(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質材料からなる吸音材と、該吸音材をタイヤ内面に装着するためのバンド部材を備えたタイヤ用騒音低減装置において、前記バンド部材を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該バンド部材がタイヤ周方向で全周にわたり設けられ、該バンド部材の全周にわたり耐熱性補強層が設けられていることを特徴とするタイヤ用騒音低減装置。
前記吸音材と前記バンド部材が、両者間の部分的な接合によって、部分的に両者が一体固定化されていて、少なくとも該接合箇所付近のバンド部材に対して前記耐熱性補強層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用騒音低減装置。
前記吸音材を挟んで、前記バンド部材と同一材料で形成した係合部材と、前記バンド部材とを溶着させることにより、前記吸音材、前記バンド部材および前記係合部材が、少なくとも該溶着箇所において一体固定化されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来、騒音低減装置が用いられていたタイヤサイズに比べて、非常に高速(例えば、300km/時以上)での走行が可能に設計されたタイヤに、熱可塑性合成樹脂製バンド部材を用いたタイヤ用騒音低減装置を適用した場合、吸音材の質量によってバンド部材が大きな張力を受け、さらにタイヤの発熱によって該バンド部材を構成する熱可塑性合成樹脂が軟化することにより、該バンド部材が塑性変形(通常は、伸びる変形)をしてしまう場合があった。バンド部材がそうした塑性変形をした場合、弾性特性に基づく吸音材の正常な保持をすることができず、騒音低減装置の機能を十分に発揮することができないか、耐久性が損なわれて、騒音低減装置の破壊につながるおそれもあった。
【0007】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、高速走行用タイヤで、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形を抑止することができ、そうした高速走行のもとでも騒音低減機能を十分に発揮することができるタイヤ用騒音低減装置と、該騒音低減装置を備えた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成する本発明のタイヤ用騒音低減装置は、以下の(1)の構成を有する。
(1)多孔質材料からなる吸音材と、該吸音材をタイヤ内面に装着するためのバンド部材を備えたタイヤ用騒音低減装置において、前記バンド部材を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該バンド部材
がタイヤ周方向で全周にわたり設けられ、該バンド部材の全周にわたり耐熱性補強層が設けられていることを特徴とするタイヤ用騒音低減装置。
【0009】
かかる本発明のタイヤ用騒音低減装置において、好ましくは、以下の(2)〜
(6)のいずれかの構成を有する。
(2)前記吸音材と前記バンド部材が、両者間の部分的な接合によって、部分的に両者が一体固定化されていて、少なくとも該接合箇所付近のバンド部材に対して前記耐熱性補強層が設けられていることを特徴とする上記(1)に記載のタイヤ用騒音低減装置。
(3)前記耐熱性補強層が、熱変形温度(18.5kg/cm
2)(ASTM D648 A法による)が130℃以上である樹脂シートであることを特徴とする上記(1)
又は(2)に記載のタイヤ用騒音低減装置。
(4)前記バンド部材および前記耐熱性補強層の合計断面積が10〜80mm
2 であり、それぞれの断面積(mm
2 ))と100℃における引張弾性率(部材の長手方向)(N/mm
2)の積の合計が、500N以上であることを特徴とする上記(1)〜
(3)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
(5)前記耐熱性補強層が、前記バンド部材の外周に螺旋状に配されてなることを特徴とする上記(1)〜
(4)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
