特許第6349729号(P6349729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349729
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電装品ユニット
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20180625BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F25B1/00 321L
   F25B49/02 560
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-273397(P2013-273397)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127622(P2015-127622A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺木 潤一
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−015295(JP,A)
【文献】 特開2012−094313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00− 7/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路を有する装置の制御に用いられる、発熱部品(571a,571b)を含む電装品群(570)を搭載した電装品ユニットであって、
前記電装品群(570)を収容するケース(51)と、
冷媒を通す冷媒流路(531)を含み、前記発熱部品(571a,571b)を自然対流により冷却する冷却部(53)と、
前記ケース(51)内に配置され、前記冷媒の冷熱によって前記ケース(51)内の空気を除湿する除湿部(55)と、
を備え、
前記ケース(51)は、前記ケース(51)から流出または前記ケース(51)に流入する1時間当たりの空気量(V)を前記ケース(51)の容積(R)で除した値である換気回数(V/R)が0〜5回に抑制されている半密閉構造であり、
さらに前記ケース(51)は、前記除湿部(55)と隣接する位置にドレン排水孔(51a)を有している、
電装品ユニット(50)。
【請求項2】
冷媒回路を有する装置の制御に用いられる、発熱部品(571a,571b)を含む電装品群(570)を搭載した電装品ユニットであって、
前記電装品群(570)を収容するケース(51)と、
冷媒を通す冷媒流路(531)を含み、前記発熱部品(571a,571b)を冷却する冷却部(53)と、
前記ケース(51)内に配置され、前記冷媒の冷熱によって前記ケース(51)内の空気を除湿する除湿部(55)と、
を備え、
前記ケース(51)は、前記ケース(51)から流出または前記ケース(51)に流入する1時間当たりの空気量(V)を前記ケース(51)の容積(R)で除した値である換気回数(V/R)が0〜5回に抑制されている半密閉構造であり、
さらに前記ケース(51)、前記除湿部(55)と隣接する位置にケーブル引込孔(51b)を有している、
電装品ユニット(50)。
【請求項3】
前記除湿部(55)は、前記電装品群(570)よりも低い位置に配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の電装品ユニット(50)。
【請求項4】
前記冷却部(53)と前記除湿部(55)とが一体化されている、
請求項1又は請求項2に記載の電装品ユニット(50)。
【請求項5】
前記冷却部(53)は、
前記発熱部品(571a,571b)が伝熱可能に取り付けられる伝熱板(535)と、
前記冷媒の冷熱によって前記伝熱板(535)を冷却する冷媒ジャケット(533)と、
をさらに含み、
前記ケース(51)は、前記冷媒ジャケット(533)及び前記伝熱板(535)を収容する、
