(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発電装置は、さらに、磁性材料で構成され、前記磁歪棒の前記一端を収容する収容部を備える第1のブロック体と、磁性材料で構成され、前記磁歪棒の前記他端を収容する収容部を備える第2のブロック体とを有する請求項1ないし7のいずれかに記載の発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の発電装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の発電装置の第1実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の発電装置の第1実施形態を示す斜視図、
図2は、
図1に示す発電装置の分解斜視図、
図3(a)は、
図1に示す発電装置の右側面図、
図3(b)は、
図3(a)に示す各磁歪素子からコイルを取り除いた状態を示す図、
図4は、
図1に示す発電装置の平面図、
図5は、
図1に示す発電装置の正面図、
図6(a)は、
図1に示す発電装置(コイルは省略)を振動体に取り付けた状態を示す側面図、
図6(b)は、
図6(a)に示す発電装置の先端に対して、下方向に外力を付与した状態を示す図である。
【0027】
なお、以下の説明では、
図1、
図2、
図3(a),(b)、
図5および
図6(a),(b)中の上側および
図4中の紙面手前側を「上」または「上方」と言い、
図1、
図2、
図3(a),(b)、
図5および
図6(a),(b)中の下側および
図4中の紙面奥側を「下」または「下方」と言う。また、
図1および
図2中の紙面右奥側および
図3(a),(b)、
図4および
図6(a),(b)中の右側を「先端」と言い、
図1および
図2中の紙面左手前側および
図3(a),(b)、
図4および
図6(a),(b)中の左側を「基端」と言う。
【0028】
図1および
図2に示す発電装置1は、軸方向に磁力線を通過させる磁歪棒2と、磁力線が軸方向に通過するように配置されたコイル3と、磁歪棒2に応力を付与する機能を有する梁部材73とを有している。この発電装置1では、磁歪棒2の基端(一端)に対して先端(他端)を、その軸方向とほぼ垂直な方向(
図1中上下方向)に変位させて磁歪棒2を伸縮させる。このとき、逆磁歪効果により磁歪棒2の透磁率が変化し、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(コイル3を貫く磁力線の密度)が変化することにより、コイル3に電圧が発生する。
【0029】
以下、各部の構成について説明する。
(磁歪棒2)
本実施形態の発電装置1は、
図1および
図2に示すように、併設された2つの磁歪棒2、2を有している。磁歪棒2は、磁歪材料で構成され、磁化が生じ易い方向(磁化容易方向)を軸方向として配置されている。本実施形態では、この磁歪棒2は、長尺の平板状をなしており、その軸方向に磁力線を通過させる。
【0030】
このような磁歪棒2は、その厚さ(横断面積)が軸方向に沿ってほぼ一定となっている。磁歪棒2の平均厚さは、特に限定されないが、0.3〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜5mm程度であるのがより好ましい。また、磁歪棒2の平均横断面積は、0.2〜200mm
2程度であるのが好ましく、0.5〜50mm
2程度であるのがより好ましい。かかる構成により、磁歪棒2の軸方向に磁力線を確実に通過させることができる。
【0031】
磁歪材料のヤング率は、40〜100GPa程度であるのが好ましく、50〜90GPa程度であるのがより好ましく、60〜80GPa程度であるのがさらに好ましい。かかるヤング率を有する磁歪材料で磁歪棒2を構成することにより、磁歪棒2をより大きく伸縮させることができる。このため、磁歪棒2の透磁率をより大きく変化させることができるので、発電装置1(コイル3)の発電効率をより向上させることができる。
【0032】
かかる磁歪材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄−ガリウム系合金、鉄−コバルト系合金、鉄−ニッケル系合金等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料が好適に用いられる。鉄−ガリウム系合金を主成分とする磁歪材料は、前述したようなヤング率の範囲に設定し易い。
【0033】
また、以上のような磁歪材料は、Y、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tmのような希土類金属のうちの少なくとも1種を含むのが好ましい。これにより、磁歪棒2の透磁率の変化をより大きくすることができる。
【0034】
かかる2つの磁歪棒2、2の外周には、それらの両端部21、22を除く部分を囲むようにコイル3が巻回(配置)されている。
【0035】
(コイル3)
コイル3は、線材31を磁歪棒2の外周に巻回することにより構成されている。これにより、コイル3は、磁歪棒2を通過している磁力線が、その軸方向に通過する(内腔部を貫く)ように配設されている。このコイル3には、磁歪棒2の透磁率の変化、すなわち、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(磁束密度)の変化に基づいて、電圧が発生する。
【0036】
本実施形態の発電装置1では、磁歪棒2、2を厚さ方向ではなく、幅方向に併設するため、これらの間隔を大きく設計することができる。そのため、磁歪棒2に巻回するコイル3のスペースを十分に確保することができ、横断面積(線径)が比較的大きい線材31を用いても、その巻き数を多くすることができる。線径が大きい線材は、その抵抗値(負荷インピーダンス)が小さく、効率良く電流を流すことができるため、コイル3に発生した電圧を効率良く利用することができる。
【0037】
ここで、磁歪棒2の磁束密度の変化に基づいて、コイル3に発生する電圧εは下記(1)式で表される。
【0038】
ε=N×ΔB/ΔT (1)
(ただし、Nは線材31の巻き数、ΔBはコイル3の内腔部を通過する磁束の変化量、ΔTは時間の変化量を表す。)
【0039】
このように、コイル3に発生する電圧は、線材31の巻き数および磁歪棒2の磁束密度の変化量(ΔB/ΔT)に比例するため、線材31の巻き数を多くすることにより、発電装置1の発電効率を向上させることができる。
【0040】
線材31としては、特に限定されないが、例えば、銅製の基線に絶縁被膜を被覆した線材や、銅製の基線に融着機能を付加した絶縁被膜を被覆した線材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
線材31の巻き数は、特に限定されないが、1000〜10000程度であるのが好ましく、2000〜9000程度であるのがより好ましい。これにより、コイル3に発生する電圧をより大きくすることができる。
【0042】
また、線材31の横断面積は、特に限定されないが、5×10
−4〜0.15mm
2程度であるのが好ましく、2×10
−3〜0.08mm
2程度であるのがより好ましい。このような線材31は、その抵抗値が十分に低いため、発生した電圧によってコイル3を流れる電流を効率良く外部に流すことができ、発電装置1の発電効率をより向上させることができる。
【0043】
なお、線材31の横断面形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、六角形のような多角形、円形、楕円形等のいかなる形状であってもよい。
各磁歪棒2の基端側には、第1のブロック体4が設けられている。
【0044】
(第1のブロック体4)
第1のブロック体4は、発電装置1を、振動を発生する振動体に固定するための固定部として機能する。第1のブロック体4を介して発電装置1を固定することにより、磁歪棒2は、その基端を固定端、先端を可動端として片持ち支持されている。なお、第1のブロック体4を取り付ける振動体としては、例えば、空調用ダクト等の各種振動体が挙げられる。振動体の具体例については、後述する。
【0045】
図1および
図2に示すように、このような第1のブロック体4は、先端側の高背部41と、この高背部41よりも高さ(厚さ)が小さい低背部42とを有しており、外形が階段状(段差状)をなしている。
