(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
初めに、本実施形態の密閉式鉛蓄電池の概要について説明する。本密閉式鉛蓄電池は、隔壁により、内部が複数のセル室に区画された電槽と、前記各セル室に収容される極板群とを含む、密閉式鉛蓄電池であって、前記極板群は、前記複数のセル室の並び方向に配列された正負の極板と、前記正負の極板を仕切るセパレータとを含み、前記隔壁は、中空部と、前記中空部の前記並び方向両側に配置された一対の壁体とを有し、更に、前記隔壁は、前記極板の高さ方向において、前記極板の略全体と対向しており、前記極板群との間から電解液を注入する注入通路を有する。
【0010】
この構成では、極板との間に電解液の注入通路を形成しているので、電解液が電槽内部に浸透し易く注入性がよい。また、隔壁は、極板の高さ方向において、極板の略全体と対向する範囲を、一対の壁体からなる二重隔壁にしている。そのため、極板群を収容する空間が小さくなり、高さ方向において極板群の全体を圧迫出来る。従って、隔壁下部だけを二重隔壁構造にする場合に比べて、高さ方向の略全体で、セパレータが拡がり難くなることから、極板が空気に触れ難くなる。よって、負極板での陰極吸収反応を適正に保つことが可能となり、電池性能を維持することが出来る。加えて、極板と壁体との間も、隙間がほとんどできない。そのため、極板が一層空気に触れ難くなるので、負極板での陰極吸収反応を適正に保つことが可能となる。
【0011】
本密閉式鉛蓄電池では、前記壁体は、前記極板の略面全体と対向する。この構成では、壁体が、極板の略面全体を圧迫するため、セパレータが一層拡がり難くなる。そのため、
面全体でセパレータが拡がり難くなることから、極板が空気に触れ難くなる。従って、負極板での陰極吸収反応を適正に保つことが可能となる。加えて、極板と壁体との間も、略面全体で隙間がほとんどできない。そのため、極板が一層空気に触れ難くなるので、負極板での陰極吸収反応を適正に保つことが可能となる。
【0012】
本密閉式鉛蓄電池では、前記極板と接続され、互いに隣接する前記セル室同士を直列に接続するセル間接続体をさらに備え、前記隔壁は、互いに異なる前記セル室に配置された前記セル間接続体同士を接続する接続用隔壁を有し、前記一対の壁体は、前記接続用隔壁から分岐している。この構成では、中空部を介することなく互いに隣接するセル室同士を接続することができるため、密閉性を損ねることがない。
【0013】
本密閉式鉛蓄電池では、前記壁体の前記極板との対向面にリブを設けることにより、前記極板群との間に前記注入通路を形成する。この構成では、リブを設けるだけで、注入通路を形成することが出来る。
【0014】
本密閉式鉛蓄電池では、前記中空部に配置され、前記一対の壁体を、連結部を用いて連結する。このようにすれば、セル室に極板群を挿入した時に、二重隔壁が撓み難くなる。そのため、セル室に収容した極板群を、隔壁により所望の圧迫量で確実に圧迫出来る。
【0015】
本密閉式鉛蓄電池では、前記電槽に形成された複数の隔壁に対して、1つ飛びで前記二重隔壁を形成する。中空部の幅を大きくすることが出来るので、電槽の成形性がよい。
【0016】
本密閉式鉛蓄電池では、前記セパレータは、電解液を保持可能なマットセパレータであり、前記電槽の前記並び方向に沿った内側面に接触している。密閉式鉛蓄電池は、充放電反応により酸素ガスが発生することに伴って、電解液の一部が、マットセパレータの保持を外れてフリーになる。この構成では、フリーになった電解液が、極板の並び方向と交差する幅方向の両側を流動するのを抑制することができる。
【0017】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図10によって説明する。
1.鉛蓄電池の構造
鉛蓄電池1は、例えば二輪自動車等に搭載される密閉式鉛蓄電池であり、
図1〜
図3に示すように、電槽10と、極板群30と、ストラップ40と、蓋部材60を備える。尚、以下の説明において、電槽10の横幅方向をX方向とし、電槽10の奥行方向をY方向、高さ方向をZ方向とする。
【0018】
電槽10は、上面に開口10Aを形成した箱型をなす。電槽10は例えば合成樹脂製であり、槽内は、X方向に並ぶ5枚の隔壁21により、6つのセル室50に仕切られている。各セル室50には、極板群30が配置されている。極板群30は、
図3〜
図5に示すように、正極板31Aと、負極板31Bと、セパレータ33とから構成されており、セル室50の並び方向(X方向)に沿って配列されている。各極板31A、31Bは、格子体に活物質が充填されて構成される。
