特許第6349114号(P6349114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349114
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】液封式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20180618BHJP
   F16F 13/14 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   F16F13/10 H
   F16F13/14 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-49189(P2014-49189)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2015-172422(P2015-172422A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】小島 成雄
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−072518(JP,A)
【文献】 特開2004−150537(JP,A)
【文献】 特開平11−030267(JP,A)
【文献】 特開2004−211804(JP,A)
【文献】 特開平08−121528(JP,A)
【文献】 実開平06−069480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、
前記内筒の外径側に配置された外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に介装されるゴム弾性体と、を備え、振動入力体と車体との間に配置される液封式防振装置であって、
前記内筒の軸方向の寸法は、前記外筒の軸方向の寸法よりも大きく、前記内筒の軸方向の両端部が、前記外筒の軸方向の両端部から突出するように配置されており、
前記ゴム弾性体の軸方向両端部には、車体前後方向に延在する突条部が突設されており、
前記突条部は前記外筒の開口端から突出しており、
前記突条部は、前記突条部の左右方向の延在部分が前記外筒まで達せず、かつ、前記突条部の前後方向の延在部分が前記外筒に達しており、
前記内筒の外周面には、径方向内側に窪む縮径部が形成されており、
前記縮径部には、少なくとも前記突条部の径方向内側部分が固着されており、
さらに、前記縮径部は、前記外筒の開口端から突出する位置まで形成されており、
前記内筒の径方向両側に形成される一対の液室と、前記一対の液室の間を仕切る仕切壁と、を備え、
前記突条部は、前記仕切壁の軸方向延長上に配置されていることを特徴とする液封式防振装置。
【請求項2】
前記内筒の径方向における前記突条部の幅は、前記内筒の外径以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の液封式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる液封式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液封式防振装置として、自動車等の車両のサスペンション装置におけるサスペンションアームと車体との連結点に設けられるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この液封式防振装置は、内筒と、その内筒の外径側に配置された外筒と、内筒と外筒との間に介設されるゴム弾性体と、を備えて構成されている。内筒と外筒との間には、非圧縮性流体が封入された一対の液室が設けられている。
【0003】
この液封式防振装置では、外筒がサスペンションアームの後端の圧入孔に圧入され、内筒が車体フレームに連結される。この場合、前後方向におけるサスペンションアームの変位時には、液封式防振装置に対して車体左右方向の荷重が入力される。そのため、液封式防振装置は、一対の液室が車体左右方向に対向する状態でサスペンションアームに装着される。また、上下方向におけるサスペンションアームの変位時には、サスペンションアームの前後の連結部を通る線を中心に回転しようとする力(こじり力)が作用する。このため、液封式防振装置には、内筒の軸心に対して外筒の軸心が傾くようなこじり方向の荷重が入力される。
【0004】