【0046】
高背部41の厚み方向の略中央には、その幅方向に沿って形成されたスリット411が設けられており、このスリット411に磁歪棒2の基端部21が挿入される。また、高背部41の幅方向の両端部には、その厚さ方向に貫通する一対の雌ネジ部412が設けられている。各雌ネジ部412には、雄ネジ43が螺合する。
【0047】
低背部42の幅方向の両端部には、その厚さ方向に貫通する一対の雌ネジ部421が設けられており、各雌ネジ部421には、雄ネジ44が螺合する。この雄ネジ44を、雌ネジ部421を介して筐体等に螺合することにより、第1のブロック体4を筐体に固定することができる。
【0048】
また、低背部42の下面には、その幅方向に延在する溝422が形成されている。したがって、第1のブロック体4は、溝422を挟む基端側(低背部42)と先端側(主に高背部41)との2つの部位で振動体に固定されるため、溝422付近で撓み易い構成となる。そのため、振動体の振動を第1のブロック体4を介して磁歪棒2の先端側(第2のブロック体5)に効率良く伝達することができる。その結果、磁歪棒2に効率良く伸長応力(引張応力)または収縮応力(圧縮応力)を付与することができる。
一方、磁歪棒2の先端側には、第2のブロック体5が設けられている。
【0049】
(第2のブロック体5)
第2のブロック体5は、磁歪棒2に対して外力や振動を付与する錘として機能する部位である。振動体の振動により、第2のブロック体5に対して、上下方向への外力または振動が付与される。これにより、磁歪棒2は、その基端を固定端とし、先端が上下方向に往復動(先端が基端に対して相対的に変位)する。
【0050】
図1および
図2に示すように、第2のブロック体5は、略直方体状をなしており、基端側に先端側よりも2段低くなるように階段状(段差状)に形成された段差部55が形成されている。段差部55は、基端側に磁歪棒2の先端部22が載置される第1の段差面551と、第1の段差面551より先端側に第1の段差面551よりも1段高く設けられた第2の段差面552とを有している。なお、第2のブロック体5の第2の段差面552から第1の段差面551までの高さは、磁歪棒2の先端部22の厚さとほぼ等しくなるように設定されている。
【0051】
また、段差部55には、第1の段差面551の幅方向の両端付近に、その厚さ方向に貫通する一対の雌ネジ部553が形成されており、2つの雄ネジ53と螺合するように構成されている。
【0052】
第1のブロック体4および第2のブロック体5の構成材料としては、それぞれ、磁歪棒2の端部21、22を確実に固定することができ、磁歪棒2に対して、一様な応力を付与し得る十分な剛性を備え、かつ、磁歪棒2に永久磁石6からのバイアス磁界を付与し得る強磁性を備える材料であれば、特に限定されない。上記の特性を備える材料としては、例えば、純鉄(例えば、JIS SUY)、軟鉄、炭素鋼、電磁鋼(ケイ素鋼)、高速度工具鋼、構造鋼(例えば、JIS SS400)、ステンレス、パーマロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
また、第1のブロック体4および第2のブロック体5の幅は、磁歪棒2の幅よりも大きく設計されている。具体的には、第1のブロック体4のスリット411に磁歪棒2の基端部21を挿入し、また、第2のブロック体5の第1の段差面551に磁歪棒2の先端部22を載置した際に、一対の雌ネジ部412、553間に磁歪棒2を配置することが可能となるような幅を有する。このような各ブロック体4、5の幅としては、3〜15mm程度であるのが好ましく、5〜10mm程度であるのがより好ましい。各ブロック体4、5の幅を上記範囲内とすることにより、発電装置1の小型化を図りながら、各磁歪棒2に巻回されるコイル3の体積を十分に確保することができる。
【0054】
第1のブロック体4同士の間および第2のブロック体5同士の間には、磁歪棒2にバイアス磁界を印加する2つの永久磁石6が設けられている。
【0055】
(永久磁石6)
各永久磁石6は、円柱状をなしている。
【0056】
図4に示すように、第1のブロック体4同士の間に設けられた永久磁石6は、S極を
図4中下側に、N極を
図4中上側にして配置されている。また、第2のブロック体5同士の間に設けられた永久磁石6は、S極を
図4中上側に、N極を
図4中下側にして配置されている。すなわち、各永久磁石6は、その着磁方向が磁歪棒2、2の併設方向と一致するように配設されている(
図5等参照)。これにより、発電装置1には、時計周りの磁界ループが形成されている。
【0057】
永久磁石6には、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石や、それらを粉砕して樹脂材料やゴム材料に混練した複合素材を成形してなる磁石(ボンド磁石)等を用いることができる。このような永久磁石6は、各ブロック体4、5と、例えば、接着剤等による接着により固定されるのが好ましい。
【0058】
なお、発電装置1では、永久磁石6が、第2のブロック体5ごと、変位するように構成されている。したがって、第2のブロック体5と永久磁石6との間で摩擦が発生しない。このため、摩擦によって第2のブロック体5が変位するためのエネルギーが消費されないため発電装置1は、効率良く発電することができる。
【0059】
このような磁歪棒2、2は、各第1のブロック体4および各第2のブロック体5を介して連結部7により連結されている。
【0060】
(連結部7)
連結部7は、第1のブロック体4同士を連結する第1の連結部材71と、第2のブロック体5同士を連結する第2の連結部材72と、第1の連結部材71と第2の連結部材72とを連結する1つの梁部材73とを備えている。
【0061】
本実施形態では、第1の連結部材71、第2の連結部材72および梁部材73は、いずれも帯状(長尺の平板状)をなしており、連結部7全体としては、平面視において、H字状をなしている。連結部7は、各部材を溶接等により連結した構成であってもよいが、各部材が一体的に形成されているのが好ましい。
【0062】
第1の連結部材71は、各第1のブロック体4の高背部41上面と当接し、また、第2の連結部材72は、第2のブロック体5の第2の段差面552とその一部が当接するように構成されている。
【0063】
図3(a)および(b)に示すように、本実施形態の発電装置1では、側面視において、第1のブロック体4の高背部41の上面の下面からの高さ(高背部41における第1のブロック体4の厚さ)が、第2のブロック体5の第2の段差面552の下面からの高さ(第2の段差面552における第2のブロック体5の厚さ)よりも大きくなるように構成されている。そのため、磁歪棒2と第1の連結部材71との離間距離が、磁歪棒2と第2の連結部材72との離間距離よりも長くなるように構成されている。これにより、側面視において、第1の連結部材71と第2の連結部材72とを連結する梁部材73と磁歪棒2との間隔は、基端から先端に向かって小さくなっている。
【0064】
このような連結部7は、例えば、平面視においてH字状の板材を用意し、プレス加工、曲げ加工または鍛造加工等により、梁部材73に対して第1の連結部材71と第2の連結部材72とを反対方向に屈曲させることにより形成することができる。このような方法を用いることにより、第1の連結部材71と梁部材73とのなす角度および第2の連結部材72と梁部材73とのなす角度を容易かつ任意に調整することができる。
【0065】
第1の連結部材71は、2つの第1のブロック体4に設けられた4つの雌ネジ部412に対応する位置に形成された4つの貫通孔711を備えている。スリット411に磁歪棒2の基端部21を挿入し、雄ネジ43を第1の連結部材71の貫通孔711に挿通して雌ネジ部412に螺合する。これにより、第1の連結部材71が各高背部41(第1のブロック体4)にネジ止めされるとともに、スリット411の間隔が狭まることにより、基端部21(磁歪棒2)が第1のブロック体4に固定される。
【0066】
