特許第6349071号(P6349071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349071
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】接着促進剤
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20180618BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20180618BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20180618BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180618BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20180618BHJP
   C03C 27/10 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   B05D7/24 302Y
   C09D7/20
   C09D5/00 D
   C09D201/00
   B05D7/24 302G
   B05D7/24 302J
   B05D7/00 H
   C03C27/10 E
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-223027(P2013-223027)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2014-128786(P2014-128786A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】13/664,337
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/062,677
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジドン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ケー.ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ワイ.ワン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ピー.プロコポビッチ
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−511707(JP,A)
【文献】 特開2008−297550(JP,A)
【文献】 特開2007−324283(JP,A)
【文献】 特表2006−519924(JP,A)
【文献】 特表2009−507962(JP,A)
【文献】 米国特許第05081202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
C09D 1/00−5/10、9/00−201/10
C03C 27/00−29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされる表面を有する電子デバイス基体を提供する工程と、
2から6つのアルコキシシラン部分を有するポリ(アルコキシシラン)と溶媒とを含む接着促進組成物で、前記コーティングされる表面を処理する工程であって、前記ポリ(アルコキシシラン)が、前記ポリ(アルコキシシラン)中の前記アルコキシシラン部分:水のモル比が1:下の水で加水分解されており、および前記組成物が、前記ポリ(アルコキシシラン)中の前記アルコキシシラン部分:加水分解のアルコールのモル比が1:下の加水分解のアルコールを含む工程と、
ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマーを含むコーティング組成物を前記処理された表面上に配置する工程と
を含むデバイスを製造する方法。
【請求項2】
前記電子デバイス基体が、シリコン、ガラス、セラミックおよび金属の1種以上を含む表面を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
加水分解される前の前記ポリ(アルコキシシラン)が、式:
【化1】
を有し、
式中、各Rは、独立して、(C−C)アルキリデン、(C−C)アルキレン、(C−C10)アリーレンおよび(C−C)アルケニレンから選択され、
各Rは、独立して、H、(C−C)アルキルおよび(C−C)アシルから選択され、
各Zは、独立して、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニルおよび−ORから選択され、
X=(C−C10)アリーレン、O、S、S−S、S−S−S、S−S−S−S、N(Y)、P(Y)または共有結合、
Y=H、(C−C)アルキル、(C−C)アルキレン−N(Y、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)またはアリール(メタ)アクリロイル、並びに
=H、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニル、
各Rは、場合により、(C−C)アルキリデン−Si(Z)(OR)および(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)の1つ以上で置換されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリ(アルコキシシラン)が、前記ポリ(アルコキシシラン)中の前記アルコキシシラン部分:水のモル比が1:0.5下の水で加水分解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接着促進組成物が動的光散乱により測定された場合1nm以下の平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマー、
ポリ(アルコキシシラン)中のアルコキシシラン部分:水のモル比が1:下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、ならびに
溶媒
を含む組成物であって、当該組成物が、前記ポリ(アルコキシシラン)中の前記アルコキシシラン部分:加水分解のアルコールのモル比が1:下の加水分解のアルコールを含加水分解前の前記ポリ(アルコキシシラン)が2から6つの前記アルコキシシラン部分を有する、組成物。
【請求項7】
前記ポリ(アルコキシシラン)が、前記ポリ(アルコキシシラン)中の前記アルコキシシラン部分:水のモル比が1:0.5下の水で加水分解されている、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
加水分解される前の前記ポリ(アルコキシシラン)が、式:
【化2】
を有し、
式中、各Rは、独立して、(C−C)アルキリデン、(C−C)アルキレン、(C−C10)アリーレンおよび(C−C)アルケニレンから選択され、
各Rは、独立して、H、(C−C)アルキルおよび(C−C)アシルから選択され、
各Zは、独立して、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニルおよび−ORから選択され、
X=(C−C10)アリーレン、N(Y)、または共有結合、
Y=H、(C−C)アルキル、(C−C)アルキレン−N(Y、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)またはアリール(メタ)アクリロイル、並びに
=H、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニルであり
各Rは、場合により、(C−C)アルキリデン−Si(Z)(OR)および(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)の1つ以上で置換されている、
請求項に記載の組成物。
【請求項9】
動的光散乱により測定された場合1nm以下の平均粒径を有する、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物の分野に関し、より詳細には、基体への特定のコーティング組成物の接着を改善するための解決手段に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業において、コーティング組成物は、種々の有機含有材料、例えば、ポリマー材料を、各種の基体上に堆積させるのに幅広く使用される。多くの場合、前記基体は、無機であるか、または、コートされる表面に無機の領域を有する。例えば、コーティング組成物、例えば、誘電性膜形成性組成物および、結合または接着組成物が、多くの場合、ガラス、金属の表面および/または、半導体表面、例えば、シリコン、ガリウム−ヒ素およびシリコン−ゲルマニウムに適用される。多くの有機材料は、無機表面を有する基体には、十分に接着しない。前記有機材料が、このような表面に親和性を有する基を含まないためである。このため、このような基体表面を、その上に有機含有コーティング組成物を配置する前に、接着促進剤で処理するのが、一般的な方法である。中でも、シランが、工業的に使用される最も一般的な接着促進剤である。