(6)前記吸音材を挟んで、前記バンド部材と同一材料で形成した係合部材と、前記バンド部材とを溶着させることにより、前記吸音材、前記バンド部材および前記係合部材が、少なくとも該溶着箇所において一体固定化されていることを特徴とする上記(1)〜
(5)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
【0010】
また、本発明の空気入りタイヤは、以下の
(7)の構成を有する。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置が、前記バンド部材によってタイヤ内腔空間内に装着されてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる本発明によれば、高速走行用タイヤで、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形を抑止することができ、耐久性良く、騒音低減機能を十分に発揮することができるタイヤ用騒音低減装置を提供することができる。
【0012】
請求項2〜
6のいずれかにかかる本発明のタイヤ用騒音低減装置によれば、上述した請求項1にかかる本発明の効果を、より明確に有した本発明のタイヤ用騒音低減装置が実現できる。
【0013】
請求項
7にかかる本発明にかかる空気入りタイヤによれば、上述した請求項1〜
6のいずれかにかかる本発明のタイヤ用騒音低減装置を装着した空気入りタイヤが提供され、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形が抑止され得て、耐久性良く、騒音低減機能を発揮する空気入りタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面などを用いて更に詳しく本発明について、説明する。
【0016】
本発明のタイヤ用騒音低減装置1は、
図1にその一実施形態例の外観斜視図を示したように、多孔質材料からなる吸音材2と、該吸音材2をタイヤ内面に装着するためのバンド部材3を備えたタイヤ用騒音低減装置1において、該バンド部材3を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該バンド部材3に対して、耐熱性補強層4を、耐熱性補強層をタイヤ周方向上で少なくとも一部に設けたことを特徴とする。
【0017】
このように熱可塑性樹脂で構成されたバンド部材3に対して、耐熱性補強層4をタイヤ周方向で少なくとも一部上に設けたことにより、例えば、300km/時以上などの極めて高速で走行可能なタイヤに多孔質材料からなる吸音材2を適用した場合
に、バンド部材3が塑性変形(伸びる)してしまうことが抑制されることにより、タイヤ用騒音低減装置1の耐久性が良好であり、騒音低減機能を十分に発揮することができるタイヤ用騒音低減装置が実現できる。
【0018】
バンド部材3は、繰り返し曲げ変形に対して耐久性の優れた樹脂を使用することが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)を使用することが好ましい。耐熱性補強層4は、バンド部材3の持つ繰り返し曲げ変形に対する高耐久特性を低下させることなく、張力に耐え得る補強をするため、またバンド部材3に耐熱性を効果的に与えるために、バンド部材3の外周側に該耐熱性補強層4を設ける(
図1)ことが好ましいが、内周側に設けることでも効果は認められるので、外周側または/および内周側に設ければよい。また、バンド部材3が熱可塑性樹脂で構成されるものであるので、その内部に耐熱性補強層4を設けるようにしてもよく、その場合、内部に耐熱性補強層4を有したサンドイッチ構造のものとなる。
【0019】
バンド部材3のより好ましい態様は、耐久性の点からバンド部材3本体はポリプロピレン樹脂を用いて構成し、耐熱性補強層は樹脂シートで構成し、該樹脂シート(耐熱性補強層)の少なくとも一面上には粘着層を有し、バンド部材3に耐熱性補強層の粘接着が容易にできるように構成されているものが好ましい。粘着層は耐熱性の点でアクリル系またはゴム系の接着剤が好ましい。
【0020】
耐熱性補強層4は、バンド部材の外周を1周以上巻き回して設置させることが本発明の効果を良好に得る上で好ましい。また、耐熱性補強層は、バンド部材の全幅(
図1のw)に対して設けられていてもよいが、効果は全幅でなくても得られるので、必ずしも全幅でなくともよく、好ましくは耐熱性補強層の幅は(0.5〜1)×wで、バンド部材と中心線を一致させて設けられているのがよい。