第2の連結部材72は、2つの第2のブロック体5に設けられた4つの雌ネジ部553に対応する位置に形成された4つの貫通孔721を備えている。第1の段差面551に磁歪棒2の先端部22を載置するとともに、第2の連結部材72の基端を第2の段差面552に当接した状態で、雄ネジ53を貫通孔711に挿通し、雌ネジ部553に螺合する。これにより、第2の連結部材72が第2のブロック体5にネジ止めされるとともに、第2の連結部材72の底面と第1の段差面551との間で先端部22が狭持されることにより、先端部22(磁歪棒2)が第2のブロック体5に固定される。
【0067】
このように、雄ネジ43により、磁歪棒2および第1の連結部材71を第1のブロック体4に、雄ネジ53により、磁歪棒2および第2の連結部材72を第2のブロック体5に共締めするため、部材同士を固定、連結するための部品点数および組立工数を少なくすることができる。なお、接合方法は上述したようなネジ止めに限られず、カシメ、拡散接合、ピンの圧入、ろう付け、溶接(レーザ溶接、電気溶接等)、接着剤による接着等でも良い。
【0068】
このような第1の連結部材71および第2の連結部材72の長さを、設定することにより、磁歪棒2、2同士の間隔を変更することができる。磁歪棒2、2同士の間隔を大きくすることにより、各磁歪棒2にコイル3を巻回するスペースを十分に確保することができる。これにより、コイル3の体積を十分に大きくすることができ、結果として、発電装置1の発電効率を向上させることができる。
【0069】
梁部材73は、第1の連結部材71および第2の連結部材72の中央部同士を連結している。そして、発電装置1では、平面視において、この梁部材73と磁歪棒2、2とが重ならないように配置され(
図1参照)、側面視において、磁歪棒2、2と梁部材73との間隔が、基端から先端に向かって小さくなるように構成されている(
図3参照)。本実施形態では、梁部材73の幅は、各磁歪棒2に巻回されたコイル3同士の間隔より小さく設定され、側面視において、梁部材73は、先端側でコイル3と重なるように構成されている。
【0070】
発電装置1では、磁歪棒2、2と梁部材73とが対向する梁として機能し、第2のブロック体5の変位に伴って、各磁歪棒2と梁部材73とが同一方向(
図1中の上方向または下方向)に変位する。その際に、各磁歪棒2には、梁部材73によって応力が付与される。ここで、梁部材73が、各磁歪棒2に巻回されたコイル3同士の間に配置されているため、各磁歪棒2が変位する際に、これと梁部材73とが互いに接触することはない。
【0071】
さらに、連結部7を第1のブロック体4および第2のブロック体5に連結する前の状態で、梁部材73の長さは、平面視において、磁歪棒2の第1のブロック体4の先端から第2のブロック体5の基端までの長さよりも長くなるように構成されている。本実施形態では、このような梁部材73を備える連結部7により、第1のブロック体4同士および第2のブロック体5同士が連結されている。そのため、発電装置1では、梁部材73により、第2のブロック体5が、第1のブロック体4に対して梁部材73の長手方向(
図3(b)中、右下方向)に押圧される。これにより、自然状態(発電装置1に外力が付与されていない状態)で磁歪棒2の基端部21と先端部22とが接近し、磁歪棒2に収縮応力が付与される(
図3(b))。本実施形態では、かかる梁部材73が、自然状態で磁歪棒2にバイアス応力(収縮応力)を付与するバイアス応力付与機構を構成する。
【0072】
このような発電装置1は、雄ネジ44により第1のブロック体4が振動体の筐体100に固定される(
図6(a)参照)。この状態において、振動体の振動により、第1のブロック体4に対して、第2のブロック体5が下方に向かって変位(回動)すると(
図6(b)参照)、すなわち、磁歪棒2の基端に対して先端が下方に向かって変位すると、梁部材73が軸方向に伸長するように変形し、磁歪棒2が軸方向に収縮するように変形する。一方、第2のブロック体5が上方に向かって変位(回動)すると、すなわち、磁歪棒2の基端に対して先端が上方に向かって変位すると、梁部材73が軸方向に収縮するように変形し、磁歪棒2が軸方向に伸長するように変形する。その結果、逆磁歪効果により磁歪棒2の透磁率が変化して、磁歪棒2を通過する磁力線の密度(コイル3の内腔部を軸方向に貫く磁力線の密度)が変化する。これにより、コイル3に電圧が発生する。
【0073】
かかる発電装置1において、コイル3に発生する電圧の大きさ(発電量)は、磁歪棒2の磁束密度の変化量に比例する。この磁歪棒2の磁束密度の変化量は、印加されるバイアス磁界の大きさと、磁歪棒2に発生する応力(伸長応力または収縮応力)の大きさとにより決まる。
【0074】
図7は、具体例として、鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料で構成された磁歪棒において、発生する応力に応じた、印加されるバイアス磁界(H)と磁束密度(B)との関係、および印加されるバイアス磁界(H)と磁束密度の変化量(ΔB)との関係を示すグラフである。
【0075】
具体的には、
図7(a)および
図7(b)は、かかる磁歪棒において、付与された応力に応じた、印加されるバイアス磁界(H)と磁束密度(B)との関係を示すグラフであり、
図7(c)は、かかる磁歪棒において、応力が発生していない状態を基準として、付与される外力に応じた、印加されるバイアス磁界(H)と磁束密度の変化量(ΔB)との関係を示すグラフであり、
図7(d)は、かかる磁歪棒において、磁歪棒に14.15MPaの収縮応力が発生している状態を基準として、付与される外力に応じた、印加されるバイアス磁界(H)と磁束密度の変化量(ΔB)との関係を示すグラフである。
【0076】
なお、磁歪棒に応力が発生していない状態(±0MPa)におけるバイアス磁界(H)と磁束密度(B)との関係(H−B曲線)は、
図7(a)中、太線で示されている。また、磁歪棒に14.15MPaの収縮応力が発生している状態(−14.15MPa)におけるバイアス磁界(H)と磁束密度(B)との関係(H−B曲線)は、
図7(b)中、太線で示されている。なお、以下の説明では、例えば、自然状態でバイアス応力が付与されない磁歪棒に「±14.15MPaの応力を発生させる」とは、磁歪棒に14.15MPaの伸長応力(+14.15MPa)と14.15MPaの収縮応力(−14.15MPa)とを交互に発生させることを意味する。
【0077】
図7(a)に示すように、応力が発生していない状態の磁歪棒に比べて、伸長応力が発生している磁歪棒では、発生する伸長応力が大きくなるにしたがって、その透磁率が高くなる。その結果、磁歪棒を軸方向に通過する磁力線の密度(磁束密度)が高くなる(
図7(a)中、太線よりも上側の各H−B曲線参照)。一方、応力が発生していない状態の磁歪棒に比べて、収縮応力が発生している磁歪棒では、発生する収縮応力が大きくなるにしたがって、その透磁率が低くなる。その結果、磁歪棒を通過する磁束密度が低くなる(
図7(a)中、太線よりも下側の各H−B曲線参照)。
【0078】
ところで、
図7(a)に示すように、このような磁歪棒は、収縮応力の発生に伴う磁束密度(透磁率)の変化量、すなわち、応力が発生していない状態の磁歪棒の磁束密度からの低下量が大きい。その一方、伸長応力の発生に伴う磁束密度(透磁率)の変化量、すなわち、応力が発生していない状態の磁歪棒の磁束密度からの増加量が小さい。
【0079】
そのため、自然状態でバイアス応力が付与されない磁歪棒に、一定の大きさの伸長応力と収縮応力とを交互に発生させても、その伸長応力分の磁束密度の変化量が小さいため、印加されるバイアス磁界の大きさによっては、磁歪棒の磁束密度を十分に変化させることは難しい。
【0080】
例えば、
図7(c)に示すように、自然状態でバイアス応力が付与されない磁歪棒に、±14.15MPaの応力を発生させる際に、1T以上の磁束密度の変化量(ΔB)を得るために必要なバイアス磁界の大きさは、おおよそ0.8〜2.8kA/m程度である。また、かかる磁歪棒に、±49.56MPaの応力を発生させる際に、1T以上の磁束密度の変化量(ΔB)を得るために必要なバイアス磁界の大きさは、おおよそ0.8〜9.8kA/m程度である。
【0081】
これに対し、発電装置1では、自然状態において、磁歪棒2に収縮応力が付与されるため、応力が発生していない状態の磁歪棒に比べて磁歪棒2の透磁率が低くなる。磁歪棒2は、この収縮応力が付与された状態を基準として伸縮する。
【0082】
例えば、
図7(b)に示すように、自然状態において、磁歪棒に14.15MPaの収縮応力が付与される場合には、磁歪棒2は、
