【文献】
GARBE D. et al,Journal of Peptide Science,16(2010),p.575-581
【文献】
WANG Z. et al,Protein Expression and Purification,82(2012),p.174-178
【文献】
WOOD D.W. et al,J. Biol. Chem.,Vol.289 No.21(2014 May),p.14512-14519
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペプチド結合により結合したN−インテインポリペプチドとN−インテイン可溶化パートナーを含む融合タンパク質であって、前記N−インテイン可溶化パートナーが、15kDa未満の分子量、60未満の脂肪族指数(Aliphatic Index)値、及び−1未満の疎水度大規模平均値を有し、前記可溶化パートナーの非存在下で発現されたN−インテインポリペプチドと比較して前記N−インテインポリペプチドの可溶性を増大させ、C−インテインポリペプチドと複合体化した場合のN−インテインポリペプチドの触媒活性を維持する、融合タンパク質。
前記GP41−1 N−インテインの変異体が、配列番号1の7位にアラニン、65位にトレオニン残基又はアラニン残基、並びに89位にメチオニン残基、リシン残基又はアスパラギン残基のいずれかを有する、請求項3に記載の融合タンパク質。
前記融合タンパク質が、大腸菌(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、トウモロコシ(Zea maize)、タバコ(Nicotinia tabacum)、ニンジン(Daucus carota)、SF9細胞、CHO細胞、NS0細胞、又はHEK293細胞において発現される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
前記固体支持体が、多孔性ガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アガロース、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリスチレン又はこれらの誘導体を含む、請求項20〜24のいずれか1項に記載のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス。
前記融合タンパク質中の前記N−インテインポリペプチドは、前記融合タンパク質が前記固体支持体に結合されているとき、前記固体支持体から離れる方向に配向される、請求項20〜29のいずれか1項に記載のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態例の説明を以下に行う。
【0017】
I.定義
本開示をさらにわかりやすくするために、初めにいくつかの用語を定義する。さらなる定義は、詳細な説明全体を通じて記載する。別に定義されない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語は全て、本発明が関連する技術分野の通常の技術者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
用語「目的の生体分子」及び「標的分子」は、本明細書において置き換え可能に用いられ、生物学的分子(例えば、タンパク質)、材料若しくは高分子集合体を指し、これは、例えば、混合物(例えば、粗タンパク質混合物)から精製されるか、又は取り出される。例示的な目的の生体分子として、例えば、抗体(例えば、モノクローナル抗体)を含む組換えペプチド及びタンパク質、ワクチン、ウイルス、並びに他の高分子集合体、例えば、生体分子及び合成成分の両方を含有し得るウイルス様粒子及びナノ粒子が挙げられる。例として、目的の生体分子は、以下のものを含み得る:タンパク質及び生体分子集合体(例えば、組換えDNA技術により生成される)、例えば、ホルモン(例えば、インスリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、組織プラスミノーゲン活性化因子)、モノクローナル抗体(mAb)及びmAb−誘導体(例えば、二重特異性mAb、Fab、scFv、サメ(shark)及びラクダ科(camelid)抗体)、スカフォールド由来治療薬(例えば、DARPin、アフィボディ(Affibody)、アンチカリン)、治療用酵素(例えば、αガラクトシダーゼA、α−L−イズロニダーゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、グルコセレブロシダーゼ)、毒素(例えば、ボツリヌス菌、CRM197、リシン)、組換え体ワクチン(例えば、炭疽、ジフテリア、破傷風、肺炎、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス)、ウイルス様粒子(例えば、B型肝炎、ヒトパピローマ、インフルエンザ、パルボウイルス、ノーウォーク(Norwalk)ウイルス)、並びに工業用酵素(例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、BENZONASE(商標)酵素、DENERASE(商標)酵素、ウレアーゼ、ペプシンなど)及び診断試薬(例えば、グルコース及び乳酸デヒドロゲナーゼ、DNAポリメラーゼ、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、制限酵素、ハイブリドーマ由来酵素など)。特定の実施形態では、標的分子は、治療標的に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。
【0019】
用語「融合タンパク質」は、ペプチド結合によって結合された2つ以上の異種ポリペプチドの全部又は一部を含む、天然、合成、半合成若しくは組換え単一タンパク質分子を指す。
【0020】
用語「ペプチド(性)」は、本明細書で使用されるとき、長さが、2アミノ酸長より長いペプチド及びタンパク質を指し、これは、非アミノ酸分子(例えば、発色団、薬剤、毒素、イメージング用造影剤など)も含み得る。
【0021】
用語「ポリペプチド」は、特定の長さではなく、アミノ酸のポリマーを指し;従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。
【0022】
用語「分断インテイン」は、本明細書で使用されるとき、天然から単離されるか、又は組換えDNA技術により作製されるタンパク質を指し、これは、以下の特性を有する:(1)タンパク質は、高い親和性及び選択性で相互作用する2つのハーフ部分で存在し;(2)2つのハーフ部分は、触媒活性に必要なあらゆるインテイン配列を含んでいなければならないと共に、付加された非インテインペプチド配列も含有してもよく;(3)タンパク質は、2つのハーフ部分が密接に結合したときだけ酵素活性を有し;並びに(4)酵素活性は、部位選択的ペプチド切断又は連結であり、これは、非インテインペプチド配列からインテイン配列を分離するか、又は連続的線状若しくは環状タンパク質に非インテインペプチド配列を連結する上で役立つ。
【0023】
用語「相補的インテイン」は、本明細書において、分断インテインペアのN−インテイン及びC−インテイン部分を指すために用いられる。
【0024】
用語「N−インテイン」は、本明細書で使用されるとき、単一のインテインポリペプチドのN末端部分と相同性を有するインテインポリペプチドを指し、これは、相補的C−インテインと結合して、活性インテイン酵素を形成する。
【0025】
用語「C−インテイン」は、本明細書で使用されるとき、単一のインテインポリペプチドのC末端部分と相同性を有するインテインポリペプチドを指し、これは、相補的N−インテインと結合して、活性インテイン酵素を形成する。
【0026】
用語「エクステイン」は、本明細書で使用されるとき、天然でN−及びC−インテインに融合するN−及びC末端ペプチド配列を指し、これらは、分断インテインの酵素作用によって操作(例えば、切断又は連結)される。
【0027】
用語「リガンド」は、本明細書で使用されるとき、特に、クロマトグラフィー樹脂などの表面と結合すると、別のものとの強力且つ選択的な相互作用が可能な分子を指す。一部の実施形態では、リガンドは、本明細書に記載するN−インテイン融合タンパク質であってもよい。
【0028】
用語「可溶化パートナー」は、本明細書で使用されるとき、N−インテインと融合すると、可溶化パートナーの非存在下で発現された可溶性N−インテインの量と比較して、大腸菌(E.coli)で発現される可溶性N−インテインの量を増大(例えば、増加、促進又は維持)するタンパク質を指す。例えば、様々な実施形態において、可溶化パートナーとの融合タンパク質としてN−インテインを発現すると、可溶化パートナーなしで発現した場合のインテインの可溶性と比較して、少なくとも約10%(例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上)N−インテインの可溶性を増加することができる。
【0029】
一実施形態では、可溶化パートナーE(配列番号25)をN−インテインに融合させ、これによって得られる融合タンパク質の可溶性を用いて、実験ベースラインを賦与する。これは、特に、N−インテインのみが可溶性又は安定性でない場合に有用である。
【0030】
用語「親分子」又は「野生型(wt)対応物」又は「wtタンパク質」又は「wtドメイン」は、本明細書で使用されるとき、その実質的にネイティブな形態の対応するタンパク質(例えば、N−インテイン、N−インテイン可溶化パートナー)、又はタンパク質のドメインを指すことが意図され、これは、一般に、本明細書では対照として用いられる。
【0031】
用語「配列同一性」は、2つのヌクレオチド若しくはアミノ酸配列が、任意選択で、例えば、デフォルトギャップ加重を用いたプログラムGAP若しくはBESTFITなどにより、最適にアラインメントされるとき、少なくとも70%配列同一性、又は少なくとも80%配列同一性、又は少なくとも85%配列同一性、又は少なくとも90%配列同一性、又は少なくとも95%若しくはそれ以上の配列同一性を有することを意味する。配列比較のために、典型的には一方の配列は、試験配列が比較される基準配列(例えば、親配列)として役立つ。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び基準配列をコンピュータに入力し、必要であれば、配列座標を指定した後、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列の配列同一性のパーセントを計算する。
【0032】
比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の部分相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性方法の検索により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる履行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は視覚検査(一般に、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biologyを参照)により、実施することができる。配列同一性のパーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムであり、これについては、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)から一般に入手可能である(米国立衛生研究所(National Institute of Health)NCBIインターネットサーバから一般に閲覧可能)。典型的に、デフォルトプログラムパラメータを用いて、配列比較を実施することができるが、カスタマイズしたパラメータを使用することもできる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、語長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)参照)。