請求項1又は請求項2に記載の電装品ユニット(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品の冷却を冷媒の冷熱を用いて行う電装品ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電装品を冷媒の冷熱によって冷却する場合、直接伝熱により冷却すると冷媒温度が低い場合に結露が発生する。これを防止するために、例えば特許文献1(特開2012−127591号公報)及び特許文献2(特開2013−15295号公報)に開示されている制御ボックスでは、ボックス内にボックス内部を冷却するための冷媒―空気熱交換器及びファンを設置し、冷気により冷却する方法が採られている。この場合、パワーモジュールを含め、基板全体がボックス内の露点よりも温度が高くなるため、結露することはなく、また、冷媒―空気熱交換器の下方で結露水をうける構造になっており、基板に結露水が付着することはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構造では、発熱量の大きなパワーモジュールを十分に冷却することはできず、パワーモジュールを十分に冷却するとすれば、冷媒―空気熱交換器の能力を大幅に上げる必要があり、サイズ、コストとも大幅に増加する。
【0004】
また、特許文献3(特開2010−002120号公報)及び特許文献4(特開2011−220654号公報)に開示されている電装品箱では、直接伝熱による冷却と冷気による冷却とを併用しているが、直接伝熱による冷却の冷媒温度が露点より下がらないようにする必要があり、冷却能力が低下し、さらには構造的に複雑になる。
【0005】
本発明の課題は、発熱部品を直接伝熱冷却しながら、冷却能力を低下させることなく、直接伝熱冷却部分に結露させない電装品ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る電装品ユニットは、冷媒回路を有する装置の制御に用いられる、発熱部品を含む電装品群を搭載した電装品ユニットであって、ケースと、冷却部と、除湿部とを備えている。ケースは、電装品群を収容する。冷却部は、冷媒を通す冷媒流路を含み、発熱部品を自然対流により冷却する。除湿部は、ケース内に配置され、冷媒の冷熱によってケース内の空気を除湿する。また、ケースは、ケースから流出またはケースに流入する1時間当たりの空気量Vをケースの容積Rで除した値である換気回数V/Rが0〜5回に抑制されている半密閉構造である。さらに、ケースは、除湿部と隣接する位置にドレン排水孔を有している。
【0007】
この電装品ユニットでは、冷却部により直接伝熱冷却を行うが、ケースを半密閉構造とし、且つ、ケース内部に配置された除湿部がケース内部の露点を電装品群の最低温度部分の温度よりも下げて結露を防ぐので、冷媒能力を低下させることなく結露を防ぐことができる。
【0008】
ケース内部は1時間内に0〜5回の頻度で空気が入れ替わるが、除湿部がケース内を除湿し露点を下げているので、例えばパワーモジュールを直接伝熱冷却してもパワーモジュール周辺に結露を発生させない。
【0009】
また、ケース内に熱がこもるが、冷却部が空気をも冷却するので、直接伝熱冷却の対象でない発熱部品は冷気の自然対流により間接冷却される。
【0010】
さらに、この電装品ユニットでは、外部空気の流入が想定されるドレン排水孔が除湿部と隣接する位置に設けられることによって、湿気を含んだ空気は自然対流する前に除湿されるので、冷却部への結露水の付着が防止される。
【0011】
本発明の第観点に係る電装品ユニットは、冷媒回路を有する装置の制御に用いられる、発熱部品を含む電装品群を搭載した電装品ユニットであって、ケースと、冷却部と、除湿部とを備えている。ケースは、電装品群を収容する。冷却部は、冷媒を通す冷媒流路を含み、発熱部品を冷却する。除湿部は、ケース内に配置され、冷媒の冷熱によってケース内の空気を除湿する。また、ケースは、ケースから流出またはケースに流入する1時間当たりの空気量Vをケースの容積Rで除した値である換気回数V/Rが0〜5回に抑制されている半密閉構造である。さらに、ケース、除湿部と隣接する位置にケーブル引込孔を有している。
【0012】
この電装品ユニットでは、外部空気の流入が想定されるケーブル引込孔が除湿部と隣接する位置に設けられることによって、湿気を含んだ空気は自然対流する前に除湿されるので、冷却部への結露水の付着が防止される。
【0013】
本発明の第観点に係る電装品ユニットは、第1観点又は第2観点に係る電装品ユニットであって、除湿部が、電装品群よりも低い位置に配置されている。
【0014】