【0021】
また、吸音材2とバンド部材3は、両者間の部分的な接合によって、部分的に両者が一体固定化されていて、かつ、少なくとも接合箇所付近のバンド部材に対して耐熱性補強層が設けられていることが好ましい。部分的に両者が一体固定化されていることがよいのは、ある程度相互間で動きに自由度がある方が耐久性を長期間にわたり維持するのに最適だからであり、また、少なくとも接合箇所付近のバンド部材に対して耐熱性補強層が設けられていることが好ましいのは、特に、接合箇所付近では、接合時の物理的力などにより該バンド部材の厚さが他部分よりも薄くなっていることがあり、その付近で耐熱性補強層を設けることは、補強効果・改善効果がより大きく得られるからである。
【0022】
バンド部材は、一般に、タイヤ周方向で全周にわたり設けられていることが吸音材の保持効果を恒久的にかつ高度に得る上で好ましく、さらに、タイヤ周方向で全周にわたり該吸音材に対して耐熱性補強層が設けられていることが、本発明の効果をより効果的に得る上で好ましい。
【0023】
上述した好ましい態様である本発明にかかる空気入りタイヤを
図2に示す。
図2において、空気入りタイヤTは、トレッド部10と、左右一対のビード部11と、これらトレッド部とビード部11とを互いに連接するサイドウォール部12とを備えている。そして、トレッド部10の内面には、
図1にモデルを示したリング状のタイヤ用騒音低減装置1が装着されている。
【0024】
タイヤ用騒音低減装置1は、多孔質材料からなる吸音材2と、該吸音材2をタイヤ内面に装着するためのバンド部材3とを備えている。吸音材2は多数の内部セルを有し、その多孔質構造に基づいて所定の吸音特性を有している。吸音材2の多孔質材料としては発泡ポリウレタンを用いるとよい。
【0025】
バンド部材3はタイヤ周方向に連続的に延在するように、帯状でかつ全体は環状に成形されている。このバンド部材3は弾性復元力に基づいて吸音材2をタイヤ内面に保持する。このように構成される騒音低減装置1は、通常の空気入りタイヤTに対して着脱自在であり、その着脱作業が容易である。本発明では、このバンド部材3に対して、耐熱性補強層4をタイヤ周方向上で少なくとも一部に設けたものであり、バンド部材3と耐熱性補強層4は、バンド部材3に対して基本的に補強をするものなので、両者は実質的に一体的にて接合されているものが好ましい。
【0026】
騒音低減装置1において、吸音材2とバンド部材3との固定手段は、それら両者が熱可塑性合成樹脂性のものであれば熱融着を採用することが実際的なのであり、熱融着を可能にするため、また成形性の良さなどから、バンド部材3は熱可塑性樹脂で構成することが肝要である。そして、熱融着を採用することのメリットとして、特に熱可塑性樹脂製の板状の係止部材5(係止板または係止チップ)を使用して、該係止部材5の上から、例えば超音波溶着機の加振用ホーン(図示せず)を該係止部材5に押し付けて、該係止部材5と吸音材2を熱変形させつつ、吸音材2、バンド部材3、さらに係止部材5の3者を熱溶融させて接合させることができる点がある。
【0027】
その構造モデルを
図2(a)、(b)に示した。(b)図は、(a)図の要部を拡大したものであり、
図2において、小寸法の係止板5が、タイヤ周方向の要所要所において、「Vの字」状に折れ曲がった状態を呈して、上記した4者を熱溶融によって部分的に一体化接合している。耐熱性補強層4は、少なくとも接合箇所付近のバンド部材3に対して設けられていることが好ましい。理由は、特に、接合箇所付近では、接合時の物理的力などにより該バンド部材3の厚さが他部分よりも薄くなっていることがあり、その付近で耐熱性補強層4を設けることは、補強効果・改善効果がより大きく得られることによる。
【0028】
吸音材2はバンド部材3と熱可塑性樹脂製の係止部材5との間に配置され、係止部材5が吸音材2を通してバンド部材3に対して熱融着されている。吸音材2は、吸音効果の点で、極力その容積を維持していることが好ましく、要所要所でバンド部材3と接合されていることは該容積を維持し吸音効果を高くする上で好ましい。係止部材5の構成材料は、バンド部材3と同種の熱可塑性樹脂を用いるとよく、例えば、バンド部材ととともにポリプロピレン樹脂を用いるのが好ましい。
【0029】
