(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス吸引口にケミカルフィルタが設けられ、前記ウェーハ搬送室内のガスは前記ケミカルフィルタを介してガス帰還路に流入することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のEFEM。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、ますますのクリーン化が進められる中で、EFEMのウェーハ搬送室内はクリーン度が比較的高いものの、FOUP内や処理装置内とは異なる空気雰囲気であることによる影響が懸念されるようになってきている。
【0008】
すなわち、空気雰囲気に晒されることにより基板表面に水分や酸素が付着しやすく、腐食や酸化が生じる可能性がある。また、処理装置において用いられた腐食性ガス等がウェーハの表面に残留している場合には、ウェーハ表面の配線材料を腐食して歩留りの悪化が生じる可能性もある。さらに、腐食元素は水分の存在により腐食反応を加速させるため、腐食性ガスと水分の双方が存在することで、より速く腐食が進行する可能性もある。
【0009】
また、ウェーハの受け渡しを行う際に、ロードポートに設けられたパージ部よりFOUPに不活性ガスである窒素等を注入することでFOUP内を加圧し、FOUP内にウェーハ搬送室内の空気雰囲気が侵入することを防止するよう構成した場合には、ウェーハの受け渡しが完了するまでの間FOUP内に窒素を注入し続けなくてはならず、注入した窒素はウェーハ搬送室へと流出してしまうため、窒素の使用量が膨大なものとなり、コストが増大するという問題が生じる。
【0010】
これを避けるためには、ウェーハ搬送室の内部をFOUPと同様窒素雰囲気にすることが考えられるが、単にウェーハ搬送の開始時に窒素雰囲気にするだけでは、時間の経過とともにウェーハ搬送室内のクリーン度が低下し、この内部での搬送中にウェーハ表面にパーティクルが付着する可能性が生じるとともに、処理装置において用いられた腐食性ガス等の影響も増加する。また、ウェーハ搬送室内に常に窒素を供給し続けた場合は、さらに窒素の使用量が膨大なものとなり、コスト増大に対する解決策とはならない。
【0011】
加えて、ウェーハ搬送室内における上記の問題は、処理や保管場所とは異なる雰囲気のもとで搬送を行う限り、ウェーハ以外の基板を搬送する場合においても同様に生じるものといえる。
【0012】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、コストの増大を避けながら、搬送中のウェーハを、表面性状の変化やパーティクルの付着を生じさせる雰囲気に晒すことなく、ウェーハへのパーティクルの付着の抑制や、ウェーハ表面の性状の管理を適切に行うことのできるEFEMを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち、本発明のEFEMは、壁面に設けられた開口にロードポート及び処理装置が接続されることで略閉止されたウェーハ搬送室を内部に構成する筐体と、前記ウェーハ搬送室内に配設され、前記ロードポートに載置されたFOUPと前記処理装置との間でウェーハの搬送を行うウェーハ搬送装置と、前記ウェーハ搬送室の上部に設けられ、当該ウェーハ搬送室内に
不活性ガスを送出するガス送出口と、前記ウェーハ搬送室の下部に設けられ、当該ウェーハ搬送室内の
不活性ガスを吸引するガス吸引口と、前記ガス吸引口から吸引されたガスを前記ガス送出口へ帰還させるガス帰還路と、前記ガス送出口に設けられ、送出する
不活性ガスに含まれるパーティクルを除去するフィルタとを具備し、前記ウェーハ搬送室に下降気流を生じさせるとともに前記ガス帰還路を介して
不活性ガスを帰還させることによって、前記ウェーハ搬送室内の
不活性ガスを循環させるように構成し
たものである。
【0015】
