(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、受信信号の平均レベルを用いて測位する場合、受信レベルを平均する期間を長くし、平均化に用いる受信データのデータ数を多くすると、端末が移動している場合に現在時刻における位置をリアルタイムに反映しなくなり、測位結果の時間的追随性が低下する。その一方で、平均する期間を短くすると、フェージングの影響を十分に抑制できなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、受信レベルを平均化する際の妥当な期間を設定して、時間的な追随性の低下を抑制しつつ、測位精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、空間に設置された複数の信号発信機からの受信レベルに基づいて前記空間における
受信部の位置を推定する位置推定装置であって、
前記受信部は、前記複数の信号発信機からの信号を受信し、前記複数の信号発信機のうち前記空間の各測位地点において想定される受信レベルの上位からN個(ただし、Nは2以上)の組み合わせを示す想定上位リストと、前記複数の信号発信機の設置位置を示す設置位置情報と、を記憶する記憶部と
、第1着目時刻から過去に遡った
過去時刻までの前記信号発信機毎の受信レベルから求めた平滑値において上位N個に該当する前記信号発信機の組み合わせが前記想定上位リストの何れかの組み合わせに合致する
場合、合致した前記過去時刻のうち前記第1着目時刻に最も近い第2着目時刻を求め、前記第1着目時刻から当
該第2着目時刻までの前記信号発信機毎の受信レベルの平滑値及び前記設置位置情報に基づいて前記第1着目時刻における
前記受信部の位置を推定する位置推定部と、を備えることを特徴とする位置推定装置である。
【0008】
本発明の別の態様は、空間に設置された複数の信号発信機からの受信レベルに基づいて前記空間における位置を推定する位置推定プログラムであって、コンピュータを、第1着目時刻から過去に遡った第2着目時刻までの前記信号発信機毎の受信レベルから求めた平滑値において上位N個に該当する前記信号発信機の組み合わせが前記複数の信号発信機のうち前記空間の各測位地点において想定される受信レベルの上位からN個(ただし、Nは2以上)の組み合わせを示す想定上位リストの何れかの組み合わせに合致する前記第2着目時刻を求め、前記第1着目時刻から当該合致する第2着目時刻までの前記信号発信機毎の受信レベルの平滑値及び前記複数の信号発信機の設置位置を示す設置位置情報に基づいて前記第1着目時刻における位置を推定する位置推定部と、を備えることを特徴とする位置推定プログラムである。
【0009】
ここで、前記想定上位リストは、前記信号発信機の設置位置と前記測位地点の位置とに基づいて設定されることが好適である。
【0010】
また、前記想定上位リストは、さらに、前記空間に存在する障害物の位置及び形状に基づいて設定されることが好適である。
【0011】
また、前記記憶部は、前記複数の信号発信機のうち前記空間の各測位地点において想定される受信レベルの上位からM個(ただし、MはNより大きい)の組み合わせを示す予備リストをさらに記憶し、前記位置推定部は、前記平滑値において上位N個に該当する前記信号発信機の組み合わせが前記想定上位リストの何れかの組み合わせに合致しない場合、前記平滑値において上位M個に該当する前記信号発信機の組み合わせが前記予備リストの何れかの組み合わせに合致する
前記過去時刻のうち前記第1着目時刻に最も近い第2着目時刻を求め、前記第1着目時刻か
ら前記第2着目時刻までの前記信号発信機毎の受信レベルの平滑値及び前記設置位置情報に基づいて前記第1着目時刻における
前記受信部の位置を推定することが好適である。
【0012】
本発明の別の態様は、
空間に存在する信号発信機の位置を推定する位置推定装置であって、
前記空間に設置され前記信号発信機からの信号を受信する複数の受信部と、前記複数の
受信部のうち前記空間における前記信号発信機の各位置において想定される受信レベルの上位からN個(ただし、Nは2以上)の組み合わせを示す想定上位リストと、前記複数の
受信部の設置位置を示す設置位置情報と、を記憶する記憶部と
、第1着目時刻から過去に遡った
過去時刻までの前記
受信部毎の受信レベルの平滑値において上位N個に該当する前記
受信部の組み合わせが前記想定上位リストの何れかの組み合わせに合致する
場合、合致した前記過去時刻のうち前記第1着目時刻に最も近い第2着目時刻を求め、前記第1着目時刻から当
該第2着目時刻までの前記
受信部毎の受信レベルの平滑値及び前記設置位置情報に基づいて前記第1着目時刻における
