特許第6349966号(P6349966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349966
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/14 20060101AFI20180625BHJP
   F16F 15/137 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F16F15/14 Z
   F16F15/137 A
   F16F15/137 B
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-110581(P2014-110581)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-224740(P2015-224740A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】川添 博司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 三城
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−088152(JP,U)
【文献】 特開2012−082923(JP,A)
【文献】 特開2009−115112(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011105009(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心回りに回転可能な第一の回転体と、
前記回転中心回りに回転可能な第二の回転体と、
少なくとも前記第一の回転体の一部によって形成された収容室に収容され、前記第一の回転体と前記第二の回転体との間に介在し、前記第一の回転体と前記第二の回転体との相対回転により弾性変形する第一の弾性部と、
前記回転中心回りに回転可能な第三の回転体と、
前記第二の回転体と前記第三の回転体との間に介在し、前記第二の回転体と前記第三の回転体との相対回転により弾性変形する第二の弾性部と、
錘部材と、当該錘部材と前記第二の回転体との間に介在し前記錘部材と前記第二の回転体との相対回転により弾性変形する第三の弾性部と、を有し、前記錘部材および前記第三の弾性部が前記収容室外に位置された動吸振器と、
を備え
前記第二の回転体は、前記第三の回転体の前記回転中心の径方向の外側の端部よりも当該径方向の外側を介して前記第二の回転体のうち前記第三の回転体の前記軸方向の一方側の部分と前記第二の回転体のうち前記軸方向の他方側に位置され前記動吸振器と接続された部分とを接続する接続部を有した、ダンパ装置。
【請求項2】
前記錘部材は、前記第三の弾性部よりも前記回転中心の径方向の外側に位置された第一の部分を有した、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記錘部材は、前記収容室よりも前記回転中心の径方向の外側に位置された第二の部分を有した、請求項1または2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第一の回転体には、前記回転中心の軸方向に凹んだ凹部が設けられ、
前記錘部材の少なくとも一部が、前記凹部内に収容された、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記収容室には潤滑剤が収容され、
前記第一の回転体と前記第二の回転体との間に介在し、前記第一の回転体および前記第二の回転体のうち少なくとも一方と摺動するとともに、前記潤滑剤が前記収容室外に漏れるのを抑制する介在部材を備えた、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第二の弾性部は、前記収容室外に位置されるとともに、前記第一の弾性部よりも前記回転中心の径方向の内側に位置された、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記第三の弾性部は、前記第三の回転体の前記回転中心の径方向の外側の端部よりも前記径方向の内側に位置された、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第一の回転体と第二の回転体との間に介在した第一の弾性部によってトルク変動を低減する第一メインダンパと、第二の回転体と第三の回転体との間に介在した第二の弾性部によってトルク変動を低減する第二メインダンパと、錘部材と第三の弾性部とによって振動を抑制するダイナミックダンパと、を備えたダンパ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−52031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のダンパ装置では、第一メインダンパ、第二メインダンパ、およびダイナミックダンパが、一つの収容室内に収容されている。よって、例えば、ダンパ装置が全体的に大型化したり、ダンパ装置の各部の大きさや配置が制限されたりする場合があった。この種のダンパ装置では、例えば、ダンパ装置の各部の大きさや配置が制約されたり、ダンパ装置の大型化を抑制する構成のダンパ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のダンパ装置は、回転中心回りに回転可能な第一の回転体と、上記回転中心回りに回転可能な第二の回転体と、少なくとも上記第一の回転体の一部によって形成された収容室に収容され、上記第一の回転体と上記第二の回転体との間に介在し、上記第一の回転体と上記第二の回転体との相対回転により弾性変形する第一の弾性部と、上記回転中心回りに回転可能な第三の回転体と、上記第二の回転体と上記第三の回転体との間に介在し、上記第二の回転体と上記第三の回転体との相対回転により弾性変形する第二の弾性部と、錘部材と、当該錘部材と上記第二の回転体との間に介在し上記錘部材と上記第二の回転体との相対回転により弾性変形する第三の弾性部と、を有し、上記錘部材および上記第三の弾性部が上記収容室外に位置された動吸振器と、を備える。よって、実施形態のダンパ装置によれば、動吸振器が収容室外に設けられたため、例えば、動吸振器が収容室内に設けられた場合に比べて、ダンパ装置の各部の大きさや配置が制約されたり、ダンパ装置が全体的に大型化したりといった不都合が生じ難い。また、上記第二の回転体は、上記第三の回転体の上記回転中心の径方向の外側の端部よりも当該径方向の外側を介して上記第二の回転体のうち上記第三の回転体の上記軸方向の一方側の部分と上記第二の回転体のうち上記軸方向の他方側に位置され上記動吸振器と接続された部分とを接続する接続部を有する。よって、例えば、第三の回転体および接続部を、より簡単な構成によって実現することができる。
