(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質材料からなる吸音材と、該吸音材をタイヤ内面に装着するため環状に形成されたバンド部材を有し、該環状のバンド部材の内面側に前記吸音材を固定して取り付けたタイヤ用騒音低減装置において、前記バンド部材を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該環状のバンド部材の外面側に断熱層を設け、該断熱層における厚さが3〜12mmであり、密度が15〜30kg/m3 であり、引裂強度が6〜10N/cmであり、引張強さが80kPa以上であり、硬さが80〜120Nであることを特徴とするタイヤ用騒音低減装置。
前記バンド部材と前記吸音材とを互いに固定する手段によって、前記断熱層も前記バンド部材の外面側に固定されていることを特徴とする請求項1記載のタイヤ用騒音低減装置。
前記バンド部材と前記吸音材とが超音波溶着法により、該バンド部材と同質の材料からなる係合部材をして該吸音材を貫通させて、該係合部材と該バンド部材が溶着固定されていて、かつ、前記断熱層が該バンド部材の周囲をタイヤ幅方向に巻き回されている状態で、前記係合部材と前記バンド部材の溶着固定に付随して固定されていることを特徴とする請求項1または2記載のタイヤ用騒音低減装置。
前記タイヤ用騒音低減装置における前記断熱層の幅Wが、前記バンド部材の幅Wb、前記吸音材の最大幅Wsと、下記(a)式、(b)式の関係を満足し、かつ、該タイヤ用騒音低減装置がタイヤ内に装着されて空気圧が充填された状態で、前記吸音材とタイヤ内面との間に空間が形成されるように構成されてなることを特徴とする請求項7記載の空気入りタイヤ。
断熱層の幅W>バンド部材の幅Wb ……(a)式
断熱層の幅W<吸音材の最大幅Ws×0.7 ……(b)式
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来、騒音低減装置が用いられていたタイヤサイズに比べて、非常に高速(例えば、300km/時以上)での走行が可能に設計されたタイヤに、熱可塑性合成樹脂製バンド部材を用いたタイヤ用騒音低減装置を適用した場合、吸音材の質量によってバンド部材が大きな張力を受け、さらにタイヤの発熱によって該バンド部材を構成する熱可塑性合成樹脂が軟化することにより、該バンド部材が塑性変形(通常は、伸びる変形)をしてしまう場合があった。バンド部材がそうした塑性変形をした場合、弾性特性に基づく吸音材の正常な保持をすることができず、騒音低減装置の機能を十分に発揮することができないか、耐久性が損なわれて、騒音低減装置の破壊につながるおそれもあった。
【0006】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、高速走行用タイヤで、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形を抑止することができ、そうした高速走行のもとでも騒音低減機能を十分に発揮することができるタイヤ用騒音低減装置と空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成する本発明のタイヤ用騒音低減装置は、以下の(1)の構成を有する。
(1)多孔質材料からなる吸音材と、該吸音材をタイヤ内面に装着するため環状に形成されたバンド部材を有し、該環状のバンド部材の内面側に前記吸音材を固定して取り付けたタイヤ用騒音低減装置において、前記バンド部材を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該環状のバンド部材の外面側に断熱層を設け
、該断熱層における厚さが3〜12mmであり、密度が15〜30kg/m3 であり、引裂強度が6〜10N/cmであり、引張強さが80kPa以上であり、硬さが80〜120Nであることを特徴とするタイヤ用騒音低減装置。
また、上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、以下の(9)の構成を有する。