前記信号発信機の位置を推定する位置推定部と、を備えることを特徴とする位置推定装置である。
【0013】
本発明の別の態様は、空間に設置された複数の信号受信機における受信レベルに基づいて前記空間に存在する信号発信機の位置を推定する位置推定プログラムであって、コンピュータを、第1着目時刻から過去に遡った第2着目時刻までの前記信号受信機毎の受信レベルの平滑値において上位N個に該当する前記信号受信機の組み合わせが前記複数の信号受信機のうち前記空間における前記信号発信機の各位置において想定される受信レベルの上位からN個(ただし、Nは2以上)の組み合わせを示す想定上位リストの何れかの組み合わせに合致する前記第2着目時刻を求め、前記第1着目時刻から当該合致する第2着目時刻までの前記信号受信機毎の受信レベルの平滑値及び前記複数の信号受信機の設置位置を示す設置位置情報に基づいて前記第1着目時刻における位置を推定する位置推定部と、を備えることを特徴とする位置推定プログラムである。
【0014】
ここで、前記想定上位リストは、前記信号受信機の設置位置と前記測位地点の位置とに基づいて設定されることが好適である。
【0015】
また、前記想定上位リストは、さらに、前記空間に存在する障害物の位置及び形状に基づいて設定されることが好適である。
【0016】
また、前記記憶部は、前記複数の信号発信機のうち前記空間の各測位地点において想定される受信レベルの上位からM個(ただし、MはNより大きい)の組み合わせを示す予備リストをさらに記憶し、前記位置推定部は、前記平滑値において上位N個に該当する前記信号発信機の組み合わせが前記予備リストの何れかの組み合わせに合致しない場合、前記平滑値において上位M個に該当する前記信号発信機の組み合わせが前記予備リストの何れかの組み合わせに合致する
前記過去時刻のうち前記第1着目時刻に最も近い第2着目時刻を求め、前記第1着目時刻か
ら前記第2着目時刻までの前記信号発信機毎の受信レベルの平滑値及び前記設置位置情報に基づいて前記第1着目時刻における
前記受信部の位置を推定することが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、時間的な追随性の低下を抑制しつつ、測位精度を向上させた位置推定装置及び位置推定プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<システム構成>
本発明の実施の形態における位置推定システム100は、
図1に示すように、位置推定装置102及び発信機104(104a〜104j)を含んで構成される。位置推定システム100は、複数の発信機104を備え、位置推定装置102によって各発信機104から発信された信号を受信し、受信した信号の受信信号強度(以下、「受信レベル」という)に基づいて位置推定装置102の位置を推定する。
【0020】
発信機104は、空間内に設置され、ビーコン信号を出力する信号発信手段を備える。発信機104は、例えば、施設内の天井に取り付けられ、ビーコン信号を電波や音波等として発信する。発信機104は、
図1に示すように、3つの発信機104の配置点を結ぶと正三角形となるように周期的に配置することが好適である。
【0021】
ビーコン信号は、位置推定装置102で受信することによって位置を初めとした各種の情報を取得するための信号である。本実施の形態では、ビーコン信号は、発信元の発信機104の空間内の設置位置を特定できる情報を含む。例えば、ビーコン信号に発信元の発信機104を特定する発信機識別子を含めることによって、発信機識別子と発信元の発信機104の設置位置とを関連付けたデータベースを参照することで受信された発信機識別子から発信元の発信機104の設置位置を取得することができる。
【0022】
位置推定装置102は、
図2の機能ブロック図に示すように、受信部10、位置推定部12、記憶部14、入力部16及び出力部18を含んで構成される。位置推定装置102は、一般的なコンピュータにより位置測位プログラムを実行することにより実現することができる。
【0023】
受信部10は、発信機104からビーコン信号を受信する。ビーコン信号が電波である場合、受信部10は電波受信器、増幅器等を備える。受信されたビーコン信号は、位置推定部12に入力される。
【0024】
位置推定部12は、発信機104から受信したビーコン信号に基づいて位置推定装置102の位置を推定する手段として機能する。位置推定部12は、受信レベル測定手段12a、平均演算手段12b、妥当性判定手段12c及び位置演算手段12dを含んで構成される。
【0025】
