特許第6349617号(P6349617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6349617軸受用シール及び軸受並びに車両用軸受装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349617
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】軸受用シール及び軸受並びに車両用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20180625BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F16C33/78 C
   F16C41/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-132290(P2013-132290)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-7442(P2015-7442A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】高野 浩二
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−71955(JP,A)
【文献】 特開2012−167750(JP,A)
【文献】 特開2008−19905(JP,A)
【文献】 特開2010−7822(JP,A)
【文献】 特開2006−36178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F16C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外方の大径円環を有する第一シール部品と、最内方の内側円環部を有する第二シール部品と、前記第一及び第二シール部品間に、前記第一および第二シール部品が軸周りに回転可能かつ前記第一及び第二シール部品間を密封可能に設けられた弾性シールリングと、前記第一シール及び第二シール部品及び前記弾性シールリングを軸方向に固定する固定部材において、
前記大径円環と、前記大径円環に連接する中径円環と、前記中径円環の反前記大径円環側端面内径側に延出する中空円盤状端面部と、を有する前記第一シール部品と、 前記中径円環の外周と軸周りに回転可能に嵌合された外側円環部と、前記外側円環部の内側に設けられ前記中径円環より小径の前記内側円環部と、反前記大径円環側に設けられ前記外側円環部と前記内側円環部とを結合する中空円盤状の壁部と、を有する前記第二シール部品と、 前記中径円環の内周面と軸周りに回転可能に嵌合された外周部と、前記内側円環部の外径より大きな内周部と、前記外周部の前記壁部側に設けられた段部と、前記壁部と当接する端面部と、を有するシール押さえリングと、前記シール押さえリングの前記端面部と、前記壁部とを当接固定する前記固定部材と、前記段部外周に嵌合された前記弾性シールリングと、を備え、前記中空円盤状端面部と前記弾性シールリングとが、前記壁部と前記段部の前記外周部端面とで挟持されていることを特徴とすることを特徴とする軸受用シール。
【請求項2】
前記第一又は第二シール部品の一方に回転を検出する回転センサ本体が設けられていることを特徴とする請求項1記載の軸受用シール。
【請求項3】
前記壁部と前記中空円盤状端面部との間、及び、前記中空円盤状端面部と、前記弾性シールリングと、前記段部の前記外周部端面と、の何れかの当接面で、軸方向回転可能に摺接又は滑動できるようにされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受用シール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の軸受用シールの前記大径円環が、軸受外輪の内径端に圧入されていることを特徴とする軸受。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の軸受用シールの前記内側円環部が、軸受内輪の外径端に圧入されていることを特徴とする軸受。
【請求項6】
請求項4記載の前記外輪が軸受ハウジングに固定され、前記内側円環部が前記軸受外輪に対して転動体を介して軸周りに回転する内輪又は内輪と一体にされた回転部材と、でラビリンスシールを形成するようにされていることを特徴とする請求項4記載の軸受を有する車両用軸受装置。
【請求項7】