【0033】
用語「クロマトグラフィー」は、本明細書で使用されるとき、混合物中の他の分子から目的の標的分子を分離して、それを単離することができる動的分離技術を指す。典型的には、クロマトグラフィー法において、移動相(液体又は気体)が、目的の標的分子を含有するサンプルを、固定相(通常、固体)媒体にわたって、又はそれを介して輸送する。固定相に対する分配又は親和性の差によって様々な分子を分離するが、移動相は、様々な時点で異なる分子を含有する。
【0034】
用語「アフィニティクロマトグラフィー」は、本明細書で使用されるとき、一様式のクロマトグラフィーを指し、ここで、分離しようとする標的分子は、標的分子と特異的に相互作用する分子(例えば、N−インテイン及びN−インテイン可溶化因子を含む本発明のアフィニティクロマトグラフィーリガンド)との相互作用により分離される。一実施形態では、アフィニティクロマトグラフィーは、本明細書に記載する通り、N−インテインベースのリガンドを担持する固体支持体への標的分子(例えば、免疫グロブリン又はFc含有タンパク質)を含有するサンプルの添加を含む。
【0035】
用語「アフィニティマトリックス」又は「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」は、本明細書で使用されるとき、アフィニティクロマトグラフィーリガンド(例えば、N−インテイン融合タンパク質又はそのドメイン)が結合したクロマトグラフィー支持体を指す。リガンドは、アフィニティ相互作用により目的の分子(例えば、相補的C−インテイン融合タンパク質)に結合することができ、この分子は、混合物から精製されるか、又は取り出される。
【0036】
用語「免疫グロブリン」、「Ig」又は「抗体」(本明細書では置き換え可能に使用される)は、2つの重鎖と2つの軽鎖から構成される4−ポリペプチド鎖基本構造を有するタンパク質を指し、前記鎖は、例えば、鎖間ジスルフィド結合により安定化され、これは、抗原に特異的に結合する能力を有する。用語「一本鎖免疫グロブリン」又は「一本鎖抗体」(本明細書では置き換え可能に使用される)は、1つの重鎖と1つの軽鎖から構成される2−ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、前記鎖は、例えば、鎖間ペプチドリンカーにより安定化され、これは、抗原に特異的に結合する能力を有する。用語「ドメイン」は、例えば、β.シート及び/又は鎖間ジスルフィド結合により安定化される、ペプチドループ(例えば、3〜4ペプチドループ)を含む重鎖又は軽鎖ポリペプチドの球状領域を指す。ドメインはさらに、本明細書において、「定常」又は「可変」とも呼ばれるが、これは、「定常」ドメインの場合には、様々なクラスメンバーのドメイン内の配列変化の相対的欠如に、又は「可変」ドメインの場合には、様々なクラスメンバーのドメイン内の有意な配列変化に基づくものである。抗体又はポリペプチド「ドメイン」は、当技術分野において、抗体又はポリペプチド「領域」と置き換え可能に称されることが多い。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域又は「CL」ドメインと置き換え可能に称される。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域又は「CH」ドメインと置き換え可能に称される。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域又は「VL」ドメインと置き換え可能に称される。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域又は「VH」ドメインと置き換え可能に称される。
【0037】
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれでもよく、単量体又は多量体形態で存在してよく、例えば、五量体形態で存在するIgM抗体及び/又は単量体、二量体若しくは多量体で存在するIgA抗体であってもよい。用語「断片」は、インタクトな若しくは完全な抗体又は抗体鎖に比べて少ないアミノ酸残基を含む抗体又は抗体鎖の一部若しくは部分を指す。断片は、インタクトな若しくは完全な抗体又は抗体鎖の化学的若しくは酵素的処理によって取得することができる。断片はまた、組換え手段によって得ることもできる。例示的な断片として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc及び/又はFv断片が挙げられる。
【0038】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、本明細書において置き換え可能に用いられ、任意の長さのヌクレオチド、リボヌクレオシド又はデオキシリボヌクレオシドのいずれかの多量体形態を指す。これらの用語は、一本鎖、二本鎖若しくは三本鎖DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA−RNAハイブリッド、あるいは、プリン及びピリミジン塩基、又は他の天然のヌクレオチド塩基、化学的若しくは生化学的に修飾された、非天然若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含むポリマーを包含する。ポリヌクレオチドの骨格は、糖及びリン酸基(典型的には、RNA若しくはDNAに見出され得る通り)、あるいは修飾若しくは置換された糖又はリン酸基を含んでもよい。さらに、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成して、適切な条件下でこれらの鎖をアニーリングするか、又は適切なプライマーと共にDNAポリメラーゼを用いて、相補鎖を新たに合成するかの、いずれかによる化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から取得することもできる。核酸分子は、例えば、遺伝子若しくは遺伝子断片、1つ又は複数のエキソン、1つ又は複数のイントロン、mRNA、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーといった多様な形態を取ることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチド、ウラシル、フルオロリボース及びチオエートなどのその他の糖及び連結基、並びにヌクレオチド分枝を含み得る。本明細書で使用されるとき、「DNA」又は「ヌクレオチド配列」は、塩基A、T、C及びGだけではなく、メチル化ヌクレオチドなどの塩基の類似体若しくは修飾形態、非荷電結合及びチオエートなどのヌクレオチド間修飾、糖類似体の使用、並びにポリアミドなどの修飾及び/又は別の骨格構造のいずれかも含む。特定の実施形態では、核酸は、本明細書に記載する通り、N−インテイン融合タンパク質又はその変異体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0039】
II.インテインベースの融合タンパク質
インテインは、1990年に発見され、これらの分子の天然の生活環において機能するプロテアーゼ及びリガーゼ活性の両方を含む1クラスの自己触媒酵素である。インテイン試薬は、ペプチド基質の切断、連結、及び環状化に有用性を有することが見出されている。1998年、「分断インテイン」と呼ばれる新規クラスのインテインが発見され、この酵素は、N−インテイン及びC−インテイン(相補的ハーフインテイン)と呼ばれる2つの部分として天然に存在する。分断インテインは、多種多様な下等原核生物に見出されている(Zettler J.,et al.,FEBS Letters,553:909−914(2009);Dassa B.,et al.,Biochemistry,46:322−330(2007);Choi J.,et al.,J Mol Biol.556:1093−1106(2006);Caspi,et al.,Mol Microbiol,.50:1569−1577(2003);Liu X.及びYang J.,J Biol Chem.,275:26315−26318(2003);Wu H.,et al.,Proc Natl Acad Sci USA.5:9226−9231(1998))が、真核生物において分断インテインは一切見出されていない(New England Biolabs(http://tools.neb.com/inbase/list.php)により維持されるインテインデータベースを参照のこと)。いずれもエクステイン配列との連結に関して、極めて高速且つかなり乱交雑である2つの分断インテインが近年明らかにされている。一方のクラスは、Npu DnaEインテイン(Iwai I.,et al.,FEBS Letters 550:1853−1858(2006);Zettler J.,et al.,FEBS Letters,553:909−914(2009))であり、他方のクラスは、メタゲノムデータから同定されたGP41分断インテイン(Carvajal−Vallejos P.,et al.,J.Biol.Chem.287:28686−28696(2012);国際公開第2013045632号パンフレット)である。
【0040】
エクステイン(インテイン活性により結合される2つのハーフタンパク質)が結合したN−及びC−インテインは、複数のドメイン間相互作用により極めて特異的且つ密接に結合して、活性インテイン酵素を形成する(Shah N.H.,et al.,J.Amer.Chem.Soc.135:18673−18681;Dassa B.,et al.,Nucl.Acids Res.,37:2560−2573(2009))。第1クラスのインテインに存在するリガーゼ及びプロテアーゼ活性に加えて、分断インテインは、N−及びC−インテインドメインの密接且つ選択的相互作用のために、アフィニティ分離に有用である。
【0041】
本発明は、本明細書では可溶化パートナーと呼ばれる特定の異種タンパク質との融合タンパク質としてインテインポリペプチドを発現させると、インテインの可溶性が増大することから、インテインは、小規模又は大規模で実施され得るアフィニティクロマトグラフィー並びにその他のタンパク質精製及び修飾用途のための試薬として好適になるという発見に一部基づく。より具体的には、本発明は、相補的C−インテインポリペプチドと結合することにより、活性インテイン複合体を形成することができるN−インテインポリペプチドとN−インテイン可溶化パートナーとを含む高度に可溶性の融合タンパク質を提供する。本発明はまた、C−インテインと標的分子を含む融合タンパク質も提供し、ここで、融合タンパク質は、相補的N−インテインポリペプチド及びN−インテイン可溶化パートナーを含む別の融合タンパク質と結合することができる。
【0042】
従って、一実施形態では、本発明は、N−インテインポリペプチド及びN−インテイン可溶化パートナーの全部又は一部を含む融合タンパク質に関する。様々なN−インテインポリペプチドが当技術分野で知られている。例示的なN−インテインとして、表1に示すN−インテイン及び本明細書の他所に記載する他のN−インテインが挙げられる。本明細書に開示するN−インテイン及び当技術分野で公知の他のN−インテイン、並びに野生型N−インテインに対して少なくとも約75%配列同一性(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%配列同一性)を有するN−インテインの変異体が、本明細書に記載する融合タンパク質に含まれ得る。
【0043】
インテインN−末端ドメインの第1アミノ酸は、典型的に高度に保存され、タンパク質スプライシング反応に重要となり得る。しかし、一部の実施形態では、インテインN−末端ドメインの第1アミノ酸(例えば、システイン、セリン)は、インテイン及び異種ポリペプチドの間の切断を防止又は低減するアミノ酸(例えば、システイン若しくはセリン以外のアミノ酸)で置換することができる。具体的な実施形態では、インテインN−末端ドメイン内の第1アミノ酸をアラニンで置換する。