この電装品ユニットでは、除湿部が、電装品群よりも低い位置に配置されていることによって、除湿部で発生した結露水が電装品群にかかることが防止される。
【0015】
本発明の第観点に係る電装品ユニットは、第1観点又は第2観点に係る電装品ユニットであって、冷却部と除湿部とが一体化されている。
【0016】
この電装品ユニットでは、両部材の一体化により、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
本発明の第観点に係る電装品ユニットは、第1観点又は第2観点に係る電装品ユニットであって、冷却部が、伝熱板と、冷媒ジャケットとをさらに含んでいる。伝熱板は、発熱部品が伝熱可能に取り付けられる。冷媒ジャケットは、冷媒の冷熱によって伝熱板を冷却する。また、ケースは、冷媒ジャケット及び伝熱板を収容する。
【0018】
この電装品ユニットでは、冷媒ジャケットを除湿部として兼用することが可能となり、部品点数の削減により製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1観点に係る電装品ユニットでは、冷却部により直接伝熱冷却を行うが、ケースを半密閉構造とし、且つ、ケース内部に配置された除湿部がケース内部の露点を電装品群の最低温度部分の温度よりも下げて結露を防ぐので、冷媒能力を低下させることなく結露を防ぐことができる。
【0020】
ケース内部は1時間内に0〜5回の頻度で空気が入れ替わるが、除湿部がケース内を除湿し露点を下げているので、例えばパワーモジュールを直接伝熱冷却してもパワーモジュール周辺に結露を発生させない。
【0021】
また、ケース内に熱がこもるが、冷却部が空気をも冷却するので、直接伝熱冷却の対象でない発熱部品は冷気の自然対流により間接冷却される。
【0022】
さらに、外部空気の流入が想定されるドレン排水孔が除湿部と隣接する位置に設けられることによって、湿気を含んだ空気は自然対流する前に除湿されるので、冷却部への結露水の付着が防止される。
【0023】
本発明の第観点に係る電装品ユニットでは、外部空気の流入が想定されるケーブル引込孔が除湿部と隣接する位置に設けられることによって、湿気を含んだ空気は自然対流する前に除湿されるので、冷却部への結露水の付着が防止される。
【0024】
本発明の第観点に係る電装品ユニットでは、除湿部が、電装品群よりも低い位置に配置されていることによって、除湿部で発生した結露水が電装品群にかかることが防止される。
【0025】
本発明の第観点に係る電装品ユニットでは、冷却部と除湿部との一体化により、製造コストの低減を図ることができる。
【0026】
本発明の第観点に係る電装品ユニットでは、冷媒ジャケットを除湿部として兼用することが可能となり、部品点数の削減により製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る電装品ユニットを搭載した冷凍装置の冷媒回路図。
図2】電装品ユニットの外観図。
図3】盤構造別の換気回数を示す表。
図4】ケースの内容積と所定サイズの除湿用ヒートシンクによるケース内の除湿量との関係を、換気回数をパラメータとして表したグラフ。
図5】ケースの内容積とケース内の露点との関係を、換気回数をパラメータとして表したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
(1)冷凍装置1の全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る電装品ユニット50を搭載した冷凍装置1の冷媒回路図である。図1において、冷凍装置1は、室内ユニット2と室外ユニット3とで構成される。この冷凍装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって建物内の冷暖房を行う。
【0030】
冷凍装置1では、圧縮機32、四路切換弁33、室外熱交換器30、電動膨張弁34、室内熱交換器20及びアキュムレータ31などが冷媒配管41,42を介して接続されることによって、冷媒回路11が構成されている。
【0031】
(1−1)冷媒回路11
冷媒回路11内には冷媒が封入されており、冷媒が圧縮され、冷却され、減圧され、蒸発した後に、再び圧縮されるという冷凍サイクル運転が行われるようになっている。
【0032】
