(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349323
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】車両用ドラムブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/09 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
F16D65/09 S
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-543811(P2015-543811)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2014077498
(87)【国際公開番号】WO2015060180
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-218508(P2013-218508)
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 正一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 智信
【審査官】
内山 隆史
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−130027(JP,U)
【文献】
西独国特許第01149998(DE,B)
【文献】
米国特許第05924526(US,A)
【文献】
特開2005−344833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックプレートの内部に一対のブレーキシューが拡縮自在に収容され、前記バックプレートに、前記ブレーキシューの両端部間にそれぞれ配置されるブレーキシュー作動部材を固定する台座部と、前記ブレーキシューの拡縮を案内する複数のレッジ面とを、前記バックプレートの内部側に隆出させて形成した車両用ドラムブレーキにおいて、
前記バックプレートに、前記バックプレートと同心の円弧状凸部を隆出させて形成し、
前記円弧状凸部は、バックプレートの外周側に形成される第1円弧状凸部と、該第1円弧状凸部よりバックプレートの内周側に形成される第2円弧状凸部とを備えている
ことを特徴とした車両用ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記円弧状凸部は、前記バックプレートの内部側に隆出させて形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記台座部と前記レッジ面とは、前記円弧状凸部よりも前記バックプレートの内部側に突出して形成されると共に、前記台座部と前記レッジ面の少なくとも一部は、前記円弧状凸部から、前記バックプレートの内部側に突出して形成されていることを特徴とする請求項2記載の車両用ドラムブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪車等の走行車両に用いられる車両用ドラムブレーキに関し、詳しくは、バックプレートの補強を図った車両用ドラムブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドラムブレーキは、バックプレートの内部にブレーキシューを拡縮自在に収容して形成され、バックプレートには、ブレーキシューの端部間に配置されるアンカーやホイルシリンダ等のブレーキシュー作動部材を固定する台座部と、前記ブレーキシューの拡縮を案内する複数のレッジ面とが、バックプレートの板材を内部側へ隆出させて形成されていた。
【0003】
このバックプレートとして、制動時に振動してブレーキ鳴きを発生させないように、補強されたものがあり、バックプレートに補強板を重ね合わせたもの(例えば、特許文献1参照)や、バックプレートに補強板を埋め込んだもの(例えば、特許文献2参照。)や、負荷を受けやすいアンカーを取り付ける台座部に補強用の凸部をバックプレートの板材を内部側へ隆出させて形成させたもの(例えば、特許文献3参照。)があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−120832号公報
【特許文献2】実開平5−71474号公報
【特許文献3】特開2005−344833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1のものでは、バックプレートに補強板を絞り加工により結合させ、また、特許文献2のものでは、バックプレートの加圧鋳造時に補強板を埋め込んで結合させることから、バックプレートと別物品の補強板を用いなければならないと共に、結合に手間が掛かることからコストが嵩んでいた。また、特許文献3のものでは、アンカーを取り付ける台座部の部分の補強は成されているが、その他の部分の補強が不十分であった。
【0006】
そこで本発明は、コストを抑えながらバックプレートを充分に補強することができる車両用ドラムブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ドラムブレーキは、バックプレートの内部に一対のブレーキシューが拡縮自在に収容され、前記バックプレートに、前記ブレーキシューの両端部間にそれぞれ配置されるブレーキシュー作動部材を固定する台座部と、前記ブレーキシューの拡縮を案内する複数のレッジ面とを、前記バックプレートの内部側に隆出させて形成した車両用ドラムブレーキにおいて、前記バックプレートに、前記バックプレートと同心の円弧状凸部を隆出させて形成し
、前記円弧状凸部は、バックプレートの外周側に形成される第1円弧状凸部と、該第1円弧状凸部よりバックプレートの内周側に形成される第2円弧状凸部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、前記円弧状凸部は、前記バックプレートの内部側に隆出させて形成されると好ましい。さらに、前記台座部と前記レッジ面とは、前記円弧状凸部よりも前記バックプレートの内部側に突出して形成されると共に、前記台座部と前記レッジ面の少なくとも一部は、前記円弧状凸部から、前記バックプレートの内部側に突出して形成されていると好適であ
る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ドラムブレーキによれば、バックプレートは、バックプレートと同心の円弧状凸部で補強されることから、バックプレートを全周に亘って略均一にバランス良く補強することができ、制動時にバックプレートの振動を抑え、ブレーキ鳴きを抑制することができる。また、補強板を用いることなくバックプレートを補強することができることから、バックプレートの重量が嵩む虞がなく、また、加工性の向上を図ることができるとともに、コストを抑えることができる。
【0010】
