(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
手の指の爪の表面又は足の指の爪の表面を描画対象面とし、先端部が前記描画対象面に接触することにより前記描画対象面に描画を施す少なくとも一つの描画用具を保持するキャリッジと、
前記描画を施す際に前記キャリッジに装着された前記描画用具を、前記先端部が前記描画対象面に近づく第1方向に押圧して、前記先端部を前記描画対象面に接触させる描画用具押圧機構と、
を備え、
前記描画用具は、一端側に前記先端部が設けられた描画用具本体と、前記キャリッジに保持されている状態において前記描画用具本体を前記先端部が前記描画対象面から離れる第2方向に付勢する描画用具付勢部材と、を有し、
前記描画用具押圧機構は、
前記描画用具本体に対して前記第1方向の外力を加える際に弾性変形し、前記描画を施しているときに前記描画対象面の形状に応じて前記描画用具本体が押し上げられた際に撓み変形する板バネと、
一端と他端を有し、前記他端が前記描画用具本体の他端側に当接可能であり、ピン弾性部材により前記他端が前記描画用具本体の他端側から離れる方向に付勢されているスライドピンと、
前記板バネの一端側に接続され、前記板バネの他端側を、前記スライドピンの前記一端に接触して前記スライドピンを押し、前記スライドピンの前記他端が前記描画用具本体の他端側に当接して前記描画用具本体を前記先端部が前記描画対象面に近づく方向に押圧して、前記先端部を前記描画対象面に接触させる第1の位置と、前記スライドピンを押さない第2の位置と、の何れかに移動させる板バネ移動機構とを有し、前記板バネを介して前記描画用具本体に対し前記第1方向の外力を加えることを特徴とする描画装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1から
図7を参照しつつ、本発明に係るネイルプリント装置(描画装置)の第1の実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、ネイルプリント装置1は手の指の爪の表面を描画対象面として、これに描画するものとして説明するが、本発明の描画対象面は手の指の爪の表面に限るものではなく、例えば足の指の爪の表面を描画対象面としてもよい。
【0012】
図1は、ネイルプリント装置1の内部構成を示す図である。
図2は
図1に示されたネイルプリント装置の一部を断面にして内部構成を示す側断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態におけるネイルプリント装置(描画装置)1は、描画ヘッド70が印刷指U1の爪Tに描画を施すペン71を備えるプロッタ方式のプリント装置である。
このネイルプリント装置1は、ケース本体2と、このケース本体2に収容される装置本体10とを備えている。
【0013】
ケース本体2の側面上部一端には、後述する描画部7のペン(描画用具)71を交換するために開閉可能に構成されたペン交換用蓋部23が設けられている。ペン交換用蓋部23は、例えばヒンジ等を介して、
図2に示すように閉状態から開状態まで回動自在となっている。
さらに、ケース本体2の一側面(本実施形態では、
図1において左側面)であって後述するペン慣書部61に対応する位置には、ペン慣書部61に載置される被描画媒体(図示せず)を入れ替え可能な媒体挿出口24が形成されている。
【0014】
ケース本体2の上面(天板)には操作部25(
図7参照)が設置されている。
操作部25は、ユーザが各種入力を行う入力部である。
操作部25には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、爪Tに描画するデザイン画像を選択するデザイン選択釦、描画開始を指示する描画開始釦等、各種の入力を行うための図示しない操作釦が配置されている。
【0015】
また、ケース本体2の上面(天板)のほぼ中央部には表示部26が設置されている。
表示部26は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態において、この表示部26には、例えば、印刷指U1を撮影して得た爪画像(爪Tの画像を含む指画像)、この爪画像中に含まれる爪Tの輪郭線等の画像、爪Tに描画すべきデザイン画像を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面等が適宜表示される。
なお、表示部26の表面にタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、例えば、先の尖った棒状の筆記具様であってタッチパネル表面に押し当てることにより操作する図示しないスタイラスペンや、指先等によって表示部26の表面をタッチするタッチ操作によっても各種の入力を行うことができるように構成される。
【0016】
装置本体10は、ほぼ箱状に形成され、ケース本体2の内部下方に設置された下部機枠11と、この下部機枠11の上方で且つケース本体2の内部上方に設置されている上部機枠12とを備えている。
【0017】
まず、下部機枠11について説明する。
下部機枠11は、背面板111、底板112、左右一対の側板113a,113b、X方向移動ステージ収容部114、Y方向移動ステージ収容部115及び隔壁116を有する。
側板113a,113bの下端部は、底板112の左右両端部にそれぞれ連結され、側板113a,113bが底板112に対して立てられた状態に設けられている。
背面板111の下部は、前方(指挿入方向手前側)に向かって2段に窪むように形成されている。背面板111の下端部は底板112の前端部に連結されており、背面板111は、底板112と側板113a,113bによって囲われた領域を前後に区切っている。
この窪んだ背面板111の後ろ側に形成される空間がX方向移動ステージ収容部114、Y方向移動ステージ収容部115(
図2参照)となっている。X方向移動ステージ収容部114内には、描画部7が前方(指挿入方向手前側)に移動した際に描画部7のX方向移動ステージ45が収容される。また、Y方向移動ステージ収容部115内には、描画部7のY方向移動ステージ47が配置されている。
また、隔壁116は、下部機枠11の内部前方側の空間(背面板111、底板112及び側板113a,113bによって囲われた指挿入方向手前側の空間)を上下に区切るように下部機枠11の内側に設けられている。隔壁116はほぼ水平に設けられ、隔壁116の左右両端部が側板113a,113bにそれぞれ連結され、隔壁116の後端部が背面板111に連結されている。
【0018】
この下部機枠11には、指固定部30(
図2参照)が一体的に設けられている。
指固定部30は、描画を施す爪Tに対応する指(以下、これを「印刷指U1」という。)を受け入れる指受入部31と、この印刷指U1以外の指(以下、これを「非印刷指U2」という。)を退避させる指退避部32とから構成されている。
指受入部31は、隔壁116の上側であって下部機枠11の幅方向のほぼ中央部に配置されている。また、隔壁116によって下部機枠11の下側に区分けられた空間が指退避部32を構成している。
例えば、薬指の爪Tに描画を施す場合には、
図6に示すように、指受入部31に印刷指U1としての薬指を挿入し、非印刷指U2であるその他の4指(親指、人差し指、中指、小指)を指退避部32に挿入する。
指受入部31は、下部機枠11の前面側(印刷指挿入方向の手前側)に開口しており、下側が隔壁116の一部を構成する指載置部116a、両側が仕切り31a、奥側が仕切り31cによって区画されている。指載置部116aは、描画を施す爪Tの指(印刷指U1)をXY平面上に載置するものである。
また、指受入部31の上側は天井部31dによって区画されている。天井部31dには、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tを露出させるための窓31eが形成されている。
【0019】
また、隔壁116の上面であって下部機枠11の前面側の両側部には、下部機枠11の前面側を塞ぐ前壁31f(
図1参照)が立設されている。また、隔壁116の上面には、この前壁31fの中央部寄りの端部から前記指受入部31に向けて狭窄し、印刷指U1を指受入部31内に案内する一対のガイド壁31g(
図1参照)が立設されている。
ユーザは指受入部31に挿入した印刷指U1と指退避部32に挿入した非印刷指U2との間に隔壁116を挟むことができる。そのため、指受入部31内に挿入された印刷指U1が安定して固定される。
