特許第6349377号(P6349377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6349377メッシュ作成装置、メッシュ作成方法およびメッシュ作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349377
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】メッシュ作成装置、メッシュ作成方法およびメッシュ作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   G06F17/50 612J
   G06F17/50 624A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-240357(P2016-240357)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-97519(P2018-97519A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】516070416
【氏名又は名称】エーティーラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝之
【審査官】 加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−014492(JP,A)
【文献】 特開2001−067495(JP,A)
【文献】 特開2012−203894(JP,A)
【文献】 特開2015−114954(JP,A)
【文献】 特開2005−293021(JP,A)
【文献】 吉田武史 他,全方位LiDARによる道路空間上での自己位置同定法,第21回 画像センシングシンポジウム 講演論文集 [CD−ROM],画像センシング技術研究会,2015年 6月11日,IS3−29−1〜IS3−29−6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標点群のデータからメッシュを作成するメッシュ作成装置であって、
前記座標点群は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示し、
前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれについて、前記座標点の位置における前記表面の法線ベクトルを算出するように構成された法線ベクトル算出部と、
前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれを選択し、選択した前記座標点を対象点として、前記対象点と、前記対象点の付近に位置する少なくとも2つの前記座標点とを内部に含むメッシュ作成領域を作成するように構成された領域作成部と、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記メッシュ作成領域に含まれる前記対象点の前記法線ベクトルに直交する射影平面へ、前記メッシュ作成領域に含まれる前記対象点および前記座標点を射影することにより、前記対象点および前記座標点が前記射影平面上に射影された射影点を形成するように構成された射影部と、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記射影部により形成された前記射影点を頂点とする三角形状の第1メッシュを作成するように構成された第1メッシュ作成部と、
前記第1メッシュ作成部により作成された前記第1メッシュの頂点の繋がりを、前記座標点と対応付けることにより、前記座標点を頂点とする三角形状の第2メッシュを作成するように構成された第2メッシュ作成部と
備え、
前記法線ベクトル算出部は、
前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれを選択し、選択した前記座標点を対象点として、前記対象点を含むベクトル算出領域を設定するように構成された領域設定部と、
前記ベクトル算出領域に含まれる複数の前記座標点が前記表面を表していることを示す予め設定された表面判断条件が成立しているか否かを判断するように構成された表面判断部と、
前記表面判断条件が成立していないと前記表面判断部が判断した場合に、前記ベクトル算出領域を拡張するように構成された拡張部と、
前記表面判断条件が成立していると前記表面判断部が判断した場合に、前記ベクトル算出領域に含まれる複数の前記座標点のデータから、少なくとも3つの固有ベクトルを算出し、少なくとも3つの前記固有ベクトルの中から、3番目に長い前記固有ベクトルを、前記対象点の前記法線ベクトルとして設定するように構成された固有ベクトル算出部と
を備えるメッシュ作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のメッシュ作成装置であって、
前記表面判断条件は、少なくとも3つの前記固有ベクトルのうち、1番目に長い前記固有ベクトルを第1固有ベクトルとし、2番目に長い前記固有ベクトルを第2固有ベクトルとして、前記第1固有ベクトルの固有値と、前記第2固有ベクトルの固有値とを用いて設定されるメッシュ作成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のメッシュ作成装置であって、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記第2メッシュ作成部により作成された前記第2メッシュのうち、前記第2メッシュを構成する3つの頂点のうち1つの頂点が前記対象点である前記第2メッシュを対象メッシュとして、前記対象メッシュ以外の前記第2メッシュを除外するように構成された対象点除外部を備えるメッシュ作成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のメッシュ作成装置であって、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記第2メッシュ作成部により作成された前記第2メッシュのうち、三角形状である前記対象メッシュの三辺のうちの一辺を前記対象メッシュと共有している前記第2メッシュを隣接メッシュとして、前記対象メッシュと前記隣接メッシュの両方に対して辺を共有している前記第2メッシュを交差メッシュとして除外するように構成された交差除外部を備えるメッシュ作成装置。
【請求項5】
