特許第6349478号(P6349478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6349478水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムおよび除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6349478
(24)【登録日】2018年6月8日
(45)【発行日】2018年6月27日
(54)【発明の名称】水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムおよび除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/14 20060101AFI20180618BHJP
【FI】
   B01D1/14 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-56490(P2018-56490)
(22)【出願日】2018年3月23日
【審査請求日】2018年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清香
(72)【発明者】
【氏名】小浦 輝政
(72)【発明者】
【氏名】野澤 史和
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−078880(JP,A)
【文献】 特開2008−161743(JP,A)
【文献】 特開2001−129302(JP,A)
【文献】 特開昭50−029472(JP,A)
【文献】 特開昭52−139671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−5/00
B01D 17/02
B01D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムであって、
有機溶剤を貯留する溶剤容器と、
前記溶剤容器内に、不活性ガスであるキャリアガスを導入する導入部と、
前記溶剤容器から、前記有機溶剤から気化される、有機溶剤および水分を含む気化ガスおよび前記キャリアガスを含む混合ガスを導出する導出部と、
前記導出部から導出された混合ガスから水分を選択的に分離する水分分離部と、
前記水分分離部を通過した水分除去された混合ガスの内、少なくともキャリアガス以外を液化して回収する回収容器と、を有する、除去システム。
【請求項2】
前記溶剤容器に導入されるキャリアガスの流量を制御する流量制御部および/またはキャリアガスの圧力を制御する圧力制御部を有する、請求項1に記載の除去システム。
【請求項3】
前記回収容器内の液送から、液化された液化有機溶剤を排出する液化有機溶剤排出部と、
前記液化有機溶剤から不純物を除去する除去部を有する、請求項に記載の除去システム。
【請求項4】
前記溶剤容器および/または前記回収容器の内圧は、0.1MPaAから0.5MPaAの範囲に設定される、請求項1から3のいずれか1項に記載の除去システム。
【請求項5】
前記水分分離部は、第一分離部と第二分離部を有し、それらの内一方で分離処理をし、その他で再生処理を実行するように配管構成されている、請求項に記載の除去システム。
【請求項6】
水分含有有機溶剤から水分を除去する除去方法であって、
有機溶剤を貯留する溶剤容器の内に、不活性ガスであるキャリアガスを導入し、
前記溶剤容器から、前記有機溶剤から気化される、有機溶剤および水分を含む気化ガスおよび前記キャリアガスを含む混合ガスを導出し、
前記混合ガスから水分を選択的に分離し、
水分除去された混合ガスの内、少なくともキャリアガス以外を液化して回収容器に回収する、除去方法。
【請求項7】
前記溶剤容器および/または前記回収容器の内圧は、0.1MPaAから0.5MPaAの範囲に設定される、請求項6に記載の除去方法。
【請求項8】
液化された有機溶剤から不純物を除去する、請求項6に記載の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量(例えば10ppmから100ppm)の水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムおよび除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販品として流通している有機溶剤中には10ppmから100ppm程度の水が含まれている。この極小量の水分を除去するために、従来から、有機溶剤に直接に吸着剤を投入して、上澄みの有機溶剤を使用するなどしていたが、分離効率が悪く、また、吸着剤から溶出した不純物が上澄みの有機溶剤に混入するという問題があった。
