(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スライダガイド(48)及び前記出力アームガイド(49)は夫々前記長手方向に延びる平坦な第1乃至第4の面部(48a〜48d、49a〜49d)を有し、且つ隣り合う面部同士のなす角度がほぼ直角をなし、
前記スライダ受け部材(50)は4個一組として2組の第1カムフォロワ(50a〜50h)から構成され、一方の組の各第1カムフォロワ(50a〜50d)が前記ベース(31)の前記スライダ支承部(31b)の一端部に前記スライダガイド(48)の前記各面部(48a〜48d)にそれぞれ当接するように設けられ、他方の組の各第1カムフォロワ(50e〜50h)が前記ベース(31)の前記スライダ支承部(31b)の他端部に前記スライダガイド(48)の前記各面部(48a〜48d)にそれぞれ当接するように設けられ、
前記出力アーム受け部材(51)は4個一組として2組の第2カムフォロワ(51a〜51f)から構成され、一方の組の各第2カムフォロワ(51a〜51d)が前記出力アーム支承部(33)の一端部に前記出力アームガイド(49)の前記各面部(49a〜49d)にそれぞれ当接し、他方の組の各第2カムフォロワ(51e〜51h)が前記出力アーム支承部(33)の他端部に前記出力アームガイド(49)の前記各面部(49a〜49d)にそれぞれ当接するように設けられている請求項5記載の産業用ロボット。
前記第1回転体は及び前記第2回転体は、外周部に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有するプーリ(34a、34b)から構成され、前記線状部材は、内面に同じ所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有するベルト(34c)から構成されている請求項1又は4記載の産業用ロボット。
前記移動機構(40、47)は、前記第1回転体及び第2回転体として夫々Vプーリ(40a及び40b、47a及び47b)を有し、前記線状部材としてVベルト(40c、47c)を有する構成である請求項1又は4記載の産業用ロボット。
前記移動機構(42、80)は、前記第1回転体及び第2回転体として夫々スプロケット(42a及び42b、80a及び80b)を有すると共に、前記線状部材としてチェーン(42c、80c)を有する構成である請求項1又は4記載の産業用ロボット。
前記回転伝達機構(37)の駆動側回転体(37a)及び従動側回転体(37b)は、夫々外周部に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有するプーリから構成され、前記線状部材(37c)は、内周部に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有するベルトから構成されている請求項2記載の産業用ロボット。
前記回転伝達機構(41)は、前記駆動側回転体(41a)及び従動側回転体(41b)を夫々Vプーリから構成し、前記伝達用線状部材(41c)をVベルトから構成した請求項2記載の産業用ロボット。
前記回転伝達機構(43)の駆動側回転体(43a)及び従動側回転体(43b)は、夫々スプロケットから構成され、前記伝達用線状部材(43c)は、チェーンから構成されている請求項2記載の産業用ロボット。
前記第1回転体(44a)、第2回転体(44b)、前記駆動側回転体(45a)、前記向き変更用回転体(45b)は、夫々平型プーリから構成され、前記線状部材(44)は平型ベルトから構成されている請求項3記載の産業用ロボット。
さらに、昇降部材(22)を上下移動させる昇降装置(20)を備え、前記昇降部材(22)に前記水平多段式伸縮装置(30)の前記ベース(31)を取り付けた請求項1から15のいずれか一項記載の産業用ロボット。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットでは、目的のストローク長に対して、設置スペースが小さい多段式伸縮装置を備えたものがある(例えば特許文献1、2)。この多段式伸縮装置において水平多段式伸縮装置の基本的な概略構成について
図8(a)、(b)を参照して説明する。
図8(a)は、後述のスライダ102及び出力アーム104がホームポジション(矢印X2方向への移動限度位置)にある状態を示す。
図8(b)は出力アーム104が目的のストローク位置まで伸ばされた状態を示す。
【0003】
図8(a)、(b)に示すように、水平多段式伸縮装置100のベース101には、スライダ102を矢印X1方向(図では水平方向のうち右方向)及びこれとは逆の矢印X2方向へ移動可能に設けている。そして、このスライダ102に可動ブロック103を同じく矢印X1、X2方向に移動可能に設けている。
この可動ブロック103には出力アーム104の左端部が取り付けられている。つまり、この出力アーム104はこの可動ブロック103から矢印X1方向へ突出している。この出力アーム104の先端部には、この
図8では図示しないが、ハンドやドリルなどのエンドエフェクタが取り付けられる。
【0004】
さらに、前記スライダ102には、移動機構105が設けられている。この移動機構105は、スライダ102において水平方向の両端部に回転可能に設けられたプーリ105a、105bと、これら両プーリ105a、105bに架設されたベルト105cとから構成されている。そして、このベルト105cの対向する二辺部のうち一方の辺部の一部105hをベース101に連結し、他方の辺部にあって前記一部105hと対極する部分105iを前記可動ブロック103に連結している。
【0005】
駆動機構110は、モータ111と、回転伝達機構112と、ボールねじ装置113とを備えている。モータ111はベース101に取付端板101aを介して取り付けられている。又、ボールねじ装置113は、ボールねじ113aと、このボールねじ113aに螺合するナットを回転可能に内部に備えたナットケース113bとを有する。ボールねじ113aの一端部はスライダ102に取付端板102aを介して固定され、又、ナットケース113bはベース101に前記取付端板101aを介して固定されている。
