(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
(1)この変換装置は、入力される直流電圧を、交流電圧に変換して出力する変換装置であって、前記直流電圧を昇圧してDCバスに出力する動作状態及び、昇圧せずに前記直流電圧が直接印加されている電路と前記DCバスとをスイッチで直結する停止状態のいずれか一方を実行可能な昇圧回路と、前記DCバスの電圧を、前記交流電圧の波形に変換するインバータ回路と、出力すべき交流の電圧目標値の絶対値が、入力される直流電圧を上回るときは前記昇圧回路を昇圧動作させて前記電圧目標値の絶対値を生成するとともに前記インバータ回路は必要な極性反転のみを行う状態とし、また、前記電圧目標値が、入力される直流電圧を下回るときは前記昇圧回路を前記停止状態とするとともに前記インバータ回路を動作させて前記電圧目標値を生成する制御部と、を備えている。
【0012】
上記(1)のように構成された変換装置における昇圧回路は、直流電圧が直接印加される電路からDCバスまでの間に、DCリアクトル及び半導体素子を有している。もし、上記のスイッチが無い場合は、昇圧回路が停止状態であっても、DCリアクトル及び半導体素子に電流が流れることによる電力損失が生じる。ところが、上記のスイッチがオン状態となることにより、直流電圧が直接印加されている電路をDCバスに直結するので、昇圧回路が停止状態であるときの電力損失が低減される。
【0013】
(2)また、交流電源から入力される交流電圧を、直流電圧に変換して出力する変換装置としては、前記交流電源と接続されたリアクトルと、前記リアクトルを介して入力されるべき交流入力電圧目標値を、前記直流電圧に変換してDCバスに出力する動作状態及び、整流出力のみを行って前記DCバスに出力する高周波スイッチング停止状態のいずれか一方を実行可能なAC/DCコンバータと、前記DCバスの電圧を降圧して直流出力電路に出力する動作状態及び、降圧せずに前記DCバスと前記直流出力電路とをスイッチで直結するスイッチング停止状態のいずれか一方を実行可能な降圧回路と、前記交流入力電圧目標値の絶対値が前記直流電圧を上回るときは前記降圧回路を動作状態とするとともに前記AC/DCコンバータを高周波スイッチング停止状態とし、また、前記交流入力電圧目標値の絶対値が前記直流電圧を下回るときは前記降圧回路をスイッチング停止状態とするとともに前記AC/DCコンバータを動作状態とする制御部と、を備えている。
【0014】
上記(2)のように構成された変換装置における降圧回路は、DCバスから直流出力電路までの間に、DCリアクトル及び半導体素子を有している。もし、上記のスイッチが無い場合は、降圧回路が停止状態であっても、DCリアクトル及び半導体素子に電流が流れることによる電力損失が生じる。ところが、上記のスイッチがオン状態となることにより、DCバスを直流出力電路に直結するので、降圧回路が停止状態であるときの電力損失が低減される。
【0015】
[実施形態の詳細]
以下、発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
《系統連系を行う変換装置》
まず、系統連系を行う変換装置の例から詳細に説明する。
〔1.1 全体構成について〕
図1は、直流から交流への変換装置を備えたシステムの一例を示すブロック図である。図中、変換装置1の入力端には、直流電源としての太陽光発電パネル2が接続され、出力端には、交流の商用電力系統3が接続されている。このシステムは、太陽光発電パネル2が発電する直流電力を交流電力に変換し、商用電力系統3に出力する連系運転を行う。
変換装置1は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力が与えられる昇圧回路10と、昇圧回路10から与えられる電力を交流電力に変換して商用電力系統3に出力するインバータ回路11と、これら両回路10,11の動作を制御する制御部12とを備えている。
【0017】
図2は、変換装置1の回路図の一例である。
昇圧回路10は、DCリアクトル15と、ダイオード16と、例えばFET(Field Effect Transistor)からなるスイッチング素子Qbとを備えており、昇圧チョッパ回路を構成している。
昇圧回路10の入力側には、第1電圧センサ17、第1電流センサ18、及び平滑化のためのコンデンサ26が設けられている。
【0018】
第1電圧センサ17は、太陽光発電パネル2が出力し、昇圧回路10に入力される直流電力の直流入力電圧検出値Vg(直流入力電圧値)を検出し、制御部12に出力する。第1電流センサ18は、DCリアクトル15に流れる電流である昇圧回路電流検出値Iin(直流入力電流値)を検出し、制御部12に出力する。なお、直流入力電流検出値Igを検出するために、コンデンサ26の前段に、さらに電流センサを設けてもよい。