請求項4に記載のメッシュ作成装置であって、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記対象メッシュと前記隣接メッシュとで共有されている辺を隣接共有辺として、前記隣接共有辺の端部を構成する2つの頂点における前記法線ベクトルの第1角度差が、前記対象メッシュと前記隣接メッシュとで共有されていない2つの頂点における前記法線ベクトルの第2角度差より大きいか否かを判断するように構成された角度差判断部と、
前記第1角度差が前記第2角度差より大きいと前記角度差判断部が判断した場合に、前記対象メッシュと前記隣接メッシュを構成する4つの頂点について、前記対象メッシュと前記隣接メッシュとで共有されていない2つの頂点を端部とする辺を共有するとともに、前記隣接共有辺を構成する2つの頂点が共有されないようにして前記第2メッシュを変更するように構成された変更部と
を備えるメッシュ作成装置。
【請求項6】
座標点群のデータからメッシュを作成するメッシュ作成方法であって、
前記座標点群は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示し、
コンピュータが、前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれについて、前記座標点の位置における前記表面の法線ベクトルを算出する法線ベクトル算出手順と、
コンピュータが、前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれを選択し、選択した前記座標点を対象点として、前記対象点と、前記対象点の付近に位置する少なくとも2つの前記座標点とを内部に含むメッシュ作成領域を作成する領域作成手順と、
コンピュータが、前記領域作成手順により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記メッシュ作成領域に含まれる前記対象点の前記法線ベクトルに直交する射影平面へ、前記メッシュ作成領域に含まれる前記対象点および前記座標点を射影することにより、前記対象点および前記座標点が前記射影平面上に射影された射影点を形成する射影手順と、
コンピュータが、前記領域作成手順により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記射影手順により形成された前記射影点を頂点とする三角形状の第1メッシュを作成する第1メッシュ作成手順と、
コンピュータが、前記第1メッシュ作成手順により作成された前記第1メッシュの頂点の繋がりを、前記座標点と対応付けることにより、前記座標点を頂点とする三角形状の第2メッシュを作成する第2メッシュ作成手順と
備え、
前記法線ベクトル算出手順は、
コンピュータが、前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれを選択し、選択した前記座標点を対象点として、前記対象点を含むベクトル算出領域を設定する領域設定手順と、
コンピュータが、前記ベクトル算出領域に含まれる複数の前記座標点が前記表面を表していることを示す予め設定された表面判断条件が成立しているか否かを判断する表面判断手順と、
コンピュータが、前記表面判断条件が成立していないと前記表面判断手順が判断した場合に、前記ベクトル算出領域を拡張する拡張手順と、
コンピュータが、前記表面判断条件が成立していると前記表面判断手順が判断した場合に、前記ベクトル算出領域に含まれる複数の前記座標点のデータから、少なくとも3つの固有ベクトルを算出し、少なくとも3つの前記固有ベクトルの中から、3番目に長い前記固有ベクトルを、前記対象点の前記法線ベクトルとして設定するように構成された固有ベクトル算出手順と
を備えるメッシュ作成方法。
【請求項7】
三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータからメッシュを作成するために、コンピュータを、
前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれについて、前記座標点の位置における前記表面の法線ベクトルを算出するように構成され、前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれを選択し、選択した前記座標点を対象点として、前記対象点を含むベクトル算出領域を設定するように構成された領域設定部と、前記ベクトル算出領域に含まれる複数の前記座標点が前記表面を表していることを示す予め設定された表面判断条件が成立しているか否かを判断するように構成された表面判断部と、前記表面判断条件が成立していないと前記表面判断部が判断した場合に、前記ベクトル算出領域を拡張するように構成された拡張部と、前記表面判断条件が成立していると前記表面判断部が判断した場合に、前記ベクトル算出領域に含まれる複数の前記座標点のデータから、少なくとも3つの固有ベクトルを算出し、少なくとも3つの前記固有ベクトルの中から、3番目に長い前記固有ベクトルを、前記対象点の前記法線ベクトルとして設定するように構成された固有ベクトル算出部とを備える法線ベクトル算出部、
前記座標点群を構成する複数の前記座標点のそれぞれを選択し、選択した前記座標点を対象点として、前記対象点と、前記対象点の付近に位置する少なくとも2つの前記座標点とを内部に含むメッシュ作成領域を作成するように構成された領域作成部、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記メッシュ作成領域に含まれる前記対象点の前記法線ベクトルに直交する射影平面へ、前記メッシュ作成領域に含まれる前記対象点および前記座標点を射影することにより、前記対象点および前記座標点が前記射影平面上に射影された射影点を形成するように構成された射影部、
前記領域作成部により作成された複数の前記メッシュ作成領域のそれぞれについて、前記射影部により形成された前記射影点を頂点とする三角形状の第1メッシュを作成するように構成された第1メッシュ作成部、及び、
前記第1メッシュ作成部により作成された前記第1メッシュの頂点の繋がりを、前記座標点と対応付けることにより、前記座標点を頂点とする三角形状の第2メッシュを作成するように構成された第2メッシュ作成部
として機能させるためのメッシュ作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体の表面の三次元形状を示す座標点群のデータからメッシュを作成するメッシュ作成装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、レーザスキャナを搭載した計測車両で対象道路を走行することにより対象道路の座標点群データを計測するモービルマッピングシステムが知られている。近年、3Dレーザースキャナ、UAVおよびモービルマッピングシステム等のように三次元点群データを生成するデバイスの普及により、大量の点群データを利用する状況が増えてきている。UAVは、Unmanned Aerial Vehicleの略である。
