特許第6349311号(P6349311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイルストーン サイエンティフィック インコーポレイテッドの特許一覧

特許6349311圧力検出を伴う薬物の注入、ならびに、流体で満たされた体内空間の識別および流体で満たされた体内空間への注入のための不連続的な流れ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349311
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】圧力検出を伴う薬物の注入、ならびに、流体で満たされた体内空間の識別および流体で満たされた体内空間への注入のための不連続的な流れ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20180618BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20180618BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20180618BHJP
【FI】
   A61M5/142 530
   A61M5/168 500
   A61M5/145 508
【請求項の数】16
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-520239(P2015-520239)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-521896(P2015-521896A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013045142
(87)【国際公開番号】WO2014007949
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】13/540,880
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507198451
【氏名又は名称】マイルストーン サイエンティフィック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Milestone Scientific,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】ホックマン,マーク,エヌ.
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504316(JP,A)
【文献】 特表2010−506681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体で満たされた体内空間の周囲の組織よりも低い圧力で流体を受け取ることができる前記流体で満たされた体内空間へと流体を投与するための装置であって、
前記体内空間へと注入される流体を収容している本体を有すると共に前記本体の一端において前記本体の他端から前記流体を送り出すように可動であるプランジャを有しているシリンジと、前記本体の前記他端に恒久的に接続された配管と、前記体内空間を探るために前記配管へと接続されると共に対象者へと挿入可能且つ前記体内空間の前記周囲の組織を貫いて移動可能である先端を有している針と、前記針の前記先端における瞬間の圧力に対応する信号を生成するためのインライン圧力変換器とを含んでいる消耗品アセンブリと、
前記シリンジに機械的に接続され且つ前記インライン圧力変換器に電気的に接続されると共に、コンピュータを有するコントローラと、前記体内空間への前記流体の注入に適合するように選択された第一の選択された圧力(P1)及び第二の選択された圧力(P2)を保存するメモリと、前記コンピュータへと接続されて当該コンピュータによって制御されるモータと、前記モータへと接続され且つ前記対象者への流体の注入および前記対象者からの流体の吸引のために前記針の前記先端において流体を注入および吸引すべく前記本体において前記プランジャを出し入れするように前記シリンジに機械的に接続されたシリンジアーマチュアとを含む駆動ユニットと、
前記消耗品アセンブリの一部として添えられて当該消耗品アセンブリと前記駆動ユニットとの間の電気的及び機械的な橋渡しとして設計されて接続されるコネクタと
を備えており、
前記第二の選択された圧力(P2)は前記第一の選択された圧力(P1)を第一の選択された量だけ下回る値であって前記第一の選択された圧力(P1)とは異なる値に設定され、
前記コンピュータが、前記第一の選択された圧力(P1)が前記インライン圧力変換器によって検出されるまでは前記対象者へと不連続な流体の流れをもたらすように前記プランジャを動かすように前記モータを制御し、前記第一の選択された圧力(P1)が前記インライン圧力変換器によって検出されるときに前記針の前記先端における前記瞬間の圧力が前記第二の選択された圧力へと低下するまで前記モータを停止させて前記対象者への追加の流体の流れを停止させ、前記針の前記先端における前記瞬間の圧力が前記第二の選択された圧力へと低下するときに前記モータの動作を再開して前記対象者への流体の流れを再開するようにプログラムされていることにより、前記針が前記対象者の前記体内空間の前記周囲の組織を移動するときに、前記瞬間の圧力が前記第一の選択された圧力(P1)を上回ると前記組織への流体の流れが停止し、前記瞬間の圧力が前記第二の選択された圧力へと低下するときに前記組織への流体の流れが再開し前記針の前記先端が前記体内空間に位置することを示して前記体内空間への流体の注入を再開し、
さらに、前記駆動ユニットへと取り付けられている前記シリンジ,前記配管,前記針,及び前記インライン圧力変換器が適切であり且つ過去に使用されていないことを前記コネクタが確認した場合に前記駆動ユニットが動作し、一方で、前記駆動ユニットへと取り付けられている前記シリンジ,前記配管,前記針,及び前記インライン圧力変換器が不適切である又は過去に使用されていることを前記コネクタが検出した場合に前記駆動ユニットがさらなる動作を阻止すると共に警告を表示する装置。
【請求項2】
前記メモリが、前記第一の選択された圧力(P1)よりも下であるが前記第二の選択された圧力(P2)よりも上である第三の選択された圧力(P3)をさらに保存し、
前記コンピュータが、前記瞬間の圧力が前記第二の選択された圧力(P2)に達した後に前記第三の選択された圧力(P3)へと上昇するときに前記針の前記先端への流体の流れを再び停止させるために前記プランジャの移動を停止すべく前記モータの動作を再び停止させるようにプログラムされている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、少なくとも前記第一の選択された圧力(P1)を含む少なくとも一つのパラメータを受け取るための入力部を有している請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラが、前記第一,前記第二,および前記第三の選択された圧力(P1,P2,P3)のうちの少なくとも一つを含む複数のパラメータを受け取るための入力部を有している請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第一の選択された圧力(P1)が、約25mm/Hg〜約300mm/Hgの間である請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第二の選択された圧力(P2)が、約25mm/Hg〜約100mm/Hgの間である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第三の選択された圧力(P3)が前記体内空間に応じて約80〜約180mm/Hgの間であり、前記第一の選択された圧力(P1)が前記体内空間に応じて約80〜約300mm/Hgの間であり、前記第二の選択された圧力(P2)が前記体内空間に応じて約20〜約100mm/Hgの間である請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つのパラメータが、注入配管の長さ,注入配管の内径,注入流体の粘度,注入流体の組成,および注入流体の温度で構成されるグループから選択される請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記インライン圧力変換器が、前記シリンジの前記他端と前記配管との間に直列且つ恒久的に接続されている請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記駆動ユニットが、前記シリンジの前記本体を自身の軸方向に関して固定された位置に着脱可能に保持するためのシリンジ空洞と前記プランジャが自由に移動できるプランジャ凹部とを有するハウジングを備え、
前記シリンジアーマチュアが前記プランジャ凹部に沿って移動可能なステージを有し、
前記プランジャがサムパッドを有し、
前記ステージが、当該ステージが前記サムパッドに係合するように移動させられたときに前記サムパッドに係合して当該ステージを前記サムパッドへと軸方向に接続すると共に旋回可能に取り付けられ且つばねによって付勢された少なくとも一つのフックを有し、これにより、前記ステージの両方向への移動によって前記プランジャが両方向に移動し、
前記シリンジアーマチュアが、前記ステージが移動させられて前記サムパッドに係合した旨を検出するセンサを備え、
前記コンピュータが、前記ステージが前記サムパッドに係合したときに前記センサの支配の下で前記ステージの移動を停止させるようにプログラムされている請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記針の前記先端が、硬膜外の組織空間,関節内の空間,眼球の眼液,身体の脈管,および体液で主として構成された組織空間のうちの一つへの挿入に適合させられている請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記針がカテーテル針である請求項11に記載の装置。
【請求項13】
記流体が薬物を含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラの制御下の視覚的な信号をさらに備え、当該視覚的な信号が前記流体の流れの開始または停止をその都度示す請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラが前記コントローラの制御下の聴覚的信号発生器をさらに備え、当該聴覚的信号発生器が前記流体の流れの開始または停止のたびに聴覚による知らせを生成する請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記消耗品アセンブリが、前記配管へと恒久的に接続され且つ前記針へと接続される約10〜20cmの長さを有する堅固な細長いハンドルを含んでいる請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くには薬物の送出(或いは、送達,供給)の改善に関し、特に身体の流体(体液を含む)で満たされた空間への皮下注射/吸引のためのシステムに関する。より具体的には、本発明は、所定の圧力測定値にもとづいて流体の流れを停止させ、圧力が所定の圧力測定値をひとたび下回って低下したならば流体の流れを再開させることによって、身体の流体で満たされた組織空間を識別するための方法および装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
硬膜外の組織空間の局所麻酔ブロックは、身体の下肢に対して有効な一時的(一過性とも言い得る)麻酔を施すものであることが知られている。硬膜外の組織空間の局所麻酔ブロックは、これらに限られるわけではないものの出産,人工股関節置換手術,および腰よりも下方の麻酔が必要とされる種々の他の外科処置など、身体に関する膨大な数の侵襲性の処置に対して有効に使用され得る。硬膜外の組織空間の局所麻酔ブロックは、また、例えば「背痛」,脊椎の疾患,および脊柱の副神経の圧迫などの慢性疼痛および急性疼痛の治療にも有効に使用され得る。効果的な局所麻酔を達成してCNS(即ち、中枢神経系)への神経伝達をブロックする(即ち、遮断する)ため、硬膜「外腔」として知られる身体部位内において、脊柱の特定の高さに位置する脊髄に極めて近接させて適切な量の局所麻酔薬溶液を注入(投与とも言い得る)しなければならない。