【0003】
特許文献1は、有機溶剤を回収する装置において、水分の吸着分離をする脱水塔と、無機酸および有機酸の吸着分離をする脱酸塔を開示する。脱水剤として3〜80Åの細孔径を有するゼオライトまたは/およびアルミノシリケートを充填することを開示している。さらに、(1)脱水塔に充填する吸着剤は、吸着剤の細孔分布の制御技術が優れているゼオライト例えば合成ゼオライトを使用し、細孔径を3〜4Åに限定したものが好ましく、分子篩い効果により溶剤中に含有する不純物の中から水分だけを選択的に吸着分離すること、(2)脱水塔の塔高さは最低75cm以上必要であること、(3)脱水塔へ供する処理液は、空塔線速度が6〜15m/Hrの範囲が水分の分離効果が最も高く、この範囲外では、脱水能力は著しく低下すること、(4)脱水塔への処理液の供給は、上部あるいは底部いずれからでもよいが、ショートパスや偏流を防止し、処理液と吸着剤との均一接触を図るため、塔の底部より導入するほうが好ましい、などが記載されている。
【0004】
特許文献2は、有機溶剤中の水分除去方法であって、水分含有量が飽和水分濃度以上である疎水性の有機溶剤の前記水分含有量を飽和水分濃度近辺にする第1水分除去工程と、水分含有量が飽和水分濃度近辺である有機溶剤の前記水分含有量をさらに低減させて100ppm以下にする第2水分除去工程とを有する。コアレッサーを用いて前記第1水分除去工程を行い、蒸留塔を用いて前記第2水分除去工程を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−220303号公報
【特許文献2】特開2001−300206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、処理液を直接に吸着剤に接触させるため、処理後の有機溶剤の回収率が70%から80%以下であり、また吸着剤から不純物が有機溶剤に溶出する問題を解決することができない。
また、上記特許文献2では、設備が大がかりである一方で、水分含有量を100ppm以下にするものであって、10ppm未満の水分含有量にすることができない。
【0007】
本発明の目的は、有機溶剤中の水分含有量を10ppm未満にでき、従来よりも回収率を向上させることができる、水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムおよび除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムであって、
有機溶剤を貯留する溶剤容器と、
前記溶剤容器内に、キャリアガスを導入する導入部と、
前記溶剤容器から、前記有機溶剤から気化される気化ガスおよび前記キャリアガスを含む混合ガスを導出する導出部と、を有する。
【0009】
キャリアガスは、例えば、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)等の不活性ガスが好ましい。
キャリアガスは、ドライガスであることが好ましい。含水率が0〜1ppm未満であることが好ましく、0〜0.1ppm未満がより好ましく、0〜0.01ppm未満がさらに好ましい。
導入されるキャリアガスは、有機溶剤よりも沸点が低く、好ましくはそれらの沸点差が20℃以上であり、より好ましくは30℃以上である。
導入されるキャリアガスは、1種または2種以上であってもよい。
導入されるキャリアガスは、常温であってもよく、例えば15℃〜25℃に設定されていてもよい。
キャリアガスを導入し導出させる時間(全体の処理時間)は、特に制限されないが、目標の水分含有量未満に達するまででもよく、容器(あるいはキャリアガスと有機溶剤液面との接触面積)のサイズに依存した予め設定された処理時間でもよく、溶剤容器内の有機溶剤の残量が閾値に達するまででもよい。
【0010】