【0003】
従来、3次元点群から形状表面を知る方法として、Marching Cubes法と3次元Delaunay四面体分割がよく用いられてきた。これらの手法の多くは、点群が表す形状が単純であり、点群の密度が高く、点群の分布が均一であることを想定してメッシュを作成している。しかし、上記のデバイスは、得られる3次元点群の性質において、従来の点群生成デバイスと大きな相違がある。具体的には、上記のデバイスで得られる三次元点群データは、3次元点群を構成する点の数が大規模であり、3次元点群が表す形状が複雑であり、点群の密度が低く、点群の分布が不均一である。また、上記のデバイスでは、物体の一部分の点群データしか得られない場合がほとんどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−232241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Marching Cubes法では、2つの問題点が指摘されている。1つ目の問題は、密度が不均一な点群では最も密度が低いところに合わせて格子間隔を広げなければならず、詳細な形状表面を生成できないことである。2つ目の問題は、ある特定のパターン下では、位相的な穴があいてしまうことである。また、3次元Delaunay四面体分割は、そのまま用いただけでは、凸な形状しか表現できない。非凸形状を表現するための方法として、コピー点を用いる方法があるが、複雑な形状に対してのコピー点の生成は非常に困難である。
【0006】
本開示は、分布が不均一な点群で表される表面形状の再現性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、座標点群のデータからメッシュを作成するメッシュ作成装置であって、法線ベクトル算出部と、領域作成部と、射影部と、第1メッシュ作成部と、第2メッシュ作成部とを備える。座標点群は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す。
【0008】
法線ベクトル算出部は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれについて、座標点の位置における表面の法線ベクトルを算出するように構成される。
領域作成部は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれを選択し、選択した座標点を対象点として、対象点と、対象点の付近に位置する少なくとも2つの座標点とを内部に含むメッシュ作成領域を作成するように構成される。
【0009】
射影部は、領域作成部により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、メッシュ作成領域に含まれる対象点の法線ベクトルに直交する射影平面へ、メッシュ作成領域に含まれる対象点および座標点を射影することにより、対象点および座標点が射影平面上に射影された射影点を形成するように構成される。
【0010】
第1メッシュ作成部は、領域作成部により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、射影部により形成された射影点を頂点とする三角形状の第1メッシュを作成する構成される。
【0011】
第2メッシュ作成部は、第1メッシュ作成部により作成された第1メッシュの頂点の繋がりを、座標点と対応付けることにより、座標点を頂点とする三角形状の第2メッシュを作成するように構成される。
【0012】
このように構成された本開示のメッシュ作成装置は、対象点の位置における表面の法線ベクトルに直交する射影平面へ座標点を射影することにより射影平面上に射影された射影点を頂点とする三角形状の第1メッシュを作成する。このため、射影平面上に射影された射影点の分布が不均一であっても、射影点の分布の密度に応じた大きさのメッシュで、射影平面上における射影点を頂点とする第1メッシュを作成することができる。そして、本開示のメッシュ作成装置は、第1メッシュの頂点の繋がりを、座標点と対応付けることにより、座標点を頂点とする三角形状の第2メッシュを作成する。このため、本開示のメッシュ作成装置は、座標点群の分布が不均一であっても、座標点群の密度に応じた大きさのメッシュで表面の三次元形状を再現することができ、メッシュによる表面形状の再現性を向上させることができる。
【0013】
本開示の一態様では、対象点除外部を備えるようにしてもよい。対象点除外部は、領域作成部により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、第2メッシュ作成部により作成された第2メッシュのうち、対象メッシュ以外の第2メッシュを除外するように構成される。対象メッシュとは、第2メッシュを構成する3つの頂点のうち1つの頂点が対象点である第2メッシュである。これにより、本開示のメッシュ作成装置は、複数のメッシュ作成領域のそれぞれで第2メッシュを作成した場合に、複数のメッシュ作成領域の間で重複する第2メッシュを排除することができる。このため、本開示のメッシュ作成装置は、表面の三次元形状をメッシュで表現するために必要なデータ量を低減することができる。なお、それぞれのメッシュ作成領域で作成された第2メッシュの中で、最も表面の形状を表現する正確度が高い第2メッシュは対象メッシュであるため、対象メッシュ以外を除外している。
【0014】
本開示の一態様では、交差除外部を備えるようにしてもよい。交差除外部は、領域作成部により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、第2メッシュ作成部により作成された第2メッシュのうち、対象メッシュと隣接メッシュの両方に対して辺を共有している第2メッシュを交差メッシュとして除外するように構成される。隣接メッシュとは、三角形状である対象メッシュの三辺のうちの一辺を対象メッシュと共有している第2メッシュである。これにより、本開示のメッシュ作成装置は、対象メッシュと隣接メッシュの両方に対して辺を共有している第2メッシュを除外することができ、メッシュによる表面形状の再現性を向上させることができる。
【0015】
本開示の一態様では、角度差判断部と、変更部とを備えるようにしてもよい。角度差判断部は、領域作成部により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、対象メッシュと隣接メッシュとで共有されている辺を隣接共有辺として、隣接共有辺の端部を構成する2つの頂点における法線ベクトルの第1角度差が、対象メッシュと隣接メッシュとで共有されていない2つの頂点における法線ベクトルの第2角度差より大きいか否かを判断するように構成される。