このように構成すると、ウェーハ搬送室に下降気流を生じさせるとともにガス帰還路を通じてガスを循環させることで、ウェーハ搬送室が略閉止された空間となっていることと相まって、ウェーハ搬送室内を適切なガス雰囲気下に維持することが可能となる。そのため、ウェーハの搬送を外気にさらすことなく行うことができ、パーティクルの付着を抑制することが可能となる。また、ガス送出口にフィルタが設けられていることで、ガスを循環させる間にパーティクルを除去することが可能となる。さらに、ウェーハ搬送室に下降気流が生じていることで、ウェーハ上部に付着したパーティクルを除去するとともに、ウェーハ搬送室内にパーティクルが浮遊することを防止することが可能となる。また、ガスを循環させることによって当該ガスの消費を抑制し、コストを削減することが可能となる。
【0016】
外観を変更することなく大きな流路面積を確保し、ロードロック室などEFEM外部の装置と干渉することを防止するとともに、部品点数の増加を抑えて製造コストの上昇を抑えるために
本発明は、前記筐体
内に設けた仕切り部材
により前記ウェーハ搬送室と前記ガス帰還路とが分離され
、前記ガス帰還路に上方に向かって気流を形成する送風手段を更に有し、前記ウェーハ搬送室の内部に不活性ガスが充填されていることを特徴とする。
【0017】
また、
前記ガス帰還路に更にフィルタを備えたものであり、このフィルタは前記送風手段の上流側に設けられることが望ましい。更に、ウェーハ搬送装置の駆動領域外のデッドスペースを有効に利用し、ウェーハの搬送を妨げることを防止しつつガスの流量を確保するためには、前記ロードポートを接続する開口と前記処理装置を接続する開口とが前記筐体の対向する位置に設けられており、前記ガス帰還路が前記ガス吸引口から前記処理装置を接続する開口の両側を経由して前記ガス送出口に連続するように構成することが好適である。
【0018】
さらに、ウェーハ搬送室とガス帰還路とを流れるガスの循環を円滑に行うためには、前記ガス送出口に第1の送風手段が接続されるとともに、前記ガス吸引口に第2の送風手段が接続されており、前記第1の送風手段により前記ガス送出口から前記ウェーハ搬送室内にガスを送出させ、前記第2の送風手段により前記ガス吸引口から前記ウェーハ搬送室内のガスを吸引するように構成することが望ましい。
【0019】
加えて、ウェーハ搬送室内を適切なガス雰囲気に置換し、酸素ガスや水分等がウェーハ表面に付着してウェーハの処理を阻害し、歩留りが低下することを防止するとともに、ウェーハ搬送室内の窒素の一部が外部に流出した場合には、流出分のガスを供給することで、ウェーハ搬送室内の状態を一定に保つためには、前記ウェーハ搬送室内にガスを供給するガス供給手段と、前記ウェーハ搬送室内よりガスを排出するためのガス排出手段とをさらに備え
、前記ガス供給手段は前記ガス排出手段の下流側に設けられているように構成することが有効である。
また、前記ガス供給手段により、前記ウェーハ搬送室のガスの一部が外部に流出した際に、流出分のガスを供給することで、ウェーハ搬送室の状態を一定に保つようにしていることが望ましい。
【0020】
また、処理装置における処理等で生じウェーハ搬送室内に流入した分子状汚染物質を除去するためには、前記ガス吸引口にケミカルフィルタが設けられ、前記ウェーハ搬送室内のガスは前記ケミカルフィルタを介してガス帰還路に流入することが望ましい。
【0021】
加えて、ウェーハ搬送装置とガス吸引口とを互いに干渉することなく配置するとともに、ウェーハ搬送室内の下降気流を妨げず、気流の乱れによってパーティクルが浮遊することを防止するためには、前記ウェーハ搬送装置が前記筐体の壁面に支持されるように構成することが好ましい。
【0022】
そして、酸素や湿気等によるウェーハ表面の性状の変化を抑制し、歩留りが低下することを防止するためには、前記ガスとして不活性ガスを用いるように構成することが好ましい。
また、前記ウェーハ搬送装置は前記筐体内のガイドレールに沿って移動できるようになっていることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明によれば、コストの増大を避けながら、搬送中のウェーハを、表面性状の変化やパーティクルの付着を生じさせる雰囲気に晒すことなく、ウェーハへのパーティクルの付着の抑制や、ウェーハの表面の性状の管理を適切に行うことのできるEFEMを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るEFEM1と、これと接続する処理装置6の天板等を取り除くことで内部が見えるようにし、これらEFEM1と処理装置6との関係を模式的に示した平面図である。また、
