(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349519
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】多情報入力デバイスおよび入力デバイス付き装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0338 20130101AFI20180625BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20180625BHJP
【FI】
G06F3/0338 412
G06F3/0354 431
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-233443(P2013-233443)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-95048(P2015-95048A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】東山 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】浜 信治
(72)【発明者】
【氏名】横浜 智明
【審査官】
塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−157077(JP,A)
【文献】
特開2009−140520(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/136046(WO,A1)
【文献】
特開2001−228967(JP,A)
【文献】
特開2007−004231(JP,A)
【文献】
特開2004−070654(JP,A)
【文献】
特開2007−199971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/01
3/033−3/039
3/048−3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環板状の操作部の揺動により入力操作を行う弾性支持された揺動型入力デバイスと、該揺動型入力デバイスの中央空隙部にボールが位置するように組み合わされたトラックボールとからなる多情報入力デバイスであって、該操作部は該ボールを囲繞するように配置され、
該揺動型入力デバイスは少なくとも位置入力デバイス以外の指示入力デバイス機能を有しており、
前記操作部の揺動(押圧)操作によって少なくとも4種類の指示入力、面上の回転操作によって少なくとも1種類の指示入力が可能であり、
該操作部の全面を一様に押圧する入力操作が可能であり、また該トラックボールは少なくとも位置入力デバイスとして機能し、これにより該揺動型入力デバイスと該トラックボールとは異なる指示入力が可能であり、該揺動型入力デバイスはその操作部の裏面に対向して基準面が設けられ、該基準面には光学式距離センサが設けられ、該裏面には該光学式距離センサからの投光を反射できる反射部材が設けられており、該光学式距離センサおよび反射部材はいずれも複数設けられていることを特徴とする、多情報入力デバイス。
【請求項2】
前記操作部は前記ボールを包囲するホイール状にされていることを特徴とする、請求項1に記載の多情報入力デバイス。
【請求項3】
前記揺動型入力デバイスは押圧による揺動以外に前記操作部の面上の回転による入力操作も可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多情報入力デバイス。
【請求項4】
前記揺動型入力デバイスは位置入力デバイスとしても機能可能であることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の多情報入力デバイス。
【請求項5】
前記揺動型入力デバイスと前記トラックボールとの協働による指示入力が可能であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の多情報入力デバイス。
【請求項6】
請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の多情報入力デバイスを搭載した、入力デバイス付き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多情報入力デバイスおよび入力デバイス付き装置に係り、特に、一つの入力デバイスで、省スペースながら多くの情報を入力することのできる、多情報入力デバイスおよび入力デバイス付き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マウスのように操作に広い場所を必要としない入力デバイスには、トラックボールや、ジョイスティックのような揺動型のデバイスがある。これらについては従来、多くの技術的提案がなされている。たとえば特許文献1には、ボールの下方にセンサを設け、ボールに二つの機能を持たせて小型化したトラックボールとして、ケース内のボールの下方にセンサを設け、ボールの回転によるポインタ等の移動と、ボールを押してセンサを作動させて行うクリック動作とをボールで行うようにした構成、つまりクリック(スイッチ)を付加したトラックボールが開示されている。
【0003】
また特許文献2には、簡易に検眼を行うことができる検眼システムとして、被検眼の前眼部像を撮像する撮像管を有しかつ三次元駆動装置で駆動可能に設けられた検眼装置本体と、本体に設けられ本体に対向する顧客の顔画像を撮像するテレビカメラと、顧客が本体の測定操作をするジョイスティックレバー、スイッチと、顧客が本体の三次元駆動手段を操作するジョイスティックレバーを備え、異なる場所の検眼情報センターに配置されかつ各本体にインターネットを介し接続された検眼情報処理装置を備える検眼システムが開示されている。なお検眼情報処理装置は、本体を遠隔制御させるコンピュータを備えるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−164409号公報「トラックボール」(特許第4109090号)