特許文献1の液封式防振装置では、これらの軸直角方向の荷重の入力およびこじり方向の荷重の入力に対して、ゴム弾性体が弾性変形することによって車輪から車体に伝達される荷重を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−147065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液封式防振装置では、高耐久化のために軸方向のバネ値を向上させたいという要望がある。軸方向のバネ値を向上させるためには、例えば、ゴム弾性体を軸方向に厚く形成することが考えられる。
しかしながら、ゴム弾性体を軸方向に厚く形成すると、前記した軸直角方向の荷重の入力およびこじり方向の荷重の入力に対して、ゴム弾性体が弾性変形し難くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、ゴム弾性体の弾性変形に影響を及ぼすことなく軸方向のバネ値を向上させることができる液封式防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、内筒と、前記内筒の外径側に配置された外筒と、前記内筒と前記外筒との間に介装されるゴム弾性体と、を備え、振動入力体と車体との間に配置される液封式防振装置であって、前記内筒の軸方向の寸法は、前記外筒の軸方向の寸法よりも大きく、前記内筒の軸方向の両端部が、前記外筒の軸方向の両端部から突出するように配置されており、前記ゴム弾性体の軸方向両端部には、車体前後方向に延在する突条部が突設されており、前記突条部は前記外筒の開口端から突出しており、前記突条部は、前記突条部の左右方向の延在部分が前記外筒まで達せず、かつ、前記突条部の前後方向の延在部分が前記外筒に達しており、前記内筒の外周面には、径方向内側に窪む縮径部が形成されており、前記縮径部には、少なくとも前記突条部の径方向内側部分が固着されており、さらに、前記縮径部は、前記外筒の開口端から突出する位置まで形成されており、前記内筒の径方向両側に形成される一対の液室と、前記一対の液室の間を仕切る仕切壁と、を備え、前記突条部は、前記仕切壁の軸方向延長上に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、内筒の軸方向の両端部が外筒の軸方向の両端部から突出するように配置されているので、外筒の開口端から突出する突条部を、内筒の軸方向の両端部周りに好適に接続することができる。したがって、内筒の軸方向の両端部周りのスペースを利用して、突条部を容易に形成することができる。
また、ゴム弾性体の軸方向両端部に突条部を形成したことにより、軸方向のバネ値を向上させることができる。
また、突条部は、車体前後方向に延在し、突条部の左右方向の延在部分が外筒まで達せず、かつ、突条部の前後方向の延在部分が外筒に達しているので、車体左右方向等の荷重の入力、およびこじり方向の荷重の入力に対するゴム弾性体の弾性変形を妨げない。したがって、本発明の液封式防振装置によれば、ゴム弾性体の弾性変形に影響を及ぼすことなく軸方向のバネ値を向上させることができる。
【0010】
また、液封式防振装置が、内筒の径方向両側に形成される一対の液室と、一対の液室の間を仕切る仕切壁と、を備え突条部、仕切壁の軸方向延長上に配置されている。これにより、車体左右方向等の荷重の入力およびこじり方向の荷重の入力に対して、ゴム弾性体の弾性変形を妨げない位置に容易かつ的確に突条部を形成することができる。
【0011】
また、内筒の径方向における突条部の幅を内筒の外径以下にするとよい。このようにすると、突状部の幅を内筒の外径よりも大きく形成した場合に比べて、車体左右方向等およびこじり方向の荷重の入力に対して、ゴム弾性体の伸び代が確保される。これにより、耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ゴム弾性体の弾性変形に影響を及ぼすことなく軸方向のバネ値を向上させることができる液封式防振装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る液封式防振装置が車両のサスペンションに適用された状態を示す概略平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る液封式防振装置の平面図である。
図3】同じく横断面図である。
図4図2のA−A線に沿う拡大断面図である。
図5図2のB−B線に沿う拡大断面図である。
図6】(a)は上下方向を軸とした内筒側アッシーの斜視図、(b)は同じく内筒側アッシーからオリフィス形成部材を取り外して天地を逆にした斜視図である。
図7】(a)は内筒側アッシーの平面図、(b)は同じく側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。