【0006】
また、上記ダンパ装置では、上記錘部材は、上記第三の弾性部よりも上記回転中心の径方向の外側に位置された第一の部分を有する。よって、例えば、第一の部分を有さない構成に比べて、錘部材の慣性が高まりやすい。
【0007】
また、上記ダンパ装置では、上記錘部材は、上記収容室よりも上記回転中心の径方向の外側に位置された第二の部分を有する。よって、例えば、第二の部分を有さない構成に比べて、錘部材の慣性がより一層高まりやすい。
【0008】
また、上記ダンパ装置では、上記第一の回転体には、上記回転中心の軸方向に凹んだ凹部が設けられ、上記錘部材の少なくとも一部が、上記凹部内に収容される。よって、例えば、凹部が設けられない場合に比べて、ダンパ装置が軸方向に大型化するのが抑制されつつ、錘部材の慣性を高めることができる。
【0009】
また、上記ダンパ装置では、上記収容室には潤滑剤が収容され、上記第一の回転体と上記第二の回転体との間に介在し、上記第一の回転体および上記第二の回転体のうち少なくとも一方と摺動するとともに、上記潤滑剤が上記収容室外に漏れるのを抑制する介在部材を備える。よって、介在部材を、収容室をシールする部材および摺動トルクを与える部材として用いることができる。よって、例えば、収容室をシールする部材と摺動トルクを与える部材とを別個に設けた場合に比べて、ダンパ装置の構成がより簡素化されやすい。
【0010】
また、上記ダンパ装置では、上記第二の弾性部は、上記収容室外に位置されるとともに、上記第一の弾性部よりも上記回転中心の径方向の内側に位置される。よって、例えば、第二の弾性部のモーメントアームを短くでき、第二の弾性部と他の部材との摺動トルクがより小さくなりやすい。
【0012】
また、上記ダンパ装置では、上記第三の弾性部は、上記第三の回転体の上記回転中心の径方向の外側の端部よりも上記径方向の内側に位置される。よって、例えば、第三の弾性部を回転中心により近づけて配置することができる。よって、例えば、錘部材を、第三の弾性部の径方向の外側のより広い領域に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態のダンパ装置の一例を模式的に示した図である。
図2図2は、第1実施形態のダンパ装置の一例を軸方向から見た正面図である。
図3図3は、第1実施形態のダンパ装置の一例の断面図である。
図4図4は、図3の一部が拡大して示された断面図である。
図5図5は、第2実施形態のダンパ装置の一例の要所断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の例示的な複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が省略される。また、以下に示される実施形態の構成(技術的特徴)、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。
【0015】
<第1実施形態>
図1に示されるように、本実施形態のダンパ装置1(トルク変動吸収装置)は、例えば、車両の駆動系において、動力源と受動部(従動部)との間に設けられる。詳細には、ダンパ装置1は、動力源の出力軸2(結合対象物)と、受動部の入力軸3(結合対象物)との間に設けられて、出力軸2と入力軸3との間で動力を伝達する。ダンパ装置1は、例えば、出力軸2と入力軸3との間の捩れによって生じるトルク変動や捩り振動を吸収(減衰、抑制)することができる。ダンパ装置1は、出力軸2および入力軸3とともに、動力伝達経路を構成している。動力源は、例えばエンジンやモータ等であり、受動部は、例えば変速機やトランスアクスル等である。なお、動力源としては、エンジンとモータとの両方を備えたハイブリット式のものであってもよい。また、受動部にモータを備えていてもよい。
【0016】
ダンパ装置1の回転中心Ax(回転軸、図3参照)は、ダンパ装置1に含まれる回転物(回転体4〜6や、弾性部7,8、動吸振器9等)の回転中心である。また、回転中心Axは、出力軸2および入力軸3の回転中心と略一致している。なお、以下では、特に言及しない限り、軸方向は回転中心Axの軸方向、径方向は回転中心Axの径方向、周方向は回転中心Axの周方向を示すものとする。また、以下の詳細な説明では、便宜上、軸方向の変速機側(図1の左側)を軸方向の一方側とし、軸方向のエンジン側(図1の右側)を軸方向の他方側とする。また、図中、軸方向の一方側を矢印Xで示し、径方向の外側を矢印Rで示す。また、以下では、駆動源の駆動力によってダンパ装置1が回転する場合の方向を正回転方向と称し、図中に正回転方向を矢印Fで示す。
【0017】
図1に示されるように、ダンパ装置1は、複数(例えば、三つ)の回転体4〜6(質量体、はずみ質量体、慣性体)と、複数(例えば、二つ)の弾性部7,8と、動吸振器9と、を備える。
【0018】
回転体4〜6は、動力伝達経路において直列に連結されている。回転体4〜6は、回転中心Ax回りに回転可能である。回転体4は、出力軸2に結合され、出力軸2と一体に回転する。すなわち、回転体4には、外部から回転駆動力が入力される。回転体6は、入力軸3に結合され、入力軸3と一体に回転する。回転体5は、回転体4と回転体6との間に設けられ、弾性部7,8を介して回転体4,6と連結されている。本実施形態では、回転体4が第一の回転体の一例であり、回転体5が第二の回転体の一例であり、回転体6が第三の回転体の一例である。
【0019】
弾性部7と弾性部8とは直列に連結されている。弾性部7は、回転体4と回転体5との間に介在している。弾性部7は、回転体4と回転体5との相対回転により弾性変形する。弾性部7は、弾性変形によって回転体4と回転体5との間のトルク変動を吸収(減衰、抑制)する。一方、弾性部8は、回転体5と回転体6との間に介在している。弾性部8は、回転体5と回転体6との相対回転により弾性変形する。弾性部8は、弾性変形によって回転体5と回転体6との間のトルク変動を吸収(減衰、抑制)する。本実施形態では、弾性部7が第一の弾性部の一例であり、弾性部8が第二の弾性部の一例である。
