特許第6349791号(P6349791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6349791-短絡判定装置及び短絡検出方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349791
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】短絡判定装置及び短絡検出方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20180625BHJP
   H03F 3/217 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H03F1/52 Z
   H03F3/217
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-43795(P2014-43795)
(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-170951(P2015-170951A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村井 直史
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−060278(JP,A)
【文献】 特開2012−235399(JP,A)
【文献】 特開2009−200551(JP,A)
【文献】 特開2013−012973(JP,A)
【文献】 特開2012−256989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00−H03F3/72
H03G1/00−H03G99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した前記検査信号が前記増幅回路の入力端子に入力されている間に、前記増幅回路の電源の電圧値を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記電圧値に基づいて、前記出力端子が前記短絡状態にあるか否かを判定する判定手段と
を備え
前記増幅回路は、ハーフブリッジ型のD級アンプであり、
前記検査信号は、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号であり、
前記検査信号は、前記出力端子に到達した時点での信号レベルが、(i)前記検査信号が前記入力端子に入力されることで、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2信号レベルであって且つ(ii)前記検査信号の前記入力端子への入力に起因した前記増幅回路の破壊を抑止することが可能な第2信号レベルである
ことを特徴とする短絡判定装置。
【請求項2】
前記検査信号は、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記検査信号が前記入力端子に入力されることで前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2周波数の交流信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の短絡判定装置。
【請求項3】
前記検査信号は、当該検査信号が前記出力端子に到達した時点での当該検査信号の信号レベルが、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1信号レベル以下となる交流信号を含む
ことを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載の短絡判定装置。
【請求項4】
増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する生成工程と、
前記生成工程において生成された前記検査信号が前記増幅回路の入力端子に入力されている間に、前記増幅回路の電源の電圧値を検出する検出工程と、
前記検出工程において検出された前記電圧値に基づいて、前記出力端子が前記短絡状態にあるか否かを判定する判定工程と
を備え
前記増幅回路は、ハーフブリッジ型のD級アンプであり、
前記検査信号は、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号であり、
前記検査信号は、前記出力端子に到達した時点での信号レベルが、(i)前記検査信号が前記入力端子に入力されることで、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2信号レベルであって且つ(ii)前記検査信号の前記入力端子への入力に起因した前記増幅回路の破壊を抑止することが可能な第2信号レベルである
ことを特徴とする短絡検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定する短絡判定装置及び短絡検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅回路の出力端子が短絡状態にある場合に増幅回路の破壊を防止する保護回路の一例が特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、増幅回路(デジタルアンプ)の正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれが検出された場合に、増幅回路の破壊を防止する保護動作を行う保護回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−60278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出する間に、増幅回路の入力端子に具体的にどのような電流(言い換えれば、信号)が入力されているかが何ら開示されていない。このため、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出することで保護動作を行う場合であっても、増幅回路に入力される電流によっては、増幅回路が破壊されてしまいかねないという技術的問題点が生ずる。