【0044】
特定の実施形態では、本明細書に記載するN−インテイン融合タンパク質は、野生型GP41−1N−インテイン(配列番号1若しくは配列番号29)又はその変異体を含む。好適な変異体GP41−1N−インテインは、野生型N−インテイン(配列番号1)に対して少なくとも約75%配列同一性(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性)を有する。本発明の融合タンパク質に含有させるための変異体GP41−1N−インテインの具体的な例として、本明細書で配列番号2〜8が付与されるGP41−1変異体が挙げられる。いくつかの実施形態では、GP41−1N−インテイン変異体は、システイン残基が欠失している。具体的な実施形態では、GP41−1N−インテインに天然に存在する1つ又は複数のシステイン残基が欠失している。別の実施形態では、GP41−1N−インテインに天然に存在する1つ又は複数のシステイン残基(配列番号1の7位、65位及び89位)が、別のアミノ酸残基(例えば、トレオニン、リシン、又はアスパラギン)で置換されている。一実施形態では、配列番号1のGP41−1N−インテインの65位に天然に存在するシステイン残基が、別のアミノ酸残基(例えば、セリン、トレオニン)で置換されている。具体的な実施形態では、配列番号1の65位のシステイン残基が、トレオニンで置換されている。また別の実施形態では、配列番号1のGP41−1N−インテインの89位に天然に存在するシステイン残基が、別のアミノ酸残基(例えば、メチオニン、チロシン)で置換されている。具体的な実施形態では、配列番号1の89位のシステイン残基が、メチオニンで置換されている。一部の実施形態では、GP41−1変異体は、GP41−1NINTΔA_TMN−インテイン変異体(配列番号6)又はGP41−1NINTΔA_TKN−インテイン変異体(配列番号8)である。
【0045】
一部の実施形態では、いくつか又は全部のシステイン残基を欠失したGP41−1N−インテイン変異体の連結又は切断反応は、天然のGP41−1N−インテインに比して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、若しくは少なくとも10倍である。切断又は連結いずれかのインテイン活性は、一般に、還元条件下でSDSゲル電気泳動を用いて分析することができる(例えば、Zettler J.,Schuetz V.,Mootz H.D.,FEBS Letters 583:909−914,2009;Aranko A.S.,Zueger S,Buchinger E,Iwai H,PLoS ONE 4:e5185,2009)。手短には、インテイン反応、一般に、経時変化は、還元剤(例えば、ジチオトレイトール又はβ−メルカプトエタノール)を含有するSDSゲルローディングバッファーの添加により停止し、サンプルを沸騰して十分に変性させた後、適切なタンパク質サイズマーカと一緒にポリアクリルアミドゲル上にロードする。電気泳動が完了した後、反応物中のタンパク質をその分子量に基づいて分離してから、伝統的又は蛍光色素で染色することにより視覚化してもよい。時間の関数としての様々な中間体及び産物の量を比重法及び強度により時間の関数として定量することができ、曲線当てはめプログラムの適用によって酵素速度(kobs)に変換する。
【0047】
典型的には、N−インテインポリペプチドは、大腸菌(E.coli)などの一般的発現系に発現される場合、難溶性である。本発明は、例えば、N−インテインの可溶性を増加する(例えば、大腸菌(E.coli)に発現される場合)N−インテイン可溶化パートナーとの融合タンパク質としてN−インテインを発現することによって、上記の問題を回避する。好ましくは、N−インテイン可溶化パートナーは、発現系(例えば、大腸菌(E.coli))での産生後に、得られる融合タンパク質の約25質量%未満が封入体中に存在するように、N−インテインポリペプチドの可溶性を増加する。発現系での産生後の封入体中に存在する発現タンパク質の質量パーセンテージは、標準的技術及び試薬を用いて、当業者が容易に決定することができる。
【0048】
当業者は、当技術分野で公知の技術及び本明細書に記載する技術を用いて、所与のN−インテインの可溶性を増加し得る可溶化パートナー候補を容易に選択することができる。例えば、発現系(例えば、大腸菌(E.coli))での過剰発現後に可溶性産物を産生する確率は、Wilkinson及びHarrisonのアルゴリズム(Wilkinson DL及びHarrison RG,Bio/Technology,9:443,1991)を用いて計算することができる。タンパク質が、機能性分泌シグナルを含むか否かの予測は、デンマーク工科大学生物学配列解析センター(Center for Biological Sequence Analysis at the Technical University of Denmark)(http://genome.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)から入手可能なSignalP 4.1アルゴリズムを用いて実施することができる。また、本明細書に開示する実施例1〜3に記載される方法も参照されたい。最後に、最大インテイン触媒活性を可能にすると共に、可溶性の最適な増大ももたらす可溶化パートナーは、実験スクリーニングによって候補可溶化パートナーから選択しなければならない。
【0049】
特定の物理的性質を有するN−インテイン可溶化パートナーは、本発明の融合タンパク質への含有に特に好適である。こうした物理的性質として、限定はしないが、約15kDa未満の分子量、約60未満の脂肪族指数(AI)、及び−1未満のGRAVY値が挙げられる。これらの特性の各々は、当業者が、標準的アッセイ及び技術、例えば、バイオインフォマティクスツールのSwissProt ExPaSyスイートの一部である、オンラインProtParamツール(http://web.expasy.org/tools/protparam/)を用いて、所与の可溶化パートナーについて決定することができる。
【0050】
線状ポリペプチド配列の疎水度大規模平均(Grand Average of Hydropathicity)(GRAVY)(Kyte J及びDoolittle RF.,J.Mol.Biol.157:105,1982)は、全アミノ酸の疎水度値の合計を配列中の残基の数で割ったものとして計算する。正のスコアが高いほど、高い疎水性を意味する。この計算は、カイト・ドーリトル(Kyte−Doolittle)スケールに基づいて行う。GRAVYは、タンパク質の疎水度特性を示す簡単な方法である。
【0052】
様々な実施形態では、本明細書に記載するN−インテイン融合タンパク質は、−1未満のGRAVY値を有する。
【0053】
タンパク質の脂肪族指数(Ikai,AJ.,J.Biochem.88:1895,1980)は、脂肪族側鎖(アラニン、バリン、イソロイシン、及びロイシン)が占める相対量として定義される。これは、球状タンパク質の熱安定性増加についてのプラスの因子とみなされ得る。タンパク質の脂肪族指数は、次の式に従って計算される:脂肪族指数=X(Ala)+a*X(Val)+b*(X(Ile)+X(Leu))。*係数a及びbは、アラニンの側鎖に対するバリン側鎖(a=2.9)及びLeu/Ile側鎖(b=3.9)の相対量である。大腸菌(E.coli)における過剰発現後に可溶性産物を産生する確率は、Wilkinson及びHarrisonのアルゴリズム(Wilkinson DL及びHarrison RG,Bio/Technology,9:443,1991)を用いて計算することができる。他の利用可能なアルゴリズムが、必ずしも同様の結果をもたらすとは限らない。様々な実施形態では、本明細書に記載するN−インテイン融合タンパク質は、約60未満の脂肪族指数(AI)、及び−1未満のGRAVY値を有する。
【0054】
N−インテイン可溶化パートナーは、約15kDa未満の分子量、約60未満の脂肪族指数を有するのが好ましい。
【0055】
特定のN−インテイン可溶化パートナーの例を表2に開示する。
【0059】
具体的な実施形態では、N−インテイン可溶化パートナーは、可溶化パートナー138(配列番号15)、その変異体(例えば、可溶化パートナー138GKL22GCKL(配列番号16);可溶化パートナー138GYQ48GCYQ(配列番号17);可溶化パートナー138GYQ48GCGY(配列番号18)の全部若しくは一部であるか、又はそれを含む。
【0060】
融合、又はキメラタンパク質を調製する方法は、当技術分野では公知であり、限定はしないが、標準的組換えDNA技術が挙げられる。例えば、従来の技術によって、様々なタンパク質配列(例えば、N−インテイン及びN−インテイン可溶化パートナー;C−インテイン及び標的分子)をコードするDNA断片を互いにフレーム内で連結する。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化DNA合成装置などの従来の技術により合成することができる。あるいは、アンカープライマーを用いて、核酸断片のPCR増幅を実施することもでき、これによって、2つの連続した核酸断片の間に相補的な突出部が生じ、その後、これをアニーリングして、再増幅することにより、キメラ核酸配列を生成することができる(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,1992を参照)。さらに、既に融合部分(例えば、GST部分、Fc部分)をコードする多くの発現ベクターが市販されている。
【0061】
一時的又は安定的にトランスフェクト若しくは形質転換した原核又は真核生物宿主細胞若しくは生物において、コード核酸から融合タンパク質を発現するのが好ましい。組換え宿主細胞の発現のための一般的宿主細胞又は生物として、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、トウモロコシ(Zea maize)、タバコ(Nicotinia tabacum)、ニンジン(Daucus carota)、SF9細胞、CHO細胞(例えば、CHO DG44細胞、CHO DXB11細胞)、NS0細胞、HEK293細胞、並びにウシ及びヤギなどの全動物が挙げられる。発現されたN−インテイン融合タンパク質は、従来の分離及びクロマトグラフィー法、例えば、深層濾過による分類、アニオン及びカチオン交換クロマトグラフィーによる精製、並びに限外濾過による濃縮などを用いて、混入細胞タンパク質から精製することができる。
【0062】
異種タンパク質(例えば、N−インテイン可溶化パートナー、標的分子)をインテインポリペプチドのいずれかの末端に融合させることができる。一実施形態では、N−インテイン可溶化パートナーをN−インテインポリペプチドのN末端に結合させる。別の実施形態では、N−インテイン可溶化パートナーをN−インテインポリペプチドのC末端に結合させる。
【0063】
一部の実施形態では、ペプチド結合を介して、インテインポリペプチド(例えば、N−インテイン、C−インテイン)と異種タンパク質(例えば、N−インテイン可溶化パートナー、標的分子)を直接連結する。別の実施形態では、融合タンパク質は、インテインポリペプチド(例えば、N−インテイン、C−インテイン)と異種タンパク質(例えば、N−インテイン可溶化パートナー、標的分子)との間に、スペーサ、又はリンカー、分子を含む。好適なスペーサ/リンカー分子は、当技術分野において公知である。
【0064】
本明細書で記載する融合タンパク質では、インテインN末端ドメインは、直接(例えば、ペプチド結合を介して)又は間接的(例えば、リンカーアミノ酸配列)のいずれかで異種ポリペプチドと融合させることができる。従って、一部の実施形態では、異種ポリペプチドは、直接又は間接的のいずれかでインテインN末端ドメインのN末端と融合させることができる。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドの最初のアミノ酸は、以下:Met、Cys、Thr、Arg、Lys、Ser、GIn、His、Ala、Tyr、Phe、Asn、Trp、Val、Leu、Asp、He、Gly、Glu及びProからなる群から選択される。