制御部12は、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinから入力電力Pinを演算し、太陽光発電パネル2に対するMPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)制御を行う機能を有している。
【0019】
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbは、後述するように、インバータ回路11との間でスイッチング動作を行う期間が交互に切り替わるように制御される。よって、昇圧回路10は、スイッチング動作を行っている期間は、昇圧された電力をインバータ回路11に出力し、スイッチング動作を停止している期間は、太陽光発電パネル2が出力して昇圧回路10に入力される直流電力を昇圧することなくインバータ回路11に出力する。
【0020】
昇圧回路10と、インバータ回路11との間には、平滑用のコンデンサ19(平滑コンデンサ)が接続されている。
インバータ回路11は、FET(Field Effect Transistor)からなるスイッチング素子Q1〜Q4を備えている。これらスイッチング素子Q1〜Q4は、フルブリッジ回路を構成している。
各スイッチング素子Q1〜Q4は、制御部12に接続されており、制御部12により制御可能とされている。制御部12は、各スイッチング素子Q1〜Q4の動作をPWM制御する。これにより、インバータ回路11は、昇圧回路10から与えられる電力を交流電力に変換する。
【0021】
変換装置1は、インバータ回路11と、商用電力系統3との間にフィルタ回路21を備えている。
フィルタ回路21は、2つのACリアクトル22と、ACリアクトル22の後段に設けられたコンデンサ23(出力平滑コンデンサ)とを備えて構成されている。フィルタ回路21は、インバータ回路11から出力される交流電力に含まれる高周波成分を除去する機能を有している。フィルタ回路21により高周波成分が除去された交流電力は、商用電力系統3に与えられる。
【0022】
このように、昇圧回路10及びインバータ回路11は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を、フィルタ回路21を介して商用電力系統3へ出力する。
【0023】
また、フィルタ回路21には、インバータ回路11による出力の電流値であるインバータ電流検出値Iinv(ACリアクトル22に流れる電流)を検出するための第2電流センサ24が接続されている。さらに、フィルタ回路21と、商用電力系統3との間には、商用電力系統3側の電圧値(系統電圧検出値Va)を検出するための第2電圧センサ25が接続されている。
【0024】
第2電流センサ24及び第2電圧センサ25は、検出した系統電圧検出値Va(交流系統の電圧値)及びインバータ電流検出値Iinvを制御部12に出力する。なお、第2電流センサ24は、図のように、コンデンサ23の前段でもよいが、コンデンサ23の後段に設けてもよい。
制御部12は、これら系統電圧検出値Va及びインバータ電流検出値Iinvと、上述の直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iinに基づいて、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
【0025】
〔1.2 制御部について〕
図3は、制御部12のブロック図である。制御部12は、
図3に示すように、制御処理部30と、昇圧回路制御部32と、インバータ回路制御部33と、平均化処理部34とを機能的に有している。
制御部12の各機能は、その一部又は全部がハードウェア回路によって構成されてもよいし、その一部又は全部が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータによって実行させることで実現されていてもよい。制御部12の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータの記憶装置(図示省略)に格納される。
【0026】
昇圧回路制御部32は、制御処理部30から与えられる指令値及び検出値に基づいて、昇圧回路10のスイッチング素子Qbを制御し、前記指令値に応じた電流の電力を昇圧回路10に出力させる。
また、インバータ回路制御部33は、制御処理部30から与えられる指令値及び検出値に基づいて、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御し、前記指令値に応じた電流の電力をインバータ回路11に出力させる。