冷房運転時は、四路切換弁33が図1の実線で示される状態、すなわち、圧縮機32の吐出側が室外熱交換器30のガス側に接続され、かつ、圧縮機32の吸入側がアキュムレータ31を介して室内熱交換器20のガス側に接続された状態となっている。冷房運転では、冷凍装置1は、室外熱交換器30を放熱器として、室内熱交換器20を蒸発器として機能させる。
【0033】
暖房運転時は、四路切換弁33が図1の破線で示される状態、すなわち、圧縮機32の吐出側が室内熱交換器20のガス側に接続され、かつ、圧縮機32の吸入側がアキュムレータ31を介して室外熱交換器30のガス側に接続された状態となっている。暖房運転では、冷凍装置1は、室内熱交換器20を放熱器として、かつ、室外熱交換器30を蒸発器として機能させる。
【0034】
(1−2)分岐回路12
分岐回路12には、冷媒回路11から分岐された冷媒が流れる。分岐回路12は、冷媒回路11の室外熱交換器30と電動膨張弁34との間から電動膨張弁34と室内熱交換器20との間までの部分に並列に設けられている。分岐回路12には、第2電動膨張弁62、冷却部53および第3電動膨張弁63が接続されている。
【0035】
冷房運転時には、冷媒回路11を流れる冷媒の一部が、室外熱交換器30と電動膨張弁34との間から分岐回路12に分岐され、第2電動膨張弁62、冷却部53および第3電動膨張弁63の順に流れて、電動膨張弁34と室内熱交換器20との間に合流する。また、暖房運転時には、冷媒回路11を流れる冷媒の一部が、室内熱交換器20と電動膨張弁34との間から分岐回路12に分岐され、第3電動膨張弁63、冷却部53および第2電動膨張弁62の順に流れて、電動膨張弁34と室外熱交換器30との間に合流する。
【0036】
(2)電装品ユニット50の構成
図2は、電装品ユニット50の外観図である。図2において、電装品ユニット50は、ケース51、冷却部53、除湿用ヒートシンク55、電子部品が実装されている制御基板57を有している。
【0037】
(2−1)ケース51
ケース51は、直方体形状の箱であり、長辺が鉛直方向と平行になるように配置されている。ケース51は、下面にドレン排水孔51a及びケーブル引込孔51bを有している。
【0038】
ドレン排水孔51aは、除湿用ヒートシンク55に凝縮した水、いわゆる結露水が落下した際に、その結露水を排出する。
【0039】
ケーブル引込孔51bは、制御基板57への電源供給線及び信号線等が束ねられた状態のケーブル70を引き込む。
【0040】
ドレン排水孔51aの開口面積は、ケーブル引込孔51bとケーブル70とのすき間面積に比べて極端に小さく、ケース51内の換気はもっぱらケーブル引込孔51bとケーブル70とのすき間で行われる。
【0041】
また、ケース51は、一側面に開口51cを有している。開口51cは冷却部53によって覆われる。
【0042】
(2−2)冷却部53
冷却部53は、冷媒管531、冷媒ジャケット533、伝熱板535を含んでいる。
【0043】
(2−2−1)冷媒管531
冷媒管531は、サーペンタイン状に曲げされた管であり、一端には分岐回路12の第2電動膨張弁62、他端には分岐回路12の第3電動膨張弁63が接続されている(図1参照)。
【0044】
(2−2−2)冷媒ジャケット533
冷媒ジャケット533は、アルミ製の直方体形状の塊であり、冷媒管531が嵌り込む溝が形成されている。
【0045】
(2−2−3)伝熱板535
伝熱板535は、冷媒ジャケット533のうちの冷媒管531とは反対側の面に密着するように取り付けられている。伝熱板535が、ケース51の開口51cを覆っている。伝熱板535は、ケース51内の底面から天面に向かって延び、天面の手前で終端となっている。
【0046】
伝熱板535のうち、冷媒ジャケット533と接触している面を第1領域535a、除湿用ヒートシンク55に接している面を第2領域535b、パワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bに接している面を第3領域535c、隣接しリアクトル572aと接する領域を第4領域535dとする。
【0047】
伝熱板535には、冷媒ジャケット533の冷却能力と、接している発熱部品の発熱量により、面内方向に温度分布が生じる。基本的には、発熱量が大きい部分は温度が高く、発熱量の小さい部分は温度が低くなる。また、冷却能力が高い部分は温度が低く、冷却能力が低い部分は温度が高くなる。
【0048】