受信レベル測定手段12aは、発信機104から受信された信号(ビーコン信号)の信号強度(受信レベル)を測定する手段である。発信機104からの信号が電波である場合、受信された電波の振幅を受信レベルとして検出する。
【0026】
平均演算手段12bは、ある時刻を第1着目時刻とし、第1着目時刻から第1着目時刻より過去の第2着目時刻までの平均期間に亘って、受信レベル測定手段12aで測定された各発信機104からの信号の受信レベルを発信機104毎に平均化した平均値(平均レベル)を算出する処理を行う手段である。第1着目時刻、第2着目時刻、平均期間の設定方法及び受信レベルの平均化の方法については後述する。
【0027】
妥当性判定手段12cは、平均レベルが位置の推定に用いるデータとして妥当な値となっているか否かを判定する手段である。具体的には、妥当性判定手段12cは、平均演算手段12bにおいて平均期間に亘って平均化された各発信機104からの信号の平均レベルのうち高い方から上位N個(ただし、Nは2以上)に該当する発信機104の組み合わせが後述する想定上位リスト14bに登録された組み合わせの何れかに合致するか否かを判定する。想定上位リスト14bに合致する発信機104の組み合わせがあれば、各発信機104から受信された信号の受信レベルは位置推定装置102の位置の推定に用いるデータとして妥当なものであるとして、当該平均期間に亘る信号の平均レベルに基づいて位置推定装置102の位置の推定を行う。想定上位リスト14bに合致する発信機104の組み合わせに合致しなければ、各発信機104から受信された信号の受信レベルは位置推定装置102の位置の推定に用いるデータとして妥当なものでないとして、当該平均期間に亘る信号の平均レベルに基づいて位置推定装置102の位置の推定を行わない。
【0028】
また、想定上位リスト14bに合致する発信機104の組み合わせがない場合、妥当性判定手段12cは、平均演算手段12bにおいて平均期間に亘って平均化された各発信機104からの信号の平均レベルのうち上位M個(ただし、MはNより大きい)に該当する発信機104の組み合わせが後述する予備リスト14cに登録された組み合わせの何れかに合致するか否かを判定するようにしてもよい。予備リスト14cに合致する発信機104の組み合わせがあれば、各発信機104から受信された信号の受信レベルは位置推定装置102の位置の推定に用いるデータとしてある程度は妥当なものであるといえ、当該平均期間に亘る信号の平均レベルに基づいて位置推定装置102の位置の推定を行う。予備リスト14cに合致する発信機104の組み合わせがなければ、各発信機104から受信された信号の受信レベルは位置推定装置102の位置の推定に用いるデータとして妥当なものでないといえ、当該平均期間に亘る信号の平均レベルに基づいて位置推定装置102の位置の推定を行わない。
【0029】
位置演算手段12dは、妥当性判定手段12cにおいて妥当であると判定された第1着目時刻から第2着目時刻に亘る各発信機104からの受信信号の平均レベルに基づいて位置推定装置102の空間内での位置を推定する処理を行う手段である。位置演算手段12dにおける位置推定装置102の位置の推定方法については後述する。
【0030】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ等のメモリ装置を含んで構成される。記憶部14は、少なくとも設置位置情報14a、想定上位リスト14b、予備リスト14c、受信レベルテーブル14d及び平均レベルテーブル14eを記憶する。
【0031】
設置位置情報14aは、
図3に示すように、空間内における各発信機104の設置位置を登録したデータベースである。
図3の例では、発信機104毎に関連付けて平面内おける位置(緯度及び経度)が登録されているが、さらに高度等の情報を加えて3次元の位置情報を登録してもよい。また、緯度、経度、高度に限らず、3次元空間のある位置を基準とした座標値(x、y、z)からなる位置情報を登録してもよい。
【0032】
想定上位リスト14bは、
図4に示すように、空間の各測位地点において想定される受信レベルにおいて高い方からN個(ただし、Nは2以上)の発信機104の組み合わせを示すデータベースである。
図4は、Nを3とした場合の例を示している。
【0033】
