(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349816
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】秘密情報印字ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/03 20060101AFI20180625BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
G09F3/03 D
G09F3/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-56177(P2014-56177)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-179165(P2015-179165A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 正幸
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3169174(JP,U)
【文献】
特開2000−039842(JP,A)
【文献】
実開平02−024871(JP,U)
【文献】
特開平05−185768(JP,A)
【文献】
特開2009−058816(JP,A)
【文献】
特開2004−090582(JP,A)
【文献】
実開平3−110470(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0028014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部部材及び下部部材からなり、物品に貼付される秘密情報印字ラベルであって、
前記下部部材は、少なくとも、隠蔽性を有する下部基材と前記下部基材の一方の面に下部粘着層とを有し、
前記上部部材は、少なくとも、隠蔽性を有する上部基材上に秘密情報印字領域を有する秘密情報印字層を有し、
前記上部部材と前記下部部材は、上部基材の秘密情報印字領域の外側において粘着層を介して接着されており、前記上部基材は、基材に対し、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを使用し、前記上部基材は、60μm〜110μmの厚みであり、下部基材は、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを含有した基材であることを特徴とする秘密情報印字ラベル。
【請求項2】
前記上部基材が脆性を有する基材であることを特徴とする請求項1に記載の秘密情報印字ラベル。
【請求項3】
前記隠蔽性を有する上部基材が隠蔽層を兼ねた金属蒸着紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の秘密情報印字ラベル。
【請求項4】
前記下部基材が樹脂基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の秘密情報印字ラベル。
【請求項5】
前記上部部材は、切取線が形成され、前記切取線がミシン目又はハーフカット、断続的な切込であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の秘密情報印字ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ID等の秘密情報が隠蔽された状態で記載されている秘密情報印字ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不正にパスワード、サイン、印影等を盗み見ることによって、秘密情報を盗みセキュリティ性を突破しようとする者がいる。このことを防止するために、隠蔽片を有するシールがある。また、隠蔽片を剥がした場合、剥がしたという事実がわかるように、剥がした箇所に「開封無効」等の文字情報が残るものがある。
【0003】
具体的には、ハガキなどの印刷物にくじ情報などの秘密情報を印字し、その上に隠蔽シールを貼り付け、秘密情報を隠蔽する方法が知られている(例えば、特開昭64−77589を参照)。
【0004】
しかし、製品の製造管理・監視業務等の際には、次のような問題が出てくる。
【0005】
1つ目に、これらの秘密情報は印刷物本体には残るため、秘密情報を使用した後に、秘密情報の漏洩のリスクをなくした上で本体を使用したいといった場合にはセキュリティ性に問題がある。
【0006】
2つ目に、このような構成だけでは、透かして見るなどして秘密情報が盗まれる可能性があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭64−77589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような問題に鑑みて、本発明ではハガキなどの印刷物に設ける秘密情報に関して、使用前は、秘密情報が盗まれること無く隠蔽され、使用後は、秘密情報が印刷物本体に残らないようなセキュリティ性の高い印刷物とすること、また、印刷物に用いる秘密情報印字ラベルとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、上部部材及び下部部材からなり、物品に貼付される秘密情報印字ラベルであって、前記下部部材は、少なくとも、隠蔽性を有する下部基材と前記下部基材の一方の面に下部粘着層とを有し、前記上部部材は、少なくとも、隠蔽性を有する上部基材上に秘密情報印字領域を有する秘密情報印字層を有し、前記上部部材と前記下部部材は、上部基材の秘密情報印字領域の外側において粘着層を介して接着されて