【0019】
本実施形態では、極板群30を2枚−3枚構成にしている。正負の極板31は、負極板31B、正極板31A、負極板31B、正極板31A、負極板31Bの並びであり、両端に負極板31Bが位置する。
【0020】
セパレータ33はガラス繊維製のマットセパレータであり、内部に含浸させることにより、電解液Qを保持することが出来る。セパレータ33は、各極板31A、31Bよりも大きく、両極板31A、31B間に配置されている。セパレータ33は電解液Qの保持と共に、両極板31A、31Bを仕切る機能を果たす。
【0021】
また、セパレータ33は、セル室50の奥行幅(Y方向の幅)より大きく、電槽収容時には、セパレータ33の両端部が、電槽側面壁17の内面17Aに折れ重なって接触して、セル室50の側方スペースU(極板31の側方のスペース:
図5参照)を隙間なく埋めるようになっている。密閉式鉛蓄電池1は、充放電反応により酸素ガスが発生することに伴って、電解液の一部が、セパレータ33の保持を外れてフリーになる。しかしながら、セパレータ33の両端部が、電槽側面壁17に接触していることで、フリーになった電解液が、Y方向の両側を流動するのを抑制することができる。密閉式鉛蓄電池1は、例えば、極板群30の面方向と水平方向とが平行になるいわゆる横置きや傾いた姿勢のような、フリーになった電解液が蓋部材60側に流動しやすい状況で使用されることが多く、上述したように、フリーになった電解液の流動を抑制することは効果的である。尚、電槽側面壁17の内面17Aが、本発明の「前記電槽の前記並び方向(本例ではX方向)に沿った内側面」」の一例である。
【0022】
また、各極板31A、31Bの上部には、
図4に示すように、ストラップ40を接続するための耳部32が設けられている。尚、極板31A、31Bに対する耳部32の形成位置は極性によって変えてあり、
図4の例では、正極板31Aは
図4の左側に耳部32を設け、負極板31Bは、
図4の右側に耳部32を設けている。
【0023】
ストラップ40は、
図4に示すように上下方向(Z方向)において、極板群30の上方に位置している。ストラップ40は極性ごとに設けられており、正極用のストラップ40は、耳部32を介して極板群30の正極板31Aを連結し、負極用のストラップ40は、耳部32を介して極板群30の負極板31Bを連結する構造となっている。
【0024】
また、各ストラップ40のX方向の端部には、隔壁21に対向するセル間接続体43が設けられている。そして、
図6に示すように、隔壁21を間に挟んで向かい合う2つのセル間接続体43を、電気溶接することにより、セル室50に収容された各極板群30は、隣接する極板群30との間で、直列に接続される構造となっている。尚、
図6に示すセル間接続体43Pは、正極側のセル間接続体であり、セル間接続体43Nは負極側のセル間接続体である。
【0025】
そして、電槽10の横幅方向の一方端に位置する正極用のストラップ40と、電槽10横幅方向の他方端に位置する負極用のストラップ40にはそれぞれ極柱45が溶接等により取り付けられている。これら正極側の極柱45と負極側の極柱45には、正極端子65Aと、負極端子65Bがそれぞれ取り付けられている。
【0026】
蓋部材60は樹脂製であって、電槽10を閉止可能な大きさとされ、電槽10の上面を閉止する。蓋部材60は、電槽10に対して熱溶接等により、全周を溶着される。蓋部材60のX方向両側には端子挿通孔63A、63Bが開口しており、各端子挿通孔63A、63Bには、正極端子65Aと負極端子65Bが蓋部材60を上下に貫通して組み付けられている。
【0027】
2.隔壁21の構造
密閉式鉛蓄電池1は、希硫酸等の電解液をセパレータ33に保持する構造となっており、電槽10内に流動液(電解液)がほとんど存在しない。そのため、極板31(31A、31Bの総称)が、電解液Qを保持したセパレータ33と接触した状態を保つように、極板群30を両側から圧迫しておく必要がある。
【0028】
一方、電池の低コスト化などを目的として、極板31の枚数を削減することがあるが、電槽10のサイズを変えずに極板31の枚数を削減すると、極板群30を圧迫する力が小さくなってしまい、電池性能に影響を及ぼす。そのため、密閉式鉛蓄電池1では、隔壁21の一部を、二重隔壁23にして、各セル室50をX方向について狭スペース化することで、空間を小さくして、極板群30を圧迫する力を維持する構造としている。
【0029】
具体的に説明すると、隔壁21は、
図6、