【0003】
アリールシクロブテンベースの材料は、その優れた誘電特性、優れたギャップ充填および平坦化、ならびに、低吸湿性であるために、エレクトロニクス産業において、広く各種の用途に使用されてきた。アリールシクロブテン材料を、例えば、中間誘電体の用途およびウエハ結合用途に使用するために、種々の基体(例えば、シリコン、窒化シリコン、金および銅)に対する前記アリールシクロブテン材料の適切な接着が必要である。アリールシクロブテン材料自身は、これらの基体に対する十分な接着性を有していない。したがって、前記アリールシクロブテン材料をコーティングする前に、接着を向上するために、通常、接着促進剤が適用される。
【0004】
種々の接着促進剤が、アリールシクロブテンとともに使用するのに公知である。例えば、米国特許第5,668,210号(特許文献1)には、特定のアルコキシシランが、アリールシクロブテン用の接着促進剤として開示されている。この特許には、モノシランのみが開示されている。これらのアルコキシシランは、10から80%の化学量論量(すなわち、モル%)の水で加水分解される。しかしながら、従来の接着促進剤は、頻繁に層間剥離または他の接着不良をもたらす、より小さいフィーチャサイズ(10μm未満)およびより複雑なチップ設計についての、エレクトロニクス産業においてますます高まる要求を、満足させられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,668,210号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より小さいフィーチャサイズ(10μm未満)およびより複雑なチップ設計についての、アリールシクロブテンおよび他の有機コーティングの使用を可能にする接着促進剤についての必要性が残っている。本発明は、1つ以上のこれらの欠点を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コーティングされる表面を有するデバイス基体を提供する工程と;ポリ(アルコキシシラン)と溶媒とを含む接着促進組成物で、前記コーティングされる表面を処理する工程であって、前記ポリ(アルコキシシラン)が、1モル%以下の水で加水分解されており、および前記組成物が1モル%以下の加水分解のアルコールを含む工程と;ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマーを含むコーティング組成物を前記処理された表面上に配置する工程とを含む、デバイスを製造する方法を提供する。前記デバイス基体は、電子デバイス基体であることが好ましい。
【0008】
本発明は、ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマー;1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン);ならびに溶媒を含む接着促進組成物であって、当該組成物が1モル%以下の加水分解のアルコールを含む、接着促進組成物も提供する。好ましくは、前記組成物は、動的光散乱により測定された場合、1nm以下の平均粒径を有する。
【0009】
さらに、本発明は、コーティングされる表面を有するデバイス基体を提供する工程と;ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマー;1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン);ならびに溶媒を含むコーティング組成物であって、当該組成物が1モル%以下の加水分解のアルコールを含むコーティング組成物を堆積させる工程とを含む、デバイスを製造する方法を提供する。
【0010】
1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)が、電子デバイスの製造に使用されるポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるコーティングオリゴマーについての、特に効果的な接着促進剤であることが驚くべきことに見出された。このようなコーティングオリゴマーは、いくつかある用途の中でも特に、誘電性コーティング、感光性(photodefinable)コーティング、一時的結合性接着剤、持続的結合性接着剤を調製するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書を通して使用する時、下記の略記は、特に断らない限り、下記の意味を有するものとする。℃=セ氏温度;g=グラム;L=リットル;mL=ミリリットル;ppm=100万分の1;mm=ミリメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;nm=ナノメートル;およびÅ=オングストローム。「wt%」は、特に断らない限り、参照される組成物の合計重量に基づく重量パーセントを意味する。特に断らない限り、全ての量は、重量%であり、全ての比は、モル比である。全ての数値範囲は、包括的であり、並びにこのような数値範囲が合計100%になることに制限されることが明らかである場合を除いて、任意の順に組み合わせ可能である。「a」、「an」および「the」の冠詞は、単数形および複数形を意味する。
【0012】
本明細書を通して使用する時、「フィーチャ」は、基体上、特に半導体ウエハ上の形状を意味する。「アルキル」の用語は、線状、分岐および環状のアルキルを含む。同様に、「アルケニル」は、線状、分岐および環状のアルケニルを意味する。「アリール」は、芳香族炭素環および芳香族複素環を意味する。「オリゴマー」の用語は、二量体、三量体、四量体および、さらに硬化可能な他の比較的小さい分子量材料を意味する。「硬化」の用語には、材料または組成物の分子量が大きくなる任意のプロセス、例えば、重合または縮合の意味がある。
【0013】
本発明に有用な前記ポリ(アルコキシシラン)は、少なくとも2つのアルコキシシラン部分、すなわち、−Si(Z)ORで表わされる部分から構成される。好ましくは、前記ポリ(アルコキシシラン)は、2から6つのアルコキシシラン部分、より好ましくは、2から4つのアルコキシシラン部分、さらにより好ましくは、2から3つのアルコキシシラン部分、および最も好ましくは、2つのアルコキシシラン部分を有する。本明細書で使用する時、「アルコキシシラン」部分の用語は、1つ以上の(C−C)アルコキシ基および/または1つ以上の(C−C)アシルオキシ基で置換されたシラン部分を含む。好ましくは、各アルコキシシラン部分は、3つの(C−C)アルコキシ基および/または(C−C)アシルオキシ基、より好ましくは、3つの(C−C)アルコキシ基を含む。
【0014】
加水分解される前の、特に好ましいポリ(アルコキシシラン)は、式:
【化1】
を有し、式中、各Rは、独立して、(C−C)アルキリデン、(C−C)アルキレン、(C−C10)アリーレンおよび(C−C)アルケニレンから選択され;各Rは、独立して、H、(C−C)アルキルおよび(C−C)アシルから選択され;各Zは、独立して、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニルおよび−ORから選択され;X=(C−C10)アリーレン、O、S、S−S、S−S−S、S−S−S−S、N(Y)、P(Y)または共有結合;Y=H、(C−C)アルキル、(C−C)アルキレン−N(Y、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)、(C−C)アルキリデン−Si(Z)(OR)またはアリール(メタ)アクリロイル;および、Y=H、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニル;各Rは、場合により、(C−C)アルキリデン−Si(Z)(OR)および(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)の1つ以上で置換される。各Rは、好ましくは独立して、(C−C)アルキリデン−Si(Z)(OR)および(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)の1つ以上で、それぞれ場合により置換された、(C−C)アルキリデン、(C−C)アルキレンおよび(C−C)アルケニレンから選択される。より好ましくは、各Rは、独立して、(C−C)アルキリデン、(C−C)アルキレンおよび(C−C)アルケニレンから選択される。R基が(C−C)アルキリデン−Si(Z)(OR)または(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)で置換される場合、1から2つのこれらの基が存在するのが好ましい。