図7(b)中の太線を基準として伸縮する。この場合、伸長応力の発生に伴う磁束密度の変化量(増加量)が、自然状態でバイアス応力が付与されない磁歪棒に伸長応力を付与した際の磁束密度の変化量よりも大きくなる。
【0083】
したがって、発電装置1の磁歪棒2では、収縮応力の発生に伴う磁束密度の変化量とともに、伸長応力の発生に伴う磁束密度の変化量をも大きくすることができる。これにより、十分な磁束密度の変化量(1T以上)を得るために必要となるバイアス磁界の強度範囲を大きくすることができる。
【0084】
例えば、
図7(d)に示すように、自然状態で14.15MPaの収縮応力が付与される磁歪棒に、±14.15MPaの応力を発生させる、すなわち、磁歪棒に発生する応力が、交互に0MPa、−28.3MPaとなるようにした際に、1T以上の磁束密度の変化量(ΔB)を得るために必要なバイアス磁界の大きさは、おおよそ1.6〜5.7kA/m程度である。また、かかる磁歪棒に、±49.56MPaの応力を発生させる、すなわち、磁歪棒に発生する応力が、交互に+35.4MPa、−63.71MPaとなるようにした際に、1T以上の磁束密度の変化量(ΔB)を得るために必要なバイアス磁界の大きさは、おおよそ0.7〜13kA/m程度である。
【0085】
図7(c)と
図7(d)との比較から、自然状態で収縮応力が付与された(バイアス応力が付与された)磁歪棒では、十分な磁束密度の変化量を得るために必要なバイアス磁界の強度範囲が大きくなることが分かる。
【0086】
このように、発電装置1では、磁歪棒2に十分な磁束密度変化を生じさせるためのバイアス磁界の強度範囲が広くなる。そのため、例えば、永久磁石6として、その大きさや形状が異なる磁石を用いたり、保持力や最大エネルギー積等の特性が異なる磁石を用いた場合でも、同様にして、磁歪棒2に磁束密度の変化を生じさせることができる。また、磁歪棒2と永久磁石6との位置関係を変更して、磁歪棒2に印加されるバイアス磁界の強度が変わった場合でも、磁歪棒2に十分な磁束密度の変化を生じさせることができる。このように、発電装置1では、その構成(各部材の大きさ、配設位置等)をある程度自由に設計変更した場合でも、磁歪棒2の磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。すなわち、発電装置1では、その設計の自由度を高くすることができる。また、発電装置1では、広い強度範囲のバイアス磁界において、大きい発電量を得ることができる。そのため、発電装置1を構成する各部材の材料特性、形状公差、組み立て時における部材同士の取り付け位置のズレ等から生じる組立誤差等により磁歪棒2に印加されるバイアス磁界の大きさにバラつきが生じても、発電装置1では、十分に大きい発電量を安定的に得ることができる。
【0087】
また、発電装置1において、磁歪棒2は、収縮応力が付与された状態を基準として伸縮する。同じ大きさの外力が付与された場合には、この磁歪棒2に発生する伸長応力の大きさは、自然状態で応力が付与されない状態を基準に伸縮する磁歪棒に比べて小さくなる。一般的に、ある部材に伸長応力を繰り返し発生させると、その部材は、劣化し易くなり、耐久性が低下する。一方、発電装置1の磁歪棒2では、自然状態で収縮応力が付与されるため、発電装置1を繰り返し使用しても、磁歪棒2が劣化するのを防止し、優れた耐久性を維持することができる。
【0088】
特に、上述した磁歪棒2を構成する材料は、選択できる種類が限られており、また、その剛性が比較的低い。発電装置1では、磁歪棒2とともに平行梁として機能する梁部材73として、後述するような比較的剛性の高い材料を用いることにより、磁歪棒2および梁部材73(連結部7)の耐久性が向上し、発電装置1の長寿命化を図ることができる。
【0089】
また、発電装置1では、上述したように、側面視において、磁歪棒2、2と梁部材73との間隔(以下、「梁間隔」とも言う)が、基端から先端に向かって小さくなるように構成されている。言い換えれば、磁歪棒2と梁部材73とが基端から先端にテーパーがかかった梁構造(テーパー梁構造)となっている(
図3(b)参照)。かかる構成では、磁歪棒2と梁部材73とからなる一対の梁は、基端から先端に向かって変位方向(上下方向)への剛性が低くなる。これにより、発電装置1の先端(第2のブロック体5)に外力が付与されると、磁歪棒2および梁部材73は上下方向に円滑に変位することができ、その結果、磁歪棒2に発生する応力の厚さ方向におけるバラつきを少なくすることができる。これにより、磁歪棒2に一様な応力を生じさせることができる。
【0090】
上述したように、発電装置1では、磁歪棒2に発生する伸長応力および収縮応力が比較的小さい場合でも、幅広いバイアス磁界の強度範囲にわたって、その磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。その上、磁歪棒2に発生する応力のバラつきを少なくし、磁歪棒2に一様な応力を生じさせることができるため、発電装置1は、付与された外力により、より効率良く発電することができる。
【0091】
また、発電装置1では、磁歪棒2、2と梁部材73との梁間隔を自由に設計することができる。具体的には、第1のブロック体4に設けられたスリット411からその上面(高背部41の上面)までの長さ(高さ)を調整することにより、基端側における磁歪棒2、2と梁部材73との梁間隔を自由に設計し、磁歪棒2、2と梁部材73との梁間隔を自由に設計することができる。
【0092】
本発明者らにより、一対の梁の梁間隔と、その先端に外力を付与した際に発生する応力との関係が解明されており、以下の検討結果から、梁間隔を小さくすることによって各梁にほぼ一様な応力が発生することが分かっている。
【0093】
図8は、基端が筐体に固定された1つの棒材(1つの梁)の先端に対して、下方向に外力を付与した状態を模式的に示す側面図、
図9は、基端が筐体に固定された対向する一対の平行な梁(平行梁)の先端に対して、下方向に外力を付与した状態を模式的に示す側面図、
図10は、先端に外力が付与された一対の平行梁にかかる応力(伸長応力、収縮応力)を模式的に示す図である。
【0094】
なお、
図8〜
図10中の上側を、「上」または「上側」と言い、
図8〜
図10中の下側を、「下」または「下側」と言う。また、
図8〜
図10中の左側を、「基端」と言い、
図8〜
図10中の右側を、「先端」と言う。
【0095】
1つの梁の先端に対して下方に曲げ変形するように外力を付与した場合には、
図8に示すように、梁の曲げ変形に伴い、梁に応力がかかり、梁上側には一様な引張(伸長)応力、梁下側には一様な圧縮(収縮)応力が発生する。一方、一定の梁間隔を有する平行梁の先端に対して外力を付与した場合には、各梁は、
図8に示すように曲げ変形するとともに、
図9に示すように外力の付与前後で先端側の梁間隔を一定に保つために平行リンク動作を行うように変形する。このような平行梁では、梁間隔が大きいほど、この平行リンク動作が顕著に表れ、逆に、梁間隔が小さいほど、平行リンク動作が抑制されて、
図8に示すような1つの梁の曲げ変形に近い変形をするようになる。
【0096】
したがって、梁間隔が比較的大きい平行梁の構成では、曲げ変形と平行リンク動作による変形とが混在することにより、各梁が、
図10に示すような略S字状に変形する。平行梁が下側に変形する際には、上側の梁には一様な伸長応力が発生するのが好ましいが、
図10に示すように、中央部に伸長応力Aが発生するものの、基端側の下部および先端側の上部に大きな収縮応力Bが発生する。また、下側の梁には一様な収縮応力が発生するのが好ましいが、中央部に収縮応力Bが発生するものの、基端側の上部および先端側の下部に大きな伸長応力Aが発生する。すなわち、各梁に発生する伸長応力と収縮応力との双方がいずれも大きいため、梁全体に発生するいずれか一方の応力(伸長応力または収縮応力)の絶対値を大きくすることができない。このような平行梁として磁歪棒を用いた場合、磁歪棒中の磁束密度の変化量を大きくすることができない。
【0097】
以上の検討結果から、磁歪棒と梁部材とが一対の平行梁をなすような発電装置では、磁歪棒と梁部材との梁間隔を小さくして、梁の平行リンク動作を抑制することにより、
図8に示すような1つの梁の曲げ変形挙動に近づけることが、発電効率を向上する観点から望ましい。
【0098】