図9に示すように、上部隔壁22と二重隔壁23とを備える。上部隔壁22は平板状の隔壁である。上部隔壁22には、ストラップ40に設けられたセル間接続体43を、電気溶接するための貫通孔22Aが形成されている。尚、上部隔壁22が本発明の「接続用隔壁」の一例である。
【0030】
二重隔壁23は、一対の壁体24R、24Lを備えた隔壁である。一対の壁体24R、24Lは、
図6に示すように、上部隔壁22から二股状に分岐しており、セル室50の内部空間を狭くするようにセル室50側に迫り出している。一対の壁体24R、24Lは、X方向に平行に向かい合いつつ、電槽10の底面に向かって真っ直ぐに延びており、更に、両間には電槽下面に開口する中空部27が形成されている。尚、中空部27を形成する理由は、電槽材料が少なく出来ることと、成形時に発生する材料の引け(表面の凹凸)を抑えることが出来るからである。
【0031】
図6に示すように、電槽10に形成された各5枚の隔壁21はいずれも二重隔壁23を設けた構造となっており、セル室50に収容された極板群30を、セル室50の両側に位置する二重隔壁23によって、X方向の両側から圧迫する構造となっている。
【0032】
そして、二重隔壁23はセル室50の底面から極板31の先端位置Pまで形成されていることから、セル室50に収容された極板31に対して、二重隔壁23が、高さ方向(Z方向)で、極板31の全体に重なる構造となっている。そのため、二重隔壁23により極板群30の高さ方向の全体を圧迫できる。尚、「極板の高さ方向」とは、
図4に示すように開口10Aを上に向けて電槽10を設置した時の「極板の高さ方向」を示す。
【0033】
加えて、二重隔壁23は、
図5に示すように極板31よりも、横幅(Y方向の幅)が広く設定されている。そのため、極板31の高さ方向だけでなく、極板31の横幅方向でも、二重隔壁23が、セル室50に収容された極板31の全体に重なる構造になっている。すなわち、二重隔壁23は極板31の面全体と対向している。そのため、二重隔壁23により極板群30の面全体を圧迫できる。
【0034】
また、二重隔壁23の中空部27には、連結壁29が設けられている。連結壁29は、
図7に示すように、二重隔壁23を構成する2枚の壁体24R、24Lの間において、X方向に延びる板状をなし、2枚の壁体24R、24Lを連結する。このように、2枚の壁体24R、24Lを連結壁29で連結することにより、セル室50に極板群30を挿入した時に、両壁体24R、24Lが撓み難くなる。そのため、セル室50に収容した極板群30を、二重隔壁23により、所望の圧迫量で確実に圧迫出来る。尚、連結壁29は、極板31の横幅方向(Y方向)に、等間隔で形成されている。そのため、隔壁21の撓みを、極板31の横幅方向について均一に抑えることが出来る。また、連結壁29が本発明の「連結部」の一例である。
【0035】
また、各壁体24(24R、24Lの総称)は、極板群30との間に電解液Qの注入通路Sを有する。具体的に説明すると、
図8に示すように、壁体24のうち、極板群30と対向する対向面には、リブ25が形成されている。
図9に示すように、リブ25は、高さ方向(Z方向)に沿った帯状をしており、壁体24の全高に亘って形成されている。リブ25は、壁体24に対して2列形成されている。
【0036】
上記リブ25を設けることで、
図8に示すように、壁体24と極板群30との間には、リブ25の高さに相当する隙間が出来る。この隙間を設けることで、電槽10に注入された電解液は、
図10に示すように、隙間を注入通路Sとして電槽下部に流れて行くので、極板群30の上部付近に電解液Qが溜まることがなく、電解液Qの注入性が高まる。尚、電解液Qの注入通路Sは、電解液Qの注入性を維持出来ればよく、本例では、リブ25を、必要最小限の高さ、一例として0.3mmに設定している。
【0037】
図6に戻って説明を続けると、電槽10のうち、X方向両側の端面壁11は、極板上端に対応する位置で、セル室50側に曲げられている。セル室50側に曲げられた内向壁14は、二重隔壁23とX方向に向かい合っている。この内向壁14は、セル室50に収容された極板群30を二重隔壁23と共に、X方向の両側から圧迫する機能を果たす。
【0038】
そして、内向壁14のうち、極板群30の対向面には、リブ15が形成されている。リブ15は、壁体24に形成されたリブ25と同様、高さ方向(Z方向)に沿った帯状をしており、内向壁14の全高に亘って形成されている。リブ15を設けることで、内向壁14と極板群30との間にも、電解液Qの流入通路Sを形成することが出来る。また、
図1に示すように、内向壁14の外面側には、高さ方向に沿って突条部12が一定間隔で形成されており、電槽10の端面壁11を補強している。