【0003】
硬膜外腔は、脊柱管のうちで、硬膜およびその内容物によって占められていない部位である。硬膜外腔は、硬膜と脊柱管の内面を覆う骨膜との間に位置する。硬膜外腔は、大後頭孔から仙骨裂孔まで延びている。硬膜外被内の前方神経根および後方神経根は、硬膜外腔を通過し、椎間体および椎間円板内において結合する。硬膜外腔は、側方において、椎弓根の骨膜および椎間孔と接する。後方においては、層の前面の骨膜,関節突起およびそれらの接続靭帯,脊柱の根の骨膜,並びに黄色靭帯によって満たされた層間の空間と接する。硬膜外腔は、静脈叢、および傍脊椎腔の脂肪と連続する脂肪組織を含んでいる。
【0004】
硬膜外の流体で満たされた空間(背中側の硬膜外腔)は、脊椎および脊柱の断面に関して数平方ミリメートルの大きさの、不規則形状を有する限定された身体領域である。この流体で満たされた空間は、きわめて狭く、また、黄色靭帯が近くに隣接している脊柱の硬膜に密に関係している。このため、針の斜面または先端が黄色靭帯から出るとき、この流体で満たされた空間を明確に特定(言い換えると、識別)しなければならない。なぜならば、針が進入を続けると、硬膜を刺すことになるからである。硬膜外の流体で満たされた空間の位置を特定するための標準的な技術は、「抵抗消失」技術を使用する。この技術は、硬膜外用のTouhly針(16〜18ゲージ)に接続されたプラスチックまたはガラス製の低摩擦シリンジを利用する。
【0005】
局所麻酔ブロックは、患者を座位または側臥位の姿勢にして行われ得る。棘突起の間の空間を開き、椎間腔の特定を容易にするために、患者に対して体を丸めた姿勢をとるように促すべきである。硬膜外注射は、腰椎および胸椎に沿った任意の高さに位置できるため、胸部手術から下肢処置までの範囲の処置に使用することができる。
【0006】
臨床医は、椎骨の間の脊柱の該当する高さにおいて脊柱を触診する。局所麻酔薬は、局所的に麻酔されるべき領域の組織を表す表面組織内に注入される。次に、真皮がTouhly針を使用して穿刺され、臨床医は注射器のプランジャに圧力を加えながら針を前進させる。プランジャへの圧力により、針から連続的に流出する流体が組織内に自然に注入される。
【0007】
針がわずかに頭部方向に向けられた状態で、硬膜外針の挿入が続けられ、棘上靭帯を通過して前進する。針が黄色靭帯内を進行するときに主観的に抵抗の増加を感じるまで、2〜3cmの深さにおいて遭遇する棘間靭帯へと針が前進させられる。臨床医による抵抗の主観的な「感覚」がプランジャにおける明確な「背圧」につながるまで、針がさらに前進させられる。臨床医は、黄色靭帯の身体構造の位置を特定するために、遭遇する「背圧」または抵抗を主観的に識別しなければならない。針の先端が、黄色靭帯を通過した後、硬膜外の流体で満たされた空間に進入する。
【0008】
この技術について知られた欠点は、針の先端が棘間靭帯に位置するときに、組織があまり高密度でないため、流体が組織内へと失われることである。
【0009】
真皮の貫通から黄色靭帯の特定(識別)までのTouhly針の移動は、患者の体格によって深さが大きく異なる可能性がある。主観的な性質というこの技術の限界ゆえに、太り過ぎの患者に対して使用するには非常に問題があり、病的な肥満の患者にこの技法を用いることは適切でない場合がある。硬膜外の組織空間の解剖学的構造の大きさが小さいことによる困難ゆえに、年齢がさらなる複雑な因子となるように見受けられる。結果として、小児については、全身麻酔という一層危険な処置が行われることが多い。
【0010】
適切でないことに、硬膜外処置が適切に実行されない場合、流体で満たされた硬膜外腔の位置を特定しようと試みるときに、追加の流体が無計画に組織内に注入される。これらの組織へと放出される追加の流体が、流体で満たされた空間の特定(識別)をさらに複雑にする可能性がある。
【0011】
さらに、硬膜外腔を突き止めた後に注射器の除去あるいは患者若しくは医師の手の意図せぬ動きによってTouhly針が移動すると、気付かぬうちに針が硬膜外の組織空間の外部へと移動し、あるいは最悪の場合には、脊髄の硬膜へと前進して、患者にとって危険な長期的結果をもたらしかねないいわゆる「ウェットタップ(wet−tap)」を生じさせる可能性がある。たとえ最初に硬膜外腔を適切に突き止めたとしても、麻酔薬溶液の注入時に針がさらに前進すると、麻酔薬溶液のボーラスが脊髄に注入され、神経の一時的または恒久的な損傷につながりかねない。
【0012】
患者への所定の医薬の送出または投与に使用される注入ポンプ装置およびシステムが、医療分野において周知である。これらの装置を硬膜外注入の管理に適合させるいくつかの試みがなされている。
【0013】
圧力変換器(圧力変換器や圧変換器とも呼ばれる)を利用して注射器内の圧力の測定を試みる先行技術文献が知られている(Rondeletらの米国特許第5,295,967号を参照)。これらのシステムの大きな欠点は、システムの各所の抵抗の変化を補償するように流体の流量(流速)および/または圧力を調節することができない点にある。
【0014】
Lechnerの米国特許第7,922,689号が、注射の処置の最中に薬物送達システムを手動で調節することを操作者に要求するアラーム(すなわち、聴覚的または視覚的な警報信号)を利用する、身体の空洞の位置を特定するための装置を開示している。この装置は、「抵抗消失」式の手動注射器の技術と同様に、硬膜外の組織を識別するために流体の連続的な流れを必要とする。さらに、この装置は、硬膜外の組織を識別するために圧力の低下に関係する相対的な聴覚的変化に依存している。この装置は、操作者が応答する必要がある事象の主観的な解釈を必要とする。さらに、この装置は、連続的な注入流体の送出を提供し、そのようにするための充分な圧力を自動シリンジポンプ装置によって生成することを試みている。しかしながら、この装置は、使用時に流体の送出の注入圧力を自動的に制御するための手段、あるいは、使用時に薬物送達を吸引するための手段を提供していない。したがって、米国特許第7,922,689号の装置は、流体圧力が過剰な場合でも注入流量(流速)を維持し、結果として痛み(疼痛)および/または組織の損傷につながる可能性がある。
【0015】
安全且つ有効な硬膜外注入を実行するための基準として圧力を使用する考え方は、医学の文献に多く示されている。硬膜外腔を識別するために圧力が使用されており、また、硬膜外腔内の圧力の重要性が、何名かの研究者によって様々な実験設備を利用して長年にわたって説明されている。Usubiagaおよび協働者らが、硬膜外腔および組織へと注入を行う際の圧力と硬膜外腔との関係を検討している(Anesth.Analg.,46:440−446,1967)。HusenmeyerおよびWhiteが、妊娠中の患者における腰椎の硬膜外注入の技術および注入時の圧力の関係について述べている(Br.J.Anaesth.,52:55−59,1980)。また、PaulおよびWildsmith(Br.J.Anaesth.,62:368−372,1989)ならびにHirabayashiら(Br.J.Anaesth.,1990 65:508−513)など、他の研究者も、圧力と硬膜外注入の管理における抵抗の影響との間の関係を評価している。Lakshmi Vasおよび協働者らが、これらの原理を小児科の医薬の領域へと拡張している(Pediatric.Anesth.11:575−583,2001)。Lechnerおよび協働者らが、圧力フィードバックにもとづく手動操作の硬膜外注入のためのシステムを説明している(Anesthesia,57:768−772,2002;Anesth.Analg.96:1183−1187,2002;Euro.J.Anaestheol.21:694−699,2004)。
【0016】
本明細書に記載される発明は、硬膜外腔の識別に必要な流体を制限する(言い換えると、抑制する)ことによって、硬膜外注入投与の信頼性および安全性を向上させる。この発明は、さらに、所定の圧力限界およびこの圧力限界を下回る流体の流れの所定の再開を提供することによって、これまでの技術を改良する。さらに、システムが流体の流れの再開によって硬膜外領域の流体で満たされた空間への針の進入を検出するときに、聴覚的および/または視覚的な信号情報が提供される。
【0017】
本出願の発明者によって共同で発明されてここでの言及によって本明細書に援用されるHochmanらの米国特許第6,200,289号が、カートリッジホルダによって支持されたカートリッジから治療液を流出させる駆動機構と、チューブと、注射針を備えるハンドルとを有する自動注入装置(自動注射装置とも言い得る)を開示している。駆動機構は、電動モータと、モータ出力に対して配置されてモータによって駆動機構に加えられる力を測定するセンサとに接続されている。次いで、この力が、注入プロセスにおいて生じる力または内圧などの内部特性を明らかにするために使用される。次いで、マイクロプロセッサまたはコントローラが、前記特性を制御パラメータとして使用し、対応する駆動機構への指令を生成する。特に好適な実施形態においては、細長いチューブを介して流体が装置から排出される際の出口圧力を算出するために前記特性が使用される。次いで、患者が痛み(疼痛)および/または組織の損傷を被ることがないように保証すべく出口圧力が所定のレベルに維持されるような態様・仕方で電気モータが動作させられる。
【0018】
Ohmiらの米国特許出願公開第2011/0120566号は、半導体製造,化学工業,および医療産業の施設における非生物学的な流体の供給方法という非類似の分野からの文献である。しかしながら、この文献は、圧力式の流量制御装置を使用した流体流量の不連続な切り換えを教示しているという理由で引用される。身体空間の探査は想定されておらず、医療の装置および方法の設計の当業者がこの非類似の技術を手引きとして注意することはなかったと考えられる。
【0019】
Maguireらの米国特許出願公開第2011/0301500号が、同時リアルタイムの診断分析を提供するために三次元近赤外撮像およびロボット駆動の針を使用する自動脈管穿刺装置を開示している。この文献は、静脈穿刺が種々の検査を実行する目的で静脈血のサンプルを取得するプロセスであることを教示している。サンプルは熟練者によって静脈または皮膚の表面に近い器官から手作業で取得されるが、これらのプロセスにつきものの問題が存在する。この文献は、この問題に対処するために赤外撮像およびロボット駆動の針を使用している、しかしながら、静脈または器官の存在を知らせる助けとして流体圧力の値を使用していない。圧力への言及が存在するものの、それは、患者の負傷を避けるべく機械的に駆動される針の移動に抵抗する機械的な圧力への言及であり、針内の流体圧力ではない。
【0020】
さらに、シリンジと流体を注入するための針に接続された配管との間の直列な(言い換えると、直列的に組み込まれたインラインの)流体圧センサを開示しており、ここでの言及によって本明細書に援用されるHochmanの米国特許出願公開第2006/0122555号も参照されたい。
【0021】
位置特定および流体の流れの制御に(変換器よりもむしろ)機械的な付勢力を使用する旨を開示している他の特許は、検出装置および方法についての米国特許第8,197,443号および第8,137,312号である。
【0022】
さらに、ハンドピースアセンブリを使用した関節への流体の注入方法についての米国特許第8,142,414号、関節注入システムについての米国特許第8,079,976号、および、出口圧力の検出を用いた神経軸および末梢神経組織の識別のための薬物注入装置についての米国特許出願公開第2006/0122555号も参照されたい。
【0023】
さらに、Lechnerのより近年のさらなる研究が、医療用の位置特定装置に設けられたセンサ手段を試験するためのユニット,アセンブリ,装置,および方法についてのLechnerの米国特許出願公開第2012/0101410号、並びに、体内の構造の位置を特定するための装置についての米国特許出願公開第2012/0022407号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第5,295,967号
【特許文献2】米国特許第7,922,689号
【特許文献3】米国特許第6,200,289号
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0120566号