有機溶剤は、各種プロセスガスを含め特に限定されず、広く工業的に用いられる溶剤、例えばオクタン等の有機溶剤、フロン系や塩素系の有機溶剤等を含む。一般に常温(20〜30℃)常圧(約0.1MPa)で液体であるが、ここでは、広く加圧条件下あるいは低温条件下において液化された溶剤をも含む。具体的には、半導体や太陽電池等の製造装置用の洗浄液として使用された後の有機溶剤、あるいはこれらの研究用設備において使用された有機溶剤や有機合成反応等の原料となる有機溶剤などを挙げることができる。飽和炭化水素(例えばn−ヘキサンやn−オクタン等)や環状飽和炭化水素(例えばシクロヘキサン等)、あるいはケトン(例えばアセトン等)やエステル(例えば酢酸エチル等)や芳香族化合物(例えばベンゼンやトルエン等)や環状エーテル化合物(例えばTHF等)や複素環式化合物(例えばピリジン等)を挙げることができる。
有機溶剤は、例えば、n−オクタン、n−ヘキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、ピリジン、ピペリジン、酢酸、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。
【0011】
上記除去システムは、前記溶剤容器に導入されるキャリアガスの流量を制御する流量制御部(例えば、マスフローコントローラー)および/またはキャリアガスの圧力を制御する圧力制御部を有してもよい。
前記流量制御部および/または圧力制御部は、溶剤容器内の圧力に基づいてキャリアガスの流量および/または圧力を制御してもよい。
前記溶剤容器は、その内部圧力を測定するための圧力計を有していてもよい。
溶剤容器内の圧力(絶対圧基準)は、0.1MPaAから0.5MPaAの範囲、好ましいのは0.1MPaAから0.4MPaAの範囲、より好ましいのは0.1MPaAから0.3MPaAの範囲、特に好ましくは0.1MPaAから0.2MPaAの範囲である。圧力が低い方が有機溶剤に溶存しているHOを除去しやすく、圧力が低すぎると有機溶剤がキャリアガスに同伴される量が増加する傾向にある。
流量制御部は、溶剤容器内の空間体積中(気相)のガスが1分間当たり1回以上交換できる流量が好ましい。
【0012】
上記除去システムは、前記キャリアガスを貯留するガスボンベを有してもよい。
上記除去システムは、前記導出部から導出された混合ガスから水分を選択的に分離する水分分離部を有してもよい。
上記除去システムは、前記水分分離部を通過した水分除去された混合ガスの内、少なくともキャリアガス以外を液化して回収する回収容器を有してもよい。
【0013】
上記除去システムは、回収容器の上部から下部までの延びる混合ガス導入部を有していてもよい。
上記除去システムは、前記回収容器内の空間体積中(気相)(あるいは上部)から前記キャリアガスを排出するキャリアガス排出部を有してもよい。
上記除去システムは、前記回収容器内の液相から、液化された液化有機溶剤を排出する液化有機溶剤排出部を有してもよい。
上記除去システムは、前記液化有機溶剤から不純物を除去する除去部を有してもよい。不純物が金属成分である場合に、除去部がメタル除去フィルターであってもよい。
前記回収容器は、その気相圧力を測定する圧力計を有していてもよい。
回収容器内の圧力(絶対圧基準)は、0.1MPaAから0.5MPaAの範囲、好ましいのは0.1MPaAから0.4MPaAの範囲、より好ましいのは0.1MPaAから0.3MPaAの範囲、特に好ましいのは0.1MPaAから0.2MPaAの範囲である。圧力が高いほど有機溶剤を回収しやすくなるが、圧力が高すぎると、回収溶剤中にキャリアガスが溶け込んでしまい不純物となる。
前記回収容器および/または混合ガスが流れる配管において、混合ガスを冷却する冷却部を有していてもよい。
前記冷却部は、前記回収容器内の上記圧力に基づいて冷却温度を制御する温度制御部を有してもよい。
【0014】
前記水分分離部は、少なくとも1つで構成されていてもよく、2つ以上で構成されていてもよい。
前記水分分離部は、第一分離部と第二分離部を有し、それらの両方で分離処理を実行してもよく、それらの内一方で分離処理をし、その他で再生処理を実行するように配管構成されていてもよい。再生処理は、分離部の吸着剤に応じて加熱処理での再生でもよい。再生により生じた水分は排出されることが好ましい。再生に利用されるキャリアガスとして、前記キャリアガス排出部から排出されたキャリアガスを利用してもよい。
前記水分分離部は、吸着剤を有して構成されていてもよい。吸着剤としては、その細孔径が3Å〜4Åが好ましい。
吸着剤の種類としては、分子篩、ゼオライトなどが挙げられる。ゼオライトとして、例えば、合成ゼオライト(NaO−Al−XSiO−YHO)、モレキュラーシーブ3A、4Aなどが挙げられる。