本実施形態に係る液封式防振装置10は、図1に示すように、例えば、自動車に備わる左後輪のサスペンション1を構成するサスペンションアーム2(振動入力体)と図示しない車体フレーム(車体)との間を連結するものである。液封式防振装置10は、筒状を呈しており、筒の軸方向が上下方向となるように縦置き状態で配置される。なお、図1において、符号5はタイヤ、符号6はボールジョイント、符号7は車体側支持部材をそれぞれ示している。
本実施形態における前後方向、左右方向は、図1に示される液封式防振装置10のサスペンション1に対する取付状態と一致する。また、本実施形態における上下方向は、図4等に示される上下方向と一致する。
【0016】
図2図5に示されるように、液封式防振装置10は、内筒12、外筒14、ゴム弾性体16、中間スリーブ15、一対のオリフィス形成部材20、20(図3,5参照)およびシールゴム層25(図3,5参照)を備えて構成される。中間スリーブ15は、内筒12の径方向外側に設けられており、外筒14は、中間スリーブ15の径方向外側に設けられている。内筒12と中間スリーブ15とは、加硫接着手段によりゴム弾性体16に固着される。中間スリーブ15の外周には、シールゴム層25が加硫成形されており、このシールゴム層25を介して外筒14が固着される。これにより、内筒12と外筒14とが弾性的に結合されている。
なお、以下の説明では、内筒12、ゴム弾性体16、中間スリーブ15、および、一対のオリフィス形成部材20、20を一体的に組み付けてなるユニットを内筒側アッシーと称する場合がある。
【0017】
内筒12は、中心部に貫通孔12cが形成された円筒体からなり、図示しない車体フレームに取り付けられる。
内筒12の軸方向の寸法は、外筒14の軸方向の寸法よりも大きく形成されている。図4図5に示すように、内筒12の両端部は、外筒14の両端部から突出している。
内筒12の軸方向に沿う中央部には、ストッパ部13が形成されている。ストッパ部13は、内筒12の径方向外側(軸直角方向外側)に突出していて、湾曲状(断面半球状)を呈している。ストッパ部13は、内筒12の全周に亘って形成されている。ストッパ部13は、被覆部13aで被覆されている。被覆部13aは、ゴム弾性体16と一体であり、内筒12と外筒14との間に、径方向に過大な相対変位があった場合に、オリフィス形成部材20(弾性体23)との間に挟まれて衝撃を緩和する。
【0018】
内筒12の外周面には、図4図5に示すように、縮径部12aが形成されている。縮径部12aは、ストッパ部13の上下に設けられている。縮径部12aは、他の内筒12の外周面に比べて径方向内側に窪んでおり、内筒12の最小外径部になっている。縮径部12aには、ゴム弾性体16の基端部16aが固着される。なお、縮径部12aは、ストッパ部13の上端および下端に連続してストッパ部13の上下に形成されている。
【0019】
外筒14は、内筒12(中間スリーブ15)の径方向外側に配置される。外筒14は、内筒12よりも薄肉に形成された円筒体からなり、図5に示すように、中間スリーブ15の外周面およびオリフィス形成部材20,20の外周面を覆うように配置される。中間スリーブ15と外筒14、およびオリフィス形成部材20,20と外筒14とは、シールゴム層25により固着される。
【0020】
中間スリーブ15は、内筒12の径方向外側に配置され、ゴム弾性体16を介して内筒12に連結されている。中間スリーブ15は、図4に示すように、上側リング部15aと、下側リング部15bと、上側リング部15aと下側リング部15bとを接続する一対の接続部15c、15cと、を有する。
【0021】
上側リング部15aおよび下側リング部15bは、それぞれ、シールゴム層25の内周面の全周に亘って切れ目なく連続した円筒状に形成されている。また、図4に示すように、上側リング部15aの上端部15a1は外筒14の上端部14aよりも下側に位置し、下側リング部15bの下端部15b1は外筒14の下端部14bよりも上側に位置する。これにより、上側リング部15aおよび下側リング部15bの外周面は、外筒14で側方から覆われている。
一組の接続部15c、15cは、図4に示すように、上側リング部15aおよび下側リング部15bよりも小径とされて内筒12の軸方向に沿って延在し、かつ、図3に示すように、車体前後方向に対向して配置されている。
【0022】
ゴム弾性体16は、図3図5に示すように、内筒12と中間スリーブ15とを弾性的に連結している。ゴム弾性体16は、図5に示すように、基端部16aと、隔壁部16bと、突条部16cと、仕切壁16dと、を備えている。
基端部16aは、内筒12の縮径部12aの外周面に加硫接着されている。隔壁部16bは、液室Wの壁として機能し、図5に示すように、基端部16aから中間スリーブ15に向けて延在している。隔壁部16bの先端部16b1は、中間スリーブ15の上側リング部15aの内面および下側リング部15bの内面に加硫接着されている。上側の隔壁部16bは、下側に凸となるように、下側の隔壁部16bは、上側に凸となるように湾曲形成されている。