【0027】
制御処理部30には、直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iin、系統電圧検出値Va及びインバータ電流検出値Iinvが与えられる。
制御処理部30は、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinから入力電力Pin及びその平均値〈Pin〉を演算する。
制御処理部30は、入力電力平均値〈Pin〉に基づいて、直流入力電流指令値Ig*(後に説明する)を設定して太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行うとともに、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれをフィードバック制御する機能を有している。
【0028】
直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinは、平均化処理部34、及び制御処理部30に与えられる。
平均化処理部34は、第1電圧センサ17及び第1電流センサ18から与えられる直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを、予め設定された所定の時間間隔ごとにサンプリングし、それぞれの平均値を求め、平均化された直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを制御処理部30に与える機能を有している。
【0029】
図4は、直流入力電圧検出値Vg、及び昇圧回路電流検出値Iinの経時変化をシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。
また、直流入力電流検出値Igは、コンデンサ26よりも入力側で検出される電流値である。
図4に示すように、直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iin、及び直流入力電流検出値Igは、系統電圧の1/2の周期で変動していることが判る。
【0030】
図4に示すように、直流入力電圧検出値Vg、及び直流入力電流検出値Igが周期的に変動する理由は、次の通りである。すなわち、昇圧回路電流検出値Iinは、昇圧回路10、及びインバータ回路11の動作に応じて、交流周期の1/2周期でほぼ0Aからピーク値まで大きく変動する。そのため、コンデンサ26で変動成分を完全に取り除くことができず、直流入力電流検出値Igは、交流周期の1/2周期で変動する成分を含む脈流となる。一方、太陽光発電パネルは出力電流によって出力電圧が変化する。
このため、直流入力電圧検出値Vgに生じる周期的な変動は、変換装置1が出力する交流電力の1/2周期となっている。
平均化処理部34は、上述の周期的変動による影響を抑制するために、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを平均化する。
【0031】
図5は、平均化処理部34が行う、直流入力電圧検出値Vgを平均化する際の態様を示す図である。
平均化処理部34は、あるタイミングt1から、タイミングt2までの間の期間Lにおいて、予め設定された所定の時間間隔Δtごとに、与えられる直流入力電圧検出値Vgについて複数回サンプリング(図中、黒点のタイミング)を行い、得られた複数の直流入力電圧検出値Vgの平均値を求める。
【0032】
ここで、平均化処理部34は、期間Lを商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定する。また、平均化処理部34は、時間間隔Δtを、商用電力系統3の1/2周期の長さよりも十分短い期間に設定する。
これにより、平均化処理部34は、商用電力系統3の周期と同期して周期的に変動する、直流入力電圧検出値Vgの平均値を、できるだけサンプリングの期間を短くしつつ、精度よく求めることができる。
なお、サンプリングの時間間隔Δtは、例えば、商用電力系統3の周期の1/100〜1/1000、或いは、20マイクロ秒〜200マイクロ秒等に設定することができる。
【0033】
なお、平均化処理部34は、期間Lを予め記憶しておくこともできるし、第2電圧センサ25から系統電圧検出値Vaを取得して商用電力系統3の周期に基づいて期間Lを設定することもできる。
また、ここでは、期間Lを商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定したが、期間Lは、少なくとも、商用電力系統3の1/2周期に設定すれば、直流入力電圧検出値Vgの平均値を精度よく求めることができる。直流入力電圧検出値Vgは、上述のように、昇圧回路10、およびインバータ回路11の動作によって、商用電力系統3の周期長さの1/2の長さで周期的に変動するからである。