【0065】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、異種ポリペプチドとインテイン配列との間にリンカーを含む。例えば、融合タンパク質は、異種タンパク質のC末端とインテインのN末端ドメインのN末端との間にリンカーを含むことができる。リンカーは、例えば、約1〜約10アミノ酸長であってよい。一部の実施形態では、リンカーは、約1〜約5アミノ酸長であってよい。例えば、リンカーは、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸を含んでよい。一部の実施形態では、異種ポリペプチドとインテインのN末端ドメインのN末端を接触させるリンカーの最後のアミノ酸は、以下:Met、Cys、Thr、Arg、Lys、Ser、GIn、His、Ala、Tyr、Phe、Asn、Trp、Val、Leu、Asp、Ile、Gly、Glu及びProからなる群から選択される。
【0066】
一部の実施形態では、リンカーは、エクステイン配列を含んでもよい。一部の実施形態では、リンカーは、ネイティブエクステイン配列を含んでもよい。一部の実施形態では、エクステインは、国際公開第201345632号パンフレットからの配列番号4、8、13、17、21、25、35、及び39からなる群から選択される配列を含む。一部の実施形態では、エクステインのアミノ酸を含むリンカーは、例えば、配列番号4、8、13、17、21、25、35、及び39からなる群から選択される配列の最初(すなわち、N末端)の約1〜約5アミノ酸を含む。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号4、8、13、17、21、25、35、及び39からなる群から選択される配列の約1、2、3、4、又は5個のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、インテインドメイン、及び天然で一緒に見出されるエクステインドメイン(例えば、GP41−1N−インテイン及びGP41−1C−インテイン)を含む。他の実施形態では、融合タンパク質は、インテインドメイン、及び天然ではその特定のインテインドメインと一緒に見出されないエクステインドメイン(本明細書では「異種エクステインドメイン」とも呼ばれる)を含む。例として、融合タンパク質は、GP41−1インテインドメインとIMPDHエクステインドメインを含んでもよい。
【0067】
本発明の融合タンパク質は、任意選択で、1つ又は複数の検出可能な標識をさらに含んでもよい。本発明に従う使用に好適な標識は、当技術分野で公知であり、一般に、その化学的性質によって、また直接若しくは間接的手段のいずれによるかにかかわらず、タンパク質の検出を可能にする識別可能なシグナルを賦与する任意の分子を含む。従って、例えば、融合タンパク質は、従来の方法で、例えば、特定のリポータ分子、発蛍光団、放射性材料、又は酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ)などで標識してもよい。具体的な実施形態では、融合タンパク質は、検出可能な標識として、1種又は複数種の蛍光色素を含む。検出可能な標識を含有させるようにタンパク質を修飾するための標準的方法は、当技術分野において公知である。
【0068】
様々な実施形態において、本発明はさらに、本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸、こうした核酸を含む発現ベクター、及びこうした発現ベクターを担持する宿主細胞にも関する。
【0069】
III.N−インテイン融合タンパク質を含むアフィニティクロマトグラフィーマトリックス
N−インテインポリペプチド及びN−インテイン可溶化パートナーを含有する本明細書に記載の融合タンパク質は、中でも、アフィニティクロマトグラフィー用途のためのリガンドとして有用である。従って、本発明は、いくつかの実施形態では、固体支持体に結合した、N−インテインポリペプチド及びN−インテイン可溶化パートナーを含む融合タンパク質を含むアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを提供する。
【0070】
特定の実施形態では、固体支持体は、クロマトグラフィー樹脂である。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー樹脂は、親水性ポリビニルエーテルベースを含む。親水性ポリビニルエーテルベースを含む好適なクロマトグラフィー樹脂として、限定はしないが、ESHMUNO(登録商標)樹脂(EMD Millipore Corporation)がある。
【0071】
別の実施形態では、クロマトグラフィー樹脂は、合成メタクリレートベースのポリマー媒体(例えば、粒度が約20〜40μm又は約40〜90μmのビーズ)である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー樹脂は、カルボン酸官能基を有する。カルボン酸官能基を有する好適なクロマトグラフィー樹脂として、限定はしないが、FRACTOGEL(登録商標)COO樹脂(EMD Millipore Corporation)がある。
【0072】
本発明のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスのための他の好適な固体支持体は、例えば、多孔性ガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アガロース、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリスチレン、並びにこれらの誘導体(例えば、これらの合金)を挙げることができる。
【0073】
固体支持体として用いられる多孔質材料は、親水性化合物、疎水性化合物、疎油性化合物、親油性化合物又はこれらの組み合わせから成るものでもよい。多孔質材料は、ポリマー又はコポリマーから成るものであってもよい。好適な多孔質材料の例として、限定はしないが、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えば、ナイロン、例えば、アガロース及びセルロースなどの多糖、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、フルオロカーボンのポリマー、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ガラス、シリカ、ジルコニア、チタニア、セラミック、金属及びそれらの合金が挙げられる。
【0074】
多孔質材料は、有機若しくは無機分子又は有機及び無機分子の組み合わせを含んでもよく、また、タンパク質と共有結合するために、反応、例えば、さらなる化学修飾のための共有結合に好適な1つ又は複数の官能基、例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、カルボニル基、又はカルボン酸基を含んでもよい。別の実施形態では、多孔質材料は、官能基を含有しないが、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ酸基、カルボニル基、又はカルボン酸基などの官能基を担持する材料層で被覆することができる。
【0075】
一部の実施形態では、従来のアフィニティ分離マトリックスを使用し、これは、例えば、有機性であり、親水性表面を、使用する水性媒体に曝露する、例えば、それらの外側面、及びもし存在すれば内側面のヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、カルボニル(−CHO、又はRCO−R’)、カルボキサミド(−CONH
2、恐らくN−置換形態)、アミノ(−NH
2、恐らく置換形態)、オリゴ−若しくはポリエチレンオキシ基を暴露するポリマーを基材とする。一実施形態では、ポリマーは、例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、アガロースなどの多糖を基材としてもよく、これらは、好適な多孔性及び剛性を賦与するために、例えば、ビスエポキシド、エピハロヒドリン、臭化アリル、アリルグリシジルエーテル、1,2,3−トリハロ置換低級炭化水素と架橋されているのが有利である。別の実施形態では、固体支持体は、多孔質アガロースビーズを含む。本発明で使用される様々な支持体は、当技術分野で公知の標準的方法、例えば、Hjerten,Biochim Biophys Acta 79(2),393−398(1964)に記載されている逆懸濁ゲル化に従って容易に調製することができる。あるいは、ベースマトリックスは、市販の製品、例えば、SEPHAROSE(商標)FastFlow media(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)などであってもよい。一部の実施形態では、大規模な分離に特に有利なのは、支持体を改変してその剛性を高めることにより、高流量に対してマトリックスを好適にすることである。
【0076】
あるいは、固体支持体は、合成ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどを基材としてもよい。ジビニル及びモノビニル置換ベンゼンを基材とするマトリックスなどの疎水性ポリマーの場合には、マトリックスの表面を親水化して、上に定義する通りの親水基を周囲の水性液体に暴露させることが多い。こうしたポリマーは、標準的方法に従って容易に生成することができ、例えば、Arshady,Chimica e L’Industria 70(9),70−75(1988)を参照されたい。あるいは、市販の製品、例えば、SOURCE(商標)(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)及びPOROS樹脂(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いてもよい。
【0077】
また別の実施形態では、固体支持体は、無機性質の支持体、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びこれらの合金を含む。無機マトリックスの表面は、好適な反応基を有するように、修飾されることが多い。例として、CMジルコニア(Ciphergen−BioSepra(Cergypontoise,France))及びCPG(登録商標)支持体(Millipore Corporation)が挙げられる。
【0078】
一部の実施形態では、固体支持体は、例えば、多孔性ガラスの形態のジルコニア、チタニア又はシリカを基材としてもよく、これらは、反応基を含有する、及び/又は腐食剤浸漬に耐えるように修飾して、リガンドと結合させてもよい。
【0079】
例示的な固体支持体フォーマットとして、限定はしないが、ビーズ(球状若しくは不定形)、中空繊維、中実繊維、パッド、ゲル、膜、カセット、カラム、チップ、スライド、プレート又はモノリスが挙げられる。
【0080】
一実施形態では、マトリックスのフォーマットに関して、これは、多孔質モノリスの形態をしている。別の実施形態では、マトリックスは、ビーズ状又は粒子形態をしており、これらは、多孔質又は非多孔質のいずれであってもよい。ビーズ状又は粒子形態のマトリックスは、充填層として、又は懸濁形態で使用することができる。懸濁形態は、拡張層及び純粋懸濁体として知られるものを含み、その中で粒子又はビーズは自由に移動する。モノリス、充填層及び拡張層の場合、一般に、分離手順の後に、濃度勾配を有する従来のクロマトグラフィーを行う。純粋懸濁体の場合には、バッチ方式を使用する。また、表面、チップ、キャピラリー、又はフィルタなどの形態の固体支持体を使用してもよい。