前記回転伝達機構112は、前記モータ111の回転をナットに伝達するためのものであり、モータ111の回転軸に取り付けられたプーリ112aと、前記ナットに取付られたプーリ112bと、これらに架設されたベルト112cを備えてなる。
【0006】
前記駆動機構110のモータ111が所定方向に回転されると回転伝達機構112を介してナットが所定方向へ回転される。ナットを有するナットケース113bは移動しないため、ナットの回転によってボールねじ113aが矢印X1方向へ押し出され、これによりスライダ102が矢印X1方向へ移動させられる。これにより前述したように、出力アーム104が目的のストロークSt分移動する(
図8(b)参照)。
【0007】
なお、
図9(a)及び(b)は、上述した
図8(a)及び(b)を具体化した実構成を示しており、
図8と同じ機能部分に同一符号を付している。
上述した水平多段式伸縮装置100は、例えば、
図10(a)に示すように搬送装置200及び昇降装置300と組み付けられて産業用ロボットを構成する。この場合、前記ベース101が、搬送装置200に組み込まれた昇降装置300の昇降部材301に取り付けられる。搬送装置200は、前記昇降装置300を矢印A1方向(前方向)及びこれとは逆の矢印A2方向へ移動(搬送)させる。又、前記昇降装置300は、水平多段式伸縮装置100を矢印B1方向(上方向)及びこれとは逆の矢印B2方向へ移動(昇降)させる。なお、水平多段式伸縮装置100の出力アーム104の先端にはハンドやドリルなどのエンドエフェクタEが取り付けられている。
【0008】
今、この
図10(a)の状態では、水平多段式伸縮装置100は出力アーム104がホームポジションにあり、この状態から、出力アーム104のエンドエフェクタEが矢印X1方向にある目標座標M(
図10(c)参照)に到達するように当該出力アーム104を矢印X1方向へ移動させる。なお、
図10(b)は移動途中状態を示す。この後、水平多段式伸縮装置100は昇降装置300により上下方向の目標位置まで下降させられたところで、いわゆるワーク把持や把持解除、或いはワークに対する孔開け作業などのエンドエフェクタ操作を行う。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態について
図1から
図7を参照して説明する。第1実施形態の産業用ロボット1は、
図1(a)〜(c)に示すように、搬送装置10と、昇降装置20と、水平多段式伸縮装置30とを備えている。搬送装置10は、搬送路としての搬送レール11と、この搬送レール11に移動可能に設けられた搬送部材12と、モータ13aを有して搬送部材12を矢印A1方向及びこれとは逆の矢印A2方向へ移動させる搬送用駆動機構13とを備えている。
【0022】
昇降装置20は、昇降装置本体21と、この昇降装置本体21に矢印B1方向(上方向)及び矢印B2方向(下方向)に移動可能に設けられた昇降部材22と、モータ23aを有して昇降部材22を矢印B1方向及び矢印B2方向へ移動させる昇降用駆動機構23とを備えている。前記昇降装置本体21は前記搬送装置10の搬送部材12に取り付けられている。
【0023】
水平多段式伸縮装置30の構成について、
図2〜
図4を参照して説明する。水平多段式伸縮装置30は、ベース31と、スライダ32と、出力アーム支承部に相当する可動ブロック33と、移動機構34と、出力アーム35と、モータ36と、回転伝達手段に相当する回転伝達機構37とを備える。ベース31は、ベース本体31aにスライダ支承部に相当するガイドブロック31bを取り付けて構成されている。ガイドブロック31bには凹状のガイド溝31cが形成されており、このガイド溝31cには滑り性が良いスライダ受け部材31d(
図4参照)が装着されている。このスライダ受け部材31dは詳しくは図示しないが、直動方向に複数の玉を配列した直動玉軸受から構成されている。
【0024】
スライダ32は、長尺な平板状をなすスライダ本体32aを有する。このスライダ本体32aの一面(
図2〜
図4では下面)には、スライダ本体32aの長手方向の長さと略同じ長さを有する凸状のスライダガイド32bが、スライダ本体32aの長手方向に沿って、当該長手方向の一端から他端まで取り付けられている。さらにこのスライダ本体32aの他面(
図2〜
図4では上面)には、スライダ本体32aの長手方向の長さと略同じ長さを有する凸状の出力アームガイド32cがスライダ本体32aの長手方向に沿って、当該長手方向の一端から他端まで取り付けられている。このスライダ32は、前記ベース31より水平方向の幅寸法が長く設定されている。
【0025】
このスライダ32は、そのスライダガイド32bが前記ベース31のガイド溝31cのスライダ受け部材31dに移動可能に挿通され、支承されている。このスライダ32は、水平方向の一方向である矢印X1方向とこれの逆の他方向である矢印X2方向へ移動可能である。
【0026】
図2では、スライダ32が矢印X2方向の移動限度位置にある状態を示しており、この移動限度位置をホームポジションとしている。
出力アーム35は、長尺な板状をなし、矢印X2方向(他方向)の端部に可動ブロック33を一体に有している。出力アーム35は、可動ブロック33から一方向である矢印X1に延出する形態である。
【0027】
可動ブロック33は、前記スライダ32よりも水平方向の長さが短く、一面にガイド溝33aを有し、このガイド溝33aには滑り性の良い出力アーム受け部材33b(
図4参照)が装着されている。前記出力アーム受け部材33bは詳しくは図示しないが、直動方向に複数の玉を配列した直動玉軸受から構成されている。
【0028】
前記可動ブロック33は、前記出力アーム受け部材33bが前記スライダ32の出力アームガイド32cに移動可能に挿通され、支承されている。