なお、本実施形態では、隔壁116の前端部に下方向に張り出した突出部116bが形成されている。突出部116bは、手前側に向かうにつれてその厚さが漸減し、奥側に向かうにつれて漸増するテーパー部となっていてもよいし、突出部116bの厚さが、隔壁116の奥側の窪みに対して全体が厚い構造になっていてもよい。隔壁116の前端部に突出部116bが形成されていることにより、
図6に示すように、非印刷指U2が指退避部32に挿入された際、描画済みの指の爪Tと隔壁116との間に空間が確保され、爪Tが隔壁116の下面に接触して装置側にインクが付着したり、爪Tに描画された絵柄が擦れて損なわれたりするのを防止することができる。
【0020】
下部機枠11の上面であって、指受入部31の横(ケース本体2の媒体挿出口24に対応する位置であり、本実施形態では、
図1において左側)には、後述する描画ヘッド70による描画可能範囲内に、後述するペン71の慣らし書きをするためのペン慣書部61が設けられている。なお、ペン慣書部61は、下部機枠11の上面の一部が掘り下げられて形成されており、ペン慣書部61の高さが、印刷指U1が指受入部31に挿入された際の爪Tの高さとほぼ同じとなるように設けられていることが好ましい。
ペン慣書部61は、平板状の部分であり、前述のケース本体2の媒体挿出口24から挿入された図示しない被描画媒体が載置されるようになっている。
ペン慣書部61に載置される被描画媒体は、ペン先(先端部)713を慣らすことができるものであればよく、例えば紙片である。
ペン慣書部61は、ペン先713が乾いていたりインクの乗りが悪い等により書き始めがかすれたりするのを防止するために、爪Tに画像データによる描画を開始する前に被描画媒体の上にペン71を下ろして「○」や「∞」等の所定の図形を描画して慣らし書きを行い、ペン先713の状態を良好にするためのものである。
慣らし書きを行う際に描画する所定の図形は特に限定されないが、インクを無駄に使いすぎないよう、「○」や「∞」等の単純な図形であることが好ましい。「○」や「∞」等の慣らし書きは、ペン慣書部61の範囲内で毎回少しずつずらしながら書くようにすることが好ましい。
なお、被描画媒体のほぼ全面に書いてしまったときには、表示部26に「紙を交換して下さい」等の被描画媒体の交換を促す表示画面を表示させるようにする。この場合、ユーザが媒体挿出口24から被描画媒体を取り出して新しいものと交換することにより新しい被描画媒体に慣らし書きができる状態となる。例えば、被描画媒体がロール紙である場合は、描画スペースが無くなったときには、ロール紙から被描画媒体を繰り出し、新しい描画面に慣らし書きを行えるようにする。
【0021】
描画部7は、描画用のペン71を備える描画ヘッド70、描画ヘッド70を支持するユニット支持部材44、描画ヘッド70をX方向(
図1におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に移動させるためのX方向移動ステージ45、X方向移動モータ46、描画ヘッド70をY方向(
図2におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に移動させるためのY方向移動ステージ47、Y方向移動モータ48等を備えて構成されている。
【0022】
図3(a)は、描画ヘッド70の上面図である。
図3(b)は、
図3(a)の描画ヘッド70を矢視b方向から見た正面図である。
図3(c)は、
図3(a)の描画ヘッド70を矢視c方向から見た側面図である。
図3(a)から
図3(c)に示すように、本実施形態において、描画ヘッド70は、複数のペン71を保持可能な回転式のペンキャリッジ72、ペンキャリッジ72を回転させるキャリッジ回転機構73、ペンキャリッジ72に保持されたペン71を上下移動させるためのペン押圧機構74を備えている。
ユニット支持部材44の上端部は、ネイルプリント装置1の手前側(
図2において左側)にほぼL字型に張り出す梁部441となっており、描画ヘッド70は梁部441に設けられている。
【0023】
本実施形態のペンキャリッジ72は、円筒状に形成され、周に沿って8つのペン保持部721が配置されたキャリッジ本体722を備えている。
なお、ペン保持部721の数は特に限定されず、8つよりも多くてもよいし、これより少なくてもよい。多くのペン保持部721を備えるほど、より複数のペン71を同時に保持することができ、多様なインクを用いた複雑なネイルデザインを描画することが可能となる。
なお、全てのペン保持部721にペン71が保持されている必要はない。
図3(a)及び
図3(c)では、8つのペン保持部721のうちの2つにペン71が保持されている例を示している。
【0024】
キャリッジ本体722の外周面には、歯車723が形成されている。
また、ペンキャリッジ72のほぼ中央部には、回転軸724が設けられている。回転軸724は梁部441から垂設されており、ペンキャリッジ72は、この回転軸724を中心としてほぼ水平に回転可能に構成されている。
なお、回転軸724にはペンキャリッジ72の上下を挟むようにワッシャーが設けられ、回転軸724の下端には抜け止めのためのEリング等が設けられていることが好ましい。これにより、ペンキャリッジ72は、回転軸724を中心としてより円滑に回転することができる。
ペンキャリッジ72のキャリッジ本体722の外周面の所定位置(例えば、所定のペン保持部721に対応する位置等)には、ペンキャリッジ72の回転の基準位置を示すための基準指標725が設けられている。
基準指標725は、例えば、フォトリフレクタによって読取可能な反射布や反射シート等であり、キャリッジ本体722の外周面に貼付等により固定されている。
【0025】
図3(c)に示すように、キャリッジ回転機構73は、ステップモータ731と、このステップモータ731に回転軸732を介して接続されキャリッジ本体722の歯車723と噛み合う歯車733を備えている。
本実施形態において、ステップモータ731の駆動により回転軸732が回転し、回転軸732に取り付けられている歯車733が回転すると、この歯車733と噛み合っているキャリッジ本体722の歯車723が回転する。これにより、ペンキャリッジ72が左右に回転するようになっている。
また、キャリッジ回転機構73は、ペンキャリッジ72の基準指標725を読み取るための指標読取部734を備えている。指標読取部734は、例えば、反射布や反射シート等で構成されている基準指標725を読み取ることのできるフォトリフレクタ等で構成される。指標読取部734は、基準指標725を読み取る毎にその読取結果を描画制御部815に出力するようになっている。
【0026】
ペン押圧機構74は、弾性変形可能な押圧側弾性部材を有し、ペンキャリッジ72に装着された筆記具であるペン71を下方向に押圧するものである。
本実施形態では、ペン押圧機構74は、コイル部741とプランジャ742とで構成されるソレノイド740と、ソレノイド740のプランジャ742の移動端側に取り付けられたピン743と、このピン743を介してプランジャ742と連結されている板バネ上下レバー744と、板バネ上下レバー744に取り付けられた押圧側弾性部材である板バネ747と、を備えている。
【0027】
本実施形態のソレノイド740は、コイル部741に通電することでプランジャ742がコイル部741側(
図5(a)等において右側)に引きつけられ、通電を停止することでプランジャ742が元の位置まで突出するプル型のソレノイドである。なお、ソレノイド740は、直線的に往復移動するものであればよく、プル型に限定されず、プッシュ型に構成されたものでもよい。
【0028】
梁部441の上には、支持部材442が立設されており、支持部材442には、支持軸745が、プランジャ742の移動方向と直交する方向に延在して設けられている。
図3(c)に示すように、板バネ上下レバー744は、側面視においてほぼL字状となっており、板バネ上下レバー744のL字の交点部分に支持軸745が挿通されている。板バネ上下レバー744は、この支持軸745を中心として回動可能となっている。
板バネ上下レバー744におけるプランジャ742との接続側には、長孔744aが形成されており、プランジャ742に取り付けられているピン743がこの長孔744aに係止されている。
【0029】
また、板バネ上下レバー744における他端側には、板バネ747が固定されている。