(9)多孔質材料からなる吸音材と、該吸音材をタイヤ内面に装着するため環状に形成されたバンド部材を有し、該環状のバンド部材の内面側に前記吸音材を固定して取り付けたタイヤ用騒音低減装置をタイヤ内腔内に備える空気入りタイヤにおいて、
前記バンド部材を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該環状のバンド部材の外面側に断熱層を設け、前記タイヤ用騒音低減装置における前記断熱層の幅Wが、前記バンド部材の幅Wb、前記吸音材の最大幅Wsと、下記(a)式、(b)式の関係を満足し、かつ、該タイヤ用騒音低減装置がタイヤ内に装着されて空気圧が充填された状態で、前記吸音材とタイヤ内面との間に空間が形成されるように構成されてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
断熱層の幅W>バンド部材の幅Wb ……(a)式
断熱層の幅W<吸音材の最大幅Ws×0.7 ……(b)式
【0008】
かかる本発明のタイヤ用騒音低減装置において、好ましくは、以下の(2)〜
(6)のいずれかの構成を有する。
(2)前記バンド部材と前記吸音材とを互いに固定する手段によって、前記断熱層も前記バンド部材の外面側に固定されていることを特徴とする上記(1)記載のタイヤ用騒音低減装置。
(3)前記バンド部材と前記吸音材とが超音波溶着法により、該バンド部材と同質の材料からなる係合部材をして該吸音材を貫通させて、該係合部材と該バンド部材が溶着固定されていて、かつ、前記断熱層が該バンド部材
の周囲をタイヤ幅方向に巻き回
されている状態で、前記係合部材と前記バンド部材の溶着固定に付随して固定されていることを特徴とする上記(1)または(2)記載のタイヤ用騒音低減装置。
(4)前記断熱層が、前記バンド部材の
周囲に螺旋状に配されてなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
(5)前記断熱層が、熱伝導率が0.040W/(m・k)以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
(6)前記吸音材が、タイヤ径方向に空いた貫通孔を多数有するものであることを特徴とする上記(1)〜
(5)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置。
【0009】
また、上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、以下の
(7)の構成を有する。
(7)上記(1)〜
(6)のいずれかに記載のタイヤ用騒音低減装置をタイヤ内腔内に有してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
さらに、かかる本発明の空気入りタイヤにおいて、好ましくは、以下の
(8)の構成を有するものである。
(8)前記タイヤ用騒音低減装置における前記断熱層の幅Wが、前記バンド部材の幅Wb、前記吸音材の最大幅Wsと、下記(a)式、(b)式の関係を満足し、かつ、該タイヤ用騒音低減装置がタイヤ内に装着されて空気圧が充填された状態で、前記吸音材とタイヤ内面との間に空間が形成されるように構成されてなることを特徴とする上記
(7)記載の空気入りタイヤ。
断熱層の幅W>バンド部材の幅Wb ……(a)式
断熱層の幅W<吸音材の最大幅Ws×0.7 ……(b)式
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる本発明によれば、高速走行用タイヤで、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形を抑止することができ、耐久性良く、騒音低減機能を十分に発揮することができるタイヤ用騒音低減装置を提供することができる。
また、請求項9にかかる本発明によれば、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形を抑止することができ、耐久性良く、騒音低減機能を十分に発揮することができる空気入りタイヤを提供することができる。