【0016】
変更部は、第1角度差が第2角度差より大きいと角度差判断部が判断した場合に、対象メッシュと隣接メッシュを構成する4つの頂点について、対象メッシュと隣接メッシュとで共有されていない2つの頂点を端部とする辺を共有するとともに、隣接共有辺を構成する2つの頂点が共有されないようにして第2メッシュを変更するように構成される。これにより、本開示のメッシュ作成装置は、表面の三次元形状においてエッジとなっている部分のメッシュによる表面形状の再現性を向上させることができる。
【0017】
本開示の一態様では、法線ベクトル算出部は、領域設定部と、表面判断部と、拡張部と、固有ベクトル算出部とを備えるようにしてもよい。
領域設定部は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれを選択し、選択した座標点を対象点として、対象点を含むベクトル算出領域を設定するように構成される。表面判断部は、ベクトル算出領域に含まれる複数の座標点が表面を表していることを示す予め設定された表面判断条件が成立しているか否かを判断するように構成される。拡張部は、表面判断条件が成立していないと表面判断部が判断した場合に、ベクトル算出領域を拡張するように構成される。固有ベクトル算出部は、表面判断条件が成立していると表面判断部が判断した場合に、ベクトル算出領域に含まれる複数の座標点のデータから、少なくとも3つの固有ベクトルを算出し、少なくとも3つの固有ベクトルの中から、3番目に長い固有ベクトルを、対象点の法線ベクトルとして設定するように構成される。
【0018】
このように構成された本開示のメッシュ作成装置は、表面判断条件に基づいてベクトル算出領域を拡張するため、座標点群の分布が不均一であっても、座標点群の密度に応じて適切に対象点の法線ベクトルを算出することができる。
【0019】
本開示の一態様では、表面判断条件は、少なくとも3つの固有ベクトルのうち、1番目に長い固有ベクトルを第1固有ベクトルとし、2番目に長い固有ベクトルを第2固有ベクトルとして、第1固有ベクトルの固有値と、第2固有ベクトルの固有値とを用いて設定されるようにしてもよい。
【0020】
ベクトル算出領域に含まれる複数の座標点が表面を表す場合には、第1固有ベクトルの固有値と第2固有ベクトルの固有値との差が小さくなるため、第1固有ベクトルと第2固有ベクトルとの固有値の比較により、ベクトル算出領域に含まれる複数の座標点が表面を表しているか否かの判断が可能であるからである。
【0021】
本開示の別の態様は、座標点群のデータからメッシュを作成するメッシュ作成方法であって、法線ベクトル算出手順と、領域作成手順と、射影手順と、第1メッシュ作成手順と、第2メッシュ作成手順とを備える。
【0022】
法線ベクトル算出手順は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれについて、座標点の位置における表面の法線ベクトルを算出する。
領域作成手順は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれを選択し、選択した座標点を対象点として、対象点と、対象点の付近に位置する少なくとも2つの座標点とを内部に含むメッシュ作成領域を作成する。
【0023】
射影手順は、領域作成手順により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、メッシュ作成領域に含まれる対象点の法線ベクトルに直交する射影平面へ、メッシュ作成領域に含まれる対象点および座標点を射影することにより、対象点および座標点が射影平面上に射影された射影点を形成する。
【0024】
第1メッシュ作成手順は、領域作成手順により作成された複数のメッシュ作成領域のそれぞれについて、射影手順により形成された射影点を頂点とする三角形状の第1メッシュを作成する。
【0025】
第2メッシュ作成手順は、第1メッシュ作成手順により作成された第1メッシュの頂点の繋がりを、座標点と対応付けることにより、座標点を頂点とする三角形状の第2メッシュを作成する。
【0026】
本開示のメッシュ作成方法は、本開示のメッシュ作成装置にて実行される方法であり、当該方法を実行することで、本開示のメッシュ作成装置と同様の効果を得ることができる。
【0027】
本開示の更に別の態様は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータからメッシュを作成するために、コンピュータを、法線ベクトル算出部、領域作成部、射影部、第1メッシュ作成部、及び、第2メッシュ作成部として機能させるためのメッシュ作成プログラムである。
【0028】
本開示のメッシュ作成プログラムによって制御されるコンピュータは、本開示のメッシュ作成装置の一部を構成することができ、本開示のメッシュ作成装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】メッシュ作成装置1の構成を示すブロック図である。
図2】メッシュ作成処理を示すフローチャートである。
図3】法線ベクトル算出処理を示すフローチャートである。
図4】固有ベクトルv,v,vを示す図である。
図5】三次元形状表面メッシュ作成処理を示すフローチャートである。
図6】局所メッシュ作成処理を示すフローチャートである。
図7】局所メッシュ抽出処理を示すフローチャートである。
図8】形状表面メッシュ調整処理を示すフローチャートである。
図9】対象メッシュと隣接メッシュを示す図である。
図10】交差メッシュ除外処理を示すフローチャートである。
図11】対象メッシュと隣接メッシュと交差メッシュを示す図である。
図12】エッジ調整処理を示すフローチャートである。
図13】角度差dと角度差dを示す図である。
図14】共有しない頂点を共有辺とする三角形に組み換える方法を示す図である。
図15】座標点群の分布に応じた固有ベクトルv,vの相違を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のメッシュ作成装置1は、図1に示すように、表示部11と、操作入力部12と、データ記憶部13と、データ入出力部14と、制御部15とを備える。
【0031】
表示部11は、図示しない表示装置を備え、表示装置の表示画面に各種画像を表示する。
操作入力部12は、図示しないキーボードおよびマウスを介して使用者が行った入力操作を特定するための入力操作情報を出力する。
【0032】
データ記憶部13は、各種データを記憶するための記憶装置である。
データ入出力部14は、有線または無線で接続された外部機器との間でデータの入出力を行う。
【0033】