板バネ747は、後述するペン本体710(
図4(b)参照)の上部に当接して下方向に押圧可能であり、かつ、ペン本体710により上方向に押し上げられた際に撓み変形可能な押圧側弾性部材である。
ペン押圧機構74は、板バネ747介してペン本体710に対し下向きの外力を加えるようになっている。
【0030】
本実施形態において、板バネ747は、自由端側が2箇所で屈曲し、側面視においてほぼコ字状に形成されている。コ字状に屈曲した板バネ747の下側の面は、ペン71を押圧する押圧面747aとなっている。押圧面747aは、ペン本体710の上部に設けられている突起部714に当接し、ペン本体710を押圧可能となっている。
板バネ747が押圧面747aにおいて、突起部714に対して線又は面で当接することにより、板バネ747は、突起部714及びこれを有するペン本体710自体を安定して垂直方向に押し下げることができるようになっている。
なお、板バネ747の形状はここに例示したものに限定されない。板バネ747の自由端側の形状がコ字状ではなくU字状等であってもよい。また、板バネ747の自由端側がクランクのように屈曲していても構わない。いずれの形状とした場合でも、板バネ747におけるペン本体710の突起部714に当接する部分(本実施形態では押圧面747a)は「線又は面」にしておくことが好ましい。すなわち、板バネ747が点で突起部714に当接するようにすると板バネ747がペン本体710の突起部714から外れてしまうおそれがあるため、板バネ747によって安定かつ確実にペン本体710を押圧するために、ペン本体710の突起部714に対しては、板バネ747が線又は面で接触するように構成する。
【0031】
板バネ747を形成する材料としては、一般的なバネ部材を用いることができ、例えば「SUS」や「ばね鋼」「リン青銅」「ベリリウム銅」等を適用することができる。「SUS」としては、例えば、「SUS301−H」「SUS304」「SUS316」等を使用することができる。
なお、板バネ747を形成する材料はここに例示したものに限定されない。板バネ747による押圧力は、バネの撓み量と板バネ747の長さ(すなわち、基端(板バネ上下レバー744への固定端)から押圧対象に対して作用を与える自由端までの距離)に関係し、板バネ747の長さが短ければ柔らかめの材料を用いても十分な押圧力を得ることができ、板バネ747の長さが長ければ、硬めの材料を用いなければ十分な押圧力を得ることができない。板バネ747を形成するのに用いる材料と、板バネ747の形状(長さや幅等)、により、バネ定数を調整することが可能であり、板バネ747の配置スペース等に応じて適宜設定される。
【0032】
図4(a)は、本実施形態において、
図3(a)及び
図3(c)に示すようなペン保持部721に保持されるペン71の外観を示した側面図である。
図4(b)は、
図4(a)に示すペン71の断面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ペン71は、爪Tの表面を描画対象面とし、先端部が描画対象面である爪Tの表面に接触して描画を施す筆記具である。
筆記具としてのペン71は、棒状の軸部の先端部にペン先が設けられたペン本体と、ペン付勢部材と、を備えている。
【0033】
本実施形態では、ペン71は、ペン本体710と、ペン付勢部材としてのコイルバネ715と、ペン本体710及びコイルバネ715を内部に収容する筒状部材716とを備えている。
筒状部材716等を形成する材料は特に限定されないが、ペン71を軽量化するために樹脂等で形成されていることが好ましい。
筒状部材716は、上下に開口し、上部開口716aには、内向きフランジ716cが形成されている。また、下部開口716bには、内向きフランジ716dが形成されている。
【0034】
ペン本体710は、ペン軸部711の先端側(
図4(b)等において下側)にペン先713が設けられたものである。ペン軸部711の外径は、筒状部材716の下部開口716bの内径よりも小さく、ペン軸部711は、筒状部材716の下部開口716bから突出可能となっている。
ペン軸部711の上端部には、外側に張り出す鍔部712が設けられている。
また、ペン軸部711の上部には、筒状部材716の上部開口716aから突出する棒状の突起部714が設けられている。
突起部714は、ペン押圧機構74の板バネ747の押圧面747aによって押圧される部分である。また、突起部714は、ペン71の交換等を行う場合に、ユーザがペン71を取り出す際に指等で摘む摘み部としても機能する。なお、本実施形態では、突起部714の先端部が半球状である場合を図示しているが、突起部714の先端部の形状は、押圧面747aによって安定して押圧することができ、またユーザが摘みやすい形状であればよく、図示例に限定されない。
ペン軸部711の内部は、各種インクを収容するインク収容部となっている。
ペン軸部711の内部に収容されるインクとしては、各種のインクが適用可能である。インクの粘度や色材の粒径(粒子の大きさ)等は特に限定されず、例えば、金銀のラメ入りのインクや白色のインク、UV硬化型のインクやジェルネイル、アンダーコート用、トップコート用やマニキュア等も用いることができる。
【0035】
ペン本体710の外周にはコイルバネ715が巻回されている。
ペン付勢部材としてのコイルバネ715は、外力が加わらない状態においてペン本体710を上方向に付勢するものである。
本実施形態では、ペン付勢部材としてのコイルバネ715は、ペン本体710の外周に配置され、ペン本体710が外力により下方向に押圧された際に押し縮められ、外力に抗して元の状態に戻ろうとする復元力を有する弾性部材である。
コイルバネ715の一端側は鍔部712の下面に当接し、他端側は筒状部材716の内向きフランジ716dの下面に当接している。
コイルバネ715は、非描画状態においてペン本体710の位置を、ペン先713が爪Tに当接しない位置に保持する。すなわち、上述のように、ペン本体710は、このコイルバネ715により、上方向(
図4(a)及び
図4(b)において上方向)に付勢され、外力が加わらない状態において、鍔部712が筒状部材716の上部に設けられている内向きフランジ716cの下面に当接する位置に保持されている。
【0036】
図2及び
図3(a)に示すように、ペン71は、当該ペン71を保持するペン保持部721がネイルプリント装置1の手前側(
図2において左側)に位置したときに、ペン71の突起部714の先端部が板バネ747の押圧面747aと対向する位置に配置されるようになっている。
この状態においてソレノイド740を動作させることにより、当該ペン本体710を板バネ747によって押し下げ、ペン71を描画可能状態(すなわち、ペン先713が描画対象面である爪Tの表面に当接可能な状態)とすることができる。
【0037】
本実施形態において、ペン71は、例えばペン先713を爪Tの表面に押し当てることでペン軸部711内に収容されているインクが染み出して描画する、ペン先713がボールペンタイプとなったペンである。
なお、ペン71は、ボールペンタイプのものに限定されない。例えばフェルト状のペン先にインクを染み込ませて描画するサインペンタイプや、束ねた毛にインクを染み込ませて描画する筆ペンタイプのもの等であってもよい。
また、ペン先713の太さも各種のものを用意することができる。
ペンキャリッジ72に保持されるペン71は、全て同じタイプのペン先713を有するペンでもよいし、異なるタイプのペン先713を有するペンであってもよい。
ペン71はペンキャリッジ72のペン保持部721に上方から挿通するだけで保持されている。このため、ケース本体2に設けられているペン交換用蓋部23を開けて、例えば手やピンセットで突起部714を摘む等の手法により、簡易に交換が可能である。
これにより、ユーザは、ペンキャリッジ72に装着するペン71を、描画したいネイルデザインに応じて色やペン先713の種類やインクの種類の異なるペン71に適宜入れ替えることで、幅広いネイルデザインを実現することができる。
【0038】
図5(a)は、ペン押圧機構74のソレノイド740を動作させていないときの状態を示し、
図5(b)は、ペン押圧機構74のソレノイド740を動作させたときの状態を示している。
非描画時においては、ソレノイド740のコイル部741に通電しない状態とすることにより、
図5(a)に示すように、プランジャ742がネイルプリント装置1の手前側(