【0039】
3.効果
密閉式鉛蓄電池1は、隔壁21のうち極板31の全高に対応する範囲に、二重隔壁23を設けている。そのため、二重隔壁23が高さ方向で極板31の全体に重なり、極板群30をX方向の両側から圧迫する。従って、セパレータ33が拡がり難くなり、極板31に密着した状態を保つ。よって、極板31がほとんど空気に触れなくなるので、負極板31Bでの、陰極吸収反応を適正に保つことが可能となる。従って、電池性能を維持することが出来る。
【0040】
しかも、本例では、二重隔壁23の横幅(Y方向の幅)を極板31よりも広くしている。そのため、高さ方向だけでなく、横幅方向でも、二重隔壁23が、極板31の全体に重なる。従って、セパレータ33が拡がり難くなり、極板31に対して全面密着する状態を保つ。よって、極板31が一層空気に触れなくなるので、負極板31Bでの陰極吸収反応を適正に保つことが可能となる。加えて、極板31と壁体24との間も、面全体で隙間がほぼできない。そのため、極板31が一層空気に触れ難くなるので、負極板31Bでの陰極吸収反応を適正に保つことが可能となる。
【0041】
また、密閉式鉛蓄電池1は、二重隔壁23と極板群30との間に、電解液Qの注入通路Sを設けている。そのため、製造時やユーザが、電槽10内に電解液Qを充填する際、電解液Qが電槽内部に浸透し易く、注入性がよい。
【0042】
さらに、密閉式鉛蓄電池1は、互いに隣接するセル間接続体43同士を、上部隔壁22を介して接続しており、中空部27を介することなく互いに隣接するセル室同士を接続することができるため、密閉性を損ねることがない。
【0043】
<実施形態2>
次に、実施形態2を
図11、
図12によって説明する。
実施形態1では、セル室50の両側に位置する2枚の隔壁21を、双方とも二重隔壁23にして、セル室50のX方向の空間を、両側の二重隔壁23で分担して小さくする構造とした。
【0044】
実施形態2は、セル室151〜156を仕切る5枚の隔壁121〜125に対して、1つ飛びで二重隔壁130を設けることにより、セル室152〜155の片側だけを二重隔壁130にして、セル室152〜155のX方向の空間を、片側の二重隔壁130だけで小さくする構造に変更している。
【0045】
具体的に説明すると、実施形態2の電槽110は、実施形態1と同様に5枚の隔壁121〜125を備え、電槽110内を、6つのセル室151〜156に仕切る構造にしている。そして、5枚の隔壁121〜125のうち、1枚目の隔壁121、3枚目123の隔壁123、5枚目の隔壁125は平板状の隔壁とし、2枚目の隔壁122と、4枚目の隔壁124に対して、二重隔壁130を設ける構造にしている。
【0046】
実施形態2のように、セル室50のX方向の空間を、片側の二重隔壁130だけで小さくする構造の場合、二重隔壁130のオフセット量F1は、実施形態1のオフセット量の概ね2倍になる。そのため、中空部137の幅(X方向の幅)が広くすることが出来るので、電槽110が成形し易くなる。
【0047】
尚、2枚目の隔壁122に形成した二重隔壁130で、X方向の空間を小さくすることが出来るのは、2番目のセル室152と3番目のセル室153であり、1番目のセル室151は、X方向の空間が小さくならない。また、同様、4枚目の隔壁124に形成した二重隔壁130で、X方向の空間を小さくすることが出来るのは、4番目のセル室154と5番目のセル室155であり、6番目のセル室156は、X方向の空間が小さくならない。そのため、実施形態2の電槽110も、実施形態1と同様に、X方向両側の端面壁111の一部を、セル室側に曲げて内向壁114を形成することにより、1番目と6番目のセル室151、156のX方向の空間を小さくする構造としている。
【0048】
また、実施形態2の電槽110も、実施形態1と同様に、各隔壁121〜125のうち、極板群30に対する対向面に、それぞれリブ135を設けている。そのため、各隔壁121〜125と極板群30との間には、リブ135の高さに相当する隙間が出来る。以上のことから、実施形態1と同様、電槽10に注入された電解液は、隙間を注入通路Sとして電槽下部に流れて行くので、極板群30の上部付近に電解液Qが溜まることがなく、電解液Qの注入性が高まる。また、実施形態2の電装110は、実施形態1と同様、内向壁114にも、流入通路Sを形成するリブ115を設けてあるため、電解液Qの注入性がより一層高い。
【0049】
<実施形態3>
次に、実施形態3を
図13ないし
図15によって説明する。
実施形態1では、二重隔壁23の中空部27を下抜き、すなわち電槽10の底面に開口する構成とした。実施形態3では、二重隔壁230の中空部270を上抜き、すなわち電槽210の上面に開口する構成とする。