【0011】
請求項2〜6のいずれかにかかる本発明のタイヤ用騒音低減装置によれば、上述した請求項1にかかる本発明の効果を、より明確に有したタイヤ用騒音低減装置が実現できる。
請求項
7または
8にかかる本発明にかかる空気入りタイヤによれば、上述した請求項1〜
6のいずれかにかかる本発明のタイヤ用騒音低減装置を装着した空気入りタイヤが提供され、時速300km以上などの高速走行をしたときであっても、タイヤの熱によるバンド部材の塑性変形が抑止され得て、耐久性良く、騒音低減機能を発揮する空気入りタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面などを用いて更に詳しく本発明について、説明する。
【0014】
本発明のタイヤ用騒音低減装置1は、
図1にその一実施形態例の外観斜視図を示したように、多孔質材料からなる吸音材2と、該吸音材2をタイヤ内面に装着するため環状に形成されたバンド部材3を有し、該環状のバンド部材3の内面側に前記吸音材2を固定して取り付けたタイヤ用騒音低減装置において、バンド部材3を熱可塑性樹脂で構成するとともに、該環状のバンド部材3の外面側に断熱層4を設けたことを特徴とする。
【0015】
図2(a)、(b)は、いずれも本発明にかかるタイヤ用騒音低減装置の一実施態様例をモデル的に示したタイヤ幅方向の断面図である。同(a)は
図1に示した構造のものの断面図であり、同(b)は、必要に応じて使用されればよい固定部材5を用いている例を示した断面図である。固定部材5は、固定バンド3と吸音材2の相互固定のために用いられるものであり、例えば、該固定部材5として、熱可塑性樹脂製の板状のもの(固定板または固定チップ)などを使用して、該固定部材5の上から、例えば超音波溶着機の加振用ホーン(図示せず)を該固定部材5に押し付けて、該固定部材5と吸音材2を熱変形させつつ、吸音材2、バンド部材3、該固定部材5の3者、さらに断熱層4を含めた4者を、熱溶融接合により相互に固定することができるものである。
【0016】
このように熱可塑性樹脂で構成された環状のバンド部材3の外周面に断熱層4を設けたことにより、例えば、300km/時以上などの極めて高速で走行可能なタイヤに多孔質材料からなる吸音材2を適用した場合でも、タイヤの発熱による熱がバンド部材3に対して伝わりにくくなり、バンド部材3を構成する樹脂が熱により軟化することが抑制され、その結果、バンド部材3が塑性変形(伸びる)してしまうことが抑制され、タイヤ用騒音低減装置1の耐久性が極めて良好となり、騒音低減機能を十分に発揮することができるタイヤ用騒音低減装置を実現できる。
【0017】
バンド部材3は、繰り返し曲げ変形に対して耐久性の優れた樹脂を使用することが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)を使用することが好ましい。断熱層4は、バンド部材3に加わる繰り返し曲げ変形に追随することができて、かつそうした繰り返し曲げ変形に対して高い耐久性を有するものがよい。
【0018】
また、断熱層4は、優れた断熱機能を有するものであればよく、特に限定されないが、代表的には、多孔質材からなる見かけ比重の小さい材料を用いて構成することが好ましく、例えば、多孔質のポリウレタンフォーム材などを好ましく使用することができる。また、ガラスウールなども使用できる。
【0019】
断熱層4とバンド部材3との接合は、例えば、
図2(a)に示したような方式(固定部材5を用いない方式)の場合は、断熱層4の少なくともバンド部材3側の一面上には粘着層(図示せず)を有し、バンド部材3に該断熱層4の粘接着が容易にできるように構成されているものを用いるのがよい。粘着層は耐熱性の点でアクリル系またはゴム系の接着剤が好ましい。また、断熱層4は、バンド部材の全幅(
図1のw)と同一の幅で設けられていてもよいが、効果は全幅でなくても得られるので、必ずしも全幅でなくともよく、好ましくは断熱層の幅は(0.5〜1)×wで、バンド部材と中心線を一致させて設けられているのがよい。
【0020】
