(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲で任意に変更して実施可能である。
【0013】
<実施例>
以下本発明について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明が適用される洗濯機の一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、洗濯機1は、洗濯物を洗濯する洗濯工程(洗浄工程やすすぎ工程)、脱水工程および乾燥工程の各工程を連続的(必要に応じて選択的)に実行して洗濯物を洗浄乾燥する、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機である。なお
図1の洗濯機は図示左側が洗濯機全面(前)であり、右側が洗濯機背面(後)を示す側面図を表している。また図示下方が、洗濯機の底部(床部)である。
【0015】
この図のように、洗濯機1は、図示しない洗濯パンなどの床部と接する脚部1bを有するベース1cに、筐体1aが支持されて、その前面に、洗濯物を出し入れするためのドア1dが備わっている。なお、洗濯機1はドア1dの側を正面とし、正面に対する背面側を後側として説明する。
【0016】
筐体1aの、例えば、正面上部には、利用者が洗濯機1を操作するための操作ボタンおよび利用者が洗濯機1の状態を確認するための表示部等を備える図示しない操作・表示パネルが設けられている。また、例えば背面上部には、水道などの給水源から水を取り込む図示しない取水口や給水弁、および取水口から取り込まれた水を外槽5まで導水する図示しない給水管等が設けられている。
【0017】
筐体1aの内部には外槽5が備えられている。外槽5は、上下方向に伸縮可能な複数の防振装置3(
図1には1つの防振装置3を図示)で下方を支持されるとともに、筐体1aの上部から、弾性支持体となる吊り下げバネ4a、4bによって弾性支持されている。
【0018】
また外槽5は、正面側(図示左側)が開口した有底円筒状を呈している。外槽5の内部には、洗濯物が投入される内槽として回転ドラム6が収容されている。回転ドラム6は、有底円筒状外槽5の底部に取り付けられる駆動モータとしての磁石モータ100とシャフト7を介して接続され、磁石モータ100の回転駆動によって外槽5内で回転する。そして洗濯機1は、回転ドラム6の回転によって、洗浄工程、すすぎ工程、脱水工程等を実行する。
【0019】
外槽5は、洗濯工程(洗浄工程、すすぎ工程)など、水を使用する工程のときには水が溜まるように構成され、排水工程では貯留していた水を排水するように構成される。このため外槽5の底部には排水弁8aを介して排水ホース8bが接続されている。そして、排水弁8aが開弁すると、外槽5に溜まっている水が排水ホース8bを流れて排水される。
【0020】
図2は、
図1の磁石モータ100を示す縦断面図である。
【0021】
磁石モータ100は、
図2に示すように、固定子10と、固定子ベース20と、回転子30と、軸受を有する軸受ボス部21と、軸受に回転自在に支持され、回転子30を固定支持する回転軸22を主たる構成要素として構成されている。この
図2によれば、各機器、部品に付与した記号番号が10、20、21の部分で磁石モータ100の固定側を構成しており、その他の22及び30番台の部分で磁石モータ100の回転側を構成している。
【0022】
洗濯機組み込み時は外槽5に磁石モータ100の状態で組み付けるので、その状態で
金属製のフランジ20をネジで外槽5に取付けられるように、回転子30にネジを締め
付けるための穴80(以下、回転子の穴)を設けている。
【0023】
また
図2において、固定子10と回転子30が対向する部分のうち上部のAは、永久磁石片32を含む断面を表示しており、下部のBは回転子鉄心31を含む断面を表示している。なお、
図2の磁石モータ100の回転側における他の構成要素31、32、34から38については、
図3、
図4を参照して詳細に後述する。
【0024】
図3は、
図2の磁石モータ100の周方向断面を示す図である。この図には固定子10と回転子30の対向する部分が拡大して示されている。周方向の対向部分を示す