【0005】
例えば、増幅回路の入力端子には、通常、何らかの音声を示す音声信号が入力されている。ここで、特許文献1では、増幅回路の入力端子に通常入力される音声信号は、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出することで保護動作を行うために用意した特別な信号ではない。つまり、特許文献1では、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出する際には、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出するか否かに関わらず通常入力される音声信号が、増幅回路の入力端子に受動的に入力される。言い換えれば、特許文献1では、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出する際に、当該中点電位のずれを検出することで保護動作を行うために用いられる特別な信号が、増幅回路の入力端子に能動的に入力されることはない。このため、特許文献1では、入力される音声信号によっては、正の電源電圧と負の電源電圧との間の中点電位のずれを検出することで保護動作を行う場合であっても、増幅回路に入力される音声信号によっては、増幅回路が破壊されてしまいかねないという技術的問題点が生ずる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定することが可能な短絡判定装置及び短絡検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の短絡判定装置は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する生成手段と、前記生成手段が生成した前記検査信号が前記増幅回路の入力端子に入力されている間に、前記増幅回路の電源の電圧値を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記電圧値に基づいて、前記出力端子が前記短絡状態にあるか否かを判定する判定手段とを備え、前記増幅回路は、ハーフブリッジ型のD級アンプであり、前記検査信号は、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号であり、前記検査信号は、前記出力端子に到達した時点での信号レベルが、(i)前記検査信号が前記入力端子に入力されることで、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2信号レベルであって且つ(ii)前記検査信号の前記入力端子への入力に起因した前記増幅回路の破壊を抑止することが可能な第2信号レベルであることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために本発明の短絡判定方法は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する生成工程と、前記生成工程において生成された前記検査信号が前記増幅回路の入力端子に入力されている間に、前記増幅回路の電源の電圧値を検出する検出工程と、前記検出工程において検出された前記電圧値に基づいて、前記出力端子が前記短絡状態にあるか否かを判定する判定工程とを備え、前記増幅回路は、ハーフブリッジ型のD級アンプであり、前記検査信号は、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号であり、前記検査信号は、前記出力端子に到達した時点での信号レベルが、(i)前記検査信号が前記入力端子に入力されることで、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2信号レベルであって且つ(ii)前記検査信号の前記入力端子への入力に起因した前記増幅回路の破壊を抑止することが可能な第2信号レベルであることを特徴とする。
【0009】
本発明のこのような作用及び利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例の増幅システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】SP出力が短絡状態にあるか否かを判定する動作(つまり、短絡判定動作)の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態として、本発明の短絡判定装置及び短絡検出方法の実施形態について順に説明する。
【0012】
(短絡判定装置の実施形態)
<1>
本実施形態の短絡判定装置は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する生成手段と、前記生成手段が生成した前記検査信号が前記増幅回路の入力端子に入力されている間に、前記増幅回路の電源の電圧値を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記電圧値に基づいて、前記出力端子が前記短絡状態にあるか否かを判定する判定手段とを備える。
【0013】
本実施形態の短絡判定装置によれば、生成手段は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する。つまり、本実施形態では、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かが判定される際には、増幅回路に通常入力される音声信号に代えて、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために特別に用いられる検査信号が生成される。言い換えれば、本実施形態では、生成手段は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かが判定される際には、特別な検査信号を能動的に生成する。