断熱層4は、バンド部材3のタイヤ幅方向断面上での全外周を1周以上、少なくとも1周は巻き回して設置することが、本発明の効果を大きくする上で好ましい。その構造の例を
図3に示した。
図3に示した例では、断熱層4はバンド部材3の図上で左上端部からスタートし、右上端部を通ってバンド部材3の下方を通過するように巻き回され、さらに左上端部に至って(1周)、さらに右上端部まで全部で約1周半巻き回されている。このようにして断熱層4を配置してバンド部材3の周囲に設けると、バンド部材3に伝わるタイヤの熱は非常に小さなものとなる。
【0021】
このように断熱層4をバンド部材3の外周に巻き回して設置する場合は、
図3に示したように、バンド部材3と吸音材2とを互いに固定する手段(固定部材5)によって、断熱層4もバンド部材の外面側に固定するようにするのが好ましい。
【0022】
上述した好ましい態様である本発明にかかる空気入りタイヤを、
図4に示す。
図4において、空気入りタイヤTは、トレッド部10と、左右一対のビード部11と、これらトレッド部とビード部11とを互いに連接するサイドウォール部12とを備えている。そして、トレッド部10の内面には、
図1にモデルを示したリング状のタイヤ用騒音低減装置1が装着されている。
【0023】
タイヤ用騒音低減装置1は、多孔質材料からなる吸音材2と、該吸音材2をタイヤ内面に装着するためのバンド部材3とを備えている。吸音材2は多数の内部セルを有し、その多孔質構造に基づいて所定の吸音特性を有している。吸音材2の多孔質材料としては発泡ポリウレタンを用いるとよい。
【0024】
バンド部材3はタイヤ周方向に連続的に延在するように、帯状でかつ全体は環状に成形されている。このバンド部材3は弾性復元力に基づいて吸音材2をタイヤ内面に保持する。このように構成される騒音低減装置1は、通常の空気入りタイヤTに対して着脱自在であり、その着脱作業が容易である。本発明では、このバンド部材3に断熱効果をもたらす断熱層4を、該バンド部材3の外面側(タイヤ外周面側)に設けたものである。
【0025】
騒音低減装置1において、吸音材2とバンド部材3との固定手段は、それら両者が熱可塑性合成樹脂性のものであれば熱融着を採用することが実際的なのであり、熱融着を可能にするため、また成形性の良さなどから、バンド部材3は熱可塑性樹脂で構成することが肝要である。
【0026】
そして、熱融着を採用することのメリットとして、特に、熱可塑性樹脂製の板状の固定部材5(固定板または固定チップ)を使用して、該固定部材5の上から例えば超音波溶着機の加振用ホーン(図示せず)を該固定部材5に押し付けて、該固定部材5と吸音材2を熱変形させつつ、吸音材2、バンド部材3、さらに固定部材5の3者、さらには断熱層4を含めた4者を、熱溶融接合により相互に固定することができることがある。
【0027】
なお、上述の説明において、断熱層4の少なくともバンド部材3側の一面上には粘着層を有し、バンド部材3に該断熱層4の粘接着が容易にできるように構成されているものを用いることが好ましいとも説明しているが、粘着層を形成する粘着剤は耐熱性の点で問題があることがあり、本来は、粘着剤を使用したりすることなく、上記4者を、熱溶融接合により相互に固定することが最も良いのである。
【0028】
その接合構造を説明すると、
図4(a)、(b)において、小寸法の固定板5が、タイヤ周方向の要所要所において、「Vの字」状に折れ曲がった状態を呈して、上記した4者を熱溶融によって部分的に一体化接合している。断熱層4は、全周にわたり設けられることがよいが、少なくとも該接合箇所付近のバンド部材3の外面に対し設けられていることは重要である。理由は、特に、接合箇所付近では、接合時の物理的力などにより該バンド部材3の厚さが他部分よりも薄くなっていることがあり、その付近で断熱層4を設けることは、バンド部材の熱的影響を小さくする上で、より効果的だからである。
【0029】
吸音材2はバンド部材3と熱可塑性樹脂製の固定部材5との間に配置され、固定部材5が吸音材2を通してバンド部材3に対して熱融着されている。吸音材2は、吸音効果の点で、極力その容積を維持していることが好ましく、要所要所でバンド部材3と接合されていることは該容積を維持し吸音効果を高くする上で好ましい。固定部材5の構成材料は、バンド部材3と同種の熱可塑性樹脂を用いるとよく、例えば、バンド部材ととともにポリプロピレン樹脂を用いるのが好ましい。