【特許文献2】特開2002−10978号公報「検眼システム」(拒絶査定)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、トラックボールやジョイスティックは片手のみを使用する入力デバイスであるが、これら単独では入力できる情報にどうしても限界がある。これら方式の異なる入力デバイスが一体化された複合的なデバイスは、上記各文献開示技術も含め、未だに存在しない。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、一つの入力デバイスで、省スペースながら多くの情報を入力することのできる、多情報入力デバイスおよび入力デバイス付き装置を提供することである。特に本発明の課題は、トラックボールとジョイスティックのような揺動型入力デバイスを一体化した構造の多情報入力デバイスおよびそれを付属した装置を提供することにより、片手で入力できる情報の上限を引き上げることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、トラックボールのボールを囲繞するように操作部を有するジョイスティックのような揺動型入力デバイスを配置するこ
とにより、トラックボール、揺動型入力デバイス両方の機能を同時に使用することも可能な複合型のデバイスを実現できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 円環板状の操作部の揺動により入力操作を行う弾性支持された揺動型入力デバイスと、該揺動型入力デバイスの中央空隙部にボールが位置するように組み合わされたトラックボールとからなる多情報入力デバイスであって、
該操作部は該ボールを囲繞するように配置され、該揺動型入力デバイスは少なくとも位置入力デバイス以外の指示入力デバイス機能を有しており、
前記操作部の揺動(押圧)操作によって少なくとも4種類の指示入力、面上の回転操作によって少なくとも1種類の指示入力が可能であり、該操作部の全面を一様に押圧する入力操作が可能であり、また該トラックボールは少なくとも位置入力デバイスとして機能し、これにより該揺動型入力デバイスと該トラックボールとは異なる指示入力が可能であり、該揺動型入力デバイスはその操作部の裏面に対向して基準面が設けられ、該基準面には光学式距離センサが設けられ、該裏面には該光学式距離センサからの投光を反射できる反射部材が設けられており、該光学式距離センサおよび反射部材はいずれも複数設けられていることを特徴とする、多情報入力デバイス。
【0009】
〔2〕 前記操作部は前記ボールを包囲するホイール状にされていることを特徴とする、〔1〕に記載の多情報入力デバイス。
〔3〕 前記揺動型入力デバイスは押圧による揺動以外に前記操作部の面上の回転による入力操作も可能であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の多情報入力デバイス。
〔4〕 前記揺動型入力デバイスは位置入力デバイスとしても機能可能であることを特徴とする、〔1〕
、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の多情報入力デバイス。
【0010】
〔5〕 前記揺動型入力デバイスと前記トラックボールとの協働による指示入力が可能であることを特徴とする、〔1〕
、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の多情報入力デバイス。
〔6〕
〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の多情報入力デバイスを搭載した、入力デバイス付き装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多情報入力デバイスおよび入力デバイス付き装置は上述のように構成されるため、これによれば、一つの入力デバイスで、省スペースでありつつも多くの情報を入力することができる。特に本発明によれば、片手で入力できる情報の上限を引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の多情報入力デバイスの構成例を示す斜視の説明図である。
【
図2】本発明多情報入力デバイスの揺動型入力デバイスにおける位置検出構造を示す説明図である。
【
図3】本発明多情報入力デバイスの動作例を示す説明図である(揺動型入力デバイスにおける押圧操作)。
【
図4】本発明多情報入力デバイスの動作例を示す説明図である(揺動型入力デバイスにおける回転操作)。
【
図5】本発明多情報入力デバイスの動作例を示す説明図である(トラックボールの操作)。
【
図6】本発明多情報入力デバイスの機能分担による使用例を示す説明図である。
【
図7】
図6に示した多情報入力デバイスの使用例(具体例1.)を示す説明図である。
【
図8】
図6に示した多情報入力デバイスの別の使用例(具体例2.)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の多情報入力デバイスの構成例を示す斜視の説明図である。図示するように本多情報入力デバイス50は、円環板状の操作部31の揺動によりジョイスティックのように入力操作を行う弾性支持された揺動型入力デバイス30と、揺動型入力デバイス30の中央空隙部にボール48が位置するように組み合わされたトラックボール40とからなり、揺動型入力デバイス30は少なくとも位置入力デバイス以外の指示入力デバイス機能を有しており、操作部31の全面を一様に押圧する入力操作が可能であり、またトラックボール40は少なくとも位置入力デバイスとして機能し、これにより揺動型入力デバイス30とトラックボール40とで異なる指示入力が可能であることを、主たる構成とする。なお操作部31は、図示するようにボール48を包囲するホイール状とすることができる。
【0014】
かかる構成により本発明多情報入力デバイス50によれば、揺動型入力デバイス30では、円環板状の操作部31を揺動させることによりジョイスティックのように、少なくとも位置入力以外の指示入力操作を行うことができ、かつ操作部31の全面を一様に押圧する入力操作も行うことができる。一方トラックボール40では、少なくとも位置入力デバイスとしての入力操作も行うことができる。
【0015】
つまり、揺動型入力デバイス30とトラックボール40とで異なる指示入力操作行うことができる。しかもトラックボール40の操作部たるボール48は揺動型入力デバイス30の中央空隙部に位置するため、省スペースでありつつも多くの情報を入力することができ、しかも、片手で入力できる情報の上限を引き上げることができる。
【0016】