【0020】
動吸振器9は、回転体5に設けられている。具体的に、動吸振器9は、錘部材91と、回転体5と錘部材91との間に介在した弾性部92と、を有する。弾性部92は、回転体5と錘部材91との相対回転により弾性変形する。弾性部92は、弾性変形によって回転体4(入力軸2)と回転体6(出力軸3)との間に発生する捩り振動を吸収(減衰、抑制)する。本実施形態では、弾性部92が第三の弾性部の一例である。
【0021】
以下、ダンパ装置1の各部を、図2〜4を参照して詳細に説明する。なお、図2では、一部の部材が省略されている。
【0022】
図3に示されるように、回転体4は、ダンパ装置1のうち軸方向の他方側(図3では右側)に位置されている。回転体4は、軸方向(X方向)に互いに離間した一対の壁部4a,4bと、壁部4aと壁部4bとを接続する接続部4cと、を有する。壁部4a,4bは、いずれも、環状かつ板状に構成され、径方向(R方向)に沿って広がっている。壁部4aは、壁部4bの軸方向の一方側(図3では左側)に位置している。壁部4aは、壁部4bの外縁部(径方向の外側の端部)と軸方向に重なっている。接続部4cは、壁部4aの外縁部と壁部4bの外縁部とを接続し、筒状に構成されている。接続部4cは、壁部または筒状部とも称されうる。壁部4a,4bおよび接続部4cは、例えば、金属材料によって構成されうる。
【0023】
また、回転体4には、壁部4a,4bおよび接続部4cに囲まれた収容室4d(空間)が設けられている。収容室4dは、軸方向に互いに離間した壁部4aと壁部4bとの間に、円弧状の空間として形成されている。収容室4dには、弾性部7が収容されている。また、図3の下部に示されるように、壁部4aおよび壁部4bには、それぞれ、突出部4a1,4b1が設けられている。突出部4a1は、壁部4aから軸方向の他方側(壁部4b側)に向けて突出し、突出部4b1は、壁部4bから軸方向の一方側(壁部4a側)に向けて突出している。突出部4a1と突出部4b1とは、軸方向に互いに離間した状態で、軸方向に重なり合っている。本実施形態では、複数対(例えば、三対)の突出部4a1,4b1が、回転体4の周方向に間隔をあけて設けられ、収容室4dを周方向に複数(例えば、三つ)の収容領域4d1(収容空間)に区画(分割)している。そして、各収容領域4d1に、弾性部7が一つずつ入れられている(収容されている)。また、突出部4a1,4b1は、弾性部7と周方向(図2のF方向)に重なるよう設けられている。
【0024】
また、回転体4は、複数の部品によって構成されている。本実施形態では、回転体4は、軸方向の一方側(図3の左側)に位置されたプレート41と、軸方向の他方側に位置されたプレート42と、径方向の内側に位置されたプレート43,44と、を有する。プレート41は、壁部4aと、接続部4cの一部と、を含む。プレート42は、壁部4bの一部と、接続部4cの一部と、を含む。プレート43,44は、それぞれ、壁部4bの一部を含む。
【0025】
図3に示されるように、プレート41,42は、それらの外縁部どうしが軸方向に重ねられた状態で、例えば溶接等によって互いに結合されている。また、プレート41,42の外縁部には、例えば、絞り加工等によって、それぞれ、軸方向に凹んだ凹部41a,42aが設けられている。凹部41aは、プレート41の軸方向の一方側(図3の左側)の面に設けられ、軸方向の他方側(プレート42側)に向けて凹んでいる。一方、凹部42aは、プレート42の軸方向の他方側の面に設けられ、軸方向の一方側(プレート41側)に向けて凹んでいる。凹部42aには、外周に歯を有したギヤ45が設けられている。ギヤ45は、例えば溶接等によってプレート42に結合されている。ギヤ45は、エンジン用のスタータに設けられたギヤ(図示されず)と噛み合う。
【0026】
図4に示されるように、プレート43は、径方向に互いに離間した二つの筒部43a,43bと、筒部43aと筒部43bとを接続する接続部43cと、を有する。筒部43a(円筒部)は、プレート43のうちの軸方向の他方側(図4の右側)に位置され、プレート42の内縁部(径方向の内側の端部)と出力軸2の一部との間に位置されている。また、筒部43b(円筒部)は、プレート43のうちの軸方向の一方側に位置され、径方向の外側に位置された介在部材26,27と径方向の内側に位置されたプレート44との間に位置されている。接続部43cは、回転中心Axと交差して環状かつ板状に広がり、軸方向の他方側に位置されたプレート42と軸方向の一方側に位置されたプレート44とによって挟まれている。プレート43,44は、プレート42よりも小径である。図3に示されるように、プレート42〜44は、軸方向に相互に重ねられた状態で、結合具C1(例えば、リベット)によって結合(一体化)されている。また、壁部4bを構成するこれらのプレート42〜44は、結合具C2(例えば、ボルト)によって出力軸2に結合されている。すなわち、回転体4は、出力軸2と一体に回転する。
【0027】
図3に示されるように、回転体5は、弾性部材31(弾性部7)の径方向の内側に位置されている。回転体5は、回転中心Axの径方向に沿って広がった円環状かつ板状の壁部5aを有する。図2に示されるように、壁部5aの外縁部(突出部5b)は、部分的に径方向の外側に突出している。本実施形態では、複数(例えば、三つ)の突出部5bが、回転体5の周方向に間隔をあけて設けられている。図3の下部に示されるように、突出部5bは、軸方向に離間した突出部4a1と突出部4b1との間に位置されている。突出部5bは、突出部4a1および突出部4b1とともに、収容室4dを周方向に複数(例えば、三つ)の収容領域4d1(収容空間)に区画(分割)している。また、回転体5は、弾性部材36(弾性部8)の軸方向の一方側(図3の左側)に位置された張出部5cを有する。
【0028】
また、回転体5は、複数の部品によって構成されている。本実施形態では、回転体5は、軸方向の他方側(図3の右側)に位置されたプレート51と、軸方向の一方側に位置されたプレート52,53と、を有する。プレート51は、壁部5aと突出部5bとを含む。また、プレート52,53は、それぞれ、張出部5cの一部を含む。
【0029】