出力アーム35における矢印X1方向側の端部にハンドやドリルなどのエンドエフェクタE(
図1(a)〜(c)参照)が取り付けられる。
【0029】
移動機構34は、第1回転体としての第1プーリ34aと、第2回転体としての第2プーリ34bと、線状部材としての閉ループ形であるベルト34cとを有して構成されている。第1プーリ34a及び第2プーリ34bは、夫々外周部に凹凸状の噛合部を有するプーリから構成されている。又、ベルト34cは内面部に凹凸状の噛合部を有する。
【0030】
第1プーリ34aは、スライダ32における前記矢印X1方向側の端部に設けた取付部材34dに回転可能に設けられている。第2プーリ34bは、スライダ32における前記矢印X2方向側の端部に設けた取付部材34eに回転可能に設けられている。ベルト34cは、前記プーリ34a、34bに架設されている。このベルト34cの一部は前記ベース31に連結具34fを介して連結され、又、この一部と対極をなす部分は前記可動ブロック33に連結具34gを介して連結されている。この移動機構34は、スライダ32の矢印X1方向及び矢印X2方向への移動に伴って可動ブロック33ひいては出力アーム35を該スライダ32に対して同方向へ移動させる。
【0031】
前記出力アーム35は、上記移動機構34により、スライダ32が前記ホームポジションから矢印X1方向へ移動されたときに当該スライダ32に対する可動ブロック33の矢印X1方向への移動によりスライダ32の移動ストローク以上に当該矢印X1方向へ移動される。
モータ36はスライダ32において他方向である矢印X2方向側の端部に取付部材36aを介して設けられている。この場合、ベース31の上方に前記スライダ32が位置すると共に、このスライダ32の上方に前記出力アーム35が位置する。モータ36は、可動ブロック33及び出力アーム35の移動領域に干渉しないように、前記取付部材36aによってスライダ32の上面(
図2及び
図3での上面)から上方に離して設けられている。このモータ36は回転方向変更可能である。
【0032】
回転伝達手段としての回転伝達機構37は、ベルト式回転伝達機構からなり、外周面に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有する駆動側プーリ37a(駆動側回転体に相当)と、外周面に同じく所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有する従動側プーリ37b(従動側回転体に相当)と、内面に同じく所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有する閉ループ状のベルト37c(伝達用線状部材に相当)とを有する。駆動側プーリ37aはモータ36の回転軸に取付られ、従動側プーリ37bは前記第2プーリ34bの回転軸(図示せず)に取り付けられている。ベルト37cは駆動側プーリ37aと従動側プーリ37bとに架設されている。この回転伝達機構37は、スライダ32における他方向側である矢印X2方向側の端部に設けられていて、モータ36の回転を前記第2プーリ34bに伝達して当該第2プーリ34bを回転駆動する。
【0033】
上記構成の水平多段式伸縮装置30は、
図1(a)〜(c)に示すように、そのベース31が昇降装置20の昇降部材22に取り付けられている。
今、水平多段式伸縮装置30単独の動作について説明する。
図5には、この水平多段式伸縮装置30の基本的な概略構成を示しており、
図5(a)は、スライダ32及び出力アーム35が夫々ホームポジションにある状態を示している。この状態からモータ36を矢印Xa方向へ回転駆動すると、回転伝達機構37を介して移動機構34の第2プーリ34bが同方向(矢印Xb方向)へ回転される。
【0034】
ここで、第2プーリ34bはベルト34cの下辺34ca(
図5(a)参照)を上記矢印Xa方向へ回し込むが、当該下辺部34caの一部がベース31に連結されているため、第2プーリ34b自身のベルト34cに対する回し込みによる当該ベルト34cからの反力によって、相対的に第2プーリ34bがスライダ32を伴って矢印X1方向へ移動する。このとき、スライダ32に対して、相対的に閉ループ状のベルト34cの上辺部34cbが矢印X1方向(下辺部34caは矢印X2方向)へ動く。これによって、ベルト34cの上辺部34cbで連結された可動ブロック33が、矢印X1方向に移動するスライダ32に対してさらに矢印X1方向へ移動する。このようにして、
図5(b)に示すように、出力アーム35が目的のスロトークSt分移動する。なお、この
図5(b)の状態から、モータ36を前記矢印Xaとは逆方向へ回転させることにより、上述とは逆の動作がなされて
図5(a)の状態に戻る。この場合、モータ36及び回転伝達機構37もスライダ32と共に移動するが、出力アーム35が最大ストローク分移動したとしても、これらモータ36及び回転伝達機構37がスライダ32の矢印X2方向側の端部に存在するから、このモータ36及び回転伝達機構37がベース31よりも矢印X1方向側へ移動することはない。
【0035】
ここで、搬送装置10、昇降装置20、水平多段式伸縮装置30を組み合わせて構成された産業用ロボット1の動作の一例について
図6、
図7を参照して説明する。動作順は
図6(a)→同図(b)→同図(c)→同図(d)→同図(e)→同図(f)→
図7(a)→同図→同図(b)→同図(c)→同図(d)→同図(e)(これは
図6(a)と同じ)である。なお、
図1(a)は
図6(a)と同じ状態を示し、
図1(c)は
図6(b)と同じ状態を示し、
図1(b)は
図1(a)から
図1(c)への変化の途中状態を示す。
【0036】
まず、
図6(a)の状態(スライダ32及び出力アーム35が夫々のホームポジションにあり、水平多段式伸縮装置30が搬送レール11上の所定位置P1にある状態)から、水平多段式伸縮装置30のモータ36を制御して出力アーム35を矢印X1方向へ移動させて、エンドエフェクタEを