よって、期間Lをより長く設定する必要がある場合、商用電力系統3の1/2周期の3倍や4倍といったように、期間Lを商用電力系統3の1/2周期の整数倍に設定すればよい。これによって、周期単位で電圧変動を把握できる。
【0034】
上述したように、昇圧回路電流検出値Iinも、直流入力電圧検出値Vgと同様、商用電力系統3の1/2周期で周期的に変動する。
よって、平均化処理部34は、
図5に示した直流入力電圧検出値Vgと同様の方法によって、昇圧回路電流検出値Iinの平均値も求める。
制御処理部30は、直流入力電圧検出値Vgの平均値及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値をそれぞれ、期間Lごとに逐次求める。
平均化処理部34は、求めた直流入力電圧検出値Vgの平均値及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値を制御処理部30に与える。
【0035】
本例では、上述のように、平均化処理部34が、直流入力電圧検出値Vgの平均値(直流入力電圧平均値〈Vg〉)及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値(昇圧回路電流平均値〈Iin〉)を求め、制御処理部30は、これら値を用いて、太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行いつつ、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御するので、太陽光発電パネル2による直流電流が変動し不安定な場合にも、制御部12は、太陽光発電パネル2からの出力を、変換装置1の動作による変動成分を取り除いた直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉として精度よく得ることができる。この結果、MPPT制御を好適に行うことができ、太陽光発電パネル2の発電効率が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0036】
また、上述したように、変換装置1の動作によって、太陽光発電パネル2が出力する直流電力の電圧(直流入力電圧検出値Vg)や電流(昇圧回路電流検出値Iin)に変動が生じる場合、その変動周期は、インバータ回路11が出力する交流電力の1/2周期(商用電力系統3の1/2周期)とほぼ一致する。
この点、本例では、商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定された期間Lの間に、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinのそれぞれについて、交流系統の1/2周期よりも短い時間間隔Δtで複数回サンプリングし、その結果から直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉を求めたので、直流電流の電圧及び電流が周期的に変動したとしても、できるだけサンプリングの期間を短くしつつ、直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉を精度よく求めることができる。
【0037】
制御処理部30は、上述の入力電力平均値〈Pin〉に基づいて、直流入力電流指令値Ig*を設定し、この設定した直流入力電流指令値Ig*や、上記値に基づいて、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれに対する指令値を求める。
制御処理部30は、求めた指令値を昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33に与え、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれをフィードバック制御する機能を有している。
【0038】
図6は、制御処理部30による昇圧回路10、及びインバータ回路11のフィードバック制御を説明するための制御ブロック図である。
制御処理部30は、インバータ回路11の制御を行うための機能部として、第1演算部41、第1加算器42、補償器43、及び第2加算器44を有している。
また、制御処理部30は、昇圧回路10の制御を行うための機能部として、第2演算部51、第3加算器52、補償器53、及び第4加算器54を有している。
【0039】