図3に示されるように、プレート51には、弾性部8が収容された開口部51aと(回転中心Axより上側参照)、結合具C3が軸方向に貫通する開口部51bと(回転中心Axより下側参照)、が設けられている。図2に示されるように、開口部51aは、周方向に沿って延びる長穴として構成されている。開口部51aの周方向の一方側の縁部と他方側の縁部との間には、初期状態(セット状態)の弾性部8が配置されている。プレート51には、周方向に間隔をあけて複数(例えば、三つ)の開口部51aが設けられ、各開口部51a内に弾性部8が配置されている。ただし、図2には、一つの開口部51aのみが示されている。また、図示されないが、プレート51には、周方向に間隔をあけて複数(例えば、三つ)の開口部51bが設けられ、各開口部51bは、周方向に沿って延びる長穴として形成されている。結合具C3は、例えば、リベットであり、開口部51bを周方向に移動可能に構成されている。
【0030】
図4に示されるように、プレート52は、径方向に互いに離間した二つの筒部52a,52bと、筒部52aと筒部52bとの間に設けられた壁部52cと、筒部52bの軸方向の他方側の端部に設けられたフランジ部52dと、を有する。筒部52a,52bは、それぞれ、円筒状に構成されている。筒部52aは、プレート52のうち軸方向の一方側(図4の左側)かつ径方向の内側(図4の下側)に位置されている。筒部52bは、プレート52のうち軸方向の他方側かつ径方向の外側に位置されている。壁部52cは、回転中心Axと交差して環状かつ板状に広がっている。筒部52bの軸方向の他方側の端部から径方向の外側に張り出すフランジ部52dは、プレート51と軸方向に重なっている。
【0031】
プレート53は、プレート52の軸方向の一方側(図4の左側)に位置され、壁部52cと軸方向に重なっている。図3の回転中心Axよりも下側に示されるように、プレート52とプレート53とは、結合具C5によって結合(一体化)されている。また、図3の回転中心Axよりも上側に示されるように、プレート51とプレート52とは、結合具C4(例えば、リベット)によって結合(一体化)されている。すなわち、プレート51〜53は、回転中心Ax回りに一体に回転する。
【0032】
また、図4に示されるように、プレート52,53には、軸方向に互いに重なり合った開口部52f,53a(貫通孔)が設けられている。図2に示されるように、開口部52fおよび開口部53aの周方向の一方側の縁部と他方側の縁部との間には、初期状態(セット状態)の弾性部92が収容されている。プレート52,53には、それぞれ、周方向に間隔をあけて複数の開口部52f,53aが設けられている。ただし、図2には、一対の開口部52f,53aのみが示されている。そして、図4に示されるように、プレート52およびプレート53に、錘部材91と弾性部92とを有した動吸振器9が接続されている。本実施形態では、回転体6の壁部6bの外縁部6b1(径方向の外側の端部)よりも径方向の外側に位置された筒部52bを介して、壁部6bの軸方向の一方側(図4の左側)に位置された筒部52aおよび壁部52c(部分)と壁部6bの軸方向の他方側に位置されたフランジ部52dおよびプレート51(部分)とが、接続されている。よって、筒部52bは、接続部の一例である。
【0033】
図3に示されるように、弾性部7は、回転体4と回転体5との間に介在した弾性部材31を有する。回転体4と回転体5との間で、トルク(回転)は、弾性部材31を介して伝達される。回転体4は、弾性部材31が伸縮可能な範囲(所定の角度範囲)内で、回転体5に対して相対的に回転することができる。本実施形態では、複数(例えば、三つ)の弾性部材31(弾性部7)が、周方向に間隔をあけて設けられている。ただし、図2には、二つの弾性部材31(弾性部7)のみが示されている。
【0034】
弾性部材31は、例えば、周方向(図2のF方向)に沿って縮む(弾性的に変形する、伸縮する)圧縮ばねとして機能する。弾性部材31は、例えば、金属材料で構成されたコイルスプリングである。弾性部材31は、例えば、ストレート形状のコイルスプリングを周方向に沿って湾曲させて組み付けたものや、コイルの巻回軸が周方向に沿って湾曲したもの(所謂アークスプリング)等である。弾性部材31(コイルスプリング)の巻回軸は周方向に沿って曲がっている。図2に示されるように、弾性部材31は、各収容領域4d1に一つずつ入れられている(収容されている)。また、収容領域4d1内の弾性部材31は、シート状の支持部材32によって支持されている。図3にも示されるように、支持部材32は、弾性部材31と接続部4cとの間に介在している。すなわち、支持部材32は、少なくとも、弾性部材31の径方向外側に位置するとともに、接続部4cの径方向内側に位置する部分を、有する。支持部材32は、例えば、弾性部材31と回転体4との直接的な接触を抑制し、これにより、弾性部材31の摩耗を抑制することができる。支持部材32は、抑制部、介在部とも称されうる。支持部材32は、例えば、金属材料又は合成樹脂材料によって構成されうる。
【0035】
また、収容領域4d1内の弾性部材31および支持部材32は、突出部4a1,4b1,5bと(図3参照)、この突出部4a1,4b1,5bと周方向に離間した別の突出部4a1,4b1,5aとの間に、周方向に挟まれている。このような構成で、回転体4の周方向の一方側の突出部4a1,4b1と回転体5の周方向の他方側の突出部5bとが互いに近付く方向に相対的に回転すると、それら突出部4a1,4b1,5bによって弾性部材31が弾性的に縮む。逆に、収容領域4d1内で弾性的に縮んだ状態で、回転体4の周方向の一方側の突出部4a1,4b1と回転体5の周方向の他方側の突出部5bとが互いに遠ざかる方向に相対的に回転すると、弾性部材31は弾性的に伸びる。弾性部材31(弾性部7)は、弾性的に縮むことによりトルクを圧縮力として蓄え、弾性的に伸びることにより圧縮力をトルクとして放出することができる。
【0036】
また、図4に示されるように、弾性部材31(弾性部7)と弾性部材36(弾性部8)との間には、回転体4と回転体5との間に介在する介在部材21,22が設けられている。介在部材21は、軸方向に離間した壁部4bと壁部5aとの間に介在し、回転中心Ax回りに環状に構成されている。介在部材22は、軸方向に離間した壁部4aとフランジ部52dとの間に位置され、回転中心Ax回りに環状に構成されている。介在部材21,22は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0037】