図6(b)の水平方向目標座標M1に至らせる。次に昇降装置20により、水平多段式伸縮装置30を降下させて(矢印B2方向)、エンドエフェクタEを垂直方向目標座標M2に至らせる(
図6(c))。この座標M2でエンドエフェクタEにより所定の操作を行う。この後、昇降装置20により水平多段式伸縮装置30を上昇させて(矢印B1方向)、元の高さに戻す(
図6(d))。
【0037】
そして、水平多段式伸縮装置30を作動させて出力アーム35をホームポジションに戻す(
図6(e))。この後、搬送装置10を作動させて水平多段式伸縮装置30を矢印A1方向へ搬送し、次の目標作業位置P2に至らせる(
図6(f))。この後、水平多段式伸縮装置30を作動させて出力アーム35を矢印X1方向へ移動させ、エンドエフェクタEを次の水平方向目標座標M3に至らせる(
図7(a))。この後、昇降装置20を作動させて水平多段式伸縮装置30を降下(矢印B2方向)し、垂直方向目標座標M4に至らせる(
図7(b))。この状態でエンドエフェクタEにより所定の操作を行う。
【0038】
この後、昇降装置20により水平多段式伸縮装置30を元の高さまで上昇させ(
図7(c))、水平多段式伸縮装置30を作動させて出力アーム35をホームポジションに至らせる(
図7(d))。そして、搬送装置10を作動させて水平多段式伸縮装置30を搬送レール11上の元の位置P1に戻す(
図7(e))。この後、上述の動作が繰り返される。
【0039】
上述の動作において、水平多段式伸縮装置30の出力アーム35がホームポジションから水平方向目標座標M1まで伸ばされたとき(
図1(c)及び
図6(b)の状態)に、従来では出力アームの先端に揺れが発生したが、この実施形態によれば、次に説明するように、当該揺れを軽減できる。
【0040】
この実施形態では、モータをベースに固定するといった従来観念にとらわれずに、モータ36を、移動する部材であるスライダ32に設け、且つ、ボールねじ装置によりスライダを直接押し引きする従来技術に代えて、スライダ32に、モータ36の回転を移動機構34の第2プーリ34bに伝達する回転伝達機構37を設けて、当該第2プーリ34bを回転駆動することでスライダ32を移動させる(いわゆる自走させる)構成とした。これにより、従来のボールねじ装置113を使用せずにスライダを移動させることができる。このように従来のボールねじ装置113を使用せずに済むから、ボールねじ及び取付端板分の重量を軽減できる。
【0041】
特に、本実施形態によれば、モータ36及び回転伝達機構37をスライダ32において他方向側(矢印X2方向側)の端部に設けたから、水平多段式伸縮装置30が出力アーム35を最大ストロークに伸ばした状態でも、モータ36及び回転伝達機構37がベース31に対して出力アーム35と反対側に存在することとなり、当該モータ36及び回転伝達機構37が出力アーム35に対して負荷モーメントして作用することはない。
【0042】
これにより、出力アーム35がホームポジションから水平方向目標座標M1又はM3まで伸ばされたときにおける負荷モーメントが軽減され、この結果、出力アーム35先端における揺れを軽減できる。従って、出力アーム35がホームポジションから水平方向目標座標M1又はM3まで伸ばされた直後における、揺れ収束のための待機時間を極めて短くすることが可能となる。これにより、ロボットとしての動作速度を速めることができ、生産性の向上に寄与できる。
【0043】
又、上述したように負荷モーメントを軽減できるから、水平多段式伸縮装置30の各部にかかる負荷が軽減され、ロボットとしての使用寿命も延ばすことができる。又、ボールねじ装置を使用しなくて済むから、部品数の削減を図り得ると共に、コストの削減も図り得る。
又、前述したように本実施形態によれば、移動機構34の第2プーリ34bを駆動させることによりスライダ32を移動させるから、可動ブロック33ひいては出力アーム35を移動させるための移動機構34をスライダ32の移動機構として利用できる。
【0044】
又、水平多段式伸縮装置30のスライダ32及び出力アーム35が伸ばされた状態で、昇降装置20により水平多段式伸縮装置30を下降及び上昇させる場合では、スライダ32及び出力アーム35に上下方向の加速度が加わることで負荷モーメントがさらに大きくなるが、もともとの負荷モーメントを前述のように軽減できているから、水平多段式伸縮装置30の下降及び上昇時での出力アーム35の揺れも軽減できる。
【0045】
なお、この実施形態では、回転伝達機構37を設けたことで、その分の重量増加が懸念されるが、もともと従来のボールねじ装置は回転伝達機構も備えていたため、本実施形態の回転伝達機構37が新たな重量負荷となることはない。
又、水平多段式伸縮装置30がボールねじ装置を不要にできた分、重量を軽減できたから、昇降装置20及び搬送装置10にかかる負荷を軽減でき、これによってもロボットとしての寿命を延ばすことができる。
【0046】
又、この実施形態では、従動側プーリ37bが駆動側プーリ37aより大径であることで重量増加が懸念されるが、従動側プーリ37bに肉盗みを形成するなどの重量軽減構造を講じることができる。これに対して従来のボールねじ装置113では、ねじ棒に肉盗みを形成することは不可能であり、重量軽減に限界があった。
又、上記実施形態では、ベース31の上方にスライダ32が位置すると共に、このスライダ32の上方に出力アーム35が位置する関係であるため、モータ36を、出力アーム35の移動領域に干渉しないようにスライダ32の上面から上方に離して設けている。
【0047】
そして、この実施形態では、スライダ32の上面から上方に離れたモータ36の回転力を第2回転体である第2プーリ34bに伝達するための回転伝達機構37(回転伝達手段)を、モータ36の回転軸に駆動側回転体である駆動側プーリ37aを取り付け、前記第2プーリ34bと同軸で一体回転するように従動側回転体としての従動側プーリ37bを設け、これら駆動側プーリ37a及び従動側プーリ37bに伝達用線状部材としてのベルト37cを架設する構成とした。