また、発電装置1では、コイル3の体積が、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔によって制限されないため、コイル3の体積を十分に大きくしながらも、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を十分に小さく設計することができる。これにより、コイル3の体積を増大させつつも、磁歪棒2に生じる応力をより均一にすることができ、発電装置1の発電効率を優れたものとすることができる。
【0099】
また、発電装置1では、磁歪棒2と梁部材73とからなる一対の梁が、基端から先端に向かって変位方向への剛性が低くなっているため、比較的小さい外力でも、磁歪棒2を上下方向に大きく変形させることができる。
【0100】
なお、梁部材73により磁歪棒2に付与される収縮応力の値は特に限定されないが、付与される収縮応力が大きいほど、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分にするためのバイアス磁界強度の範囲が広くなる(広帯域化する)。例えば、各磁歪棒2の構成材料として鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料を用いた場合には、磁歪棒2に付与される収縮応力が、5〜50MPa程度であるのが好ましく、10〜40MPa程度であるのがより好ましい。
【0101】
なお、側面視において、磁歪棒2と梁部材73とのなす角度(テーパー角度)は、特に限定されないが、0.5〜7°程度であるのが好ましく、1〜4°程度であるのがより好ましい。磁歪棒2と梁部材73とのなす角度が上記範囲内であれば、磁歪棒2と梁部材73とで上記テーパー梁構造を構成しつつも、基端側における磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を十分に小さくすることができる。これにより、磁歪棒2により一様な応力を発生させることができる。
【0102】
このような連結部7の構成材料としては、磁歪棒2、2および永久磁石6、6とで形成された磁界ループが連結部7(梁部材73)により短絡するのを防止する材料が好ましい。そのため、連結部7は、弱磁性材料または非磁性材料で構成されているのが好ましいが、磁界ループの短絡をより確実に防止する観点から、非磁性材料で構成されているのがより好ましい。
【0103】
このような梁部材73のバネ定数は、各磁歪棒2のバネ定数と異なっていてもよいが、好ましくは、全磁歪棒2のバネ定数の合計、すなわち、2つの磁歪棒2のバネ定数を合わせた値を有していることが好ましい。上述したように、本実施形態では、2つの磁歪棒2と1つの梁部材73とが、対向する一対の梁として機能している。そのため、かかる条件を満足する梁部材73(連結部7)を用いることにより、梁部材73と2つの磁歪棒2との間で上下方向の剛性を均一にすることができる。これにより、第1のブロック体4に対して第2のブロック体5を上下方向へ円滑かつ確実に変位させることができる。
【0104】
また、一般的に、一端が固定された片持ち梁の可動端(他端)に対して外力Fが付与された際、梁の撓みdは、下記(2)式で表される。
【0105】
d=FL
3/3EI (2)
(ただし、Lは梁の長さ、Eは梁の構成材料のヤング率、Iは梁の断面2次モーメントを表す。)
【0106】
発電装置1では、
図3(b)に示すように、各磁歪棒2と梁部材73とが、ほぼ同じ断面積(横断面積)を有しているため、これらの断面2次モーメントはほぼ等しい。また、各磁歪棒2と梁部材73との長さもほぼ等しい。そのため、上記(2)式によれば、梁部材73の構成数が1本であり、磁歪棒2の構成数が2本である発電装置1では、梁部材73のヤング率を磁歪棒2のヤング率の2倍程度とすることが好ましい。これにより、外力によって各梁(梁部材73、2つの磁歪棒2)が同じように変形する(撓む)、言い換えれば、各梁の上下方向の剛性のバランスを取ることができる。
【0107】
また、このような梁部材73のヤング率は、80〜200GPa程度であるのが好ましく、100〜190GPa程度であるのがより好ましく、120〜180GPa程度であるのがさらに好ましい。
【0108】
かかる非磁性材料としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、半導体材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、樹脂材料を用いる場合には、樹脂材料中にフィラーを添加することが好ましい。これらの中でも、金属材料を主成分とする非磁性材料を用いるのが好ましく、ステンレス鋼、ベリリウム銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅およびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とする非磁性材料を用いるのがより好ましい。
【0109】
なお、各磁歪棒2の構成材料として鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料を用いた場合には、連結部7の構成材料としてステンレス鋼(SUS316、ヤング率:約170GPa)を用いるのが好ましい。各磁歪棒2および梁部材73の構成材料として、このようなヤング率を有する材料を用いることにより、梁部材73と2つの磁歪棒2との上下方向の剛性のバランスを取ることができる。これにより、第1のブロック体4に対して第2のブロック体5を上下方向へより円滑かつ確実に変位させることができる。
【0110】
このような梁部材73は、その厚さ(横断面積)がほぼ一定となっている。梁部材73の平均厚さは、特に限定されないが、0.3〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜5mm程度であるのがより好ましい。また、梁部材73の平均横断面積は、0.2〜200mm
2程度であるのが好ましく、0.5〜50mm
2程度であるのがより好ましい。
【0111】
なお、発電装置1を取り付ける上記空調用ダクトとしては、例えば、蒸気、水、燃料油、気体(空気、燃料ガス等)等をパイプやダクトを通して移動(排気、換気、吸気、廃液、循環)させる装置であり、大型施設、ビル、駅等の空調用ダクトが挙げられる。また、発電装置1を取り付ける振動体としては、このような空調用ダクトに限られず、例えば、輸送機(貨物列車や自動車、トラックの荷台)、線路を構成するレール(枕木)、高速道路やトンネルの壁面パネル、架橋、ポンプやタービン等の機器等が挙げられる。
【0112】
これらの振動体に発生する振動は、目的とする媒体(空調用ダクトの場合、ダクト内を通過する気体等)の移動には不必要な振動であり、騒音や不快な振動を発生させる原因となっている。このような振動体に上記発電装置1を取り付けることにより、この不必要な振動(運動エネルギー)を電気エネルギーとして変換(回生)して得ることができる。
【0113】
この得られた電気エネルギーをセンサー、無線装置等の電源に用いて、施設居住空間の照度、温度、湿度、圧力、騒音を計測し、無線装置で検出データを送信して、各種制御信号やモニタリング信号として利用することができる。また、車両の各部の状態を監視するシステム(例えば、タイヤ空気圧センサー、シートベルト着装検知センサー)としても利用することができる。また、このように不必要な振動を電力に変換することで、振動体からの騒音や不快な振動を軽減する効果も得られる。
【0114】
また、上記のような振動体からの振動を回生する以外にも、発電装置1の先端(第2のブロック体5)に直接外部から力を与える構造を付加し、無線装置と組み合わせることで人が操作するスイッチとして用いることができる。このようなスイッチは、電源、信号線の配線をしなくとも機能し、例えば、住宅照明用無線スイッチ、住宅セキュリティー用システム(特に、窓やドアの操作検知を無線で知らせるシステム)等に用いることができる。
【0115】
また、車両の各スイッチに発電装置1を応用することで、電源、信号線の配線がなくなり、組立工数の削減だけではなく、車両に設ける配線に必要な重量を軽減し、車両などの軽量化を得て、タイヤ、車体、エンジンにかかる負荷を抑制し、安全性にも寄与することができる。