想定上位リスト14bは、各発信機104から位置推定装置102が受信した信号の受信レベルの実測値から設定することができる。すなわち、発信機104のいずれかから信号を受信できる測位地点毎に位置推定装置102による信号の受信レベルを予め実測し、当該実測結果の受信レベルを「空間に各測位地点において想定される受信レベル」とみなす。そして、当該実測結果において高い方からN個の発信機104を抽出し、これらN個の抽出された発信機104の組み合わせを想定上位リスト14bにおける一組として登録する。このように、空間内の代表的な測位地点における受信レベルを実測して、N個の抽出された発信機104の組み合わせをそれぞれ登録していくことによって想定上位リスト14bを設定することができる。
【0034】
また、想定上位リスト14bは、空間の各測位地点から幾何学的に最も近くに存在するN個の発信機104を選択し、これら選択されたN個の発信機104の組み合わせを想定上位リスト14bとして登録してもよい。例えば、
図5において、測位地点P1から最も近い3個の発信機104は発信機104a、発信機104b、発信機104eとなる。したがって、測位地点P1に対して発信機104a、発信機104b、発信機104eの組み合わせを想定上位リスト14bにおける一組として登録する。このように、空間内の代表的な測位地点から最も近い3個の発信機104の組み合わせによって想定上位リスト14bを設定することができる。なお、
図5に示すように、発信機104が空間に略正多角形(同図では正三角形)状に規則的に配置されているときは、当該正多角形の頂点をなす発信機104の組み合わせによって想定上位リスト14bを設定することができる。すなわち、
図5に示すように、正三角形状に規則的に配置されているときは、各三角形を構成する3つの頂点をなす発信機104を一組の組み合わせとし、各組み合わせから想定上位リスト14bを設定することができる。
【0035】
なお、
図6に示すように、空間に存在する壁や什器等の障害物106が存在する場合、障害物106による信号の到達への影響を考慮して想定上位リスト14bを設定することが好適である。例えば、障害物106の領域を電波等の信号が通過できない領域をみなし、測位地点P2から発信機104eまでの直線距離ではなく障害物106を迂回した場合の距離を考慮して測位地点P2から最も近くに存在するN個の発信機104を選択することが好適である。
図6においては、測位地点P2から直線的に最も近い3個の発信機104は発信機104e、発信機104f、発信機104iであるが、迂回距離を考慮すると測位地点P2から最も近い3個の発信機104は発信機104f、発信機104i、発信機104jとなる。したがって、測位地点P2に対して発信機104f、発信機104i、発信機104jの組み合わせを想定上位リスト14bにおける一組として登録する。
【0036】
また、位置推定装置102との間において障害物106を直線的に跨がないN個の発信機104の組み合わせを想定上位リスト14bに設定してもよい。また、障害物106の材料の特性等を考慮して三次元モデル等を用いて既知の電波伝搬シミュレーションを行うことによって、空間の各測位地点において想定される受信レベルにおいて高い方からN個の発信機104の組み合わせを求め、想定上位リスト14bを設定してもよい。
【0037】
予備リスト14cは、
図7に示すように、複数の発信機104のうち空間の各測位地点において想定される受信レベルの上位からM個(ただし、MはNより大きい)の組み合わせを示すデータベースである。
図7は、Mを4とした場合の例を示している。予備リスト14cは、想定上位リスト14bと同様の方法で設定することができる。
【0038】
なお、予備リスト14cは各測位地点において想定される受信レベルの上位からN個より多いM個の組み合わせを登録するものであるので、予備リスト14cは想定上位リスト14bよりも組み合わせの数は増加する。
【0039】
受信レベルテーブル14dは、
図8に示すように、各測定タイミングにおいて位置推定装置102で受信された各発信機104からの信号の受信レベルを登録するデータベースである。
図9のタイミングチャートに示すように、各発信機104からの信号を位置推定装置102において受信する度に、その受信レベルを受信レベルテーブル14dに順に記録する。これによって、受信レベルテーブル14dには、各発信機104からの信号の受信レベルが最近の測定タイミングから過去に亘って測定タイミング−t1,−t2・・・毎に受信レベルS1,S2・・・のように時系列に記録される。
【0040】
平均レベルテーブル14eは、
図10に示すように、測定タイミングにおける位置推定装置102での受信レベルの時間的な平均値を発信機104毎に平均レベルとして登録するデータベースである。例えば、