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/0301500号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0122555号
【特許文献7】米国特許第8,197,443号
【特許文献8】米国特許第8,137,312号
【特許文献9】米国特許第8,142,414号
【特許文献10】米国特許第8,079,976号
【特許文献11】米国特許出願公開第2012/0101410号
【特許文献12】米国特許出願公開第2012/0022407号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Usubiaga et al.,Anesth.Analg.,46:440−446,1967
【非特許文献2】Husenmeyer and White.,Br.J.Anaesth.,52:55−59,1980
【非特許文献3】Paul and Wildsmith.,Br.J.Anaesth.,62:368−372,1989
【非特許文献4】Hirabayashi et al.,Br.J.Anaesth.,1990 65:508−513
【非特許文献5】Lakshmi Vas et al.,Pediatric.Anesth.11:575−583,2001
【非特許文献6】Lechner et al.,Anesthesia,57:768−772,2002
【非特許文献7】Lechner et al.,Anesth.Analg.96:1183−1187,2002
【非特許文献8】Lechner et al.,Euro.J.Anaestheol.21:694−699,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
身体のうちの脊柱の近くの硬膜外腔,関節における関節内空間,および流体で満たされた脈管などの周囲の組織よりも低い圧力を有している流体で満たされた身体空間への針の挿入を正確に案内することができると共に、硬膜外腔への流体の注入と硬膜外腔からの流体の吸引との両方を制御することができ、さらに、無菌の場および無菌の状態の維持の必要性にも対処する、装置および方法について、ニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の目的は、所望の流体で満たされた組織位置における正確且つ再現性のある患者への注入投与を医師にとって可能にする方法ならびに設備または装置を提供することにある。この装置および方法は、注入に関係する痛み(疼痛)および組織の損傷の程度を限定すると共に誤った部位への注入に起因する余病・合併症の危険を限定し、また、特に重要なことには、対象ではない組織へと投与される注入流体の量を大幅に減少させる。この装置は、身体のうちの周囲の器官,結合組織,若しくは他の組織よりも大幅に低い、流体で満たされた組織空間の組織密度若しくは抵抗並びに関連する圧力における固有の相違を利用する。
【0028】
身体の結合組織が、0.07mL/秒の速度で流体が注入されるときに200mm/Hgを上回る圧力を生じさせることが知られている。各組織は、所与の組織の種類において顕在化させることができる圧力であって測定可能な圧力として表される固有の圧力密度特性を有する。組織の密度または抵抗は、注入時の圧力抵抗を検出することができるコンピュータ制御の薬物送達システムから注入される流体の圧力を使用して測定される。身体のうちの硬膜外組織,関節の関節内空間,若しくは脈管などの流体で満たされた空間が、注入の最中に測定したときに200mm/Hgを充分に下回る圧力を有することも、実証されている。実際、流体で満たされた空間が、この流体で満たされた組織部位への注入時にゼロmm/Hgに近い極めて低い流体流動に対する圧力抵抗を有することが、明らかになっている。
【0029】
流体で満たされた組織空間の意図される目標部位への注入についての既知の理解にもとづき、流体で満たされた組織空間へと針が進入して圧力が組織内で前記所定の圧力を下回って低下できるようになるまでは流体流動の発生を許さない加圧流体注入システムを使用することにより、意図される部位を識別することが可能である。装置は、周囲の組織への連続的な薬物の流れを自動的に防止する所定の最大圧力値を使用し、圧力がさらなる所定の値をひとたび下回って低下したときにのみ薬物の流れを再開させることで、注入の最中の流体流動の再開にもとづいて流体で満たされた空間を識別することができる。
【0030】
装置は、注入の際に流体の流れを停止させるための一つまたは二つの異なる所定の圧力(例えば、第一および第三の圧力)および流体の流れを再開させるためのもう一つの(例えば、第二の)所定の圧力を利用することができる。また、流体流動を停止させるために第一の所定の圧力を使用し、流体で満たされた空間の識別がひとたび達成されたならば流体流動を再開するように第二の所定の圧力を選択することもできる。どちらも、針を配置する際の流体の連続的な流れの必要をなくすことによって流体が意図していない組織へと配置されることを効果的に制限し、患者の組織内でひとたび流体流動の再開が生じると流体で満たされた空間を識別することができる。また、上述の第一の所定の圧力限界よりも低くなるように決定された圧力限界において流体流動を停止させることができる第三の所定の圧力を含むことも可能である。これは、流体の注入について、患者への注入の最中に万が一にも針が目標部位の外に移動してしまう場合に、より一層の高水準の安全性をもたらす。
【0031】
したがって、本発明の注入装置は、流体リザーバ(流体貯留装置)と、注入流体と、ポンプ機構と、リザーバに流体接触する(即ち、連通する)と共に患者の身体へと挿入されるように構成された端部と、注入流体の抵抗測定値を決定するように配置されたセンサと、抵抗測定値をセンサから受信して圧力を算出すると共に注入流体の流量(流速)を調節することができるコントローラとを含む。センサは、ポンプ機構と端部との間に配置されたインラインセンサ(即ち、組み込み・埋め込みセンサ)であってよいが、好ましくはポンプ機構若しくはシリンジと注入流体の圧力を測定する配管セットの始まりとの間に位置する。代案として、センサはメカニカルアーム内にあってもよい。
【0032】
変換器などのセンサは、モータによって生成されて流体貯留装置内のプランジャによって加えられる力または圧力を検出するために使用される。本発明の一態様においては、変換器が、カープルアダプタ(carpule adapter)と装置のハウジングの残りの部分との間の力を測定する。本発明の別の態様においては、変換器が装置の構成要素の寸法の変化を検出するサイズ検出装置を含み、前記変化がシステム内の薬物の力若しくは圧力ならびに圧力を表す。例えば、配管の大きさの変化を、この力または圧力の指標として使用することができる。別の実施形態では、管の内部の圧力が、外部から測定され、流体圧力を割り出すための手段として使用される。
【0033】
コントローラは、例えばあらかじめ設定される最大圧力,あらかじめ設定される再開圧力,およびあらかじめ設定される流量など、ユーザによって入力されるパラメータを受け取ることができると考えられる。コントローラは、さらに、流量を実質的にゼロに減少させるなど、流量を調節することができる。流量は二値的な態様・仕方で制御されてもよいし(すなわち、測定される圧力があらかじめ設定される最大圧力未満である場合にあらかじめ設定された流量とし、また、測定される流体圧力があらかじめ設定される最大圧力未満である場合にオフにする)、あるいは、流量が圧力の関数であってもよい(すなわち、測定される圧力があらかじめ設定される最大圧力をより大きく下回るほど、流量が多くなる)。後者の場合には、流量を、随意により最大許容流量にあらかじめ設定することができる。同様に、測定される流体圧力に対する流量に関する関数も、ユーザが定義することができる。有用な実施形態においては、あらかじめ設定される最大圧力が、約50mm/Hg〜約300mm/Hgの間、または、約100mm/Hg〜約250mm/Hgの間である。
【0034】
圧力抵抗の測定値は、随意により視覚的および聴覚的な信号に連続的に変換される。次いで、測定値が医師へと提示され、注入が正しい組織へと供給・送達されているか否かを医師が判断または確認することができる。さらに、臨床の事象の後における見直しおよび文書化のために測定値を記録することもできる。過度の圧力および/または流量がこのプロセスにおいて使用されることがないことを保証するように圧力の上限および流量の制御をあらかじめ定めることができる。
【0035】
したがって、本発明は、流体リザーバと注入流体とポンプ機構と患者へと挿入されるように構成された端部とを用意すること、流体をリザーバから患者へと注入すること、端部と前記患者の組織との間の境界における流体の圧力を算出すること、および、圧力があらかじめ設定される最大圧力を超えないと共に次いで圧力があらかじめ設定される圧力をひとたび下回って低下すると流量が回復するように注入流体の流量を制御することにより、患者への注入を管理する方法を提供する。
【0036】
一実施形態においては、本発明の装置および方法が、硬膜外注入を管理するために使用される。第二の実施形態においては、本発明の装置および方法が、関節内の流体で満たされた空間への注入を管理するために使用される。どちらの実施形態においても、注入流体は例えば麻酔薬を含み、端部が、硬膜外または関節内の流体で満たされた組織空間へと挿入されるように構成される。処置のうちの針配置段階において、流体で満たされた組織空間を識別するために、薬物を含む流体または薬物を含まない流体(試験流体/検査流体)のいずれかを使用することが考えられる。薬物を含まない好適な流体として、例えば、生理食塩水,リン酸緩衝生理食塩水,人工脳脊髄液,リンゲル,5%デキストロース(ぶどう糖),またはフィルタ処理された空気が挙げられる。圧力の違いによる方法を使用して流体で満たされた組織空間がひとたび識別されると、注入流体が薬物を含む流体に変更される(すなわち、複数の流体リザーバが必要である)。針の配置段階において薬物を含まない流体を使用することにより、対象ではない組織への薬物の供給が最小限または皆無になる。
【0037】
麻酔薬の硬膜外注入を必要とする処置は、時間がかかる場合が多く、また、初期(負荷)投与に加えて1回以上のその後の(維持)投与を必要とする。典型的には、複数回の投与を行うために留置カテーテルが使用される。別の実施形態において、本発明は、複数回の注入を必要とする硬膜外注入を管理するための方法であって、第二の投与(および、その後の投与)の管理の際に端部と前記患者の組織との間の境界における流体の圧力を算出して当該圧力があらかじめ設定される最大圧力を超えないように前記第二の注入の際に注入流体の流量を制御する方法を提供する。同様に、この技術は、その時点において追加の注入が想定または所望されるか否かにかかわらず、留置カテーテルの維持(すなわち、カテーテルが硬膜外の組織空間などの対象の組織に留まっているか否かを判断すること)に使用することができる。
【0038】
さらに、この注入装置を、流体で満たされた空間の識別が確定した後に、流体で満たされた組織空間の吸引に使用できると考えられる。吸引は、組織または細胞外液(すなわち、脳脊髄液,関節内の流体,血液など)のサンプルを取り出すために使用することができ、あるいは、注射針の正しい配置を判断するために使用することができる。吸引処置の際には、圧力の消失によって特徴付けられる「進入圧力(entry pressure)」が、流体で満たされた組織空間内の圧力と同じ態様・仕方で測定される。同様に、偽性圧力消失も、吸引処置を使用して識別することができる。なぜならば、内部組織構造(すなわち、嚢胞)の内容物が急速に排出され、進入圧力が閾値進入圧力を超えて上昇するからである。
【0039】
後述されるモータ,モータに組み合わせられた継ぎ手,および電子コントローラは、保護のために少なくとも部分的に装置のハウジング内に配置される。
【0040】
