(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪重合体組成物≫
本発明の重合体組成物は、結晶性オレフィン系重合体(A)と、特定のエチレン・α−オレフィン(炭素数4〜20)・非共役ポリエン共重合体(B)とを含む。
このような重合体(A)と共重合体(B)とを含む組成物を用いることで初めて、常温での高い引き裂き強度および優れた低温シール性をバランスよく満足する成形体を得ることができる。
【0015】
<結晶性オレフィン系重合体(A)>
前記結晶性オレフィン系重合体(A)は、特に制限されないが、1種または2種以上のモノオレフィンを、高圧法または低圧法の何れかにより重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物からなる重合体であることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、アイソタクチックおよびシンジオタクチックのモノオレフィン重合体が挙げられる。
前記結晶性オレフィン系重合体(A)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
前記重合体(A)は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記重合体(A)を従来公知の方法で合成する場合、適当な原料オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、単独で、または2種以上混合して用いられる。
【0017】
重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。
【0018】
前記重合体(A)は、MFR(ASTM D1238−65T、230℃)が、通常0.01〜100g/10分、特に0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0019】
前記重合体(A)は、前記重合体組成物の流動性および耐熱性を向上させる役割を果たす。重合体(A)は、重合体(A)および共重合体(B)の合計量100重量%に対して、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは30〜50重量%、特に好ましくは35〜45重量%の割合で用いられる。
このような割合で重合体(A)を用いると、ゴム弾性に優れるとともに、成形加工性に優れる重合体組成物および熱可塑性エラストマー組成物が得られるため好ましい。
【0020】
<エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(B)>
前記エチレン・α−オレフィン(炭素数4〜20)・非共役ポリエン共重合体(B)は、エチレンと共に少なくとも1種類以上の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、および少なくとも一種以上の非共役ポリエンに由来する構造単位を含む共重合体であり、下記要件(1)満たせば特に制限されない。
前記共重合体(B)は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
前記要件(1)は、以下のとおりである。
(1)共重合体(B)の、エチレンに由来する構造単位とα−オレフィン(炭素数4〜20)に由来する構造単位とのモル比が50/50〜69/31であり、好ましくは50/50〜65/35であり、より好ましくは55/45〜65/35である。
このような要件(1)を満たす共重合体(B)を含む重合体組成物を用いることで、常温での高い引き裂き強度および優れた低温シール性をバランスよく満足する成形体を得ることができる。
【0022】
また、前記要件(1)を満たすことを条件として、前記共重合体(B)は、エチレンに由来する構造単位、α−オレフィンに由来する構造単位および非共役ポリエンに由来する構造単位の合計100モル%に対し、非共役ポリエンに由来する構造単位を、好ましくは0.5〜5.0モル%、より好ましくは0.5〜4.5モル%含むことが望ましい。
このような共重合体(B)を用いると、常温での高い引き裂き強度および優れた低温シール性をバランスよく満足する成形体を得ることができる。
【0023】
前記共重合体(B)は、さらに以下の要件(2)または(3)を満たすことが好ましい。
(2)共重合体(B)のムーニー粘度ML
1+4(125℃)が10〜200である
(3)共重合体(B)の極限粘度(デカリン中135℃)が0.1〜10dl/gである
【0024】
前記共重合体(B)のムーニー粘度ML
1+4(125℃)は、好ましくは10〜200であり、より好ましくは30〜200であり、特に好ましくは40〜200である。この範囲にあると、優れた引張強度、破断伸度および圧縮永久歪を示す成形体が得られる。
ムーニー粘度は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
前記共重合体(B)の極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される極限粘度であり、好ましくは0.1〜10dl/g、より好ましくは1.5〜7dl/gである。この範囲にあると、優れた引張強度および圧縮永久歪を示す成形体が得られる。
極限粘度は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0026】
前記共重合体(B)の非共役ポリエン成分量の一指標であるヨウ素価は、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜30である。この範囲にあると、優れた圧縮永久歪みを示す成形体が得られる。
ヨウ素価は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0027】
前記共重合体(B)は、重合体(A)および共重合体(B)の合計量100重量%に対して、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは40〜90重量%、さらに好ましくは50〜70重量%、特に好ましくは55〜65重量%の割合で用いられる。
このような割合で共重合体(B)を用いると、ゴム弾性に優れるとともに、成形加工に優れる重合体組成物および熱可塑性エラストマー組成物が得られるため好ましい。
【0028】
前記素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンが挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましく、特に1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましく、特に1−ブテンが好適である。
【0029】