【0015】
他の発明は、水分含有有機溶剤から水分を除去する除去方法であって、
有機溶剤を貯留する溶剤容器の内に、キャリアガスを導入し、
前記溶剤容器から、前記有機溶剤から気化される気化ガスおよび前記キャリアガスを含む混合ガスを導出する。
上記除去方法は、前記混合ガスから水分を選択的に分離してもよい。
上記除去方法は、水分除去された混合ガスの内、少なくともキャリアガス以外を液化して回収してもよい。
上記除去方法は、液化されない前記キャリアガスを排出してもよい。
上記除去方法は、前記液化された液化有機溶剤を排出してもよい。
上記除去方法は、前記液化有機溶剤から不純物を除去してもよもよい。
上記除去方法は、前記水分を選択的に分離する工程において使用された吸着剤から水分脱離(再生処理)をしてもよい。
上記除去方法は、前記水分を選択的に分離する工程において、第一水分分離部で水分吸着処理をし、第二水分分離部で水分脱離(再生処理)をしてもよい。
上記除去方法は、排出された液化されないキャリアガスを、上記再生処理のキャリアガスに再使用してもよい。
上記除去方法は、排出された液化されないキャリアガスを、上記溶剤容器に導入されるキャリアガスとして再使用してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶剤容器内の有機溶剤中の水分含有量を10ppm未満にすることができる。
また、回収容器内の有機溶剤中の水分含有量を10ppm未満にすることができる。
溶剤容器および回収容器から回収される総有機溶剤の収率(処理済の有機溶剤÷未処理の有機溶剤×100[%];[水分除去された有機溶剤(溶剤容器+回収容器)]÷[この装置に導入した原料有機溶剤]×100[%])は、95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る除去システムの概略を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0019】
(実施形態1)
水分含有有機溶剤から水分を除去する除去方法は、以下の工程を含む。
(1)有機溶剤を貯留する溶剤容器の内に、キャリアガスを導入する(キャリアガス導入工程)。キャリアガスが有機溶剤の表面に接触されることで、有機溶剤(水分を含む)が気化される。
(2)溶剤容器から外部へ、有機溶剤から気化される気化ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを導出する。気化ガスには水分が含まれており、キャリアガスと共に混合ガスとして外部へ導出される(混合ガス導出工程)。
上記溶剤容器中の水分が減少していき、水分含有量を10ppm未満にすることができる。
(3)混合ガスから水分を選択的に分離する(水分分離工程)。例えば、細孔径が3Å〜4Åの吸着剤を用いて、混合ガス中の水分を選択的に分離することができる。
(4)水分除去された混合ガスの内、少なくともキャリアガス以外を液化して回収容器に回収する(有機溶剤回収工程)。キャリアガス以外の混合ガス中の成分は、キャリアガスよりも凝縮温度が高いため、その凝縮温度より低くかつキャリアガスの凝縮温度より高い温度に冷却することでキャリアガスとそれ以外を分離できる。
(5)液化されないキャリアガスを回収容器から排出する(キャリアガス排出工程)。回収容器からキャリアガスが排出され、一方、液化された液化有機溶剤は、回収容器に貯留される。
(6)回収容器の液化有機溶剤を排出し、液化有機溶剤から不純物を除去する(不純物除去工程)。
(7)水分分離工程において、第一水分分離部で水分吸着処理をし、第二水分分離部で水分脱離(再生処理)をする(再生工程)。
(8)回収容器から排出されたキャリアガスを、上記再生工程のキャリアガスに使用する(第一再利用工程)。
(9)回収容器から排出されたキャリアガスを、上記キャリアガス導入工程のキャリアガスとして使用する(第二再利用工程)。
【0020】
(実施形態2)
図1は、水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システム1の概略を示す。除去システム1は、実施形態1の除去方法を実施するのに適した構成であるが、実施形態1はこれに制限されるものではない。
【0021】