図2は、EFEM1の側面の壁を取り除くことで内部が見えるようにした側面図である。これら
図1及び2に示すように、EFEM1は、所定の受け渡し位置間でウェーハWの搬送を行うウェーハ搬送装置2と、このウェーハ搬送装置2を囲むように設けられた箱型の筐体3と、筐体3の前面側の壁(前面壁31)の外側に接続される複数(図中では3つ)のロードポート4〜4と、制御手段5とから構成されている。
【0027】
ここで、本願においては筐体3より見てロードポート4〜4が接続される側の向きを前方、前面壁31と対向する背面壁32側の向きを後方と定義し、さらに、前後方向及び垂直方向に直交する方向を側方と定義する。すなわち、3つのロードポート4〜4は側方に並んで配置されている。
【0028】
また、EFEM1は、
図1に示すように、背面壁32の外側に隣接して、処理装置6の一部を構成するロードロック室61が接続できるようになっており、EFEM1とロードロック室61との間に設けられた扉1aを開放することで、EFEM1内とロードロック室61とを連通した状態とすることが可能となっている。処理装置6としては種々様々なものを使用できるが、一般には、ロードロック室61と隣接して搬送室62が設けられ、さらに搬送室62と隣接して、ウェーハWに処理を行う複数(図中では3つ)の処理ユニット63〜63が設けられる構成となっている。搬送室62と、ロードロック室61や処理ユニット63〜63との間には、それぞれ扉62a,63a〜63aが設けられており、これを開放することで各々の間を連通させることができ、搬送室62内に設けられた搬送ロボット64を用いてロードロック室61及び処理ユニット63〜63の間でウェーハWを移動させることが可能となっている。
【0029】
ウェーハ搬送装置2は、
図1及び
図2に示すように、ウェーハWを載置して搬送するピックを備えたアーム部2aとこのアーム部2aを下方より支持し、アーム部を動作させるための駆動機構及び昇降機構を有するベース部2bとから構成されており、ベース部2bは、筐体3の前面壁31に支持部21及びガイドレール22を介して支持されている。そして、ウェーハ搬送装置2は筐体3内の幅方向に延在するガイドレール22に沿って移動できるようになっており、制御手段5がウェーハ搬送装置2の動作を制御することによって側方に並んだ各ロードポート4〜4に載置されたFOUP7に収容されているウェーハWをロードロック室61へ搬送すること及び、各処理ユニット63〜63にて処理が行われた後のウェーハWをFOUP7内へ再び搬送することが可能となっている。
【0030】
筐体3は、ウェーハ搬送装置2の四方を囲む前面壁31、背面壁32、側面壁33,34と、天井壁35、底壁36、さらに上記の筐体壁31〜35を支える支柱37a〜37dとを含んで構成され、前面壁31に設けられた開口31aにロードポート4〜4が、背面壁32に設けられた矩形状の開口32aにロードロック室61が接続されることで、内部で略閉止空間CSが形成されている。なお、上述した各部材は、部材間に内部のガスが流出する隙間を生じないよう精密に取り付けられているが、部材間にシール部材を設け、さらに筐体3内の気密性を高めるように構成してもよい。また、背面壁32に設けられた開口32aは、駆動機構1bを有し、上下に駆動する一般にゲートバルブと称される扉1a(
図3参照)によって閉止することが可能となっている。なお、図示及び説明を省略するが、側面壁33,34にも開口が設けられており、一方はウェーハWの位置調整に利用されるアライナが接続されるものとなっており、他方は通常時は閉じられたメンテナンス用の開口となっている。
【0031】
ロードポート4は扉4aを備えており、この扉4aがFOUP7に設けられた蓋部7aと連結してともに移動することで、FOUP7が略閉止空間CSに対して開放されるようになっている。FOUP7内には載置部が上下方向に多数設けられており、これによって多数のウェーハWを格納することができる。また、FOUP7内には通常窒素が充填されるとともに、制御手段5の制御によってロードポート4を介してFOUP7内の雰囲気を窒素置換することも可能となっている。
【0032】