各Rは、好ましくは、(C−C)アルキルおよび(C−C)アシル;およびより好ましくは、(C−C)アルキルおよび(C−C)アシルから選択される。各Zは、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニルおよび−ORから選択されるのが好ましく、およびより好ましくは、各Zは、−ORである。好ましくは、Xは、S−S、S−S−S、S−S−S−S、N(Y)または共有結合から選択され、より好ましくは、N(Y)または共有結合から選択される。Yは、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルキレン−N(Y、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)およびアリール(メタ)アクリロイルから選択されるのが好ましく、およびより好ましくは、H、(C−C)アルキレン−N(Y、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキレン−Si(Z)(OR)およびアリール(メタ)アクリロイルから選択される。好ましくは、Yは、H、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルケニルから選択され、より好ましくは、Hおよび(C−C)アルキルから選択される。適切なポリ(アルコキシシラン)は、各種の供給元、例えば、Sigma−Ardrich(St.Louis、Missouri)からの市販品であるか、または、文献において公知の任意の適切な方法により調製されてもよい。前記ポリ(アルコキシシラン)は、さらに精製されずに使用されてもよいし、または、適切な従来の手法を使用して精製されてもよい。
【0015】
従来のアルコキシシラン接着促進剤は、前記アルコキシシランを部分的または完全に加水分解するために、(化学量論量近くの)大量の水を使用する。完全な(100%)加水分解を達成するために、化学量論量の水は、各アルコキシシラン部分に存在する、各モル当量のアルコキシ(またはアシルオキシ)基に対する、1モル当量の水である。実際には、加水分解中に縮合反応により水が形成されることから、化学量論量よりいくらか少ない水が、完全な加水分解に必要である。このため、従来の接着促進剤は、典型的には、化学量論量の10から80%の水を使用する。比較して、本発明のポリ(アルコキシシラン)は、非常に少量の水、すなわち、化学量論量より非常に少ない水を使用して、部分的に加水分解される。本発明に有用であるために、ポリ(アルコキシシラン)は、1モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、およびより好ましくは、0.3モル%以下の水で加水分解される。このような加水分解用の水の適切な量は、0.0001から1モル%、好ましくは0.001から1モル%、より好ましくは0.001から0.5モル%、さらにより好ましくは0.01から0.5モル%である。前記加水分解に使用される水は、精製されるべきであり、好ましくは、脱イオンされる。この加水分解の結果として、加水分解のアルコールが形成される。前記加水分解のアルコールは、前記シラン部分由来のアルコキシ基の開裂から形成されるアルコールである。例えば、トリエトキシシラン部分由来のエトキシ基の開裂により、加水分解のアルコールとして、エタノールの形成がもたらされる。更なる例として、トリアセトキシシラン部分の加水分解により、加水分解の「アルコール」として、酢酸の形成がもたらされる。本発明のポリ(アルコキシシラン)の加水分解に起因する加水分解のアルコールの量は、1モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、およびより好ましくは、0.3モル%以下である。
【0016】
ポリ(アルコキシシラン)は、例えば、ポリ(アルコキシシラン)が所望の量の水と接触する、または、揮発性溶媒の存在下で、前記ポリ(アルコキシシラン)を水と接触させることによる、または、ポリ(アルコキシシラン)を、所望のレベルの加水分解をもたらすのに十分な残留水含有量を有する適切な溶媒と単に混合することによる、当該分野において公知の手法に基づいて加水分解されてもよい。揮発性溶媒(または溶媒混合物)が使用される場合、加水分解されたポリ(アルコキシシラン)が、本発明のコーティング組成物に包含される前に、場合により、前記揮発性溶媒(または溶媒混合物)は除去される。1つの好ましいプロセスでは、加水分解は、ポリ(アルコキシシラン)を、所望のレベルの加水分解をもたらすのに十分な残留水を有する、適切な有機溶媒と混合することにより行われる。もう1つの好ましいプロセスでは、まず、所望の量の水が所望の溶媒と一緒にされ、ついで、この混合物がポリ(アルコキシシラン)と混合される。場合により、酸性または塩基性の触媒が加水分解反応に使用される場合があるが、触媒が使用されないのが好ましい。
【0017】
任意の酸性または塩基性の触媒は、ポリ(アルコキシシラン)の加水分解を触媒するであろう、あらゆる酸性または塩基性の化合物であり得る。酸性触媒としては、制限されず、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、メタンスルホン酸およびリン酸があげられる。塩基性触媒としては、制限されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムがあげられる。存在する場合、触媒は加水分解反応を触媒するのに十分な量で使用される。有利に使用される触媒の量は、所望の加水分解速度、触媒、使用されるポリ(アルコキシシラン)および望まれる加水分解の程度を含む、多くの要因により決まるであろう。好ましくは、触媒は、ポリ(アルコキシシラン)の量に基づいて、0ppmから50ppmの量で存在する。より好ましくは、触媒は、ポリ(アルコキシシラン)の量に基づいて、0ppmから100ppm、および最も好ましくは、0から30ppmの量で存在する。
【0018】
理論に拘束される訳ではないが、ポリ(アルコキシシラン)の加水分解により、加水分解されていない、部分的に加水分解された、完全に加水分解された、および、オリゴマー形成されたポリ(アルコキシシラン)の混合物が生じると考えられる。加水分解された、または部分的に加水分解されたポリ(アルコキシシラン)が、もう1つのポリ(アルコキシシラン)と反応して、水とSi−O−Si結合を生成する場合、オリゴマー化が起こる。本明細書で使用する時、「加水分解されたポリ(アルコキシシラン)」の用語は、ポリ(アルコキシシラン)の全てのレベルの加水分解、ならびに、オリゴマー形成されたポリ(アルコキシシラン)を包含する。また、本明細書で使用する時、「ポリ(アルコキシシラン)および/または加水分解されたポリ(アルコキシシラン)」の用語は、ポリ(アルコキシシラン)もしくは加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、またはそれらの混合物を意味する。
【0019】
加水分解反応では、ポリ(アルコキシシラン)、水、溶媒および任意の触媒が、所望の加水分解が完了するまで混合される。加水分解を完了するための時間は、使用される特定の反応物質および望まれる加水分解のレベルを含む多くの要因に応じて変化するであろうが、一般的には、加水分解は、2分から5時間、好ましくは4分から2時間、およびより好ましくは、10分から1時間で完了する。一般的に、非常に低いレベルの水が使用されるため、ポリ(アルコキシシラン)、水および溶媒は、単一相の混合物を形成するであろう。一般的に、この混合物は、単一相が加水分解反応の完了により得られた後に、1分から2時間攪拌される。加水分解が行われる温度は、好ましくは、約15から100℃、より好ましくは20から50℃、および最も好ましくは、20から25℃である。加水分解速度は、温度の上昇に伴って向上する。好ましくは、加水分解は、触媒の不存在下において行われる。このような手法では、所望の量の水が、所望の溶媒と混合され、ついで、ポリ(アルコキシシラン)と一緒にされ、所望の程度の加水分解が起こるのに十分な期間攪拌される。好ましくは、使用される溶媒は、処理(接着促進剤)組成物を調製するのに使用されるのと同じ溶媒である。この方法は、ポリ(アルコキシシラン)および加水分解が起こる温度に応じて、数日かかる場合がある。一部の用途では、残留する触媒レベルが、ポリ(アルコキシシラン)の後の使用に悪影響を有する場合に、この方法が好ましい場合がある。
【0020】