キャリアガスは、ガスボンベ11に貯留されている。ガスボンベの安全弁(不図示)を介し配管L1を通じて溶剤容器12の導入部123へキャリアガスが導入される。溶剤容器12には有機溶剤が貯留されている。導入部123は、キャリアガスを導入するための入口配管および弁を有する。ガスボンベ11から導入部123までの配管L1にはマスフローコントローラーMFC1が配置される。後述するが、再利用キャリアガスがマスフローコントローラーMFC1よりも上流側で配管L1に合流する。
【0022】
溶剤容器12には圧力計P1が設けられている。溶剤容器12内の圧力(絶対圧基準)は、0.1MPaAから0.5MPaAの範囲、好ましいのは0.1MPaAから0.4MPaAの範囲、より好ましいのは0.1MPaAから0.3MPaAの範囲、特に好ましいのは0.1MPaAから0.2MPaAの範囲になるように圧力設定される。そのために、マスフローコントローラーMFC1は、圧力計P1から測定圧力を受信し、上記の圧力範囲になるようにキャリアガスの流量を制御する。また、導出部124は、溶剤容器12の出口配管および弁を有する。導入部123および/または導出部124の弁(不図示)は、マスフローコントローラーMFC1と共に、上記の圧力範囲になるように流量調整、圧力調整機能を行ってもよい。また、マスフローコントローラーMFC1は、溶剤容器12内の空間体積(気相)121中のガスが1分間当たり1回以上交換できる流量となるように機能することが好ましい。さらに、導入部123および/または導出部124の弁も、溶剤容器12内の空間体積中(気相121)のガスが1分間当たり1回以上交換できる流量となるように機能してもよい。
このマスフローコントローラーMFC1の制御および上記弁の制御は、オペレータが行ってもよく、不図示の制御部が行ってもよい。
【0023】
有機溶剤から気化される気化ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスは、導出部124から配管L2を通じて溶剤容器12の外へ導出される。この混合ガスは、配管L2を通じて水分を選択的に分離する水分分離部13に送られる。
本実施形態において、水分分離部13は、第一分離部131と第二分離部132を有する。上記導出部124と接続される配管L2から分岐した第一分岐配管L21が第一分離部131に接続され、配管L2から分岐した第二分岐配管L22が第二分離部132に接続される。第一分離部131で水分が選択的に除去された混合ガスは第一後段配管L31に送られ、また第二分離部132で水分が選択的に除去された混合ガスは第二後段配管L32に送られる。第一、第二後段配管L31、L32は、共に配管L3に接続され、配管L3は回収容器14の混合ガス導入部143に接続される。
【0024】
第一、第二分岐配管L21、L22には、それぞれ仕切弁GV1、GV2が設けられている。また、第一、第二後段配管L31、L32には、それぞれ仕切弁GV3、GV4が設けられている。第一分離部131に混合ガスを流通させて水分分離をさせる場合は、仕切弁GV1、GV3を開け、仕切弁GV2、GV4を閉じる。一方、第二分離部132に混合ガスを流通させて水分分離をさせる場合は、仕切弁GV2、GV4を開け、仕切弁GV1、GV3を閉じる。この弁の開閉操作は、オペレータが行ってもよく、不図示の制御部が行ってもよい。再生処理については後述する。
【0025】
本実施形態において、第一、第二分離部131、132は、吸着剤を有して構成されている。吸着剤としては、その細孔径が3Å〜4Åが好ましい。吸着剤の種類としては、分子篩、ゼオライトなどが挙げられる。ゼオライトとして、例えば、合成ゼオライト(Na2O−Al2O3−XSiO2−YH2O)、モレキュラーシーブ3Å、4Åなどが挙げられる。
【0026】
回収容器14は、配管L3と接続された混合ガス導入部143を通じて送られた混合ガスの内、少なくともキャリアガス以外を液化して回収する。本実施形態において混合ガス導入部143は、配管と弁を有し、回収容器14の天面から底部まで延びる構成である。
本実施形態において、冷却部145は、回収容器14の周囲に設けられる。冷却部14は、温度指示調節計TIC1を有し、キャリアガス以外を液化するに適した温度範囲になるように温度制御される。この温度制御は、オペレータが行ってもよく、不図示の温度制御部が行ってもよい。
【0027】
回収容器14は、空間体積(気相)141中から液化されないキャリアガスを排出するキャリアガス排出部144を有する。キャリアガス排出部144は、配管と弁を有し、排出用配管L4に接続される。排出用配管L4は、仕切弁GV9を介して外気排出のベントへ接続される。