【0014】
検出手段は、増幅回路の電源の電圧値(典型的には、端子間電圧の値)を検出する。特に、検出手段は、生成手段が生成した検査信号が増幅回路の入力端子に入力されている間に、増幅回路の電源の電圧値を検出する。
【0015】
判定手段は、検出手段が検出した電圧値に基づいて、出力端子が短絡状態にあるか否かを判定する。例えば、判定手段は、検出手段が検出した電圧値が所定値となる場合には、出力端子が短絡状態にあると判定してもよい。一方で、例えば、判定手段は、検出手段が検出した電圧値が所定値とならない場合には、出力端子が短絡状態にないと判定してもよい。
【0016】
ここで、増幅回路の電源の電圧値は、増幅回路に発生する「パンピング現象」に起因して変動する。このようなパンピング現象は、増幅回路の出力端子が短絡状態にある場合に特に顕著に発生する。従って、判定手段は、検出手段が検出した電圧値がパンピング現象の発生を直接的に又は間接的に示す所定値となる場合には、出力端子が短絡状態にあると判定することができる。一方で、例えば、判定手段は、検出手段が検出した電圧値がパンピング現象の発生を直接的に又は間接的に示す所定値とならない場合には、出力端子が短絡状態にないと判定することができる。このように、判定手段は、増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0017】
本実施形態では特に、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かが判定される際には、増幅回路の入力端子には、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを検出するために用いられる特別な検査信号が能動的に入力される。このため、本実施形態では、増幅回路に通常入力される音声信号(つまり、その特性によっては増幅回路の破壊を引き起こしかねない音声信号)が増幅回路の入力端子に受動的に入力される場合と比較して、増幅回路の破壊(例えば、電気的な破壊)が好適に防止される。
【0018】
このように、本実施形態の短絡判定装置は、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定することができる。
【0019】
<2>
本実施形態の短絡判定装置の他の態様では、前記検査信号は、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号、及び、直流信号のうちの少なくとも一方を含む。
【0020】
この態様によれば、第1周波数以下の交流信号が入力端子に入力される場合には、第1周波数以下の交流信号とは異なる信号(但し、直流信号を除く)が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下でパンピング現象が相対的に発生し易くなる。このため、短絡判定装置は、このような検査信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0021】
尚、上述したように、本実施形態では、検査信号が入力端子に入力されている間に増幅回路にパンピング現象が発生するか否かに応じて、出力端子が短絡状態にあるか否かが判定される。このことを考慮すれば、第1周波数以下の交流信号は、出力端子が短絡状態にある状況下で入力端子に入力されることで増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な交流信号であることが好ましい。ここで、本願発明者等の研究により、出力端子が短絡状態にある状況下で入力端子に入力されることで増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な交流信号の周波数は、増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量に応じて変動し得ることが判明している。このため、増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号が入力端子に入力されることで、増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量を考慮することなく定まる他の周波数の交流信号が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下で増幅回路にパンピング現象が相対的に発生し易くなる。従って、短絡判定装置は、増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1周波数以下の交流信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0022】
<3>
本実施形態の短絡判定装置の他の態様では、前記検査信号は、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記検査信号が前記入力端子に入力されることで前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2周波数の交流信号、及び、直流信号のうちの少なくとも一方を含む。
【0023】
この態様によれば、第2周波数の交流信号が入力端子に入力される場合には、第2周波数以下の交流信号とは異なる信号(但し、直流信号を除く)が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下でパンピング現象が相対的に発生し易くなる。このため、短絡判定装置は、このような検査信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0024】
尚、第2周波数は、典型的には上述した第1周波数以下の周波数となる。
【0025】
<4>
本実施形態の短絡判定装置の他の態様では、前記検査信号は、直流信号を含む。
【0026】