図3において、まず固定子10の構成を詳細に説明する。固定子10は、固定子鉄心10aに形成された複数のスロット10b、および集中巻の電機子巻線(固定子コイル)11が施されて固定磁極12を形成するティース10cを備えて構成されている。
【0025】
これに対し、固定子10の内部に配置された回転子30は、多数の電磁鋼板を積層した回転子鉄心31を有し、回転子鉄心31は固定磁極12の内側面に対向し、固定磁極12に対して相対移動するように回転する。ここでは、磁石モータ100の固定磁極12は、42個、回転子極数は56極として、永久磁石片32には、磁石要素としてフェライトを使用し、薄型、軽量、高トルクの磁石モータ100を構成しているとする。
【0026】
回転子30は、
図3に示すように、多数の回転子鉄心31と永久磁石片32とを、樹脂材(合成樹脂層)33で一体的に固定して円環状の一次モールド体51を形成し、この一次モールド体51と鉄心支持基体(ロータヨーク)36とボス部(ロータボス)37を樹脂材(合成樹脂層)34で一体的に固定して二次モールド体Dを形成して構成されている。
【0027】
回転子鉄心31と永久磁石片32とは、回転軸中心から放射状に交互に配置され、円筒形状を形成するように並べられている。ここで、永久磁石片32は、無着磁状態の磁石要素が用いられ、回転子30の一次モールド体51を形成した後に、着磁される。すなわち、永久磁石片32の組み付け時には、永久磁石片32は磁化されておらず、これにより永久磁石片32の磁化方向の確認漏れや挿入間違いが生じることがなく、磁化方向を誤ったまま永久磁石片32が組み込まれてしまうおそれがない。
【0028】
なお回転子鉄心31の中央部には、空孔38aが設けられている。この空孔38aには、一次モールド用の樹脂材33が充填されて融着されるようになっている。
【0029】
隣り合う回転子鉄心31の間には、永久磁石片32の外径側(固定子側との対向面側)に空隙40が形成され、永久磁石片32の内径側に空隙41が形成されている。つまり、各永久磁石片32は、外径側および内径側の両側面が回転子鉄心31に接触しない構造となっている。これらの空隙40、41は、永久磁石片32の漏れ磁束を低減するように作用し、また着磁時には、永久磁石片32に磁束が効率的に取り込まれるように作用する。
【0030】
これらの空隙40、41に対しても、前記の空孔38aと同様に、一次モールド用の樹脂材33が充填されて融着されるようになっている。つまり、永久磁石片32は、回転方向両側から回転子鉄心31で挟持されるとともに、径方向においても、樹脂材33を介して回転子鉄心31、31に支持されている。
【0031】
回転子鉄心31の内径側となる内側面には、鍵穴形状の凹部39aが形成されている。この凹部39aには、二次モールド用の樹脂材34が充填されて融着されるようになっている。これにより回転子30の高速回転時においても、回転子鉄心31と永久磁石片32との連結強度を維持でき、遠心力に抗する強固な固定構造とすることができる。
【0032】
図4は回転子の正面と平面を示した図である。
図4の平面図において、断面線E−Eに沿って正面図(
図4)が記載されている。
図2でも示したように
図4の正面図のA部が永久磁石片32を含む断面を表示しており、正面図のB部は回転子鉄心31を含む断面を表示している。
【0033】
この図に示すように回転子30の内側には、
図4の正面図に示すように、補強部材としての鉄心支持基体36を介して、シャフト連結部材としてのボス部37が設けられている。鉄心支持基体36とボス部37とは、二次モールド用の樹脂材34で覆われて回転子30に一体的に支持されている。
【0034】
このボス部37は、回転子を回転軸(図示せず)に固定するナット(図示せず)を配置するために、ボス部37の表面がナットよりも若干大きい径にて露出するように樹脂成形がなされる軸方向樹脂開口部を有する。
【0035】
この時、樹脂の熱収縮速度に差が表れ、内部応力に部分的な差が生じやすいため本実施例では、波形リブ35をボス部37周辺の軸方向樹脂開口部に設けている。
【0036】