溶剤容器12には圧力計P2が設けられている。回収容器14内の圧力は、0.1MPaAから0.5MPaAの範囲、好ましいのは0.1MPaAから0.4MPaAの範囲、より好ましいのは0.1MPaAから0.3MPaAの範囲、特に好ましいのは0.1MPaAから0.2MPaAの範囲に設定される。
上記の圧力範囲になるように、冷却部145の温度、導入される混合ガスの流量、排出されるキャリアガスの流量が制御される。混合ガスの流量、排出されるキャリアガスの流量の制御は、混合ガス導入部143および/またはキャリアガス排出部144の弁の流量調整、圧力調整機能によって行ってもよく、それに加えてあるいは代替してキャリアガス導入を制御するマスフローコントローラーMFC1の制御および導入部123および/または導出部124の弁制御によってもよい。
このマスフローコントローラーMFC1の制御および導入部123および/または導出部124の弁制御は、オペレータが行ってもよく、不図示の制御部が行ってもよい。
【0028】
液化有機溶剤排出部146は、配管と弁を有し、配管L6と接続される。その弁を開けることで、回収容器14内の液相142から液化有機溶剤が回収部16へ排出される。配管L6には、液化有機溶剤から不純物を除去する除去部15が配置される。本実施形態では、除去部15は、不純物が金属成分である場合に、メタル除去フィルターで構成される。
回収容器14から回収部16へ送る制御は、オペレータが行ってもよく、不図示の制御部が行ってもよい。制御部は、回収容器14内の液相142のレベルを検知するレベルセンサー(不図示)の検知結果が所定の閾値に達したら液化有機溶剤を回収部16へ送るように制御してもよく、溶剤容器12へ導入されるキャリアガスの導入が停止した後でなされてもよい。
【0029】
(収率)
本実施形態の除去システム1において、最終的に溶剤容器12に残った有機溶剤の量と、回収容器14あるいは回収部16で回収された有機溶剤量は、処理前の溶剤容器12と対比し、総有機溶剤の収率(処理済の有機溶剤÷未処理の有機溶剤×100[%])が、95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。
【0030】
(リサイクルキャリアガスの利用方法)
リサイクル配管L5は、排出配管L4から分岐する。リサイクル配管L5には仕切弁GV10が設けられ、リサイクルの際に仕切弁GV10が開き、仕切弁GV9が閉じる。
また、リサイクル配管L5には、コンプレッサーCP1が配置され、キャリアガスの圧力を所定圧に昇圧する。昇圧されたキャリアガスは、バッファタンクBTへ送られる。
バッファタンクBTにおいて、昇圧されたキャリアガスを、再生利用のために配管L51を通じて水分分離部13へ送るか、配管L52を通じて、導入キャリアガスに再利用するために配管L1へ送るかを仕切弁(不図示)によって制御される。バッファタンクBTは、圧力計P3を有し、この圧力計の測定圧に基づいてコンプレッサーCP1によるキャリアガスの昇圧を制御してもよい。再利用されるキャリアガスの圧力は、使用目的に応じて配管L1へ送る場合にガスボンベ11内の圧力と同じ(実質的に同程度)に設定され、水分分離部13へ送る場合には、水分分離部13の再生処理に適した圧力に設定される。上記仕切弁(不図示)が、配管L51、配管L52のそれぞれに接続されていてもよく、三方分岐弁であってもよい。
上記仕切弁(不図示)の開閉操作は、オペレータが行ってもよく、不図示の制御部が行ってもよい。
【0031】
(再生処理)
バッファタンクBTと接続される配管L51から分岐した配管L511は、仕切弁GV3の上流側で第一後段配管L31に接続される。配管L511は、仕切弁GV5が設けられている。また、配管L51から分岐した配管L512は、仕切弁GV4の上流側で第二後段配管L32に接続される。配管L512は、仕切弁GV7が設けられている。
また、仕切弁GV1の下流側で第一分岐配管L21から分岐した配管L211は、外気排出用のベントへ接続され、この配管には仕切弁GV6が設けられている。仕切弁GV2の下流側で第二分岐配管L22から分岐した配管L221は、外気排出用のベントへ接続され、この配管には仕切弁GV8が設けられている。
【0032】
