(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349732
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法及び構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20180625BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/30 E
E04B1/58 508P
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-2300(P2014-2300)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-129426(P2015-129426A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 温弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 勝尚
(72)【発明者】
【氏名】長屋 圭一
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−096346(JP,U)
【文献】
特開2002−061288(JP,A)
【文献】
特開2004−270381(JP,A)
【文献】
特開平11−210077(JP,A)
【文献】
特開平11−022007(JP,A)
【文献】
特開2000−144906(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0094182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法であって、
前記柱を建て込んだ後に、複数の機械式継手を固定した板を、前記柱の前記鉄骨に、該鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムを介して又は直接に取り付けると共に、前記鉄筋コンクリート梁の梁主筋を、前記機械式継手に挿入して定着させ、
前記板と、前記鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムとを重ねてボルト及びナットで締結する鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法。
【請求項2】
鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法であって、
前記柱を建て込んだ後に、複数の機械式継手を固定した板を、前記柱の前記鉄骨に、該鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムを介して又は直接に取り付けると共に、前記鉄筋コンクリート梁の梁主筋を、前記機械式継手に挿入して定着させ、
前記機械式継手と前記鉄骨との相対位置を調整して、前記板を前記鉄骨に取り付ける鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法。
【請求項3】
前記機械式継手と前記鉄骨との相対位置を調整して、前記板を前記鉄骨に取り付ける請求項1に記載の鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法。
【請求項4】
鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合構造であって、
前記柱の前記鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムと、前記ダイアフラムに重ねてボルト及びナットで締結された板と、前記板に固定され、前記鉄筋コンクリート梁の梁主筋が挿入されて定着された複数の機械式継手とを備える鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱(S造の柱)又は鉄骨を備える柱(CFT柱やSRC造の柱等)との接合方法として、鉄筋コンクリート梁の梁主筋をダイアフラムに溶接する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、鉄筋コンクリート梁の梁主筋に設けたネジ部を、十字型鉄骨のフランジに溶接されたネジ式機械式継手に螺合させる方法(例えば、特許文献2参照)等が知られている。特許文献1に記載の方法では、現場において、梁主筋をダイアフラムに溶接する。一方、特許文献2に記載の方法では、工場において、ネジ式機械式継手を十字型鉄骨のフランジに溶接し、現場において、梁主筋をネジ式機械式継手に螺合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−88909号公報
【特許文献2】特開2004−346614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、鉄筋の溶接という複雑な作業を多数実施しなければならないことから施工性に劣る。一方、特許文献2に記載の方法では、柱が軸芯回りに回転して建て込まれる等、柱の建て込みに誤差が生じた場合に、梁主筋のネジ部とネジ式機械式継手との位置が合わずにこれらを螺合させるために梁主筋を曲げなければならなくなることが考えられる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、鉄筋コンクリート梁を鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱に接合するにあたり、現場での施工性に優れると共に、柱の建て込み誤差にかかわらず梁主筋を曲げることなく柱の鉄骨に定着させることができる方法及び構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法は、前記柱を建て込んだ後に、複数の機械式継手を固定した板を、前記柱の前記鉄骨に、該鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムを介して又は直接に取り付けると共に、前記鉄筋コンクリート梁の梁主筋を、前記機械式継手に挿入して定着させ