請求項5記載の前記内輪が固定軸に固定され、前記大径円環が前記軸受内輪に対して転動体を介して軸周りに回転する外輪又は外輪と一体にされた回転部材と、でラビリンスシールを形成するようにされていることを特徴とする請求項5記載の軸受を有する車両用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外内輪と外内輪間を転動する転動体を有する転がり軸受用シールに関し、特に回転センサが取り付けできるようにされた軸受用シール及びそれを用いた軸受並びにその軸受を用いた車両用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり軸受の内外輪間への塵挨、水油等の浸入、潤滑剤や潤滑油等の漏出を防止するために内外輪端にはシールが設けられている。一方、鉄道車両や、自動車においては、車速を測定するために、車軸等の回転を回転センサを用いて検出している。この回転センサは、部品の軽量化、小型化のため、シール部材に一体に取り付けられる。さらに、取り扱いの便利さから、シールとセンサが軸受に一体に組み込まれる。このとき、センサは測定データを伝送するために固定側、例えば内輪が回転する場合は外輪側に固定されることになる。
【0003】
しかし、固定側、例えばハウジングに固定された外輪(又は内輪)は、使用によりクリープ現象を生じる場合がある。クリープが生じると外輪はハウジングに対して、センサと共に回転してしまい、センサの配線等がからみついて、断線する。そこで、クリープを起こさないように、外輪の圧入代を大きくする。外周に溝を設ける。外周にOリングを介装する。ピンを挿入する。あるいは、センサが取り付けシール(センサホルダ)からハウジング側に突起部を延出させる等して、ハウジン部に対してセンサホルダが回動できないように回り止めを施す等が行われている(特許文献1)。しかし、かかる回り止めを施すことは軸受のメンテナンスや互換性について不利である。また、ハウジング側の加工が多くなる。
【0004】
そこで、特許文献2においては、センサが取り付けられた軸受用シールが固定輪のシール部分(嵌合部分)に対して回転できるようにして、軸受用シールをハウジングに固定している。これにより、固定輪がクリープにより回転方向にずれても、センサは固定位置を保つので、断線等はない。
【0005】
また、特許文献3においては、軸受用シールのシール部分を外輪(固定輪)内周に設けられた周溝(一般的なシール溝)に滑動可能に嵌めこんでいる。また。図9乃至10(第4,5実施形態線)では外輪に圧入したリング部材に、センサが取り付けられたセンサホルダを回転可能に嵌合するように固定部材で固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−007822号公報
【特許文献2】特許第2614199号公報
【特許文献3】特開2012−053002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2のものは、弾性潤滑部を外輪(固定輪)内周面に軸周りに滑動可能に嵌めこむだけである。このため、滑動し易くするとセンサホルダが外れ易くなり、取り扱いにくくなる。逆に外れにくくすると滑動しにくくなり、回り止めを強固にしなければならない。また、弾性潤滑部が異常摩耗する等の問題があった。また、特許文献3のものは、センサホルダ外周を外輪内周のシール溝に嵌めこむので、特許文献2と同様の問題があった。また、滑動し易くするため、硬質の樹脂を用いると変形がしにくくなるので、シール溝への嵌めこみ、取り出しがしにくく、損傷の原因となる虞があるという問題があった。また、特許文献3の図9乃至10にあっては、軸受に取り付ける前は一体とできない。また、軸受に取り付けた場合もセンサホルダが容易に外れてしまうという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、前述した問題点に鑑みて、シール単体、軸受組み込み状態でも一体とでき、取り扱いの容易な軸受用シールを提供することである。また、滑動部分の組み込みが容易で適切な滑(摺)動抵抗を与えることができる軸受用シール及び軸受並びに車両用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、最外方の大径円環を有する第一シール部品と、最内方の内側円環部を有する第二シール部品と、前記第一及び第二シール部品間に、前記第一および第二シール部品が軸周りに回転可能かつ前記第一及び第二シール部品間を密封可能に設けられた弾性シールリングと、前記第一シール及び第二シール部品及び前記弾性シールリングを軸方向に固定する固定部材と、を有する軸受用シールを提供することにより前述した課題を解決した。
【0010】