周囲温度の変化により、樹脂の成形後の収縮応力は放射状に径方向に作用するが従来構造の円形状リブでは内部応力が集中しやすく、内部応力による割れが発生しやすい構造となっていたが、これを波形リブ35に変更することで、放射状に働く収縮応力が波形形状部分で分散され応力集中しにくい構造となるので、割れが発生しにくい。
【0037】
なお波形リブ35の内径側周長をL、各々の山部82の頂点を結ぶ内接円の直径をφDとした時、LとφDの関係は L>φD×π となるようにしている。
【0038】
本実施例の回転子では樹脂ゲート84を12個配置している。波形リブ35部にはボス部37の中心方向に向かい、凸部82と凹部83が周方向に交互に配置され、各々の数は樹脂ゲート84の数と同一としている。
【0039】
さらに、樹脂ゲート84の位置と波形リブ35の凸部82の径方向距離が大きい場合には、凸部82の樹脂ゲート84側に、略三角形の肉盗み部81を設けることで、さらに熱収縮応力に対して応力分散がなされ、割れにくい構造にすることができる。
【0040】
この肉盗み部81は樹脂ゲート84の位置と凸部82間の径方向距離がある程度以上あることが設置条件となり、本実施例ではその距離条件を満たした6箇所にこの肉盗み部81を設けているが、他の樹脂ゲート84の位置についても距離条件を満たせば、この肉盗み部81を設置でき、さらに樹脂割れが発生しにくい回転子を提供できる。
【0041】
樹脂割れの内部応力が発生する要因としては、ボス部37周辺部から回転子の穴80へかけての径方向の樹脂成形において成形後の熱収縮により応力が発生するが、これが割れに至るのは、回転子の穴80側の樹脂は径方向においてロータヨーク側面部により径方向位置が固定されるのに対して、内径側のボス部37周辺の樹脂はかかる場所がなく自由であるため、累積する熱収縮時の応力ひずみはこの部分に現れ、よって割れが発生しやすくなる。
【0042】
なおこの樹脂割れ品の構造体としての強度影響は殆どなく、高速回転試験や軸方向の荷重試験などの試験結果においても、強度や性能に変化がないことが確認できている。
【0043】
図5は、
図4のB部について詳細に示したものであり、この
図5を用いて本実施例における鉄心支持基体36の位置や関連寸法に関し、以下の通り説明する。まず、二次モールド体を形成する樹脂材34のうちの一部(内周側壁面樹脂70)が、鉄心支持基体36の外径端を把持する把持部と、この把持部から軸方向の両側へ伸びて回転子鉄心31を含む一次モールド体と結合させる結合部とを有している。このような構成とすることで、鉄心支持基体36を、回転子鉄心31の軸方向の幅寸法内に位置させることができる。
【0044】
具体的には、回転子鉄心31の軸方向寸法をRAとし、回転子鉄心31の軸方向内側端部(軸方向寸法RAの左端部)から鉄心支持基体36の軸方向内側端部(厚さ寸法RTの左端部)までの寸法をRBとしたとき、RB÷RAが0.37以上0.52以下の範囲内になるように設定されている。このため、鉄心支持基体36が回転子鉄心31の厚さ(軸方向)寸法の略中央位置に配置され、回転子30の回転による遠心力変位量を抑制できる。なお、回転子鉄心31の軸方向外側端部から鉄心支持基体36の軸方向外側端部までの寸法についても、回転子鉄心31の軸方向寸法RAで割ったときの値は、0.37以上0.52以下の範囲内にある。
【0045】
さらに、回転子30の内周側壁面樹脂70は、鉄心支持基体36の軸方向厚み寸法RTの中心面を基準面として、冷却フィン71側と反冷却フィン側に略対称に形成されている。つまり、内周側壁面樹脂70の冷却フィン71側かつ反鉄心支持基体36側における内径寸法をφRC、鉄心支持基体36側における内径寸法をφRDとし、同じく反対側(反冷却フィン側)かつ反鉄心支持基体36側における内径寸法をφRE、鉄心支持基体36側における内径寸法をφRFとしたとき、各寸法の関係は、φRC≒φRE、φRD≒φRFとなるようにしている。
【0046】
また、結合部の内径側には、内周側壁面樹脂70が径方向中心に向かって一部せり出すようにして内周側壁面の凸部を形成している。この凸部は鉄心支持基体36と内周側壁面樹脂70とを連結して一体となった形状を持ち、凸部形状の内径方向端部は鉄心支持基体36の外径端に対して内径側に位置するような構造となっている。そのため、この凸部は鉄心支持基体36によって内周側壁面樹脂70を支える働きをし、回転子鉄心と磁石要素から構成される回転子外周部の屈曲強度を向上することが出来る。すなわち、加振力が集中する外径側の把持箇所の剛性を高めることで、振動・騒音の低減が可能となる。このとき、この凸部は鉄心支持基体36を中心面として略対称となるような構造であり、ロータ外径の軸方向変位を両側から抑制することができる。