この態様によれば、直流信号が入力端子に入力される場合には、直流信号とは異なる信号が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下でパンピング現象が相対的に発生し易くなる。このため、短絡判定装置は、このような検査信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0027】
<5>
本実施形態の短絡判定装置の他の態様では、前記検査信号は、前記出力端子に到達した時点での信号レベルが、前記増幅回路の前記電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1信号レベル以下となる交流信号及び直流信号のうちの少なくとも一方を含む。
【0028】
この態様によれば、出力端子に到達した時点での信号レベルが第1信号レベル以下となる交流信号が入力端子に入力される場合には、出力端子に到達した時点での信号レベルが第1信号レベルより大きい交流信号が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下でパンピング現象が相対的に発生し易くなり且つ増幅回路の破壊が好適に防止される。或いは、出力端子に到達した時点での信号レベルが第1信号レベル以下となる直流信号が入力端子に入力される場合には、出力端子に到達した時点での信号レベルが第1信号レベルより大きい直流信号が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下でパンピング現象が相対的に発生し易くなり且つ増幅回路の破壊が好適に防止される。このため、短絡判定装置は、このような検査信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0029】
尚、上述したように、本実施形態では、検査信号が入力端子に入力されることで増幅回路にパンピング現象が発生するか否かに応じて、出力端子が短絡状態にあるか否かが判定される。このことを考慮すれば、出力端子に到達した時点での信号レベルが第1信号レベル以下となる信号(つまり、交流信号又は直流信号)は、出力端子が短絡状態にある状況下で入力端子に入力されることで増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な信号であることが好ましい。ここで、本願発明者等の研究により、出力端子が短絡状態にある状況下で入力端子に入力されることで増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な信号の信号レベルは、増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量に応じて変動し得ることが判明している。このため、出力端子に到達した時点での信号レベルが増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1信号レベル以下となる信号が入力端子に入力されることで、出力端子に到達した時点での信号レベルが増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量を考慮することなく定まる他の信号レベルの信号が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下で増幅回路にパンピング現象が相対的に発生し易くなる。従って、短絡判定装置は、出力端子に到達した時点での信号レベルが増幅回路の電源に付随するコンデンサの容量に応じて定まる第1信号レベル以下となる信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0030】
<6>
本実施形態の短絡判定装置の他の態様では、前記検査信号は、前記出力端子に到達した時点での信号レベルが、(i)前記検査信号が前記入力端子に入力されることで、前記出力端子が前記短絡状態にある状況下で前記増幅回路にパンピング現象を発生させることが可能な第2信号レベルであって且つ(ii)前記検査信号の前記入力端子への入力に起因した前記増幅回路の破壊を抑止することが可能な第2信号レベルとなる交流信号及び直流信号のうちの少なくとも一方を含む。
【0031】
この態様によれば、出力端子に到達した時点での信号レベルが第2信号レベルとなる信号(つまり、交流信号又は直流信号)が入力端子に入力される場合には、出力端子に到達した時点での信号レベルが第2信号レベルとは異なる信号レベルの信号が入力端子に入力される場合と比較して、出力端子が短絡状態にある状況下でパンピング現象が相対的に発生し易くなる。このため、短絡判定装置は、このような検査信号が入力端子に入力されている間に増幅回路の電源の電圧値を監視することで、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0032】
尚、第2信号レベルは、典型的には上述した第1信号レベル以下の信号レベルとなる。
【0033】
<7>
本実施形態の短絡判定装置の他の態様では、前記増幅回路は、ハーフブリッジ型のD級アンプである。
【0034】
この態様によれば、判定手段は、ハーフブリッジ型のD級アンプに発生し易いパンピング現象を利用して、出力端子が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0035】
(短絡検出方法の実施形態)
<8>
本実施形態の短絡検出方法は、増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる所定の検査信号を生成する生成工程と、前記生成工程において生成された前記検査信号が前記増幅回路の入力端子に入力されている間に、前記増幅回路の電源の電圧値を検出する検出工程と、前記検出工程において検出された前記電圧値に基づいて、前記出力端子が前記短絡状態にあるか否かを判定する判定工程とを備える。
【0036】
本実施形態の短絡検出方法によれば、上述した本実施形態の短絡判定装置が有する各種利益と同様の利益を享受することが可能となる。尚、上述した本実施形態の短絡判定装置における各種態様に対応して、本実施形態の短絡検出方法も各種態様を採ることが可能である。