伝熱板535の板厚方向の熱抵抗は小さいため、伝熱板535のうち冷媒ジャケット533と接触している第1領域535aからその板厚分を挟んで反対側の第2領域535bおよび第3領域535cは、冷媒ジャケット533により直接冷却されると考えて差し支えなく、冷却能力の高い領域となる。
【0049】
これに対し、第4領域535dは冷媒ジャケット533から離れているため、冷却能力は低くなっている。
【0050】
また、各部の発熱量については、パワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bの発熱量が最も大きく、リアクトルはそれらよりも大幅に小さい(数分の1)であり、除湿用ヒートシンク55については除湿の潜熱分と空気からの伝熱分だけであるため、ほとんど発熱しない。
【0051】
これらのことから、発熱量と冷却能力のバランスを考えると、発熱がほとんどなく冷却能力の高い第2領域535bの温度が最も低いと考えられ、第3領域535cと第4領域535dはそれよりも高い温度となっている。
【0052】
(2−3)除湿用ヒートシンク55
除湿用ヒートシンク55は、伝熱板535の第2領域535bに固定されている。除湿用ヒートシンク55は、伝熱板535の第2領域535bに固定される基部551と基部551から伝熱板535と垂直な方向に延びるフィン部553とを有している。
【0053】
除湿用ヒートシンク55は、伝熱板535で最も温度の低い第2領域535bによって冷却され、その表面温度がケース51内の露点より低い温度になる。その結果、ケース51内の空気に含まれる水分が除湿用ヒートシンク55に冷却され凝縮し、除湿用ヒートシンク55の表面に結露する。
【0054】
その下面にはドレン排水孔51aが設けられているので、除湿用ヒートシンク55の表面から落下した結露水はドレン排水孔51aを介して排出される。
【0055】
また、ケーブル引込孔51bもケース51の下面に設けられているので、ケーブル引込孔51bから侵入する空気は、除湿用ヒートシンク55の表面を通過する。その際、侵入する空気に含まれる水分が除湿用ヒートシンク55に冷却され凝縮し、除湿用ヒートシンク55の表面に結露する。
【0056】
したがって、自然換気によってケース51内に侵入する空気は、除湿用ヒートシンク55で除湿されるので、ケース51内の露点が上昇することが抑制されている。
【0057】
(2−4)制御基板57
制御基板57は第1基板571と第2基板572とを含んでいる。第1基板571及びと第2基板572は、ガラスエポキシ樹脂などの樹脂から形成された薄板形状であり、互いに平行に配置されている。
【0058】
(2−4−1)第1基板571
第1基板571の外表面のうち、伝熱板535と対峙する面にはパワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bが実装され、その反対側の面には制御用マイコン571c、スイッチング電源571dが実装されている。パワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bの放熱面は伝熱板535の第3領域535cに伝熱可能に取り付けられる。
【0059】
ここで、「伝熱可能に取り付けられる」とは、パワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bの放熱面と伝熱板535の第2領域535bとの間に熱移動が起こるように取り付けられている、という意味である。したがって、両者が直に接触することだけではなく、放熱シート又はシリコングリスを挟んだ構成でも「伝熱可能に取り付けられる」構成である。
【0060】
このような構成の場合、伝熱による熱抵抗は十分小さいため、パワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bは、冷媒ジャケット533で直接冷却されているに等しい。
【0061】
(2−4−2)第2基板572
第2基板572の外表面のうち、第1基板571と対向する側の面で、且つ第1基板571と重ならない領域には、リアクトル572aが実装されている。リアクトル572aは伝熱シートを介して伝熱板535に伝熱可能に取り付けられている。
【0062】
また、第2基板572の外表面のうち、第1基板571と対峙しない面には、平滑コンデンサとしてのフィルムコンデンサ572b及び回生吸収用コンデンサ572cが実装されている。