本発明の接着促進組成物は、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)および溶媒を含み、この組成物は1モル%以下の加水分解のアルコールを含む。本発明の接着促進組成物に使用される溶媒は、加水分解されたポリ(アルコキシシラン)を溶解可能な、単一の有機溶媒または2種以上の有機溶媒の混合物のいずれかであり得る。典型的な有機溶媒としては、制限されず、芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、メシチレンおよびアルキルナフタレン;アルコール、例えば、2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノールおよびメチルイソブチルカルビノール;エステル、例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびメチル2−ヒドロキシイソブチレート;ラクトン、例えば、ガンマ−ブチロラクトン;ラクタム、例えば、N−メチルピロリジノン;エーテル、例えば、アニソール、プロピレングリコールメチルエーテルおよびジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体(ザダウケミカルカンパニーから、Proglyde(商標)DMMとして市販されている);ケトン、例えば、シクロヘキサノンおよびメチルヘキサノン、ならびにそれらの混合物があげられる。
【0021】
一般的に、本発明の接着促進組成物は、0.01から10wt%のポリ(アルコキシシラン)および/または加水分解されたポリ(アルコキシシラン)と、90から99.9wt%の溶媒とを含む。好ましくは、接着促進組成物は、0.01から5wt%、より好ましくは0.01から3wt%、およびさらにより好ましくは、0.01から2wt%のポリ(アルコキシシラン)および/または加水分解されたポリ(アルコキシシラン)を含む。好ましくは、接着促進組成物は、90から99.95wt%、より好ましくは95から99.95wt%、およびさらにより好ましくは、98から99.9wt%の溶媒を含む。特に好ましい組成物は、0.05から3wt%のポリ(アルコキシシラン)および/または加水分解されたポリ(アルコキシシラン)と、97から99.95wt%の溶媒とを含む。
【0022】
本発明の接着促進組成物は、典型的には、後に適用されるコーティング組成物の接着を改善するために、電子デバイス基体に適用される。本発明のデバイスを製造する方法は、コーティングされる表面を有するデバイス基体を提供する工程と;ポリ(アルコキシシラン)と溶媒とを含む組成物で、前記コーティングされる表面を処理する工程であって、前記ポリ(アルコキシシラン)が1モル%以下の水で加水分解されており、前記組成物が1モル%以下の加水分解のアルコールを含む工程と;ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマーを含む組成物を、前記処理された表面上に配置する工程とを含む。
【0023】
デバイスは、制限されず、実装基体、例えば、マルチチップモジュール;フラットパネルディスプレイ基体;集積回路基体、発光ダイオード(LED)用基体、半導体ウエハ、多結晶シリコン基体等を含む、電子デバイスの製造に使用される任意の適切な基体であり得る。コーティング組成物でコートされ得る典型的なデバイス基体としては、金属、例えば、アルミニウム、銅、金、銀、チタン、タンタル、ニッケル、すず、すず合金等;セラミック、例えば、アルミナ、シリカ、サファイア、MgO、スピネルを含むBeO、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素およびガリウムヒ素;ガラス、例えば、繊維ガラス、石灰ガラス、フリントガラス、ホウケイ酸ガラス、GORILLA(商標)ガラス、PYREX(商標)ガラスおよびVYCOR(商標)ガラス;および、半導体ウエハがあげられる。幅広い各種の半導体ウエハが、本発明に使用され得る。本明細書で使用する時、「半導体ウエハ」の用語は、「電子デバイス基体」、「半導体基体」、「半導体デバイス」および、シングルチップウエハ、マルチプルチップウエハを含む種々のレベルの相互接続用の種々のパッケージ、はんだ接続を必要とする種々のレベルまたは他のアッセンブリ用のパッケージを包含することを意図している。特に適切な基体は、パターン化されたウエハ、例えば、パターン化されたシリコンウエハおよびパターン化されたガリウム−ヒ素ウエハである。このようなウエハは、任意の適切なサイズであり得る。好ましいウエハの直径は、200mmから300mmであるが、より小さい直径およびより大きい直径を有するウエハが、本発明に基づいて、適切に使用されてもよい。本明細書で使用する時、「半導体基体」の用語は、半導体デバイスのアクティブ部もしくは操作部を含む1つ以上の半導体層または構造を有する任意の基体を含む。「半導体基体」の用語は、制限されず、バルク半導体材料、例えば、半導体ウエハ単独、または、その上に他の材料を含むアッセンブリおよび、半導体材料層層単独または他の材料を含むアッセンブリのいずれかを含む半導体材料を含む、任意の構造を意味するものと定義される。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスが、一括製造された、または、一括製造されている状態の半導体基体を意味する。好ましくは、基体が金属、例えば、銅である場合、コーティング組成物の適用前に、エッチャント、例えば、1%の酢酸で処理される。高密度電子回路に一般的に使用される基体、例えば、シリコン、熱酸化シリコン、GaAs、アルミナおよびアルミニウムは、界面化学を制御するために、酸素プラズマエッチングまたはRCA洗浄等のプロセスにより一般的に処理される。
【0024】
デバイス基体の表面は、任意の適切な方法を使用して、デバイス基体の表面を、本発明の接着促進組成物と接触させることにより処理される。当該分野において周知の典型的な方法としては、制限されず、いくつかある方法の中でも特に、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティングおよびスクリーン印刷があげられる。半導体製造業では、スピンコーティングが、既存の設備およびプロセスを利用できるため好ましい。好ましくは、表面上に配置された後に、溶媒が、つぎの工程の前に除去される。溶媒除去は、典型的には、基体を加熱すること(ベークすること)により、例えば、80から180℃の温度で、例えば、10から600秒の期間加熱することにより達成される。
【0025】
デバイス基体を、接着促進組成物と接触させた後、ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマーを含むコーティング組成物が、処理された表面上に配置される。このような組成物は、基体上に接着促進剤を配置するための上記方法のいずれかを使用して、基体上に配置されてもよい。典型的に、コーティング組成物は、1種以上のオリゴマー、1種以上の有機溶媒および、場合により、1種以上の更なる成分、例えば、硬化剤、コーティング促進剤等を含む。
【0026】
幅広い各種のポリアリーレンオリゴマーが、本発明に使用され得る。本明細書で使用する時、「ポリアリーレン」の用語は、ポリアリーレンエーテルを含む。適切なポリアリーレンオリゴマーは、式:
【化2】
のエチニル芳香族化合物等の前駆体から合成されることができ、式中、各Arは、芳香族基または、不活性置換された(inertly−substituted)芳香族基であり:各Rは、独立して、水素、アルキル、アリールまたは、不活性置換されたアルキルもしくはアリール基であり;Lは、共有結合または、1つのArを少なくとも1つの他のArに結合する基であり;nおよびmは、少なくとも2の整数であり;qは、少なくとも1の整数である。したがって、このエチニル芳香族化合物は、典型的には、4つ以上のエチニル基を有する(例えば、テトラエチニル芳香族化合物)。
【0027】
一時的結合性組成物に使用される適切なポリアリーレンオリゴマーは、
【化3】
を重合単位として含むポリマーを含んでもよく、式中、Ar’は、(C≡C)−ArまたはAr−(C≡C)部分の反応生成物の残基であり、R、L、nおよびmは、上記定義のとおりである。本発明に有用なポリアリーレンコポリマーは、重合単位として、式:
【化4】
を有するモノマーを含み、式中、Ar’およびRは、上記定義のとおりである。
【0028】
典型的なポリアリーレンとしては、制限されず、Ar−L−Arが、ビフェニル;2,2−ジフェニルプロパン;9,9’−ジフェニルフルオレン;2,2−ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;オキシジフェニレン;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;チオジフェニレン;1,1,1−トリフェニレンエタン;1,3,5−トリフェニレンベンゼン;1,3,5−(2−フェニレン−2−プロピル)ベンゼン;1,1,1−トリフェニレンメタン;1,1,2,2−テトラフェニレン−1,2−ジフェニルエタン;ビス(1,1−ジフェニレンエチル)ベンゼン;2,2’−ジフェニレン−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン;1,1−ジフェニレン−1−フェニルエタン;ナフタレン;アントラセン;またはビス(フェニレン)ナフタセン;より好ましくは、ビフェニレン;ナフチレン;p,p’−(2,2−ジフェニレンプロパン)(もしくは、−C−C(CH−C−);p,p’−(2,2−ジフェニレン−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)および(−C−C(CF−C−)であるものがあげられる。有用なビス−フェニル誘導体としては、2,2−ジフェニルプロパン;9,9’−ジフェニルフルオレン;2,2−ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;またはビス(フェニレン)ナフタセンがあげられる。