また、介在部材22とフランジ部52dとの間には、弾性部材23が設けられている。弾性部材23は、介在部材22およびフランジ部52dに、互いに軸方向に離間する方向の弾性力を与えている。すなわち、弾性部材23は、介在部材22を壁部4aに押し付けるとともに、壁部5aおよび介在部材21を間に挟んだ状態で、フランジ部52dを壁部4bに向けて押し付けている。本実施形態では、例えば、回転体4と回転体5とが回転中心Ax回りに相対的に回転した場合に、壁部4aと介在部材22とが摺動する。また、壁部4bと介在部材21とが摺動するか、壁部5aと介在部材21とが摺動するか、あるいはそれらの双方が摺動する。弾性部材23は、介在部材21,22に摺動抵抗(摩擦抵抗)を与えることができる。弾性部材23は、例えば、金属材料で構成された円環状(円筒状)の板バネ(皿バネ、コーンスプリング)である。
【0038】
また、収容室4d内にはグリス(潤滑剤)が入れられている。グリスによって、収容室4d内に収容された部材(弾性部材31や支持部材32等)と、収容室4dを構成する壁部4a,4bや接続部4c等との摺動による摩耗を抑制することができる。また、弾性部材31と支持部材32との摺動による摩耗も抑制することができる。なお、グリスは、粘性によって収容室4d内に留まることが可能である。よって、収容室4d外へのグリスの漏出が抑制される。また、本実施形態では、収容室4dの径方向の内側が、介在部材21,22および弾性部材23によって閉じられている(シールされている)。すなわち、収容室4dは、壁部4a,4b、接続部4c、介在部材21,22および弾性部材23によって構成されている。本実施形態によれば、例えば、介在部材21,22が無い場合に比べて、グリスが収容室4d外へ漏れるのがより抑制されやすい。介在部材21,22は、摺動部材、抵抗部材、シール部材とも称されうる。
【0039】
図3,4に示されるように、回転体6は、弾性部材31(弾性部7)の径方向の内側に位置されている。回転体6は、径方向の内側に位置された筒部6aと、筒部6aから径方向の外側に突出した(張り出した)壁部6bと、壁部6bの軸方向の他方側(図3,4の右側)に設けられた壁部6cと、を有する。筒部6aは、円筒状に構成されている。筒部6aの内面には、スプライン6a1(図4参照)が設けられている。入力軸3は、筒部6aのスプライン6a1に結合されている。壁部6b,6cは、それぞれ、回転中心Axと交差して環状かつ板状に広がっている。壁部6bは、壁部5aの軸方向の一方側に位置され、壁部6cは、壁部5aの軸方向の他方側に位置されている。筒部6aおよび壁部6b,6cは、例えば、金属材料によって構成されうる。
【0040】
また、回転体6は、複数の部品によって構成されている。本実施形態では、回転体6は、軸方向の一方側(図3,4の左側)に位置されたプレート61と、軸方向の他方側に位置されたプレート62と、を有する。プレート61は、筒部6aと壁部6bとを含む。また、プレート62は、壁部6cを含む。
【0041】
図4に示されるように、プレート61,62には、開口部61a,62a(貫通孔)が設けられている。開口部61aおよび開口部62aは、プレート51(回転体5)の開口部51aと軸方向に重なり合っている。図2に示されるように、開口部61aおよび開口部62aの周方向の一方側の縁部と他方側の縁部との間には、初期状態(セット状態)の弾性部8が収容されている。プレート61,62には、それぞれ、周方向に間隔をあけて複数の開口部61a,62aが設けられ、各開口部61a,62aに弾性部8が配置されている。ただし、図2には、一対の開口部61a,62aのみが示されている。また、図4に示されるように、プレート61の開口部61aよりも径方向の内側には、開口部61b(貫通孔)が設けられている。図2に示されるように、本実施形態では、複数の開口部61bが、プレート61の周方向に間隔をあけて設けられている。開口部61bは、組み立てやメンテナンス等の際に、壁部4bと出力軸2とを結合する結合具C2や工具等が通される穴(作業穴)として機能することができる。
【0042】
また、図4に示されるように、プレート61は、プレート51の軸方向の一方側(図4の左側)に位置され、プレート62は、プレート51の軸方向の他方側に位置されている。図3の回転中心Axよりも下側に示されるように、プレート61とプレート62とは、プレート51の開口部51bを通された結合具C3によって結合(一体化)されている。
【0043】
図2〜4に示されるように、弾性部8は、回転体5と回転体6との間に介在した弾性部材36を有する。回転体5と回転体6との間で、トルク(回転)は、弾性部材36を介して伝達される。また、回転体5と回転体6との相対的な回転範囲(角度範囲)は、結合具C3および開口部51b(図3の回転中心Axより下側参照)によって定まる。開口部51bは、図示されないが周方向に沿った長穴状に設けられており、結合部C3は、周方向に沿って開口部51b内を移動可能に構成されている。結合部C3が開口部51bの周方向の両端部に当たる角度範囲内で、回転体5と回転体6とは相対的に回転することができる。本実施形態では、複数(例えば、三つ)の弾性部材36(弾性部8)が、周方向に間隔をあけて設けられている。ただし、図2には、二つの弾性部材36(弾性部8)のみが示されている。
【0044】
図2に示されるように、弾性部材36は、例えば、周方向または周方向の接線方向に沿って縮む(弾性的に変形する、伸縮する)圧縮ばねとして機能する。弾性部材36は、例えば、金属材料で構成されたコイルスプリングである。詳細には、弾性部材36は、スプリングの巻回軸が直線状である所謂ストレート形状のコイルスプリングである。弾性部材36(コイルスプリング)の巻回軸は周方向または周方向の接線方向に略沿っている。また、弾性部材36は、一対の支持部材37(リテーナ)によって支持されている。一対の支持部材37は、弾性部材36の周方向の両側に設けられている。なお、支持部材37は、弾性部材36の径方向の外側に位置する部分を有する。支持部材37は、例えば、弾性部材36をより安定的に支持したり、弾性部材36をより安定的に弾性変形させたり(伸縮させたり)、弾性部材36と回転体5,6との直接的な接触を抑制したり(弾性部材36の摩耗を抑制したり)、といった機能を有することができる。支持部材37は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0045】