おり、前記上部基材は、基材に対し、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを使用し、前記上部基材は、60μm〜110μmの厚みであり、下部基材は、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを含有した基材であることを特徴とする秘密情報印字ラベルである。
【0010】
また、さらに請求項2に記載の発明は、前記上部基材が脆性を有する基材であることを特徴とする請求項1に記載の秘密情報印字ラベルである。
【0011】
また、さらに請求項3に記載の発明は、前記隠蔽性を有する上部基材が隠蔽層を兼ねた金属蒸着紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の秘密情報印字ラベルである。
【0012】
また、さらに請求項4に記載の発明は、前記下部基材が樹脂基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の秘密情報印字ラベルである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記上部部材は、切
取線が形成され、前記切取線がミシン目又はハーフカット、断続的な切込であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の秘密情報印字ラベルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、使用前は秘密情報が隠蔽され、使用後は秘密情報が印刷物本体に残らないようなセキュリティ性の高い秘密情報印字ラベルとすることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2及び5に記載の発明によれば、上部部材を切り取りやすくできるという効果を有している。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によると、隠蔽層を具備することにより、上部部材の上部基材上に形成されている秘密情報を透かしたりして視認することができなくなり、セキュリティ性が向上するという効果を有している。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によると、下部部材が上部部材に引きずられることなく分離がきれいにできるという効果を有している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[上部部材]
(上部基材)
本発明の上部基材としては、紙基材、樹脂基材等用いることができるが、下部部材との切り取り性を考慮すると紙基材や脆性の基材であることが好ましい。樹脂基材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートなどのプラスック基材を用いることができる。また、脆性を有する基材としては、より破壊性を向上させたものを用いることができ、紙、発泡系PETフィルム、多孔質性のものなどが好適に使用される。
【0020】
また、上部基材については、隠蔽性を有しているものであることが必要であるため、本発明においては、前述した上部基材は色紙やインクを含有した基材、不透明度が高いものが上部基材として好適に使用される。
【0021】
さらに、上部基材は、基材に対し、アルミや銀等の金属蒸着層を設けたものや、酸化チタン等の隠蔽性顔料を含む印刷をしたもの、墨やインクを塗工したものも隠蔽性を向上させる上で、好適に使用される。また、インクを使用する際は、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを使用することが好ましい。
【0022】
そして、上部基材は60μm〜110μmの厚みであることが好適であるが、さらに60μm〜70μmの厚みであると、より切り取り性の面から好適である。
【0023】
(秘密情報印字層)
本発明において秘密情報印字層は、インクジェット印刷法などにより、くじ番号、ID番号、管理番号、識別番号、図、絵柄などの秘密情報を印字する。秘密情報の印字は、上部部材の中で、上部基材層より下側(裏面側)に位置すればよい。また、印字適正を向上させるためアンカー層、コントラストを向上させるために下地印刷層をもちいることができる。
【0024】
(切取線)
上部部材に切取線を設けることで、秘密情報を使用した後に秘密情報を含む部分を切取ることが可能となる。切取線はミシン目やハーフカット、断続的な切込等を用いることができる。さらには、切取のきっかけだけを作成しておいても良い。
【0025】
切取線形成のタイミングは、絵柄印刷層等の他の層を形成し、上部部材を完成させた後に切取線を設けても良いし、切取線を設けた上部基材上に絵柄印刷層等を形成していってもよい。
【0026】
切取線は、
図1や
図3に示すように少なくとも秘密情報が印字されている印字領域の外側に印字領域を分離可能とするように設けられていればよい。また、
図1に示すように、切込のピッチを変化させた部分を設け、切り取る際のきっかけにすることができる。
【0027】
切り込みの形状については、ミシン目の場合、矩形、円形、楕円等、種々の形状を任意に取ることが可能である。また、
図3のように4方全てに切れ込みを入れる必要は無く、3方向に切れ込みが形成された場合や、2方向にのみ切れ込みが形成されたもの等、様々なものが選択される。
【0028】
(その他)
上部部材としては、上記した各層のほかに、最上層に絵柄印刷層を設けたり、各種中間層を設けても良い。例えば、絵柄印刷層を設けることによって、秘密情報印字層の秘密情報を隠蔽する効果を向上させることが可能となる。
【0029】
[下部部材]
(下部基材)