図2において左側)に突出した状態となり、板バネ747の押圧面747aがペン71の突起部714と接触しないようになっている。このように外力(板バネ747による押圧力)が加わっていない状態では、ペン本体710は、コイルバネ715の付勢力により、上方向(
図4(a)及び
図4(b)において上方向)の位置に押し上げられ、ペン先713は描画対象面である爪Tの表面に当接しない高さに保持されている。
これに対して、描画時には、ソレノイド740のコイル部741を通電状態とすることにより、
図5(b)に示すように、プランジャ742がネイルプリント装置1の奥側(
図2において右側)に引きつけられた状態となる。これにより、一端がプランジャ742のピン743に係止されている板バネ上下レバー744が支持軸745を中心として回動し、板バネ上下レバー744に取り付けられている板バネ747が下方に傾いて押圧面747aがペン71の突起部714と接触し、突起部714を下方向に押圧する。
本実施形態では、板バネ747のバネ定数がペン71内のコイルバネ715のバネ定数より大きくなっている。このため、
図5(b)のように、ペン71の下方に爪Tが配置されていない状態では、板バネ747は少し撓んだだけでペン71を最下点まで押し下げることができる。
【0039】
以上に対して、
図6は、指受入部31に印刷指U1が挿入された状態でペン押圧機構74のソレノイド740を動作させ、ペン先713が爪Tに接触しているときの状態を示している。
この場合、
図5(b)に示したのと同様に、ソレノイド740のコイル部741を通電状態とすることにより、プランジャ742がネイルプリント装置1の奥側(
図2において右側)に引きつけられた状態となり、一端がプランジャ742のピン743に係止されている板バネ上下レバー744が支持軸745を中心として回動する。これにより、板バネ上下レバー744に取り付けられている板バネ747が下方に傾いてペン71の突起部714を下方向に押圧し、ペン先713が爪Tの表面に接触する。そして、ペン先713が爪Tに当たり、爪Tの湾曲形状に応じてペン71が押し上げられると、そのペン71に押されて板バネ747が撓み変形(弾性変形)する。これにより、ペン71は適度な筆圧を保ったまま爪Tの高さに追従する。
なお、板バネ747のバネ定数はそれ程大きくなく、このバネ定数は、板バネ747による押圧力(外力)が爪Tにかかったときに爪Tに痛みなどを感じることがない程度の値に設定されている。また、板バネ747が適度に撓むことによりペン71の上下動による衝撃が吸収されるとともに、ペン先713に適度な筆圧がかかった状態で、綺麗に描画を施すことができる。
【0040】
また、ユニット支持部材44は、X方向移動ステージ45に取り付けられたX方向移動部451に固定されている。X方向移動部451は、X方向移動モータ46の駆動によりX方向移動ステージ45上を図示しないガイドに沿ってX方向に移動するようになっており、これにより、ユニット支持部材44に取り付けられている描画ヘッド70が、X方向(
図1におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に移動するようになっている。
また、X方向移動ステージ45は、Y方向移動ステージ47のY方向移動部471に固定されている。Y方向移動部471は、Y方向移動モータ48の駆動によりY方向移動ステージ47上を図示しないガイドに沿ってY方向に移動するようになっており、これにより、ユニット支持部材44に取り付けられている描画ヘッド70が、Y方向(
図2におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に移動するようになっている。
なお、本実施形態において、X方向移動ステージ45及びY方向移動ステージ47は、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48と、図示しないボールネジ及びガイドとを組み合わせることで構成されている。
本実施形態では、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等により、爪Tに描画を施すペン71を備える描画ヘッド70をX方向及びY方向に駆動するXY駆動部としてのヘッド駆動部49が構成されている。
【0041】
描画部7におけるペン71を上下移動させるためのペン押圧機構74のソレノイド740、ペンキャリッジ72を回転させるためのステップモータ731、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、は、後述する制御装置80の描画制御部815(
図7参照)に接続され、該描画制御部815によって制御されるようになっている。
【0042】
図1及び
図2に示すように、撮影部50は、上部機枠12に設けられている。
すなわち、上部機枠12には基板13が設置されており、この基板13の中央部下面に撮影部50の撮像装置としてのカメラ51が2つ設置されている。
カメラ51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮像素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラであることが好ましい。
カメラ51は、指受入部31内に挿入されている印刷指U1の爪Tを撮影して、印刷指U1の爪Tの画像である爪画像(爪Tの画像を含む指画像)を得るものである。
【0043】
本実施形態では、2つのカメラ51は、指受入部31に挿入されている印刷指U1の爪Tの幅方向にほぼ並んで設けられている。
2つのカメラ51のうち、一方のカメラ51は、指受入部31の底面に対向して設けられており、爪Tを真上から撮影するものである。
また、他方のカメラ51は指受入部31の底面に対して僅かに傾けて配置されており、爪Tを斜め上方向から撮影するものである。
【0044】
基板13には、カメラ51を囲むように白色LED等の照明灯(照明装置)52が設置されている。照明灯52は、カメラ51による撮影の際に、印刷指U1の爪Tを照明するものである。撮影部50は、このカメラ51及び照明灯52を備えて構成されている。
この撮影部50は、後述する制御装置80の撮影制御部811(
図7参照)に接続され、該撮影制御部811によって制御されるようになっている。
撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する記憶部82の爪画像記憶領域821に記憶される。
【0045】
本実施形態では、撮像装置としての2つのカメラ51によって少なくとも2つの異なった位置・角度から爪Tを撮影することができ、少なくとも2枚の爪画像が取得される。
そして、これらの爪画像に基づいて、後述する爪情報検出部812が、爪Tの輪郭(爪Tの形状)や爪Tの湾曲形状、垂直位置等の爪情報を検出する。また、爪情報検出部812は、これらの爪画像に基づいて、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(以下「爪Tの傾斜角度」又は「爪曲率」という。)を検出できるようになっている。すなわち、例えば、爪Tの真上からの画像と、爪Tの斜め上方向からの画像と、を取り込むことにより、爪Tの輪郭だけでなく、爪Tの表面の傾斜角度を正確に検出することができる。なお、爪情報検出部812が検出する爪情報の内容はここに例示したものに限定されない。上記の項目のうちの一部のみ(例えば爪Tの輪郭等)を爪情報として検出し手もよいし、上記以外の他の項目を爪情報として検出してもよい。
【0046】
また、制御装置80は、例えば上部機枠12に配置された基板13等に設置されている。
図7は、本実施形態における制御構成を示す要部ブロック図である。
制御装置80は、
図7に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0047】
記憶部82には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82のROMには、爪画像から爪Tの形状や爪Tの輪郭等の爪情報を検出するための爪情報検出プログラム、描画データを生成するための描画データ生成プログラム、描画処理を行うための描画プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置80によって実行されることによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、本実施形態において記憶部82には、撮影部50によって取得されたユーザの印刷指U1の爪Tの爪画像を記憶する爪画像記憶領域821、爪情報検出部812によって検出された爪情報(爪Tの輪郭や爪Tの傾斜角度等)が記憶される爪情報記憶領域822、及び爪Tに描画されるネイルデザインの画像データを記憶するネイルデザイン記憶領域823が設けられている。