図2に示されるように、弾性部材36および支持部材37は、開口部51aの周方向の両側の縁部と、開口部61a,62aの周方向の両側の縁部とに挟まれている。このような構成で、回転体5の開口部51aの周方向の一方側の縁部と、回転体6の開口部61a,62aの周方向の他方側の縁部とが互いに近付く方向に相対的に回動すると、それら縁部によって弾性部材36(および支持部材37)が弾性的に縮む。逆に、開口部51a,61a,62a内で弾性的に縮んだ状態で、回転体5の開口部51aの周方向の一方側の縁部と、回転体6の開口部61a,62aの周方向の他方側の縁部とが互いに遠ざかる方向に相対的に回動すると、弾性部材36(および支持部材37)は弾性的に伸びる。弾性部材36(弾性部8)は、弾性的に縮むことによりトルクを圧縮力として蓄え、弾性的に伸びることにより圧縮力をトルクとして放出することができる。
【0046】
ここで、図4に示されるように、本実施形態では、弾性部材36および支持部材37、すなわち弾性部8は、介在部材21の径方向(R方向)の内側に位置されている。すなわち、弾性部8は、収容室4dの外側であり、かつ、弾性部7の径方向の内側に位置されている。弾性部8が径方向の外側に位置されるほど、例えば、支持部材37と回転体5,6との摺動による摺動トルク(摩擦トルク)が大きくなりやすい。これは、摺動位置の回転中心Axからの半径(モーメントアーム)が長くなるためである。この点、本実施形態によれば、弾性部8が弾性部7よりも径方向の内側に位置されているため、弾性部8が収容室4dの外側に配置されグリスによる潤滑の利点が得られない場合にあっても、支持部材37と回転体5,6との摺動による摺動トルク(摩擦トルク)が小さくなりやすい。また、例えば、弾性部材36と支持部材37との摺動による摺動トルク(摩擦トルク)も小さくなりやすい。よって、例えば、出力軸3側の弾性部8のトルク変動吸収機能が阻害され難く、かつ、支持部材37と回転体5,6との摺動による摩耗や、弾性部材36と支持部材37との摺動による摩耗も抑制されやすい。
【0047】
また、図4に示されるように、弾性部材36の径方向の内側には、回転体4と回転体5,6との間に介在する介在部材26,27が設けられている。介在部材26は、壁部5aの内縁部と筒部43bの外周部との間に介在した筒部26a(円筒部)と、筒部26aから径方向の外側に突出し、壁部5aと壁部6bとの間に位置された壁部26bと、を有する。本実施形態では、介在部材26を介して、筒部43b(回転体4)に壁部5a(回転体5)が径方向に支持されるとともに位置決めされている。すなわち、介在部材26は、壁部5a(回転体5)を所定の姿勢で回転可能に支持している。また、図3の回転中心Axよりも下側に示されるように、介在部材26は、引掛部26cを有する。引掛部26cは、筒部26aから軸方向の一方側(図3の左側)に突出し、壁部6b(プレート61)の開口部61cに挿入されている。すなわち、介在部材26は、回転体6と一体に回転する。介在部材26は、軸受部材、摺動部材とも称されうる。介在部材26は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0048】
図4に示されるように、介在部材27は、壁部6cの内縁部と筒部43bの外周部との間に介在した筒部27a(円筒部)と、筒部27aから径方向の外側に突出し、壁部5aと壁部6cとの間に位置された壁部27bと、を有する。壁部27bの少なくとも一部は、軸方向に離間した壁部5aと壁部6cとに亘って設けられている。本実施形態では、介在部材27を介して、筒部43b(回転体4)に壁部6c(回転体6)が径方向に支持されるとともに位置決めされている。すなわち、介在部材27は、壁部6c(回転体6)を所定の姿勢で回転可能に支持している。介在部材27は、軸受部材、摺動部材とも称されうる。介在部材27は、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0049】
また、図4に示されるように、介在部材26と壁部6bとの間には、弾性部材28が設けられている。弾性部材28は、介在部材26および壁部6bに、互いに軸方向に離間する方向の弾性力を与えている。すなわち、弾性部材28は、壁部5aおよび介在部材27を間に挟んだ状態で、介在部材26を壁部6cに向けて押し付けている。本実施形態では、例えば、回転体6と回転体5(および回転体4)とが回転中心Ax回りに相対的に回転した場合に、壁部5aと介在部材26とが摺動する。また、壁部5aと介在部材27とが摺動するか、壁部6cと介在部材27とが摺動するか、あるいはそれらの双方が摺動する。弾性部材28は、介在部材26,27に摺動抵抗(摩擦抵抗)を与えることができる。弾性部材28は、例えば、金属材料で構成された円環状(円筒状)の板バネ(皿バネ、コーンスプリング)である。
【0050】
図4に示されるように、動吸振器9は、錘部材91と、弾性部92と、を有する。錘部材91は、軸方向に離間したプレート52とプレート53との間に位置されている。錘部材91は、径方向に沿って広がった環状かつ板状の壁部91aと、壁部91aの外縁部(径方向の外側の端部)に設けられた屈曲部91bと、を有する。壁部91aの内縁部は、弾性部92の径方向の内側に位置し、壁部91aの外縁部は、弾性部7よりも径方向の外側に位置している。本実施形態では、錘部材91は、弾性部92よりも径方向の外側に位置された第一の部分(平面部)91xを有するとともに、さらに収容室4dよりも径方向の外側に位置された第二の部分(外縁部)91yを有する。また、壁部91aには、開口部91e,91f,91g(貫通孔)が設けられている。開口部91eは、プレート52,53(回転体5)の開口部52f,53aと軸方向に重なり合った長穴として構成されうる。また、図2に示されるように、壁部91aには、周方向に間隔をあけて複数の開口部91eが設けられ、各開口部91eに弾性部92が収容されている。ただし、図2には、一つの開口部91eのみが示されている。また、図4に示されるように、開口部91fは、開口部91eの径方向の外側に位置され、組み立てやメンテナンス等の際に壁部5aとフランジ部52dとを結合する結合具C4や工具等が通される穴(作業穴)として構成されうる。また、図3の回転中心Axよりも下側に示されるように、開口部91gは、開口部91eの径方向の外側に位置され、プレート52とプレート53とを結合する結合具C5が通される長穴として構成されうる。
【0051】