【0048】
これにより、スライダ32から上方に離れた位置にあるモータ36の回転力を移動機構34の第2プーリ34bに伝達できる。
又、この実施形態では、移動機構34における第1回転体である第1プーリ34a及び第2回転体である第2プーリ34bを、外周部に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有する構成とし、線状部材であるベルト34cを、内面に同じ所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有する構成としたので、ベルト34cの長さ設定、あるいはベルト34cにおいてベース31に対する連結位置と可動ブロック33に対する連結位置の相互間距離設定や、設定変更などが容易となる。つまり、ベルト34cの噛合部は所定ピッチで配列されているため、噛合部の数をもってベルト34cの長さを設定でき、又、ベルト34cにおいてベース31に対する連結位置と可動ブロック33に対する連結位置とを相互に対極位置に設定する場合、ベルト34cの噛合部の数で対極位置となる地点を割り出すことができ、もって、これら設定や、さらには設定変更が容易となる。又、第1プーリ34a及び第2プーリ34b、及びベルト34cが噛合部を有する構成であるので、摩擦伝達とは異なり、相互間に滑りが少なく、第1プーリ34a及び第2プーリ34bの回転応答性及び回転同期性が良く、産業用ロボットとして動作精度が高くなる。
【0049】
又、この実施形態では、回転伝達機構37の駆動側回転体である駆動側プーリ37a及び従動側回転体である従動側プーリ37bを、夫々外周部に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有するプーリから構成し、伝達用線状部材であるベルト37cを、内周部に所定ピッチで凹凸状をなす噛合部を有するベルトから構成した。これによれば、摩擦伝達とは異なり、相互間に滑りがなく、モータ36から第2プーリ34bへの動力伝達にずれがなく、移動機構34をタイムラグなく応動させることができる。
【0050】
図11及び
図12は第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、移動機構40及び回転伝達機構41が第1実施形態の移動機構34及び回転伝達機構37と異なる。
移動機構40においては、第1回転体としての第1プーリ40a及び第2回転体としての第2プーリ40bを夫々Vプーリから構成としている。又、線状部材を、閉ループ形であるVベルト40cから構成している。
又、回転伝達機構41においては、駆動側回転体としての駆動側プーリ41a及び従動側回転体としての従動側プーリ41bをVプーリから構成し、伝達用線状部材としてのベルト41cをVベルトから構成している。
【0051】
産業用ロボットにおいては、当初予定された加速性や減速性を発揮することが要求される。この点、この第2実施形態によれば、移動機構40の第1回転体としての第1プーリ40a及び第2回転体としての第2プーリ40bを夫々Vプーリから構成とし、線状部材としてのベルトをVベルト40cから構成しているので、平ベルト方式とは異なり、くさび効果によりすべりがなく、つまり伝達能力が高く、すべりのない加速性、減速性が要求されるロボットに好適する。
【0052】
又、産業用ロボットにおいては、ワークの種類や、動作軌跡、あるいは使用環境などによっては、各部に種々の方向の振動が発生することが考えられ、プーリに対して軸方向(
図11の矢印F方向)の振動が作用することもある。この場合、ベルトが平型ベルトであってプーリが平型プーリであると、振動によって、プーリとベルトとが軸方向に徐々にずれ、両者の掛かり代が小さくなるおそれもある。すると、ベルトが少ない面積で回転伝達力を受けることになるため、劣化が早くなる。この点、この第2実施形態によれば、上述した構成としたので、前述した軸方向の振動が作用しても、第1プーリ40a及び第2プーリ40bに対してVベルト40cが軸方向にずれることがなく、上述した早期劣化を回避でき、産業用ロボット1の長寿命化に寄与できる。この場合、回転伝達機構41においても同様の効果を奏する。
【0053】
図13及び
図14は第3実施形態を示しており、この第3実施形態においては、移動機構42及び回転伝達機構43が第1実施形態の移動機構34及び回転伝達機構37と異なる。
移動機構42は、第1回転体及び第2回転体として夫々スプロケット42a、42bを有し、線状部材としてこれらスプロケット42a、42bに噛み合うチェーン42cを有する構成である。又、回転伝達機構43は、駆動側回転体及び従動側回転体として夫々スプロケット43a、43bを有すると共に、伝達用線状部材としてこれらスプロケット43a、43bに噛み合うチェーン43cを有する構成である。
【0054】
産業用ロボット1に係る負荷モーメントや重量負荷が大きい場合、モータ36の出力トルクを大きくする必要があるが、回転伝達機構や移動機構がベルト伝達機構で構成された場合には、プーリとベルトの間で滑りが発生したり、ベルトに伸びが発生したりするおそれがある。この点、この第3実施形態における移動機構42は上述したように第1回転体及び第2回転体として夫々スプロケット42a、42bを有し、線状部材としてこれらスプロケット42a、42bに噛み合うチェーン42cを有する構成であるので、モータ36の出力トルクが大きい場合でもスプロケット42a、42b及びチェーン42c間で滑りが発生することもなければチェーン42cに伸びが発生することも少ない。
【0055】
又、回転伝達機構43においても上述と同様の作用効果を奏する。総じて、産業用ロボット1の負荷が高負荷であっても当初の所定動作を長期にわたって保証できる。
図15は第4実施形態を示している。この第4実施形態においては、移動機構44及び回転伝達手段45が第1実施形態と異なる。回転伝達手段45は、モータ36の回転軸に取り付けられた駆動側回転体としての駆動側プーリ45aと、第2回転体としての後述の第2プーリ44bの近くに回転可能に設けられた向き変更用回転体としての向き変更用プーリ45bとを備えている。