図9のタイミングチャートに示すように、平均化する時間(平均期間)を時間T1,T2,T3・・・に設定した場合、それぞれ現時刻から過去の測定タイミング−t1,−t2,−t3・・・に遡って受信レベルの平均値を平均レベルA1,A2・・・を算出する。例えば、平均レベルA1は、最近の測定タイミングt1における発信機104毎の信号の受信レベルS1となる。平均レベルA2は、各発信機104に対する測定タイミングt1での受信レベルS1と測定タイミングt2での受信レベルS2との平均値となる。平均レベルA3は、各発信機104に対する測定タイミングt1での受信レベルS1、測定タイミングt2での受信レベルS2、測定タイミングt3での受信レベルS3の平均値となる。以下、同様に平均レベルA4,A5・・・も算出することができる。
【0041】
平均レベルは、単に受信レベルの算術平均とすることができる。この場合、平均レベルA1=S1、平均レベルA2=(S1+S2)/2、平均レベルA3=(S1+S2+S3)/3・・・となる。また、平均レベルは、時間を考慮した平均値としてもよい。この場合、平均レベルA1={S1×t1+S2×(T1−t1)}/T1、平均レベルA2={S1×t1+S2×(t2−t1)+S3×(T2−t2)}/T2・・・となる。
【0042】
なお、本実施の形態では、離散的な測定タイミングt1,t2・・・で受信された信号の受信レベルを過去に遡ることによって測定タイミングt1,t2・・・毎の平均値を平均レベルとして算出するものとしたが、各発信機104からの信号を連続的に受信し、その受信レベルを連続的に平均した値を平均レベルとして平均レベルテーブル14eに登録するようにしてもよい。
【0043】
なお、本実施の形態では、第1着目時刻において測定された受信レベルからフェージング等の影響を除去するために、平均期間における受信レベルの単純な平均値(平均レベル)を、本発明における平滑値として用いている。しかし、これに限らず、第1着目時刻から第1着目時刻より過去の第2着目時刻までの所定期間内における受信レベルに基づいて、第1着目時刻におけるフェージング等の影響を除去した受信レベルを推定する方法であれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、平均期間内において、測定された受信レベルにおいて、上位と下位の一定数のデータを除いたものを用いて平均値を求めてもよい。これにより、極端な異常値の影響を排除することができる。また、平均せずにフェージング等の影響を除去した受信レベルを推定する方法を用いてもよい。例えば、測定された受信レベルに対して、フェージング等の影響を除去した受信レベルについての確率分布がわかっている場合、測定時刻の異なる複数の受信レベルに対してそれぞれ確率分布を求め、所定期間にわたってそれら確率分布の確率値を乗算していき、その結果、確率値が最も高い受信レベルを、本発明における平滑値とすることもできる。
【0044】
さらに、第1着目時刻から時間的に離れた他の時刻の受信レベルであるほど、その間における移動による影響を強く受けるため、この移動による影響を考慮して、フェージング等の影響を除去した受信レベルを推定してもよい。例えば、第1着目時刻から離れるほど小さい値となる係数を、各測定時刻における受信レベルに乗算してから平均値を求めてもよい。また、第1着目時刻から離れるほど分散が大きくなるよう他の時刻における確率分布を求め、当該確率分布に基づいて、前述のようにフェージング等の影響を除去した受信レベルを推定してもよい。
【0045】
入力部16は、利用者が位置推定装置102に対してコマンド等を入力するために用いられる。入力部16は、例えば、キーボード等の文字入力装置、マウス等のポインティング装置等とすることができる。出力部18は、利用者に対して位置推定装置102での処理結果を表示するために用いられる。出力部18は、ディスプレイ等の画像表示装置とすることができる。
【0046】
<位置推定方法>
以下、
図11のフローチャートを参照して、位置推定システム100における位置推定方法を説明する。以下の説明では、位置推定装置102によって測定された各発信機104からの信号の受信レベルの過去のデータの履歴が受信レベルテーブル14dに蓄積されているものとする。
【0047】
本実施の形態における位置推定方法では、受信レベルテーブル14dに基づいて第1着目時刻における位置推定装置102の位置を推定する処理について説明する。以下の説明では、現時刻を第1着目時刻に設定する。これによって、現時刻における位置推定装置102の位置を推定する処理となる。なお、第1着目時刻は現時刻に限定されるものではなく、過去の時刻を第1着目時刻に設定してもよい。例えば、受信レベルの測定タイミング−t2を第1着目時刻に設定することにより、過去の時刻−t2における位置推定装置102の位置を推定する処理を行うこともできる。