【0037】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の短絡判定装置は、生成手段、検出手段及び判定手段を備える。本実施形態の短絡検出方法は、生成工程、検出工程及び判定工程を備える。従って、増幅回路の破壊をより好適に防止しながら増幅回路の出力端子が短絡状態にあるか否かを判定することができる。
【実施例】
【0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の短絡判定装置及び短絡検出方法の実施例を説明する。
【0040】
(1)増幅システムの構成
はじめに、図1を参照しながら、本実施例の増幅システム100の構成について説明する。図1は、本実施例の増幅システム100の構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
図1に示すように、増幅システム100は、「増幅回路」の一具体例であるアンプ部1と、「短絡判定装置」の一具体例である短絡検出部3とを備えている。
【0042】
アンプ部1は、ハーフブリッジ型のD級アンプである。但し、アンプ部1は、ハーフブリッジ型のD級アンプとは異なるアンプであってもよい。
【0043】
アンプ部1は、「入力端子」の一具体例であるSG入力11と、プリアンプ12と、コンパレータ13と、パワーアンプ14と、リレー15と、「電源」の一具体例である第1電源16aと、「電源」の一具体例である第2電源16bと、「コンデンサ」の一具体例である第1コンデンサ17aと、「コンデンサ」の一具体例である第2コンデンサ17bと、「出力端子」の一具体例であるSP出力18とを備えている。
【0044】
SG入力11は、アンプ部1が増幅するべき音声信号が入力される入力端子である。本実施例では特に、SG入力11には、音声信号に加えて又は代えて、後述する短絡判定装置3が生成した検査信号が入力される。尚、アンプ部1が複数のチャンネルを備えている場合には、アンプ部1は、複数のチャンネルに夫々対応する複数のSG入力11を備えていてもよい。
【0045】
プリアンプ12は、SG入力11に入力された信号(つまり、音声信号又は検査信号)の信号レベルを調整する。
【0046】
コンパレータ13は、SG入力11に入力された信号(つまり、音声信号又は検査信号)の信号レベルと所定のキャリア信号(例えば、三角波信号)の信号レベルとを比較することで、スイッチ制御信号(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号)を生成する。尚、スイッチ制御信号は、パワーアンプ14(特に、第1スイッチング素子14b及び第2スイッチング素子14c)の動作状態を制御するための制御信号である。コンパレータ13は、生成したスイッチ制御信号を、パワーアンプ14に出力する。
【0047】
パワーアンプ14は、SG入力11に入力された信号(つまり、音声信号又は検査信号)の信号レベルを調整する(典型的には、増幅する)。このようなパワーアンプ14は、反転器14aと、第1スイッチング素子14bと、第2スイッチング素子14cと、LPF(Low Pass Filter)14dとを備える。
【0048】
反転器14aは、コンパレータ13から出力されるスイッチ制御信号の信号レベルを反転させる。反転器14aは、信号レベルを反転させたスイッチ制御信号の信号レベルを、第2スイッチング素子14cに出力する。
【0049】
第1スイッチング素子14bは、コンパレータ13から出力されるスイッチ制御信号に基づいてスイッチング状態を切り替える。第2スイッチング素子14cは、反転器14から出力されるスイッチ制御信号に基づいてスイッチング状態を切り替える。つまり、第1スイッチング素子14b及び第2スイッチング素子14cは、互いに相補的にスイッチング状態を切り替える。その結果、SG入力11に入力された信号(つまり、音声信号又は検査信号)の信号レベルが増幅される。
【0050】
LPF14dは、第1スイッチング素子14b及び第2スイッチング素子14cのスイッチング状態の切り替えによって信号レベルが増幅された信号の高周波ノイズを除去するフィルタである。LPF14dは、コイル141d及びコンデンサ142dを含む。LPF14dは、高周波ノイズを除去した信号を、リレー15に出力する。
【0051】
尚、パワーアンプ14がプリアンプ12の機能を有していてもよい。この場合、アンプ部1は、プリアンプ12を備えていなくてもよい。
【0052】
リレー15は、パワーアンプ14とSP出力18との間の電気的な接続状態を切り替えるための素子である。リレー15が閉状態にある場合には、パワーアンプ14とSP出力18との間の電気的な接続状態は、導通状態にある。従って、パワーアンプ14から出力される信号は、SP出力18を介して、SP出力18に接続された外部負荷(例えば、スピーカ)SPに出力される。一方で、リレー15が開状態にある場合には、パワーアンプ14とSP出力18との間の電気的な接続状態は、非導通状態にある。従って、パワーアンプ14から出力される信号は、SP出力18に到達することはない。
【0053】
SP出力18は、アンプ部1によって増幅された信号(典型的には、音声信号)を出力するための出力端子である。本実施例では、SP出力18には、外部負荷(例えば、スピーカ)SPが接続されているものとする。アンプ部1が複数のチャンネルを備えている場合には、アンプ部1は、複数のチャンネルに夫々対応する複数のSP出力18を備えていてもよい。
【0054】
続いて、短絡判定装置3は、「生成手段」の一具体例である検査信号生成器31と、「検出手段」の一具体例である第1電圧検出器32aと、「検出手段」の一具体例である第2電圧検出器32bと、コントローラ33と、リレー駆動回路34とを備えている。
【0055】
検査信号生成器31は、後述するコントローラ33が備える信号制御部331の制御下で、検査信号を生成する。ここで、検査信号は、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる特別な信号(例えば、音声信号又は電気信号)である。検査信号生成器31が生成した検査信号は、SG入力11に入力される。