【0056】
前記移動機構44は、線状部材としてのベルト44c(平型ベルト)を、第1回転体としての第1プーリ44a(平型プーリ)、第2回転体としての第2プーリ44b(平型プーリ)、前記駆動側プーリ45a(平型プーリ)、前記向き変更用プーリ45b(平型プーリ)にも架設した構成としている。前記変更用プーリ45bは平型ベルト44cの移動方向を前記モータ36側から第1プーリ44a方向及びその逆方向へ変更するためのものである。
【0057】
この第4実施形態においては、移動機構44及び回転伝達手段45においてベルト44cを共通化している。つまり、閉ループ1本のベルト44cにより、第2プーリ44bへのモータ36の回転力伝達と、移動機構44の駆動とを担っている。この第4実施形態では、第1実施形態に比して、次の効果がある。この第4実施形態におけるベルト44は、第1実施形態のベルト34c及び37cよりも長くなり、しかも1本であるので、ロボット稼働によって弛みが発生した場合、その弛みは1か所となり、且つ弛み量はベルト44の長さに比例する。これに対して第1実施形態ではベルト34c及び37cの夫々に弛みが発生するがどちらもベルト44よりは短いため夫々の弛み量は小さい。但し全体としての弛み量合計は第4の実施形態とほぼ同じである。このため、第1実施形態と第4実施形態では、全体的な弛み量が同じでも、第1実施形態では夫々の弛み量が小さいためこれを看過しやすいが、この第4実施形態では、大きな弛み量となるためこれを看過することがない。従って、メンテナンスの時期を早く検知することが可能となる。
【0058】
又、第1実施形態ではベルトが2本であったため、ベルトの弛みを無くすためのベルトテンション付与機構も2つ必要であったが、この第4実施形態においては、1本のベルト44で済むので、ベルトテンション付与機構が一つで済む。
【0059】
なお、この第4実施形態において、第1回転体、第2回転体、駆動側回転体、向き変更用回転体は、夫々スプロケットから構成し、線状部材はチェーンから構成しても良い。
図16及び
図17は第5実施形態を示しており、この第5実施形態では、次の点が第1実施形態と異なる。この第5実施形態では、モータ36を、可動ブロック33及び出力アーム35の移動領域に干渉しないようにスライダ32の側面部に設けている。そして、回転伝達手段46は、例えばモータ36の回転軸と移動機構34の第2プーリ34bの回転軸とを直結することにより、もしくは、モータ36の回転軸に第2プーリ34bを直結することにより、モータ36により第2プーリ34bを直接的に回転させる構成としている。
【0060】
この第5実施形態によれば、モータ36を、可動ブロック33及び出力アーム35の移動領域に干渉しないようにスライダ32の側面部に設けたことで、回転伝達手段46として、モータ36により第2プーリ34bを直接的に回転させる構成を採用できた。これにより、モータ36により移動機構34を直接駆動することができ、産業用ロボット1として動作精度の向上を図ることができる。
【0061】
図18及び
図19は第6実施形態を示し、この第6実施形態では、移動機構47の構成が第5実施形態と異なる。なお、この
図18ではモータ36の図示を省略している。この第6実施形態における移動機構47は、第1回転体としての第1プーリ47a及び第2回転体としての第2プーリ47bを夫々Vプーリから構成とし、線状部材としてのベルトをVベルト47cから構成している。
【0062】
この第6実施形態によれば、第2実施形態において既述したように、くさび効果により伝達能力が高く、すべりのない加速性及び減速性が要求される産業用ロボットに好適する。又、産業用ロボット1ひいては移動機構47に対して前述した軸方向(矢印F方向)の振動が作用しても、第1プーリ47a及び第2プーリ47bに対してVベルト47cが軸方向にずれることがなく、Vベルト47cの早期劣化を回避でき、この結果、産業用ロボット1の長寿命化に寄与できる。
【0063】
図20及び
図21は第7実施形態を示し、この第7実施形態では、移動機構80の構成が第5実施形態と異なる。なお、この
図20ではモータ36の図示を省略している。この第6実施形態における移動機構80は、第1回転体及び第2回転体として夫々スプロケット80a、80bを有し、線状部材としてこれらスプロケット80a、80bに噛み合うチェーン80cを有する構成である。
この第7実施形態では、モータ36の出力トルクが大きい場合でもスプロケット80a、80b及びチェーン80c間で滑りが発生することもなければチェーン80cに伸びが発生することも少ない。この結果、産業用ロボット1の負荷が高負荷である場合にモータ36の出力トルクを大きくしたとしても当初の所定動作を長期にわたって保証できる。
【0064】
図22〜
図24は、第8実施形態を示している。この第8実施形態では、スライダ32の支承構成及び出力アーム35の支承構成が第1実施形態と異なる。この第8実施形態において、スライダガイド48は、夫々長手方向に延びる平坦な第1乃至第4の面部48a〜48dを有する。そして、面部48a、48bのなす角度、面部48b、48cのなす角度、面部48c、48dのなす角度、面部48d、48aのなす角度、つまり隣り合う面部同士のなす角度はほぼ直角をなす。
【0065】
又、出力アームガイド49は、スライダガイド48と同様、夫々長手方向に延びる平坦な第1乃至第4の面部49a〜49dを有し、且つ隣り合う面部同士のなす角度がほぼ直角をなす。
スライダ支承部に相当するガイドブロック31bは左右に分割された分割ブロック31b1、31b2を有して構成されている。
出力アーム支承部に相当する可動ブロック33は左右に分割された分割ブロック33h、33iを有して構成されている。
【0066】