制御部15は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。マイクロコンピュータの各種機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。そして制御部15は、操作入力部12およびデータ入出力部14からの入力に基づいて各種処理を実行し、表示部11、データ記憶部13およびデータ入出力部14を制御する。
【0034】
このように構成されたメッシュ作成装置1において、制御部15は、メッシュ作成処理を実行する。なお、制御部15が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0035】
ここで、制御部15が実行するメッシュ作成処理の手順を説明する。メッシュ作成処理は、メッシュ作成処理を実行するために制御部15に記憶されたメッシュ作成プログラム20を使用者の入力操作により起動することで実行される。なおメッシュ作成プログラム20は、メッシュ作成装置1に予めインストールされていてもよいし、記録媒体またはネットワークを介してインストールされるようにしてもよい。記録媒体としては、例えば光ディスク、磁気ディスクおよび半導体メモリなどが挙げられる。
【0036】
メッシュ作成処理が実行されると、制御部15は、図2に示すように、まず、S10にて、道路地図データを作成する対象となる道路(以下、対象道路という)を選択するための画像(以下、対象道路選択画像という)を表示部11の表示画面に表示する。
【0037】
その後S20にて、使用者により選択された対象道路を特定する対象道路特定情報が操作入力部12から入力されたか否かを判断する。ここで、対象道路特定情報が入力されていない場合には、S20の処理を繰り返すことにより、対象道路特定情報が入力するまで待機する。そして、対象道路特定情報が入力されると、S30にて、対象道路特定情報により特定される対象道路とその周辺の座標点群データをデータ記憶部13から取得する。なお、対象道路とその周辺の座標点群データは、メッシュ作成処理を開始する前に予めデータ記憶部13に記憶される。
【0038】
対象道路とその周辺の座標点群データは、対象道路の三次元形状を表す複数地点の三次元座標の集合であり、例えばモービルマッピングシステム(以下、MMS)を利用して取得される。MMSは、Mobile Mapping Systemの略である。MMSでは、レーザスキャナを搭載した計測車両で対象道路を走行することにより、対象道路とその周辺の座標点群データを計測する。対象道路とその周辺の座標点群データは、計測車両の現在位置と、レーザスキャナがパルスレーザ光を照射した方向と、パルスレーザ光を照射してから反射レーザ光を検出するまでの時間に基づいて、レーザ光を反射した地点の三次元座標を計測することにより取得される。座標点群データのデータ構造は、テキスト形式でもよいし、既に流通している一般的な点群フォーマット(例えば、LAS形式)を用いたものでもよく、その形式を問わない。以下、S30で取得した座標点群データにより表される座標点群を構成する複数の点のそれぞれを座標点という。
【0039】
そしてS40にて、法線ベクトル算出処理を実行する。ここで、S40の法線ベクトル算出処理の手順を説明する。本実施形態の法線ベクトル算出処理では、例えば主成分分析を用いた手法の一つを採用して法線ベクトルを算出する。主成分分析を用いた手法では、後述する対象点と、対象点の付近に位置する1または複数の座標点とを平面に近似し、その平面の法線ベクトルを対象点の法線ベクトルとみなす。
【0040】
法線ベクトル算出処理が実行されると、制御部15は、図3に示すように、まずS210にて、座標点群を構成する複数の座標点の中から、法線ベクトルが算出されていない座標点を1つ選択する。以下、S210で選択された座標点を対象点という。またS220にて、S210で選択した対象点を中心として予め設定された領域設定半径を有する球状のベクトル算出領域を設定する。なお、処理の高速化のために、点群の密度、傾向およびノイズの程度等を考慮した上で、ある程度余裕を持たせた領域設定半径を設定することにより、後述するS280における拡張回数を減らしている。
【0041】
そしてS230にて、ベクトル算出領域内に含まれる座標点の数が予め設定された算出判定値(例えば、10)以上であるか否かを判断する。ここで、含まれる座標点の数が算出判定値未満である場合には、S280に移行する。一方、含まれる座標点の数が算出判定値以上である場合には、S240にて、S220で設定されたベクトル算出領域内に含まれる全ての座標点に対して、下式(1),(2),(3)に示す分散V(x),V(y),V(z)と、下式(4),(5),(6)に示す共分散Cov(x,y),Cov(y,z),Cov(z,x)を算出する。なお、下式(1)〜(6)におけるx,y,zはそれぞれ、座標点のX,Y,Z座標の値である。下式(1)〜(6)におけるnは、ベクトル算出領域内に含まれる座標点の数である。
【0042】
【数1】
【0043】
さらにS250にて、S240で算出した分散V(x),V(y),V(z)と共分散Cov(x,y),Cov(y,z),Cov(z,x)を用いて、下式(7)に示す分散共分散行列Aを作成する。
【0044】
【数2】
【0045】
そしてS260にて、下式(8)を用いて、分散共分散行列Aの固有値λ,λ,λを算出する。但し、λ≧λ≧λである。なお、下式(8)における行列Eは、下式(9)で表される。
【0046】
【数3】
【0047】
次にS270にて、λ/(λ+λ)が予め設定された算出領域判定値より大きいか否かを判断する。
固有値λ,λ,λは、それぞれに対応する固有ベクトルの方向についての偏り度合いを表している。一般的には、これら3つの固有値を正規化することにより、それぞれの方向の偏り度合いを評価する。これを寄与率という。しかし、本実施形態では、最小の固有値を評価に用いず、その他の2つの固有値を正規化した値により偏り度合いを評価する。これは、表面の特徴を十分に表しているか否かの判定には、厚み方向の偏りの情報は不要であるためである。
【0048】
ここで、λ/(λ+λ)が算出領域判定値以下である場合には、S280に移行する。
そしてS280に移行すると、ベクトル算出領域を拡張し、S230に移行する。具体的には、現時点におけるベクトル算出領域の2倍の半径を有する球状の領域を新たなベクトル算出領域として設定する。
【0049】
