(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349097
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】入力信号増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/34 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
H03F1/34
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-19205(P2014-19205)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-146545(P2015-146545A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年8月24日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸二
(72)【発明者】
【氏名】大歯 真
【審査官】
緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−101355(JP,A)
【文献】
特開2010−087571(JP,A)
【文献】
特開2001−257534(JP,A)
【文献】
米国特許第05982246(US,A)
【文献】
特開2001−168642(JP,A)
【文献】
特開2010−87571(JP,A)
【文献】
特開昭63−26009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する入力信号増幅器であって、
入力端から入力される前記入力信号の論理を反転させて出力端から出力する反転増幅器と、
前記反転増幅器の前記入力端を接地するか否かを切り替える第1のスイッチと、
前記反転増幅器と並列に接続された帰還抵抗と、
前記帰還抵抗及び前記反転増幅器と並列に接続された第2のスイッチと、
前記第1及び第2のスイッチのONまたはOFFを、当該入力信号増幅器の状態に応じて制御するON/OFF制御信号部と、
を具備し、
前記ON/OFF制御信号部は、当該入力信号増幅器の状態が急速起動時に、前記第2のスイッチをONに制御することにより、前記反転増幅器から前記帰還抵抗を切り離す、
入力信号増幅器。
【請求項2】
前記ON/OFF制御信号部はさらに、当該入力信号増幅器の状態が急速起動時に、前記第1のスイッチをOFFに制御する、
請求項1に記載の入力信号増幅器。
【請求項3】
当該入力信号増幅器の状態がOFF時、急速起動時、ON時における前記第1および第2のスイッチの一連の制御を前記ON/OFF制御信号部の一つの制御信号入力が行う、
請求項1に記載の入力信号増幅器。
【請求項4】
前記帰還抵抗は、第1の抵抗と第2の抵抗とを有し、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の間に直列に接続された第3のスイッチをさらに有する、
請求項1に記載の入力信号増幅器。
【請求項5】
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の抵抗値は等しい、
請求項4に記載の入力信号増幅器。
【請求項6】
前記ON/OFF制御信号部は、当該入力信号増幅器の状態がOFF時に、前記第1のスイッチをONに制御することにより前記反転増幅器の前記入力端を接地するとともに、前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをOFFに制御する、
請求項4に記載の入力信号増幅器。
【請求項7】
前記反転増幅器は、インバータ型である、
請求項1に記載の入力信号増幅回路。
【請求項8】
前記反転増幅器は、Nch定電流注入型である、
請求項1に記載の入力信号増幅回路。
【請求項9】
請求項1に記載の入力信号増幅器と、
前記反転増幅器と並列に接続された水晶振動子と、
を備えた水晶発振器。
【請求項10】
請求項1に記載の入力信号増幅器を備えた半導体集積回路。
【請求項11】
請求項1に記載の入力信号増幅器を備えた無線通信装置。
【請求項12】
請求項1に記載の入力信号増幅器を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号増幅器は、OFFからON時に反転増幅器の入力のバイアス電圧を急速に起ち上げることができないという課題がある。これを解決するために、特許文献1に入力増幅回路が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の入力信号増幅器は、