【0048】
制御部81は、機能的に見た場合、撮影制御部811、爪情報検出部812、描画データ生成部813、表示制御部814、描画制御部815等を備えている。これら撮影制御部811、爪情報検出部812、描画データ生成部813、表示制御部814、描画制御部815等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの共働によって実現される。
【0049】
撮影制御部811は、撮影部50のカメラ51及び照明灯52を制御してカメラ51により、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tの画像を含む指の画像(以下「爪画像」という。)を撮影させるものである。
本実施形態では、撮影制御部511は、2つのカメラ51によって異なる位置・角度(例えば、爪Tの真上と爪Tの斜め上方等)から少なくとも2枚の爪画像を取得させる。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、記憶部82に記憶されてもよい。
【0050】
爪情報検出部812は、カメラ51によって撮影された指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tの画像に基づいて、印刷指U1の爪Tについての爪情報を検出するものである。
ここで、爪情報とは、例えば、爪Tの輪郭(爪形状、爪Tの水平位置)、爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置、以下「爪Tの垂直位置」又は単に「爪Tの位置」ともいう。)、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)である。
【0051】
具体的には、爪情報検出部812は、カメラ51により取得された印刷指U1の爪Tの爪画像から、爪Tの輪郭(形状や大きさ)、その水平位置を検出し、この輪郭をx,y座標等で表される情報として取得する。
爪情報検出部812は、例えば、カメラ51により取得された印刷指U1の爪Tの爪画像から爪Tとそれ以外の指部分との色の違い等に基づいて爪Tの輪郭(形状)を検出するものである。なお、爪情報検出部812が爪Tの輪郭(形状)を検出する手法は特に限定されず、ここに挙げたものに限られない。
また、爪情報検出部812は、2つのカメラ51によって撮影された少なくとも2つの爪画像に基づいて、爪Tの傾斜角度(爪曲率)及びその垂直位置を検出する。
爪情報検出部812は、例えば2つのカメラ51によって異なる位置・角度(例えば、爪Tの真上と爪Tの斜め上方等)から撮影された2つの爪画像に現われる位置、形状の違い等からユーザの爪Tについて傾斜角度(爪曲率)と垂直位置を検出する。なお、爪情報検出部812が爪Tの傾斜角度(爪曲率)を検出する手法は特に限定されず、ここに挙げたものに限られない。
【0052】
描画データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪情報に基づいて、描画ヘッド70により印刷指U1の爪Tに施される描画用のデータを生成する。
具体的には、描画データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪Tの形状等に基づいてネイルデザインの画像データを拡大、縮小、切出し等による合せ込み処理を行い、爪Tに描画を施すためのデータを生成する。
また、本実施形態では、描画データ生成部813は、爪情報検出部812により検出された爪情報に応じて、ネイルデザインの画像データを爪Tの形状に合わせ込み、適宜曲面補正等を行う。
これにより、ネイルデザインの描画用のデータが生成される。
【0053】
表示制御部814は、表示部26を制御して表示部26に各種の表示画面を表示させるものである。本実施形態では、表示制御部814は、例えばネイルデザインの選択画面やデザイン確認用のサムネイル画像、印刷指U1を撮影して取得した爪画像、各種の指示画面等を表示部26に表示させるようになっている。
【0054】
描画制御部815は、描画データ生成部813によって生成された描画データを描画部7に出力し、爪Tに対してこの描画データにしたがった描画を施すように描画部7のペン押圧機構74のソレノイド740、ステップモータ731、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48を制御する制御部である。
本実施形態では、描画制御部815は、非描画時にはソレノイド740を動作させず、描画時にはソレノイド740のコイル部741に通電してプランジャ742を手前側に引きつけるようにソレノイド740の動作を制御する。
これにより、非描画時には板バネ747の押圧面747aがペン71の突起部714に当接せず、ペン71がコイルバネ715によって上方向に付勢され、ペン先713が爪Tに当接しない位置まで上がった状態となる。また、描画時には、板バネ747の押圧面747aがペン71の突起部714に当接して、ペン71がコイルバネ715の付勢力に抗して押し下げられ、ペン先713が爪Tに当接する位置まで下がった状態となる。
このように、描画制御部815がソレノイド740の動作を制御してペン71を適宜上下させることにより、ペン先713が適度な筆圧を維持したまま爪Tの高さに追従して上下動し、描画対象である爪Tの表面に所望のネイルデザインを描画することができる。
【0055】
次に、本実施形態におけるネイルプリント装置1の動作及び使用方法について説明する。
【0056】
このネイルプリント装置1により描画を行う場合、ユーザはまず、電源スイッチを入れて制御装置80を起動させる。
表示制御部814は、表示部26にデザイン選択画面を表示させる。ユーザは操作部25の操作釦等を操作して、デザイン選択画面に表示された複数のネイルデザインの中から所望のネイルデザインを選択し、これにより、操作部25から選択指示信号が出力されて爪Tに描画すべきネイルデザインが選択される。
ネイルデザインが選択されると、制御部81は、当該選択されたネイルデザインを描画するのに必要なペン71を描画ヘッド70の所定のペンキャリッジ72にセットするよう促す指示画面を表示部26に表示させる。例えば、赤インク、ラメ入り金インクが必要であるときは、どのペンキャリッジ72にどのインクのペン71を装着すべきかを表示部26において指示する。ユーザは表示画面に表示された指示にしたがって、所定のペンキャリッジ72に所定の種類のペン71をセットする。なお、ユーザがあえて指示と異なるペン71をセットして、好みの色や質感のネイルデザインを実現するようにしてもよい。
なお、ペンキャリッジ72にどの種類のペン71がセットされているかをバーコード等により制御部81が読み取ることができるように構成してもよく、この場合には、ペンキャリッジ72にセットされているペン71によって描画できるネイルデザインを表示部26のデザイン選択画面を表示させ、ユーザにその中からネイルデザインを選択させるようにしてもよい。
次に、ユーザは、印刷指U1を指受入部31に挿入し、非印刷指U2を指退避部32に挿入して、印刷指U1を固定した上で、描画スイッチを操作する。
例えば、
図3では、左手の薬指が印刷指U1として指受入部31に挿入され、その他の指が非印刷指U2として指退避部32に挿入されている例を示している。
【0057】
描画スイッチから指示が入力されると、描画動作を開始する前に、まず撮影制御部811が撮影部50を制御して、照明灯52により印刷指U1を照明しながら2つのカメラ51により印刷指U1を撮影させる。これにより、撮影制御部811は、指受入部31に挿入された印刷指U1の爪Tの画像(爪画像)を少なくとも2つ取得する。
次に、爪情報検出部812は、爪画像に基づいて爪Tの輪郭(爪形状)や爪Tの傾斜角度(爪曲率)等の爪情報を検出する。
【0058】
爪情報検出部812により爪Tの輪郭(爪形状)や爪Tの傾斜角度(爪曲率)が検出されると、これらの爪情報に基づいて、描画データ生成部813が、ネイルデザインの画像データの爪Tへの合せ込み処理を行う。