一方、λ/(λ+λ)が算出領域判定値より大きい場合には、S290にて、固有値λ,λ,λのそれぞれに対応する固有ベクトルv,v,vを算出する。分散共分散行列の性質により、この3つの固有ベクトルv,v,vはそれぞれ直交しており、ベクトル算出領域内に含まれる全ての座標点の形状的な傾向により方向付けられている。さらに、固有値により各固有ベクトルの方向の相関の強さがわかる。つまり、最も相関の弱い固有ベクトルは法線ベクトルとみなすことができる。例えば、図4に示すように、複数の座標点の形状的な傾向が平面PLにより表されているとすると、固有ベクトルv,vは平面PLに対して平行となり、固有ベクトルvは平面PLに対して垂直となる。
【0050】
そして、S290の処理が終了すると、図3に示すように、S300にて、固有ベクトルvを、S210で選択された対象点の法線ベクトルとして登録する。さらにS310にて、現時点におけるベクトル算出領域を、S210で選択された対象点の特徴領域として登録する。その後S320にて、座標点群を構成する全ての座標点が対象点として選択されたか否かを判断する。ここで、全ての座標点が選択されていない場合には、S210に移行する。一方、全ての座標点が選択された場合には、法線ベクトル算出処理を終了する。
【0051】
そして、法線ベクトル算出処理が終了すると、図2に示すように、S50にて、三次元形状表面メッシュ作成処理を実行する。ここで、S50の三次元形状表面メッシュ作成処理の手順を説明する。
【0052】
三次元形状表面メッシュ作成処理が実行されると、制御部15は、図5に示すように、まずS410にて、座標点群を構成する複数の座標点の中から、S420の処理が行われていない座標点を1つ選択する。以下、S410で選択された座標点を対象点という。そしてS420にて、S410で選択した対象点を用いて局所メッシュ作成処理を実行する。ここで、S420の局所メッシュ作成処理の手順を説明する。
【0053】
局所メッシュ作成処理が実行されると、制御部15は、図6に示すように、まずS510にて、S410で選択した対象点の特徴領域内に含まれる座標点群を抽出する。そしてS520にて、S410で選択した対象点の対象点の法線ベクトルに直交する平面(以下、射影平面)へ、S510で抽出した座標点群を射影する。これにより、座標点を射影することで形成される射影点が射影平面上に分布する。
【0054】
さらにS530にて、射影平面上に分布している複数の射影点について、射影平面上で周知の2次元Delaunay三角形分割を行うことにより、三角形で構成されるメッシュを作成する。
【0055】
そしてS540にて、S410で選択した対象点の特徴領域内に含まれる座標点群について三角形メッシュを作成し、局所メッシュ作成処理を終了する。具体的には、射影平面上に分布している複数の射影点を頂点として作成されたメッシュの頂点の繋がりを、射影する前の座標点と対応付けることにより、三角形メッシュを作成する。以下、S540で作成された三角形メッシュを局所メッシュともいう。
【0056】
そして局所メッシュ作成処理が終了すると、図5に示すように、S430にて、局所メッシュ抽出処理を実行する。ここで、S430の局所メッシュ抽出処理の手順を説明する。
【0057】
局所メッシュ抽出処理が実行されると、制御部15は、図7に示すように、まずS610にて、S430で作成された局所メッシュの中から、S610で未だ選択されていない局所メッシュを1つ選択する。以下、S610で選択された局所メッシュを対象メッシュともいう。
【0058】
そしてS620にて、S610で選択した局所メッシュが、S410で選択した対象点を含んでいるか否かを判断する。ここで、対象点を含んでいない場合には、S650に移行する。一方、対象点を含んでいる場合には、S630にて、S610で選択された局所メッシュ(すなわち、対象メッシュ)が後述のS640で既に登録されているか否かを判断する。
【0059】
ここで、対象メッシュが登録されている場合には、S650に移行する。一方、対象メッシュが登録されていない場合には、S640にて、対象メッシュを形状表面メッシュとして登録して、S650に移行する。
【0060】
そしてS650に移行すると、S430で作成された全ての局所メッシュが対象メッシュとして選択されたか否かを判断する。ここで、全ての局所メッシュが選択されていない場合には、S610に移行する。一方、全ての局所メッシュが選択された場合には、局所メッシュ抽出処理を終了する。
【0061】
そして局所メッシュ抽出処理が終了すると、図5に示すように、S440にて、座標点群を構成する全ての座標点が対象点として選択されたか否かを判断する。ここで、全ての座標点が選択されていない場合には、S410に移行する。一方、全ての座標点が選択された場合には、S450にて、形状表面メッシュ調整処理を実行する。ここで、S450の形状表面メッシュ調整処理の手順を説明する。
【0062】
形状表面メッシュ調整処理が実行されると、制御部15は、図8に示すように、まずS710にて、S430の局所メッシュ抽出処理で登録された形状表面メッシュの中から、S710で未だ選択されていない形状表面メッシュを1つ選択する。以下、S710で選択された形状表面メッシュを対象メッシュともいう。
【0063】
またS720にて、S710で選択された対象メッシュに隣接する形状表面メッシュを1つ選択する。対象メッシュに隣接する形状表面メッシュとは、三角形状である対象メッシュの三辺のうちの一辺を共有している形状表面メッシュである。以下、S720で選択された形状表面メッシュを隣接メッシュともいう。例えば図9に示すように、点P1と点P2と点P3で構成される形状表面メッシュMS1を対象メッシュとした場合に、点P1と点P2と点P4で構成される形状表面メッシュMS2は隣接メッシュとして選択される。
【0064】
そしてS720の処理が終了すると、図8に示すように、S730にて、交差メッシュ除外処理を実行する。ここで、S730の交差メッシュ除外処理の手順を説明する。
交差メッシュ除外処理が実行されると、制御部15は、図10に示すように、まずS810にて、S430の局所メッシュ抽出処理で登録された形状表面メッシュの中から、対象メッシュと隣接メッシュを除いて、S710で未だ選択されていない形状表面メッシュを1つ選択する。対象メッシュとは、S710で選択された形状表面メッシュである。隣接メッシュとは、S720で選択された形状表面メッシュである。以下、S810で選択された形状表面メッシュを除外候補メッシュともいう。
【0065】
そしてS820にて、S810で選択した除外候補メッシュは、S710で選択された対象メッシュと辺を共有しているか否かを判断する。ここで、辺を共有していない場合には、S850に移行する。一方、辺を共有している場合には、S830にて、S810で選択した除外候補メッシュは、S720で選択された隣接メッシュと辺を共有しているか否かを判断する。
【0066】
ここで、辺を共有していない場合には、S850に移行する。一方、辺を共有している場合には、S840にて、S810で選択した除外候補メッシュを、形状表面メッシュから除外して、S850に移行する。