流体貯留装置が満たされると共に準備のプロセスが開始され、当該準備のプロセスにおいて臨床医が装てん済みのシリンジを器具の上部のシリンジ受けに配置する。臨床医は、投薬される流体の流量およびピーク圧力を変更することができる。次いで、臨床医は、タッチ画面による起動および/または足踏みペダルなどの空気式の制御部を操作し、流体流動を開始させる。あるいは、指令が、臨床医によって電子的命令若しくは音声による命令によって開始されてもよい。投薬時に、変換器からの出力が現在の流体圧力を算出するために使用される。この圧力が特定の閾値に近づくと、対象ではない組織への薬物の過度の注入を防止するために流体の流量が自動的に停止され、これによって患者が過度の流体流動によって必要以上の痛み(疼痛)または組織の損傷を被ることがないように保証される。吸引,パージ,または空気による若しくは空気によらない媒体の充てんなど、いくつかの随意による特徴も提供される。
【0041】
処置の全体にわたり、現在の流量,注入若しくは吸引された全容積,組織圧力,進入圧力,および他のパラメータなどの進行中のプロセスについての現在の情報が、視覚的および聴覚的の両方にて、臨床医に常に提供される。スレーブマイクロプロセッサ(slave microprocessor)が、マスターマイクロプロセッサ(master microprocessor)から指令を受信し、モータを動作させるために必要な駆動信号を生成する。
【0042】
別の実施形態においては、一つの装置に複数のシリンジを配置できるように二つの別個の駆動部を有することが可能である。本明細書に提示されるそのような実施形態においては、第一の駆動部が第一の薬物を供給・送達するための独立したシリンジ,配管セット,および針と共に使用され、第二の駆動部が第二の薬物のための独立したシリンジ,圧力変換器,配管セット,および針を含む。各々の駆動部において、上述の特徴が可能である。さらに、二つの駆動部のうちの一方が、圧力検出の能力を備えずに、もっぱら特定の流量での薬物の供給・送達に使用されてもよい。この駆動部を、所定の圧力限界という特徴が流体で満たされた組織空間の識別に使用される第二の駆動部の使用に先立って局所麻酔薬を供給・送達するために使用することができる。
【0043】
患者の対象ではない結合組織領域への薬物注入を制限する効用について説明したが、身体のうちの硬膜外の若しくは関節内のまたは他の流体で満たされた空間などの流体で満たされた組織空間の識別の試みに先立って表面(浅側)軟組織の麻酔を生み出す目的で局所麻酔薬などの治療薬物を注入する能力を制限することなく、これらの組織へと適切な局所麻酔薬および他の薬物を供給することがときに必要である。したがって、二つの駆動部を備える器具が、これらの目的を達成する。
【0044】
本発明を特徴付ける新規性の種々の特徴が、本明細書に添えられて本明細書の一部を形成する特許請求の範囲において詳しく指摘される。本発明,本発明の動作の利点,および本発明の使用によって達成される具体的な目的のより良い理解のために、本発明の好ましい実施形態を例示する添付の図面および説明の事項が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図面において、
【0046】
図1】本発明の認証された消耗品アセンブリの図である。
【0047】
図1A】本発明の独自仕様のコネクタの一実施形態の図である。
【0048】
図1B】本発明の独自仕様のコネクタの第二の実施形態の図である。
【0049】
図2】使用のために消耗品アセンブリが配置された状態のコンピュータ制御の薬物供給ユニットのハウジングの上面図である。
【0050】
図3】消耗品アセンブリを備えていない状態のユニットの、図2と同様の図である。
【0051】
図4】本発明のコンピュータ制御の薬物送達システムの別の実施形態の概略表現図である。
【0052】
図5A】本発明のプランジャステージおよびシリンジプランジャの上端部の拡大図である。
【0053】
図5B】シリンジのサムパッドまたはサムフランジに接近するステージの、図5Aと同様の拡大図である。
【0054】
図5C】シリンジのサムパッドに係合するステージのフック若しくは受け具・留め具の、図5Aと同様の拡大図である。
【0055】
図5D】方向を反転させているステージの、図5Aと同様の拡大図であり、サムパッドへと引き戻されるフックを示している。
【0056】
図6】駆動ユニットおよびその横パネルの一部分の図である。
【0057】
図7】組み立てられて接続された使い捨ての構成部品、ならびに駆動ユニットのCPUと情報をやり取りする駆動ユニットの側面へと挿入されたIDコネクタを示している。
【0058】
図8A】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
図8B】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
図8C】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
図8D】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
図8E】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
図8F】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
図8G】本発明の動作の種々の段階における駆動ユニットのタッチ画面の種々のスクリーンショットである。
【0059】
図9】硬膜外注入の対象者の脊柱の領域の概略の断面図であり、針の移動によって貫かれる組織を本発明による圧力の設定と関連付けて示している。
【0060】
図10】配管および針を備えると共に、配管と針との間に接続されてあらゆる種類の注入の制御および巧妙さを向上させて特に下歯槽への注入の改善に有用である細長いハンドルをさらに備える消耗品アセンブリの各部品の部分分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図面を参照すると、類似の参照番号が同じまたは類似の構成要素を指して使用されており、図1が、互いに恒久的に接続されると共に使い捨て用に無菌パッケージにて供給される種々の部品で構成され、図2および3に示されるコンピュータ制御の薬物供給器具または駆動ユニット50(これらは、図4に概略的に示されるシステムを一緒に形成する)と併せて使用される消耗品アセンブリ10を示している。
【0062】
本発明は、身体のうちの硬膜外腔,関節内空間,眼球,嚢胞,脈管,および流体で満たされた他の空間などのような流体で満たされた組織の位置を割り出して薬物を供給・送達するためのシステムに関する。これらに限られるわけではないものの局所麻酔薬溶液,副腎皮質ステロイド,ヒドロキシアパタイト,関節補充薬,硬化剤,および他の薬物などのような薬物の注入は、典型的には治療の目的で流体で満たされた組織空間へと注入される。重要なことに、さまざまな要因ゆえに、注入された流体が異なる速度で組織の各所に分散し、流体圧力を変化させる。本発明の発明者は、この圧力(または、組織の抵抗圧力に関連した内圧)が、いくつかの種類の組織を表し、それらの組織の識別に使用できることを見出した。
【0063】
本発明は、対象ではない組織への薬物の配置を制限しつつ、医師による流体で満たされた組織空間の正確な識別を可能にする方法および装置を提供する。本発明は、診断および治療の処置のために実行される。本発明の装置は、組織内に針またはカテーテル(「注入器」)を配置した後の針またはカテーテルからの流体の圧力を利用して、配置の精度を正確に識別すると共に注入時または吸引時の(正しい)配置を監視する。具体的には、本発明の装置は、所定の第一の圧力を利用して対象ではない(第一の)組織部位における薬物の流れを防止すると共に、圧力が所定の同じ圧力をひとたび下回って低下すると流体の流れを再開させる。さらなる実施形態においては、装置が、薬物の流れを防止するための第一の所定の第一の圧力と、流れの再開を可能にするために圧力が進入しなければならない第二の異なる所定の圧力とを利用することができる。所定の圧力を使用することで、挿入,注入,および維持という処置の各段階の全体を通じて針/カテーテルを正確に配置することが可能である。第一に、圧力が、針/カテーテルの挿入時に身体構造を識別すると共に注入器の管腔・穴が流体で満たされた組織空間内に配置されたことを臨床医が正しく判断できるようにするために使用される。したがって、薬物の不連続な流体流動が、意図される対象組織を識別するために使用される。
【0064】
所定の圧力は、さらに、指定の値において薬物の流れを防止するために、また、その後に所定の圧力値が前記値を下回ったときに流体流動の再開を可能にするために使用される。これを、処置のうちの維持段階において、注入器が硬膜外の組織空間などの意図される組織(予定の組織,目的の組織とも言い得る)内に留まっていることを保証するために使用することができる。最初の硬膜外注入(すなわち、負荷投与)と所望の麻酔レベルを維持するためのその後の定期的な維持投与とを必要とする医療処置においては、特定の危険が存在する。典型的には、留置カテーテルが、硬膜外腔へと挿入され、処置の全体を通じて注入装置に取り付けられたままとされる。患者が、負荷投与と1回以上の維持投与との間に身体を動かす場合が多い。そのような動きにより、正しく配置されたカテーテルが硬膜外の組織空間から対象ではない組織へと移動してしまう可能性がある。本発明の装置は、すべての周期的な投与(すなわち、負荷投与およびその後のすべての維持投与)の際に圧力を監視する。したがって、患者にとって治療効果のない組織であって意図されていない組織(予定されていない組織,目的とされていない組織とも言い得る)へと薬物が注入されることがない。さらに、維持段階において万が一にもカテーテルが移動した場合に、臨床医に警告がもたらされる。また、本発明の装置は、不連続な流体流動および所定の圧力を利用して、対象ではない組織への薬物の流れを制限しつつ、留置カテーテルの正確な配置を正確に識別する。
【0065】
このように、先行技術に対する本発明の装置の利点として、(i)これらに限られるわけではないものの硬膜外,関節内,眼球,嚢胞,及び血管若しくは他の脈管などの流体で満たされた組織空間を、無視できる量の薬物含有溶液を利用して識別するための手段、(ii)第一の所定の圧力限界から薬物の流れを制限することによって対象ではない組織を識別するための手段、および(iv)流体で満たされた空間への薬物の流れを監視することによってカテーテル法の全期間(すなわち、薬物注入の維持段階)において針/カテーテルの配置を監視するための手段が挙げられる。
【0066】
本明細書の原理によれば、圧力が、注入時の圧力抵抗を検出することができるコンピュータ制御の薬物送達システムから注射/注入される流体の圧力/力を使用して測定される。圧力抵抗の測定値は視覚的および聴覚的な信号へと連続的に変換される一方で、薬物の流体流動は不連続である。コンピュータ制御の薬物送達システムが、生成された圧力にもとづいて連続的に調節され、不連続な流体流動を生じさせる。したがって、流量は可変であると共にシステムの圧力に依存する。圧力を、システムの一次制御変数であると考えることができる。
【0067】
したがって、流量が、所望の流体流動を維持するために所定の範囲内に調節される二次変数となる。或る特定の実施形態においては、流体の流れが、所定の閾値(最大圧力)を超える圧力において停止される。二次変数としての流量を、低い圧力の条件下で流体が過度に急速に注入されることがないように制限することができる。圧力と流体の流量との間の関係は二値的であっても連続的であってもよいと考えられる。二値的な関係は、所定の最大値を下回るあらゆる圧力においてただ一つの所定の流量で流体を供給するように注入装置が構成されている場合に存在する。すなわち、流体流動は、圧力が閾値を超えているか否かにもとづいてオンまたはオフのいずれかである。代案として、圧力の関数として流量を調節することができる。この場合には、流量が、最大圧力に近づくにつれて減らされ、圧力が低下するにつれて増やされる。随意により、流量を第一の所定の最大圧力へと制限することができ、第二の別の所定の圧力において流量を元に戻すことができる。
【0068】
さらに、注入装置は、随意により、例えば瞬間の流量,圧力,および注入量を含む関連の注入データを記録および/または表示するための手段を含むことができると考えられる。すべての測定値および情報を「リアルタイム」で臨床医に示すことができ、臨床医は、意図される位置・部位(予定の位置・部位,目的の位置・部位とも言い得る)および/または正しい組織に注入が供給・送達されているか否かを判断することができると共に、それに応じて注入方法を調整することができる。さらに、臨床の事象の後における再検討および文書化のために測定値を記録することができる。
【0069】