図1(a)に示すように、反転増幅器A1の入力IN1に急速起動用のバイアス電圧発生回路とプリチャージスイッチSW6を付加し、入力電圧の急速起動を可能にしている。なお、
図1(a)の入力信号増幅器では、
図1(b)に示すON/OFF制御論理表に従って、回路の状態に応じて、スイッチSW4〜SW6のON/OFFが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4625732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、反転増幅器の入力電圧の急速起動を可能にするものの、急速起動用のバイアス電圧発生回路での消費電力の増大及び回路規模の増大を招くことになる。
【0006】
本発明の目的は、回路規模の増大及び消費電力の増大を招くことなく、入力電圧の急速起動が可能な入力信号増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の入力信号増幅器は、
入力信号を増幅する入力信号増幅器であって、入力端から入力される前記入力信号の論理を反転させて
出力端から出力する反転増幅器と、前記反転増幅器の
前記入力端を接地するか否かを切り替える第1のスイッチと、前記反転増幅器と並列に接続された
帰還抵抗と、
前記帰還抵抗及び前記反転増幅器と並列に接続された第2のスイッチと、前記第1及び第2のスイッチのONまたはOFFを、当該入力信号増幅器の状態に応じて制御するON/OFF制御信号部と、を具備し、
前記ON/OFF制御信号部は、当該入力信号増幅器の状態が急速起動時に、前記第2のスイッチをONに制御することにより、前記反転増幅器から前記帰還抵抗を切り離す構成を採る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回路規模の増大及び消費電力の増大を招くことなく、入力電圧を急速に起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】特許文献1に開示の入力信号増幅器の構成を示す図
【
図2】本発明の実施の形態1に係る入力信号増幅器の構成を示す図
【
図7】
図2に示した入力信号増幅器を搭載した無線通信機の間欠受信時における消費電流の変化を示す図
【
図8】本発明の実施の形態2に係る水晶発振器の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一機能を有する構成には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る入力信号増幅器10の構成を示す図である。以下、入力信号増幅器10の構成について
図2を用いて説明する。
【0012】
反転増幅器11は、その内部回路の一例として、
図3に示すインバータ型、
図4に示すNch定電流注入型が挙げられるが、入力と出力が反転論理となる増幅器であれば何でもよい。例えば、反転増幅器11のVDD端子からVDDが供給される電源までと、反転増幅器11のVSS端子とGNDまでの間に、定電流源または間欠動作のためのSWが付加されていてもよい。
【0013】
反転増幅器11の出力OUT1と入力IN1との間には、帰還抵抗部12が接続され、帰還抵抗部12は、抵抗R1(第1の抵抗に相当)、スイッチSW2及び抵抗R2(第2の抵抗に相当)が直列接続された高抵抗値と、スイッチSW3のみ接続された低抵抗値との複数の抵抗値を有している。
【0014】
スイッチSW1は、反転増幅器11の回路OFF時の待機電力を低減させる目的で付加されており、反転増幅器11の入力IN1を回路OFF時にGNDにプルダウンさせる、または、VDDにプルアップさせる(
図2では、VSSにプルダウンする構成を示している)。
【0015】
スイッチSW1〜SW3は、通常、MOSトランジスタ型スイッチまたはトランスファーゲート型スイッチを用いている。スイッチSW2を抵抗R1と抵抗R2の間に接続しているのは、入力信号増幅器10がAC動作をしている際に、スイッチSW2の両端子の電位変化が少ないほうが、スイッチSW2の内部ON抵抗の変化が少なく、AC信号の位相雑音劣化を軽減できるためである。従って、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値は等しいことが望ましい。
【0016】
入力信号源13は、温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)に代表される基準信号源を指し、AC結合容量C3を介して反転増幅器11の入力IN1へ接続される。