ここで、図5に示すように、隔壁部16bの先端部16b1は、上側リング部15aに対して下端面15a2および内周面15a3の少なくとも下側部分に加硫接着される。なお、拡大して図示はしないが、図5に示すように、隔壁部16bの先端部16b1は、下側リング部15bの上端面15b2および内周面15b3の少なくとも上側部分に加硫接着される。
【0023】
突条部16cは、図4に示すように、ゴム弾性体16の軸方向両端部(上端部および下端部)に突設されている。突条部16cは、図4に示すように、車体前後方向に延在しており、内筒12の外面と中間スリーブ15の内面とに亘って形成されている。
【0024】
また、突条部16cは、図4に示すように、外筒14の内側に配置される部分と、外筒14の外側に配置される部分とを有している。外筒14の外側に配置される部分は、外筒14の開口端から突出形成され、内筒12の縮径部12aに固着されている。つまり、突条部16cのうち、内筒12に隣接する部分が、外筒14の開口端から突出している。
【0025】
前記したように、内筒12の両端部が外筒14の両端部から突出していることで、内筒12と外筒14との間には、図4中破線で示すような三角形状のスペースSが形成されている。突条部16cは、このスペースSを利用して、外筒14の開口端から突出している。
【0026】
また、突条部16cの車体左右方向の幅L11は、図7(a)(b)に示すように、平面視および側面視で内筒12の外径L22よりも小さく(幅狭に)形成されている。これにより、突条部16cの幅を内筒12の外径L22よりも大きく形成した場合に比べて、軸直角方向の荷重の入力およびこじり方向の荷重の入力に対し、隔壁部16bの伸び代が確保されている。
【0027】
仕切壁16dは、図3図6(b)に示すように、上下の隔壁部16b,16bの間の空間を2つに仕切るものであり、内筒12の前後に形成されている。仕切壁16dは、図3に示すように、内筒12から中間スリーブ15の接続部15cに亘って形成されている。仕切壁16dの左右の空間(嵌入凹部19,19)には、図6(a)に示すように、オリフィス形成部材20,20が配置され、これにより、仕切壁16dの左右に液室W,Wが形成される。仕切壁16dの車体前後方向の両端部には、係合凹部16eが形成されている(図6(b)参照)。
【0028】
各液室Wは、図3に示すように、水平断面において、ゴム弾性体16(仕切壁16d、被覆部13a)と、オリフィス形成部材20に被覆された弾性体23と、で囲われている。また、各液室Wは、図5に示すように、車体左右方向の鉛直断面において、ゴム弾性体16(被覆部13a、連結部18、隔壁部16b)と、オリフィス形成部材20の上端面20a,下端面20bおよび弾性体23と、で囲われている。
各液室Wには、非圧縮性流体が封入される。
【0029】
以上のようなゴム弾性体16は、例えば、図示しない金型内にセットされた内筒12と中間スリーブ15との間に溶融ゴムを注入することで形成される。
【0030】
シールゴム層25は、外筒14の内周面に沿って薄肉で連続して形成され、外筒14の内周面に加硫接着される。シールゴム層25は、中間スリーブ15の外周面と外筒14の内周面との間に介装されて両者の間をシールする。
【0031】
一対のオリフィス形成部材20、20は、樹脂製材料でそれぞれ同一形状に形成される。各オリフィス形成部材20は、図6(a)の内筒側アッシーにおいてその一部を示すように、周方向に略半円状を呈している。オリフィス形成部材20の両端には、図6(a)に示すように、仕切壁16dの係合凹部16e(図6(b)参照)と係合する係合凸部22が設けられている。
【0032】
図6(a)に示すように、オリフィス形成部材20の外周面には、内筒12の軸方向と平行に延在する縦溝(開口部)26aと、溝幅が幅狭で深さが浅い溝からなり周方向に沿って延在するオリフィス通路26bとが形成されている。縦溝26aは、オリフィス通路26bの一部に開口している。
【0033】
オリフィス形成部材20は、図5に示すように、内壁として、ストッパ部13に対向する断面略台形状の受け部21を備えている。受け部21は、ストッパ部13に対向する受け面21aと、受け面21aの上側に連続する上面21bと受け面21aの下側に連続する下面21cと、上面21bに連続する上端面20aと、下面21cに連続する下端面20bと、を備えて構成されている。
【0034】
一方の液室Wと他方の液室Wとは、一対のオリフィス形成部材20、20と、ゴム弾性体16に形成された連通路16f(図3参照)とを介して連通している。すなわち、一方のオリフィス形成部材20と他方のオリフィス形成部材20とは、連通路16fを介してオリフィス通路26b,26b同士が互いに連通するように装着される。この結果、一対の液室W,W内に封入された非圧縮性流体は、一対のオリフィス形成部材20、20を介して一対の液室W,W間を相互に流動可能となっている。