、前記板と、前記鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムとを重ねてボルト及びナットで締結することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合方法において、
前記柱を建て込んだ後に、複数の機械式継手を固定した板を、前記柱の前記鉄骨に、該鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムを介して又は直接に取り付けると共に、前記鉄筋コンクリート梁の梁主筋を、前記機械式継手に挿入して定着させ、前記機械式継手と前記鉄骨との相対位置を調整して、前記板を前記鉄骨に取り付けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート梁と鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱との接合構造は、前記柱の前記鉄骨の外周部に設けられたダイアフラムと、前記ダイアフラムに重ねてボルト及びナットで締結された板と、前記板に固定され、前記鉄筋コンクリート梁の梁主筋が挿入されて定着された複数の機械式継手とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄筋コンクリート梁を鉄骨の柱又は鉄骨を備える柱に接合するにあたり、現場での施工性に優れると共に、柱の建て込み誤差にかかわらず梁主筋を曲げることなく柱の鉄骨に定着させることができる方法及び構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る鉄筋コンクリート梁と鉄骨柱との接合構造を、コンクリートを透かして示す平断面図である。
【
図2】一実施形態に係る鉄筋コンクリート梁と鉄骨柱との接合構造をコンクリートを透かして示す立断面図(
図1の2−2断面図)である。
【
図3】一実施形態に係る鉄筋コンクリート梁と鉄骨柱との接合構造をコンクリートを透かして示す立断面図(
図1の3−3断面図)である。
【
図4】鉄筋定着機構を拡大して示す平断面図である。
【
図5】鉄筋コンクリート梁を鉄骨柱に接合する手順を示す立断面図である。
【
図6】鉄筋コンクリート梁を鉄骨柱に接合する手順を示す立断面図である。
【
図7】鉄筋コンクリート梁を鉄骨柱に接合する手順を示す平断面図である。
【
図8】鉄筋コンクリート梁を鉄骨柱に接合する手順を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る鉄筋コンクリート梁10と鉄骨柱20との接合構造を、コンクリートを透かして示す平断面図であり、
図2は、該接合構造を示す立断面図(
図1の2−2断面図)であり、
図3は、該接合構造を示す立断面図(
図1の3−3断面図)である。これらの図に示すように、鉄骨柱20は、角型鋼管からなる逆打ち支柱であり、鉄筋コンクリート梁10との接合部には、上下一対のダイアフラム22と上下一対の内ダイアフラム24が設けられている。なお、本実施形態では、鉄骨柱20を逆打ち支柱としているが、上部架構の柱としてもよい。
【0013】
ダイアフラム22は、鉄骨柱20の全周から水平方向に張出した通しダイアフラム部22Aと、該通しダイアフラム部22Aの鉄筋コンクリート梁10が接合される辺から張り出した矩形状の鉄筋定着部22Bとを備えている。ダイアフラム22は、通しダイアフラム部22Aと鉄筋定着部22Bとが一体で鋼板から切り出されることにより成形されている。また、通しダイアフラム部22Aの内周縁部が鉄骨柱20の外周面に溶接されている。
【0014】
一対の内ダイアフラム24は、一対のダイアフラム22を上下に挟むように鉄骨柱20内に配された鋼板であり、その外周縁部が鉄骨柱20の内周面に溶接されている。上側の内ダイアフラム24は、鉄筋コンクリート梁10の上端の高さに配され、下側の内ダイアフラム24は、鉄筋コンクリート梁10の下端の高さに配されている。
【0015】
鉄筋コンクリート梁10の材軸方向の端部には、上下にそれぞれ2段ずつ配筋された梁主筋12と、上側の上段の梁主筋12と下側の下段の梁主筋12とを囲うように配筋された梁あばら筋14と、端部に埋設された上下一対の鉄筋定着機構30とが備えられている。上側の上段の梁主筋12は、上側のダイアフラム22より上側に配筋され、上側の下段の梁主筋12は、上側のダイアフラム22より下側に配筋されている。また、下側の上段の梁主筋12は、下側のダイアフラム22より上側に配筋され、下側の下段の梁主筋12は、下側のダイアフラム22より下側に配筋されている。
【0016】
鉄筋コンクリート梁10の梁主筋12よりも材軸方向中央側には、各梁主筋12と継手により繋ぎ合わされる梁主筋(図示省略)が配筋されている。梁主筋12は、ねじ節鉄筋である。また、梁主筋12と材軸方向中央側の梁主筋とは、グラウト充填式鋼管スリーブ又は重ね継手により繋ぎ合わされている。
【0017】
鉄筋定着機構30は、鉄筋定着部22Bを上下に挟みボルトB及びナットNで締結された上下一対の鋼板32と、各鋼板32に溶接された複数の鉄筋接続用カプラー34とを備えている。鋼板32は、鉄筋定着部22Bと同形状及び同寸法であり、上下の鋼板32とその間の鉄筋定着部22Bとの全体が重なっている。また、ボルトBは、高力ボルト又は超高力ボルト等である。
【0018】
複数の鉄筋接続用カプラー34は、各段の梁主筋12と同じ間隔で平行に配されており、各鉄筋接続用カプラー34にねじ節鉄筋である梁主筋12の端部が螺合している。また、上下の鋼板32とその間の鉄筋定着部22Bには、複数の貫通孔32A、22Cが形成されている(