また、描画データ生成部813は、これら爪情報に基づいて、ネイルデザインの画像データにつき曲面補正を行う。これにより描画データが生成される。
描画制御部815は、爪Tへの描画開始前に、描画部7をペン慣書部61に移動させて、ペン71を保持するペンキャリッジ72のペン押圧機構74のソレノイド740を駆動させ、板バネ747によりペン71を押し下げ、ペン71を描画可能状態とする。そして、被描画媒体に「○」や「∞」等の所定の図形を描く慣らし書きを行う。なお、慣らし書きは、選択されたネイルデザインを描画するのに必要なペン71についてのみ行ってもよいし、全てのペン71について行ってもよい。
【0059】
描画データが生成され、慣らし書きも完了すると、描画制御部815は、描画データを描画部7に出力し、この描画データに基づいて描画ヘッド70による描画を行わせる。
具体的には、まず、描画制御部815は、指標読取部734による基準指標725の読取結果からペンキャリッジ72の回転量を把握し、このペンキャリッジ72の回転量に応じて、ステップモータ731の駆動を制御し、描画に必要なペン71が、ペン押圧機構74の設けられている位置に移動するまでペンキャリッジ72を回転させる。さらに、描画ヘッド70をXY方向に適宜移動させて描画位置まで移動させ、ペン押圧機構74を動作させて板バネ747によりペン本体710を下方向に押圧する。これにより、ペン71のペン先713が爪Tの表面に押し当てられる。このとき、ペン先713は、板バネ747により適度な押圧力で下方向に付勢され、爪Tの表面形状に追従して上下動しながら爪Tの表面に描画を行う。
【0060】
なお、複数の指の爪Tに描画を施す場合には、1つの指の爪Tについて描画処理が終了した後、当該描画済みの爪Tの指を指受入部31から抜いて次に描画すべき爪Tの指を印刷指U1として指受入部31に挿入し、当該爪Tの爪画像を取得して、上記の処理を繰り返す。
なお、ペン71を交換する場合には、描画制御部815は、描画ヘッド70をペン交換用蓋部23に対応する位置まで移動させる。この状態でユーザがペン交換用蓋部23を開けることにより、ペン71の取り出し、交換が可能となる。
【0061】
以上のように、本実施形態のネイルプリント装置1は、描画ヘッド70に装着されたペン71が、棒状のペン軸部711の先端部にペン先713が設けられたペン本体710と、このペン本体710の外周に配置され、ペン本体710が外力により下方向に押圧された際に押し縮められ、外力に抗して元の状態に戻ろうとする復元力を有するペン付勢部材であるコイルバネ715とを備えており、ペン押圧機構74の押圧側弾性部材である板バネ747を介してこのペン本体710に対して下向きの外力が加えられるようになっている。
これにより、ペン押圧機構74によりペン本体710に対して下向きの外力が加えられたときには、コイルバネ715が押し縮められてペン本体710が下に下がり、適度な筆圧を維持しつつ爪Tの表面にペン先713が当接し、爪Tの表面に描画することができる状態となる。
また、ペン先713が爪Tに当たることでペン本体710が爪Tによって上方向に押し上げられると、板バネ747が撓み変形するとともに、コイルバネ715の復元力によりペン本体710が上昇する。これにより、描画対象面である爪Tの高さが変動しても、ペン先713が爪Tの形状に追従して滑らかに上下動するとともに、ペン本体710の上下動による衝撃を板バネ747が吸収して、ペン本体710の軸部のぶれを抑えることができ、高精彩なネイルプリントを施すことができる。
また、ペン71は、ペン本体710とコイルバネ715と筒状部材716とで構成されており、その構造が簡略である。このため、比較的細く形成することができる。これにより、
図3(a)や
図8(a)に示すように、ペン71を保持するペン保持部721の径を小さくすることができ、ペンキャリッジ72に多くのペン71を保持させることができる。また、ペンキャリッジ72自体を小型化することも可能となり、ひいてはネイルプリント装置1全体の小型化を実現することもできる。
また、上記のように、ペン71の構成を簡略なものとできるため、消耗品であるペン71を比較的容易かつ安価に製造することが可能である。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、
図8(a)〜
図8(c)及び
図9(a)、
図9(b)を参照しつつ、本発明に係るネイルプリント装置の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、ペン押圧機構の構成のみが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0063】
図8(a)は、描画ヘッド70の上面図である。
図8(b)は、
図8(a)の描画ヘッド70を矢視b方向から見た正面図である。
図8(c)は、
図8(a)の描画ヘッド70を矢視c方向から見た側面図である。
図8(a)から
図8(c)に示すように、本実施形態において、ペン押圧機構74は、第1の実施形態と同様の構成であるソレノイド740と、ソレノイド740にピン743を介して一端側が接続された板バネ上下レバー744と、板バネ上下レバー744の他端側に取り付けられた板バネ746と、スライドピン77と、スライドピン77の外周に配置されたコイルバネ78とを備えている。
【0064】
板バネ746は、スライドピン77の上部に当接してスライドピン77及びこれに当接されたペン本体710を下方向に押圧可能であり、かつ、スライドピン77及びペン本体710により上方向に押し上げられた際に撓み変形可能な押圧側弾性部材である。
本実施形態の板バネ746は、平板状に形成されたバネであり、自由端側がスライドピン77の上方に位置するように配置されている。
【0065】
図9(a)は、スライドピン77が上に上がった状態を示す図であり、
図9(b)は、スライドピン77が下に下がった状態を示す図である。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、スライドピン77は、上下方向に移動可能となっており、スライドピン77が下に下がった状態において、スライドピン77の下端部がペン本体710の上部に当接可能に構成されている。
具体的には、本実施形態では、スライドピン77は、ピン軸部771と、このピン軸部771の上端部に設けられ、ピン軸部771より大きい直径を有してピン軸部771より外側に張り出すピン頭772と、ピン軸部771の下端部に設けられ、ピン軸部771より大きい直径を有してピン軸部771より外側に張り出す鍔部773とから構成されている。
また、ピン軸部771の下側端面には、ペン本体710の上部に当接可能な押圧部774が設けられている。本実施形態において、押圧部774は、ペン本体710の突起部714を受けるように円錐の凹部状に形成されている。なお、押圧部774の形状は、突起部714の上端部を安定して受けることのできる形状であればよく、凹部状に限定されない。例えば、押圧部774の形状を凸形状とし、突起部714の上端部にこれを受ける凹部を形成してもよい。
【0066】
コイルバネ78は、スライドピン77のピン軸部771の外周のピン頭772とピン取付部材79との間に配置され、スライドピン77が外力により下方向に押圧された際に押し縮められ、外力に抗して元の状態に戻ろうとする復元力を有するピン側弾性部材である。
なお、ピン側弾性部材は、コイルバネに限定されず、スライドピン77が外力により下方向に押圧された際に押し縮められ、外力に抗して元の状態に戻ろうとする復元力を有する弾性部材であれば適用可能である。
【0067】
スライドピン77及びコイルバネ78は、ピン取付部材79により、梁部441の上に取り付けられている。
すなわち、ピン取付部材79には、ピン軸部771が挿通される軸挿通孔791が形成されている。軸挿通孔791は、その内径が、ピン軸部771の外径よりも大きく、ピン頭772及び鍔部773の外径よりも小さく形成されており、軸挿通孔791に挿通されたピン軸部771が抜け落ちないようになっている。
ピン軸部771の外周に設けられたコイルバネ78は、一端側がピン取付部材79の上面に係止され、他端側がピン頭772の下面に突き当たって係止されており、スライドピン77が外力により下方向に押圧された際には、ピン取付部材79の上面とピン頭772の下面との間で押し縮められる。