【0030】
すなわち、本発明においては、バンド部材3と吸音材2とが超音波溶着法により、バンド部材3と同質の材料からなる固定部材5をして吸音材2を貫通させて、該固定部材5と該バンド部材3が溶着固定されていて、かつ、断熱層4が該バンド部材3をタイヤ幅方向に巻き回している状態で、固定部材5とバンド部材3の溶着固定に付随して固定されていることが、タイヤ用騒音低減装置の全体的な強度を上げるので好ましい。
【0031】
図5(a)〜(c)は、超音波溶着機を用いた場合の固定部材5とバンド部材3との熱融着法の一例を示すものである。まず、
図5(a)に示すように、吸音材2をバンド部材3と熱可塑性樹脂製の板状の固定部材5との間に配置する。この例では、バンド部材3の下に断熱層4を配しているものを示している。次に、
図5(b)に示すように、超音波溶着機の加振用ホーン9を固定部材5に押し付け、固定部材5を「Vの字状に折れ曲げた状態にし、その折り曲げられた先端部分を局部的に加熱する。これにより、
図5(c)に示すように、吸音材2を通して固定部材5とバンド部材3、断熱層4の4者を、熱融着により一体化させる。該一体化部分には、熱融着部8が形成される。加振用ホーン9は、該熱融着部8を適宜に形成させた後、元の位置に戻り、吸音材2とバンド部材3、断熱層4を含んだ一体固定化がなされる。熱融着による固定自体は、超音波溶着機を用いずに他の手法でも可能と考えられるが、本発明者らの知見によれば、超音波溶着機を用いた超音波溶着法が、得られる製品の強度、加工コストなどの点で、他の手法よりも優れている。
【0032】
図6(a)、(b)は、いずれも本発明にかかるタイヤ用騒音低減装置の一実施態様例をモデル的に示した外観斜視図である。
図6(a)は、吸音材2が、タイヤ周方向に連続して全周にわたり存在しているものではなく、適宜のタイヤ周方向の長さLを呈して、複数個が分断して存在しているものを示している。また、吸音材2とバンド部材3との固定手段は、
図2で説明した、小寸法の固定板5がタイヤ周方向の要所要所において、「Vの字」状に折れ曲がった状態を呈して部分的に一体化接合されて固定されている例を示している。バンド部材3は、タイヤ周方向に連続して全周にわたり存在しているものである。吸音材2のタイヤ周方向の長さLは、L=20cm〜50cmの範囲内であることが好ましく、分断して用いる場合の吸音材2の個数は、3〜7個の範囲であることが好ましい。分断させて複数個の吸音材を使用する場合は、吸音材の破壊が、何らかの理由で生じた場合でも、その1個の吸音材の破壊だけに止まり、全体の破壊には及ばない点で優れている。
【0033】
図6(b)は、吸音材2が、タイヤ周方向に連続して全周にわたり存在しているものではなく、適宜のタイヤ周方向の長さLを呈して、複数個が分断して存在しているものを示している点で、
図6(a)と同様であるが、吸音材2とバンド部材3との固定手段が長寸法の固定部材(固定板)5がタイヤ全周にわたって用いられている点で相違しているものである。この態様では、超音波溶着機の加振用ホーンを、固定部材(固定板)5のタイヤ周方向の要所要所において、該固定部材に押し付け、該押しつけされた溶着部分6で部分的に一体化接合されて固定されている例である。
【0034】
また、本発明者らの知見によれば、断熱層4は、バンド部材3の外周の一面に板状に貼られている態様(
図1〜
図2)、あるいは、タイヤ幅方向に巻き回した、タイヤ周方向に沿って包み込んだ態様(
図3〜
図4)のものでもよいが、バンド部材3の全外周面あるいは大半の外周面を覆うように、バンド部材3の外周に螺旋状に巻き付けて配したものでもよい。バンド部材3の外周面のほぼ全体に、断熱層の縁線が位相をずらしつつ該断熱層が配されることによって、断熱層4がより剥がれにくくなり、耐熱特性、耐久特性が大きく向上するからである。螺旋状の巻き付けは、全外周面を覆うようにすることが最も良いが、多少の間隔が空いているものであってもよく、その場合でも効果は得られる。このバンド部材3の全外周面を覆うように、断熱層4を該バンド部材3の外周に螺旋状に巻き付けて配した態様例を