制御手段5は、筐体3の天井壁35より上方の、天板38との間に位置する上部空間USに設けられたコントローラユニットとして構成され、ウェーハ搬送装置2の駆動制御、ロードポート4〜4によるFOUP7の窒素置換制御、扉1a,4a〜4aの開閉制御及び、筐体3内における窒素循環制御等を行っている。制御手段5は、CPU、メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成されるもので、メモリには予め処理に必要なプログラムが格納してあり、CPUは逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して所期の機能を実現するものとなっている。なお、窒素循環制御については後述する。
【0033】
略閉止空間CSは、
図4に示すように仕切り部材8によってウェーハ搬送装置2が駆動する空間であるウェーハ搬送室9と、ガス帰還路10とに仕切られている。そして、ウェーハ搬送室9とガス帰還路10とは、ウェーハ搬送室9の上部に幅方向に延在して設けられたガス送出口11とウェーハ搬送室9の下部に幅方向に延在して設けられたガス吸引口12とにおいてのみ連通しており、ガス送出口11とガス吸引口12とがウェーハ搬送室9内に下降気流を生じさせ、ガス帰還路10内に上昇気流を生じさせることで、略閉止空間CS内に
図4に矢印で示す循環路Ciを形成し、ガスが循環するようになっている。この時、ウェーハ搬送室9は、前面壁31、背面壁32(扉1aを含む、
図3参照)、ロードポート4(扉4aを含む)、側面壁33,34、底壁36及び仕切り部材8によって閉止された空間となる。なお、本実施形態においては、この略閉止空間CSに不活性ガスである窒素を循環させることとするが、循環させるガスはこれに限られるものではなく、他のガスを用いることもできる。
【0034】
次に、ガス帰還路10の構成を詳細に説明する。
図4に示すように、ガス帰還路10は底壁36、背面壁32、天井壁35及び仕切り部材8によって閉止された空間であり、ウェーハ搬送室9の下部においてガス吸引口12から吸引されたガスを、ウェーハ搬送室9上部のガス送出口11へ帰還させるために設けられる。
【0035】
帰還路10の背面側上部には略閉止空間CS内に窒素を導入するガス供給手段16が接続されており、制御手段5(
図2参照)からの命令に基づいて窒素の供給と供給の停止を制御することが可能となっている。そのため、窒素の一部が略閉止空間CSの外部に流出した場合には、ガス供給手段16が流出分の窒素を供給することによって、略閉止空間CS中の窒素雰囲気を一定に保つことができる。また、背面側下部には略閉止空間CS中のガスを排出するガス排出手段17が接続されており、制御手段5からの命令に基づいて動作して、図示しないシャッタを開放することによって略閉止空間CSの内部と外部に設けられたガス排出先とを連通させることが可能となっている。そして、上述したガス供給手段16による窒素の供給と併用することにより、略閉止空間CSを窒素雰囲気に置換することが可能となっている。なお、本実施形態においては、循環路Ciを循環させるガスを窒素とするため、ガス供給手段16は窒素を供給するが、他のガスを循環させる場合は、ガス供給手段16はその循環させるガスを供給する。
【0036】
また、ガス送出口11には第1の送風手段としてのファン13aとフィルタ13bとから構成されるファンフィルタユニット13(FFU13)が設けられており、略閉止空間CS内を循環するガス内に含まれるパーティクルを除去するとともに、ウェーハ搬送室9内へ下方に向けて送風することによってウェーハ搬送室9内に下降気流を生じさせている。なお、FFU13は、仕切り部材8に連結され水平方向に延びる支持部材18によって支持されている。
【0037】
一方、ガス吸引口12にはケミカルフィルタ14が接続されており、ウェーハ搬送室9内のガスはケミカルフィルタ14を介してガス帰還路10に流入するようになっている。上述したように、ウェーハ搬送装置2(
図2参照)を筐体3の前面壁31に支持部21及びガイドレール22を介して支持されるようにしているため、ガス吸引口12は、ウェーハ搬送装置2と干渉することなく、大きく上方に向かって開口したものすることが可能となっている。また、上述したように、ガス吸引口12は幅方向に延在して設けられているため、同様に幅方向に延在して設けられたガイドレール22よりウェーハ搬送装置2の駆動時にパーティクルが生じたとしても、このパーティクルを効果的に吸引させることが可能となっている。そして、ガス吸引口12にケミカルフィルタ14を設けることによって、処理装置6(