前記非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。
【0030】
これらの非共役ポリエンは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1,4−ヘキサジエンなどの鎖状非共役ジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、または5−エチリデン−2−ノルボルネンと5−ビニル−2−ノルボルネンとの併用が好ましく、中でも5−エチリデン−2−ノルボルネン、または5−エチリデン−2−ノルボルネンと5−ビニル−2−ノルボルネンとの併用が特に好ましい。
【0031】
このように前記共重合体(B)としては、具体的には、以下の重合体を挙げることができる。
エチレン・1−ブテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ペンテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−へプテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−オクテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ノネン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−デセン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ブテン・1−オクテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、
エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ペンテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−へプテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ノネン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−デセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ブテン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ペンテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ヘキセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−へプテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ノネン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−デセン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、
エチレン・1−ブテン・1−オクテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体
【0032】
次に、前記共重合体(B)の製造に好適に使用されるメタロセン触媒およびそれを用いた重合の条件について説明する。
【0033】
(メタロセン触媒)
・触媒例1
前記メタロセン触媒としては、下記式[I]または[II]で表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0036】
式[I]および[II]において、Yは独立に、ケイ素原子もしくは炭素原子である。
【0037】
式[I]および[II]においてR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基の一部がハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子または硫黄原子で置換された基またはケイ素原子含有基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R
1からR
14までの置換基のうち、隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0038】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0039】
前記炭素数が1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール(aryl)基および置換アリール(aryl)基などが挙げられる。
【0040】
より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンジル基およびクミル基が挙げられる。
【0041】
前記炭素数1〜20の炭化水素基の一部がハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、ホウ素原子または硫黄原子で置換された基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基およびフェノキシ基などの酸素原子含有基、ニトロ基、シアノ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基およびN−フェニルアミノ基などの窒素原子含有基、ボラントリイル基およびジボラニル基などのホウ素原子含有基、スルホニル基およびスルフェニル基などの硫黄原子含有基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基およびクロロフェニル基などのハロゲン原子含有基を含む基が挙げられる。
【0042】
前記ケイ素原子含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素基置換シリル基および炭化水素基置換シロキシ基などが挙げられる。より具体的には、例えば、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基およびジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などを挙げることができる。
【0043】
前記式[I]および[II]におけるR
1からR
4を有するシクロペンタジエニル基としては、R
1からR