なお本発明多情報入力デバイス50において、揺動型入力デバイス30が有する機能は、少なくとも位置入力デバイス以外の指示入力デバイス機能であるから、当該機能と併せて位置入力デバイス機能を備えた構成も、本発明からは除外されない。同様に、トラックボール40が有する機能は、少なくとも位置入力デバイスであるから、当該機能と併せて位置入力デバイス以外の指示入力デバイス機能を備えた構成もまた、本発明からは除外されない。
【0017】
また、揺動型入力デバイス30において、操作部31の全面を一様に押圧する入力操作により行われる指示内容は、たとえばそれによって、多情報入力デバイス30が供えられた入力デバイス付き装置における特定の機能(例.スタートメニューの表示、特定メニューの表示、装置のリセット、他)が開始される等、適宜の指示内容とすることができる。
【0018】
図2は、本発明多情報入力デバイスの揺動型入力デバイスにおける位置検出構造を示す説明図であり、図中(a)は未操作状態を、(b)は入力操作されている状態を示す。ここに示すように揺動型入力デバイス30は、その操作部31の裏面31Bに対向して基準面33Aが設けられ、基準面33Aには光学式距離センサ34が設けられ、裏面31Bには光学式距離センサ34からの投光を反射できる反射部材35が設けられた構成とすることができる。なお、光学式距離センサ34および反射部材35は、いずれも複数設けられた構成とすることができ、またそれが、入力デバイスとして望ましい構成である。
【0019】
本発明に係る揺動型入力デバイス30においては、かかる構成をとることにより、操作部31に対して(図中(a))押圧Pがなされてジョイスティックのように揺動による入力操作が行われると(図中(b))、揺動によって、操作部31裏面31B上の反射部材35と対向する基準面33A上の光学式距離センサ34との間の距離に変化が生じる。すなわち、入力操作における揺動の方向・程度(角度)によって、特定の光学式距離センサ34−反射部材35間の距離が変化する。そして、それに伴い光学式距離センサ34の出力が変化することを利用して、操作部31の位置が検出され、最終的に位置指示やその他の指示がなされる。
【0020】
また、光学式距離センサ34−反射部材35の組が適宜の複数組設けられることにより、入力デバイスとしての機能をより高度化することができる。また、かかる光学式距離センサ34−反射部材35の組による位置検出構造は、従来の揺動型デバイスにおけるそれと比較して構造が簡単であり、したがって低コストで製造することができる。
【0021】
また本発明多情報入力デバイス50は、トラックボール40と揺動型入力デバイス30によるものであるため、この両者によって、入力信号の重畳効果を得る構成(同一機能を複数の入力方法で実現可能)、入力信号の機能を分担させる構成(各デバイスが別機能を分担)、あるいは入力信号の協働機能を得る構成(2以上のデバイスを同時に操作することにより特定の機能を実現)のいずれの構成とすることもできる。
【0022】
図3、4および5は、本発明多情報入力デバイスの動作例を示す説明図であり、順に、揺動型入力デバイスにおける押圧操作、揺動型入力デバイスにおける回転操作、トラックボールの操作を示す。特に
図3、4に示すように、揺動型入力デバイス30は、押圧Pによる揺動以外に、操作部31の面上の回転Tによる入力操作も可能なものとすることができる。
【0023】
図6は、本発明多情報入力デバイスの機能分担による使用例を示す説明図である。本使用例は、パーソナルコンピュータ等の入力デバイスを想定した例であり、
図7および8に示す例の基礎となる基本機能を示す。図示するように揺動型入力デバイス(30)では、操作部31の揺動(押圧L、M等)操作によって、少なくとも4種類の指示入力、面上の回転操作Wによって少なくとも1種類の指示入力が可能なものとすることができる。また図では、トラックボールは、ボール48の回転操作Cによりカーソル移動が可能なものとしている。
【0024】
図の例では、揺動型入力デバイス(30)の押圧Lによりマウスの左スイッチ、押圧Mにより同右スイッチ、押圧Uにより元に戻す指示、押圧Vによりマウスの中スイッチにそれぞれ相当した指示とし、また回転Wはマウスのスクロール
に相当した指示とする構成である。
【0025】
図7は、
図6に示した多情報入力デバイスの使用例(具体例1.)を示す説明図である。図示するように、揺動型入力デバイス30は位置入力デバイスとしても機能可能であり、特にここに示すようにトラックボール40との協働により特定の機能を果たす構成とすることもできる。
【0026】
すなわち図の例では、揺動型入力デバイス30の操作部31に対して押圧L(左スイッチ)操作しながら同時にトラックボール40のボール48を操作することで、つまり両デバイス30、40の協働により、マウスのドラッグ操作に相当する指示入力という特定の機能を果たすことができる。
【0027】
図8は、
図6に示した多情報入力デバイスの別の使用例(具体例2.)を示す説明図である。図示するように、通常は操作部31上の一箇所の押圧によって左スイッチ、右スイッチ等相当の入力操作を実現する揺動型入力デバイス30において、たとえば押圧L、M、UおよびVの全てを同時に行うことによって、コンピュータのオペレーションシステムにおけるスタートメニューを起動する操作になる、といった応用的使用方法を設定することも、可能である(図中、右記の登録商標あり;Windows(登録商標))。
【0028】
なお本発明が、以上の各図に示した各内容に限定されるものではない。また、以上説明した多情報入力デバイスを搭載した入力デバイス付き装置自体も、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の多情報入力デバイスおよび入力デバイス付き装置によれば、一つの入力デバイスで、省スペースでありつつも多くの情報を入力することができる。特に本発明によれば、片手で入力できる情報の上限を引き上げることができる。もちろん本発明の構成は従来にない新規性なものであり、民生機器分野、産業機器分野を問わず、入力デバイスを用いる全産業分野および関連する分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0030】
30…揺動型入力デバイス
31…操作部
31B…操作部の裏面
33A…基準面
34…光学式距離センサ
35…反射部材
40…トラックボール
48…ボール
50…多情報入力デバイス
B、C…回転(ボール)
P、L、M、U、V…押圧
T、W…回転