【0063】
リアクトル572aは発熱により温度が上昇するが、パワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bの発熱量に比べると大幅に小さいので、伝熱板535の第4領域535dに伝熱可能に取り付けられることによって、十分に冷却される。
【0064】
フィルムコンデンサ572b及び回生吸収用コンデンサ572cなどの他の部品の発熱量はリアクトル572aよりもさらに小さいので、伝熱板535で冷却された空気によって冷却することが可能である。
【0065】
(3)電装品ユニット50内の湿度コントロール
電装品ユニット50では、ケース51内を除湿用ヒートシンク55で除湿することによって、冷媒ジャケット533で冷却されて低温になっている伝熱板535への結露を防止している。
【0066】
ケース51内に外気が侵入しない密閉構造では、一旦、ケース51内を除湿すれば伝熱板535への結露はほとんど発生しない。
【0067】
他方、ケース51への外気侵入をある程度許容する半密閉構造の場合は、ケース51内の換気回数と、それに対する必要な除湿量との関係を把握する必要がある。
【0068】
図3は、日新電機株式会社/バンロム電子除湿器技術資料9より引用した盤構造別の換気回数を示す表である。図3において、[構造]と記載された横欄には、[換気孔]、[扉すきま]、[ケーブル引込孔のすきま]、及び[接合部のすき間]の4構造が表示され、縦欄には換気回数が表示されている。また、[換気孔]、[扉すきま]、[ケーブル引込孔のすきま]、及び[接合部のすき間]の縦の表示欄には、それらの構造がある場合には○、ない場合には×が表示されている。
【0069】
例えば、[換気孔]、[扉すきま]、[ケーブル引込孔のすきま]、及び[接合部のすき間]が全てある場合は、換気回数は1時間当たり15回である。また、[ケーブル引込孔のすきま]、及び[接合部のすき間]だけがある場合は、換気回数は1時間当たり5回である。また、[接合部のすき間]しかない場合は、換気回数は1時間当たり0.5〜1回である。
【0070】
出願人は、ケース51の密閉レベルを図3に示す換気回数をもって代用し、換気回数をパラメータとして、下記の検討を行った。
【0071】
図4は、ケース51の内容積(L)と所定サイズの除湿用ヒートシンク55によるケース51内の除湿量(g/h)との関係を、換気回数をパラメータとして表したグラフである。なお、除湿用ヒートシンク55の大きさは100mm×50mmm×50mmであり、冷媒温度は20℃である。図4に示すように、当然のことながら換気回数が多いほど、ケース51内への湿った空気の侵入機会が増加するので、除湿用ヒートシンク55の除湿量は増加する。
【0072】
結露については、各電装品が発熱しているため、ケース51内の空気の露点が、各電装品の最低温度よりも常に低ければ結露しない。そして、内部空気の露点は、外部からの空気の侵入が多いと上昇し、除湿用ヒートシンク55での除湿量が増加すると下降するため、これらのバランスにより決まる。
【0073】
図5は、ケース51の内容積(L)とケース51内の露点(℃)との関係を、換気回数をパラメータとして表したグラフである。図5において、内容積が6リットルのケース51では、換気回数が10(回/h)レベルの密閉度で露点は24.7℃、換気回数が5(回/h)レベルの密閉度で露点は22.6℃、換気回数が1(回/h)レベルの密閉度で露点は約20.6℃である。
【0074】
例えば、本実施形態に係る電装品ユニット50の場合、ケース51の内容積は5リットル程度であり、[換気孔]及び[扉すきま]がない仕様であるので、図3より換気回数が5(回/h)レベルの密閉度である。そうすると、ケース51内の露点は図5より約22℃であるので、電装品が22℃より低い温度まで冷却されなければ結露は発生しない。
【0075】
図4及び図5より、ケース51の内容積が6L以下の場合は、ケース51の密閉度合は換気回数が5(回/h)の半密閉でもよい。しかし、ケース51の内容積が6Lを超える場合は、ケース51の密閉度合は換気回数が1(回/h)以下に抑制されるのが好ましい。
【0076】
以上のように、電装品ユニット50のケース51内の下部に設けられた除湿用ヒートシンク55の除湿効果によって、ケース51内の露点が低下するので、冷却部53からの直接伝熱でパワーモジュール571a及びダイオードモジュール571bを冷却することによって、結露を発生させることなく、十分に冷却することができる。