4が水素原子である無置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3−メチルシクロペンタジエニル基、3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、3−フェニルシクロペンタジエニル基、3−アダマンチルシクロペンタジエニル基、3−アミルシクロペンタジエニル基および3−シクロヘキシルシクロペンタジエニル基などの3位1置換シクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3−t−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル基、3−フェニル−5−メチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル基、3,5−ジメチルシクロペンタジエニル基および3−トリメチルシリル−5−メチルシクロペンタジエニル基などの3,5位2置換シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、この限りではない。
遷移金属化合物の合成のし易さ、製造コストおよび非共役ポリエンの共重合能の観点から、無置換(R
1からR
4が水素原子)であるシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0044】
前記式[I]および[II]におけるR
5からR
12を有するフルオレニル基としては、R
5からR
12が水素原子である無置換フルオレニル基、2−メチルフルオレニル基、2−t−ブチルフルオレニル基および2−フェニルフルオレニル基などの2位1置換フルオレニル基、4−メチルフルオレニル基、4−t−ブチルフルオレニル基および4−フェニルフルオレニル基などの4位1置換フルオレニル基、2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル基および3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,7位もしくは3,6位2置換フルオレニル基、2,7−ジメチル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基および2,7−ジフェニル−3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル基などの2,3,6,7位4置換フルオレニル基、および、下記式[V−I]および[V−II]で表されるような、R
6とR
7とが互いに結合して環を形成し、R
10とR
11とが互いに結合して環を形成している2,3,6,7位4置換フルオレニル基などが挙げられるが、この限りではない。
【0047】
式[V−I]および[V−II]中、R
5、R
8、R
9およびR
12は前記式[I]および[II]における定義と同様であり、
R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、R
gおよびR
hは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、隣接した置換基と互いに結合して環を形成していてもよい。
【0048】
前記アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基およびn−ペンチル基を例示できる。
【0049】
また、式[V−I]中、R
xおよびR
yはそれぞれ独立に、不飽和結合を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
xがR
aまたはR
cが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよく、R
yがR
eまたはR
gが結合した炭素と共同して二重結合を形成していてもよい。R
xおよびR
yは、ともに炭素数1または2の飽和あるいは不飽和の炭化水素基であることが好ましい。
【0050】
式[V−I]または[V−II]で表される基として、具体的には、下記式[V−III]で表されるオクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−IV]で表されるテトラメチルドデカヒドロジベンゾフルオレニル基、下記式[V−V]で表されるオクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基、下記式[V−VI]で表されるヘキサメチルジヒドロジシクロペンタフルオレニル基、および下記式[V−VII]で表されるb,h−ジベンゾフルオレニル基などが挙げられる。
【0056】
これらのフルオレニル基を含む前記式[I]または[II]で表される遷移金属化合物は、いずれも非共役ポリエンの共重合能に優れるが、Yがケイ素原子である場合、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、前記式[V−I]で表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が非共役ポリエンの共重合能に特に優れる。Yが炭素原子である場合、R
5からR
12が水素原子である無置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、前記式[V−I]で表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する遷移金属化合物が、特に非共役ポリエンの共重合能に優れる。
【0057】
重合活性については、Yがケイ素原子および炭素原子であるいずれの場合も、2,7位2置換フルオレニル基、3,6位2置換フルオレニル基、2,3,6,7位4置換フルオレニル基、前記式[V−I]で表される2,3,6,7位4置換フルオレニル基を有する前記式[I]および[II]で表される遷移金属化合物が特に優れる。
【0058】
前記式[I]においてR
13およびR
14は相互に同一でも異なってもよい。前述の通りR
13、R
14は炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基の一部がハロゲン原子で置換された基になり得るが、これらの基の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニル基、2−ナフチル基、キシリル基、ベンジル基およびm−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
【0059】
前記式[II]で表される遷移金属化合物において、Aは芳香環を含んでいてもよい炭素数2〜20の二価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、YはこのAと結合し、例えば、下記式[VI−I]で表されるシクロヘキシリデン基などのシクロアルキリデン基、下記式[VI−II]で表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)などのシクロメチレンシリレン基などを構成する。
【0060】
【化10】