【0081】
マトリックスはまた、カートリッジ内の膜の形態であってもよい。膜は、フラットシート、螺旋、又は中空繊維形態であってよい。
【0082】
一実施形態では、固体支持体は、可溶性支持体、例えば、可溶性ポリマー又は水溶性ポリマーであってよい。例示的な可溶性支持体として、限定はしないが、バイオ−ポリマー、例えば、タンパク質又は核酸が挙げられる。ポリマーはまた、合成可溶性ポリマーであってもよく、このようなポリマーとして、例えば、限定はしないが、負荷電基(カルボン酸若しくはスルホン酸)、正荷電基(第4級アミン、第3級アミン、第2級若しくは第1級基)、疎水基(フェニル若しくはブチル基)、親水基(ヒドロキシル、若しくはアミノ基)又はこれらの組み合わせを含有するポリマーが挙げられる。例示的な合成可溶性ポリマーは、国際公開第2008091740号パンフレット及び米国特許出願公開第20080255027号明細書に見出すことができ、これらの各々の教示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
一部の実施形態では、固体支持体は、アビジン分子(例えば、ストレプトアビジン)を含み、また、N−インテイン融合タンパク質は、ビオチンタグ(例えば、融合タンパク質の可溶化パートナーと共有結合するビオチン分子)を含むことができ、これにより、融合タンパク質と固体支持体の結合が、アビジン及びビオチン分子の相互作用によって達成されるようにする。
【0084】
本発明のN−インテイン融合タンパク質は、融合タンパク質のただ1つの部位(1点結合)又は融合タンパク質の2つ以上の部位(多点結合)において固体支持体に結合することができる。融合タンパク質を固体支持体に結合させる場合、融合タンパク質のN−インテインポリペプチドは、固体支持体から離れる方向に配向される。例えば、ユニークな反応性アミノ酸基(例えば、システイン残基)を、可溶化パートナー内で、N−インテインドメインの活性領域とは離れた位置に配置して、N−インテインが固体支持体から離れる方向に向かうことを確実にすることができる。
【0085】
固体支持体との結合に関与する融合タンパク質中の部位(例えば、ユニークなアミノ酸基)は、N−インテイン可溶化パートナーにだけ配置されるのが好ましい。従って、これを達成するためには、ユニークな反応性部位をもたらすアミノ酸(例えば、システイン)を除去するように、例えば、N−インテイン中のどこで行うかにかかわらず、こうしたアミノ酸の欠失又は置換により、N−インテインポリペプチドを修飾することが必要な場合もある。タンパク質中のアミノ酸を欠失させる、又は置換する方法は、当技術分野で公知である。
【0086】
固定化したN−インテイン融合タンパク質は、カラム又はマルチウェルクロマトグラフィー分離に好適である場合もあるし、又は磁界の適用により溶液から融合タンパク質を捕捉できるように、常磁性であってもよい。
【0087】
支持体、例えば、当技術分野で公知の、及び本明細書に記載のものなどの固体支持体に本明細書に記載の融合タンパク質を結合するために、任意の好適な技術を用いることができる。例えば、一部の実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質中に存在する例えば、チオール、アミノ及び/又はカルボキシ基を使用する従来のカップリング技術によって、支持体に結合させてもよい。例えば、ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などは、公知のカップリング試薬である。一部の実施形態では、支持体と融合タンパク質との間にスペーサを導入することにより、融合タンパク質の利用可能性を改善すると共に、融合タンパク質と支持体の化学的結合を促進する。
【0088】
N−インテイン融合タンパク質と支持体の結合は、そのほとんどが当技術分野で公知の多種多様な方法、並びに本明細書に記載の方法によって達成することができる。例えば、Hermanson et al.,Immobilized Affinity Ligand Techniques,Academic Press,pp.51−136(1992)を参照されたい。例えば、タンパク質リガンドは、固体支持体又はタンパク質リガンドのいずれかの面で、活性基を介して固体支持体に結合させることができ、こうした基として、例えば、ヒドロキシル、チオール、エポキシド、アミノ、カルボニル、エポキシド、又はカルボン酸基が挙げられる。結合は、公知の化学、例えば、限定はしないが、臭化シアン(CNBr)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、エポキシ(ビスオキシラン)活性化、及び還元的アミノ化の使用が挙げられる。
【0089】
特定の実施形態では、カルボン酸(−COOH)又はアミノ(−NH
2)基を有するクロマトグラフィー樹脂(例えば、ビーズ)を使用する。別の実施形態では、クロマトグラフィー樹脂はまた、ヒドロキシル(−OH)基及び/又はその他の官能基を有し、これらは、−COOH又は−NH
2又は−OHに変換することができる。
【0090】
一部の実施形態では、チオール指向性タンパク質カップリングを用いて、本発明のN−インテイン融合タンパク質を固体支持体に結合させることができる。チオール指向タンパク質カップリングは、文献に記載されている。例えば、Ljungquist,et al.,Eur.J.Biochem.Vol 186,pp.558−561(1989)を参照されたい。マレイミドは、pH7.0〜7.5でチオール基と選択的に反応することがわかっている。pH>8では、これらは、アミン基とも反応する可能性があり、さらには、加水分解する傾向がある(Greg T.Hermanson,Bioconjugation Techniques,Academic Press,2008;Ian Johnson,Michelle T.Z.Spence,Molecular Probes Handbook,A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,2010)。pH8未満の場合、ヨードアセトアミドも、チオール基に対して高度に選択性である(Greg T.Hermanson,Bioconjugation Techniques,Academic Press,2008;Ian Johnson,Michelle T.Z.Spence,Molecular Probes Handbook,A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,2010)。しかしながら、ヨードアセトアミドは、本来、光不安定性であり、市販されているリンカーのほとんどが不水溶性であり、及び/又は非常に高価である。チオール基に対するヨードアセトアミドの選択性は、マレイミドほど優れていないため、大規模製造には、一般にマレイミドの方が適している。
【0091】
一部の実施形態では、N−インテインリガンドは、可溶化ドメイン内の単一の利用可能なスルフヒドリル基を介して、AMP又はヨードアセトアミド活性化FG−COOに結合することができる。誘導体化樹脂のリガンド密度は、溶液からのC−インテインを担持する融合タンパク質の欠失を測定することにより計算することができる。これまで、1mg/リットルのFG−COOという最適化されていないN−インテインリガンド密度が達成されている。
【0092】
また、多くのタンパク質をエポキシ活性化樹脂、例えば、FRACTOGEL(登録商標)エポキシに結合させることにも成功している。エポキシドは、第1級アミノ基、ヒドロキシル、及びスルフヒドリル基と反応して、非常に安定したアフィニティマトリックスをもたらす(PV Kuznetsov 1993.Pharmaceutical Chemistry Journal 27:439−52)。
【0093】
一部の実施形態では、介在リンカーを介して、タンパク質リガンドを固体支持体に結合させることができる。リンカーは、連結部分に結合する少なくとも1つの官能基を含んでもよい。連結部分は、官能基に結合することができる任意の分子を含み得る。例えば、連結部分は、アルキル、アルケニル又はアルキニル基のいずれかを含み得る。連結部分は、1〜30炭素原子の炭素鎖を含み得る。一部の実施形態では、リンカーは、30超の炭素原子から成るものでもよい。連結部分は、窒素、酸素及びイオウなどの少なくとも1個のヘテロ原子を含んでもよい。連結部分は、分岐鎖、非分岐鎖又は環状鎖から成るものでもよい。連結部分は、2つ以上の官能基で置換してもよい。
【0094】
固体支持体にタンパク質リガンドを結合させるための適切なバッファー条件の選択は、十分に当業者の技能の範囲内である。好適なバッファーとしては、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び酢酸塩バッファーなどの非アミン含有バッファーが挙げられる。結合化学を用いる場合には、バッファーの塩濃度は、使用する結合基に左右されることになる。例えば、塩濃度は、5nM〜100mMの範囲であってもよい。荷電種を用いる場合には、塩濃度は、少なくとも5nMで、しかも0.1M未満、少なくとも5nMで、しかも0.01M未満、少なくとも5nMで、しかも0.001M未満であってもよい。いくつかの実施形態では、塩濃度は、0.01Mであってもよい。疎水性種を使用する場合には、高い塩濃度が通常望ましい。従って、塩濃度は、0.001M超、0.01M超、又は0.1M超であってよい。
【0095】
一部の実施形態では、結合化学を用いる場合、0℃〜99℃の温度で反応を実施する。いくつかの実施形態では、反応方法は、60℃未満、40℃未満、20℃未満、又は10℃未満の温度で実施する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、約4℃で実施する。別の実施形態では、反応方法は、20℃の温度で実施する。
【0096】
他の実施形態では、N−インテイン融合タンパク質は、適切な架橋又は縮合剤と組み合わせた様々な改変剤(膜、ポリマー表面、蛍光又は他の検出標識)と合わせて、N−インテイン融合タンパク質と改変剤を含有する共有結合付加物を形成することができる。
【0097】
IV.本発明のインテインベースの融合タンパク質を使用する方法
N−インテインポリペプチドとN−インテイン可溶化パートナーを含有する本明細書に記載の融合タンパク質、及びこうした融合タンパク質を含むアフィニティクロマトグラフィーマトリックスは、中でも、以下に詳しく説明するように、アフィニティ精製、アフィニティ精製での使用に好適な活性分断インテイン複合体のスクリーニング方法、並びにペプチド切断及び連結方法に有用である。
【0098】
従って、本発明は、いくつかの実施形態において、サンプル中の標的分子をアフィニティ精製する方法に関する。この実施形態の一態様において、本方法は、a)ポリペプチド結合により標的分子に結合したC−インテインポリペプチドを含む第1の融合タンパク質を含有するサンプルを用意するステップ;b)第2の融合タンパク質を含むアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと上記サンプルを接触させるステップ(ここで、第2の融合タンパク質は、第1の融合タンパク質中のC−インテインポリペプチドが第2の融合タンパク質中のN−インテインポリペプチドと選択的に結合して、不活性であるインテイン複合体を形成する条件下で、N−インテインポリペプチドの可溶性を促進するN−インテイン可溶化パートナーと、ペプチド結合により結合したN−インテインポリペプチドを含む);c)不活性インテイン複合体を含有するアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを洗浄して、非結合混入物を除去するステップ;d)インテイン複合体が活性となり、C−インテインポリペプチドから標的分子を切断する条件に、インテイン複合体を曝露するステップ;並びにe)切断された標的分子を回収するステップを含む。
【0099】