【0067】
例えば図11に示すように、点P1と点P3と点P4で構成される形状表面メッシュMS3は、対象メッシュである形状表面メッシュMS1と、隣接メッシュである形状表面メッシュMS2との両方に対して辺を共有している。このため、形状表面メッシュMS3は、点P3と点P4とを結ぶ辺が、対象メッシュである形状表面メッシュMS1と交差している。このように、対象メッシュする除外候補メッシュは、形状表面メッシュから除外される。
【0068】
そしてS850に移行すると、図10に示すように、S430の局所メッシュ抽出処理で登録された形状表面メッシュのうち、対象メッシュと隣接メッシュを除いた全ての形状表面メッシュが除外候補メッシュとして選択されたか否かを判断する。ここで、全ての形状表面メッシュが選択されていない場合には、S810に移行する。一方、全ての形状表面メッシュが選択された場合には、交差メッシュ除外処理を終了する。
【0069】
そして交差メッシュ除外処理が終了すると、図8に示すように、S740にて、エッジ調整処理を実行する。ここで、S740のエッジ調整処理の手順を説明する。
エッジ調整処理が実行されると、制御部15は、図12に示すように、まずS910にて、S710で選択された対象メッシュと、S720で選択された隣接メッシュとで共有する辺の端点における法線ベクトルの角度差dを算出する。さらにS920にて、S710で選択された対象メッシュと、S720で選択された隣接メッシュとで共有していない2つの頂点における法線ベクトルの角度差dを算出する。
【0070】
例えば図13に示すように、点P1と点P2と点P3で構成される形状表面メッシュMS1を対象メッシュとし、点P1と点P2と点P4で構成される形状表面メッシュMS2を隣接メッシュとする。この場合に、対象メッシュと隣接メッシュとで共有する辺の端点は点P1と点P2である。そして、点P1における法線ベクトルVn1と点P2における法線ベクトルVn2との間で成す角度が角度差dである。また、対象メッシュと隣接メッシュとで共有していない2つの頂点は点P3と点P4である。そして、点P3における法線ベクトルVn3と点P4における法線ベクトルVn4との間で成す角度が角度差dである。
【0071】
そしてS920の処理が終了すると、図12に示すように、S930にて、角度差dが角度差dより大きいか否かを判断する。ここで、角度差dが角度差dより大きい場合には、S940にて、共有しない頂点を共有辺とする三角形に組み換えて、エッジ調整処理を終了する。例えば図14に示すように、点P1と点P2と点P3で構成される形状表面メッシュMS1と、点P1と点P2と点P4で構成される形状表面メッシュMS2を、点P1と点P3と点P4で構成される形状表面メッシュMS11と、点P2と点P3と点P4で構成される形状表面メッシュMS12に変更する。
【0072】
一方、角度差dが角度差d以下である場合には、エッジ調整処理を終了する。
そしてエッジ調整処理が終了すると、図8に示すように、S750にて、S710で選択された対象メッシュに隣接する形状表面メッシュが隣接メッシュとして全て選択されたか否かを判断する。ここで、全ての隣接メッシュが選択されていない場合には、S720に移行する。一方、全ての隣接メッシュが選択された場合には、S760にて、S430の局所メッシュ抽出処理で登録された形状表面メッシュが対象メッシュとして全て選択されたか否かを判断する。ここで、全ての形状表面メッシュが選択されていない場合には、S710に移行する。一方、全ての形状表面メッシュが選択された場合には、形状表面メッシュ調整処理を終了する。
【0073】
そして形状表面メッシュ調整処理が終了すると、図6に示すように、S460にて、形状表面メッシュを再登録する。具体的には、S840にて除外された形状表面メッシュを登録から除外し、S940で頂点を組み換えることで形成された形状表面メッシュを新たに登録する。
【0074】
そしてS460の処理が終了すると、三次元形状表面メッシュ作成処理を終了する。
そして三次元形状表面メッシュ作成処理が終了すると、図2に示すように、S60にて、S50で形状表面メッシュとして登録されたメッシュのデータをデータ記憶部13に記憶し、メッシュ作成処理を終了する。
【0075】
このように構成されたメッシュ作成装置1は、座標点群のデータからメッシュを作成する。座標点群は、三次元座標で表される座標点の集合により対象道路における表面の三次元形状を示す。
【0076】
メッシュ作成装置1は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれについて、座標点の位置における表面の法線ベクトルを算出する。
メッシュ作成装置1は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれを選択し、選択した座標点を対象点として、対象点と、対象点の付近に位置する少なくとも2つの座標点とを内部に含む特徴領域を作成する。
【0077】
メッシュ作成装置1は、複数の特徴領域のそれぞれについて、特徴領域に含まれる対象点の法線ベクトルに直交する射影平面へ、特徴領域に含まれる対象点および座標点を射影することにより、対象点および座標点が射影平面上に射影された射影点を形成する。
【0078】
メッシュ作成装置1は、複数の特徴領域のそれぞれについて、形成された射影点を頂点とする三角形状のメッシュを作成する。
メッシュ作成装置1は、射影点を頂点とする三角形状のメッシュの頂点の繋がりを、座標点と対応付けることにより、座標点を頂点とする三角形状の三角形メッシュを作成する。
【0079】
このようにメッシュ作成装置1は、対象点の位置における表面の法線ベクトルに直交する射影平面へ座標点を射影することにより射影平面上に射影された射影点を頂点とする三角形状のメッシュを作成する。このため、射影平面上に射影された射影点の分布が不均一であっても、射影点の分布の密度に応じた大きさのメッシュで、射影平面上における射影点を頂点とするメッシュを作成することができる。そして、メッシュ作成装置1は、射影点を頂点とする三角形状のメッシュの頂点の繋がりを、座標点と対応付けることにより、座標点を頂点とする三角形状の三角形メッシュを作成する。このため、メッシュ作成装置1は、座標点群の分布が不均一であっても、座標点群の密度に応じた大きさのメッシュで表面の三次元形状を再現することができ、メッシュによる表面形状の再現性を向上させることができる。
【0080】