即ち、シールを外側と内側に二分割し、外側と内側とが軸周りに相対回転可能にし、分割部に弾性シールリングを介装して、シール機能と、回転(摺動又は滑動)抵抗を与える。軸方向に分離しないように固定部材で固定する。なお、弾性シールリングはOリング、Xリング、角リング等の断面が単純形状のリング状シール、材質はゴム、合成樹脂、金属等のものを適宜選択するのが好ましい。
【0011】
また、請求項2に記載の発明においては、前記第一又は第二シール部品の一方に回転を検出する回転センサ本体が設けられている軸受用シールを提供する。これにより、シールとセンサを一体にした部品とすることができる。
【0012】
より、具体的な構造として、請求項3に記載の発明においては、前記大径円環と、前記大径円環に連接する中径円環と、前記中径円環の反前記大径円環側端面内径側に延出する中空円盤状端面部と、を有する前記第一シール部品と、前記中径円環の外周と軸周りに回転可能に嵌合された外側円環部と、前記外側円環部の内側に設けられ前記中径円環より小径の前記内側円環部と、反前記大径円環側に設けられ前記外側円環部と前記内側円環部とを結合する中空円盤状の壁部と、を有する前記第二シール部品と、前記中径円環の内周面と軸周りに回転可能に嵌合された外周部と、前記内側円環部の外径より大きな内周部と、前記外周部の前記壁部側に設けられた段部と、前記壁部と当接する端面部と、を有するシール押さえリングと、前記シール押さえリングの前記端面部と、前記壁部とを当接固定する固定部材と、前記段部外周に嵌合された前記弾性シールリングと、を備え、前記中空円盤状端面部と前記弾性シールリングとが、前記壁部と前記段部の前記外周部端面とで挟持されている軸受用シールとした。
【0013】
第一シール部品と第二シール部品は、第一シール部品の中径円環の外周と第二シールの外側円環部及び第一シール部品の中径円環の内周面とシール押さえリングの外周部と軸周りに回転可能に嵌合しており、径方向への移動が規制されている。嵌合部の隙間を小さくすることにより、同心度を向上できる。なお、第一シール部品の中空円盤状端面部内径とシール押さえリングの段部とを嵌合させるようにしてもよい。軸方向については、固定部材で第二シール部品の壁部とシール押さえリングの端面部と当接固定し、一体とする。同時に第一シール部品の中空円盤状端面部と弾性シールリングを、壁部と段部の外周部端面とで挟持するので、第一シール部品は第二シール部品と一体にされる。第一シールと第二シールは弾性シールリングの弾性変形量分だけ軸方向に移動可能に固定される。弾性シールリングの材質、ひずみ量により、軸周り回転方向の滑り抵抗を調整できる。これにより、第一、第二シール部品を回転可能にかつ一体とできる。
【0014】
また、第一、第二シール部品間の滑動面は滑り抵抗の少ないところで生じる。そこで、請求項4に記載の発明においては、前記壁部と前記中空円盤状端面部との間、及び、前記中空円盤状端面部と、前記弾性シールリングと、前記段部の前記外周部端面と、の何れかの当接面で、軸方向回転可能に摺接又は滑動できる軸受用シールとした。
【0015】
シール部を第一及び第二シール部品間に設けたので、軸受の固定輪側への取り付けに当たっては、圧入でよい。そこで、軸受用シールの前記大径円環を軸受外輪の内径端に圧入した軸受とし(請求項5)、さらに、前記外輪が軸受ハウジングに固定され、前記内側円環部が前記軸受外輪に対して転動体を介して軸周りに回転する内輪又は内輪と一体にされた回転部材と、でラビリンスシールを形成する車両用軸受装置とした(請求項7)。
【0016】
あるいは、軸受用シールの前記内側円環部が、軸受内輪の外径端に圧入した軸受とし(請求項6)、さらに、前記内輪が固定軸に固定され、前記大径円環が前記軸受内輪に対して転動体を介して軸周りに回転する外輪又は外輪と一体にされた回転部材と、でラビリンスシールを形成する車両用軸受装置とした(請求項8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、シールを外側と内側に二分割し、分割部に弾性シールリングを介装して、シール機能と、回転(摺動又は滑動)抵抗を与え、一体とした軸受用シールを提供できるので、取り扱いの容易な軸受用シールとなった。
【0018】
また、請求項2に記載の発明においては、軸受用シールとセンサを一体にした部品とできるので、取り扱いが容易なセンサ付き軸受用シールとなった。さらに、請求項3に記載の発明においては、第一シール部品と第二シール部品は、径方向移動及び軸方向への移動が弾性規制されて一体にされ、軸周り回転方向の滑り抵抗を調整できるので、滑動部分の組み込みが容易で適切な滑(摺)動抵抗を与えることができるものとなった。
【0019】