N−インテイン可溶化パートナーに結合したN−インテインポリペプチドを含む融合タンパク質は、本明細書の他所で記載されるN−インテイン融合タンパク質のいずれかを含み得る。
【0100】
標的分子に結合したC−インテインポリペプチドを含む融合タンパク質を含有するサンプルは、任意の好適なサンプル(例えば、生物学的サンプル)であってよい。一実施形態では、サンプルは、粗タンパク質調製物又は混合物(例えば、細胞抽出物)である。
【0101】
標的分子は、目的とする任意の生体分子であってよい。例として、目的の生体分子は、タンパク質及び生体分子集合体(例えば、組換えDNA技術により生成される)、例えば、ホルモン(例えば、インスリン、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、組織プラスミノーゲン活性化因子)、モノクローナル抗体(mAb)及びmAb−誘導体(例えば、二重特異性mAb、Fab、scFv、サメ(shark)及びラクダ科(camelid)抗体)、スカフォールド由来治療薬(例えば、DARPin、アフィボディ(Affibody)、アンチカリン)、治療用酵素(例えば、αガラクトシダーゼA、α−L−イズロニダーゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、グルコセレブロシダーゼ)、毒素(例えば、ボツリヌス菌、CRM197、リシン)、組換え体ワクチン(例えば、炭疽、ジフテリア、破傷風、肺炎、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス)、ウイルス様粒子(例えば、B型肝炎、ヒトパピローマ、インフルエンザ、パルボウイルス、ノーウォーク(Norwalk)ウイルス)、並びに工業用酵素(例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、プロテイナーゼK、BENZONASE(商標)酵素、DENERASE(商標)酵素、ウレアーゼ、ペプシンなど)及び診断試薬(例えば、グルコース及び乳酸デヒドロゲナーゼ、DNAポリメラーゼ、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、制限酵素、ハイブリドーマ由来酵素など)。特定の実施形態では、標的分子は、治療標的に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。
【0102】
使用する特定のインテイン(例えば、シアノバクテリア(Synechocystis)種(Ssp)DnaB、ノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)(Npu)DnaE、GP41−1)に応じて、ロード、洗浄、切断、及び溶離条件は大きく異なる。それでもなお、特定のインテインの大まかなロード、洗浄、切断、及び溶離条件は、当業者が容易に決定することができる。特定のインテインについて好適な条件(例えば、カオトロピック及び還元/酸化剤の濃度、金属イオン(例えば、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、マンガン)、体積排除剤(例えば、PEG、PVP、デキストラン)、デタージェント、塩、温度、及びpH)として、限定はしないが、以下に記載する条件が挙げられる。特に、GP41−1インテインの場合、活性は、6〜10の範囲のpHに比較的左右されないことがわかっている(Carvajal−Vallejos P.,et al.,J.Biol.Chem.287:28686−28696(2012))。
【0103】
所与のインテインについて、第1融合タンパク質中のC−インテインポリペプチドが、第2融合タンパク質中のN−インテインポリペプチドに選択的に結合して、触媒不活性のインテイン複合体を形成する条件は、当業者が決定することができる。一般に、工業規模のプロセスの場合、クロマトグラフィー分離工程中の温度の変更は、これにより、全体を通してカラム及び充填温度を均一にすることを確実にするために、時間のかかる平衡ステップが生じることから、非実用的と考えられる。例示的な結合条件として、以下のものがある:a)約4〜25℃の範囲の温度、及び50mMトリス/HCl、300mM NaCl、1mM EDTA、10%(v/v)グリセロール、2mM DTT、pH=7を含むバッファー(例えば、GP41−1の場合、Carvajal−Vallejos P.,et al.,J.Biol.Chem.287:28686−28696(2012)を参照);b)約4〜25℃の温度範囲、及び50mM NaAc、0.5M NaCl、pH=5を含むバッファー(例えば、DnaBインテインの場合、Lu W.,et al.,J.Chrom.A,1218:2553−2560(2011)を参照);並びにc)約4〜25℃の範囲の温度、及び0.5M NaCl、10mMトリス−HCl、0.5mm 塩化亜鉛、pH=8を含むバッファー(例えば、Npu DnaEの場合、Guan D.,et al.,Biotech.Bioeng.110:2471−2481(2013)を参照)。
【0104】
同様に、インテイン複合体の触媒活性を促進する条件は、使用されるインテインに応じて変動し得るが、これは、当業者が決定することができる。触媒インテイン活性を促進するための例示的な条件として、以下のもがある:a)50mMトリス−HCl、pH=7.0、300mM NaCl、1mM EDTA;b)0.3M L−アルギニン、5mM EDTA、50mMリン酸バッファー、pH=6.5を含むバッファー;及びc)0.5M NaCl、10mMトリス−HCl、50mM DTT、pH=8.0を含むバッファー。
【0105】
この実施形態の態様では、本方法は、本発明のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを洗浄、再生、及び/又は保存するステップをさらに含み得る。典型的には、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスは、マトリックスの組成に応じて、アルカリ又は酸性条件下で洗浄することができる。アフィニティマトリックスを洗浄、再生、及び/又は保存するのに好適な条件は、当業者が決定することができる。
【0106】
本発明の例示的なアフィニティ精製方法を本明細書に開示する
図1及び実施例10に記載する。
【0107】
また別の実施形態では、本発明は、アフィニティ精製での使用に好適な、触媒活性インテイン複合体のスクリーニング方法に関する。この実施形態の一態様では、本方法は、a)ポリペプチド結合により標的分子に結合したC−インテインポリペプチドを含む第1の融合タンパク質と、ポリペプチド結合によりN−インテイン可溶化パートナーと結合したN−インテインポリペプチドを含む第2の融合タンパク質を、第1の融合タンパク質中のC−インテインポリペプチドが第2の融合タンパク質中のN−インテインポリペプチドと選択的に結合して、インテイン複合体を形成する条件下で、接触させるステップ;並びにb)インテイン活性を支持する条件下で、標的分子が、C−インテインポリペプチドから切断されているか否かを決定するステップを含み、ここで、切断された標的分子の存在は、触媒活性インテイン複合体を示している。
【0108】
この実施形態の方法に使用するN−インテイン及びC−インテインは、相補的分断インテインの任意のペア、例えば、本明細書に開示する分断インテインペア(例えば、GP41−1N−インテイン及びC−インテイン)であってよい。
【0109】
第1融合タンパク質中のC−インテインポリペプチドが、第2融合タンパク質中のN−インテインポリペプチドに選択的に結合して、触媒として不活性のインテイン複合体を形成する条件は、使用するインテインに応じて変動し得るが、これは、当業者が決定することができる。例示的な条件として、以下のもがある:a)約4〜25℃の範囲の温度、及び100mMトリス−HCl、25mM NaCl、0.1mM 塩化亜鉛、pH=9を含むバッファー;b)約4〜25℃の温度範囲、50mM NaAc、0.5M NaCl、pH=5を含むバッファー;及びc)約4〜25℃の範囲の温度、及び0.5M NaCl、10mMトリス−HCl、pH=8を含むバッファー。
【0110】
標的分子は、任意の好適な標的分子であってよく、例えば、限定はしないが、本明細書に開示する標的分子のいずれかが挙げられる。
【実施例】
【0111】
実施例1:GP41−1N−インテインの候補可溶化パートナーの特性決定の選択
4000+既知エシェリキア属(Escherichia)タンパク質のセットを使用し、以下の基準を用いて、試験のために7つの可溶化パートナー(表2を参照、配列番号11〜15、19、20)を選択した:
(1)選択タンパク質は、システイン残基が欠失している;
(2)選択タンパク質は、in silicoで、大腸菌(E.coli)に過剰発現させると、可溶性であると予測された;
(3)選択タンパク質は、11kDa未満の分子量を有した;
(4)選択タンパク質は、in silicoで、分泌されないと予測されたか、又は分泌されないことがわかっていた;
(5)タンパク質相互作用に関する情報が入手可能である場合、選択タンパク質は、多量体ではなく単量体であった;
(6)タンパク質機能に関する情報が入手可能である場合、選択タンパク質は、天然では調節性又は毒性ではなかった、すなわち、主要細胞経路の制御に関与しないか、又はそれら(例えば、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ)を過剰発現する大腸菌(E.coli)の死を引き起こす傾向もなかった;並びに
(7)既知のNMR又はX線結晶構造を有するタンパク質が優先された。
【0112】
表3は、この試験で評価されたインテイン及び可溶化パートナーについての物理的性質(分子量(mw)、等電pH(pI)、大腸菌(E.coli)における可溶性発現の確率、タンパク質が、大腸菌(E.coli)に分泌されると予測されるか否か、疎水度大規模平均(Grand Average Hydrophobicity)(GRAVY)、及び脂肪族指数(Aliphatic Index)(AI))を掲載するが、これらは、一般に入手可能なアルゴリズムを用いて計算されている。大腸菌(E.coli)における過剰発現時の可溶性の確率と分泌の見込みの予測を除いて、物理的パラメータの全ては、バイオインフォマティクスツールのSwissProt ExPaSyスイートの一部である、オンラインProtParamツール(http://web.expasy.org/tools/protparam/)を用いて計算された。分子量は、ダルトンで表示されている。各タンパク質のpIは、タンパク質が正味電荷を持たないpH値である。等電点(pI)は、タンパク質の正味電荷がゼロであるpHである。タンパク質の場合、等電点は、主として、次の7つの荷電アミノ酸に左右される:グルタミン酸(δ−カルボキシル基)、アスパラギン酸(β−カルボキシル基)、システイン(チオール基)、チロシン(フェノール基)、ヒスチジン(イミダゾール側鎖)、リシン(ε−アンモニウム基)及びアルギニン(グアニジニウム基)。それに加えて、タンパク質末端基(NH2iCOOH)の電荷を考慮に入れるべきである。これらの各々は、pKと呼ばれる固有の酸解離定数を有する。さらに、タンパク質の正味電荷は、溶液(バッファー)pHと密接な関係にある。このことを念頭に置いて、ヘンダーソン・ハッセルバッハ(Henderson−Hasselbach)の式を用いて、特定のpHにおけるタンパク質電荷を計算することができる。
【0113】
【表6】
【0114】
線状ポリペプチド配列の疎水度大規模平均(Grand average of hydropathicity)(GRAVY)(Kyte Jand Doolittle RF.,J.Mol.Biol.157:105,1982)は、全アミノ酸の疎水度値の合計を配列中の残基の数で割ったものとして計算する。正のスコアが高いほど、高い疎水性を示す。この計算は、カイト・ドーリトル(Kyte−Doolittle)スケールに基づいて行う。GRAVYは、タンパクの疎水特性を表す簡単な方法である。