またメッシュ作成装置1は、複数の特徴領域のそれぞれについて、作成された三角形メッシュのうち、対象メッシュ以外の三角形メッシュを除外するように構成される。対象メッシュとは、三角形メッシュを構成する3つの頂点のうち1つの頂点が対象点である三角形メッシュである。これにより、メッシュ作成装置1は、複数の特徴領域のそれぞれで三角形メッシュを作成した場合に、複数の特徴領域の間で重複する三角形メッシュを排除することができる。このため、メッシュ作成装置1は、表面の三次元形状をメッシュで表現するために必要なデータ量を低減することができる。なお、それぞれの特徴領域で作成された三角形メッシュの中で、最も表面の形状を表現する正確度が高い三角形メッシュは対象メッシュであるため、対象メッシュ以外を除外している。
【0081】
またメッシュ作成装置1は、作成された複数の特徴領域のそれぞれについて、作成された三角形メッシュのうち、対象メッシュと隣接メッシュの両方に対して辺を共有している三角形メッシュを交差メッシュとして除外する。隣接メッシュとは、三角形状である対象メッシュの三辺のうちの一辺を対象メッシュと共有している三角形メッシュである。これにより、メッシュ作成装置1は、対象メッシュと隣接メッシュの両方に対して辺を共有している三角形メッシュを除外することができ、メッシュによる表面形状の再現性を向上させることができる。
【0082】
またメッシュ作成装置1は、作成された複数の特徴領域のそれぞれについて、対象メッシュと隣接メッシュとで共有されている辺を隣接共有辺として、隣接共有辺の端部を構成する2つの頂点における法線ベクトルの角度差dが、対象メッシュと隣接メッシュとで共有されていない2つの頂点における法線ベクトルの角度差dより大きいか否かを判断する。そしてメッシュ作成装置1は、角度差dが角度差dより大きいと判断した場合に、対象メッシュと隣接メッシュを構成する4つの頂点について、対象メッシュと隣接メッシュとで共有されていない2つの頂点を端部とする辺を共有するとともに、隣接共有辺を構成する2つの頂点が共有されないようにして三角形メッシュを変更する。これにより、メッシュ作成装置1は、表面の三次元形状においてエッジとなっている部分のメッシによる表面形状の再現性を向上させることができる。
【0083】
またメッシュ作成装置1は、座標点群を構成する複数の座標点のそれぞれを選択し、選択した座標点を対象点として、対象点を含むベクトル算出領域を設定する。メッシュ作成装置1は、λ/(λ+λ)が予め設定された算出領域判定値より大きいか否かを判断する。メッシュ作成装置1は、λ/(λ+λ)が算出領域判定値以下であると判断した場合に、ベクトル算出領域を拡張する。メッシュ作成装置1は、λ/(λ+λ)が算出領域判定値より大きいと判断した場合に、ベクトル算出領域に含まれる複数の座標点のデータから、3つの固有ベクトルv,v,vを算出し、3つの固有ベクトルv,v,vの中から、3番目に長い固有ベクトルvを、対象点の法線ベクトルとして設定する。
【0084】
このようにメッシュ作成装置1は、λ/(λ+λ)が予め設定された算出領域判定値より大きいという表面判断条件に基づいてベクトル算出領域を拡張するため、座標点群の分布が不均一であっても、座標点群の密度に応じて適切に対象点の法線ベクトルを算出することができる。
【0085】
なお、上記のように表面判断条件は、固有ベクトルvの固有値λと、固有ベクトルvの固有値λとを用いて設定される。図15の分布D1に示すように、複数の座標点の分布が一方向に偏っている場合には、固有ベクトルvの大きさ(すなわち、固有値λ)と固有ベクトルvの大きさ(すなわち、固有値λ)と差が大きい。一方、図15の分布D2に示すように、複数の座標点の分布が一方向に偏っていない場合には、固有ベクトルvの大きさと固有ベクトルvの大きさと差が小さい。このため、固有ベクトルvと固有ベクトルvとの固有値の比較により、ベクトル算出領域に含まれる複数の座標点が表面を表しているか否かの判断が可能である。
【0086】
以上説明した実施形態において、対象道路は対象物の一例に相当し、S40が法線ベクトル算出部および法線ベクトル算出手順としての処理に相当し、S210〜S280が領域作成部および領域作成手順としての処理に相当する。
【0087】
また、S520が射影部および射影手順としての処理に相当し、S530が第1メッシュ作成部および第1メッシュ作成手順としての処理に相当し、S540が第2メッシュ作成部および第2メッシュ作成手順としての処理に相当する。
【0088】
また、S430が対象点除外部としての処理に相当し、S730が交差除外部としての処理に相当し、S910〜S930が角度差判断部としての処理に相当し、S940が変更部としての処理に相当する。
【0089】
また、S210,S220が領域設定部としての処理に相当し、S230〜S270が表面判断部としての処理に相当し、S280が拡張部としての処理に相当し、S290,S300が固有ベクトル算出部としての処理に相当し、S270の判断条件が表面判断条件に相当する。
【0090】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば上記実施形態では、対象道路とその周辺の座標点群データからメッシュを作成するものを示したが、座標点群データは、道路の形状を示すものに限定されない。例えば建築物のように、座標点群データにより形状を表すことができるものであればよい。そして、メッシュ作成装置1が作成したメッシュは、地物認識、土量計算および応力計算を行ったり、メッシュに沿って線を作成したりするために利用することができる。
【0091】
また上記実施形態では、2次元Delaunay三角形分割の手法を用いて三角形メッシュを作成するものを示したが、三角形メッシュを作成する手法は2次元Delaunay三角形分割に限定されるものではない。
【0092】
また上記実施形態では、対象道路特定情報により特定される対象道路の座標点群データからメッシュを作成するものを示したが、使用者に対象道路を選択させる処理を行うことなく、データ記憶部13に記憶されている全ての座標点群データからメッシュを作成するようにしてもよい。
【0093】
上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0094】
なお、前述したメッシュ作成装置の他、当該メッシュ作成装置を構成要素とするシステム、当該メッシュ作成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、メッシュ作成方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0095】
1…メッシュ作成装置、13…データ記憶部、15…制御部、20…メッシュ作成プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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