また、請求項4に記載の発明においては、第一、第二シール部品間の滑動面は滑り抵抗の少ないところで生じ、低抵抗のシールとすることができ、寿命も長い。また、請求項5乃至8に記載の発明においては、本発明軸受用シールを軸受と一体化でき、さらに、ハウジング及び回転軸に容易に取り付けられるので、取り扱い及びメンテナンスが容易な軸受及び車両用軸受装置となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態を示す軸受用シールの(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は弾性シールリング近傍の部分拡大図である。
図2】本発明の実施の形態を示す車両用軸受装置の(a)は正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の実施の形態においては、特許文献1に記載のような鉄道車両用軸受装置に適用した場合について述べる。図1に示すように、軸受用シール1は、最外方の薄肉大径円環21を有する第一シール部品2と、最内方の薄肉内側円環部31を有する第二シール部品3とを有する。第一及び第二シール部品間に弾性シールリング(Oリング)4が設けられており、第一および第二シール部品が軸周りに相対回転可能かつ第一及び第二シール部品間を密封可能にされている。固定 部材5により第一シール及び第二シール部品及び弾性シールリングが軸方向に固定されている。
【0022】
図1(c)に示すように、第一シール部品2は薄肉金属材料であってプレスにて成型され、大径円環21に連接する中径円環22と、中径円環の反大径円環側端面内径側に延出する中空円盤状端面部23を有する。
【0023】
第二シール部品3は同様に、薄肉金属材料であってプレスにて成型され、中径円環22の外周22aと軸周りに回転可能に嵌合された外側円環部32と、外側円環部の内側に設けられ中径円環より小径の内側円環部31と、反大径円環21側に設けられ外側円環部と内側円環部とを結合する中空円盤状の壁部33を有する。図1各図に示すように、壁部33の円周に沿って、センサ取り付け用のセンサ用貫通穴34が2か所開けられ、固定部材(ボルト)5のねじ部が貫通する貫通穴35が3か所等分に開けられている。外側円環部32の一部が壁部と同面となって径方向に2か所突出する突出部36が設けられている。
【0024】
壁部33の第一シール部品2側の面33aにシール押さえリング6の端面部61が当接されている。シール押さえリング6は、中径円環22の内周面22bと軸周りに回転可能に嵌合された外周部63と、第二シール部品3の内側円環部31の外径31bより大きな内周部64からなる肉厚部材である。固定部材(ボルト)5を第二シール部品3の貫通穴35に通してシール押さえリング6に開けられたねじ穴62に螺着し、第二シール部品3とシール押さえリング6とが固着されている。シール押さえリング6には、さらに、センサ用貫通穴34と同一位置にセンサ用ねじ穴66が二か所設けられている(図2(b))。
【0025】
シール押さえリング6の外周部63には壁部33側に段部65が設けられている。第一シール部品の中空円盤状端面部23と弾性シールリング4が壁部33と段部65の外周部端面65bとで挟持されている。壁部と外周部端面との距離は、中空円盤状端面部23の厚みと、自由状態でのOリング(弾性シールリング)の径との和より小さくされ、軸方向及び径方向に弾性をもって挟持されている。
【0026】
かかる軸受用シールによれば、外側(第一)2と内側(第二)シール部品3を軸周りに相対回転可能とし、シール機能と、回転(摺動又は滑動)抵抗を与え、分離しないので、一体化でき、軸受用シールとして、取り扱いが容易である。なお、シール押さえリング6の端面部61の内周部64側にはシール溝(Oリング溝)61aが設けられ、シール(Oリング)8が挿入され、端面部61とシール押さえリング6の端面部61との間を密封している。また、ボルト5のねじ部にはねじシール剤が塗布され、軸受内への水や塵埃等の侵入を防止し、軸受内からのグリース等の潤滑剤の漏れを防止している。
【0027】
さらに、図2に示すように、回転センサ7の取付板7aをボルト51で第二シール部品3のセンサ用貫通穴34を通してセンサ用ねじ穴66に螺着して、回転センサ7を軸受用シール1の第二シール部品2の壁部33外面に固定される。さらに、図1(a)、図2(a)に示すように、回転センサ7は第二シール部品の外側円環部32外周面32aに開けれらたビスねじ穴67にビス52でも固定される。回転センサについては従来と同様であるので説明を省略する。このように、本発明の実施の形態によれば、回転センサの有無のいずれでも軸受用シールを一体化でき、取り扱いが容易である。
【0028】