図7に示した。
【0035】
本発明において、断熱層は、熱伝導率(JIS A9511、(23℃))が0.040W/(m・k)以下であることが、断熱効果を良好に得る上で好ましい。さらに好ましくは、0.030W/(m・k)以下である。
【0036】
また、断熱層は、厚さ3〜12mmであり、密度が15〜30kg/m
3 、引裂強度が6〜10N/cm、引張強さが80kPa以上、硬さが80〜120Nであることが好ましい。断熱層は、タイヤ内面と接触するものであるため、物理的な耐久性も要求されるものであり、上記範囲を満たすことが重要だからである。ここで、密度はJIS K7222、硬さはJIS K6400−2D法、引張強さと引裂強度は、JIS K6400−5により測定される値である。なお、ここでいう断熱層の厚さとは、タイヤ内面とバンド部材の間にある断熱層の厚さをいうものである(すなわち、バンド部材と吸音材の間にある断熱層の厚さ分については、計算に含めない)。
【0037】
また、本発明において、吸音材は、タイヤ径方向に空いた貫通孔を多数有するものであることが好ましい。該構造にすると、貫通孔が放熱効果を発揮し、特に高速走行(例えば、300km/時以上)用のタイヤで、耐久性良く高い吸音効果を、長期にわたり継続して得られるからである。
【0038】
本発明にかかる空気入りタイヤは、上述した騒音低減装置をタイヤ内腔内に有してなるものである。本発明の空気入りタイヤにおいては、タイヤ用騒音低減装置における断熱層の幅Wが、バンド部材の幅Wb、吸音材の最大幅Wsと、下記(a)式、(b)式の関係を満足し、かつ、該タイヤ用騒音低減装置がタイヤ内に装着されて空気圧が充填された状態で、吸音材とタイヤ内面との間に空間が形成されるように構成されてなることが好ましい。
断熱層の幅W>バンド部材の幅Wb ……(a)式
断熱層の幅W<吸音材の最大幅Ws×0.7 ……(b)式
これは、断熱材が吸音材の全幅にわたって設置されていると、タイヤ側からタイヤ内腔への放熱が妨げられることになり、タイヤの高温化につながり好ましくないからである。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明について具体的に説明する。
【0040】
実施例1、比較例1
試験タイヤとして、タイヤサイズ275/35R20 100Yの試験タイヤを準備し、各試験タイヤの内腔に、本発明にかかるタイヤ騒音低減装置(実施例1)、本発明によらない、断熱層を有していないタイヤ騒音低減装置(比較例1)を装着した。
試験タイヤは、いずれも吸音材はウレタンフォームで構成し、
図3、
図4、
図6(a)に示したように、バンド部材はタイヤ全周に環状に存在する弾性バンド部材とし、吸音材は複数の吸音材が全周にわたり存在するが、複数個に分断されて存在するものとした。
【0041】
係止部材とバンド部材は、いずれも熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂、熱変形温度(18.5Kg/cm2)(ASTM D648 A法による)が60℃)製とした。
本発明の実施例1品で用いた断熱層は、発泡ポリウレタンフォーム(厚さ5mm)、密度が26kg/m
3 、引裂強度が9.0N/cm、引張強さが120kPa、硬さが80Nである。
固定部材を用いた吸音材とバンド部材、断熱層の接合一体化は、超音波溶着機を使用して行った。
【0042】
各試験タイヤの試験は、走行速度300km/時間で、3時間の連続走行とした(タイヤ空気圧270、負荷荷重5.6kN)。
各試験走行を終了した後、各試験タイヤ内の騒音低減装置のバンド部材について変形の有無について調べたところ、実施例1のタイヤは何ら変形や損傷の発生が認められなかったが、比較例1のタイヤは、高熱のもとで張力が加わり発生したと解されるバンド部材の変形伸びが発生していた。その変形は、タイヤ騒音低減装置の耐久性、吸音性能の低下を招くものと判断できるものであった。