第一分離部131に混合ガスを流通させて水分分離をさせ、かつ第二分離部132で再生処理をする場合、仕切弁GV1、GV3を開けて仕切弁GV2、GV4を閉じ(水分吸着処理)、仕切弁GV5、GV6を閉じて仕切弁GV7、GV8を開ける(脱離処理)。再生処理の際には、仕切弁9は閉じて仕切弁10を開け、コンプレッサーCP1を駆動し、配管L51に通じるバッファタンクBTの仕切弁が開いている状態である。
一方、第二分離部132に混合ガスを流通させて水分分離をさせ、かつ第一分離部131で再生処理をする場合、仕切弁GV2、GV4を開けて仕切弁GV1、GV3を閉じ(水分吸着処理)、仕切弁GV7、GV8を閉じて仕切弁GV5、GV6を開ける(脱離処理)。
上記仕切弁の開閉操作は、オペレータが行ってもよく、不図示の制御部が行ってもよい。
本実施形態において、再生用のキャリアガスを所定の温度に加熱するための加熱部あるいは熱交換器が、配管L5および/または配管L51に配置されていてもよい。加熱部としては、温度調節器およびヒータを有し、温度調整器でヒータを制御するように構成されていてもよい。
【0033】
また、リサイクルキャリアガスを、配管L52を通じて、導入キャリアガスに再利用するために配管L1へ送る場合に、リサイクルキャリアガスの温度を配管L1を流れるキャリアガス(ガスボンベ11から出るキャリアガスの温度)と同じ(実質的に同じ温度)になるようにするための冷却部(あるいは加熱部)または熱交換器が、配管L5および/または配管L52に設けられていてもよい。
【0034】
(別実施形態)
上記実施形態において、溶剤容器は、市販され流通している容器そのものでもよく、本システム専用の容器でもよい。流通している容器を用いる場合には、導入部、導出部、圧力計を設けるための加工をすればよく、当業者であれば特に技術的な困難性はない。
上記実施形態において、配管は、金属製に限定されず、プラスチック製でもよく、フレキシブルな形態でもよい。
本実施形態において、制御部、温度制御部、弁制御部は、ソフトウエアプログラムとメモリ、プロセッサーなどのハードウエアで構成されていてもよく、専用回路、組み込みファームウエアなどを有する専用装置で構成されていてもよい。制御手順がメモリに記憶され、プロセッサーがその制御手順を読み出し実行する構成でもよい。
【0035】
(実験例)
実施形態2(図1)のシステムを用い、以下の条件で実施した。
キャリアガス:N
導入されるキャリアガスの流量:0.5slm
溶剤容器12の気相121での置換回数:1回/分
水分分離部:モレキュラーシーブ3Å
除去部:メタル除去フィルター
有機溶剤:n−オクタン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)
【0036】
n−オクタン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)のそれぞれについて、水分除去前後(精製前後)の水分濃度[wtppm]と、回収前後の収率[%]を表1に示す。
なお、回収前は、溶剤容器12に残った有機溶剤のみの収率を示し、回収後は溶剤容器12と回収部16の有機溶剤の収率を示す(回収容器14から回収部16へ全量送られている)。
【表1】
【0037】
表1の結果から、3種類とも、10ppm未満の水分濃度にすることができ、収率も98%以上と高くできたことを確認できた。
【0038】
また、表2に、回収されたn−オクタン中の金属分析結果[wtppb]を示す。有機溶剤中の金属成分の分析はICP−MSを用いた。DLは検出限界を示す。金属フィルター除去前後の数値を対比して示す。
【表2】

【0039】
表2の結果から、Cu、Ni、Tiにおいて、フィルター処理の効果を確認できた。
【符号の説明】
【0040】
1 除去システム
11 ガスボンベ
12 溶剤容器
13 水分除去部
131 第一水分除去部
132 第二水分除去部
14 回収容器
145 冷却部
15 不純物除去部
16 回収部
【要約】
【課題】有機溶剤中の水分含有量を10ppm未満にでき、従来よりも回収率を飛躍的に向上させることができる、水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システムを提供する。
【解決手段】水分含有有機溶剤から水分を除去する除去システム1は、有機溶剤を貯留する溶剤容器12と、前記溶剤容器内に、キャリアガスを導入する導入部123と、前記溶剤容器12から、前記有機溶剤から気化される気化ガスおよび前記キャリアガスを含む混合ガスを導出する導出部124を有する。
【選択図】図1
図1