【0056】
第1電圧検出器32aは、第1電源16aの端子間電圧V1を検出する。第2電圧検出器32bは、第2電源16bの端子間電圧V2を検出する。
【0057】
コントローラ33は、短絡判定装置3全体の動作を制御する制御部である。本実施例では、コントローラ33は、コンピュータプログラムがコントローラ33によって実行されることでコントローラ33内部に論理的に実現される処理ブロック又はコントローラ33内部の物理的な処理回路として、信号制御部331と、「判定手段」の一具体例である短絡判定部332とを備えている。
【0058】
信号制御部331は、検査信号生成器31が所望の検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御する。尚、信号制御部331の制御の下に生成される検査信号については、後に詳述する。
【0059】
短絡判定部332は、第1電圧検出器32a及び第2電圧検出器32bのうちの少なくとも一方の検出結果(つまり、端子間電圧V1及び端子間電圧V2のうちの少なくとも一方)に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定する。具体的には、SP出力18が短絡状態にある場合には、アンプ部1にパンピング現象が発生し易くなる。パンピング現象が発生すると、パンピング現象が発生していない場合と比較して、端子間電圧V1及び端子間電圧V2のうちの少なくとも一方が大きく変動する。従って、端子間電圧V1及び端子間電圧V2のうちの少なくとも一方が異常値を示している場合には、パンピング現象が発生しており、結果として、SP出力20が短絡状態にあると推定される。このように、短絡判定部332は、端子間電圧V1及び端子間電圧V2のうちの少なくとも一方に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定することができる。
【0060】
本実施例では特に、短絡判定部332は、検査信号がSG入力11に入力されている間の第1電圧検出器32a及び第2電圧検出器32bのうち少なくとも一方の検出結果に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定する。
【0061】
リレー駆動回路34は、短絡判定部332の判定結果に基づいて、リレー15を制御する。具体的には、リレー駆動回路34は、短絡判定部332によってSP出力18が短絡状態にあると判定される場合には、リレー15が開状態になるように、リレー15を制御する。一方で、リレー駆動回路34は、短絡判定部332によってSP出力18が短絡状態にないと判定される場合には、リレー15が閉状態になるように、リレー15を制御する。
【0062】
以上説明した短絡判定装置3は、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定することができる。以下、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定する動作(以降、適宜“短絡検出動作”と称する)の流れについて更に説明を加える。
【0063】
(2)短絡判定動作の流れ
続いて、図2を参照しながら、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定する動作(つまり、短絡判定動作)の流れについて説明する。図2は、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定する動作(つまり、短絡判定動作)の流れを示すフローチャートである。
【0064】
尚、以下に示す短絡検出動作は、アンプ部1に通常の音声信号が入力される前に行われることが好ましい。例えば、短絡検出動作は、アンプ部1が動作を開始する際の初期動作の一部として行われることが好ましい。
【0065】
図2に示すように、コントローラ33は、SG入力11に入力される検査信号がSP出力18まで到達することができるように、アンプ部1の動作パラメータを適宜設定する(ステップS11)。例えば、コントローラ33は、検査信号がSP出力18まで到達することができるように、アンプ部1内の信号経路の帯域を規定する動作パラメータを適宜設定してもよい。
【0066】
尚、コントローラ33は、検査信号生成器31が生成する検査信号の特性(例えば、周波数や、信号レベル等)に基づいて、動作パラメータを設定することが好ましい。例えば、コントローラ33は、検査信号生成器31が生成する検査信号の周波数に基づいて、当該周波数の検査信号がSP出力18まで到達することができるように、アンプ部1の動作パラメータを適宜設定してもよい。
【0067】
ステップS11の動作に続いて、相前後して又は並行して、コントローラ33は、SG入力11に入力される検査信号がSP出力18まで到達した時点での当該検査信号の信号レベル(以降、適宜“出力信号レベル)と称する”が規定の信号レベルとなるように、プリアンプ12(更には、必要に応じて更にパワーアンプ14)の増幅率を適宜調整する(ステップS12)。例えば、コントローラ33は、検査信号の出力信号レベルが、SP出力18が短絡状態にあるアンプ部1にパンピング現象を発生させることが可能な程度に大きい信号レベルとなるように、プリアンプ12の増幅率を適宜調整してもよい。更には、例えば、コントローラ33は、検査信号の出力信号レベルが、アンプ部1が備える各種素子の破壊を防止することが可能な(言い換えれば、破壊しない)程度に小さい信号レベルとなるように、プリアンプ12の増幅率を適宜調整してもよい。本実施例では、例えば、コントローラ33は、検査信号の出力信号レベルが1Vp−p程度となる(つまり、出力信号レベルのピーク値とボトム値との差分が1V程度になる)ように、プリアンプ12の増幅率を適宜調整してもよい。
【0068】