【0047】
さらに、結合部の内径側には、軸方向の両端部に向けて外径側へ傾斜する傾斜面が形成されている。すなわち、内周側壁面樹脂70には、抜きテーパを設けているので、φRC>φRD、φRE>φRFとなる。このように、内周側壁面樹脂70および内周側壁面の凸部を略対称に形成することで、回転子30の径中心方向に向かう成形後の樹脂収縮応力が、冷却フィン71側と反冷却フィン側とで略同じになるため、回転子30の外周面が軸方向に傾きにくくなり、回転子30の外周面の円筒度精度が向上する。
【0048】
また、軸方向の外側へ伸びる冷却フィン71の外径側壁面74と、同じく軸方向の外側へ伸びる内周側壁面樹脂70の結合部の内径側壁面との間には、空間を形成しており、径方向に接続はされていない。したがって、冷却フィン71の樹脂熱収縮応力が、回転子30の外周面に作用することがなく、同様に回転子30の外周面の円筒度精度が向上する効果がある。
【0049】
なお、電機子巻線11を冷却する風を発生させる冷却フィン71は、
図5に示すように、軸方向の起点を鉄心支持基体36の外側端の位置とし、軸方向の終点を回転子鉄心31の外側端を超えてボス部37を覆う樹脂の外側端の位置とした。このように、冷却フィン71を軸方向に大きく伸ばす構成とすることで、回転子全体の軸方向厚さ寸法を変えなくとも、冷却フィン71の形状を大きくできるため、従来構造品と比べて冷却効果を向上することが可能となる。冷却効果が向上すると、電機子巻線11に通電する電流値も増やせるため、残留磁束密度の小さい磁石への置き換えもでき、安価な回転子が提供できる。
【0050】
図6に、従来構造と本実施例構造とにおける、所定回転数での遠心力による回転子30の変位量の強度解析結果を示す。この解析結果によれば、従来構造での最大変位量が0.078mmであるのに対し、本実施例の構造では従来構造に対し2割程度の0.016mmまで最大変位量が抑制されていることが分かる。前述までの効果として、回転子30の外周面の変位量が抑制できるので、回転子30の外形寸法を従来構造品よりも大径化でき、これにより回転子30と固定子10の間で形成される空隙部72の寸法を小さくすることが可能となる。空隙部72の寸法が小さくなると、回転子30の永久磁石片32と電機子巻線11の距離が短くなり、電機子巻線11に到達する永久磁石片32からの磁束量が増加するため、誘起電圧定数が大きくなる。この誘起電圧定数が大きくなると、回転子30に構成される永久磁石片32を選定する際に、残留磁束密度の低いレアアースレスの汎用材料の磁石を選択することが可能となる。
【0051】
つまりドラム式洗濯機など、高負荷トルクが要求される駆動用モータに関し、従来構造では、高トルク化に必要な誘起電圧定数仕様を満たすために、フェライト磁石は高性能材料(高残留磁束密度)を使用せざるを得なかったが、本実施例によれば比較的安価な汎用材料の磁性材グレードを選択できる。ここで、フェライト磁石について補足説明すると、一般に高性能材料ではランタンなどのレアアースを用いて高磁束密度化をしており、価格的に市場変動の影響を受けやすいリスクがあったが、本実施例によればレアアースを用いない汎用材料の磁性材グレードを選択できるためコスト的に安価となる。
【0052】
上記効果を更に
図7で説明する。
図7は固定子10の内径寸法と回転子30の外径寸法の差で生じる空隙部72の寸法と誘起電圧定数の関係を表したものであり、従来構造品と、実施例構造品の各サンプルをとり、各構造品の近似直線を記したものである。X軸には固定子10の内径寸法と回転子30の外径寸法の差で生じる空隙部72の寸法(mm)をとり、Y軸の誘起電圧定数は、従来構造品の空隙部72の寸法が0.66(mm)時の誘起電圧定数を1とした場合の変化割合を(p.u)で、Y軸に示す。
【0053】