図7は、昇圧回路10及びインバータ回路11の制御処理を示すフローチャートである。
図6に示す各機能部は、
図7に示すフローチャートに示す処理を実行することで、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
以下、
図7に従って、昇圧回路10及びインバータ回路11の制御処理を説明する。
【0040】
まず、制御処理部30は、現状の入力電力平均値〈Pin〉を求め(ステップS9)、前回演算時の入力電力平均値〈Pin〉と比較して、直流入力電流指令値Ig*を設定する(ステップS1)。なお、入力電力平均値〈Pin〉は、下記式(1)に基づいて求められる。
入力電力平均値〈Pin〉=〈Iin×Vg〉 ・・・(1)
【0041】
なお、式(1)中、Iinは昇圧回路電流検出値、Vgは直流入力電圧検出値(直流入力電圧値)であり、平均化処理部34によって平均化された値である直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉が用いられる。
また、式(1)以外の以下に示す制御に関する各式においては、昇圧回路電流検出値Iin、及び直流入力電圧検出値Vgは、平均化されていない瞬時値が用いられる。
また、「〈 〉」は、括弧内の値の平均値を示している。以下同じである。
【0042】
制御処理部30は、設定した直流入力電流指令値Ig*を、第1演算部41に与える。
第1演算部41には、直流入力電流指令値Ig*の他、直流入力電圧検出値Vg、系統電圧検出値Vaも与えられる。
第1演算部41は、下記式(2)に基づいて、変換装置1としての出力電流指令値の平均値〈Ia*〉を演算する。
出力電流指令値の平均値〈Ia*〉=〈Ig*×Vg〉/〈Va〉 ・・・(2)
【0043】
さらに、第1演算部41は、下記式(3)に基づいて、出力電流指令値Ia*(出力電流目標値)を求める(ステップS2)。
ここで、第1演算部41は、出力電流指令値Ia*を系統電圧検出値Vaと同位相の正弦波として求める。
出力電流指令値Ia*=(√2)×〈Ia*〉×sinωt ・・・(3)
【0044】
以上のように、第1演算部41は、入力電力平均値〈Pin〉(直流電力の入力電力値)及び系統電圧検出値Vaに基づいて出力電流指令値Ia*を求める。
次いで、第1演算部41は、下記式(4)に示すように、インバータ回路11を制御するための電流目標値であるインバータ電流指令値Iinv*(インバータ回路の電流目標値)を演算する(ステップS3)。
インバータ電流指令値Iinv*=Ia*+s CaVa ・・・(4)
【0045】
ただし、式(4)中、Caは、コンデンサ23の静電容量、sはラプラス演算子である。
式(4)中、右辺第2項は、フィルタ回路21のコンデンサ23に流れる電流を考慮して加算した値である。
なお、出力電流指令値Ia*は、上記式(3)に示すように、系統電圧検出値Vaと同位相の正弦波として求められる。つまり、制御処理部30は、変換装置1が出力する交流電力の電流Ia(出力電流)が系統電圧(系統電圧検出値Va)と同位相となるようにインバータ回路11を制御する。
【0046】
第1演算部41は、インバータ電流指令値Iinv*を求めると、このインバータ電流指令値Iinv*を第1加算器42に与える。
インバータ回路11は、このインバータ電流指令値Iinv*によって、フィードバック制御される。
【0047】
第1加算器42には、インバータ電流指令値Iinv*の他、現状のインバータ電流検出値Iinvが与えられる。
第1加算器42は、インバータ電流指令値Iinv*と、現状のインバータ電流検出値Iinvとの差分を演算し、その演算結果を補償器43に与える。
【0048】
補償器43は、上記差分が与えられると、比例係数等に基づいて、この差分を収束させインバータ電流検出値Iinvをインバータ電流指令値Iinv*とし得るインバータ電圧参照値Vinv#を求める。補償器43は、このインバータ電圧参照値Vinv#をインバータ回路制御部33に与えることで、インバータ回路11に、インバータ電圧参照値Vinv#に従った電圧Vinvで電力を出力させる。
インバータ回路11が出力した電力は、第2加算器44によって系統電圧検出値Vaで減算された上でACリアクトル22に与えられ、新たなインバータ電流検出値Iinvとしてフィードバックされる。そして、第1加算器42によってインバータ電流指令値Iinv*とインバータ電流検出値Iinvとの間の差分が再度演算され、上記同様、この差分に基づいてインバータ回路11が制御される。
【0049】
以上のようにして、インバータ回路11は、インバータ電流指令値Iinv*と、インバータ電流検出値Iinvとによって、フィードバック制御される(ステップS4)。
【0050】