(式[VI−I]および[VI−II]において、●は、前記式[II]における(置換)シクロペンタジエニル基および(置換)フルオレニル基との結合点を表す。)
【0061】
式[II]において、AはYとともに形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0062】
YがAと結合して形成する環構造としては、前記式[VI−I]で表されるシクロヘキシリデン基以外に具体的には、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基、テトラヒドロナフチリデン基およびジヒドロインダニリデン基などを挙げることができる。
【0063】
同様に、YがAと結合して形成する環構造としては、前記式[VI−II]で表されるシクロテトラメチレンシリレン基(1−シラシクロペンチリデン基)以外に具体的には、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、シクロヘキサメチレンシリレン基およびシクロヘプタメチレンシリレン基などを挙げることができる。
【0064】
前記式[I]および[II]においてMは、チタニウム原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはチタニウム原子またはハフニウム原子である。
【0065】
式[I]および[II]においてQは、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数20以下の共役または非共役の中性ジエン、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。
【0066】
前記ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0067】
前記炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基およびベンジル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基およびベンジル基である。
【0068】
前記炭素数20以下の共役または非共役の中性ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、およびs−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0069】
前記アニオン配位子の具体例としては、メトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、アセテート基およびベンゾエート基等のカルボキシレート基、ならびにメシレート基およびトシレート基等のスルホネート基が挙げられる。
【0070】
前記孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、ならびにテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンおよび1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
【0071】
式[I]および[II]において、jは1〜4の整数であり、jが2以上の場合は、Qは互いに同一でも異なってもよい。
以上説明した遷移金属化合物の例は、特開平2011−1497号公報に挙げられている。
【0072】
前記遷移金属化合物は公知の方法によって製造可能であり、特にその製造方法が限定されるわけではない。製造方法として例えば、J.Organomet.Chem.,63,509(1996)、国際公開第06/123759号、国際公開第01/27124号、特開2004−168744号公報、特開2004−175759号公報および特開2000−212194号公報に記載の方法が挙げられる。
【0073】
・触媒例2
また、前記共重合体(B)の製造に好適に使用可能なメタロセン触媒として、下記式(X)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0075】
式(X)中、R'およびR''はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、Mはチタン原子であり、Yは−NR
*−であり、Z
*は−SiR
*2−であり、前記R
*はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、pおよびqのうち一方は0であり、他方は1であり、
pが0かつqが1である場合には、Mは+2の酸化状態であり、X'は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンであり、
pが1かつqが0である場合には、Mは+3の酸化状態であり、Xは2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルである。
【0076】
前記式(X)で表わされる構造を有する化合物としては、得られる共重合体(B)の超低分子量成分によるフォギングおよびベタが抑制されるといった観点から、(t−ブチルアミド)ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン(下記式(XI)で表される構造を有する化合物)が特に好ましい。なお、下記式(XI)で表わされる構造を有する化合物は、例えば特表2001−522398号公報に記載された方法で得ることができる。
【0078】
前記式(X)で表わされる構造を有する化合物は、非共役ポリエンの重合性に優れている。また、このようなメタロセン触媒を用いて合成される共重合体(B)は、分子量分布および組成分布が狭く、均一な分子構造を有する共重合体である。このため、得られる成形体は、表面外観に優れる傾向がある。
【0079】
(共触媒)
前記共重合体(B)は、例えば、以上挙げたメタロセン触媒を主触媒とし、ホウ素系化合物および/またはトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を共触媒として用いて合成することができる。
【0080】
前記ホウ素系化合物としては、例えば、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(s−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレートおよびN,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;
ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、およびジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩;
ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたオキソニウム塩;
ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの二置換されたスルホニウム塩が挙げられる。
【0081】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリn−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4、有機アルミニウムオキシ化合物などが挙げられる。
【0082】
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0083】
<重合条件>
前記共重合体(B)を合成する際の反応温度は、通常−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃である。重合圧力は通常0MPaを超えて8MPa(ゲージ圧)以下、好ましくは0MPaを超えて5MPa(ゲージ圧)以下の範囲である。
【0084】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合は平均滞留時間)は、触媒濃度および重合温度などの条件によって異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。
【0085】
前記メタロセン触媒を用いて原料モノマーの重合を行うに際して、前記式[I]、[II]および[X]で表される遷移金属化合物は、反応容積1リットル当り、通常10
-12〜10
-2モル、好ましくは10
-10〜10
-8モルになるような量で用いられる。
【0086】
前記メタロセン触媒と共に用いられる前記共触媒は、共触媒と、メタロセン触媒中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔共触媒/M〕が、通常0.1/1〜100/1、好ましくは1/1〜50/1となるような量で用いられる。
【0087】
前記共重合体(B)の製造は、溶液(溶解)重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能であり、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0088】
重合反応液を得る工程とは、重合溶媒を用いて、前述のメタロセン触媒および共触媒の存在下に、エチレン、α−オレフィン、非共役ポリエンおよび必要に応じて任意にその他のモノマーを共重合し、共重合体(B)の重合反応液を得る工程である。
【0089】
前記重合溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロルベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合に供するα−オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。
以上説明した重合溶媒のうち、得られる共重合体(B)を分離、精製する観点から、ヘキサンが好ましい。
【0090】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0091】
重合反応を行った後は、反応系内にメタノールなどの酸性アルコールを添加することによって、重合反応を終了させることができる。
【0092】
重合反応により得られる共重合体(B)の分子量は、重合系内に水素などの分子量調節剤を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。具体的には、重合系内に水素を多く存在させることにより、得られる共重合体(B)の分子量を小さくすることができ、その結果、例えば、極限粘度が前記範囲にある共重合体(B)を得ることができる。さらに、重合温度をあまり高くせず、穏やかな条件下で重合を行うことによって、得られる共重合体(B)の分子量を小さく抑え、結果、極限粘度が前記範囲にある共重合体を得ることができる。
さらに、使用する共触媒の量により得られる共重合体(B)の分子量を調節することもできる。
【0093】
重合反応に用いるエチレンとα−オレフィンとの仕込みのモル比(エチレン/α−オレフィン)は、得られる共重合体(B)が前記要件(1)を満たすような比であれば特に制限されないが、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは35/65〜80/20である。
また、重合反応に用いるエチレンと非共役ポリエンとの仕込みのモル比(エチレン/非共役ポリエン)は、得られる共重合体(B)中のエチレンに由来する構造単位と非共役ポリエンに由来する構造単位とのモル比が前記範囲になるような比であることが好ましく、具体的には、好ましくは50/50〜99/1、より好ましくは60/40〜99/1である。
【0094】
<架橋剤>
本発明の重合体組成物は、低温特性、引張強度、破断伸度およびゴム的性質により優れる成形体を得ることができるなどの点から、該組成物を動的架橋することが好ましく、この場合、前記重合体組成物は、架橋剤、好ましくは下記のような有機過酸化物を含むことが望ましい。
本発明において、「動的架橋」とは、前記重合体組成物にせん断力を加えながら架橋することをいう。
【0095】
前記有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0096】
これらのうち、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましく、中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンが最も好ましい。
【0097】
このような有機過酸化物は、重合体組成物100重量部に対して、通常0.02〜3重量部、好ましくは0.05〜1重量部となるような量で用いられる。
有機過酸化物の配合量を前記範囲にすることにより、成形性に優れる組成物が得られ、また、得られる成形体は、適度な架橋度を有し、十分な耐熱性、引張特性、弾性回復、反発弾性を有する。
【0098】
また、架橋剤としては、フェノール樹脂を用いることもできる。この場合、フェノール樹脂の使用量は、重合体組成物100重量部に対して、通常1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、更に好ましくは3〜12重量部である。
【0099】
本発明においては、前記有機過酸化物による動的架橋に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N'−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートなどの多官能性ビニルモノマー等の助剤を配合することができる。
【0100】