図4に示されるように、屈曲部91bは、壁部91aの外縁部から折れ曲がり径方向の内側にU字状となっている。屈曲部91bは、凹んだ凹部内に一部が収容される状態で対向し、回転中心Ax側に向けて湾曲されている(折り返されている)。また、屈曲部91bの一部は、壁部4a(回転体4)の外縁部に形成された凹部41aに位置されている。凹部41aは、壁部91aと壁部4aとの間に形成された空間部(デッドスペース)である。よって、本実施形態によれば、例えば、凹部41aが設けられない場合に比べて、ダンパ装置1が軸方向に大型化するのを抑制しつつ、錘部材91の慣性を高めることができる。なお、本実施形態では、錘部材91は、一つのプレートによって構成されている。錘部材91は、慣性体(質量体)として機能することができる。
【0052】
図2〜4に示されるように、弾性部92は、錘部材91と回転体5との間に介在した弾性部材92aを有する。弾性部材92aは、互いに軸方向に重なり合った開口部52f,53a,91e内に収容されている。回転体5と錘部材91との間で、トルク(回転)は、弾性部材92aを介して伝達される。錘部材91は、弾性部材92aが伸縮可能な範囲(所定の角度範囲)内で、回転体5に対して相対的に回転することができる。すなわち、本実施形態では、弾性部材92aの圧縮量の規定値(圧縮限界)によって、回転体5と錘部材91との回転中心Ax回りの相対的な回転の範囲が制限される。また、本実施形態では、回転体5と錘部材91との回転の範囲が制限された状態(弾性部材92aの圧縮限界)では、結合具C5と開口部91g(図3参照)の周方向の縁部とが当接し、相対的な回転を規制するよう構成されていても良いし、結合具C5と開口部91gの周方向の縁部とが当接しないよう構成されていても良い。後者の場合には、結合具C5と開口部91gの縁部とが当接することによる音の発生等を抑制しやすい。
【0053】
また、本実施形態では、複数(例えば、三つ)の弾性部材92a(弾性部92)が周方向に間隔をあけて設けられている。図2には、複数の弾性部材92aのうち一つが示されている。具体的に、弾性部材92a(弾性部92)は、周方向に並んだ複数の弾性部材36(弾性部8)と同じ間隔で設けられ、各弾性部材36(弾性部8)と軸方向に重なって配置されている。弾性部材92aは、例えば、周方向または周方向の接線方向に沿って縮む(弾性的に変形する、伸縮する)圧縮ばねとして機能する。弾性部材92aは、例えば、金属材料で構成されたコイルスプリングである。詳細には、弾性部材92aは、スプリングの巻回軸が直線状である所謂ストレート形状のコイルスプリングである。弾性部材92a(コイルスプリング)の巻回軸は周方向または周方向の接線方向に略沿っている。また、図2に示されるように、弾性部材92aは、一対の支持部材92b(リテーナ)によって支持されている。一対の支持部材92bは、弾性部材92aの周方向の両側に設けられている。支持部材92bは、例えば、弾性部材92aをより安定的に支持したり、弾性部材92aをより安定的に弾性変形させたり(伸縮させたり)、弾性部材92aと回転体5および錘部材91との直接的な接触を抑制したり(弾性部材92aの摩耗を抑制したり)、といった機能を有することができる。支持部材92bは、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0054】
図2に示されるように、弾性部材92aおよび支持部材92bは、開口部52f,53aの周方向の両側の縁部と、開口部91eの周方向の両側の縁部とに挟まれている。このような構成で、回転体5の開口部52f,53aの周方向の一方側の縁部と、錘部材91の開口部91eの周方向の他方側の縁部とが互いに近付く方向に相対的に回動すると、それら縁部によって弾性部材92a(および支持部材92b)が弾性的に縮む。逆に、開口部52f,53a,91e内で弾性的に縮んだ状態で、回転体5の開口部52f,53aの周方向の一方側の縁部と、錘部材91の開口部91eの周方向の他方側の縁部とが互いに遠ざかる方向に相対的に回動すると、弾性部材92a(および支持部材92b)は弾性的に伸びる。このように、本実施形態では、錘部材91が弾性部材92a(弾性部92)を介して回転体5と連結されることで、動吸振器9(ダイナミックダンパ)が構成されている。動吸振器9は、弾性部材92aおよび支持部材92bの伸縮によって回転体4(入力軸2)と回転体6(出力軸3)との間に発生する捩り振動を吸収することができる。
【0055】
ここで、図3に示されるように、本実施形態では、弾性部材92aおよび支持部材92b、すなわち弾性部92は、弾性部8と同様に、弾性部7の径方向の内側に位置されている。よって、弾性部92のモーメントアームが短くなるため、例えば、支持部材92bと回転体5および錘部材91との摺動による摺動トルク(摩擦トルク)や、弾性部材92aと支持部材92bとの摺動による摺動トルク(摩擦トルク)が小さくなりやすい。よって、例えば、捩り振動を吸収する動吸振器9の機能が阻害され難く、かつ、支持部材92bと回転体5および錘部材91との摺動による摩耗や、弾性部材92aと支持部材92bとの摺動による摩耗も抑制されやすい。
【0056】
また、図4に示されるように、弾性部材92aの径方向の内側には、回転体5と錘部材91との間に介在する介在部材24,25が設けられている。介在部材24は、壁部91aの内縁部と筒部52aの外周部との間に介在した筒部24a(円筒部)と、筒部24aから径方向の外側に突出し、プレート53と壁部91aとの間に位置された壁部24bと、を有する。介在部材24は、軸方向に離間したプレート53と壁部52c(プレート52)とに亘って設けられている。また、壁部24bと壁部91aとの間には、隙間が設けられている。介在部材25は、壁部52cと壁部91aとの間に位置された円環状の壁部25aを有する。壁部25aと壁部52cおよび壁部91aとの間には、それぞれ、隙間が設けられている。本実施形態では、介在部材24を介して、回転体5に錘部材91が径方向に支持されるとともに位置決めされている。すなわち、介在部材24は、錘部材91が径方向に移動する(がたつく)のを抑制することができる。また、介在部材24によって、プレート53と壁部52c(プレート52)とが軸方向に近付くのが抑制されている。さらに、介在部材24および介在部材25によって、錘部材91の軸方向への移動(倒れ)が抑制されている。また、本実施形態では、壁部91aと壁部24bおよび壁部25aとの間に隙間が設けられているため、錘部材91と回転体5とが相対的に回転した場合に、壁部91aと壁部24bおよび壁部25aとの摺動が抑制されやすい。介在部材24は、軸受部材とも称されうる。また、介在部材24,25は、摺動部材、抑制部材とも称されうる。介在部材24,25は、例えば、合成樹脂材料で構成されうる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、動吸振器9の錘部材91および弾性部92が、少なくとも回転体4(第一の回転体)の一部によって形成された収容室4d外に位置されている。よって、本実施形態によれば、動吸振器9が収容室4d外に設けられたため、例えば、動吸振器9が収容室4d内に設けられた場合に比べて、ダンパ装置1の各部の大きさや配置が制約されたり、ダンパ装置1が全体的に大型化したりといった不都合が生じ難い。