【0035】
本実施形態に係る液封式防振装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
液封式防振装置10は、図1に示すように、内筒12の軸方向が上下方向となり、かつ、突条部16c,16cの延出方向が車体前後方向となるように、サスペンション1のサスペンションアーム2に取り付けられる。つまり、内筒12の前後に突条部16c,16cが位置するようにサスペンションアーム2に取り付けられる。
【0036】
サスペンションアーム2を介してタイヤ5から液封式防振装置10に対して左右方向の振動(荷重)が付与されると、ゴム弾性体16が弾性変形する。この弾性変形により一方の液室Wと他方の液室Wとの間で差圧(液圧差)が発生し、一方の液室Wと他方の液室Wとの間でオリフィス通路26bを通じて非圧縮性流体が流動する。この非圧縮性流体のオリフィス通路26bの流動によって共振作用が発生し、共振作用に基づいて防振効果が発揮される。つまり、非圧縮性流体がオリフィス通路26bを流動することで減衰作用が発生し、振動が吸収される。同時に、ゴム弾性体16によるばね特性に基づいて防振効果が発生する。このようなばね特性による防振効果と共振作用による防振効果とが相乗した防振効果が得られる。この場合、弾性変形する部分は、車体左右方向の隔壁部16b,16bであり、隔壁部16b,16bの弾性変形を車体前後方向に配置された突条部16cが妨げることがない。
【0037】
また、サスペンションアーム2を介してタイヤ5から液封式防振装置10に対して上下方向の振動(荷重)が付与されると、ゴム弾性体16が軸方向に弾性変形する。この場合、突条部16cによるばね特性により、剛性が高まる。
【0038】
また、例えば、車両がカーブ等の曲線路を走行する際、駆動による前後方向の力と遠心力に対抗する路面からの左右方向の摩擦力とによってこじり方向の荷重が入力される(図5参照)。このこじり方向の荷重が入力されると、内筒12が図5の矢印方向に沿って揺動する。これにより、内筒12と外筒14との間に介装されたゴム弾性体16の隔壁部16bが左右方向に弾性変形する。この場合、弾性変形する部分は、左右方向の隔壁部16b,16bであり、隔壁部16b,16bの弾性変形を前後方向の突条部16cが妨げることがない。
【0039】
以上説明した本実施形態の液封式防振装置10によれば、内筒12の軸方向の両端部が外筒14の軸方向の両端部から突出するように配置されているので、突条部16cを、内筒12の軸方向の両端部周りに好適に接続することができる。したがって、内筒12の軸方向の両端部周りのスペースS(図4参照)を利用して、突条部16cを容易に形成することができる。
【0040】
突条部16cを形成したことにより、軸方向のバネ値が向上される。
また、突条部16cは、車体前後方向に延在して形成されているので、車体左右方向の荷重の入力およびこじり方向の荷重の入力によるゴム弾性体16の弾性変形を妨げない。したがって、本実施形態の液封式防振装置10によれば、ゴム弾性体16の弾性変形に影響を及ぼすことなく軸方向のバネ値を向上させることができる。
【0041】
また、突条部16cが、仕切壁16dの上下に配置されているので、車体左右方向の荷重の入力およびこじり方向の荷重の入力に対して、ゴム弾性体16の弾性変形を妨げない位置に、容易かつ的確に形成することができる。
【0042】
また、突条部16cの幅L11が内筒12の外径L22よりも小さいので、突条部16cの幅L11を内筒12の外径L22よりも大きくした場合に比べて、車体左右方向およびこじり方向の荷重の入力に対し、ゴム弾性体16の伸び代が確保される。これにより、耐久性を向上させることができる。
なお、突条部16cの幅L11は、内筒12の外径L22以下であればよい。
【0043】
また、内筒12は、中心軸が上下方向となるように配置されているので、軸直角方向(車体左右方向)の荷重の入力、およびこじり方向の荷重の入力に対するゴム弾性体16の弾性変形が妨げられず、ゴム弾性体16の弾性変形に影響を及ぼすことなく軸方向のバネ値を好適に向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 液封式防振装置
12 内筒
14 外筒
16 ゴム弾性体
16c 突条部
16d 仕切壁
L11 突条部の車体左右方向の幅(内筒の径方向における突条部の幅)
L22 内筒の外径
W 液室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7