前記の助剤を用いることにより、均一かつ穏やかな架橋反応が期待できる。特に、前記助剤としては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、前記重合体組成物の主成分である重合体(A)および共重合体(B)との相溶性が良好であり、かつ、有機過酸化物を可溶化する作用を有し、有機過酸化物の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0101】
前記助剤は重合体組成物全体100重量部に対して、通常2重量部以下、好ましくは0.3〜1重量部となるような量で用いられる。
【0102】
また、有機過酸化物の分解を促進するために、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6−トリ(ジメチルアミノ)フェノール等の三級アミンや、アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等のナフテン酸塩などの分解促進剤を用いてもよい。
【0103】
<その他の成分>
本発明の重合体組成物には、前記重合体(A)および共重合体(B)の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の添加剤を配合してもよく、具体的には、必要に応じて軟化剤(C)や無機充填剤(D)を配合することができる。また、前記添加剤として、さらに、ポリイソブチレン、ブチルゴム、プロピレン・エチレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン共重合体ゴム等の他のゴム;熱硬化性樹脂やポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂等の他の樹脂;従来公知の耐熱安定剤;老化防止剤;耐候安定剤;帯電防止剤;金属セッケン;ワックス等の滑剤などが挙げられる。
これらのその他の成分は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
前記軟化剤(C)としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸または脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油等が挙げられる。
【0105】
これらの軟化剤(C)は、重合体(A)および共重合体(B)の合計量100重量部に対し、通常2〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の量で用いられる。軟化剤(C)をこのような量で用いると、得られる重合体組成物および熱可塑性エラストマー組成物は成形時の流動性に優れ、得られる成形体の機械的物性を低下させ難く、また、得られる成形体は、耐熱性、耐熱老化性に優れる。
【0106】
前記無機充填剤(D)としては、具体的には、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が挙げられる。
【0107】
これらの無機充填剤(D)は、重合体(A)および共重合体(B)の合計量100重量部に対して、通常2〜100重量部、好ましくは2〜50重量部の量で用いられる。
【0108】
また、前記のような他のゴムを用いる場合には、重合体(A)および共重合体(B)の合計量100重量部に対して、通常2〜200重量部、好ましくは5〜150重量部の量で用いる。
【0109】
≪熱可塑性エラストマー組成物≫
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記重合体組成物を動的架橋して得られ、好ましくは、前記重合体(A)と、共重合体(B)と、必要に応じて配合されるその他の成分との混合物を、架橋剤、好ましくは、前記有機過酸化物の存在下に、動的に熱処理して架橋することによって得られる。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記重合体組成物が部分的架橋された組成物であってもよく、完全に架橋された組成物であってもよい。
本発明において、「動的に熱処理する」とは、前記重合体組成物を溶融状態で混練することをいう。
【0110】
前記動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理の温度は、通常重合体(A)の融点から300℃の範囲であり、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170〜270℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、最高剪断速度で通常10〜100,000sec
-1、好ましくは100〜50,000sec
-1、より好ましくは1,000〜10,000sec
-1、更に好ましくは2,000〜7,000sec
-1の範囲である。
【0111】
前記混練の際の混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0112】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物および該組成物を従来公知の方法で成形して得られる成形体は、常温での高い引き裂き強度および優れた低温シール性をバランスよく満足し、また、引張強度、破断伸度および圧縮永久歪に優れる。
このため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物および該組成物を従来公知の方法で成形して得られる成形体は、冷蔵庫のパッキンなどの低温下で使用されるシール材、自動車部品、工業機械部品、電子・電気機器部品、建材等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0113】
本発明について、実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各特性の評価方法は次の通りである。
【0114】
〔エチレン、α−オレフィンおよび非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量〕
下記合成例で得られた共重合体中のエチレン、α−オレフィンおよび非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量は、
1H−NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。結果を表2に示す。
なお、表2中のエチレン/α−オレフィンの欄の値は、エチレンに由来する構造単位とα−オレフィンに由来する構造単位との合計を100とした時の値であり、表2中の非共役ポリエン含量の値は、エチレン、α−オレフィンおよび非共役ポリエンに由来する構造単位の合計100モル%に対する値である。
【0115】
