって、天井部5の先端縁部と両側壁部3,3の先端縁部と台11の上面とで囲まれる作業口の流路断面積を調整する。ファン7の回転数を一定にした場合、天井部5の角度を大きくして流路断面積を大きくするほど作業口からの空気の吸込み風速が遅くなり、逆に天井部5の角度を小さくして流路断面積を小さくするほど作業口からの空気の吸込み速度が速くなる。
【0027】
そして、外部から空気が作業口を通して作業空間Sに流入する(吸い込まれる)が、作業空間Sで塵埃等の粒子が生じている場合、当該粒子が空気とともに装置本体2の内部にスクリーン部材10およびフィルタ8を通して流入する(吸い込まれる)。そして、このフィルタ8によって粒子および有毒なガスが捕集されることで、空気が濾過され、この濾過された空気が空気流路6bを上方に流通し、ファン7によって吸い込まれて、スクリーン部材9を通過して外部に排気される。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、作業空間Sで生じている粒子および有毒なガスをフィルタ8によって捕集することで空気を濾過し、この濾過された空気を外部に排気できるとともに、天井部5の角度(装置本体2の前面6aに対する角度)を調整することによって、ファン7の回転速度を調整することなく作業口からの空気の吸込み速度を容易に調整できる。そして、吸込み速度が速くなるほど大きい粒子を吸引できるので、天井部5の角度を調整することによって、吸引粒子径をコントロールができる。例えば、大粒子を吸引する場合は、天井部5の角度を50〜55°にして、吸引速度を0.5m/sとし、小粒子を吸引する場合は、天井部5の角度を75〜80°にして、吸引速度を0.25m/sとすることができる。
【0029】
また、側壁部3,3は、その挿入部3aを装置本体2のケーシング6の側壁の内側に形成された溝に挿脱可能に挿入されているので、側壁部3,3を装置本体2から取り外すことによって、ドラフト装置1の持ち運びや収納が容易となる。
さらに、フィルタ8のメンテナンスや交換を行う場合、
図4に示すように、スクリーン部材10を取り外して、ケーシング6の前面下側の開口部を露出させるとともに、係止アーム8gを上側に回転させて係止部6dから外したうえで、蝶番12を軸としてフィルタ8を前側に回転させることで、ケーシング6からほぼ真横に寝かした状態で突出させ、この状態で、第1フィルタ層8b、第2フィルタ層8c、第3フィルタ層8dおよび保護層8eのうちの少なくとも1つをフィルタケース8aから取り外すことによって行えるので、フィルタ8のメンテナンスや交換を容易に行える。
【0030】
また、
図5に示すように、本実施の形態において、天井部5に、横方向に延在するスリット5aが設けられていてもよい。このスリット5aは、例えば天井部5の基端縁部と先端縁部との間の略中央部において、天井部5の左右側縁部間に設けられている。スリット5aの両端部は、天井部5の左右側縁部より内側に位置しているが、例えば、ケーシング6の前面6aの下部に設けられているスクリーン部材10の左右両端縁と左右方向にほぼ等しい位置に設けてもよい。つまり、スリット5aの長さをスクリーン部材10の左右の長さとほぼ等しく設定してもよい。
【0031】
このように、天井部5にスリット5aを設けた場合、スリット5aから作業空間Sに吸い込まれた空気K1が、作業口から作業空間Sに吸い込まれ、装置本体2の前面6aおよび天井部5の内面で反射して渦を巻こうとする空気K2に作用することで、渦流の発生を抑制できる。このため、効率的にファン7によって前面6a側から内部に空気を吸入し、フィルタ8によって空気を濾過して排気できる。
【0032】
また、
図6に示すように、本実施の形態において、側壁部3,3が装置本体2のケーシング6の前面6a側に折り畳み可能に設けられていてもよい。すなわち、側壁部3,3はそれら基端縁部が図示しない蝶番によってケーシング6の前面6aの両側縁部に取り付けられており、前面6aに対して直角に配置された位置と、前面6aに当接する位置との間で回動可能となっている。
【0033】
このようなドラフト装置1では、側壁部3,3を装置本体2の前面6a側に折り畳むことによって、ドラフト装置1の持ち運びや収納が容易になる。なお、側壁部3,3を折り畳む場合、天井部5を下方に回転させて前面6aに当接させたうえで、一方の側壁部3を前面6a側に折り畳んで天井部5に当接し、次に、他方の側壁部3を前面6a側に折り畳んで、先に折り畳んだ一方の側壁部3に当接させる。この場合、側壁部3,3を、それらの先端部どうしが重なるようにして折り畳む。
【0034】
なお、本実施の形態におけるドラフト装置1は、
図7に示すように、ファン7の向きを逆転させたり、または、ファン7を逆回転させることによって、装置本体2の上部のスクリーン部材9を通して空気を吸い込み、下部のスクリーン部材10を通して清浄な空気を作業空間Sに吹き込むようにした、クリーンベンチとしても使用できる。
【解決手段】ファン7およびフィルタ8を有し、ファン7によって前面側から内部に空気を吸入し、フィルタ8によって空気を濾過して外部に排気する装置本体2と、この装置本体2の前面側に取り付けられた左右一対の側壁部3,3と、装置本体2に、一対の側壁部3,3間において上下に回動可能に取り付けられた天井部5とを備え、天井部5は、装置本体2の前面6aに対する角度を調整して保持可能となっているので、作業口における流路断面積を調整できる。したがって、ファン7の回転速度を調整することなく作業口からの空気の吸込み速度を容易に調整することができる。