【0048】
ステップS10では、受信レベルテーブル14dとして記憶されている受信レベルを平均化する期間(平均期間)の初期値が設定される。平均期間は、平均演算手段12bにおいて各発信機104からの受信信号の受信レベルを平均化する第1着目時刻から第2着目時刻までの期間である。平均期間の初期値は、第1着目時刻よりも少なくとも1つの過去の測定タイミングを含むまでの時間とすることが好適である。
【0049】
ステップS12では、平均レベルの算出処理が行われる。位置推定装置102の平均演算手段12bは、設定されている平均期間に亘って発信機104毎に受信レベルを平均化した値を平均レベルとして算出して平均レベルテーブル14eに登録する。
【0050】
ステップS14では、ステップS12にて算出した平均レベルにおいて、その値が高い方から上位N個(Nは2以上)に該当する発信機104の組み合わせが選択される。
【0051】
ステップS16では、ステップS14にて選択された発信機104の組み合わせが想定上位リスト14bに登録された発信機104の組み合わせのいずれかに合致するか否かが判定される。位置推定装置102の妥当性判定手段12cは、ステップS14において選択された平均レベルにおいて高い方から上位N個に該当する発信機104の組み合わせに該当する組み合わせが想定上位リスト14bに含まれていればステップS18に処理を移行させ、そうでなければステップS20に処理を移行させる。
【0052】
ステップS18では、位置推定装置102の位置が推定される。位置推定装置102の位置演算手段12dは、ステップS12において算出された現在の平均期間、すなわち第1着目時刻(現時刻)から現在設定されている第2着目時刻までの各発信機104の平均レベルに基づいて位置推定装置102の位置が推定される。
【0053】
位置推定装置102の位置の推定には、従来技術である各発信機104からの平均レベルに基づいた位置推定技術を適用することができる。位置推定装置102において受信された各発信機104からの信号の平均レベルは、各発信機104と位置推定装置102との距離に反比例する。そこで、
図12に示すように、各発信機104からの信号の平均レベルに基づき、設置位置情報14aに登録された各発信機104の設置位置から位置推定装置102までの距離(
図12中、各発信機104を中心とした円弧として示す)を推定し、少なくとも3個以上の発信機104からの距離に基づいて位置推定装置102の位置Pを推定することができる。
【0054】
なお、位置推定装置102の位置の推定には、位置推定装置102において受信が可能なすべての発信機104の平均レベルを用いてもよいし、位置推定装置102において受信が可能な発信機104から選択された発信機104の平均レベルを用いてもよい。例えば、ステップS16(又は、後述するステップS26)において選択された発信機104の平均レベルを用いて位置推定装置102の位置を推定してもよい。
【0055】
位置推定装置102の位置が推定されると、出力部18に位置推定装置102の位置を示す情報を表示させる。また、位置推定装置102の位置のみならず、位置の推定に用いた平均レベルや平均期間を測位精度の指標として出力させてもよい。すなわち、位置の推定に用いた平均レベルが大きいほど、又は平均期間が短いほど測位精度が高いとする指標を出力させてもよい。あるいは、想定上位リスト14bに合致した第2着目時刻の平均レベルを用いて位置推定したのか(ステップS16−Yes)、予備リスト14cに合致した第2着目時刻の平均レベルを用いて位置推定したのか(ステップS26−Yes)によって、測位精度が異なるように表示してもよい。すなわち、予備リスト14cに合致した第2着目時刻の平均レベルを用いて位置推定した場合は、測位精度が低いことを示す出力を行ってもよい。
【0056】
ステップS20では、平均期間を増加する処理が行われる。受信レベルテーブル14dに記憶されている受信レベルを平均化する平均期間を現在値から増加させる。すなわち、現在の第2着目時刻をより過去の時刻に再設定し、第1着目時刻から第2着目時刻までの期間を伸ばすことによって平均期間を増加させる。
【0057】
ステップS22では、平均期間が制限時間Th1以上となったか否かが判定される。ステップS20において新たに設定された平均期間が制限時間Th1以上になっていればステップS24に処理を移行させ、制限時間Th1未満であればステップS12に処理を移行させてステップS12からの処理を繰り返す。
【0058】
ステップS24では、ステップ12にて算出した平均レベルにおいて高い方から上位M個(MはNより大きい)に該当する発信機104の組み合わせが選択される。