【0029】
ポリアリーレン前駆体モノマーは、当該分野において公知の各種の方法により、例えば、(a)ポリフェノール(好ましくは、ビスフェノール)を、好ましくは溶媒中で、選択的にハロゲン化、好ましくは臭化して、ここでは各フェノール環がフェノール性ヒドロキシル基に対する2つのオルト位の1つにおいて1つのハロゲンでハロゲン化され、(b)得られたポリ(オルト−ハロフェノール)上のフェノール性ヒドロキシルを、好ましくは溶媒中で、末端エチニル化合物と反応性でありかつ末端エチニル化合物により置換される脱離基、例えば、スルホネートエステル(例えば、ハロゲン化トリフルオロメタンスルホニルまたは無水トリフルオロメタンスルホン酸から調製されるトリフルオロメタンスルホネートエステル)に変換し、並びに(c)工程(b)の反応生成物を、エチニル含有化合物またはエチニルシントンと、アリールエチニル化触媒、好ましくはパラジウム触媒、および酸受容体の存在下で反応させて、ハロゲンおよびトリフルオロメチルスルホネートを、エチニル含有基(例えば、アセチレン、フェニルアセチレン、置換されたフェニルアセチレンまたは置換されたアセチレン)で同時に置換することにより調製され得る。この合成の更なる説明は、国際公開第97/10193号パンフレット(Babb)において提供される。
【0030】
式(I)のエチニル芳香族モノマーは、式(II)または(III)のいずれかのポリマーを調製するのに有用である。エチニル芳香族モノマーの重合は、当業者の能力内で十分である。重合の具体的な条件は、重合される特定のエチニル芳香族モノマーおよび得られたポリマーの所望の特性を含む各種の要因により決まるが、一般的には、重合の条件は、国際公開第97/10193号パンフレット(Babb)において詳述されている。
【0031】
本発明で使用するのに特に適切なポリアリーレンとしては、(マサチューセッツ州、マルボロのダウエレクトロニックマテリアルズから入手できる)SiLK(商標)半導体誘電体として市販されているものがあげられる。他の特に適切なポリアリーレンとしては、国際公開第00/31183、98/11149号、同第97/10193号、同第91/09081号、欧州特許出願公開第755957号、および、米国特許第5,115,082号;同第5,155,175号;同第5,179,188号;同第5,874,516号および同第6,093,636号に開示のものがあげられる。
【0032】
適切な環状オレフィン材料はポリ(環状オレフィン)であり、これは熱可塑性であることができ、好ましくは、2000から200,000ダルトン、より好ましくは、5000から100,000ダルトン、およびさらにより好ましくは、2000から50,000ダルトンの重量平均分子量(M)を有する。好ましいポリ(環状オレフィン)は、少なくとも100℃、より好ましくは、少なくとも140℃の軟化点(3000PaSでの溶融粘度)を有する。適切なポリ(環状オレフィン)は、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは60から200℃、および最も好ましくは、75から160℃のガラス転移温度(T)も有する。
【0033】
好ましいポリ(環状オレフィン)は、環状オレフィンと非環状オレフィンとのモノマーの繰り返し、または、環状オレフィンに基づく開環ポリマーを含んでなる。本発明に使用するのに適切な環状オレフィンは、ノルボルネンベースのオレフィン、テトラシクロデセンベースのオレフィン、ジシクロペンタジエンベースのオレフィンおよびそれらの誘導体から選択される。誘導体としては、アルキル(好ましくは、C−C20アルキル、より好ましくは、C−C10アルキル)、アルキリデン(好ましくは、C−C20アルキリデン、より好ましくは、C−C10アルキリデン)、アラルキル(好ましくは、C−C30アラルキル、より好ましくは、C−C18アラルキル)、シクロアルキル(好ましくは、C−C30シクロアルキル、より好ましくは、C−C18シクロアルキル)、エーテル、アセチル、芳香族、エステル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、アミド、イミドおよびシリルで置換された誘導体があげられる。本発明に使用するのに特に好ましい環状オレフィンとしては、
【化5】
から選択されるもの、および前述のものの組み合わせが挙げられ、式中、各RおよびRは、独立して、Hおよび、アルキル基(好ましくは、C−C20アルキル、より好ましくは、C−C10アルキル)から選択され、各Rは、独立して、H、置換および非置換のアリール基(好ましくは、C−C18アリール)、アルキル基(好ましくは、C−C20アルキル、より好ましくは、C−C10アルキル)、シクロアルキル基(好ましくは、C−C30シクロアルキル基、より好ましくは、C−C18シクロアルキル基)、アラルキル基(好ましくは、C−C30アラルキル、より好ましくは、C−C18アラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル等)、エステル基、エーテル基、アセチル基、アルコール(好ましくは、C−C10アルコール)、アルデヒド基、ケトン、ニトリルならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0034】
好ましい非環状オレフィンは、分岐および非分岐のC−C20アルケン(好ましくは、C−C10アルケン)から選択される。より好ましくは、非環状オレフィンは、化学構造(RC=C(Rを有し、各Rは、独立して、Hおよび、アルキル基(好ましくは、C−C20アルキル、より好ましくは、C−C10アルキル)から選択される。本発明に使用するのに特に好ましい非環状オレフィンとしては、エテン、プロペンおよびブテンから選択されるものがあげられ、エテンが最も好ましい。
【0035】
環状オレフィンコポリマーを製造する方法は、当該分野において公知である。例えば、環状オレフィンコポリマーは、環状モノマーと非環状モノマーとの連鎖重合により製造され得る。ノルボルネンが、このような条件下でエテンと反応する場合、ノルボルナンジイルおよびエチレン単位を交互に含むエテン−ノルボルネンコポリマーが得られる。この方法により製造されるコポリマーとしては、例えば、(Topas Advanced Polymersから入手できる)TOPAS(商標)および(Mitsui Chemicalasにより製造される)APEL(商標)の銘柄として市販されているものがあげられる。これらのコポリマーを製造するための適切な方法は、米国特許第6,008,298号に開示されている。シクロオレフィンコポリマーは、種々の環状モノマーの開環メタセシス重合と、その後に水素化することによっても製造され得る。この種の重合から生じるポリマーは、エテンと環状オレフィンモノマーとのコポリマー(例えば、エチレンとシクロペンタン−1,3−ジイルとの交互単位)として、概念上考えられ得る。この開環法により製造されるコポリマーとしては、例えば、(Zeon Chemicalsからの)ZEONOR(商標)および(JSR Corporationからの)ARTON(商標)の銘柄で提供されるものがあげられる。この開環法によるこれらのコポリマーを製造する適切な方法は、米国特許第5,191,026号に開示されている。
【0036】
アリールシクロブテンオリゴマーは、当該分野において周知である。適切なアリールシクロブテンオリゴマーとしては、制限されず、式:
【化6】
を有するものがあげられ、式中、Bは、n価の結合基であり;Arは、多価アリール基であり、シクロブテン環の炭素原子は、Arの同じ芳香環上の隣接する炭素原子に結合され;mは、1以上の整数であり;nは、1以上の整数であり;Rは、一価の基である。好ましくは、多価のアリール基であるArは、1から3つの芳香族炭素環または芳香族複素環から構成されてもよい。アリール基は、単一の芳香環を含むのが好ましく、より好ましくは、フェニル環を含む。アリール基は、場合により、(C−C)アルキル、トリ(C−C)アルキルシリル、(C−C)アルコキシおよびハロから選択される1から3つの基で、好ましくは、(C−C)アルキル、トリ(C−C)アルキルシリル、(C−C)アルコキシおよびクロロの1つ以上で、およびより好ましくは、(C−C)アルキル、トリ(C−C)アルキルシリルおよび(C−C)アルコキシの1つ以上で置換される。アリール基は、非置換であることが好ましい。n=1または2が好ましく、より好ましくは、n=1である。好ましくは、m=1〜4、より好ましくは、m=2〜4、さらにより好ましくは、m=2である。Rは、Hおよび(C−C)アルキルから、より好ましくは、Hおよび(C−C)アルキルから選択される。好ましくは、Bは、1つ以上の炭素−炭素二重結合(エチレン性不飽和)を含む。適切な一価のB基は、好ましくは、式−[C(R)=CRを有し、式中、RおよびRは、独立して、水素、(C−C)アルキルおよびアリールから選択され;Zは、水素、(C−C)アルキル、アリール、シロキサニル、−CO10から選択され;各R10は、独立して、H、(C−C)アルキル、アリール、アラルキルおよびアルカリールから選択され;x=1または2である。好ましくは、RおよびRは、独立して、H、(C−C)アルキルおよびアリール、より好ましくは、Hおよび(C−C)アルキルから選択される。R10は、(C−C)アルキル、アリールおよびアラルキルであることが好ましい。Zは、好ましくは、シロキシルである。好ましいシロキシル基は、式−[Si(R11−O]−Si(R11−を有し、式中、各R11は、独立して、H、(C−C)アルキル、アリール、アラルキルおよびアルカリールから選択され;pは、1以上の整数である。R11は、(C−C)アルキル、アリールおよびアラルキルから選択されるのが好ましい。適切なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチルおよびフェニルプロピルがあげられる。
【0037】
好ましくは、アリールシクロブテンオリゴマーは、式:
【化7】
の1つ以上のオリゴマーを含み、式中、各R12は、独立して、Hおよび(C−C)アルキルから選択され、好ましくは、Hおよび(C−C)アルキルから選択され;各R13は、独立して、(C−C)アルキル、トリ(C−C)アルキルシリル、(C−C)アルコキシおよびハロから選択され;各R14は、独立して、二価、エチレン性不飽和有機基であり;各R15は、独立して、H、(C−C)アルキル、アラルキルおよびフェニルから選択され;pは、1以上の整数であり、qは、0から3の整数である。各R12は、好ましくは独立して、Hおよび(C−C)アルキルから選択され、より好ましくは、各R12は、Hである。各R13は、独立して、(C−C)アルキル、トリ(C−C)アルキルシリル、(C−C)アルコキシおよびクロロから選択されるのが好ましく、およびより好ましくは、(C−C)アルキル、トリ(C−C)アルキルシリルおよび(C−C)アルコキシから選択される。好ましくは、各R14は、独立して、(C−C)アルケニルから選択され、より好ましくは、各R14は、−CH=CH−である。各R15は、好ましくは、(C−C)アルキルから選択され、より好ましくは、各R15は、メチルである。好ましくは、p=1〜5、より好ましくは、p=1〜3、さらにより好ましくは、p=1である。q=0が好ましい。特に好ましいアリールシクロブテンオリゴマーである、1,3−ビス(2−ビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−3−イルエテニル)−1,1,3,3テトラメチルジシロキサン(「DVS−ビスBCB」)は、式:
【化8】
を有する。
【0038】
アリールシクロブテンオリゴマーは、任意の適切な手段、例えば、米国特許第4,812,588号;同第5,136,069号;同第5,138,081号および国際公開第94/25903号に記載のものにより調製され得る。適切なアリールシクロブテンオリゴマーは、ダウエレクトロニックマテリアルズから入手できる、CYCLOTENE(商標)銘柄で市販品も利用できる。アリールシクロブテンオリゴマーは、任意の適切な手段によりさらに精製され、またはさらに精製され得るように、使用されてもよい。
【0039】
ビニル芳香族オリゴマーは、当該分野において周知である。このようなビニル芳香族オリゴマーとしては、ビニル芳香族モノマーのみのオリゴマー、ビニル芳香族モノマーと1つ以上の反応性エチレン性不飽和コモノマーとのオリゴマーがあげられる。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、1つのビニル基を含む。適切なビニル芳香族モノマーは、非置換のビニル芳香族モノマーおよび、1つ以上の水素が、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、ハロおよびアミノの基から選択される置換基で置き換えられた置換ビニル芳香族モノマーである。典型的なビニル芳香族モノマーとしては、制限されず、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、ビニルジメトキシベンゼン、ビニルアニリン、ハロスチレン、例えば、フルオロスチレン、α−メチルスチレン、β−メトキシスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロールおよびそれらの混合物があげられる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、エチルビニルベンゼンおよびそれらの混合物である。好ましい反応性コモノマーは、反応性部分、すなわち、ビニル芳香族オリゴマーの形成後に更なる重合(または架橋)が可能な部分、例えば、アリル部分またはビニル基を含み、さらに、ビニル芳香族オリゴマーに使用されるオレフィン性(または、エチレン性不飽和)部分を含むものである。より好ましくは、反応性コモノマーは、アリル部分、さらに、ビニル芳香族オリゴマーの形成に使用されるエチレン性不飽和を含み、さらにより好ましくは、アリルエステル部分、さらに、エチレン性不飽和を含む。ビニル芳香族オリゴマーを形成するのに有用な典型的な反応性コモノマーとしては、制限されず、ビニルシクロヘキセン、ビニルエーテル、非対称ジエンまたはトリエン、例えば、テルペンモノマー(例えば、リモネンまたはミルセン)、マレイン酸ジアリル、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、桂皮酸アリル、フマル酸ジアリル、チグリン酸アリル、ジビニルベンゼンおよびそれらの混合物があげられる。好ましい反応性コモノマーは、マレイン酸ジアリル、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、桂皮酸アリル、フマル酸アリルおよびそれらの混合物であり、より好ましくは、マレイン酸ジアリル、アリルメタクリレートおよびそれらの混合物である。1つ以上の第2のコモノマーが、ビニル芳香族オリゴマーの形成に使用されてもよいことが、当業者に理解されるであろう。このような第2のコモノマーは、エチレン性不飽和であるが、反応性部分を含まない。典型的な第2のコモノマーとしては、制限されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(C−C10)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、置換されたエチレンモノマーおよびポリ(アルキレンオキシド)モノマーがあげられる。
【0040】
このようなビニル芳香族オリゴマーにおいて、ビニル芳香族モノマー:コモノマーのモル比は、好ましくは、99:1から1:99、より好ましくは、95:5から5:95、およびさらにより好ましくは、90:10から10:90である。このようなビニル芳香族オリゴマーは、任意の適切な方法、例えば、当該分野において公知のもののいずれかにより調製され得る。典型的に、ビニル芳香族オリゴマーは、ビニル芳香族モノマーとコモノマーとのフリーラジカル重合により調製される。好ましいビニル芳香族オリゴマーは、このようなオリゴマーをさらに硬化させる、非反応性アリル部分を含む。
【0041】
コーティング組成物は、上記の1種以上のオリゴマーと、1種以上の有機溶媒および1種以上の任意成分とを一緒にすることにより調製される。オリゴマーは、アリールシクロブテンオリゴマーであることが好ましい。適切な有機溶媒としては、接着促進組成物で使用する上記のものがあげられる。コーティング組成物中の典型的な任意成分としては、1種以上の硬化剤、1種以上の酸化防止剤等があげられる。硬化剤は、オリゴマーの硬化を助けることができ、加熱または光により活性化され得る。適切な硬化剤としては、熱的に生成される開始剤および光開始剤があげられる。このような硬化剤の選択は、当業者の能力内で十分である。コーティング組成物中のオリゴマー、溶媒および任意成分の量は、幅広い範囲にわたって変化してもよく、当業者の能力内である。コーティング組成物中の固形分が、接着促進剤で処理された表面上でのコーティング組成物の所望の厚みを達成するために、スピン速度と共に調節され得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0042】
コーティング組成物は、接着促進されたデバイス基体表面上に、任意の適切な方法、例えば、デバイス基体上に接着促進剤を配置するための上記のものにより、配置(またはコート)されてもよい。このようなコーティング組成物を堆積させる方法は、当該分野において周知である。接着促進された表面上に配置された後に、コーティング組成物は、典型的には、選択されたオリゴマーについての適切な方法を使用して硬化される。このような硬化方法は、当該分野において周知である。例えば、アリールシクロブテンオリゴマーは、加熱により硬化されてもよいし、または、感光性のアリールシクロブテンオリゴマーの場合は、適切な波長の化学線(光)に露光されることにより硬化されてもよい。