尚、コントローラ33は、検査信号生成器31が生成する検査信号の特性(例えば、周波数や、信号レベル等)に基づいて、プリアンプ12の増幅率を調整することが好ましい。例えば、コントローラ33は、検査信号生成器31が生成する検査信号の信号レベルに基づいて、検査信号の出力信号レベルが規定の信号レベルとなるように、プリアンプ12の増幅率を適宜調整してもよい。
【0069】
その後、信号制御部331は、検査信号を生成するように検査信号生成器31を制御する(ステップS13)。このとき、信号制御部331は、検査信号として、所定周波数以下の交流信号を生成するように検査信号生成器31を制御することが好ましい。
【0070】
所定周波数以下の交流信号が検査信号として生成される理由は、以下のとおりである。まず、本実施例では、上述したように、アンプ部1にパンピング現象が発生しているか否か(つまり、端子間電圧V1及び端子間電圧V2のうちの少なくとも一方が異常値を示すか否か)の判定結果に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かが判定される。ここで、SG入力11に入力される検査信号の周波数が小さければ小さいほど、SP出力18が短絡状態にあるアンプ部1にパンピング現象が発生し易くなる。このため、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定し易くするためには、アンプ部1にパンピング現象が発生し易くなればよい。アンプ部1にパンピング現象が発生し易くなるためには、できるだけ小さい周波数の交流信号が検査信号として生成されることが好ましい。このため、本実施例では、所定周波数以下の交流信号を検査信号として生成される。
【0071】
このような所定周波数以下の交流信号を生成する理由を考慮すれば、信号制御部331は、SG入力11に入力されることでSP出力18が短絡状態にあるアンプ部1にパンピング現象を発生させることが可能な程度の大きさの周波数の交流信号を検査信号として生成するように、検査信号生成器31を制御してもよい。本実施例では、例えば、信号制御部331は、検査信号として、2Hz以下の(或いは、1Hzから2Hzの)周波数の交流信号を生成するように、検査信号生成器31を制御してもよい。
【0072】
ここで、SG入力11に入力されることでSP出力18が短絡状態にあるアンプ部1にパンピング現象を発生させることが可能な交流信号の周波数は、第1電源16aに付随する第1コンデンサ17a及び第2電源16bに付随する第2コンデンサ17bのうちの少なくとも一方の容量に応じて変動し得る。従って、信号制御部331は、第1コンデンサ17a及び第2コンデンサ17bのうちの少なくとも一方の容量に応じて定まる周波数の(又は、当該周波数以下の)検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御することが好ましい。但し、信号制御部331は、第1コンデンサ17a及び第2コンデンサ17bのうちの少なくとも一方の容量を考慮することなく、上述した条件を満たす周波数としてとして予め定められている周波数の(又は、当該周波数以下の)検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御してもよい。
【0073】
尚、信号制御部331は、ステップS12で設定したプリアンプ12の増幅率を考慮した上で、検査信号生成器31が生成する(言い換えれば、SG入力11に入力される)検査信号の信号レベル(以降、適宜“入力信号レベル”と称する)が所望の信号レベルとなるように、検査信号生成器31を制御してもよい。例えば、信号制御部331は、ステップS12で設定したプリアンプ12の増幅率を考慮した上で、検査信号の出力信号レベルが規定の信号レベルとすることが可能な入力信号レベルの検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御してもよい。具体的には、例えば、信号制御部331は、ステップS12で設定したプリアンプ12の増幅率を考慮した上で、検査信号の出力信号レベルを、SP出力18が短絡状態にあるアンプ部1にパンピング現象を発生させることが可能な程度に大きい信号レベルとすることが可能な入力信号レベルの検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御してもよい。或いは、例えば、信号制御部331は、ステップS12で設定したプリアンプ12の増幅率を考慮した上で、検査信号の出力信号レベルを、アンプ部1が備える各種素子の破壊を防止することが可能な(言い換えれば、破壊しない)程度に小さい信号レベルとすることが可能な入力信号レベルの検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御してもよい。
【0074】
その後、検査信号生成器31は、ステップS13で生成した検査信号を、アンプ部1の検査対象チャンネルのSG入力11に入力する(ステップS14)。
【0075】
SG入力11に検査信号が入力されている間に、短絡判定部332は、第1電圧検出器32a及び第2電圧検出器32bのうちの少なくとも一方の検出結果(つまり、端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方)を監視する。短絡判定部332は、監視結果に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定する。
【0076】
より具体的には、短絡判定部332は、SG入力11に検査信号が入力されている間に検出されている端子間電圧V1が異常値を示しているか否かを判定する(ステップS15)。同様に、短絡判定部332は、SG入力11に検査信号が入力されている間に検出されている端子間電圧V2が異常値を示しているか否かを判定する(ステップS15)。ここで、「異常値」とは、アンプ部1にパンピング現象が発生している場合に検出される端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方の値に相当する。つまり、アンプ部1にパンピング現象が発生している場合には、端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方が異常値を示す。一方で、アンプ部1にパンピング現象が発生していない場合には、端子間電圧V1及びV2のうちの双方が異常値を示すことはない。