【0017】
スイッチSW1〜SW3のON/OFF制御は、ON/OFF制御信号部14で生成された信号により行われる。ON/OFF制御信号部14は、インバータINV1、INV2、Delay回路D1、AND1、及び、NAND1からなる。
【0018】
Delay回路D1は、遅延時間が入力信号増幅器10の急速起動期間と同義となり、遅延時間が設けられればどのような構成でもよい。Delay回路D1は、通常、抵抗と容量のRC遅延、インバータ多段接続による遅延、または、これらの組合せなどが用いられる。
【0019】
ここでは、ON/OFF制御信号部14は、制御信号入力が“H”でON、“L”でOFFの回路にしており、また、スイッチSW1〜SW3は、各々の制御信号ノードa、b、cが“H”でスイッチがON、“L”でスイッチがOFFになる設定としている。
【0020】
次に、
図2に示した入力信号増幅器10の動作について、
図5のON/OFF制御論理表を用いて説明する。
【0021】
入力信号増幅器10の回路OFF時は、ON/OFF制御信号部14のaよりスイッチSW1のON信号を出力し、bよりスイッチSW2のOFF信号を出力し、cよりスイッチSW3のOFF信号を出力する。この結果、スイッチSW2とSW3がOFFになり、帰還抵抗部12が開放となり、反転増幅器11はインバータ動作をする。ここで、スイッチSW1がONし、GNDにプルダウンされるため、回路を生成するトランジスタのOFF時リーク電流が発生しない限り、消費電流は発生しない。
【0022】
次に、入力信号増幅器10の回路OFF時から急速起動時に切り替わる時は、ON/OFF制御信号部14のaよりスイッチSW1のOFF信号を出力し、bよりスイッチSW2のON信号を出力し、cよりスイッチSW3のON信号を出力する。この結果、スイッチSW2とSW3がONになり、帰還抵抗部12の抵抗値が低抵抗値となり、さらに、スイッチSW1が開放になるため、反転増幅器11は、帰還抵抗部12の抵抗が低抵抗値で帰還され、入力IN1の電圧の急速起動を行う。ここでは、急速起動用のバイアス電圧回路等を用いないため、余計な消費電流を使うことなく、入力電圧の急速起動が可能となる。この急速起動期間は、Delay回路D1の遅延時間にて決定される。
【0023】
次に、入力信号増幅器10の回路ON時は、ON/OFF制御信号部14のaよりスイッチSW1のOFF信号を出力し、bよりスイッチSW2のON信号を出力し、cよりスイッチSW3のOFF信号を出力する。この結果、急速起動時よりスイッチSW3がOFFとなり、帰還抵抗部12の抵抗が高抵抗値となり、高利得な入力信号増幅器10の動作状態となる。入力信号増幅器10の回路OFF時、急速起動時、回路ON時を繰り返すことにより、高速起動が可能な低消費電力の間欠動作に適した入力信号増幅器が実現可能になる。
【0024】
ここで、
図2に示した入力信号増幅器10を無線通信機に搭載し、この無線通信機の間欠受信時における消費電流の変化について
図7を用いて説明する。
図7(a)は
図1に示した従来の入力信号増幅器を用いた場合の消費電流の変化を示し、
図7(b)は
図2に示した入力信号増幅器10を用いた場合の消費電流の変化を示している。
図7から分かるように、
図7(b)では
図7(a)に比べて、起動用のバイアス電圧発生回路の電流を削減できる。
【0025】
このように、実施の形態1の入力信号増幅器では、反転増幅器の入力を接地するか否かを切り替えるスイッチSW1と、反転増幅器と並列に接続され、複数の異なる抵抗値を有する帰還抵抗部と、を備え、帰還抵抗部は、それぞれの抵抗を介して帰還抵抗部の短絡または開放を行うスイッチSW2、SW3を有し、ON/OFF制御信号部CONT1がこれらのスイッチSW1〜SW3を回路の状態に応じて適宜ON/OFFを切り替える。これにより、急速起動時には、帰還抵抗部の抵抗値を低抵抗値とし、また、スイッチSW1を開放すれば、回路規模の増大及び消費電力の増大を招くことなく、反転増幅器の入力電圧の急速起動を行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態の帰還抵抗部12は、複数の抵抗値を並列に備えていればよく、さらにON/OFF制御信号部14は、
図5または
図6に示すON/OFF制御論理表に応じる論理回路が成り立てば、
図2に示した回路でなくてもよい。
【0027】
また、
図5及び
図6のON/OFF制御論理表における相違点は、急速起動時におけるスイッチSW2がONまたはOFFとなっている点であるが、急速起動時はスイッチSW3がONしているため、反転増幅器A1の入力IN1と出力OUT1間の抵抗値が十分小さいため、スイッチSW2の状態はONでもOFFでもよいことを示している。