図3(a)〜(c)は、超音波溶着機を用いた場合の係止部材5とバンド部材3との熱融着法の一例を示すものである。まず、
図3(a)に示すように、吸音材2をバンド部材3と熱可塑性樹脂製の板状の係止部材5との間に配置する。バンド部材3の下には耐熱性補強層4が配されている。次に、
図3(b)に示すように、超音波溶着機の加振用ホーン9を係止部材5に押し付け、係止部材5を「Vの字状に折れ曲げた状態にし、その折り曲げられた先端部分を局部的に加熱する。これにより、
図3(c)に示すように、吸音材2を通して係止部材5とバンド部材3、耐熱性補強層4の4者を、熱融着により一体化させる。該一体化部分には、熱融着部8が形成される。加振用ホーン9は、該熱融着部8を適宜に形成させた後、元の位置に戻り、吸音材2とバンド部材3の一体固定化がなされる。
【0030】
本発明において、バンド部材に対し設けられる「耐熱性補強層」とは、該補強層の耐熱変形温度(ASTM D648耐熱温度(連続))が、バンド部材の同耐熱変形温度よりも高いものをいう。一般には、該耐熱性補強層は、耐熱変形温度(ASTM D648耐熱温度(連続))が130℃以上である樹脂シート、または樹脂繊維からなる織布であることが、耐熱特性を良好に発揮できる点で好ましい。より好ましくは、耐熱変形温度(ASTM D648耐熱温度(連続))が140℃以上の樹脂シートである。
【0031】
耐熱性補強層を構成する樹脂シートは、バンド部材の耐熱変形温度との関係で上記の耐熱特性を有するものであればよく、特に限定されないが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂の種類としては、ポリイミド樹脂(該耐熱変形温度が300℃以上)、またはポリフェニレンサルファイド樹脂(該耐熱変形温度は260℃前後)が好適であり、それら樹脂成分を配合した樹脂フィルムシートであることが好ましい。該樹脂シートの厚さは、10μm〜200μmの範囲内とすることが、耐熱特性を良好に発揮できて、補強効果を高いものにできることから好ましい。
【0032】
また、耐熱性補強層を構成する樹脂繊維からなる織布は、PET樹脂(該耐熱変形温度が240℃前後)繊維織布であることが好ましく、厚みは0.1〜0.5mmが好ましい。ちなみに、PET樹脂をバンド部材として用いると、張力に耐えうるためには厚みを1.0mm程度に設定しなければならないが、その場合には、繰り返し曲げに対する耐久性が一般に不足する。上記厚み0.1〜0.5mmの範囲内で用いると、(薄いため)耐久性は問題ない。従って、バンド部材はPP樹脂を用い、耐熱性の高いPET織布を耐熱性補強層として用いることが、繰り返し曲げ耐久性と高温環境下での強度を両立できる点で、優れた組み合わせである。
【0033】
図4(a)、(b)は、いずれも本発明にかかるタイヤ用騒音低減装置の一実施態様例をモデル的に示した外観斜視図である。
図4(a)は、吸音材2が、タイヤ周方向に連続して全周にわたり存在しているものではなく、適宜のタイヤ周方向の長さLを呈して、複数個が分断して存在しているものを示している。また、吸音材2とバンド部材3との固定手段は、
図2で説明した、小寸法の係止板5がタイヤ周方向の要所要所において、「Vの字」状に折れ曲がった状態を呈して部分的に一体化接合されて固定されている例を示している。バンド部材3は、タイヤ周方向に連続して全周にわたり存在しているものである。吸音材2のタイヤ周方向の長さLは、L=20cm〜50cmの範囲内であることが好ましく、分断して用いる場合の吸音材2の個数は、3〜7個の範囲であることが好ましい。分断させて複数個の吸音材を使用する場合は、吸音材の破壊が、何らかの理由で生じた場合でも、その1個の吸音材の破壊だけに止まり、全体の破壊には及ばない点で優れている。
【0034】
図4(b)は、吸音材2が、タイヤ周方向に連続して全周にわたり存在しているものではなく、適宜のタイヤ周方向の長さLを呈して、複数個が分断して存在しているものを示している点で、
図4(a)と同様であるが、吸音材2とバンド部材3との固定手段が長寸法の係止板5がタイヤ全周わたって用いられている点で相違しているものである。この態様では、超音波溶着機の加振用ホーンを、係止部材5のタイヤ周方向の要所要所において、該係止部材に押し付け、該押しつけされた溶着部分6で部分的に一体化接合されて固定されている例である。
【0035】