図1参照)における処理等で生じウェーハ搬送室9内に流入した分子状汚染物質を除去することを可能としている。さらに、ガス帰還路10内のケミカルフィルタ14よりも背面側には、第2の送風手段としてのファン15が幅方向に亘って設けられており(
図5参照)、当該ファン15がガス帰還路10の下流側、すなわち
図4の上方へ向けて送風を行うことによって、ガス吸引口12におけるガスの吸引力を生じさせるとともに、ケミカルフィルタ14を通過したガスを上方へ送出し、ガス帰還路10内に上昇気流を生じさせている。
【0038】
そして、上述したFFU13のファン13a及びファン15とによって、略閉止空間CS内のガスはウェーハ搬送室9内を下降し、ガス帰還路10内を上昇することで循環するようになっている。ガス送出口11は下方に向かって開口されていることから、FFU13によってガスが下方に向かって送り出されるとともに、ガス吸引口12は上方に向かって開口されていることから、FFU13によって生じさせた下降気流を乱すことなくそのまま下方に向かってガスを吸引させることができ、これらによって円滑なガスの流れを作り出すことができる。なお、ウェーハ搬送室9内に下降気流が生じていることで、ウェーハW上部に付着したパーティクルを除去するとともに、ウェーハ搬送室9内にパーティクルが浮遊することを防止している。
【0039】
ここで、ガス帰還路10のガスの流路を、
図6及び
図7を用いて詳細に説明する。
図6は、ガス帰還路10を拡大した斜視図であり、
図7は
図6に示すA−A位置及びB−B位置における断面を示す斜視図である。
【0040】
図6に示すように、仕切り部材8は上側仕切り部材81、下側仕切り部材82、中間部材83の3つの部材から構成されている。具体的には、上側仕切り部材81は背面壁32に沿うようにその内側に取り付けられる、中央に背面壁32の開口32aより大きな矩形の開口81aを有する平板状の部材であり、その側方端は支柱37c及び37dに接しており、上端は上述した支持部材18と連結している(
図4参照)。
【0041】
下側仕切り部材82は、後方へ向かって下段82a、中段82b、上段82cの3段を有する階段状の部材であり、底壁36上で支柱37c及び37dに前方より当接するよう幅方向に亘って形成されるとともに、幅方向両端に側板82dを備えることによって内部に閉止空間を形成している。そして、下段82aの上方にはケミカルフィルタ14が接続されるとともにガス吸引口12が形成され、上段82cは上側仕切り部材81の下端と接している(
図4参照)。
【0042】
中間部材83は、支柱37c及び37dと前後方向に同じ厚みを持つ形状とされており、背面壁32の開口32aの下方に配され正面視において上方へ向かうほど幅が増加する区間を有する分流部83aと、背面壁32の開口32aを避けるよう開口32aの左右と上方に配されることでH字型に構成されたH字部83bとが接続されることで、上側仕切り部材81の開口81aとほぼ同じ大きさの開口83cを形成している。分流部83aの内部は空洞となっており、この内部には、扉1a(
図3参照)を上面に設けられた開口83a1を通じて上下させることで開口32aを開閉する駆動機構1bが設けられている。また、分流部83aの上面と下側仕切り部材82の上段82cとは同じ高さとなっており、H字部83bの上端は天井壁35と当接している。
【0043】
このように構成された仕切り部材8によって、下側仕切り部材82の内部に設けられたファン15(
図4参照)によって上方へ向かうガスは、下側仕切り部材82の上段82cより下側では、
図7の断面S1が示すように、下側仕切り部材82、背面壁32、中間部材83の分流部83a及び支柱37c,37dとによって囲まれた流路を流れる。そして、下側仕切り部材82の上段82c(
図6参照)より上側では、
図7の断面S2が示すように、上側仕切り部材81、背面壁32、中間部材83のH字部83b及び支柱37cによって囲まれる流路(
図7の左側の流路)と、上側仕切り部材81、背面壁32、中間部材83のH字部83b及び支柱37cによって囲まれる流路(
図7の右側の流路)に分岐して流れるように構成されている。すなわち、