また、別個のシリンジプランジャによって駆動される複数のシリンジを使用することで、複数の薬物の注入を可能にでき、上述のいずれの目的においても所定の圧力への到達を必要としない第二のシリンジ駆動部を使用することができると考えられる。第二の駆動部を、種々の組織への局所麻酔薬や他の治療薬などの薬物の注入を可能にするように特定の流量にもとづいてプログラムすることができる。
【0070】
さらに別の実施形態においては、装置が、本明細書においてすでに説明したような流体圧力にもとづいた調節がどちらも可能である二つの別個のシリンジ駆動部を含むことができる。
【0071】
認証された消耗品アセンブリ
本発明は、シリンジと圧力変換器と配管セットと針とで構成される消耗品アセンブリまたは使い捨てアセンブリであって、コンピュータ制御の薬物送達システムと共に使用されてこの使い捨てアセンブリの一部として添えられる種々の独特な独自仕様の接続アダプタのうちの一つ(本明細書の開示において、「IDコネクタ」と呼ばれ、あるいは「IDコネクタ」と略称される)を備える消耗品アセンブリまたは使い捨てアセンブリの新規な設計を含む。図1が、本発明の使い捨てアセンブリの一実施形態を示している。
【0072】
図2,3,および4に示される本発明のコンピュータ制御の薬物送達システムは、より一層正確な注入をもたらすことによって、多くの効用を患者に提供する。さらに、本発明は、優れた結果を生み出すことによって、臨床上の多くの効用を医師に提供する。本発明を具現化する器具が、硬膜外,関節内,および他の皮下注入などのさまざまな用途において、より一層正確且つより一層安全な薬物の投与をもたらすことが示されている。認証された消耗品部品だけが使用されるように保証することが、そのような器具の適切な機能にとってきわめて重要である。不適当な部品の選択は、
1.正確でない投与量、
2.正確でない流量および圧力の測定値、
3.エラーにつながる不適合な部品の使用、
4.認証されていない不良な設計の代用部品の使用
などのいくつかの望ましくない結果につながる可能性がある。
【0073】
適切な使い捨て部品が本発明のコンピュータ制御の薬物送達システムにおいて使用されるように保証するために、図1の独自仕様のコネクタ12が備えられる。コネクタ12は、第一および第二の結合部品14および16を有しており、唯一無二の(言い換えると、独自の,特有の)接続および/または電気回路の接続ならびに/あるいは必要とされるデータ情報の伝達を使用に先立ってもたらす能力を有している。コネクタ12はシリンジ18と圧力変換器20と配管セット22と針24とで構成される使い捨ての器具であるアセンブリ10の各部品の間の制御要素として機能し、アセンブリはジャック30によって図2のコンピュータ制御の薬物供給器具50へと接続される。
【0074】
現時点において、コンピュータ制御の薬物供給器具において使用される使い捨て部品の選択について検証をもたらすための構造的な手段は存在しない。
【0075】
本発明の独自仕様のアダプタ接続12は、認証され、正しい構成であり、且つ正しいサイズであると共に殺菌済みである消耗品アセンブリ10だけが器具において使用されることを保証する。これは、以下の構造的な手段にて達成される。
【0076】
接続12は、直列の(言い換えると、直列的に組み込まれたインラインの)電子圧力変換器20を、変換器20から第一の結合部品14(当該第一の結合部品14は、第二の結合部品16へと差し込まれ、第二のケーブル23および器具50へと差し込まれるジャック30によって接続される)までの外部のデータケーブル21を使用して、コンピュータ制御の薬物供給器具50へと電子的に接続する。圧力変換器20は、薬物供給管における瞬間の実際の流体圧力が検出されると共に器具(当該器具は、針24の先または先端における、したがって先端が位置する患者の体内の場所における実際の瞬間の流体圧力の厳密な近似をもたらす)によって使用されるように、直列に、すなわちシリンジ18のシリンダの端部19と配管22の一端25との間に直接的に、例えば後述のように恒久的に接着されたルアー接続部(ルアーコネクタとも呼ばれる)によって接続される。
【0077】
電子圧力変換器またはセンサ20は、圧力データを、そのような圧力測定値を収集するためにユニット50へと直接接続される電子データケーブルおよびコネクタ21−12−23を介して供給する。電子圧力変換器20とコンピュータ制御の薬物供給器具50との間に介在する独自仕様の接続12を組み入れることによって、検証および/または認証のチェックポイント(すなわち、確認箇所)を確立させることができる。独自仕様の接続12を、接続された構成部品の識別および検証に使用することができる。使い捨ての構成部品10を、すべての構成要素が一体に接着された、すなわち、シリンジ18と配管セット22とが両者の間に恒久的に接着された電子圧力センサまたは変換器20と共に恒久的に接続されて第一の結合部品14までがすべて互いに恒久的に接着された、認証済みの1回だけしか使用できない接着済みの使い捨てのセットとして供給することができる。この消耗品アセンブリ10を一単位として使用して廃棄することができる。この消耗品アセンブリ10は、認証済みの消耗品アセンブリ10だけが使用されるように且つ1回だけ使用されるように保証するために、独自仕様の第一の結合部品14にのみ接続可能である第二の結合部品16によって駆動ユニット50へとさらに接続される。
【0078】
電子圧力変換器20は、例えばMeritrans(登録商標) Pressure Transducer item MER212など、Merit Medical Systems,Inc.から入手することができる種々の圧電式圧力センサのいずれかであってよい。
【0079】
本明細書に開示の独自仕様の接続12は、「IDコネクタ」と呼ばれる。IDコネクタ12は、二つの構成要素で構成され、一つがIDコネクタプラグ14であり、一つがカスタムIDコネクタレセプタクル16である。「プラグ」と「レセプタクル」との役割を逆にすることができ、また、各々がプラグとレセプタクルとの両方の特徴を有することさえ可能であるため、それらは本明細書において第一および第二の結合部品14および16とも称される。
【0080】
IDコネクタシステム12は、器具50と認証済みの一体に接着された使い捨ての器具または消耗品アセンブリ10との間の電子的および物理的な橋渡しとして設計される。IDコネクタプラグ14は、図1Aに示されるように、互いに差し込まれて恒久的に接着される二つの対向する機能性の片側14aおよび14bを有している。一方の片側14aは、使い捨ての構成要素の既存の電子圧力変換器(すなわち、Meritrans Pressure Transducer item MER212)からのプラグまたはソケットなど、標準的な構成部品の接続を許容する従来からのプラグまたはソケットである。IDコネクタ14の他方の片側14bは、カスタムIDコネクタプラグ側であり、片側14aへと差し込まれる従来からの一端と、独自仕様の他端とを有している。上述のように、片側14aおよび14bは互いに接着される。カスタムIDコネクタプラグ側14bは、自身の独自仕様の結合面すなわち特注の凹凸一式14cによって、第二の構成要素またはIDコネクタレセプタクル16へと、その独自仕様の結合面すなわち相補的な凹凸一式16aを介してつながる。この14cの16aへの接続は、交換用の使い捨て器具10を使用することができるように着脱可能である。部品16は、図1および2に示されるように電子ケーブル23およびジャック30を介して駆動ユニット50へと接続される。IDコネクタシステムまたはコネクタ12を、独自の「標識」をシステムへともたらすことによって動作前の検証をもたらす独自仕様の接続のための、図1Bに示したとおりの追加の接続ソケット/ピンの組み合わせを備えるように種々の独自の構成にて設計する。
【0081】
図1に示されるように、本発明の別の認証の仕組みは、部品14および16が組み合わせられるときにケーブル23によって駆動ユニット50へと電気的にも接続されると共にユニット50内の認証プログラムまたは回路によって読み取られるコンピュータチップ,SIM,または他の一意的に符号化された回路14dを含む。符号化された回路14dが、真正である場合にはユニット50は正しく動作し、真正でない場合には、ユニットが無効化されると共に「認証されていないシリンジが検出されました」などの警告がユニットの画面に示され、また、これらに限られるわけではないが言葉の発声,警報,若しくは他の警告信号、あるいはこれらの任意の組み合わせなどの警告音が随意により発せられる。符号化された回路14dは1回限りの使用の機能についても符号化され、それにより、ユニット50内の認証プログラムまたは回路が、特定の使い捨て器具10が過去に使用されたかどうかを検出し、過去に使用されていた場合にはやはりユニット50を無効にして警告を示す。符号化された回路14dを、ユニット50内の回路またはプログラムによってやはり読み取られる使い捨てアセンブリ10の物理的(例えば、配管,針,およびシリンジのゲージ)および化学的な属性(例えば、シリンジの内容物)によって符号化することも可能である。その場合、符号化された回路が、ユニット50内へと手動でプログラムされたあらゆる設定を、ユニットが適切且つ安全に機能することを保証するために使い捨てアセンブリの属性を考慮に入れて設定し、上書きし、あるいは修正する。
【0082】
符号化された回路14dを、図1Aおよび1Bの機械的な独自仕様の特徴と共に使用しても、単独で使用してもよいが、両方を使用することで安全性が向上する。いずれにせよ、物理的,電気的,またはデジタルであっても、正しい接続が認識できない場合には器具50の動作が阻止される。
【0083】
このように、本発明は、器具について選択された消耗品一式が正しいかどうかを器具が検証し、確認し、情報を読み出すように機能するために必要な回路を完成させるための、IDコネクタシステム12の新規なピン接続を意図する。IDコネクタシステムにおける電子接続が、コネクタ要素12の回路14d内に保存された記憶を介してデジタル情報を提供する。さらに、IDコネクタの新規なピン接続は、独自のキー/ロック結合部分の接続をもたらすことにより、器具50と共に使用される構成部品の正当性の確認をもたらすこともできる。
【0084】
これらの上述の安全確保の手段の任意の一つ以上を、単独または任意の組み合わせにて利用することができる。独自のIDコネクタシステム12は本発明の電子圧力変換器20と駆動ユニット50との間に配置されているが、IDコネクタシステムを、シリンジのみまたは配管セットのみなどこの器具と一緒に使用される他の構成部品に結合させ、接着し、あるいは接続できると考えられる。好ましい実施形態においてはIDコネクタがこれら二つの接続の間に納められるが、このIDコネクタシステムを種々のさまざまな結合部分の位置に接続すると共に独自の使い捨て器具の検証および識別に関して意図された機能を保持することができると考えられる。
【0085】
取り付け具12は、以下のように機能する。
IDコネクタシステムが、種々のさまざまな様式にて橋渡し役の接合部に手作業で取り付けられ、
好ましい実施形態においては、IDコネクタシステムが、シリンジと圧力変換器と配管セットと針とを含む消耗品一式10の全体の一部である。
【0086】
好ましい実施形態においては、医師が個々の目的に合った好ましい針を選択できるように、針の恒久的な取り付けは随意であってよい。構成要素は、個別に組み立てられ、あるいは、好ましい実施形態のように相互に一体に接着され(すなわち、結合させられ)、適切な使い捨て部品が選択されたことを保証する単一の使い捨て器具として供給される。
【0087】
好ましい実施形態は、結合されたIDコネクタ使い捨て器具である。さまざまな構成を、器具50と併せて使用することができると考えられる。それらは、さまざまなサイズの構成要素、すなわち針,シリンジ,配管セット,および圧力変換器で構成される。IDコネクタシステムの一体化は、認証された器具を保証すると共に、使用されるべき使い捨て器具を確認および識別するために器具50とやり取りをする能力も有する。これは、システムにとって重要な検証を意味する。それは、適切な構成部品および/または薬物の使用を保証する。薬物であらかじめ満たされたシリンジ18をIDコネクタシステム12および消耗品一式10と共に供給することができ、あるいは、現場で所望の薬物,生理食塩水,または他の流体を充てんできるようにシリンジを空の状態で供給することができる。あらかじめ満たされたシリンジ18において、IDコネクタ12は(自身のチップ14dに)、シリンジ内に収容された薬物に関する情報であって、器具における使用のために提示される情報を含むことができる。