図5(a)、(b)は、本発明にかかるタイヤ用騒音低減装置における吸音材、バンド部材3と耐熱性補強層4の係合状態の代表的例をモデル的に示したものであり、(a)は、
図2や
図4(a)に示した態様におけるもので、タイヤ周方向断面でかつ係止部材5付近を示したものである。(b)はタイヤ幅方向断面図であり、バンド部材3と耐熱性補強層4の係合状態を示している(吸音材は図示していない)。耐熱性補強層4のタイヤ幅方向長さは、バンド部材の
それと同一である必要はなく、0.5〜1倍程度でよい。
【0036】
本発明者らの知見によれば、本発明の効果を良好に得るために、バンド部材3および耐熱性補強層4のタイヤ幅方向断面での合計断面積が10〜80mm
2 であり、それぞれの断面積(mm
2 ))と100℃における引張弾性率(部材の長手方向)(N/mm
2)の積の合計が、500N以上であることが好ましい。ここで、100℃における引張弾性率(部材の長手方向)とは、JIS7161による。より好ましくは、それぞれの断面積(mm
2 )と100℃における引張弾性率(部材の長手方向)(N/mm
2)の積の合計価は600N以上であることである。
【0037】
また、本発明者らの知見によれば、耐熱性補強層4は、バンド部材3の外周の一面に板状に貼られている態様のものでもよいが(
図1〜
図5)、バンド部材3の全外周面あるいは大半の外周面を覆うように、バンド部材3の外周に螺旋状に巻き付けて配したものでもよい。バンド部材3の外周面のほぼ全体に、耐熱性補強層を配することによって、耐熱性補強層4が剥がれにくくなり、耐熱特性、耐久特性が格段に向上するからである。螺旋状の巻き付けは、全外周面を覆うようにすることが最も良いが、多少の間隔が空いているものであってもよく、その場合でも効果は得られる。このバンド部材3の全外周面を覆うように、耐熱性補強層4を該バンド部材3の外周に螺旋状に巻き付けて配した態様例を
図6に示した。
【0038】
また、タイヤ用騒音低減装置の具体的構造としては、吸音材2を挟んで、バンド部材3と同一材料で形成した係合部材5と、バンド部材3とを溶着させることにより、吸音材2、バンド部材3および係合部材5が、少なくとも溶着箇所において一体固定化されている構造であるものが、全体の強度面や耐熱耐久性がより高くなり好ましい。特に、この固定方法は、
図2、
図3、
図4、
図5に示した構造のもので実現可能であるが、この固定方法の場合には、溶着部のバンド部材が薄くなるために耐久性が弱くなる方向であり、本発明の効果がより大きく得られるからである。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明について具体的に説明する。
【0040】
実施例1、比較例1
試験タイヤとして、タイヤサイズ275/35R20 100Yの試験タイヤを準備し、各試験タイヤの内腔に、本発明にかかるタイヤ騒音低減装置(実施例1)、本発明によらない耐熱性補強層を有していないタイヤ騒音低減装置(比較例1)を装着した。
【0041】
試験タイヤは、いずれも吸音材はウレタンフォームで構成し、
図2と
図4(a)に示したように、バンド部材はタイヤ全周に環状に存在する弾性バンド部材とし、吸音材は複数の吸音材が全周にわたり存在するが、複数個に分断されて存在するものとした。
【0042】
係止部材とバンド部材は、いずれも熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂、耐熱変形温度(ASTM D648耐熱温度(連続)60℃)製とした。本発明の実施例1品で用いた耐熱性補強層は、ポリイミド樹脂フィルムシート(厚さ30μm)とし、バンド部材と同一幅の帯状の該樹脂フィルムシートを、アクリル樹脂製の粘着剤によってバンド部材に貼り合わせた。
【0043】
係止部材を用いた吸音材とバンド部材の接合一体化は、超音波溶着機を使用して行った。
【0044】
各試験タイヤの試験は、走行速度300km/時間で
計3時間の連続走行とした(タイヤ空気圧270、負荷荷重5.6kN)。
【0045】
各試験走行を終了した後、各試験タイヤ内の騒音低減装置のバンド部材について変形の有無について調べたところ、実施例1のタイヤは何ら変形や損傷の発生が認められなかったが、比較例1のタイヤは、高熱のもとで張力が加わり発生したと解されるバンド部材の変形伸びが発生していた。その変形は、タイヤ騒音低減装置の耐久性、吸音性能の低下を招くものと判断できるものであった。