また、ピン取付部材79には、ネジ用孔792が形成されており、ネジ用孔792にネジを挿通させてピン取付部材79を梁部441の上にネジ止め固定することにより、軸挿通孔781にピン軸部771が挿通されているスライドピン77及びピン軸部771の外周に設けられているコイルバネ78が梁部441の上に取り付けられる。
【0068】
本実施形態では、板バネ746と、ピン側弾性部材であるコイルバネ78とにより押圧側弾性部材が構成されている。
【0069】
以上のような構成をとることにより、本実施形態では、非描画時においては、ソレノイド740のコイル部741に通電しない状態とすることにより、プランジャ742がネイルプリント装置1の手前側(
図2において左側)に突出した状態となり、板バネ746がスライドピン77のピン頭772を押さないようになっている。この状態では、スライドピン77の押圧部774がペン71の突起部714と接触しない。このように外力(板バネ746による押圧力)が加わっていない状態では、ペン本体710は、コイルバネ715の付勢力により、上方向(
図4(a)及び
図4(b)において上方向)の位置に押し上げられ、ペン先713は描画対象面である爪Tの表面に当接しない高さに保持されている。
これに対して、描画時には、ソレノイド740のコイル部741を通電状態とすることにより、プランジャ742がネイルプリント装置1の奥側(
図2において右側)に引きつけられた状態となる。これにより、一端がプランジャ742のピン743に係止されている板バネ上下レバー744が支持軸745を中心として回動し、板バネ上下レバー744に取り付けられている板バネ746が下方に傾いて、板バネ746の自由端側がスライドピン77のピン頭772と接触し、スライドピン77を下方向に押圧する。これによって、スライドピン77の押圧部774がペン71の突起部714を下方向に押圧する。
本実施形態の場合においても、板バネ746及びコイルバネ78のバネ定数がペン71内のコイルバネ715のバネ定数より大きくなっている。このため、ペン71の下方に爪Tが配置されていない状態では、板バネ747及びコイルバネ78は少し撓んだだけでペン71を最下点まで押し下げることができる。
そして、指受入部31に印刷指U1が挿入された状態でペン押圧機構74のソレノイド740を動作させた場合には、ソレノイド740のコイル部741を通電状態とすることにより、プランジャ742がネイルプリント装置1の奥側(
図2において右側)に引きつけられた状態となり、一端がプランジャ742のピン743に係止されている板バネ上下レバー744が支持軸745を中心として回動する。これにより、板バネ上下レバー744に取り付けられている板バネ746が下方に傾いて自由端側がスライドピン77を下方向に押圧し、さらにスライドピン77の押圧部774がペン71の突起部714を下方向に押圧することによって、ペン先713が爪Tの表面に接触する。そして、ペン先713が爪Tに当たり、爪Tの湾曲形状に応じてペン71が押し上げられると、そのペン71に押されてスライドピン77に設けられている板バネ746及びコイルバネ78が撓み変形(弾性変形)する。これにより、ペン71は適度な筆圧を保ったまま爪Tの高さに追従する。
なお、板バネ746及びコイルバネ78のバネ定数はそれ程大きくなく、このバネ定数は、板バネ746及びコイルバネ78による押圧力(外力)が爪Tにかかったときに爪Tに痛みなどを感じることがない程度の値に設定されている。また、板バネ746及びコイルバネ78が適度に撓むことによりペン71の上下動による衝撃が吸収されるとともに、ペン先713に適度な筆圧がかかった状態で、綺麗に描画を施すことができる。
【0070】
なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0071】
次に、本実施形態におけるネイルプリント装置1の動作について説明する。
まず、第1の実施形態と同様に、描画動作を開始する前に、ネイルデザインの選択、爪情報の検出等を行う。
描画を行う際には、具体的には、まず、描画制御部815は、指標読取部734による基準指標725の読取結果からペンキャリッジ72の回転量を把握し、このペンキャリッジ72の回転量に応じて、ステップモータ731の駆動を制御し、描画に必要なペン71が、ペン押圧機構74の設けられている位置に移動するまでペンキャリッジ72を回転させる。さらに、描画ヘッド70をXY方向に適宜移動させて描画位置まで移動させ、ペン押圧機構74を動作させて板バネ746によってスライドピン77を下方向に押圧し、このスライドピン77によってペン本体710を下方向に押圧する。これにより、ペン71のペン先713が爪Tの表面に押し当てられる。このとき、ペン先713は、板バネ746及びコイルバネ78により適度な押圧力で下方向に付勢され、爪Tの表面形状に追従して上下動しながら爪Tの表面に描画を行う。
【0072】
なお、その他の点については、第1の実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、ペン押圧機構74がスライドピン77と、このスライドピンの外周に配置されたピン側弾性部材としてのコイルバネ78とを備え、押圧側弾性部材が板バネ746とコイルバネ78とから構成されている。
このようにスライドピン77を用いることにより、板バネ746を単なる平板状の単純な形状とすることができ、板バネ746の加工等にかかる手間を省くことができる。
【0074】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0075】
例えば、上記各実施形態では、ペン付勢部材として、コイルバネ715をペン軸部711の外周に設ける構成としたが、ペン付勢部材は、コイルバネに限定されない。
ペン付勢部材は、ペン本体710の外周に配置され、ペン本体710が外力により下方向に押圧された際に押し縮められ、外力に抗して元の状態に戻ろうとする復元力を有する弾性部材であればよく、例えばゴム等で構成されていてもよい。
また、ペン付勢部材は、外力が加わっていないときにペン本体710を上方向に付勢することができるものであればよく、コイルバネ715等の弾性部材に限定されない。例えば、油圧や空気圧を用いた機構をペン付勢部材として適用してもよい。
【0076】
また、第1の実施形態では、ペン押圧機構74に設けられる押圧側弾性部材として、板バネ747を備え、第2の実施形態では、板バネ746とコイルバネ78とを備える構成を例示したが、ペン押圧機構74に設けられる押圧側弾性部材はこれに限定されない。
例えば、ペン押圧機構74を、上下方向に直線運動するプランジャを備えるソレノイドで構成し、プランジャの下端部でペン71の突起部714を押圧するようにしてもよい。
この場合には、ペン本体710により上方向に押し上げられた際に弾性変形可能な押圧側弾性部材(例えばコイルバネ等)をプランジャの外周等に配置する。
【0077】
また、上記各実施形態では、ネイルプリント装置1が8本のペン71を装着可能なペンキャリッジ72を備えている場合を例示しているが、ネイルプリント装置1が保持するペン71は8本に限定されない。例えば10本等、さらに多くの本数のペン71を装着可能なペンキャリッジを備えてもよい。装着可能なペン71の数が多いほど、多くの色を用いた複雑なネイルデザインを描画することが可能となる。
また、ペンキャリッジは複数のペンを同時に保持できるものではなく、ペン71を1本のみ装着できる構成としてもよい。この場合には、ペンキャリッジを回転させる必要がなく、ステップモータ731等で構成されるキャリッジ回転機構73、ペンキャリッジ72の基準指標725及びこれを読み取るための指標読取部734等を備える必要がない。このため、装置構成をより簡易化することができ、装置小型・軽量化することができる。
また、ペンキャリッジ72に装着するペン71を自動で交換する機構を実装してもよい。この場合には、例えば複数のペンを待機スペースに保持しておき、ここから自動でペンを選択してペンキャリッジ72に装着する。このような構成とすれば、更に装置に保持できるペン71の本数を増やすことも可能となる。また、ペンキャリッジ72に装着するペン71を必要に応じて適宜ユーザが手動でペンを交換する方式としてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、ペン71を上下移動させるペン押圧機構としてソレノイドを用いた構成を例示しているが、ペン押圧機構の構成はこれに限定されない。例えば、ステップモータ、DCモータ、モータ及びボールネジ等により構成してもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、描画ヘッド70を移動させるためのX方向移動ステージ45及びY方向移動ステージ47を、ステップモータであるX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48と、図示しないボールネジ及びガイドとの組み合わせにより構成する例を示したが、描画ヘッド70を移動させるための構成はこれに限定されない。