【0077】
ステップS15の判定の結果、端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方が異常値を示していると判定される場合には(ステップS15:Yes)、短絡判定部332は、検査対象チャンネルのSP出力18が短絡状態にあると判定する(ステップS16)。この場合、SP出力18が短絡状態にあることに起因した過電流が短絡状態にあるSP出力18を介してアンプ部1内に流れることを防止するために、リレー駆動回路34は、リレー15が開状態になるように、リレー15を制御する。その結果、リレー15は開状態になる(ステップS17)。その結果、SP出力18が短絡状態にあることに起因した過電流がアンプ部1内に流れることが防止される。
【0078】
一方で、ステップS15の判定の結果、端子間電圧V1及びV2の双方が異常値を示していないと判定される場合には(ステップS15:No)、短絡判定部332は、検査対象チャンネルのSP出力18が短絡状態にないと判定する(ステップS18)。この場合、SP出力18が短絡状態にあることに起因した過電流がアンプ部1内に流れることを防止する必要性が相対的に小さいために、リレー駆動回路34は、リレー15が閉状態になるように、リレー15を制御する。その結果、リレー15は閉状態になる(ステップS19)。その結果、アンプ部1によって増幅された信号(典型的には、音声信号)が外部負荷SPに出力される。
【0079】
その後、短絡判定部332は、アンプ部1が備える全てのチャンネルを対象として、SP出力18が短絡状態にあるか否かの判定が完了したか否かを判定する(ステップS20)。
【0080】
ステップS20の判定の結果、全てのチャンネルを対象として、SP出力18が短絡状態にあるか否かの判定が完了していないと判定される場合には(ステップS20:No)、コントローラ33は、SP出力18が短絡状態にあるか否かの判定が完了していないチャンネルを、新たな検査対象チャンネルに設定する(ステップS21)。その後、新たな検査対象チャンネルを対象として、ステップS14以降の動作が行われる。つまり、新たな検査対象チャンネルのSG入力11に検査信号が入力されている間に検出される端子間電圧V1及びV2の少なくとも一方に基づいて、検査対象チャンネルのSP出力18が短絡状態にあるか否かが判定される。
【0081】
一方で、ステップS20の判定の結果、全てのチャンネルを対象として、SP出力18が短絡状態にあるか否かの判定が完了していると判定される場合には(ステップS20:Yes)、短絡判定装置3は、動作を終了する。
【0082】
以上説明したように、本実施例の短絡判定装置3は、端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方が異常値を示しているか否かの判定結果に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定することができる。ここで、端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方が異常値を示すのは、アンプ部1にパンピング現象が発生している場合である。また、パンピング現象は、SP出力20が短絡状態にある場合に特に顕著に発生する。従って、短絡判定装置3は、端子間電圧V1及びV2のうちの少なくとも一方が異常値を示しているか否かの判定結果に基づいて、アンプ部1にパンピング現象が発生するか否かを実質的に判定することができる。その結果、短絡判定装置3は、アンプ部1にパンピング現象が発生するか否かの判定結果に基づいて、SP出力18が短絡状態にあるか否かを判定することができる。
【0083】
本実施例では特に、SP出力18が短絡状態にあるか否かを短絡判定装置3が判定する際には、SG入力11には、短絡判定装置3が生成した検査信号が入力される。つまり、SP出力18が短絡状態にあるか否かを短絡判定装置3が判定する際には、SG入力11には、SP出力増20が短絡状態にあるか否かを判定するために用いられる特別な検査信号が能動的に入力される。このため、本実施例では、アンプ部1に通常入力される音声信号(つまり、その特性によってはアンプ部1の破壊を引き起こしかねないおそれがある音声信号)がSG入力11に受動的に入力される場合と比較して、アンプ部1の破壊(例えば、電気的な破壊)が好適に防止される。
【0084】
尚、上述の説明では、検査信号生成器31は、検査信号として、所定周波数以下の交流信号を生成している。しかしながら、検査信号生成器31は、検査信号として、所定周波数以下の交流信号に加えて又は代えて、直流信号を生成してもよい。この場合も、コントローラ33は、検査信号の出力信号レベルが規定の信号レベルとなるように、プリアンプ12の増幅率を適宜調整することが好ましい。更に、信号制御部331は、検査信号の出力信号レベルを規定の信号レベルとすることが可能な入力信号レベルの検査信号を生成するように、検査信号生成器31を制御することが好ましい。直流信号が検査信号として入力される場合であっても、SP出力18が短絡状態にある状況下であれば、アンプ部1にパンピング現象が発生する。従って、短絡判定装置3は、SP出力18が短絡状態にあるか否かを好適に判定することができる。
【0085】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう短絡判定装置及び短絡検出方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 アンプ部
11 SG入力
12 プリアンプ
13 コンパレータ
14 パワーアンプ
15 リレー
16a、16b 電源
17a、17b コンデンサ
18 SP出力
3 短絡判定装置
31 検査信号生成器
32a、32b 電圧検出器
33 コントローラ
331 信号制御部
332 短絡判定部
34 リレー駆動回路
図1
図2