【0088】
先行技術に対する改善として、適切な選択の薬物供給部品がコンピュータ制御の薬物送達システムにおいて利用されることを保証するためのIDコネクタが挙げられる。さらに、IDコネクタシステムは、使い捨ての注入システムの多数の欠点を解消する。重要なことには、この新規な構成要素の使用を保証しつつ、器具の準備の際の作業の流れの実行には変更がない。IDコネクタシステムは、追加の工程を加えることなく、全体としてのシステムなどにおいて使用される構成部品の真正さの検証を提供する。IDコネクタシステムの使用は、さらに、検証を保証するときのコストの節約にもつながる。
【0089】
図10が、本発明の別の実施形態の消耗品アセンブリの部品、すなわち、インライン圧力センサ(図10には示されていない)へと恒久的に取り付けられる端部25を有する配管22を示している。この実施形態は、配管22の他端に取り付けられると共に、選択された身体の部位への特定の種類の注入に合わせて選択された針24へと着脱可能に接続される雄のルアーロックを有する、堅固なプラスチック製の無菌のハンドル27を備えている。この実施形態の細長いハンドル27は、特に回転の制御ゆえに、針の配置における手作業での制御および巧妙さを改善する。これは、IA注入(すなわち、下歯槽注入)において特に重要であるものの、硬膜外および他の種類の注入も同様に改善する。
【0090】
細長いハンドル27は、長さが約122cm(約48インチ)の配管22において、好適には約15cm(約6インチ)の長さであり、あるいは約10〜20cmという好ましい範囲の長さである。
【0091】
圧力制御式の注入装置
上述のように、図2,3,および4の駆動ユニット50によって例示される注入装置は、電子圧力変換器20を使用して圧力を連続的に監視することによって、すなわち、好ましくは注入の最中の流体の圧力を連続的に監視することによって、不連続な流体流動を使用する。医師によって設定されると共にユニット50内の電子機器のマイクロプロセッサまたはコンピュータ82のメモリ80に保存される所定の圧力にもとづいて流体流動が停止され、また、所定の圧力の流体流動にもとづいて流体流動が再開される。同じ所定の圧力を、これらの設定の両方に使用することが可能である。そのような場合、圧力が、流体が最初に組織に進入するにつれて所定のレベルへと高まり、次いで圧力がこの所定のレベルを下回って低下するときに停止する。その後に流体流動が再開し、不連続な流体の流れが生み出される。
【0092】
本発明は、対象ではない組織への薬物の流れを制限しつつ、対象の組織部位への流体流動を可能にするための圧力の所定のレベルを定めている。これが、臨床医が診断および治療の処置のために特定の部位および意図される組織へと薬物を選択的に注入することを可能にする。あらかじめ選択される最大許容され得る圧力限界および/または流量が、メモリ80に保存されると共に、患者が通常許容する最大推奨圧力または他の基準を定める。圧力がこの限界に近づくとき、視覚的および/または聴覚的な警報が、臨床医のために、すなわち画面62やスピーカ84(これらはマイクロプロセッサ82からのデータによって作動する)において生成される。さらに、注入プロセスの全体を表わすデータが、上述のように、将来の分析のためにメモリ80に保存される。
【0093】
流体で満たされた空間への注入の管理のための方法
硬膜外注入を管理する典型的な方法は、以下のとおりである。これらの原理および方法は、硬膜外腔以外の組織および身体領域への注入に容易に適応させることが可能である。
【0094】
第一の所定の上側圧力限界が臨床医によって決定される。典型的には、第一の所定の上側圧力限界は200mm/Hg以下である。そのような設定を使用することで注入システムは結合組織へと無視できる量の薬物しか投与しないと考えられ、次いで流体の流れが再開する第二の所定の圧力が50mm/Hg未満に選択される。したがって、硬膜外の組織空間における圧力が約+15mm/Hg〜−15mm/Hgの間であると考えられる一方で、黄色靭帯に関連する圧力は200mm/Hgを上回るため、針が硬膜外の組織空間の流体で満たされた空間内に適切に配置される。
【0095】
靭帯外の組織について知られた圧力測定値は、典型的には約100〜200mm/Hgである。流体の流れが再開する第二の所定の圧力、すなわち50mm/Hg以下を有する注入装置50では、針が皮下組織にひとたび進入すると圧力が急激に高まると共に針が皮下組織(靭帯外の組織)にある限りは維持されるために流体の流れはほとんど存在しない。臨床医が伝統的な硬膜外注入の技術に従ってTouhly針を前進させると黄色靭帯に遭遇する。上述したように黄色靭帯は100mm/Hgを超える圧力を生じさせるため、依然として流体の流れは生じない。黄色靭帯を貫通する(すなわち、針が硬膜外の流体で満たされた空間に進入する)と、すぐに圧力が50mm/Hg未満に低下し、随意による視覚表示および/または可聴音ならびに/あるいは「硬膜外に位置しています」などの言葉の発声を引き起こし、薬物含有流体が意図される対象部位へと流れ始める。このように、対象の組織を識別するために、不連続な流体流動が利用される。圧力が所定の圧力を下回って低下するだけで流体の流れを発生させることができるように、第一および第二の所定の圧力値を同じ数字に設定することが可能である。
【0096】
注入装置50の圧力センサ20または複数のセンサが、(例えば、臨床医のミスまたは患者が動くことによって)注射針が硬膜外の組織空間から出たり注射針の開通性が損なわれたりした場合に、自動安全機能を提供する。針24が黄色靭帯を通って後退すること或いは硬膜に接触することによって硬膜外の組織空間から出ると、圧力がすぐに第一の選択された圧力P1へと上昇し、200mm/Hgを超える流体圧力において流体の流れが遅くなって最終的に停止する。これは、約2秒以内に生じることが示されている(Ghelber−Regional Anesthesia and Pain Medicine Vol 33 No 4 2008、349頁、図2を参照)。随意により、50mm/Hg未満から200mm/Hg超への圧力のこの変化が視覚的および/または聴覚的な警報をやはり生じさせて不正確な針の配置を臨床医に警告する。針が硬膜外の組織空間にひとたび戻って針の先端における瞬間の圧力がP1を下回って低下すると流れが自動的に再開し、あるいは、本発明のさらなる実施形態においては圧力が50mm/Hg以下の第二の選択圧力P2へと低下したときに流れが自動的に再開する。この注入装置の自動安全機能は、脊髄への麻酔薬溶液の注入の防止に役立つ。
【0097】
図9に目を向けると、硬膜外注入の対象者の脊柱の領域が示されている。図9の左方に位置する針24の先端の外部の注入部位から出発して、この領域の組織は、皮膚,脂肪,および結合組織110の種々の層を備え、その後に本発明の好ましい実施形態における関心の体内空間である硬膜外腔112が位置している。硬膜外腔112を過ぎると、脊髄116の硬膜114である。明らかに、組織を貫く針24の先端の右方への進行が脊髄に達する前に停止することが重要であり、このことが本発明によって達成される。この領域における脊柱の骨の断面も示されている。
【0098】
本発明によれば、マイクロプロセッサ82およびメモリ80が、組織110に進入して組織110を通って移動するときの針の先端の瞬間の流体圧力以上となるように選択される例えば約200mm/Hgの第一の圧力P1によってプログラムされる。この圧力P1以上において、モータ96が停止され、針の先端への流体の流れが停止する。針の先端が硬膜外腔112に進入するとき、瞬間の流体圧力がP1を下回って低下し、マイクロプロセッサがモータを再び始動させ、今や本発明の一実施形態に従って硬膜外腔112への流体の流れを再開させる。本発明の第二の実施形態によれば、流体の流れが再開される前に、メモリ80に保存された第二の選択された圧力P2に達しなければならない。本発明の第三の実施形態においては、メモリ80に保存された、P2よりも大きいがP1よりも小さい第三の選択された圧力P3に達するときに、流体の流れが再び停止する。この第三の圧力P3への到達は、針の先端が、硬膜114へと押し込まれ、あるいは、他のかたちで身体の対象の空間から出たことを示している。針の先端が通過する空間または層が、図9において、本発明による圧力の設定P1,P2,およびP3に関連付けられている。
【0099】
流体の流れを停止させるための第一の選択された圧力P1は、硬膜外注入において好ましくは約200mm/Hgであるものの、針の先端によって最初に穿刺される組織に応じて約25〜約300mm/Hgの範囲であってよい。流体の流れの再開のための圧力P2は、硬膜外注入において好ましくは約50mm/Hgであるものの、対象の身体空間に応じて約20〜約150mm/Hgの範囲であってよい。流体の流れを再び停止させるための第三の選択された圧力P3は、硬膜外注入において好ましくは約125mm/Hgであるものの、対象の身体空間に応じて約80〜約180mm/Hgの範囲であってよい。三つの設定圧力の使用は、流体で満たされた身体空間の周囲の組織よりも低い圧力で流体を受け取ることができる任意の流体で満たされた身体空間へと針の先端がさまざまな種類の組織を貫いて移動するときの流れあり/流れなしの制御を改善する。
【0100】
本発明の注入装置および付随の方法の特徴は、「偽性抵抗消失」または「偽陽性」を迅速且つ正確に識別する能力である(典型的には、2〜4秒以内)。偽性抵抗消失は、伝統的な抵抗消失式(あるいは、抵抗消失型)の手動注射器技術が使用されて硬膜外針が硬膜外の組織空間の外側の嚢胞または密度の低い空間に進入して抵抗の減少が生じる場合に、典型的に発生する。この領域の靭帯は、あまり密度が高くないと考えられ、偽性抵抗消失は珍しくない。この身体構造の位置特定の主観的な性質ゆえに、臨床医が硬膜外の組織空間を突き止めたとの確信に至ることも多い。圧力制御を伴うコンピュータ制御の薬物送達システムを使用した場合、針がそのような空間にひとたび進入すると、空間が流体によってすぐに満たされ、あるいは、密度の低い組織が流体によって加圧され、そして、記録される圧力が200mm/Hg超えて上昇して「偽性抵抗消失」を客観的に知らせる。これは、伝統的な手動による注射器技術またはシリンジポンプからの薬物の連続的な流体の流れを有するシステムが使用される状況では典型的にはあり得ないと考えられる。そのような場合には、ひとたび初期の抵抗消失に遭遇すると、操作者が(もはや「抵抗消失」を主観的に検証せずに)注射器を動かして流体のボーラスを送り出し(すなわち、大量の流体を一度に急速に注入し)、結果として意図される硬膜外の組織空間の外側の体内位置に麻酔薬溶液が注入(投与)されることになる(Ghelber−Regional Anesthesia and Pain Medicine Vol 33 No 4 2008、350頁を再び参照すると、図3が約250秒の時点における偽性抵抗消失を示している線グラフである)。この観察は、硬膜外注入の投与時に測定され、靭帯組織に関係している可能性が高い。正しくない組織構造が速やかに加圧され、測定される流体圧力が200mm/Hg超へと戻る。硬膜外腔へのカテーテルの挿入およびその後の流体の注入は、圧力の有意且つ急速な上昇が生じることはなく、カテーテルが正しく配置されていることを示す。
【0101】
硬膜外処置の針配置段階において硬膜外の組織空間を識別するために、薬物を含まない流体を使用することが考えられる。薬物を含まない適切な流体として、例えば無菌食塩水、人工脳脊髄液、リンゲル、5%デキストロース(ぶどう糖)、またはフィルタ処理された空気が挙げられる。硬膜外の組織空間が圧力差を使用してひとたび識別されると、注入流体が薬物を含む流体に変更される。針配置段階において薬物を含まない流体を使用することにより、対象ではない組織への薬物の供給を最小限または皆無にすることができる。
【0102】
本発明の装置および方法のさらなる特徴は、注入プロセスのすべての段階において監視される圧力であってコンピュータ制御の薬物供給装置によって測定される圧力の客観的な性質である。したがって、臨床医は、もはや「感覚」という主観的な性質に依存せず、むしろこの重要な技術の各段階の実行時に絶対的な値という客観的な情報を得ることができる。この技術の各段階が、注入の安全性および有効性の向上を保証する調節を実行可能にする薬物の不連続な流体流動を使用しつつ、圧力を継続的に監視できるという能力によって改善される。