【0116】
なお、本実施形態の発電装置1では、平面視において、各磁歪棒2に巻回されたコイル3と梁部材73とが重ならないように配置されているが、コイル3の一部が梁部材73と重なる構成であってもよい。具体的には、平面視において、磁歪棒2と梁部材73とは重ならないが、コイル3の端部と梁部材73の端部とが重なる構成であってもよい。かかる構成であっても、コイル3の巻回スペースを十分に確保しつつ、コイル3と梁部材73とが接触しない範囲で、磁歪棒2と梁部材73との梁間隔を十分に小さくすることができ、上記発電装置1で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0117】
なお、発電装置1の発電量は、特に限定されないが、20〜2000μJ程度であるのが好ましい。発電装置1の発電量(発電能力)が上記範囲内であれば、例えば、無線装置と組み合わせることで、上述した住宅照明用無線スイッチや住宅セキュリティー用システム等に有効に利用することができる。
【0118】
また、本実施形態の発電装置1では、対向する梁として、2つの磁歪棒2、2と1つの梁部材73とを備えているが、これに限定されず、以下のような構成とすることもできる。
【0119】
図11は、本発明の第1実施形態の発電装置の他の構成例を示す平面図である。
図11に示す発電装置1では、連結部7が、第1の連結部材71および第2の連結部材72の長手方向の両端部同士を連結する2つの梁部材73を備えている。かかる構成では、各梁部材73が、磁歪棒2の外側に配置されているため、コイル3の体積を増大させつつも、磁歪棒2、2同士の間隔を小さくして、発電装置1の幅方向(
図11中、上下方向)のサイズを小さくすることができる。なお、かかる構成でも、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0120】
また、上記の説明では、連結部7を各ブロック体4、5に連結する前の状態で、梁部材73の長さが、平面視において、磁歪棒2の第1のブロック体4の先端から第2のブロック体5の基端までの長さよりも長くなるように構成している。これにより、連結部7を各ブロック体4、5に連結した状態で、梁部材73が、自然状態で磁歪棒2にバイアス応力を付与するように構成しているが、これに限定されず、例えば、以下のような構成とすることもできる。
【0121】
図12は、
図12(a)は、本発明の第1実施形態の発電装置の他の構成例において、連結部を各ブロック体に取り付ける前の状態を説明するための右側面図(コイルは省略)であり、
図12(b)は、本発明の第1実施形態の発電装置の他の構成例の右側面図(コイルは省略)である。
【0122】
なお、以下の説明では、
図12(a)および(b)中の上側を「上」または「上方」と言い、
図12(a)および(b)中の下側を「下」または「下方」と言う。また、
図12(a)および(b)中の右側を「先端」と言い、また、
図12(a)および(b)中の左側を「基端」と言う。
【0123】
図12(a)および(b)に示す発電装置1では、
図3に示す発電装置1よりも、第1の連結部材71と梁部材73とのなす角度および第2の連結部材72と梁部材73とのなす角度(曲げ角度)を大きくする。
【0124】
図12(a)に示すように、かかる発電装置1では、連結部7を各ブロック体4、5に連結する前の状態で、側面視において、第1の連結部材71と第2の連結部材72との段差の大きさ(第2の連結部材72の下面から第1の連結部材71の下面までの高さ)がt
1である。そして、
図12(b)に示すように、連結部7を各ブロック体4、5に連結した状態で、側面視において、第1の連結部材71と第2の連結部材72との段差の大きさt
2は、t
1よりも小さく(t
1>t
2)なるように構成される。
【0125】
このように、各連結部材71、72と梁部材73とのなす角度を大きく設計することによって、発電装置1では、梁部材73により、第2のブロック体5が、第1のブロック体4に対して、
図12(b)中下方向に押圧される。これにより、自然状態で磁歪棒2の基端部21と先端部22とが接近し、磁歪棒2に収縮応力が付与される。
【0126】
かかる構成の発電装置1でも、上述した本実施形態の発電装置1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0127】
また、発電装置1は、2つ以上の磁歪棒2と1つ以上の梁部材73とを備えた構成をとることができる。なお、磁歪棒2および梁部材73の総数を変更する場合には、その総数が奇数となるのが好ましい。具体的には、磁歪棒2の数:梁部材73の数が、2:3、3:2、3:4、4:3、4:5等となる構成が挙げられる。このような構成では、梁として機能する磁歪棒2と梁部材73とが発電装置の幅方向に対称に配置されるため、磁歪棒2、各ブロック体4、5、連結部7にかかる応力のバランスが良好となる。
【0128】
なお、このような構成の場合には、梁部材73のバネ定数をA[N/m]、梁部材73の数をX[本]とし、磁歪棒2のバネ定数をB[N/m]、磁歪棒2の数をY[本]としたとき、A×Xの値とB×Yの値とがほぼ等しくなることが好ましい。これにより、第1のブロック体4に対して第2のブロック体5を上下方向へ円滑かつ確実に変位させることができる。
【0129】
また、上記の説明では、各雄ネジ43、53を各雌ネジ部412、553に螺合することにより、磁歪棒2の両端部21、22と各ブロック体4、5との固定および連結部7と各ブロック体4、5との連結を行っているが、各部材の固定、連結は、上記方法に限定されない。例えば、カシメ、拡散接合、ピンの圧入、ろう付け、溶接(レーザ溶接、電気溶接等)、接着剤による接着等の方法により各部材を固定、連結してもよい。
【0130】
<第2実施形態>
次に、本発明の発電装置の第2実施形態について説明する。
【0131】
図13は、本発明の発電装置の第2実施形態を示す側面図であり、
図14は、本発明の第2実施形態の発電装置の他の構成例を示す側面図である。
【0132】
なお、以下の説明では、
図13および
図14中の上側を「上」または「上方」と言い、
図13および
図14中の下側を「下」または「下方」と言う。また、
図13および
図14中の右側を「先端」と言い、
図13および
図14中の左側を「基端」と言う。
【0133】
以下、第2実施形態の発電装置について、前記第1実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0134】
図13に示す発電装置1は、外周にコイル3が巻回された磁歪棒2および梁部材8と、これらの基端部同士を連結する連結ヨーク46と、磁歪棒2および梁部材8の先端側にそれぞれ設けられた連結ヨーク56、57と、連結ヨーク56と連結ヨーク57との間に設けられた永久磁石6とを有している。また、基端側の連結ヨーク46は、支持部47に固定されており、連結ヨーク57の下側には、コイルばね91が設けられている。
【0135】
なお、本実施形態の磁歪棒2およびコイル3としては、第1実施形態で前述した各部材を用いることができる。
【0136】
梁部材8は、磁性材料で構成され、磁歪棒2に応力を付与する機能を有する。
梁部材8の構成材料は、前述した第1実施形態における第1のブロック体4および第2のブロック体5を構成する各種材料と同様の材料を用いることができる。
【0137】
また、梁部材8の平均厚さは、前述した第1実施形態における梁部材73と同程度の厚さを有しているのが好ましい。
【0138】
連結ヨーク46は、磁歪棒2の基端部21および梁部材8の基端部と連結する。
連結ヨーク46には、その幅方向に沿って形成された上下2つのスリット461、462が設けられており、下側のスリット461に磁歪棒2の基端部21が挿入され、上側のスリット462に梁部材73の基端部が挿入されて、固定されている。
この連結ヨーク46は、その基端側において支持部47と固定されている。
【0139】
支持部47は、平板状をなしており、その先端側の略中央に幅方向に貫通する溝部471が形成されている。この溝部471に連結ヨーク46が挿入されて、固定されている。
【0140】
本実施形態の発電装置1では、支持部47の基端を振動体の筐体100に固定することにより、磁歪棒2が、その基端を固定端、先端を可動端として片持ち支持されている。