図5に示すように、区間H1において、ガスは幅方向に亘って流れることが可能となっている一方、区間H2においては、ガスは中間部材83の両側のみで流れることが可能になっている。
【0044】
このような構成をしていることによって、ガス帰還路10を大きな流路面積を確保しつつ筐体3の内側のウェーハ搬送装置2の駆動領域外のデッドスペースに設けることが可能となるため、外観を変更する必要がなく、ガス帰還路10を構成する各部材がロードポート4やロードロック室61などEFEM1外部の装置と干渉することを防止することが可能となる。具体的には、
図2に示すように、下側仕切り部材82の上段82aより下方、すなわち
図4及び
図5の区間H1はウェーハ搬送装置2のアーム部2aの移動する領域よりも下側に位置しているため、ウェーハ搬送装置2が筐体3の前面壁31に支持部21及びガイドレール22を介して支持されていることと相まって、下側仕切り部材82がベース部2bの形状に沿って階段状に前方に張り出すことを許容し、ガス吸引口12を大きく上方に向かって開口したものするとともに、ガス帰還路10の流路面積を確保することが可能となっている。一方、
図4及び
図5の区間H2は、ウェーハ搬送装置2のアーム部2aが移動する高さ領域を含んではいるものの、アーム部2aがウェーハWの搬送に要する開口32a周辺の空間を避けて、具体的には開口32aの左右の空間を利用してガス帰還路10の流路が設定されていることで、アーム部2aの移動空間を確保するとともに、ウェーハWの搬送経路に干渉しないようになっている。さらに、この開口32aの左右に設けた流路は、開口32aを閉止するための扉1a(
図3参照)及びこの扉1aを開閉する駆動機構1bをも避けつつ、支柱37c,37dを利用してこの支柱37c,37dの前後方向の厚みの範囲に設けるように構成している(
図7参照)。そして、筐体3の一部である背面壁32及び支柱37c,37dを用いてガス帰還路10を形成していることから、ガス帰還路10を構成する構造体に強度を持たせるとともに、部品点数を多くすることなく、製造コストの上昇を抑えることが可能となっている。
【0045】
次に、上記のように構成したEFEM1内において、窒素を循環させる窒素循環制御の動作を、
図4を用いて説明する。
【0046】
まず、初期段階として、制御手段5がガス排出手段17にガスを排出させつつ、ガス供給手段16に略閉止空間CS内に窒素を供給させることによって、大気雰囲気にあるEFEM1の略閉止空間CSを窒素雰囲気にパージする。この段階以降、制御手段5は循環路Ci内の窒素が外部へ漏れた場合、その漏れ量に応じてガス供給手段16に窒素の供給を行わせる。
【0047】
そして、このようにして窒素雰囲気になった略閉止空間CSにおいて、制御手段5がFFU13のファン13a及びファン15を駆動させることによって、循環路Ci内にガスの循環を生じさせる。この時、FFU13のフィルタ13b及びケミカルフィルタ14が循環するガス中のパーティクル及び分子状汚染物質を除去するため、ウェーハ搬送室9内は常に清浄な窒素の下降気流が生じている状態となる。
【0048】
このような状態となったEFEM1においては、ロードポート4に載置され窒素雰囲気にパージされたFOUP7とウェーハ搬送室9とを連通させ、ウェーハWの出し入れを行う際には、ウェーハ搬送室9とFOUP7はともに同じ窒素雰囲気であり、ウェーハ搬送室9内の窒素も清浄に維持されているため、FOUP7内にパーティクルや分子状汚染物質が入らないようFOUP7内をウェーハ搬送室9内に対して陽圧にする必要がなく、FOUP7内にパージする窒素の消費量を抑えることができる。
【0049】
また、ウェーハ搬送室9とロードロック室61(
図1参照)との間に設けられた扉1aを開放することでこれらウェーハ搬送室9とロードロック室61とを連通させ、ロードロック室61との間でウェーハWの出し入れを行う際には、処理装置6における処理によってウェーハWに付着した、あるいはロードロック室61内に存在するパーティクル及び分子状汚染物質がウェーハ搬送室9内に流入する可能性があるものの、これらのパーティクル及び分子状汚染物質はウェーハ搬送室9内の下降気流によって下方へ流れ、ケミカルフィルタ14及びFFU13のフィルタ13bによってガス帰還路10を通過する間に浄化されて、再びウェーハ搬送室9内にパーティクル及び分子状汚染物質が流れることがないため、搬送中のウェーハWへの悪影響を有効に軽減することが可能となっている。