スライダ受け部材50は、4個一組として2組の第1カムフォロワ50a〜50hから構成されている。そして、一方の組の各第1カムフォロワ50a〜50dがベース31のガイドブロック31bの一端部にスライダガイド48の前記各面部48a〜48dにそれぞれ当接するように設けられ、他方の組の各第1カムフォロワ50e〜50hがベース31のガイドブロック31bの他端部にスライダガイド48の各面部48a〜48dにそれぞれ当接するように設けられている。上記一方の組の各第1カムフォロワ50a〜50dと他方の組の各第1カムフォロワ50e〜50hとは所定距離L1離れている。上述した各カムフォロワ50a〜50hは、いずれも円筒型の回転部50rと取付部50tとを有して構成され、取付部50tがガイドブロック31bに取り付けられている。
【0067】
そして、各カムフォロワ50a〜50hは対応する面部48a〜48dに対して線接触している。
前記出力アーム受け部材51を構成する第2カムフォロワ51a〜51hは、4個一組として2組あり、一方の組の各第2カムフォロワ51a〜51dが前記出力アーム支承部である可動ブロック33の一端部に、前記出力アームガイド49の前記各面部49a〜49dにそれぞれ当接するように設けられている。又、他方の組の各第2カムフォロワ51e〜51hが前記可動ブロック33の他端部に前記出力アームガイド49の前記各面部49e〜49hにそれぞれ当接するように設けられている。上記一方の組の各第2カムフォロワ51a〜51dと他方の組の各第2カムフォロワ51e〜51hとは所定距離L2離れている。上述した各カムフォロワ51a〜51hは、いずれも円筒型の回転部51rと取付部51tとを有して構成され、取付部51tが可動ブロック33に取り付けられている。
【0068】
そして、各カムフォロワ51a〜51hは対応する面部49a〜49dに対して線接触している。
なお、
図22〜
図24においては、モータ36及び移動機構34は図示を省略している。
図22において、図示しないモータ36が移動機構34を動作させることにより既述したようにスライダ32が矢印X1方向へ移動されると共に、このスライダ32に対して出力アーム35がさらに速く移動される。当該スライダ32のスライダガイドの移動に伴って第1カムフォロワ50a〜50hがスライダガイド48の各面部48a〜48dを線接触状態で回転することでスライダ32が殆ど抵抗なく移動する。又、スライダ32に対して出力アーム35が移動すると第2カムフォロワ51a〜51hが出力アームガイド49に対して線接触状態で回転しつつ当該出力アーム35と共に移動する。従って、スライダ32に対して出力アーム35も殆ど抵抗なく移動する。
【0069】
ここで、スライダ受け部材として、直動方向に玉を配列した直動玉軸受を4つ有し、各直動玉軸受を、仮に
図23の各面部48a〜48dに当接させた構成とすると、直動玉軸受の各玉が各面部48a〜48dに点接触するため、ロボットの重量負荷や、出力アーム35が延びたときの負荷モーメントによる応力が各面部48a〜48dの点接触部分に集中する。このため、ロボットを大きな負荷で長期使用すると、各面部48a〜48dにおける玉の移動軌跡部分にいわゆる連続する打痕状の凹状筋が形成されて、がたつきが発生してスライダ32の移動軌跡に誤差が生じするおそれがある。出力アーム受け部材として上述の直動玉軸受を用いた場合も同様の不具合が懸念される。
【0070】
この点、この第8実施形態では、第1カムフォロワ50a〜50hをスライダガイド48の各面部48a〜48dに接触させたので、当該第1カムフォロワ50a〜50hによりスライダガイドの各面部48a〜48dを線接触状態で支承でき、応力の分散を図ることができる。しかも、一方の組の第1カムフォロワ50a〜50dと、他方の組の第1カムフォロワ50e〜50hとを距離L1離しているので、スライダ32及び出力アーム35が延びたときにおける負荷モーメントに対する応力分散も図り得る。この結果、ロボットを大きな負荷で長期使用する場合であっても、スライダ32の移動軌跡の誤差発生を防止できる。
【0071】
ところで、例えば
図23の矢印Wで示す回転モーメントがスライダ32に作用した場合に、スライダ32の矢印W方向へ変位することが懸念される。しかしこの第8実施形態においては、スライダガイドの面部48a〜48dを隣り合う同士でほぼ直角をなすように形成し、この面部48a〜48dに対して各第1カムフォロワ50a〜50hを線接触させて、第1カムフォロワ50a〜50hを矢印W方向において夫々異なる向きで線接触させたので、上述の曲げモーメントが発生しても、スライダ32の回転方向への変位を防止できる。
なお、出力アームガイド49に対しても上述の第1カムフォロワ50a〜50hと同様の第2カムフォロワ51a〜51hを線接触状態に当接させているので、この第2カムフォロワ51a〜51h部分においても上述と同様の効果を奏する。
【0072】
ここで、スライダを駆動する機構として、ベースにモータとこれにより回転されるプーリとを設け、スライダの2か所に1本のベルトの両端部を連結し、このベルトをベース側の前記プーリに巻き付ける構成とし、モータによりプーリを回転させてベルトを所定方向へ引張ることにより、スライダをベース側のプーリで移動させる技術があるが、この技術にはモータを固定部材に設ける発想しかなく且つ単にベースに設けたプーリでスライダを移動させる構成にすぎない。これに対して本発明は、スライダにモータ及び回転伝達手段を搭載して、スライダに搭載された移動機構のプーリ(第2プーリ)を回転させることで、既存の移動機構をスライダの移動機構として利用できる構成に特徴があり、前出の技術と本発明とは全く異なる。
【0073】
図25及び
図26は第9実施形態を示している。この第9実施形態では、移動機構60が第1実施形態の移動機構34と異なる。移動機構60は揺動アーム61を備えている。この揺動アーム61は、長手方向の中間部に揺動軸部61aを有すると共に当該揺動軸部62から一方向及び他方向へ延びる第1及び第2のガイド部61b、61cを有する。揺動アーム61の揺動軸部61aは、その中心部が、スライダ32の水平方向の中間部に突設された支軸32pに回転可能に設けられている。