〔ヨウ素価〕
下記合成例で得られた共重合体のヨウ素価は、滴定法により求めた値である。具体的には、以下の方法で行った。
下記合成例で得られた共重合体0.5gを四塩化炭素60mlに溶解し、少量のウィス試薬および20%ヨウ化カリウム溶液を加え、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で適定した。終点付近では澱粉指示薬を加え、よく攪拌しながら薄紫色が消えるところまで適定し、試料100gに対する消費されるハロゲンの量としてヨウ素のg数を算出した。
【0116】
〔極限粘度〕
下記合成例で得られた共重合体の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。具体的には、下記合成例で得られた共重合体ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度η
spを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のη
sp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。結果を表2に示す。
[η]=lim(η
sp/C) (C→0)
【0117】
〔ムーニー粘度〕
下記合成例で得られた共重合体のムーニー粘度ML
1+4(125℃)は、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。結果を表2に示す。
【0118】
下記実施例、参考例および比較例で得られた組成物から、プレス成形(2mm厚の金型を用い、190℃で10分間50tで加圧後、冷却加圧(冷水温度:10℃で5分間40tで加圧)により徐冷)により成形体を形成し、この成形体を用いて、下記物性を評価した。結果を表3に示す。
【0119】
〔硬度(Durometer−A)〕
得られた成形体の平らな部分を重ねて厚み6mmとし、JIS K6253に従い硬度を測定した。なお、瞬間値とは針状圧子が試料に触れ、負荷がかかり始める瞬間の硬度のことをいい、15秒後とは圧子に負荷がかかり始めて15秒経過時の硬度のことをいう。
【0120】
〔圧縮永久歪(CS)〕
得られた成形体を用い、ISO 815に従って、直径3cmの円状にサンプルを切り取った後、六枚を重ね、23℃で22時間処理後の圧縮永久歪および−30℃で22時間処理後の圧縮永久歪を測定した。
【0121】
〔引き裂き強度〕
得られた成形体をJIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、引き裂き強度を測定した。
【0122】
〔合成例1〕
容積300リットルの撹拌翼付き重合器を用いて60℃の温度下で連続的にエチレン、1−ブテンおよび5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)からなる三元共重合体の合成を行った。
このとき、重合溶媒としてヘキサン(フィード量26.5kg/h)を使用し、エチレンフィード量を4.3kg/h、1−ブテンフィード量を14.4kg/h、ENBフィード量を700g/h、水素フィード量を5.0ノルマルリットル/hとして重合器に連続的に供給した。重合圧力を1.6MPa-Gに保持しながら、主触媒として前記式(XI)で表される化合物(t−ブチルアミド)−ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエンをフィード量が0.003mmol/hとなるように重合器に連続的に供給した。共触媒として(C
6H
5)
3CB(C
6F
5)
4を0.017mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(以下「TIBA」ともいう。)を10mmol/hとなるように重合器にそれぞれ連続的に供給した。
このようにして、エチレン、1−ブテンおよびENBからなる共重合体(以下「EBDM−1」ともいう。)を17.2重量%含む重合溶液を得た(重合時間:2.12時間)。得られた重合溶液を大量のメタノールに投入して、EBDM−1を析出させた後、析出物を80℃で24時間減圧乾燥した。
【0123】
〔合成例2および3〕
合成例1において、重合条件を下記表1に示すように変更した以外は、合成例1と同様にして、それぞれ、エチレン・1−ブテン・ENB共重合体(以下それぞれ、「EBDM−2」および「EBDM−3」ともいう。)を18.2重量%および10.6重量%含む重合溶液を得た。その後、合成例1と同様にしてEBDM−2およびEBDM−3を得た。
【0124】
【表1】
【0125】
〔合成例4〕
合成例1において、エチレンフィード量を4.1kg/h、プロピレンフィード量を3.5kg/h、ENBフィード量を300g/h、水素フィード量を1ノルマルリットル/hに変更した以外は、合成例1と同様にして、エチレン・プロピレン・ENB共重合体(以下「EPDM−2」ともいう。)を合成した。
【0126】
〔合成例5〕
合成例1において、エチレンフィード量を4.6kg/h、プロピレンフィード量を3.0kg/h、ENBフィード量を420g/h、水素フィード量を2ノルマルリットル/hに変更した以外は、合成例1と同様にして、エチレン・プロピレン・ENB共重合体(以下「EPDM−3」ともいう。)を合成した。
【0127】
【表2】
【0128】
[実施例1]
結晶性オレフィン系重合体(A)として、40重量部のポリプロピレン(EL−Pro(登録商標)P740J、SCG Chemicals Co., Ltd.製)、共重合体(B)として、60重量部の合成例1で得られたEBDM−1、20重量部のパラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスオイル(登録商標)PW−100、出光興産(株)製)、0.46重量部のPHSA(商品名:パーヘキサ25B、化合物名:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン単一製品、日油(株)製)、および、0.46重量部のDVB−810(ジビニルベンゼン混合物、新日鐵化学(株)製)をヘンシェルミキサー中で充分混合した。次いで、得られた混合物をバンバリーミキサーに投入し、180℃で10分間混練した後、オープンロールを通してシート状にし、シートカッターで切断して角ペレット(熱可塑性エラストマー組成物)を得た。
【0129】
[参考例1および比較例1〜3]
実施例1において、EBDM−1の代わりに、それぞれ、EBDM−2、EBDM−3、EPDM−2およびEPDM−3を用いた以外は、実施例1と同様にして、角ペレットを得た。
【0130】
【表3】
【0131】
表3から明らかなように、特定の共重合体(B)を用いることで、従来の組成物では達成できなかった、常温での高い引き裂き強度および優れた低温シール性をバランスよく満足する成形体を得ることができた。