【0050】
以上のように、本実施形態におけるEFEM1は、壁面である前面壁31に設けられた開口31aにロードポート4〜4が接続されるとともに、壁面である背面壁32に設けられた開口32aに処理装置6が接続されることで略閉止されたウェーハ搬送室9を内部に構成する筐体3と、ウェーハ搬送室9内に配設され、ロードポート4〜4に載置されたFOUP7〜7と処理装置6との間でウェーハWの搬送を行うウェーハ搬送装置2と、ウェーハ搬送室9の上部に設けられ、ウェーハ搬送室9内にガスを送出するガス送出口11と、ウェーハ搬送室9の下部に設けられ、ウェーハ搬送室9内のガスを吸引するガス吸引口12と、ガス吸引口12から吸引されたガスをガス送出口11へ帰還させるガス帰還路10と、ガス送出口11に設けられ、送出するガスに含まれるパーティクルを除去するフィルタ13bを備えたFFU13とを具備し、ウェーハ搬送室9に下降気流を生じさせるとともにガス帰還路10を介してガスを帰還させることによって、ウェーハ搬送室9内の窒素を循環させるように構成したものである。
【0051】
このように構成しているため、ウェーハ搬送室9に下降気流を生じさせるとともにガス帰還路10を通じてガスを循環させることで、ウェーハ搬送室9が略閉止された空間となっていることと相まって、ウェーハ搬送室9内を窒素雰囲気下に維持することができる。そのため、ウェーハWの搬送を外気にさらすことなく行うことができ、パーティクルの付着を抑制することが可能となっている。また、ガス送出口11にフィルタ13bを備えたFFU13が設けられていることで、窒素を循環させる間にパーティクルを除去することが可能となる。さらに、ウェーハ搬送室9に下降気流が生じていることで、ウェーハW上部に付着したパーティクルを除去するとともに、ウェーハ搬送室9内にパーティクルが浮遊することを防止することが可能である。また、窒素を循環させることによって窒素の消費を抑制し、コストを削減することが可能となっている。
【0052】
また、筐体3の背面壁32と背面壁32の内側に設けた仕切り部材8との間の空間をガス帰還路9の一部とするとともに、ウェーハ搬送室9とガス帰還路10とが仕切り部材8によって分離されるように構成しているため、外観を変更することなく大きな流路面積を確保し、ロードロック室61などEFEM1外部の装置と干渉することを防止するとともに、部品点数の増加を抑えて製造コストの上昇を抑えることが可能となっている。
【0053】
さらに、ロードポート4〜4を接続する開口31aと処理装置6を接続する開口32aとが筐体3の対向する位置に設けられており、ガス帰還路10がガス吸引口12から処理装置6を接続する開口32aの両側を経由してガス送出口11に連続するように構成されているため、ウェーハ搬送装置2の駆動領域外のデッドスペースを有効に利用し、ウェーハWの搬送を妨げることを防止しつつガスの流量を確保することが可能となっている。
【0054】
また、ガス送出口11に第1の送風手段であるファン13bを備えたFFU13が接続されるとともに、ガス吸引口12に第2の送風手段であるファン15が接続されており、FFU13によりガス送出口11からウェーハ搬送室9内にガスを送出させ、ファン15よりガス吸引口12からウェーハ搬送室9内のガスを吸引するよう構成しているため、ウェーハ搬送室9とガス帰還路とを流れるガスの循環を円滑に行うことが可能である。
【0055】
加えて、ウェーハ搬送室9内に窒素を供給するガス供給手段16と、ウェーハ搬送室9内よりガスを排出するためのガス排出手段17とをさらに備えるよう構成していることから、ウェーハ搬送室9内を適切なガス雰囲気に置換でき、酸素ガスや水分等がウェーハW表面に付着してウェーハWの処理を阻害し、歩留りが低下することを防止するとともに、ウェーハ搬送室9内の窒素の一部が外部に流出した場合には、流出分の窒素を供給することで、ウェーハ搬送室9内の状態を一定に保つことができる。
【0056】
また、ガス吸引口12にケミカルフィルタ14が設けられ、ウェーハ搬送室9内のガスはケミカルフィルタ14を介してガス帰還路10に流入するよう構成しているため、処理装置6における処理等で生じウェーハ搬送室9内に流入した分子状汚染物質を除去することが可能となっている。