【0050】
尚、中空部270を上抜きにした場合、
図15に示すように二重隔壁230を電槽上面まで形成する構造になるため、溶接対象となる2つのセル間接続体43が離れ、セル間接続体43を電気溶接出来なくなる。
【0051】
そのため、実施形態3では、隔壁220の構造を、電気溶接エリアと、非電気溶接エリアで変えてあり、電気溶接エリアはシングル隔壁330とし、非電気溶接エリアは、二重隔壁230としている。尚、電気溶接エリアとは、2つのセル室50間で、セル間接続体43を電気溶接する範囲を意味している。例えば、
図13に示すように、右から1番目のセル室50と2番目のセル室50では、
図13に示す「E1」の間で、セル間接続体43を電気溶接する。従って、セル間接続体43に重なる「E1」の範囲が電気溶接エリアである。そして、「E1」を除くそれ以外の範囲、具体的には「E1」の両側に位置する範囲「E2」が非電気溶接エリアである。
【0052】
以下、1番目と2番目のセル室50を仕切る1番目の隔壁220を例にとって、隔壁220の構造を説明する。隔壁220のうち、非電気溶接エリアE2には、二重隔壁230が形成されている。二重隔壁230は、中空部270を間にして、X方向に向かう一対の壁体240R、240Lを備えた隔壁である。中空部270は電槽上面に開口している。二重隔壁230は、
図15に示すように、電槽210の全高に亘って形成されており、高さ方向で、セル室250に収容された極板群30の全体に対向する構造となっている。
【0053】
二重隔壁230は、
図14に示すように、連結壁270により、2枚の壁体240R、240Lを相互に連結しており、セル室50に極板群30を挿入した時に、両壁体24R、24Lが撓み難い構造になっている。
【0054】
また、二重隔壁230のうち、極板群30に対する対向面には、実施形態1や実施形態2と同様に、リブ245を設けている。そのため、二重隔壁230と極板群30との間には、リブ245の高さに相当する隙間が出来る。従って、電槽10に注入された電解液は、隙間を注入通路Sとして電槽下部に流れて行くので、極板群30の上部付近に電解液Qが溜まることがなく、電解液Qの注入性が高まる。
【0055】
シングル隔壁330は、セル間接続体43を電気溶接できる程度の厚さをした、平板状の隔壁である。シングル隔壁330は、セル間接続体43の接続位置に対応して貫通孔22Aを形成している。このシングル隔壁330は、二重隔壁230に比べて壁が薄いことから、極板群30との間に隙間が出来る。そのため、
図14に示すように、シングル隔壁320は、極板群30に対する対向面に、極板群30側に突出する突条335を設けている。突条335は、
図15に示すように、セル室50の底面から極板31の先端まで形成されている。本例では、
図14に示すように、突条335を、Y方向に2列形成しており、2本の突条335がセル室250に収容された極板群30に対して全高に亘って対向する構造となっている。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)実施形態1〜3では、壁体24のうち、極板31の対向面に、リブ25を形成することにより、注入通路Sを形成した例を示したが、
図16に示すように、壁体24のうち、極板31の対向面に、凹状の溝26を形成することにより、注入通路を構成するようにしてもよい。
【0058】
(2)実施形態2では、電槽110を仕切る5枚の隔壁121〜125のうち、1枚目の隔壁121、3枚目の隔壁123、5枚目の隔壁125は平板状の隔壁とし、2枚目の隔壁122と、4枚目の隔壁124に対して、二重隔壁130を設ける構造にした。これ以外にも、例えば、1枚目の隔壁121、3枚目の隔壁123、5枚目の隔壁125を二重隔壁130にする一方、2枚目の隔壁122と、4枚目の隔壁124を、平板状の隔壁にしてもよい。
【0059】
(3)実施形態1〜3では、極板群30を2枚−3枚構成にしたが、例えば3枚−4枚構成や3枚−3枚構成など、いかなる構成でもよい。また、極板の配列についても、実施形態の例に限定されるものではなく、例えば、正極板が、両端に位置するように配置することも可能である。
【0060】
(4)実施形態1〜3では、二重隔壁23を、高さ方向(Z方向)で、極板31の全体に形成したが、極板群30が開かないように圧迫できればよく、二重隔壁23は、高さ方向で、極板31の略全体と重なっていればよい。また、横幅方向(Y方向)についても同様であり、横幅方向で、極板31の略全体と重なっていればよい。