【0103】
別の例では、流体で満たされた空間がひとたび貫かれて注入が開始されると、臨床医は所定の最大許容圧力をリセットすることができる。上述したように、硬膜外腔へと針が進入する前は、流体圧力が200mm/Hgを超えており、流体は殆どまたは全く供給されない。流体で満たされた空間への進入時に圧力はゼロ未満に低下し、そして、約1〜10mm/Hgへと次第に上昇する。この圧力の低下により、注入装置からの流体の流れが始まる。このとき、あらかじめ設定された最大圧力値を、新たなより一層低い最大値に変更することができる。例えば、流体の流れを停止させる所定の最大圧力を25mm/Hgへと下げることで、注射針が硬膜に接触したり硬膜外腔から後退したりした場合にさらに高い患者の安全性を提供することができる。この新たな所定のより一層低い最大圧力は、元のあらかじめ設定された値と比べて、流体の流れをより一層早期に且つ正常でない位置への注入量がより一層少ない段階で停止させると考えられる。所定の最大圧力による流体の流れの停止の変更は、臨床医によって手動で行うことができ、あるいは、注入装置内の制御要素によって自動的に行うことができる。
【0104】
流体の流れの停止のための所定の最大のあらかじめ設定される圧力としての200mm/Hgという例はあくまでも一例であり、より一層低い若しくはより一層高いあらかじめ設定される圧力を臨床医の判断で選択できることを、理解すべきである。また、流体の流れが再開される第二の所定の50mm/Hgという圧力値はあくまでも一例であり、より一層低い若しくはより一層高いあらかじめ設定される圧力が臨床医の判断で選択可能であり、あくまでも例示であることを、理解すべきである。上述の原理および技術を、ほぼあらゆる身体の部位への注入に合わせて調整することができる。この方法および装置の実施形態において特に重要な点は、診断および治療の管理において薬物の不連続的な流れを生み出すために圧力の所定の値を設定および選択できることにある。
【0105】
本明細書に記載した技術は、人間および動物の組織に同様に適用することができる。
【0106】
自動検出流体吸引と組み合わせた一つ以上の別個の圧力限界を有する不連続な流体の流れ
ユニット50の使用の準備において、図1,2,および3を参照すると、図1の消耗品アセンブリ10が無菌のパッケージから取り出され、シリンジ18のあらかじめ充てんされた本体が図2および3に示されるとおりのユニット50のハウジングの上面に定められた半円柱形のシリンジ受け台52へと押し込まれる。シリンジ本体18は、ばねによって付勢された(言い換えると、ばね押しの)一対のクランプ54によって受け台52内の場所にしっかりと保持され、シリンジ18の上端へと延びるフィンガフランジ90(すなわち、指掛け用の鍔)を対応する形状のフィンガフランジ凹部55内に係合させることによって受け台52内で軸方向に動かぬように保たれる。図2に示される完全に突き出したシリンジ満杯位置のシリンジ18のプランジャ70が、当該プランジャ70を妨げることなくシリンジ本体へと押し込むことができるように当該プランジャ70に接触することなく当該プランジャ70を収容して浮かせておくために充分に長く、広く、且つ深いサイズにされたユニットハウジングの上面のプランジャ凹部56に収容される。
【0107】
ばねによって付勢された三つのサムフランジキャッチ(すなわち、親指掛け用の鍔の留め部)またはフック60が旋回可能に取り付けられた可動ステージ58が、コンピュータの制御のもとでプランジャ凹部56に沿って移動可能である。さらに詳しく後述されるように、ステージ58は、三つのフック60の向かい合う斜面をサムフランジ72(すなわち、親指掛け用の鍔)に底部の両側から係合させて当該ステージ58のさらなる移動のもとで広げ且つサムフランジ72の下方へとスナップ式にて閉じることができるように、当該ステージ58がシリンジ18のサムフランジ72に充分に近づくまで図2および3における右方へと移動する。次いで、ユニット50内のセンサがステージ58のさらなる移動に対する抵抗を検知し、そして、ステージが停止する。この時点においてプランジャ70はキャッチ60(すなわち、留め部)がサムフランジ72に係合することによってステージ58に軸方向に関して実質的に固定され、ステージ58のさらなる右方や左方へのあらゆる移動は、プランジャ70も、右方へと、すなわちシリンジ本体から流体を吐出させるように移動させ、あるいは、左方へと、シリンジ本体へと流体を吸い戻すように移動させる。
【0108】
アセンブリ10の圧力センサ20が独自仕様のコネクタ12へと接続され、また、コネクタ12がジャック30を介してユニット50へと接続される。
【0109】
上述のように、本発明は、一つ以上(または、二つ以上)の圧力限界による不連続な流体の流れを利用する組織の部位の位置特定および注入のためのシステム、ならびに自動検出吸引システムに関する。
【0110】
このシステムは、駆動ユニット50と使い捨て器具の構成部品10とで構成される。駆動ユニット50が、マイクロプロセッサまたはCPU82と、電子回路基板92と、電源94と、一つ若しくは複数の電子モータ96(図4の実施形態においては二つのシリンジを受け入れることができるため)とを収容する。各電子モータ96が、シリンジアーマチュア100を順方向および逆方向に移動させるらせんシャフト98を回転させる。シリンジアーマチュア100は、力を検出するためのロードセルセンサを含んでいる。アーマチュア100は、ステージ58へと接続され、当該ステージをいずれかの方向に移動させる。やはり上述のとおり、使い捨て器具10は、新規な識別接続部品12と、シリンジ18と、インライン圧力変換器20と、配管セット22と、針24とを備えている。
【0111】
操作順序の詳細な説明
器具の上面図が、まとめてシリンジクレードル(すなわち、受け台)と称され、標準的な20ccのシリンジ18を受け入れるための適切な配置を可能にする凹状の空洞52および凹部56を示している。プランジャ凹部56に、可動のアーマチュア100、および、使い捨てシリンジ18のサムパッド(すなわち、親指当て用の板)若しくはサムフランジ72に係合するステージ58が収容される。シリンジのサムパッドに係合する機構が、シリンジのサムパッドを自動的に捕まえる、ばねによって付勢された一連のフック60(図5Aに拡大して示されている)を有している。
【0112】
図5Bに示されるとおり、サムパッド72との係合時に、ばねによって付勢されたフック60は、外側へと動いてサムパッドを超え、次いでフックのような様相でサムパッドに係合する。この作用により、サムパッドが図5Cに示されるように確保され、シリンジステージ58によってシリンジプランジャ70をいずれかの方向(逆は図5Dに示されている)に機械的に移動させることができ、したがって吸引を実行できることが保証される。さらに、力覚センサが、シリンジアーマチュア100の設計に一体化されている。シリンジアーマチュア100は、シリンジの位置を特定するために光学式および機械式の特徴を使用し、シリンジ内に存在する流体の体積を計算することができる。
【0113】
ステップ1: 駆動ユニット50が、「オン/オフ(On/Off)」,「スタート/ストップ(Start/Stop)」,「パージ(Purge)」,および「吸引オン/オフ」の各ボタンならびに電池残量インジケータを備える別個の(言い換えると、独立した)側部パネル64(図6に最もよく示されている)を介して「オン」にされる。「オン/オフ」ボタンは、駆動ユニットおよびタッチ画面インターフェイスLCD62を作動させる。電源オンにより、シリンジアーマチュア機構100が、図3に示されている「ホーム」位置に自動的に移動する。
【0114】
図3において、自動係合吸引サムパッド受け52,56を備えて移動するシリンジステージ58を有するシリンジアーマチュア100が、駆動ユニットの上部に位置する可動のシリンジアーマチュアへと接続される。
【0115】
駆動ユニットの上部は、特徴的な設計、すなわち表面に戻り止め若しくはクランプ54を備えて設計されたシリンジクレードル(すなわち、受け台)を示している。これらの戻り止め54は、シリンジがシリンジクレードル内に配置されるときにインターフェイスによってシリンジ18の胴の表面に係合することにより、シリンジをシリンジクレードルに一時的に固定する。
【0116】
ステップ2: 駆動ユニット50は、一連の使い捨て部品の使用を必要とする。上述のように、図1の使い捨て器具10は、以下のシステム構成要素で構成される。
【0117】
シリンジ18 − 好ましい実施形態は、Becton Dickinson,Inc.の標準的な20ccのシリンジを使用する。設計は、特定のサイズまたは体積のシリンジに限られない。操作者が、複数回分の薬瓶または1回だけ使用されるガラス製アンプルなどの適切な無菌の容器からの流体でシリンジを満たす。操作者は、シリンジを完全に満たすことができ、あるいは、自動検出の機能によってシリンジ内に含まれる薬物の量が判断されるのでシリンジを途中まで満たすことができる。
【0118】
好ましい実施形態は、ユタ州South JordanのMerit Medical社のMeritrans(登録商標)というインライン圧力変換器などのインライン圧力変換器20を使用する。シリンジアーマチュア内の力覚センサが、流体圧力に関する情報を提供し、第二の圧力センサの必要性をなくすことができると考えられる。
【0119】
皮下中空穴針24 − 好ましい実施形態においては、ニュージャージ州Franklin LakesのBecton Dickinson社のBecton Dickinson 20G x 3.5”Touhy NeedleなどのTouhy針。
【0120】
無菌の配管セット22 − カリフォルニア州San ClementeのICU Medical,Inc.などの48”の動脈圧配管。
【0121】
識別使い捨てコネクタ(ID−コネクタ)12 − IDコネクタは、独自仕様の構成部品であり、本明細書に記載される発明の一部分である。これは、本発明の製造者が推奨する適切なシリンジ,配管セット,インライン圧力センサ,および針が駆動ユニットへと接続されていることを検証する。好ましい実施形態においては、IDコネクトが、圧力センサおよび配管セットに恒久的に取り付けられ、単一の構成部品として供給される。また、本発明は、操作者が使用のために個々の構成部品へとIDコネクタを接続できるように、別個のキットにて供給されるすべての使い捨ての構成要素を含むことも可能である。
【0122】
次いで、IDコネクタは、図1および図7に示されているRJ−11プラグなどの着脱式の接続プラグ30を介して、駆動ユニットへと接続される。RJ−11プラグ以外の電気的接続も使用できると考えられる。特注の電子プラグを製造してもよい。
【0123】
IDコネクタは、これらに限られるわけではないものの赤外線,WiFi,BlueTooth(登録商標),または他の無線手段などの、駆動ユニットのCPUへの中継および通信のあらゆるすべての他の手段を使用することができると考えられる。
【0124】
使い捨てアセンブリの検証を、バーコードならびにバーコードリーダまたは他の何らかの光学式の検出手段を含むようなラベル付けを使用して達成することも可能であると考えられる。
【0125】
IDコネクタは、使い捨て品に関する情報を提供するために駆動ユニットのCPUへと通信する。好ましい実施形態においては、IDコネクタが、使い捨てセットにおける駆動ユニットの動作可能サイクル数を制限する。これは、駆動ユニットの物理的なサイクルにもとづいて、さらには/あるいは測定される時間によって、使用を制限することができる。これは、さらに、すでに使用された消耗品若しくは無菌でない消耗品の再使用を防止し、患者の安全をもたらす。また、IDコネクタは、使い捨て部品の適切な選択も保証する。好ましい実施形態においては、IDコネクタが、できる限り多数の使い捨て部品に堅固に接続され、すなわち、接着,熱若しくは化学的な結合によってインライン圧力センサおよび配管セットへと接続される。しかしながら、これは、ユニットの適切な機能に必須というわけではない。
【0126】
これらに限られるわけではないものの、
薬物の名称および処方,薬物の製造者,ならびにロット番号などの薬物情報、
消耗品アセンブリに関する情報、
薬物の使用期限に関する情報、
使い捨てキットの無菌性に関する情報、および、
IDコネクタが使用された日付および時刻
など、さらなる情報をIDコネクタへと記号化して発信し得ると考えられる。