【0057】
加えて、ウェーハ搬送装置2が筐体3の前面壁31に支持されるよう構成されているため、ウェーハ搬送装置2とケミカルフィルタ14が設けられたガス吸引口12とを互いに干渉することなく配置するとともに、ウェーハ搬送室9内の下降気流を妨げず、気流の乱れによってパーティクルが浮遊することを防止することが可能となっている。
【0058】
そして、ウェーハ搬送室9内を循環するガスが不活性ガスである窒素であるため、酸素や湿気等によるウェーハW表面の性状の変化を抑制し、歩留まりの低下を防止することが可能となっている。
【0059】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、ロードポート4〜4上に設けたFOUP7〜7とロードロック室61との間で、ウェーハWの搬送を行うものとしていたが、FOUP7〜7間での受け渡しを行わせる場合などにも用いることができる。
【0061】
また、ウェーハ搬送装置2の搬送対象としてはウェーハWを用いるものを前提としていたが、本発明はガラス基板等様々な精密加工品を対象とするEFEM1に用いることができる。
【0062】
また、上述の実施形態では、所定の軌道を構成するガイドレール22は筐体3の前面壁31に支持されていたが、ガス吸引口12と干渉しないのであれば、筐体3のいずれに支持されていてもよく、例えば、ガイドレール22を底壁36に設け、ウェーハ搬送装置2が底壁36に支持されるよう構成することも可能である。また、ウェーハ搬送装置2の移動方向の規制が可能であれば、ガイドレール22に限らず、ガイドローラやワイヤ等の他の手段によって軌道を構成することもできる。
【0063】
さらに、ウェーハ搬送装置2としては、リンク式アームロボットや、SCARA型多関節ロボットに限ることなく多様なものを使用することもできる。
【0064】
また、上述の実施形態においては、ガス供給手段16がガス帰還路10の背面側上部に設けられ、ガス排出手段17がガス帰還路10の背面側下部に設けられていたが、これらガス供給手段16とガス排出手段17の設置位置は限定されるものではなく、循環路Ci中の任意の場所に設置することができる。
【0065】
さらには、上述の実施形態ではガス排出手段17によるガスの排出とガス供給手段16による窒素の供給を同時に行ったが、まず吸引機構を備えたガス排出手段17がガスを排出させることで略閉止空間CS内を負圧とし、その後ガス供給手段16に略閉止空間CS内に窒素を供給させることによって、大気雰囲気にある略閉止空間CSを窒素雰囲気とするようにしてもよい。こうすることによって、より効率よく窒素のパージを行うことができる。
【0066】
また、上述の実施形態ではEFEM1は1つのロードロック室61と接続されていたが、2つ以上のロードロック室61と接続するような構成も考えられる。この場合、背面壁32には接続するロードロック室61の数に応じて開口32aを2つ以上設けることとなるため、ガス帰還路10はそれらの開口32aを避けるように3つ以上に分岐して形成すればよい。
【0067】
さらに、上述の実施形態においては、ガス帰還路10はEFEM1の筐体3の内部に設けられていたが、筐体3の外部にダクトを設けることによってガス帰還路10を構成してもよい。この場合においても、ダクトがロードロック室61と干渉することを防ぎつつ広い流路を確保するため、ダクトはロードロック室61と接続する開口32aの左右に分岐して設けるのが好ましい。なお、ガス帰還路10の形状については、これ以外にも周囲の装置形状に応じて様々な形状をとることができる。
【0068】
また、上述した実施形態では、ウェーハW周辺の雰囲気を置換するためのガスとして窒素を使用していたが、処理に応じて乾燥空気やアルゴン等種々様々なガスを用いることができる。
【0069】
なお、上述した実施形態におけるEFEM1に、略閉止空間CS内の湿度を低下させるドライヤ、温度を低下させるクーラ、ウェーハWの除電を行うイオナイザなどを設け、ウェーハ搬送室9内の環境をさらに向上させることも可能である。
【0070】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。