【0059】
ステップS26では、選択された発信機104の組み合わせが予備リスト14cに登録された発信機104の組み合わせのいずれかに合致するか否かが判定される。位置推定装置102の妥当性判定手段12cは、ステップS24において選択された平均レベルにおいて高い方から上位M個に該当する発信機104の組み合わせに該当する組み合わせが予備リスト14cに含まれていればステップS18に処理を移行させ、そうでなければステップS28に処理を移行させる。
【0060】
ステップS28では、平均期間を増加する処理が行われる。ここでは、ステップS20と同様に、受信レベルテーブル14dに記憶されている受信レベルを平均化する期間を現在値から増加させる。
【0061】
ステップS30では、平均期間が制限時間Th2以上となったか否かが判定される。ステップS28において新たに設定された平均期間が制限時間Th2以上になっていればステップS32に処理を移行させ、制限時間Th2未満であればステップS34に処理を移行させる。
【0062】
ステップS32では、位置推定装置102の測位が失敗したときの処理が行われる。本実施の形態では、測位失敗フラグが設定される。測位失敗フラグが設定された場合、位置推定装置102は、測位が失敗したことを示す情報を出力部18に表示させる等の処理を行うようにしてもよい。あるいは、直近に測位が成功したときの推定した位置情報を出力部18に表示させる処理を行ったり、予め設定している平均期間にて平均レベルを求めて当該平均レベルによる測位結果及び測位誤差が大きい旨を出力部18に表示させる処理を行ったりしてもよい。
【0063】
ステップS34では、平均レベルの算出処理が行われる。ステップS12と同様に、ステップS28において設定された新たな平均期間での各発信機104の平均レベルが算出される。その後、処理はステップS24に戻される。
【0064】
以上のように、第1着目時刻から過去に遡った第2着目時刻までの平均期間を増加させつつ、平均期間における各発信機104の受信信号の平均レベルにおいて高い方から上位N個に該当する発信機104の組み合わせが想定上位リスト14bの何れかの組み合わせに合致する第2着目時刻を求め、第1着目時刻から第2着目時刻までの平均期間における各発信機104の平均レベル及び設置位置情報14aに基づいて第1着目時刻における位置推定装置102の位置を推定することができる。
【0065】
これにより、平均レベルを求めるための平均期間を固定することなく、信号の受信状態に応じて平均期間を柔軟に設定でき、かつ、妥当な推定結果が得られる平均期間における平均レベルを求めることができるようになる。したがって、フェージング等の影響を抑制しつつ、位置精度及び時間追従性が高い位置推定システムを提供することができる。
【0066】
また、平均レベルの上位N個に該当する発信機104の組み合わせが想定上位リスト14bの何れかの組み合わせに合致しない場合、平均レベルの上位M個に該当する発信機104合わせが予備リスト14cの何れかの組み合わせに合致する第2着目時刻を求め、第1着目時刻から第2着目時刻までの各発信機104の平均レベル及び設置位置情報14aに基づいて第1着目時刻における位置推定装置102の位置を推定することができる。
【0067】
平均期間を大きくした場合であっても何らかの環境的な要因によって平均レベルが想定上位リストに合致しないことも考えられ、極端に時間追従性が低下することも想定される。しかし、想定上位リストよりも発信機104の組み合わせ数が多く、組み合わせの合致条件がより緩和された予備リストを用いることによって、環境的な要因によって極端に時間追従性が低下することを防ぐことができる。
【0068】
<実施例>
以下、
図8に示すように受信レベルテーブル14dに各発信機104からの受信レベルが記録されている場合について、本実施の形態における位置推定方法の実施例を示す。当該実施例では、現時刻における位置推定装置102の位置を推定する場合について説明する。
【0069】
ステップS10において、
図9に示すように、第1着目時刻である現時刻から1つ過去の測定タイミング−t1を含み、測定タイミング−t2を含まない時間T1が平均期間の初期値として設定される。この場合、測定タイミング−t1における受信レベルS1のみが平均化処理の対象となるので、
図10に示すように、各発信機104の平均レベルA1は想定上位リスト14bにおける各発信機104の受信レベルS1に一致する。
【0070】