本発明の下部基材は、紙基材、樹脂基材等を下部基材として用いることができるが、上部部材を切り取る際に一緒に裂ける等の不具合を避けるために、ある程度しっかりした樹脂基材を用いることが好ましい。樹脂基材としてはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの基材を用いることができる。
【0030】
また、下部基材は、隠蔽性を有しているものであることが必要であるため、本発明においては、前述した下部基材はインクを含有した基材、不透明度が高いものが下部基材として好適に使用される。インクを下部基材に混ぜ込んで使用する際は、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを使用することがセキュリティ性向上の面から好ましい。
【0031】
さらに、下部基材は、上述したインクを混ぜ込ませた基材以外にも、基材に対しアルミや銀等の金属蒸着層を設けたものや、酸化チタン等の隠蔽性顔料を含む印刷をしたもの、スミやインクを塗工したものも隠蔽性を向上させる上で、好適に使用される。(このように、下部基材に対し、隠蔽を目的として塗布したものも合わせて下部基材とする。)また、インクを使用する際は、秘密情報印字層の秘密情報と同系色のインクを使用することが好ましい。
【0032】
そして、上部基材は60μm〜110μmの厚みであることが好適であるが、さらに60μm〜70μmの厚みであると、より切り取り性の面から好適である。
【0033】
(下部粘着層)
本発明の下部粘着層としては、溶剤型、水系エマルション型、ホットメルト型などを用いることができる。
【0034】
溶剤型としては、天然ゴム、ブロック共重合体系を含む合成ゴムを主成分とし、ロジンとそのエステル、テルペン樹脂等の粘着付与樹脂、フタル酸エステル、リン酸エステル等の軟化剤をトルエン、N−ヘキサンなどの溶媒に溶解したもの、あるいは酢酸エチルやトルエンが主体の溶媒中でラジカル重合で得られたポリアクリル酸エステルを主体としたアクリル系樹脂に、ロジンとそのエステル、テルペン樹脂等の粘着付与樹脂、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、ジイソシアネート、アジリジニル基化合物などの硬化剤等でなるものがある。
【0035】
水系エマルション型としては、水中での乳化重合で得られたポリアクリル酸エステルを主体としたアクリル系樹脂を消泡剤、レベリング剤、増粘剤ネチタン分散体等添加剤等でなるエマルションとしたものがある。
【0036】
ホットメルト型(無溶剤型)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分としたものがあり、上記溶剤型、水系エマルション型、ホットメルト型(無溶剤型)のいずれもが使用できるが、その中でもアクリル系樹脂を主要樹脂とした水系エマルション型の粘着剤を用いた粘着剤層がローラー間での柔軟性においてより好適なものであり、かつ環境問題への対応、安全性、経済性などの観点からもより有利な粘着剤である。
【0037】
また、その他、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル系、ポリ塩化ビニル系、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系、ポリウレタン系などの非水溶性高分子材料を用いることもできる。これらの材料は、添加剤、分子量などの最適化により前述の接着強度の範囲に設定できる。
【0038】
粘着層の厚みとしては、特に限定するものではないが0.1μm〜5mm、好ましくは10〜50μmの範囲内で設けることができる。
【0039】
[貼り合わせ]
上部部材と下部部材は粘着部により貼り合わせされる。粘着部は切取線で囲われる領域の外側に設ける。この粘着部の材料は、下部粘着層にて前述した材料を適宜採用することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例を以下に示す。
【0041】
下部基材としてポリプロピレンフィルムに墨をベタで印刷したものに対し下部粘着層を設け、これを下部部材として採用した。
【0042】
次に、上部基材として、(約45μmの厚みの)多孔質の紙基材を採用した。これに対し一方の面にアルミを(約15μm)の厚みにて蒸着させ、その上に(UVオフセット印刷方法によって)、絵柄印刷層を印字した。上部基材のもう一方の面にアンカー層を形成し、さらにこの上に秘密情報を印字した。この秘密情報印字層の上に印字の視認性向上の目的でメジウム層を塗布したものを上部部材として採用した。
【0043】
次に、上部部材には秘密情報印字領域の外周上にミシン目をジッパーミシンの方法によって形成した。このあと、(アクリル系の材料からなる)粘着層をメジウム層上で、かつ、ミシン目の外側に塗布し上部部材と下部部材を貼り付け、秘密情報印字ラベルを得た。
【0044】
図1の秘密情報印字ラベルでは、秘密情報を2つ印字し、片方の秘密情報を使用した後に、当該秘密情報は廃棄し、次の工程にてもう片方の秘密情報を使用することを想定している。
【0045】
しかし、本発明はこれに限らず、2つ以上の秘密情報を有する領域を形成していれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、前述したように、セキュリティ性が求められる分野において、好適に使用される。具体的には、秘密情報を使用した後に、秘密情報の漏洩のリスクをなくした上で本体を使用したいといった場合や、その他の製造管理・監視業務等において利用される。
【符号の説明】
【0047】
1 上部基材
2 秘密情報印字層
3 絵柄印刷層
4 下部基材
5 下部隠蔽層
6 上部部材
7 下部部材
8 粘着層
9 下部粘着層
10 切取のきっかけ
11 切取線
12 秘密情報
13 秘密情報印字領域