【0043】
本発明によって、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、ポリアリーレンオリゴマー、ポリ(環状オレフィン)オリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマー、ならびに有機溶媒を含み、組成物が1モル%以下の加水分解のアルコールを含む、セルフプライミング(self−priming)コーティング組成物も提供される。これらのセルフプライミングコーティング組成物は、場合により、1つ以上の更なる成分、例えば、酸化防止剤、光架橋剤およびコーティング促進剤を含んでもよい。このような任意の成分は、当業者に周知である。上記ポリ(アルコキシシラン)のいずれかが、この組成物に使用され得る。コーティング組成物についての上記オリゴマーのいずれかが、このセルフプライミングコーティング組成物に使用されてもよく、および好ましくは、オリゴマーは、アリールシクロブテンオリゴマーである。適切な有機溶媒は、接着促進組成物に使用する上記のものである。本明細書で使用する時、「セルフプライミングコーティング組成物」の用語は、接着を促進する1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、およびコーティングオリゴマーの両方を含み、好ましくは、有機溶媒も含む組成物を意味する。これらのセルフプライミングコーティング組成物の利点は、接着促進剤を適用する別の工程を避けることができることである。または、これらのセルフプライミングコーティング組成物は、その上につぎのコーティング層が堆積される第1のコーティング層を形成するのに使用されてもよい。特定の用途では、セルフプライミングコーティング組成物の使用は、別々の接着促進組成物の使用よりも好ましい。このようなセルフプライミング組成物は、誘電性コーティング、感光性コーティング、一時的接着剤、持続的接着剤等を形成するのに、適切に使用され得る。
【0044】
セルフプライミングコーティング組成物中に使用される、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、コーティングオリゴマーおよび溶媒の量は、具体的な最終用途および望まれる特性を含む多くの要因により決まる。セルフプライミングコーティング組成物が、それにその後適用される、1つ以上のコーティングオリゴマー層を有することを意図する場合、このセルフプライミングコーティング組成物は、典型的には、その後のコーティングオリゴマー層が使用されない場合より少ない量のコーティングオリゴマーを含むであろう。一般的に、その目的の最終用途に関係なく、セルフプライミングコーティング組成物は、0.01から10wt%の、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、10から99.98wt%の溶媒、および、0.01から90wt%のコーティングオリゴマーを含み、この重量パーセントは、組成物の合計重量に基づいている。好ましくは、セルフプライミングコーティング組成物は、0.01から5wt%、より好ましくは0.01から3wt%、さらにより好ましくは0.01から2wt%の、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)を含む。その後のコーティングオリゴマー組成物が、セルフプライミング組成物上に配置されるであろう場合は、セルフプライミングコーティング組成物中のコーティングオリゴマーは、好ましくは0.01、より好ましくは1、およびさらにより好ましくは2wt%から、好ましくは20、より好ましくは10、およびさらにより好ましくは5wt%までの量で存在する。その後のコーティングオリゴマー組成物が、セルフプライミング組成物上に配置されないであろう場合は、コーティングオリゴマーは、好ましくは5、より好ましくは10、およびさらにより好ましくは20wt%から、好ましくは90、より好ましくは80、およびさらにより好ましくは65wt%までの量で、組成物中に存在する。溶媒の好ましい量は、10から98wt%、より好ましくは20から90wt%であり、さらにより好ましくは20から75wt%で変化する。一実施形態では、組成物は、組成物の合計重量に基づいて、0.01から10wt%の、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、40から99.5wt%の溶媒;1から80wt%のコーティングオリゴマーを含み、この組成物は1モル%以下の加水分解のアルコールを含む。もう1つの実施形態では、組成物は、組成物の合計重量に基づいて、0.01から10wt%の、1モル%以下の水で加水分解されたポリ(アルコキシシラン)、10から99.9重量パーセントの溶媒、および、0.01から90重量パーセントのコーティングオリゴマーを含み、この組成物は1モル%以下の加水分解のアルコールを含む。
【0045】
セルフプライミングコーティング組成物は、接着促進組成物について上記の方法のいずれかを使用して、塗膜を形成するために、デバイス基体上に配置されてもよい。スピンコーティングが、好ましい方法である。デバイス基体上への配置後に、塗膜は、典型的には、例えば、加熱もしくは化学線(光)への露光またはそれらの組み合わせにより、硬化される。感光性アリールシクロブテンは、典型的には、更なる硬化の前に、光架橋される。使用される具体的な硬化条件は、選択された具体的なオリゴマー、具体的な用途、例えば、塗膜が誘電性であるか、または接着剤であるか、および、当業者に公知の他のパラメータに応じて決まる。
【0046】
動的光散乱は、懸濁液中の小さな粒子のサイズ分散特性を測定するための技術であり、アルコキシシランの加水分解の度合いをモニターするのに簡易な方法として使用され得る。従来のアルコキシシラン接着促進剤の加水分解、特に制御されていない加水分解は、動的光散乱により測定された場合、組成物中に、2nmより非常に大きい平均粒径を有する成分の形成を引き起こす。典型的に、このような成分は、10nm超の平均粒径を有する。本発明におけるポリ(アルコキシシラン)の低いレベルの加水分解では、従来の動的光散乱技術により測定された場合、10nmより非常に小さい、典型的には、2nm以下、および好ましくは1nm以下の平均粒径を有する成分がもたらされる。好ましくは、1モル%以下の水で加水分解された本発明のポリ(アルコキシシラン)は、2nm以下、およびより好ましくは1nm以下の平均粒径を有する。本発明の組成物は、単峰型粒径分布を有するのも好ましい。1nm超の平均粒径分布を有する加水分解されたアルコキシシランは、多くの用途、例えば、画像形成可能な誘電体で使用される場合について、適切な接着性を提供しない。
【実施例】
【0047】
実施例1:
ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(0.41g)または[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]−トリメトキシシラン(0.21g)、および、400ppmの水を含む、99.38gの4−メチル−2−ペンタノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーで攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0048】
比較例1:
ビニルトリメトキシシラン(0.3g)および、800ppmの水を含む99.7gの1−メトキシ−2−プロパノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0049】
比較例2:
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(0.1g)および、800ppmの水を含む99.9gの1−メトキシ−2−プロパノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、磁気的に攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0050】
比較例3:
[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(0.6g)および、800ppmの水を含む99.4gの1−メトキシ−2−プロパノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0051】
実施例2:
ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(0.6g)および、400ppmの水を含む99.4gの4−メチル−2−ペンタノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0052】
実施例3:
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン(0.5g)および、400ppmの水を含む99.5%の4−メチル−2−ペンタノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0053】
実施例4:
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン(0.5g)および、800ppmの水を含む99.5%の1−メトキシ−2−プロパノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0054】
実施例5:
ベンゾシクロブテンビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アクリルアミド(0.5g)および、500ppmの水を含む99.5gの1−メトキシ−2−プロパノールを、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)において、マグネチックスターラーを使用して攪拌した。加水分解は、単一相溶液が15分で生成されるように進行した。
【0055】
実施例6:
,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エタン−1,2−ジアミン(0.5g)を、350ppmの水を含む2−メチル−1−ブタノールと、200mLのボトル内で一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)で攪拌した。
【0056】
実施例7:
200mLのボトル内で、250ppmの水を含む4メチル−2−ペンタノールと、3−(トリメトキシシリル)−N−(2−(トリメトキシシリル)エチル)−N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン−1−アミンとを一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)で攪拌した。
【0057】
実施例8:
200mLのボトル内で、400ppmの水を含む4メチル−2−ペンタノールと、ビス(3,3,9,9−テトラメトキシ−2,10−ジオキサ−3,9−ジシラウンデカン−6−イル)アミンとを一緒にした。この混合物を、加水分解を達成するために、気温(23℃)で攪拌した。
【0058】
実施例9:
実施例1〜5および比較例1〜3からの接着促進組成物を、リソグラフィ印刷接着試験を使用して評価した。各接着促進組成物を、Site Trac TT5−XPコーターを使用して、2000rpmのスピン速度で、40秒間、200mmのテストウエハ上にコートし、その後、90℃で90秒間ベークして、溶媒除去を確実にした。PROGLYDE(商標)DMM、PGMEAおよびアニソールの混合物中における、おおよそ5000の分子量を有する、DVS−ビスBCBとベンゾシクロブテンアクリル酸とのコポリマーである、水系現像可能なベンゾシクロブテンオリゴマー40%を含み、並びに三官能性ジアゾナフトキノン光活性化合物(CYCLOTENE(商標)P6505、ミシガン州ミッドランドのザダウケミカルカンパニーから入手可能)を含むオリゴマー組成物を、接着促進剤層の上面に、Site Trace TT6−XPコーターを使用して、1500rpm付近のスピン速度で、おおよそ6.5μmの膜厚みを目標にコートした。このオリゴマー組成物を次に90℃で90秒間ベークして、溶媒除去を確実にした。つぎに、各オリゴマーコートされたウエハを、ASML200−i線ステッパーにおいて、ウエハ上に種々のサイズのポスト(1から25μm)の列をプリントするための明視野レチクルを使用して露光した。露光後、15分の後露光保持を、膜内に水分を逆拡散させるのに使用した。つぎに、オリゴマー樹脂の露光領域を、Site Trac TTP−X5ツールにおいて、CD−26現像溶液を使用して、60秒のシングルパドルを使用して現像し、その後90秒の第2の脱イオン水で洗浄した。ウエハ上に残ったポストパターンを、光学顕微鏡下で評価した。サンプルは、現像後に残ったポストの最小フィーチャサイズが5μm以下であった場合、リソグラフィ接着試験を合格したと見なされる。データを、以下の表1に報告する。
【0059】
実施例10:
動的光散乱測定を、Malvern Zetasizer Nano ZS機器を使用して行った。接着促進剤溶液のサンプル(1.5mL)を、石英キュベットに移し、ついで、このキュベットを、Zetasizer機器のサンプルホルダに挿入した。機器のソフトウェアを、サイズ測定用に設定した。各サンプルについての正確な粒径分布を得るためには、通常、15から24回のスキャンが必要である。実施例1〜5および比較例1〜3について測定された平均粒径を、以下の表1に報告する。本発明の各接着促進剤は、1nm未満の平均粒径を有する単一のピークのみ(単峰型分布)を有した。各比較例は、1nm超の平均粒径を有する、少なくとも1つのピークを有した。比較例1は、10nm超の平均粒径を有する1つの分布を有する、2つのピーク(二峰性分布)を有した。比較例におけるこのような大きな平均粒径は、本発明のポリ(アルコキシシラン)と比較して、大量のシラン加水分解のために、より大きなナノ粒子が形成されたことを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例11:
実施例1〜5および比較例1〜3からの接着促進組成物を、クロスハッチ/テープ剥離試験(ASTM D 3359)に基づいて、GardcoからのPA−2000キットを使用して評価した。クロスハッチを適用し、テープ剥離の前に、過剰の残骸を、連続的な流れの圧縮乾燥空気を使用して除去した。テープ剥離後、接着を評価し、実施例1〜5および比較例1〜3からの各接着促進組成物は、0%除去で合格したことが見出された。
【0062】
実施例12:
一時的結合性コーティング組成物を、83.63gの68.5% DVS−ビスBCBオリゴマー(平均分子量25,000〜30,000)を、Proglyde(商標)DMM溶媒に混合し、8.78gの、分子量2900のポリ(テトラメチレングリコール)(BASFからのPolyTHF2900として入手)、4.17gのBAC−45(分子量3000のジアクリレート末端化ブタジエンゴム)、0.68gの過酸化ジクミル、0.49gの市販の酸化防止剤および2.25gのProglyde(商標)DMM溶媒を添加することにより調製した。この組成物を、木製のスティックを使用して手作業で混合し、おおよそ1時間、50℃に加熱し、ついで、均質になるまでロールした。
【0063】
200mmのシリコンウエハを、酸素プラズマエッチングに10秒間供した。つぎに、2mLの実施例4からの接着促進剤を、キャリアウエハの接触面にスピンコートし(2000rpm、30秒)、その後120℃で90秒間ソフトベークし、その後冷却した。一時的結合性コーティング組成物を、デバイスウエハ上にスピンコートし(2000rpm)、120℃で90秒間ソフトベークし、30秒間冷却し、そして、160℃で120秒間ソフトベークして、デバイスウエハ上に一時的結合性組成物の層を形成した。ついで、キャリアウエハを一時的結合性コーティング組成物に、真空を45秒間適用し、圧力を60秒間適用して、80℃で60秒間、真空積層した。ついで、積層されたウエハを、デバイス側を下にして、210℃で120秒間、窒素雰囲気下において、ホットプレート上で加熱することで硬化させた。硬化した一時的結合性層の厚さは、おおよそ25μmであった。硬化後、これらウエハを、カミソリ刃をノッチ付近に挿入し、ウエハに沿ってガイドさせてうまく剥離し、デバイスウエハを、一時的結合性組成物から分離させた。残った一時的結合性組成物は、キャリアウエハの接着促進された接触表面に接着していた。
【0064】
実施例13:
一時的結合性コーティング組成物が、41.82gの90/10 スチレン:マレイン酸ジアリルオリゴマーを含むこと以外は、実施例12の手順を繰り返した。このコーティング組成物は、DVS−ビスBCBオリゴマーと、スチレン:マレイン酸ジアリルオリゴマーとを、1:1の重量比で含んでいた。この組成物からの硬化した一時的結合性層の厚みは、おおよそ26μmであった。硬化後、ウエハを、カミソリ刃をノッチ付近に挿入し、ウエハに沿ってガイドさせて、うまく剥離し、デバイスウエハを、一時的結合性組成物から分離させた。残った一時的結合性組成物は、キャリアウエハの接着促進された接触表面に接着していた。
【0065】
実施例14:
DVS−ビスBCBオリゴマーを、Proglyde(商標)DMM溶媒における83.63gの、90/10 スチレン:マレイン酸ジアリルオリゴマー(68.5%固形物)に置き替えたこと以外は、実施例12の手順を繰り返した。このコーティング組成物は、DVS−ビスBCBオリゴマーを含まない。この組成物からの硬化した一時的結合性層の厚みは、おおよそ36μmであった。硬化後、ウエハを、カミソリ刃をノッチ付近に挿入し、ウエハに沿ってガイドさせて、うまく剥離し、デバイスウエハを、一時的結合性組成物から分離させた。残った一時的結合性組成物は、キャリアウエハの接着促進された接触表面に接着していた。