【0141】
梁部材8の先端側には、連結ヨーク56が設けられている。
連結ヨーク56の厚み方向の略中央には、その幅方向に沿って形成されたスリット561が設けられており、梁部材の先端部が挿入され、固定されている。
【0142】
磁歪棒2の先端側には、連結ヨーク57が設けられている。
連結ヨーク57の厚み方向の略中央には、その幅方向に沿って形成されたスリット571が設けられており、磁歪棒2の先端部22が挿入され、固定されている。
【0143】
連結ヨーク56と連結ヨーク57との間には、永久磁石6が設けられている。
永久磁石6は、円柱状をなしている。このような永久磁石6の構成材料としては、前述した第1実施形態の永久磁石6と同様の材料を用いることができる。
【0144】
本実施形態では、
図13に示すように、S極を連結ヨーク56側に、N極を連結ヨーク57側にして配置されている。これにより、発電装置1には、時計間周りの磁界ループが形成されている。
【0145】
本実施形態の発電装置1では、各連結ヨーク56、57および永久磁石6が、磁歪棒2に対して外力や振動を付与する錘として機能する。振動体の振動により、これらの部材に対して、
図13の上下方向への外力または振動が付与される。これにより、磁歪棒2は、その基端を固定端とし、先端が上下方向に往復動(先端が基端に対して相対的に変位)する。
【0146】
なお、各連結ヨーク46、56、57および支持部47の構成材料は、前述した第1実施形態における第1のブロック体4および第2のブロック体5を構成する各種材料と同様の材料を用いることができる。
【0147】
連結ヨーク57の下側にはコイルばね91が設けられている。
コイルばね91は、伸長状態(自然長よりも長手方向に伸びた状態)で、連結ヨーク57と振動しない基体200との間に配置され、一端が連結ヨーク57の下面に固定され、他端が基体200に固定される。
【0148】
発電装置1では、
図13に示すように、磁歪棒2(連結ヨーク57)が、コイルばね91により、その変位方向下側(
図13中の下側)に引張される。これにより、磁歪棒2に収縮応力が付与される。本実施形態では、コイルばね91が、常に(自然状態および発電装置1に外力が付与された状態において)磁歪棒2に収縮応力を付与するバイアス応力付与機構を構成する。
【0149】
かかる構成の発電装置1においても、前述した第1実施形態の発電装置1と同様に、自然状態で磁歪棒2に収縮応力が付与されるため、磁歪棒2に印加されるバイアス磁界の強度が比較的大きい場合でも、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。すなわち、かかる本実施形態の発電装置1でも、広いバイアス磁界の強度範囲にわたって、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。
【0150】
なお、本実施形態では、
図14に示すように、収縮状態(自然長よりも長手方向に縮んだ状態)のコイルばね91を、連結ヨーク56と基体200との間に配置して、その両端部を連結ヨーク56の上面および基体200と固定する構成としてもよい。かかる構成では、コイルばね91により、磁歪棒2は、その変位方向下側(
図14中の下側)に押圧される。これにより、磁歪棒2に収縮応力が付与され、上述した本実施形態の発電装置1と同様の作用・効果が生じる。
【0151】
なお、本実施形態では、コイル3を磁歪棒2に巻回する代わりに、梁部材8の外周に巻回する構成にしてもよい。磁歪棒2中の磁束密度の変化に伴い、梁部材8を通過する磁束密度も同様に変化するため、上記構成の発電装置1と同様にコイル3に電圧を発生させることができる。
【0152】
なお、各部材の固定、連結は、例えば、ネジ止め、カシメ、拡散接合、ピンの圧入、ろう付け、溶接(レーザ溶接、電気溶接等)、接着剤による接着等の方法により各部材同士を固定、連結することができる。
【0153】
また、上述したコイルばね91の代わりに、同じ機能を有する弾性部材を用いることもできる。例えば、
図13に示す発電装置1において、コイルばね91の代わりに、伸長状態の板ばねを用いることもできる。
【0154】
かかる第2実施形態の発電装置1によっても、前記第1実施形態の発電装置1と同様の作用・効果を生じる。
【0155】
<第3実施形態>
次に、本発明の発電装置の第3実施形態について説明する。
【0156】
図15は、本発明の発電装置の第3実施形態を示す側面図である。
なお、以下の説明では、
図15中の上側を「上」または「上方」と言い、
図15中の下側を「下」または「下方」と言う。また、
図15中の右側を「先端」と言い、
図15中の左側を「基端」と言う。
【0157】
以下、第3実施形態の発電装置について、前記第1および実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0158】
図15に示す発電装置1は、連結ヨーク57と基体200との間に、コイルばね91の代わりに、磁石92を配設している以外は、前記第2実施形態の発電装置1と同様である。
【0159】
磁石92は、
図15に示すように、自然状態で連結ヨーク57から離間して、基体200上に配置されている。また、平面視において、磁石92は、連結ヨーク57と重なるように構成されている。
【0160】
かかる磁石92は、円柱状をなしており、前述した第1実施形態の永久磁石6と同様の材料で構成されている。この磁石92は、S極を連結ヨーク57側に、N極を基体200側にして配置されている。
【0161】
発電装置1では、連結ヨーク57が磁性材料で構成されているため、磁石92により、連結ヨーク57が磁歪棒2の変位方向下側(
図15中の下側)に吸引される。これにより、磁歪棒2に収縮応力が付与される。本実施形態では、磁石92と連結ヨーク57(磁性部材)とが、常に磁歪棒2に収縮応力を付与するバイアス応力付与機構を構成する。
【0162】
かかる構成の発電装置1においても、前述した第1および第2実施形態の発電装置1と同様に、自然状態で磁歪棒2に収縮応力が付与されるため、磁歪棒2に印加されるバイアス磁界の強度が比較的大きい場合でも、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。すなわち、かかる本実施形態の発電装置1でも、広いバイアス磁界の強度範囲にわたって、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。
【0163】
また、磁石92は、平面視において、連結ヨーク57と重なるように配設されているが、磁石92からの磁力線が発電装置1に形成された磁界ループと干渉しないようにする観点から、平面視において、連結ヨーク57の基端部側と重なるように配設されているのが好ましい。
【0164】
なお、
図15に示す発電装置1では、磁石92を、S極が連結ヨーク57側となるように基体200上に配設しているが、N極が連結ヨーク57側となるように配設してもよい。
【0165】
かかる第3実施形態の発電装置1によっても、前記第1および第2実施形態の発電装置1と同様の作用・効果を生じる。
【0166】
<第4実施形態>
次に、本発明の発電装置の第4実施形態について説明する。
【0167】
図16は、本発明の発電装置の第4実施形態を示す斜視図であり、
図17は、
図16に示す発電装置の側面図であり、
図18は、本発明の第4実施形態の発電装置の他の構成例を示す側面図である。
【0168】
なお、以下の説明では、
図16〜18中の上側を「上」または「上方」と言い、
図16〜18中の下側を「下」または「下方」と言う。また、
図16中の紙面右奥側および
図17および
図18中の右側を「先端」と言い、
図16中の紙面左手前側および
図17および
図18中の左側を「基端」と言う。
【0169】
以下、第4実施形態の発電装置について、前記第1〜第3実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0170】
図16に示す発電装置1は、併設された2つの磁歪棒2、2と、各磁歪棒2の外周側(外周)に巻回されたコイル3と、各磁歪棒2の基端部同士および先端部同士をそれぞれ連結する連結ヨーク46および連結ヨーク58と、各磁歪棒2と併設されたヨーク10と、連結ヨーク46とヨーク10との間および連結ヨーク58とヨーク10との間に設けられた2つの永久磁石6とを有している。また、基端側の連結ヨーク46は、支持部47に固定され、先端側の連結ヨーク58は、錘部(質量部)59に固定されている。