本実施例の回転子30の遠心力に対する最大変位量は、先述したとおり従来構造品に対し、2割程度に抑制できることから、回転子30の外径寸法を大きくし、空隙部72の寸法を0.05(mm)小さくしている。このため、従来構造品では永久磁石片32の磁石材料に、ランタンなどのレアアースを含有した高性能材料を使用していたが、残留磁束密度が低下するレアアースフリーの汎用材料を使用しても、従来構造品と同じ水準まで誘起電圧定数が得られる。
【0054】
永久磁石片32の高性能材料には、上記したランタンなどのレアアースのほかにも、コバルトなどの高価なレアメタルも含有しているが、これらも汎用材料には含有しないため、高価格材料の市場変動影響を受けず、またコスト的に安価となる。
【0055】
以上、回転子30の外径寸法を大きくし、永久磁石片32の磁石材料をレアアースフリーとした効果を述べてきたが、仮に永久磁石片32の磁石材料を変更できない場合を想定しても、回転子30の外径寸法大きくし、空隙部72の寸法を小さくした場合には、先述したとおり誘起電圧定数が大きくなるから、この場合は固定子10側の電機子巻線11のターン数を減らすなどの対応ができ、巻線使用量が低減できる。また製造にかかる時間もターン数の減少で低減できるので、こちらについても、前述同様に性能を落とすことなく安価なモータを提供できる。このことから磁石モータの構成材料である磁石材料や巻線材の銅、鉄心の電磁鋼板等々の市場動向を鑑みて、選択肢に幅ができる。
【0056】
また
図8に示す通り樹脂材34においては、従来品に対して使用量を低減すべく肉盗み部73を多用しているが、これにより、樹脂材34の樹脂使用量が低減できるので安価となり、また重量も低下するので軽量化にも寄与する。さらに樹脂領域が減少すると、対象部位の減少から残留応力による樹脂割れの懸念も低減できるので、品質的にも向上したモータの回転子30を提供できる。
【0057】
また、この樹脂材34で二次モールド体Dを形成するときには、鉄心支持基体36の径方向へ伸びる部分の軸方向の外側に、冷却フィン71もあわせて形成される。本実施例では、
図5に示すように、ボス部37の外径側端の軸方向内側端(
図5の左側端)よりも、さらに軸方向内側(
図5の左側)に、鉄心支持基体36を位置させ、冷却フィン71を設置するためのスペースを確保している。そして、冷却フィン71の軸方向の幅寸法を、ボス部37の外径側端の軸方向寸法と比べて大きくした。すると、従来構造に対して、冷却フィン71の形状が大きくでき、結果として冷却効果が向上する。冷却効果が向上すると、電機子巻線11の温度上昇が抑制できるため、電流入力値を増やすことができ、モータの高トルク・高出力化が可能となる。
【0058】
さらに、この冷却フィン71は、点検時などにおいて、サービスマンが回転子30を取り外し交換する際の取手部としても機能しており、本実施例の構成によれば、ペンチ等の工具でつかみやすい大きな形状となるので作業性がよい。
【0059】
本実施例における冷却フィン71の効果は、従来構造品の回転子、つまり鉄心支持基体36をボス部37と同様に軸方向の外側端に配置した場合と比べて、冷却フィン71の冷却効果が約2倍になることが、ドラム式洗濯乾燥機の実機組み込時における、電機子巻線の温度上昇試験において確認されている。この効果の要因は、従来構造品と異なり、
図5に示すように冷却フィン71を、軸方向の起点が鉄心支持基体36側となるようにし、軸方向の終点がボス部37(樹脂で覆われた部分を含む)側となるようにし、冷却フィン71の形状を大きくした点にあると考えられる。なお、
図5の構造に限らず、冷却フィン71の軸方向の終点(外側端)が、回転子鉄心31の軸方向の外側端よりも、外側に位置していれば、冷却フィン71をある程度大きくでき、十分な冷却効果を達成できる。
【0060】
冷却効果が向上すると、電機子巻線の温度が下がるため、電機子巻線に流す電流を増やすことができる。つまりモータ定数が同一であるならば、電流を増やして出力トルクを増やすことができる。一方トルクが充分足りている場合には、電機子巻線のターン数を減らすことができ、コストを低減できる。
【0061】
またターン数を減らす場合には、固定子コアのスロット部に占める巻線割合が低下するため電機子巻線の線径を太くすることも可能となり、この場合は巻線抵抗が減るので、導体損失が低減し、消費電力が低減する。