【0058】
また、本実施形態では、錘部材91は、弾性部92(第三の弾性部)よりも径方向(R方向)の外側に位置された第一の部分91xを有する。よって、本実施形態によれば、例えば、第一の部分91xを有さない構成に比べて、錘部材91の慣性が高まりやすい。
【0059】
また、本実施形態では、錘部材91は、収容室4dよりも径方向(R方向)の外側に位置された第二の部分91yを有する。よって、本実施形態によれば、例えば、第二の部分91yを有さない構成に比べて、錘部材91の慣性がより一層高まりやすい。
【0060】
また、本実施形態では、回転体4には、軸方向(X方向)に凹んだ凹部41aが設けられ、錘部材91の少なくとも一部(屈曲部91b)が、凹部41a内に収容されている。よって、本実施形態によれば、例えば、凹部が設けられない場合に比べて、ダンパ装置1が軸方向に大型化するのが抑制されつつ、錘部材91の慣性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態では、回転体4と回転体5(第二の回転体)との間に介在し、回転体4および回転体5のうち少なくとも一方と摺動するとともに、潤滑剤が収容室4d外に漏れるのを抑制する介在部材21,22を備える。よって、本実施形態によれば、例えば、潤滑剤が収容室4d内に留まりやすい。よって、例えば、潤滑剤による弾性部7と他の部材(例えば、壁部4a,4bや接続部4c等)との摩擦低減効果がより高まりやすい。また、介在部材21,22により、回転体4と回転体5とが相対的に回転する際に摺動トルク(摩擦トルク、抵抗トルク)を与えることができる。すなわち、本実施形態によれば、介在部材21,22を、収容室4dをシールする部材および摺動トルクを与える部材として用いることができる。よって、例えば、収容室4dをシールする部材と摺動トルクを与える部材とを別個に設けた場合に比べて、ダンパ装置1の構成がより簡素化されやすい。
【0062】
また、本実施形態では、弾性部8(第二の弾性部)は、収容室4d外に位置されるとともに、弾性部7(第一の弾性部)よりも径方向(R方向)の内側に位置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、弾性部8のモーメントアームを短くでき、弾性部8と他の部材(例えば、回転体5や回転体6等)との摺動トルクがより小さくなりやすい。また、例えば、弾性部8が収容室4d外に位置されることにより、弾性部7と弾性部8とが収容室4d内に位置された場合に比べて、ダンパ装置1がより簡素にあるいはより軽量に構成されやすい。
【0063】
また、本実施形態では、回転体5のうち回転体6(壁部6b)の軸方向の他方側(図4の右側)の部分としてのフランジ部52dおよびプレート51と、回転体5のうち軸方向の一方側に位置され動吸振器9と接続された部分としての筒部52aおよび壁部52cとが、筒部52b(接続部)により、回転体6の外縁部6b1(径方向の外側の端部)よりも当該径方向の外側を介して接続されている。よって、本実施形態によれば、例えば、回転体6および筒部52bを、より簡単な構成によって実現することができる。
【0064】
また、本実施形態では、弾性部92は、回転体6(壁部6b)の外縁部6b1(径方向の外側の端部)よりも径方向の内側に位置されている。よって、本実施形態によれば、例えば、弾性部92を回転中心Axにより近づけて配置することができる。よって、例えば、錘部材91を、弾性部92の径方向の外側のより広い領域に設けることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、錘部材91が、回転体5に支持されるとともに位置決めされたが、錘部材91が、回転体6に支持されるとともに位置決めされる構成であってもよい。
【0066】
<第2実施形態>
図5に示される実施形態のダンパ装置1Aは、上記第1実施形態のダンパ装置1と同様の構成を備えている。よって、本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の構成に基づく同様の結果(効果)が得られる。
【0067】
ただし、本実施形態では、図5に示されるように、弾性部材31は、当該弾性部材31の周方向の両側に位置された一対の支持部材32A(リテーナ)によって支持されている。なお、支持部材32Aは、弾性部材31の径方向の外側に位置する部分を有する。よって、本実施形態によれば、例えば、支持部材32Aによって、弾性部材31をより安定的に支持したり、弾性部材31をより安定的に弾性変形させたり(伸縮させたり)、弾性部材31と回転体4との直接的な接触を抑制したり(弾性部材31の摩耗を抑制したり)することができる。支持部材32Aは、例えば、合成樹脂材料によって構成されうる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。本発明は、上記実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成(技術的特徴)によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)を得ることが可能である。また、各構成要素のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A…ダンパ装置、4…回転体(第一の回転体)、4d…収容室、5…回転体(第二の回転体)、6…回転体(第三の回転体)、6b1…外縁部(径方向の外側の端部)、7…弾性部(第一の弾性部)、8…弾性部(第二の弾性部)、9…動吸振器、21,22…介在部材、41a…凹部、52b…筒部(接続部)、91…錘部材、91x…第一の部分(平面部)、91y…第二の部分(外縁部)、92…弾性部(第三の弾性部)、Ax…回転中心、R…径方向、X…軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5