【0171】
本実施形態の発電装置1では、バイアス応力付与機構が、2つの磁歪棒2、2を介して、
図17中の紙面手前側および紙面奥側に設けられた一対のコイルばね93で構成されている。
【0172】
なお、本実施形態の磁歪棒2およびコイル3としては、第1実施形態で前述した各部材を用いることができる。
【0173】
連結ヨーク46は、各磁歪棒2の基端部21と連結する。
連結ヨーク46は、前述した第2実施形態の連結ヨーク46と同様に、その幅方向に沿って形成された上下2つのスリット461、462が設けられており、各スリット461、462に各磁歪棒2の基端部21が挿入されて、固定されている。また、連結ヨーク46の両側面には、スリット461とスリット462との間に一対のバー463が形成されている。
【0174】
この連結ヨーク46は、その基端側において前述した第2実施形態と同様の支持部47に固定されている。
【0175】
連結ヨーク58は、各磁歪棒2の先端部22と連結する。
連結ヨーク58には、その幅方向に沿って形成された上下2つのスリット581、582が設けられており、各スリット581、582に各磁歪棒2の先端部22が挿入されて、固定されている。また、連結ヨーク56の両側面には、スリット581とスリット582との間に一対のバー583が形成されている。
この連結ヨーク58は、その先端側において錘部59と固定されている。
【0176】
錘部59は、平板状をなしており、その基端側の略中央に幅方向に貫通する溝部591が形成されている。この溝部591に連結ヨーク58が挿入、固定されている。
【0177】
錘部59は、連結ヨーク58とともに、磁歪棒2に対して外力や振動を付与する錘として機能する。振動体の振動により、錘部59および連結ヨーク58に対して、
図17の上下方向への外力または振動が付与される。これにより、磁歪棒2は、その基端を固定端とし、先端が上下方向に往復動(先端が基端に対して相対的に変位)する。
【0178】
なお、各連結ヨーク46、58、支持部47および錘部59の構成材料は、前述した第1実施形態における第1のブロック体4および第2のブロック体5を構成する各種材料と同様の材料を用いることができる。
【0179】
ヨーク10は、長尺の平板状をなしており、2つの磁歪棒2、2と幅方向に併設されている。ヨーク10の構成材料としては、前述した第1実施形態における第1のブロック体4および第2のブロック体5を構成する各種材料と同様の材料を用いることができる。
【0180】
永久磁石6は、円柱状をなしている。このような永久磁石6の構成材料としては、前述した第1実施形態の永久磁石6と同様の材料を用いることができる。
【0181】
本実施形態では、
図16に示すように、連結ヨーク46とヨーク10との間に設けられた永久磁石6は、S極を連結ヨーク46側に、N極をヨーク10側にして配置され、連結ヨーク58とヨーク10との間に設けられた永久磁石6は、S極をヨーク10側に、N極を連結ヨーク58側にして配置されている。これにより、発電装置1には、時計間周りの磁界ループが形成されている。
【0182】
磁歪棒2、2を介して、
図17中の紙面手前側および紙面奥側には、一対のコイルばね93が設けられている。
【0183】
各コイルばね93は、伸長状態で、一端が連結ヨーク46のバー463に固定され、他端が連結ヨーク58のバー583に固定されている。
【0184】
発電装置1では、コイルばね93により、連結ヨーク46と連結ヨーク58とが接近する方向に引張される。すなわち、コイルばね93により、各磁歪棒2の基端と先端とが接近する方向に引張される。これにより、磁歪棒2に収縮応力が付与される。本実施形態では、コイルばね93が、常に磁歪棒2に収縮応力を付与するバイアス応力付与機構を構成する。
【0185】
かかる構成の発電装置1においても、前述した第1〜第3実施形態の発電装置1と同様に、自然状態で磁歪棒2に収縮応力が付与されるため、磁歪棒2に印加されるバイアス磁界の強度が比較的大きい場合でも、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。すなわち、かかる本実施形態の発電装置1でも、広いバイアス磁界の強度範囲にわたって、磁歪棒2に生じる磁束密度の変化量を十分に大きくすることができる。
【0186】
なお、本実施形態では、コイルばね93の代わりに、自然状態で磁歪棒2に収縮応力を付与するその他の弾性部材を用いることもできる。
【0187】
このような弾性部材としては、例えば、
図18に示すような、線材94を用いることができる。なお、
図18に示す発電装置1は、各磁歪棒2の基端部21同士および先端部22同士を、それぞれ支持部47および錘部59で連結した構成を有し、
図18の紙面奥側で2つの永久磁石6を介してヨーク10が固定されている。
【0188】
線材94は、例えば、金属製のワイヤーで構成され、その両端が、固定部941、942とカシメ等により固定されている。各固定部941、942には、その幅方向に貫通する貫通孔が設けられており、各固定部941、942は、それぞれ、貫通孔を介して支持部47および錘部59に設けられたバー473、593に固定されている。
【0189】
かかる発電装置1では、例えば、線材94の長さを、支持部47の先端から錘部59の基端までの長さよりも短く設計することにより、上述した本実施形態のコイルばね93と同様に、磁歪棒2の基端と先端とを接近する方向に引張する。これにより、常に各磁歪棒2に収縮応力を付与することができる。
【0190】
また、線材94に対して、熱処理を加えた状態で各固定部941、942をバー473、593に固定し、その後、冷却して線材94を熱収縮させることにより、磁歪棒2の基端と先端とを接近する方向に引張することができる。また、線材94として、支持部47の先端から錘部59の基端までの長さよりも短い形状記憶ワイヤーを用いる場合には、まず、線材94を加熱して引き伸ばした状態で各固定部941、942をバー473、593に固定する。その後、線材94に一定の温度を付与することにより、線材94が元の形状に戻ろうとして、磁歪棒2の基端と先端とを接近する方向に引張することができる。いずれの方法を用いた場合でも、各磁歪棒2に収縮応力を付与することができる。
【0191】
また、各部材の固定、連結は、例えば、ネジ止め、カシメ、拡散接合、ピンの圧入、ろう付け、溶接(レーザ溶接、電気溶接等)、接着剤による接着等の方法により各部材同士を固定、連結することができる。
【0192】
なお、本実施形態では、コイル3を磁歪棒2に巻回する代わりに、ヨーク10の外周に巻回する構成にしてもよい。磁歪棒2中の磁束密度の変化に伴い、ヨーク10を通過する磁束密度も同様に変化するため、上記構成の発電装置1と同様にコイル3に電圧を発生させることができる。
【0193】
かかる第4実施形態の発電装置1によっても、前記第1〜第3実施形態の発電装置1と同様の作用・効果を生じる。
【0194】
以上、本発明の発電装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、前記第1〜第4実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【0195】
また、前述した第1実施形態において、2つの永久磁石のうち一方を省略することもでき、永久磁石の一方または双方を電磁石に置き換えることもできる。さらに、双方の永久磁石を省略し、外部磁場(外部磁界)を用いて発電する構成とすることもできる。
【0196】
また、前記第2〜第4実施形態における永久磁石6、磁石92を電磁石に置き換えることもできる。さらに、永久磁石6および磁石92の少なくとも一方を省略し、外部磁場(外部磁界)を用いて発電する構成とすることもできる。
【0197】
また、前記各実施形態において、磁歪棒および梁部材は、いずれも、その横断面形状が長方形状をなしているが、例えば、円形状、楕円形状、三角形状、正方形状、六角形状のような多角形状であってもよい。
【0198】
また、前記各実施形態の永久磁石は、いずれも円柱状をなしているが、角柱状、平板状、三角柱状をなしていてもよい。