Nが3に設定されている場合、ステップS14では、想定上位リスト14bの平均レベルA1において高い方から上位3個に該当する発信機104a,104c,104dの組み合わせが選択される。ステップS16では、選択された発信機104a,104c,104dの組み合わせが想定上位リスト14bに登録されているか否かが判定され、想定上位リスト14bにこれらの組み合わせは登録されていなければステップS20に処理が移行される。
【0071】
ステップS20では、
図9に示すように、第1着目時刻(現時刻)からさらに過去の測定タイミング−t2を含み、測定タイミング−t3を含まない時間T2が新たな平均期間として設定される。この時間T2が制限時間Th1未満であれば、処理はステップS12に戻されて、第1着目時刻(現時刻)から時間T2の間の各発信機104の受信レベルS1及びS2が平均化されて、
図10に示すように、各発信機104の平均レベルA2として登録される。
【0072】
ステップS14では、想定上位リスト14bの平均レベルA2において高い方から上位3個に該当する発信機104a,104b,104dの組み合わせが選択される。ステップS16では、選択された発信機104a,104b,104dの組み合わせが想定上位リスト14bに登録されているか否かが判定され、想定上位リスト14bにこれらの組み合わせが登録されていればステップS18に処理が移行される。ステップS18では、各発信機104の平均レベルA2に基づいて位置推定装置102の位置が推定される。
【0073】
なお、制限時間Th1に到達するまで平均期間を増加させても想定上位リスト14bに該当する発信機104の組み合わせが選択されなかった場合、組み合わせに含める発信機104の個数をN個からM個に増加させて、予備リスト14cと合致するか否かを判定し、合致した場合にはそのときの平均レベルを用いて位置推定装置102の位置を推定する。
【0074】
このように、位置推定装置102の位置を推定する時刻から過去に遡りつつ各発信機104からの受信信号の平均レベルを算出し、各発信機104の平均レベルのうち上位の組み合わせが想定上位リスト14b又は予備リスト14cと合致すればそのときの平均レベルは空間の各測位地点において想定される受信レベルを表わす妥当な値であると判定することができる。したがって、そのときの発信機104の平均レベルに基づいて位置推定装置102の位置を推定することにより、フェージングの影響を除外して正しい位置を推定することができる。一方、受信レベルを平均化する期間が長くなることを抑制することもでき、位置推定装置102が移動している場合であってもリアルタイムに位置を推定することが可能となる。すなわち、受信レベルを平均化する際の妥当な期間を設定して、時間的な追随性の低下を抑制しつつ、測位精度を向上させることができる。なお、平均レベルの高い方から上位N個(又はM個)選択された発信機104の組み合わせと、想定上位リスト14b(又は予備リスト14c)に登録されている発信機104の組み合わせとが合致する第2着目時刻は、複数時刻存在しうる。しかし、それら中で位置推定に利用する平均レベルの第2着目時刻は、第1着目時刻から最も近い時刻とすることが好適である。これにより、妥当な結果の得られる最短の平均期間にて位置推定することができ時間的な追随性の良い測位結果を得ることができる。
【0075】
<変形例>
上記実施の形態では、空間に複数の発信機104を配置し、位置推定装置102の位置を推定する態様を説明したが、
図13に示すように、空間に複数の受信
器108を配置し、空間に存在するある発信機104の位置を推定する態様とすることもできる。
【0076】
この場合、位置推定装置102は、受信部10の代わりに各受信器108と有線又は無線のネットワークにて通信する通信部(図示せず)を備え、該通信部を介して各受信
器108にて受信した発信機104からのビーコン信号の受信レベルを受信し、当該受信レベルを受信レベルテーブル14dとして記憶させるようにすればよい。この受信レベルテーブル14dを用いて
図11に示した各種処理を同様に実施することによって、位置推定装置102において発信機104の位置を推定する処理を行うことができる。
【0077】
なお、本変形例の場合、発信機104に位置推定装置102の機能を具備させた態様とすることもできる。すなわち、発信機104が前述の通信部を有し、当該通信部19を介して複数の受信器108とネットワークにて接続され、各受信
器108にて受信した発信機104からのビーコン信号の受信レベルを受信し、当該受信レベルを受信レベルテーブル14dとして記憶する。そして、当該受信レベルテーブル14dを用いて
図11に示した各種処理を同様に実施することによって、自ら(発信機104)の位置を推定することができる。