【0127】
好ましい実施形態においては、20ccのシリンジ18が、IDコネクタが取り付けられたMeritans圧力変換器20および48”の動脈圧配管セット22へと接続される。図1,2,および7のように、配管セットの遠位端にTouhy(中空穴)針24が接続される。
【0128】
ステップ3: シリンジ18がシリンジ受けに挿入された後で、操作者は、「シリンジを装てんし、続行を押す(Load Syringe and Press Continue)」という状態の駆動ユニット50の初期画面62を視認する。タッチ画面インターフェイス62により、操作者が「続行(Continue)」ボタンに触れ、自動係合吸引受けをシリンジのサムパッドに接触させることができる。図8Bを参照されたい。駆動ユニットが一連の機能によって適切な消耗品が器具へと挿入されたことを検出および確認することができる。確認のための設計の特徴は、以下を含む。
【0129】
1. 独自の識別検出器コネクタ(IDコネクタ) − CPUと通信し、適切な使い捨てアセンブリが選択されて駆動ユニットへと取り付けられたことを確認することができる。IDコネクタが使い捨てアセンブリの不適切な選択または使い捨てアセンブリの再使用の企てを検出した場合には、駆動ユニットがさらなる動作を阻止し、警告メッセージを表示し、さらには/あるいは信号を生成する。また、IDコネクタは、所与の使い捨て器具にて実行されるサイクル数を制限することができる。IDコネクタは、直接的および/またはCPUを介して間接的にシステムおよび機能を制御する。情報は両方向にコネクタへと/コネクタから渡され、したがってCPUが、動作時に、IDコネクタ上に内容および情報を保存することができ、あるいは、IDコネクタ上の内容および情報を変更することができる。
【0130】
2. 自動シリンジ検出機能が、適切なサイズのシリンジが選択されたことを確認するために、自動係合吸引受けの保持フックを利用する。確認は、シリンジのサムパッドのサイズおよび自動係合吸引受けのフック間の直径によって行われる。シリンジのサイズと受けのサイズとが不整合である場合には、フックが係合できない。装てんされたシリンジが、駆動ユニットのシリンジアーマチュアに含まれたロードセルによって最初に検出される。シリンジのサムパッドにおいて抵抗がひとたび検出されると、シリンジアーマチュアの前方移動が自動的に停止される。次いで、シリンジアーマチュアは、ばねによって駆動されるフックがシリンジのサムパッドに係合した後に、方向を逆にする。好ましい実施形態においては、より一層小さい直径のサムパッドが20ccのシリンジ以外のシリンジサイズにおいて使用される場合には、係合フックが係合せず、そして、シリンジが検出されない。警告メッセージが表示され、あるいは、信号が生成されて、駆動ユニットのさらなる使用が阻止される。例えば10ccのシリンジまたは5ccのシリンジなど、種々の専用のシリンジサイズを個々の設計に取り入れることができると考えられる。
【0131】
さらに、自動シリンジ検出機能は、光学式およびまたは機械式のセンサによってシリンジ内の流体の量を割り出す。この量が表示される。
【0132】
シリンジの検出がひとたび完了および確認されると、システムは、使い捨て品を完全に満たすように配管セットへと適当な量の流体を自動的にパージすることができる。
【0133】
3. 好ましい実施形態においては、自動パージ機能が自動シリンジ検出機能の後で作動する。これは、適切なシリンジがシリンジ受けに設置されることを保証する。自動パージが行われないように全体的な設定を変更することができ、その場合には、タッチ画面に触れることによって手動パージの選択肢を使用することができる。パージをまったく省略することが可能であってもよい。「自動パージ」および「手動パージ」の省略はシリンジ使い捨て器具が同じ患者において複数回使用される場合の選択肢であり、この場合には、実行済みの最初のパージサイクル(パージ処理)によって配管セットがすでに満たされていると考えられる。図8Aを参照されたい。
【0134】
図8Cに示されているタッチ画面の一番右に、動作中にいつでも評価することができる一連のタッチタブが存在する。
1−「患者(Patient)」画面: 患者/医師の情報を入力可能にする。
2−「位置特定(Locate)」画面: 注入プロセスの最中の流量および流体圧力に関する視覚的な表示を示すことで、操作者による対象の位置特定を可能にする実行中の注入の画面。P1およびP2の値も画面上に示される。
3−「設定(Settings)」画面: 流量および圧力値、P1値およびP2圧力値を変更可能にする。画面の明るさ、可聴音の音量を選択可能にする。さらなる特徴として、「タッチ感度を調整する(Calibrate Touch)」としてタッチ画面の感度、日付および時刻の設定、並びに、自動パージのオン/オフが挙げられる。
4−「データ(Data)」画面: 以前に実行された位置特定の注入において収集されたデータの見直し,電送,および印刷を可能にする。
【0135】
患者画面へのアクセスは、画面の右側の「患者(Patient)」タブに触れることによって行われる。操作者が動作の最中に画面の右側の「タブ」に単に触れるだけで任意の画面の間の切り換えを行うことができることに注目すべきである。
【0136】
「患者(Patient)」タブに触れることで画面(すなわち、図8C)が表示され、操作者が患者および医師のデータを入力でき、それらのデータが患者について時刻および日付と共に記録される。図8Cおよび図8Dを参照されたい。
【0137】
図8Eを参照すると、設定画面は、ユーザによる調節が可能な以下の設定を表示する。
1. 画面をより一層明るくしたりあるいはより一層暗くしたりすることを可能にする「明るさ(Brightness)」。ひとたび選択されると、その後に画面はその値を将来における既定値とする。
2. 動作時の音声の大きさを調節するための音量(Audio−Volume)調節。
3. 防護および/または手袋を使用している操作者に対応すべくタッチ画面の感度を調節するためのタッチ感度調整(Calibrate Touch)。
4. 日時を調節するための日付および時刻の設定(Set Date and Time)。
5. 選択された流量を調節するための流量(Flow−Rate)値。
6. 圧力限界(Pressure Limit)− P1値。P1値は、流量が停止されるものの、リアルタイムの圧力検出の記録,表示,および通知は続けられる圧力である。
7. 圧力限界(Pressure Limit)− 開始 − P2値。P2値は、ひとたび到達すると流量が再開される圧力である。
【0138】
好ましい実施形態においては、P1値とP2値とが異なる。P2値はP2値よりも低くなければならず、これが、圧力がその初期の限界に達した後に流量が停止する圧力(P1値)を可能にする。流量は、圧力がP2値として定義される第二のより一層低い圧力にひとたびなると再開される。
【0139】
しかしながら、P2値をP1値よりも高くすることもできると考えられ、その場合には、流量は、圧力が新たな圧力限界へと高まる場合に限って再開される。操作者は、同じP1値およびP2値を選択してもよい。
【0140】
図8Fが、患者情報および医師情報を表示し、そして、位置特定および注入の事象の記録を保持するデータ画面を示している。この情報を、リムーバブルメディア(可換型媒体)に保存でき、さらには/あるいは、駆動ユニットからプリンタへと直接印刷することができる。
【0141】
位置特定画面は、処置のうちの位置特定および注入のプロセスにおいて不可欠な情報を提供するものであり、図8Gに示されている。
【0142】
これが、「位置特定(Locate)」モードの実行中の(言い換えると、活動状態の)画面であり、操作の際に視認される。以下のタッチ画面機能に、この画面から直接アクセスすることができる。
1. 流体の流れの開始および停止を手動で行うための「スタート/ストップ(Start/Stop)」ボタン。
2. 「圧力補正(Tare Pressure)」機能:患者と器具との間の高度または高さの不一致に起因する圧力測定値の誤差をシステムが控除することを可能にする。
3. 「処置終了(End Treatment)」は、新たな患者のための新たなシリンジ器具を再装てんし、あるいは、同じ患者における第二のシリンジの使用を可能にするために、ユーザをパージウインドウ(Purge Window)へと戻す。
4. 「残量(Volume Remaining)」は、シリンジのグラフィック画像として観察される。流体が送り出されるにつれて、グラフィック画像が、量の変化を反映して視覚的に示すように変化する。
5. 「圧力(Pressure)」は、動作の最中にリアルタイムで提供される(単位は、mm/Hg)。
6. 使用されている流量(Flow−rate)の量。
7. 圧力の測定値をグラフ形式で表示する視覚グラフ(Visual Graph)。
8. 流体の圧力および流れを反映する可聴音(Audible Sound)。
9. P1,P2(使用される場合),およびP3(使用される場合)が、画面のグラフ上に表示される。P2は、グラフにおいて強調された色付きの水平線として表される下方の圧力限界として示される。
10. 「印刷(Print)」− 操作者は、この画面からデータおよび支援のグラフを印刷することができる。
11. 時刻および日付(Time and Date)が画面上に表示される。
12. スクロールするグラフ(Scrolling Graph)− 画面の大部分を呈し、記録されている流量および圧力データの視覚的表示を示す。この同じ情報が、操作者が必ずしも常に画面を視認していなくてもよいように、可聴な音色若しくは信号にてユーザへと提供される。
【0143】
二つ以上の別個の圧力限界値による不連続な流体流動についての臨床の論理的根拠
流体の流れを停止させるための第一の選択された圧力P1として定められる別個の第一の上側圧力限界を設定することが重要である。これは、流体で満たされた組織空間の識別のプロセスの最中に注入される流体の量を制限する。これは、多数の不都合な結果を有する可能性がある組織への流体の連続的な流れを防止するがゆえに、先行技術に対する改善である。
【0144】
連続的な流体システムが、Timo Lechnerの特許(米国特許第7,922,689号)およびTim Patrickの特許(米国特許第8,002,736号)において硬膜外腔または関節内の空間などの身体の流体で満たされた空間の検出に使用されている。これらの器具においては、操作者が圧力によって組織を識別するために連続的な態様・仕方で組織へと流体を配置する必要がある。これらの特許の欠点は、継続的な圧力の検出ならびに身体の部位または構造の識別において流体の連続的な流れが必要とされる点にある。連続的な流体の流れは、1)組織を過度に加圧することによって組織の損傷を引き起こす可能性があり、2)組織内の圧力を上昇させることによって組織内の圧力の測定値にバイアス因子および誤差を持ち込み、意図される作用を期待できなくする可能性があり、3)不必要な術中および術後の痛み(疼痛)を引き起こす可能性があり、4)組織における薬物および流体の過剰な使用が、患者にとって不都合な薬物の相互作用につながる可能性がある。したがって、リアルタイムの圧力フィードバックが可能な不連続な流体の流れシステムを利用するシステムは、先行技術に示されるこれらの発明と明確に異なる。
【0145】
P1とは明らかに異なる二つ以上の特定の圧力値を設定できる能力を有することで、追加の流体を導入することなく体内位置における低圧の目標を検出するための手段がもたらされる。これは、身体のうちの特定の体内位置を突き止めるための検出パラメータとして流体流動を使用する。結果として、二つ以上の圧力限界値にもとづく不連続な流体の流れにて、流体で加圧されたシステムを使用する位置特定装置が生み出される。これは、Hochmanの米国特許第7,449,008号にすでに示されているCompuFlo技術とは明らかに異なる。
【0146】
本発明をいくつかの特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態があくまでも本発明の原理の例示にすぎないことを理解すべきである。したがって、詳しく説明した実施形態は、以下の特許請求の範囲に関して、例示として考えられるべきであって、限定として考えられるべきではない。
図1
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9
図10