X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48は、描画ヘッド70を前後左右に随意に動かせるものであればよく、例えば、従来の安価なプリンタ等に用いられているようなシャフトやガイドとワイヤーで構成された機構を用いた構成でもよいし、サーボモータ等を用いた構成でもよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、描画ヘッド70のペンキャリッジ72を回転させるキャリッジ回転機構73の駆動手段としてステップモータ731を用いる例を示したが、キャリッジ回転機構73の構成はこれに限定されない。
例えば、描画ヘッドのペンキャリッジを回転させるキャリッジ回転機構を、ラチェット機構とソレノイド等で構成してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、ペンとしてインクにより描画するものを例示したが、描画ヘッドに装着されるペンは、インクを描画するものに限定されない。
例えば、無色や有色透明の液状糊を収容したペンを描画ヘッドに装着し、これを用いて液状糊を所定のパターンに描画(塗布)した後、この液状糊が乾く前に粉状のラメ等をふり掛けたり、ラインストーン等を貼着したりすることにより、より豪華なネイルデザインを実現することもできる。
また、香料を含んだ液体等を収容したペンを描画ヘッドに装着し、これを用いて描画を行い、香り付きのネイルプリントを楽しむことができるようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、ペンの慣書用に紙片である被描画媒体を用いる場合を例示したが、被描画媒体は紙に限定されない。また、被描画媒体はロール状のものを用いてもよい。この場合には、自動又は手動により被描画媒体を送り出すとともに巻き取る媒体送り機構を設ける。また、被描画媒体はロール状のものである場合には、媒体挿出口24に代えてロール状の被描画媒体を着脱するための媒体着脱口を設ける。
【0083】
また、本実施形態では、描画データ生成部813が、ネイルデザインの画像データを爪Tの形状に合わせ込むとともに、ネイルデザインの画像データについて曲面補正を行い、描画データを生成する場合を例としたが、描画データ生成部813が描画データを生成することは本発明の必須の構成要素ではない。例えば、描画データを別途生成せずに、描画制御部815において、ネイルデザインの画像データをLUT(Lookup Table)等により適宜変換しつつ描画ヘッドに出力して爪形状に合った描画を行うように描画制御を行ってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、爪情報として爪Tの形状を検出し、これに基づいて描画データを生成する場合を例としたが、爪形状を検出することは本発明の必須の構成要素ではない。例えば、爪Tの中程にワンポイント柄を描画する場合のように、描画を行う上で爪Tの輪郭を抽出することが必須でない場合であれば、正確に爪Tの形状を認識する必要はなく、爪形状の検出を行うことなく描画を行うことができる。
【0085】
また、撮像装置は、静止画を撮影するカメラ51に限定されず、動画を撮影可能なものであってもよい。この場合、カメラによって動画を撮影し、撮影された動画から、爪Tの上面の画像を適宜切り出して、爪情報の検出に用いる。
【0086】
また、本実施形態では、爪画像記憶領域821、爪情報記憶領域822、ネイルデザイン記憶領域823が制御装置80の記憶部82内に設けられている場合を例としたが、爪画像記憶領域821、爪情報記憶領域822、ネイルデザイン記憶領域823は制御装置80の記憶部82に設けられている場合に限定されず、別途記憶部が設けられていてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、指を1本ずつ装置に挿入して順次描画を行うネイルプリント装置1を例としたが、複数本の指に対して、各指を抜き差しすることなく、連続的に描画を行うことのできる装置に本発明を適用することも可能である。
例えば、ペンの稼動範囲を広げて描画可能範囲を大きくすることにより、複数の印刷指U1に同時に挿入した状態で、各指の爪に連続的に描画を施すことも可能となる。
【0088】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
手の指の爪の表面又は足の指の爪の表面を描画対象面とし、先端部が前記描画対象面に接触することにより前記描画対象面に描画を施す少なくとも一つの描画用具を保持するキャリッジと、
前記描画を施す際に前記キャリッジに装着された前記描画用具を、前記先端部が前記描画対象面に近づく第1方向に押圧して、前記先端部を前記描画対象面に接触させる描画用具押圧機構と、
を備え、
前記描画用具は、一端側に前記先端部が設けられた描画用具本体と、前記キャリッジに保持されている状態において前記描画用具本体を前記先端部が前記描画対象面から離れる第2方向に付勢する描画用具付勢部材と、を有し、
前記描画用具押圧機構は、弾性変形可能な押圧側弾性部材を有し、前記押圧側弾性部材を介して前記描画用具本体に対し前記第1方向の外力を加えることを特徴とする描画装置。
<請求項2>
前記押圧側弾性部材は、前記描画用具本体に対して前記第1方向の外力を加える際に弾性変形し、前記描画を施しているときに前記描画対象面の形状に応じて前記描画用具本体が押し上げられた際に撓み変形する板バネであることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
<請求項3>
前記描画用具押圧機構は、更に、
前記板バネの一端側に接続され、前記板バネの他端側を、前記描画用具本体の他端側に直接接触して前記描画用具本体に前記第1方向の外力を加える第1の位置と、前記描画用具本体の前記他端に接触しない第2の位置と、の何れかに移動させる板バネ移動機構を有することを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
<請求項4>
前記描画用具押圧機構は、更に、
一端と他端を有し、前記他端が前記描画用具本体の他端側に当接可能であり、ピン弾性部材により前記他端が前記描画用具本体の他端側から離れる方向に付勢されているスライドピンと、
前記板バネの一端側に接続され、前記板バネの他端側を、前記スライドピンの前記一端に接触して前記スライドピンを押し、前記スライドピンの前記他端が前記描画用具本体の他端側に当接して前記描画用具本体を前記先端部が前記描画対象面に近づく方向に押圧して、前記先端部を前記描画対象面に接触させる第1の位置と、前記スライドピンを押さない第2の位置と、の何れかに移動させる板バネ移動機構と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
<請求項5>
前記描画用具付勢部材は、前記描画用具本体の外周に配置され、前記描画用具本体が外力により前記第1方向に押圧された際に押し縮められ、外力に抗して元の状態に戻ろうとする復元力を有する弾性部材であることを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
<請求項6>
前記描画用具は、それぞれ開口部を有する第1端部と第2端部を有し、前記描画用具本体の一部を内部に収容している筒状部材を有し、
前記描画用具本体の前記先端部は前記筒状部材の前記第2端部の開口部から露出し、
前記描画用具本体の前記他端側の、前記筒状部材内に収容されている部分に、前記筒状部材の前記第1端部の開口部より大きい鍔部が設けられ、
前記描画用具付勢部材は、前記筒状部材の内周と前記描画用具本体の外周との間に設けられ、一端が前記描画用具本体の鍔部に接し、他端が前記筒状部材の前記第2端部側の内面に接していることを特徴とする請求項5に記載の描画装置。