【0115】
【表7】
【0116】
タンパク質の脂肪族指数(Ikai,AJ.,J.Biochem.88:1895,1980)は、脂肪族側鎖(アラニン、バリン、イソロイシン、及びロイシン)が占める相対量として定義される。これは、球状タンパク質の熱安定性増加についてのプラスの因子とみなされ得る。タンパク質の脂肪族指数は、次の式に従って計算される:脂肪族指数=X(Ala)+a*X(Val)+b*(X(Ile)+X(Leu))。*係数a及びbは、アラニンの側鎖に対するバリン側鎖(a=2.9)及びLeu/Ile側鎖(b=3.9)の相対量である。大腸菌(E.coli)における過剰発現後に可溶性産物を産生する確率は、Wilkinson及びHarrisonのアルゴリズム(Wilkinson DL and Harrison RG,Bio/Technology,9:443,1991)を用いて計算することができる。他の利用可能なアルゴリズムが、必ずしも同様の結果をもたらすとは限らない。
【0117】
タンパク質が、機能性分泌シグナルを含むか否かの予測は、デンマーク工科大学生物学配列解析センター(Center for Biological Sequence Analysis at the Technical University of Denmark)(http://genome.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)から入手可能なSignalP 4.1アルゴリズムを用いて実施することができる。
【0118】
【表8】
【0119】
実施例2:大腸菌(E.coli)タンパク質発現構築物の作製
可溶化パートナー候補46、206及び246のコード配列を担持するプラスミド構築物を、NINTΔA_CCのアミノ又はカルボキシ末端アミノ酸のいずれかを介して、NINTΔA_CCのコード配列と融合させた後、DNA2.0からのpJ414のバージョンに挿入した。これらの構築物を、従来の方法を用いて、コンピテントBL21DE3大腸菌(E.coli)細胞に形質転換した後、アンピシリン抵抗性コロニーを単離した。SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS PAGE)を用いて、予想サイズのタンパク質の産生を確認した。
【0120】
6つの構築物の各々の形質転換体は、対応する構築物によるBL21DE3大腸菌(E.coli)細胞のグリセロールストックからの、100ugのアンピシリン/mL含有2mLLB(LB+Amp)中で培養した。この前接種材料を37℃及び250rpmで一晩増殖させた後、これを用いて、200mLのLB+Amp(1%接種材料)を接種した。この培養物を、37℃及び250rpmで、0.5〜0.6のOD
600までインキュベートした。0.4mM IPTGの添加によりタンパク質発現を誘導した。温度を30℃まで下げてから、この温度及び250rpmで5時間にわたり培養物をインキュベートした。その後、遠心分離(4500g、25分、4℃)により細胞を回収し、上清を廃棄して、さらなるタンパク質精製のために細胞ペレットを−80℃で維持した。
【0121】
試験基質タンパク質CINT_TRXのコード領域をpSABAD92A(GenBankアクセッション番号HM070247)にクローン化した後、コンピテントBL21DE3細胞に形質転換した。成功した形質転換体をLuriaブロス及び50ug/mlカルベネシリン(LB+C)上で単離した。SDS PAGEを用いて、予想サイズのタンパク質の産生を確認した。3つのBL21クローン/構築物の各々のグリセロールストックは、−80℃で保存する。
【0122】
少量の凍結BL21グリセロールストックを用いて、37℃、250rpmでLB+C中の5mlの培養物に接種した。翌日、0.1mlの一晩増殖させた培養物を用いて、10mlのLB+Cに接種し、この培養物を、37℃及び250rpmで、0.6〜0.9のOD
600までインキュベートした。0.02%アラビノースを用いて、28℃、250rpmで5時間にわたり培養物を誘導した。誘導後、遠心分離(4500g、25分、4℃)により細胞を回収し、上清を廃棄して、さらなるタンパク質精製のために細胞ペレットを−80℃で維持した。
【0123】
実施例3:可溶性及び不溶性比並びに発現タンパク質の総量の決定
各構築物について発現収率及び可溶性:不溶性比を決定するために、前述の通り培養した同等のバイオマスに対応する増殖培養物のアリコートを4℃、5000gで15分間遠心分離した。培養物上澄みを廃棄した後、50mMトリスpH8、300mM NaCl、0.5%トリトンX−100から構成される可溶化バッファー200uL中に細胞を再懸濁させた。細胞を音波処理(10バースト×3、Branson 250 Sonifier、各シリーズの間に、サンプルを冷却させるための時間を置く)により破砕した。可溶性及び不溶性画分を分離するために、サンプルを16000g及び4℃で10分間遠心分離した。可溶性画分は個別のチューブに取り出し、不溶性画分は、音波処理により200μLの同じ可溶化バッファー中に再懸濁させた(前の音波処理と同じパラメータを用いて)。
【0124】
基準として定量BSAの曲線を使用する比重分析を用いて、クマシー染色後のSDSPAGEゲル後に、細胞ライゼート中の組換えタンパク質を定量した。BSA標準曲線(0.2から1.2ugまでの6ポイント)と一緒に、クローン当たり3つの異なるサンプル量をロードした。「Quantity One」(BioRad)ソフトウェアを用いて、比重法によりタンパク質バンドの強度を決定した。BSA/組換えタンパク質分子量比を考慮して、各タンパク質について補正率を適用する。
【0125】
精製タンパク質の濃度は、算出された消光係数と、280nmで計算されたそれらの吸光度を用いて決定した。
【0126】
実施例4:発現タンパク質の精製
全体を通じて切断基質として用いたC−インテイン融合タンパク質CINT_TRXを精製するために、このタンパク質を発現する大腸菌(E.coli)を、50mMトリス−HCl、pH=8.0、300mM NaCl、0.5×Cellytic B(Sigma−Aldrich)、及び20mMイミダゾールを含有するバッファー中に再懸濁させた。30%パルス活性化サイクルで、細胞を氷上で20分間音波処理した(Branson 250 Sonifier)後、4℃、34500gで30分間遠心分離した。His−Trap HP(GE Healthcare)カラムで、製造者の指示に従い、上澄みから可溶性C−インテイン融合タンパク質を精製した。精製C−インテイン融合タンパク質を含有する溶離画分をプールし、2mM DTTの存在下、切断バッファー(50mMトリス−HCl、pH=7.0、300mM NaCl、1mM EDTA、10%(v/v)グリセロール;CB)に対して透析した後、−80℃でアリコート中に保存した。
【0127】
N−インテイン融合物は、発現構築物を保有する大腸菌(E.coli)細胞からネイティブ条件下で精製した。細胞ペレットを、100mMトリス−HCl、pH=8.0、150mM NaCl、及び1mM EDTAを含有するバッファー中に再懸濁させた。次に、30%パルス活性化サイクルで、細胞を氷上で20分間音波処理した(Branson 250 Sonifier)後、4℃、34500gで30分間遠心分離した。前述した通り、His−Trap HPカラムでN−インテイン融合物の可溶性画分を精製した。精製タンパク質を含有する溶離画分をプールし、2mM DTTの存在下、CBに対して透析した後、−80℃でアリコート中に保存した。
【0128】
実施例5:発現タンパク質の切断速度の決定
以前記載されている(Carvajal−Vallejos P.,et al.,J.Biol.Chem.287:28686,2012)通り、in vitro反応を実施した。手短には、精製したN−及びC−融合タンパク質を、対応する試験条件下で個別に、短時間プレインキュベートした。切断反応は、5μMの等モル濃度の切断バッファー中で、相補的N−及びC−インテイン融合タンパク質を混合することによって開始した。本発明に関する実験の場合、切断パートナーは、常にCINT_TRXであった。特定の時間間隔でアリコートを取り出し、8%SDS(w/v)及び20%β−メルカプトエタノール(v/v)を含有するSDS PAGEバッファーの添加により反応を停止した後、5分間沸騰させた。SDS PAGE(Novex,Invitrogen,Carlsbad,USからの4〜12%ビス−トリスゲル)により、反応生成物を定量した後、クマシー・ブリリアント・ブルー(Coomassie Brilliant Blue)(Sigma)染色を実施した。Quantity One(BioRad)プログラムを用いて、比重法によりタンパク質バンドの相対強度を決定した。対応する分子量に従って、様々な切断生成物を正規化した。切断生成物とインテインタグ付き前駆体CINT_TRXの比から、タンパク質切断のパーセンテージを計算した。
【0129】
GraFitソフトウェア(Erithacus,Surrey,UK)を用いて、データを式P=P
0(1−e
−kt)(Pは、時点tで形成された切断C−インテイン融合生成物の量であり、P
0は、得ることができる切断生成物の最大量(収量)であり、eは、オイラー(Euler)の定数であり、kは、観測された速度である)に当てはめることにより、定速(kobs)を決定した。2つの相補的インテイン断片の高速結合後に、C−インテイン融合タンパク質の切断が、単分子反応と同様に進行するという仮定で、全ての反応物は、不可逆の、前定常状態、及び一次プロセスとして処理した。
【0130】
実施例6:NINT可溶化パートナーの最適位置及び特性の決定
可溶化パートナー候補のNINTΔA_CC融合物は、全ての可溶化パートナーについて、考えられる配向の両方で(すなわち、NINTΔA_CCのN又はC末端のいずれかに融合させた)作製した。得られる6つの構築物を大腸菌(E.coli)に発現させて、産生されたタンパク質を、前述した通りに、産生総量及び可溶性に関して分析した。さらに、各構築物からのタンパク質を精製し、精製CINT_TRXを基質として用いて、切断の速度を決定した。この分析の結果を
図2A及び2Bに示す。NINTΔA_CCのN末端への可溶化パートナーの融合は、試験した全ての構築物について、C末端への可溶化パートナーの融合よりも高い量のタンパク質を大腸菌(E.coli)において産生するが、切断速度を測定すると、この傾向の逆転が見られる。これらの試験を実施中に、様々な分断インテイン系を用いて発表された論文は、可溶化パートナーの位置とN−インテイン及びN−インテイン活性の間の類似の関係を実証したが、これは、融合物が反対の極性で作製されるとき、エクステインドメイン同士の立体障害の可能性が大きくなることを示す、既知の構造情報を参照して説明された(Guan D,Ramirez M,Chen Z.,Biotechnol Bioeng.110:2471,2013)。
【0131】
この研究は延長されて、サイズ及び等電点(pI)に関して以前明らかにされた可溶化パートナーとは異なる、追加の可溶化パートナー51、138、342、及び368(表2及び3参照)を含んだ。これらの全ては、可溶化パートナー46、206、及び246で以前示される通り、NINTΔA_CCのカルボキシル末端に融合して、最も高い触媒活性を有する融合物をもたらした。これらの構築物を大腸菌(E.coli)に発現させ、精製してから、前述した通り、切断速度について分析した。これらの分析結果を
図3に示す。可溶化パートナー246が最も高い活性を有するが、触媒活性と可溶性発現の間の最良の妥協点は、可溶化パートナー138に観察された。
【0132】
大腸菌(E.coli)での発現中のN−インテインの可溶化のために有効となる可溶化パートナー138の特性を理解するために、表3の候補可溶化の各々について算出したタンパク質パラメータを表4に示す可溶性力価と相関させた。これらのパラメータのいずれも、発現全体と強力に相関していなかったが、AI及びGRAVY値の両方が、可溶性力価との負の相関を示した。