さらに、円弧状凸部は、前記台座部及び前記レッジ面と同様に、バックプレートの内部側に隆出させることにより、バックプレートを大型化させることなく補強することができ、さらに、バックプレートの加工性を向上させることができる。また、台座部とレッジ面とは、円弧状凸部よりもバックプレートの内部側に突出して形成されると共に、台座部とレッジ面の少なくとも一部は、円弧状凸部から、バックプレートの内部側に突出して形成されることから、バックプレートを大型化させることなく、効率的に補強することができる。さらに、円弧状凸部は、バックプレートの外周側に形成される第1円弧状凸部と、該第1円弧状凸部よりバックプレートの内周側に形成される第2円弧状凸部とを備えていることから、バックプレートを充分に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例を示すバックプレートの正面図である。
【
図3】本発明の一形態例を示す車両用ドラムブレーキの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図3は本発明の一形態例を示し、車両用ドラムブレーキ1は、車体に固設されるバックプレート2の内部に弓形の一対のブレーキシュー3,3を配置し、両ブレーキシュー3,3の一端をホイルシリンダ4(本発明のブレーキシュー作動部材)のピストンに、他端をアンカー5(本発明のブレーキシュー作動部材)にそれぞれ当接させている。
【0013】
この車両用ドラムブレーキ1は、ブレーキシュー3,3をバックプレート2の半径方向外側へ拡開して、外周のライニング3a,3aをブレーキドラム(図示せず)に摺動させて制動作用を行うリーディング・トレーディングタイプで、一方のブレーキシュー3には、パーキングレバー6の一端が支軸7にて枢支され、該パーキングレバー6の他端には、パーキングレバー6を牽引するためのブレーキケーブル8が連結されている。
【0014】
各ブレーキシュー3は、中間部をシューホールドピン9とシューホールドスプリング10とによってバックプレート2に弾持されるウェブ3bと、該ウェブ3bの外面に直交して取り付けられる円弧状のリム3cと、該リム3cの外周面に貼着される前記ライニング3aとから成っている。ウェブ3bは、一端部がホイルシリンダ4に支承され、他端部がアンカー5に支承されるとともに、リム3cのバックプレート側面が、バックプレート2に形成した3個のレッジ面2aに支承されている。また、両ウェブ3b,3bの間には、ホイルシリンダ4の内側とアンカー5の外側とにシュー戻しばね11,12がそれぞれ張設されていて、双方のブレーキシュー3,3を常時縮径方向へ付勢しており、更に、ホイルシリンダ側のシュー戻しばね11の内側には、制動間隙自動調整装置13が配置されている。
【0015】
バックプレート2は、中央にアクスル挿通孔2bが形成され、外周側にバックプレート2と同心の第1円弧状凸部2cが、該第1円弧状凸部2cよりも内周側にバックプレート2と同心の第2円弧状凸部2dがそれぞれバックプレート2の内部側に隆出させて形成されている。さらに、アクスル挿通孔2bの
図1において上部側にはホイルシリンダ用台座部2eが、下部側にはアンカー用台座部2fがバックプレート2の内部側に隆出させてそれぞれ形成されると共に、ホイルシリンダ用台座部2eとアンカー用台座部2fのバックプレート周方向中間位置には、シューホールドスプリング10を取り付けるシューホールドスプリング用台座部2g,2gが、バックプレート2の内部側に隆出させてそれぞれ形成されている。さらに、バックプレート外周側には、6個の前記レッジ面2aが、バックプレート2の内部側に隆出させてそれぞれ形成されている。
【0016】
また、ホイルシリンダ用台座部2eと、アンカー用台座部2fと、シューホールドスプリング用台座部2g,2gと、レッジ面2aとは、第1円弧状凸部2c及び第2円弧状凸部2dのバックプレート内部側面2h,2iよりもバックプレート2の内部側にそれぞれ突出して形成され、ホイルシリンダ用台座部2eとシューホールドスプリング用台座部2g,2gとは、その一部が第1円弧状凸部2cと第2円弧状凸部2dのバックプレート内部側面2h,2iから突出して形成され、アンカー用台座部2fは、その一部が第1円弧状凸部2cのバックプレート内部側面2hから突出して形成されている。また、6個のレッジ面2aは第1円弧状凸部2cのバックプレート内部側面2hから突出して形成されている。
【0017】
上述のように形成された車両用ドラムブレーキ1では、第1円弧状凸部2cと第2円弧状凸部2dとによって、バックプレート2の全面を均一にバランス良く補強することができることから、制動時にバックプレート2の振動を抑えることができ、ブレーキ鳴きを抑制することができる。また、第1円弧状凸部2cと第2円弧状凸部2dとは、バックプレート2を内部側に隆出させて形成されていることから、従来のように、補強板を用いることがなくバックプレート2を補強でき、バックプレート2の重量が嵩む虞がなく、さらに、加工性の向上を図るとともにコストを抑えることができる。また、ホイルシリンダ用台座部2e、シューホールドスプリング用台座部2g,2g、アンカー用台座部2f、各レッジ面2a、第1円弧状凸部2c,第2円弧状凸部2dは、バックプレート2の内部側に突出させていることから、バックプレート2の加工性を向上させることができる。さらに、ホイルシリンダ用台座部2eとシューホールドスプリング用台座部2g,2gとは、その一部が第1円弧状凸部2cと第2円弧状凸部2dのバックプレート内部側面2h,2iから突出して形成され、アンカー用台座部2fは、その一部が第1円弧状凸部2cのバックプレート内部側面2hから突出して形成され、複数のレッジ面2aは第1円弧状凸部2cのバックプレート内部側面2hから突出して形成されていることから、バックプレート2を大型化させることなく効率的にバックプレート2の強度を確保することができる。
【0018】
尚、本発明の車両用ドラムブレーキは、上述の形態例のようにリーディング・トレーディングタイプのドラムブレーキに適用されるものに限らず、2リーディングタイプや、デュオサーボタイプのもの等、どのようなタイプのドラムブレーキにも適用することができる。さらに、バックプレートに設ける円弧状凸部は、上述の形態例のように2本設けるものに限らず、1本でも良く、また、3本以上設けることもでき、バックプレートの外部側に隆出させて形成することもできる。
【符号の説明】
【0019】
1…車両用ドラムブレーキ、2…バックプレート、2a…レッジ面、2b…アクスル挿通孔、2c…第1円弧状凸部、2d…第2円弧状凸部、2e…ホイルシリンダ用台座部、2f…アンカー用台座部、2g…シューホールドスプリング用台座部、2h,2i…バックプレート内部側面、3…ブレーキシュー、3a…ライニング、3b…ウェブ、3c…リム、4…ホイルシリンダ、5…アンカー、6…パーキングレバー、7…支軸、8…ブレーキケーブル、9…シューホールドピン、10…シューホールドスプリング、11,12…シュー戻しばね、13…制動間隙自動調整装置