【0028】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る水晶発振器20の構成を示す図ある。以下、水晶発振器20の構成について
図8を用いて説明する。
【0029】
スイッチSW1〜SW3は、通常、MOSトランジスタ型スイッチまたはトランスファーゲート型スイッチを用いている。スイッチSW2を抵抗R1と抵抗R2の間に接続しているのは、水晶発振器20が発振している際に、スイッチSW2の両端子の電位変化が少ないほうが、スイッチSW2の内部ON抵抗の変化が少なく、発振信号の位相雑音劣化を軽減できるためである。従って、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値は等しいことが望ましい。
【0030】
反転増幅器11の入力IN1と出力OUT1との間には水晶振動子X1が接続され、入力IN1とGND間、出力OUT1とGND間には、水晶発振器20の発振周波数に応じた負荷容量C1が接続される。なお、一般的には、
図8の破線内部は集積化回路とされ、集積化回路の入力端子IN1、出力端子OUT1の間に水晶振動子X1が外部接続される。
【0031】
次に、
図8に示した水晶発振器20の動作について、
図5のON/OFF制御論理表を用いて説明する。
【0032】
水晶発振器20の回路OFF時は、ON/OFF制御信号部14のaよりスイッチSW1のON信号を出力し、bよりスイッチSW2のOFF信号を出力し、cよりスイッチSW3のOFF信号を出力する。この結果、スイッチSW2とSW3がOFFになり、帰還抵抗部12が開放となり、反転増幅器11はインバータ動作をする。ここで、スイッチSW1がONし、GNDにプルダウンされるため、回路を生成するトランジスタのOFF時リーク電流が発生しない限り、消費電流は発生しない。
【0033】
次に、水晶発振器20の回路OFF時から急速起動時に切り替わる時は、ON/OFF制御信号部14のaよりスイッチSW1のOFF信号を出力し、bよりスイッチSW2のON信号を出力し、cよりスイッチSW3のON信号を出力する。この結果、スイッチSW2とSW3がONになり、帰還抵抗部12の抵抗値が低抵抗値となり、さらに、スイッチSW1が開放になるため、反転増幅器11は、帰還抵抗部12の抵抗が低抵抗値で帰還され、入力IN1の電圧の急速起動を行う。ここでは、急速起動用のバイアス電圧回路等を用いないため、余計な消費電流を使うことなく、反転増幅器11の入力電圧の急速起動が可能となる。この急速起動期間は、Delay回路D1の遅延時間にて決定される。
【0034】
次に、水晶発振器20の回路ON時は、ON/OFF制御信号部14のaよりスイッチSW1のOFF信号を出力し、bよりスイッチSW2のON信号を出力し、cよりスイッチSW3のOFF信号を出力する。この結果、急速起動時よりスイッチSW3がOFFとなり、帰還抵抗部12の抵抗が高抵抗値となり、高利得な水晶発振器20の動作状態となる。水晶発振器20の回路OFF時、急速起動時、回路ON時を繰り返すことにより、高速起動が可能な低消費電力の間欠動作に適した水晶発振器が実現可能になる。
【0035】
このように、実施の形態2の水晶発振器では、反転増幅器の入力を接地するか否かを切り替えるスイッチSW1と、反転増幅器と並列に接続され、複数の異なる抵抗値を有する帰還抵抗部と、を備え、帰還抵抗部は、それぞれの抵抗を介して帰還抵抗部の短絡または開放を行うスイッチSW2、SW3を有し、ON/OFF制御信号部CONT1がこれらのスイッチSW1〜SW3を回路の状態に応じて適宜ON/OFFを切り替える。これにより、急速起動時には、帰還抵抗部の抵抗値を低抵抗値とし、また、スイッチSW1を開放すれば、回路規模の増大及び消費電力の増大を招くことなく、反転増幅器の入力電圧の急速起動を行うことができる。
【0036】
なお、本実施の形態の帰還抵抗部12は、複数の抵抗値を並列に備えていればよく、さらにON/OFF制御信号部14は、
図5または
図6に示すON/OFF制御論理表に応じる論理回路が成り立てば、
図8に示した回路でなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明にかかる入力信号増幅器は、水晶発振器、半導体集積回路、無線通信装置、及び、電子機器等に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
11 反転増幅器
12 帰還抵抗部
13 入力信号源
14 ON/OFF制御信号部