【0077】
(4)特徴
(4−1)
電装品ユニット50では、冷却部53により直接伝熱冷却を行うが、ケース51を密閉構造として外気の侵入を防ぎ、且つ、ケース51内部に配置された除湿用ヒートシンク55がケース51内部の露点を電装品群570の最低温度部分の温度よりも下げて結露を防ぐので、冷媒能力を低下させることなく結露を防ぐことができる。
【0078】
また、ケース51内に熱がこもるが、冷却部53が空気をも冷却するので、直接伝熱冷却の対象でない発熱部品(リアクトルなど)は冷気の自然対流により間接冷却される。
【0079】
(4−2)
また、電装品ユニット50では、ケース内部は1時間内に0〜5回の頻度で空気が入れ替わる半密閉構造であるが、除湿用ヒートシンクがケース51内を除湿し露点を下げているので、例えばパワーモジュール571aを直接伝熱冷却してもパワーモジュール571aの周辺に結露を発生させない。
【0080】
(4−3)
また、電装品ユニット50では、外部空気の流入が想定されるドレン排水孔51aが除湿用ヒートシンク55と隣接する位置に設けられることによって、湿気を含んだ空気は自然対流する前に除湿されるので、冷却部53への結露水の付着が防止される。
【0081】
(4−4)
また、電装品ユニット50では、外部空気の流入が想定されるケーブル引込孔51bが除湿用ヒートシンク55と隣接する位置に設けられることによって、湿気を含んだ空気は自然対流する前に除湿されるので、冷却部53への結露水の付着が防止される。
【0082】
(4−5)
また、電装品ユニット50では、除湿用ヒートシンク55が、電装品群570よりも低い位置に配置されていることによって、除湿用ヒートシンク55で発生した結露水が電装品群570にかかることが防止される。
【0083】
(5)変形例
(5−1)
上記実施形態に係る電装品ユニット50は、冷却部53と除湿用ヒートシンク55とを接合した形態を有しているが、これに限定されるものではない。例えば、冷却部53と除湿用ヒートシンク55とを一体化することにより、冷却部53から除湿用ヒートシンク55への熱伝導性が向上する。また、ダイキャストによる一体成形によって製造コストの低減を図ることができる。
【0084】
(5−2)
また、上記実施形態に係る電装品ユニット50では、伝熱板535だけがケース51に収容されているが、冷媒ジャケット533も収容して冷媒ジャケット533そのものを除湿用ヒートシンクとして兼用することも可能である。この場合、部品点数の削減によりさらなる製造コストの低減を図ることができる。
【0085】
(5−3)
さらに、冷媒管531を構成する配管の一部をケース51内に進入させて、これを除湿用ヒートシンクとして代用してもよい。
【0086】
(6)その他
(6−1)
上記実施形態に係る電装品ユニット50において、冷却部53で冷却された空気を強制循環させるファンを設置してもよい。ファンによる冷気の強制循環によって、除湿性能、冷却性能が向上し、さらには除湿用ヒートシンク55の小型化を図ることができる。
【0087】
(6−2)
上記実施形態に係る電装品ユニット50では、除湿用ヒートシンク55の結露水が電装品群570に滴下しないように、除湿用ヒートシンク55をケース51内の下部に設けているが、これに限定されるものではない。例えば、除湿用ヒートシンク55に受け皿を設けて、ケース51内の下部以外の部分に配置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、冷凍装置の電装品ユニットに限らず、冷却を要する電装品ユニットに有用である。
【符号の説明】
【0089】
50 電装品ユニット
51 ケース
51a ドレン排水孔
51b ケーブル引込孔
53 冷却部
531 冷媒流路
533 冷媒ジャケット
535 伝熱板
55 除湿用ヒートシンク(除湿部)
570 電装品群
571a 発熱部品
571b 発熱部品
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2012−127591号公報
【特許文献2】特開2013− 15295号公報
【特許文献3】特開2010−002120号公報
【特許文献4】特開2011−220654号公報
図1
図2
図3
図4
図5