図4参照)。この複数の貫通孔32A、22Cは、鉄筋接続用カプラー34間に配されており、この貫通孔32A、22Cに通されたボルトBとナットNとにより、上下の鋼板32とその間の鉄筋定着部22Bとが締結されている。これにより、上下それぞれ2段の梁主筋12が、鉄骨柱20に定着されている。
【0019】
ここで、
図4に示すように、貫通孔32A、22Cの直径は、ボルトBの直径よりも大きくなっている。また、鋼板32及び鉄筋接続用カプラー34の鉄骨柱20側の端部と、鉄骨柱20の外壁面との間には、隙間が確保されている。このため、鋼板32と鉄筋定着部22Bとの相対位置が、ボルトBと貫通孔32A、22Cとのクリアランスの分だけ調整可能である。
【0020】
図5〜
図8は、鉄筋コンクリート梁10を鉄骨柱20に接合する手順を示す立断面図又は平断面図である。ここで、鉄筋コンクリート梁10の少なくとも材軸方向の端部は、コンクリートを現場打ちすることにより構築する。なお、鉄筋コンクリート梁10の材軸方向の中央側は、プレキャストコンクリート部材により構成してもよく、コンクリートを現場打ちすることにより構築してもよい。
【0021】
また、鉄骨柱20は、逆打ち支柱であるところ、地盤を削孔して杭を打設した後に、先端が杭に挿入されるように孔内で建て込まれる。その後、鉄骨柱20の周囲の孔が埋め戻される。この逆打ち支柱である鉄骨柱20の先端を杭の鉄筋コンクリートに挿入する際や、埋め戻される土砂により、鉄骨柱20の建て込み精度に狂いが生じる可能性がある。ここで、鉄骨柱20は鉄筋接続用カプラー34が取り付けられていない状態で建て込まれることにより、鉄筋接続用カプラー34に土砂が入るようなことはない。
【0022】
そして、逆打ち工法における掘削及び地下躯体の施工が進行して、所定階の鉄筋コンクリート梁10を鉄骨柱20に接合するにあたり、まず、
図5の立断面図に示すように、梁主筋12、該梁主筋12と繋ぎあわせる梁中央側の不図示の梁主筋、及び梁あばら筋14を配筋する。次に、
図6の立断面図及び
図7の平断面図に示すように、鉄筋定着部22Bに、予め工場で作製された鉄筋定着機構30を設置して、ボルトB及びナットNで仮止めする。
【0023】
次に、
図8の平断面図に示すように、鉄筋接続用カプラー34の位置及び向きを調整しながら、梁主筋12の端部を鉄筋接続用カプラー34に螺合させ、その後、ボルトB及びナットNを本締めする。そして、鉄筋コンクリート梁10の端部を、コンクリートを現場打ちすることにより構築する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート梁10と鉄骨柱20との接合方法では、鉄骨柱20を建て込んだ後に、複数の鉄筋接続用カプラー34を固定した鋼板32を、鉄骨柱20に、該鉄骨柱20の外周部に設けられたダイアフラム22を介して取り付けると共に、鉄筋コンクリート梁10の梁主筋12を、鉄筋接続用カプラー34に挿入して定着させる。これにより、建て込まれた鉄骨柱20と鉄筋接続用カプラー34との相対位置を調整して、鉄筋接続用カプラー34を鉄骨柱20に鋼板32及びダイアフラム22を介して取り付けることができ、鉄骨柱20の建込誤差にかかわらず梁主筋12を曲げることなく鉄骨柱20に定着させることができる。
【0025】
また、予め工場において鉄筋接続用カプラー34を鋼板32に溶接したものを、鉄骨柱20に取り付けるようにしたことによって、鉄筋接続用カプラー34を鉄骨柱20に溶接するという複雑な作業を多数実施する必要がなく、梁主筋12を鉄骨柱20に定着する作業の施工性を向上できる。
【0026】
また、鉄骨柱20を掘削孔内に建て込んでから当該掘削孔を埋め戻すまでの間は、鉄筋接続用カプラー34を鉄骨柱20には取り付けておかずに、逆打ち工法における掘削及び地下躯体の施工が進んで鉄骨柱20の鉄筋コンクリート梁10の接合位置が地面から露出してから、鉄筋接続用カプラー34を鉄骨柱20に取り付けるようにしたことによって、掘削孔を埋め戻す際に土砂が鉄筋接続用カプラー34の孔内に入ることを防止できる。
【0027】
また、鋼板32と、鉄骨柱20の外周部に設けられたダイアフラム22とを重ねてボルトB及びナットNで締結するようにしたことによって、鉄骨柱20が軸芯回りに回転して建て込まれた場合であっても、鉄筋接続用カプラー34と鉄骨柱20との軸芯回りの相対位置を調整して、鋼板32を鉄骨柱20に取り付けることができ、梁主筋12を曲げることなく鉄骨柱20に定着させることができる。
【0028】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、鋼板32を、ダイアフラム22を介して鉄骨柱20に取り付けたが、鋼板32を直接鉄骨柱20に取り付けてもよい。また、鋼板32をダイアフラム22にボルトB及びナットNで締結したが、鋼板32をダイアフラム22又は鉄骨柱20に溶接してもよい。
【0029】
また、上述の実施形態では、鉄筋コンクリート梁10を鉄骨柱20に接合する場合を例に挙げて本発明を説明したが、鉄筋コンクリート梁10を鉄骨鉄筋コンクリート柱の鉄骨に接合する場合や、鉄筋コンクリート梁10を鋼管コンクリート柱の鋼管(鉄骨)に接合する場合にも、本発明を適用できる。
【0030】
また、上述の実施形態では、機械式継手を、ネジ式機械式継手としたが、グラウト充填式機械式継手としてもよい。また、上述の実施形態では、鉄筋コンクリート梁10の上下に2段の梁主筋12を配筋したが、梁主筋12は1段でも3段でもよい。
【0031】
さらに、上述の実施形態では、ダイアフラム22の上下に内ダイアフラム24を設けることにより、鉄骨柱20の厚みの増大によらずに鉄骨柱20の梁接合部の強度を確保したが、これは必須ではなく、鉄骨柱20の厚みを増大したりその他の補強方法により鉄骨柱20の梁接合部の強度を確保するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 鉄筋コンクリート梁、12 梁主筋、14 梁あばら筋、20 鉄骨柱、22 ダイアフラム、22A 通しダイアフラム部、22B 鉄筋定着部、22C 貫通孔、24 内ダイアフラム、30 鉄筋定着機構、32 鋼板、32A 貫通孔、34 鉄筋接続用カプラー