かかる軸受用シール1を鉄道車両用軸受装置に適用した本発明の鉄道車両用軸受装置の実施の形態について図2を参照して説明する。本実施の形態の鉄道車両用軸受装置11は、複列円すいころ軸受12を用いたものである。複列円すいころ軸受12は、図示しないハウジングに常時非回転状態に維持された外輪(固定輪)13と、外輪13の内側に対向して回転可能に配置された間座14aを介して複列の背面合わせにされた内輪(回転輪)14,14と、外輪13及び内輪14間を転動する複列、複数の円すいころ(転動体)15,15とを有する。複数の転動体は樹脂製の保持器16,16に等間隔に保持されている。
【0029】
車軸17が内輪14,14を貫通嵌合されている。車軸の先端には小径円筒部17aと、ねじ部17bが設けられている。基端側には肩部17cが設けられている。内輪14,14の両端面を油切部材18,19が設けられている。押圧ナット20をねじ部17bに螺着して軸端側油切部材19を押圧するようにして、油切部材18、内輪14、間座14a、内輪14、油切部材19を押圧ナット20と肩部17c間に挟持固定させている。さらに、回り止め81の先端81aが車軸ねじ部凹部17dと押圧ナット20の凹部20aに嵌合し、ボルト53で押圧ナットに螺着固定されている。回り止め81の開口及び車軸端はカバー54で覆われている。
【0030】
外輪13の肩部17c側内径端13bにシール部材25の外側環状部25aが圧入され、他端25bが肩部側の油切部材18の環状凹部18aとラビリンスシールを形成している。また、シール部材25の内側にはオイルシール26が嵌挿され、オイルシール内周リップが油切部材18の外周面18bを軸周りに回転可能にされ、軸受12内外をシール(密封)している。かかる鉄道車両用軸受の構造については、従来と同様であるので、さらなる説明は省略する。
【0031】
本発明の実施の形態においては、軸端側シールを前述した本発明の軸受用シール部材1としたものである。図1を用いて説明した軸受用シール1の第一シール部品2の大径円環21が外輪13の軸端側内径端13aに圧入されている。第二シール部品3内側円環部31の先端31aが車軸先端側の油切部材19に形成された環状凹部19aに没入され、ラビリンスシールを形成している。これにより、従来と同様なシール機構を提供する。さらに、前述したように、回転センサ7が軸受用シール1の第二シール部品3の壁部33の外面に固定されている。回転センサの配線71は図示しないハウジング側に延長接続されている。また、壁部33と同面の二か所の突出部36は図示しないハウジングの切欠き部に挿入され、回転が規制又は回転しないようにされている。
【0032】
これにより、外輪13がクリープしても、回転センサ7が取り付けられる第二シール部品3は弾性シールリング4により、軸周方向回転可能にされ、かつ、突出部36で回転を規制されているので、回転第センサ7の配線が破断することがない。また、突出部36は特に高い強度を必要としない。
【0033】
組みつけに当たっては、車軸17に油切部材18、シール部材25が圧入された軸受12、油切部材19を順に嵌めこみ、その後、本発明軸受用シール1を軸端側内径端13aに圧入し、押圧ナット20、回り止め81、ボルト53で固定する。回転センサ7は軸受用シール1に組み付けた状態で組み付けてもよく、また、後から組み付けてもよい。さらに、回転センサのみの交換も可能である。
【0034】
以上により本発明の実施の形態においては、軸受用シール1を回転センサ7の有無によらず一体にかつ容易に取り扱え、さらに、車両用軸受装置11に従来と同様に組み付け分解可能で、シール性能を確保するものとなった。また、外輪(固定輪)のクリープによる回転センサの断線を防止できる。
【0035】
なお、本実施の形態においては、複列円すいころ軸受を用いた鉄道車両用軸受装置について述べたが、自動車等のセンサ付き軸受装置、単列軸受、玉軸受、ころ軸受等にも適用できることはいうまでもない。また、外輪13を固定したが、内輪14側を固定する場合には、第一シール部品2側に回転センサ7を取り付ければよい。また、第一シール部品の大径円環21、第二シール部品の内側円環部31は圧入又はラビリンスシール形成できるようにしているが、弾性圧入、あるいは、リップシールを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 軸受用シール
2 第一シール部品
21 大径円環
22 中径円環
22a 中径円環の外周
22b 中径円環の内周
23 中空円盤状端面部
23a 中空円盤状端面部の内周
3 第二シール部品
31 内側円環部
31b 内側円環部の外径
32 外側円環部
33 壁部
4 弾性シールリング
5 固定部材
6 シール押さえリング
61 端面部
63 (シール押さえリングの)外周部
64 (シール押さえリングの)内周部
65 段部
65a 段部外周
65b 段部の外周部端面
7 回転センサ(本体)
11 車両用軸受装置
12 軸受
13 (軸受)外輪
13a 内径端
14 (軸受)内輪
15 転動体
17 回転部材(車軸)
図1
図2