【0074】
前記第1及び第2のガイド部61b、61cは、夫々アーム状をなし、細長な孔部61b1、61c1を有する
そして、第1のガイド部61bの孔部61b1が、ベース31に突設されたピン31pに摺動可能に挿入されることにより、第1のガイド部61bがベース31に摺動可能に連結されている。又第2のガイド部61cの孔部61c1が出力アーム35に突設されたピン35pに摺動可能に挿入されることにより、第2のガイド部61cが出力アーム35に連結されている。
【0075】
モータ36はスライダ32の側面部に取り付けられたモータ取付板63に、前記揺動軸部61aと対向する部位に取り付けられている。このモータ36は、揺動アーム61の揺動軸部61aを直接的に回転させる構成となっている。このモータ36は回転方向変更可能である。
【0076】
この移動機構60は、揺動軸部61aがモータ36により回転されると、ベース31に対してスライダ32を移動させると共に出力アーム35をスライダ32の移動ストローク以上に移動させる。
図26では、スライダ32及び出力アーム35が矢印X1方向に最大に移動した状態を示しており、この状態から揺動軸部61aが矢印T方向に回転されると、各ガイド部61b、61cが同方向に回動することで、固定状態のピン31pに対してスライダ32、出力アーム35が反矢印X1方向へ移動し、ホームポジションに至る。
【0077】
この第9実施形態においては、移動機構60を、上述の構成としたことにより、次の効果がある。
水平多段式伸縮装置では、ベースに対して、スライダを移動可能に設けると共に、このスライダに出力アームを移動可能に設ける構成としている。そして、スライダの移動に出力アームを連動させ、且つスライダの移動ストローク以上に出力アームを移動させるために移動機構を備えている。さらに上記スライダ又は出力アームを移動させて移動機構を動作させるモータを備えている。
【0078】
上述の移動機構としては、スライダの移動方向の一端部及び他端部に夫々設けられた第1回転体及び第2回転体と、この両回転体に架設された線状部材とを有し、当該線状部材の一部を前記ベースに連結し前記一部と対極をなす部分を出力アームに連結した構成がある。この場合、長期使用によって線状部材に弛みが発生するおそれがある。又、スライダに対する出力アームの移動ストローク比率は、ベルトにおけるベースとの連結位置と、出力アームに対する連結位置との位置関係で設定されるが、当該位置関係と前記移動ストローク比率と対応関係が設定し難いことがある。
【0079】
この点、上記第9実施形態においては、移動機構60を揺動アーム61を用いた構成としているので、線状部材を用いる構成とは違って、弛みの問題がなく、長期にわたって安定動作が可能となる。又、スライダ32に対する出力アーム35の移動ストローク比率(最大ストローク比率)は、ベース31のピン31pから回動中心である支軸32pまでの距離R1と、ベース31のピン31pから出力アーム35のピン35pまでの距離R2とで示されるから、スライダ32に対する出力アーム35の移動ストローク比率の設定が容易となる。
【0080】
図27及び
図28は第10実施形態を示している。この第10実施形態においては、移動機構70が第9実施形態と異なる。この移動機構70は、揺動アーム71を有する。この揺動アーム71は、長手方向の一端部(ベース31側の端部)に揺動軸部71aを有すると共に当該揺動軸部71aから一方向へ延びるガイド部71bを有する。揺動アーム71の揺動軸部71aは、その中心部が、ベース31に突設された支軸31jに回転可能に設けられている。ガイド部71bは、アーム状をなし、細長な孔部71b1を有する。
【0081】
そして、ガイド部71bの長孔71b1には、スライダ32の中間部に突設されたピン32jと、出力アーム35に突設されたピン35jとが摺動可能に挿入されている。つまり、ガイド部71bにスライダ32の中間部及び出力アーム35を摺動可能に連結している。
モータ36Aはベース31の側面部に取り付けられたモータ取付板73に、揺動軸部71aと対向する部位に取り付けられている。このモータ36は、揺動アーム71の揺動軸部71aを直接的に回転させる構成となっている。
【0082】
この移動機構70は、揺動軸部71aがモータ36により回転されると、ベース31に対してスライダ32を移動させると共に出力アーム35をスライダ32の移動ストローク以上に移動させる。
図28では、スライダ32及び出力アーム35が矢印X1方向に最大に移動した状態を示しており、この状態から揺動軸部71aが矢印U方向に回転されると、ガイド部71bが同方向に回動することで、スライダ32、出力アーム35が反矢印X1方向へ移動し、ホームポジションに至る。
【0083】
この第10実施形態においても、第9実施形態と同様の効果を奏する。又、この第10実施形態では、モータ36Aがベース31に設けられているので、移動機構70に対する負荷とはならない利点がある。
【0084】
なお、前記第9実施形態と第10実施形態とを比較した場合、第9実施形態におけるモータ36は、次に説明するように、第10実施形態におけるモータ36Aよりも出力トルクを小さくできるという利点がある。
図29(a)では、第9実施形態のモータ36により揺動アーム61を回動させる場合を示し、同図(b)では第10実施形態のモータ36Aにより揺動アーム71を回動させる場合を示している。
図29(a)の場合、揺動アーム61におけるポイント31p、35pで力pwを働かせようとすると、モータ36には、
m×pw+m×pw=2×(m×pw)のトルクが必要となる。
図29(b)の場合、モータ36Aには、m×pw+2m×pw=3×(m×pw)のトルクが必要となる。この結果、第9実施形態によれば、第10実施形態に比してモータ36の出力トルクを小さくできる。
【0085】
又、上述のいくつかの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。