【0133】
実施例7:NINTΔA_CCにおけるシステイン残基の置換のためのアミノ酸の選択
天然の供給源から単離したGP41−1N−インテインは、3つのシステイン残基を含有するが、1つは、本発明の親構築物であるNINTΔA_CCを賦与するために、事前に置換されている。NINTΔA_CC内に含まれる、残り2つのシステイン残基は置換のためにターゲティングして、ユニークな反応性システイン残基を、後の固定化又は他の修飾のために可溶化ドメインに導入することができるようにした。
【0134】
NINTΔA_CC中の2つのシステイン残基を置換して、やはり安定且つ機能性のインテインをもたらすことができるアミノ酸を同定するために、いくつかの系統樹解析を実施し、そこで、タンパク質配列をアラインメントして、配列番号1の65位及び89位に天然に存在するアミノ酸変異体を調べた。類似インテインのこれらの位置に存在する他のアミノ酸による、GP41−1における天然の内部システインの置換は、天然の選択がこれらの変異体が天然に持続することを可能していることから、機能性及び/又は安定なGP41−1変異体をもたらすと予想された。GP41インテインクラスのN−インテイン(1、2、3、4、5、6;Dassa B.,et al.,Nucl.Acids Res.,37:2560−2573(2009))でこうした解析を実施すると、配列番号1の65位及び89位の2つのシステイン残基が、高度に保存されていることが判明し、これは、これらのシステインが、GP41−1インテインの活性及び/又は安定性に有害に作用し得ることを示唆している。しかし、さらにやや分岐したタンパク質(インテイン機能を含んでも、又は含まなくてもよい)を含むように解析を拡張すれば、大腸菌(E.coli)リン酸レギュロンのphoH遺伝子に対して相同性を有する多くのタンパク質が同定される。BLAST検索ツールを用いて、GenBankからおよそ百の相同体が得られ、フリーウエアツールのBioEdit(Hall TA.,Nucl.Acids.Symp.Ser.41:95,1999)を用いたCLUSTALアルゴリズムでアラインメントした。この解析の結果を表5に示すが、ここで、位置の番号付与は、NINTΔA_CC(配列番号2)に基づく。この解析から、トレオニン及びアラニンが、65位に頻繁に出現し、リシン、メチオニン及びアスパラギン酸が、89位に頻繁に出現することが明らかであり、これは、これらの天然に存在するアミノ酸による天然のシステインの置換が、安定したタンパク質をもたらすであろうことを示している。
【0135】
実施例8:最適な特性のNINTΔA_CCアミノ酸のスクリーニング
表4に示すアミノ酸置換を含むNINTΔA_CC(配列番号2)に基づく構築物を作製、発現、精製した後、前述した通り、触媒活性について特性決定した。
【0136】
各構築物から作製されたN−インテイン融合タンパク質の切断速度測定値を
図6に示す。NINTΔA_CC親(+cnt)を比較のために左側に示す。65位及び89位のアミノ酸を図面の下に示す。65位のトレオニン残基は、親より有意に高い活性を有するN−インテイン融合タンパク質をもたらす。試験した構築物のうち、65位のトレオニンと89位のメチオニンを有するN−インテイン融合物は、親構築物より3倍速い触媒速度を有する構築物をもたらした。
【0137】
【表9】
【0138】
実施例9:可溶化パートナー138へのユニークなシステイン残基の導入のための戦略
その触媒活性を低減することなく、N−インテイン融合タンパク質の化学修飾を可能にするために、最終的な修飾の部位は、N−インテインの活性部位から可能な限り離れて除去すべきである。可溶化パートナー138についての構造情報がない場合、適切な手法は、GP41−1N−インテインについて上に記載したように(実施例7を参照)、系統樹解析を実施し、高い可変性を示すタンパク質の領域を決定し、システインの挿入によってこれらを修飾した後、得られる全ての構築物を試験することである。しかしながら、可溶化パートナー138(Protein Databank構想1RYK)について入手可能なNMR溶液構造は存在し、これは
図7に示す。タンパク質は、4つのαヘリックスドメインを含み、球状であり、長い非構造コイルを有し、これが、N−インテインのカルボキシ末端との連結(丸で囲んだ領域;N−インテインは示していない)を形成する。黄色のハイライトで示すループ領域GKL及びGYQは、可溶化パートナー138(138_GKL22GCKL(配列番号16)、138_GYQ48GCYQ(配列番号17)、及び138_GYQ48GCGYQ(配列番号18))の新たなバージョン(
【化2】
)を作製するためのシステイン残基挿入のためにターゲティングされた。
【0139】
実施例10:N−インテイン融合タンパク質(リガンド)とクロマトグラフィー樹脂の結合
GP41−1変異体NINTΔA_TM(配列番号6)のカルボキシル末端に融合した可溶化パートナー138_GYQ48GCGYQ(配列番号18)を含有する可溶性融合タンパク質を、大腸菌(E.coli)においてコード核酸から発現させた後、従来の分離方法を用いて、混入細胞タンパク質から分離する。
【0140】
次に、標準的方法を用いて、融合タンパク質の可溶化パートナードメインにおけるユニークな反応性システイン部位を介して、精製N−インテイン融合タンパク質をFRACTOGEL(登録商標)又はESHMUNO(登録商標)クロマトグラフィー樹脂(EMD Millipore Corporation)と結合させる。
【0141】
活性化のための調製では、5mlの湿潤FRACTOGEL(登録商標)COO(FG−COO)樹脂をDI水で1回、次にブフナー(Buechner)漏斗中のpH=6.5の150mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MESバッファー)で3回洗浄した後、ショット(Schott)ガラス瓶に移す。0.1035gmの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド(EDC)を3mlのMESバッファーに溶解させた後、FG−COOに添加する。混合物を室温で2分間インキュベートする。4mlのMESバッファー中の0.1372gmのN−(3−アミノプロピル)マレイミドトリフルオロ酢酸(APM)の溶液を添加して、混合物を攪拌しながら、室温で一晩保持する。1M NaOHの滴定により、pHを6.5に維持する。保存のために、150mM NaCl含有の20%エタノール中に活性化樹脂を再懸濁させた後、冷蔵庫内で保存する。官能化の分析のために、150mM NaClを含有するpH=7.2の100mMリン酸バッファー(POバッファー)中で、活性化樹脂の50%v/v溶液を調製する。0.5mlの活性化FG−COOを、POバッファー中の1mLの204uM塩酸システイン溶液と混合した後、1時間にわたりインキュベートする。負の対照として、AMPによって活性化していないFG−COOのサンプルを並行して処理する。次に、樹脂をPOバッファーで入念に洗浄してから、0.5M NaCl中に再懸濁させて、エルマン(Ellmann)試薬(5,5’−ジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸))及び公知の方法を用いた遊離スルフヒドリル基の分析に付す。この分析を用いて、乾燥樹脂1グラム当たり400μモルのリガンド密度を決定する。
【0142】
実施例11:インテイン融合タンパク質を用いたチオレドキシンのアフィニティ精製
本明細書の実施例10に従って調製した、固定化N−インテイン融合タンパク質を含有する樹脂を標準的クロマトグラフィーカラムに充填した後、GP41−1 C−インテインのカルボキシ末端に融合した標的分子チオレドキシンを含む、CINT_TRX融合タンパク質(配列番号10)を含有する粗タンパク質混合物を、固定化N−インテイン融合タンパク質含有のカラムに4〜25℃の温度で添加した後、100mMトリス−HCl、25mM NaCl、0.1mM塩化亜鉛、pH=9を含むロードバッファーを用いて、インテイン触媒作用を起こさずに、GP41−1 N−及びC−インテインドメイン同士の強力な相互作用を可能にする。
【0143】
続いて、デタージェント(例えば、トリトンX100、ND40)又は塩(例えば、酢酸塩、リン酸塩、塩化物、ナトリウム、アンモニウム、又はカリウムの硫酸塩)を含有する洗浄バッファーを用いて、ロードしたカラムを洗浄することにより、非結合及び弱結合の混入物を除去する。
【0144】
C−インテイン融合タンパク質のチオレドキシン部分の切断及び溶離は、切断バッファー(50mMトリス−HCl、pH=7.0、300mM NaCl、1mM EDTA)の添加により達成される。次に、切断されたチオレドキシンを溶出液中で回収する。
【0145】
【表10】
【0146】
【表11】
【0147】
その他の例示的N−インテイン配列
gp41−2
CLDLKTQVQTQQGLKDISNIQVGDLVL(配列番号42)
gp41−3
CLDLKTQVQTPQGMKEISNIQVGDLVLSNTGYNEVLNVFPKSKKKS(配列番号43)
gp41−4
【化3】
gp41−5
【化4】
gp41−6
SYKITLEDGKEIICSEEHLFPTQNGEVNIKGGLKEGMCLYVKE(配列番号46)
gp41−7
MMLKKILKIEELDERELIDIEVSGNH(配列番号47)
NrdA−1
【化5】
NrdA−4
【化6】
NrdA−5
【化7】
NrdA−6
YVCSRDDTTGFKLICTPDHMIYTKNRGYIMAKYLKEDDELLINEIHLPT(配列番号51)
NrdJ−1
【化8】
NrdJ−2
【化9】
【0148】
その他の例示的C−インテイン配列
gp41−9
MIMKNRERFITEKILNIEEIDDDLTVDIGMDNEDHYFVANDILTHNT(配列番号54)
IMPDH−2
MKFTLEPITKIDSYEVTAEPVYDIEVENDHSFCVENGFVVHNS(配列番号55)
IMPDH−3
MKFKLVEITSKETFNYSGQ−VHDLTVEDDHSYSI−NNIVVHNS(配列番号56)、
NrdA−3
MLKIEYLEEEIPVYDITVEETHNFFANDILIHNC(配列番号57)、
NrdA−5
MLKIEYLEEEIPVYDITVEGTHNLAYSL(配列番号58)、
NrdA−6
MGIKIRKLEQNRVYDIKVEKIIIFCNNILVHNC(配列番号59)、及び
NrdJ−1
MEAKTYIGKLKSRKIVSNEDTYDIQTSTHNFFANDILVHNS(配列番号60)。
【0149】
本明細書で引用した全ての特許、公開出願及び参照文献の関連教示内容は、その全体を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0150】
別に記載のない限り、特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される成分の量、発現条件、処理条件などの表す全ての数は、全ての事例で、用語「約」によって修正されるものとして理解すべきである。従って、反対のことが記載されていない限り、数値パラメータは、近似値であり、本発明により取得することが求められる所望の特性に応じて変動し得る。別に記載のない限り、要素のシリーズに先立つ用語「少なくとも」は、上記シリーズの全ての要素を指すものと理解すべきである。当業者であれば、常用的な実験を用いるだけで、本明細書に記載する本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。こうした同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0151】
本発明をその実施形態例を参照にしながら具体的に示し、説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、それらの形態及び詳細に様々な変更が加えられ得ることを理解されよう。
にこれらを使用する方法に関する。