一方、第2演算部51には、直流入力電圧検出値Vg、系統電圧検出値Vaの他、第1演算部41が演算したインバータ電流指令値Iinv*が与えられる。
第2演算部51は、下記式(5)に基づいて、インバータ出力電圧指令値Vinv*(インバータ回路の電圧目標値)を演算する(ステップS5)。
インバータ出力電圧指令値Vinv*=Va+s LaIinv* ・・・(5)
【0051】
ただし、式(5)中、Laは、ACリアクトルのインダクタンス、sはラプラス演算子である。
式(5)中、右辺第2項は、ACリアクトル22の両端に発生する電圧を考慮して加算した値である。
このように、本例では、インバータ回路11が出力する交流電力の電流位相が系統電圧検出値Vaと同位相となるようにインバータ回路11を制御するための電流目標値であるインバータ電流指令値Iinv*に基づいてインバータ出力電圧指令値Vinv*(電圧目標値)を設定する。
【0052】
インバータ出力電圧指令値Vinv*を求めると、下記式(6)に示すように、第2演算部51は、直流入力電圧検出値Vgと、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値とを比較して、大きい方を昇圧回路電圧目標値Vo*に決定する(ステップS6)。
昇圧回路電圧目標値Vo*=Max(Vg,Vinv*の絶対値) ・・・(6)
【0053】
さらに、第2演算部51は、下記式(7)に基づいて、昇圧回路電流指令値Iin*を演算する(ステップS7)。
昇圧回路電流指令値Iin*=
{(Iinv*×Vinv*)+(s C Vo*)×Vo*}/Vg ・・・(7)
【0054】
ただし、式(7)中、Cは、コンデンサ19の静電容量、sはラプラス演算子である。
式(7)中、インバータ電流指令値Iinv*と、インバータ出力電圧指令値Vinv*との積に加算されている項は、コンデンサ19を通過する無効電力を考慮した値である。
なお、コンデンサ19の静電容量Cが十分小さい場合、下記式(8)が成立する。
昇圧回路電流指令値Iin*=(Iinv*×Vinv*)/Vg・・・(8)
【0055】
第2演算部51は、昇圧回路電流指令値Iin*を求めると、この昇圧回路電流指令値Iin*を第3加算器52に与える。
昇圧回路10は、この昇圧回路電流指令値Iin*によって、フィードバック制御される。
第3加算器52には、昇圧回路電流指令値Iin*の他、現状の昇圧回路電流検出値Iinが与えられる。
第3加算器52は、昇圧回路電流指令値Iin*と、現状の昇圧回路電流検出値Iinとの差分を演算し、その演算結果を補償器53に与える。
【0056】
補償器53は、上記差分が与えられると、比例係数等に基づいて、この差分を収束させ昇圧回路電流検出値Iinを昇圧回路電流指令値Iin*とし得る昇圧回路電圧参照値Vbc#を求める。補償器53は、この昇圧回路電圧参照値Vbc#を昇圧回路制御部32に与えることで、昇圧回路10に、昇圧回路電圧参照値Vbc#に従った電圧Voで電力を出力させる。
昇圧回路10が出力した電力は、第4加算器54によって直流入力電圧検出値Vgで減算された上でDCリアクトル15に与えられ、新たな昇圧回路電流検出値Iinとしてフィードバックされる。そして、第3加算器52によって昇圧回路電流指令値Iin*と昇圧回路電流検出値Iinとの間の差分が再度演算され、上記同様、この差分に基づいて昇圧回路10が制御される。
【0057】
以上のようにして、昇圧回路10は、昇圧回路電流指令値Iin*と、昇圧回路電流検出値Iinとによって、フィードバック制御される(ステップS8)。
上記ステップS8の後、制御処理部30は、上記式(1)に基づいて、現状の入力電力平均値〈Pin〉を求める(ステップS9)。
【0058】
制御処理部30は、前回演算時の入力電力平均値〈Pin〉と比較して、入力電力平均値〈Pin〉が最大値となるように(最大電力点に追従するように)、直流入力電流指令値Ig*を設定する。
【0059】
以上によって、制御処理部30は、太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行いつつ、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
【0060】
制御処理部30は、上述したように、インバータ回路11及び昇圧回路10を電流指令値によってフィードバック制御する。
図8(a)は、制御処理部30が上記フィードバック制御において求めた昇圧回路電流指令値Iin*、及びこれに従って制御した場合の昇圧回路電流検出値Iinをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフであり、(b)は、制御処理部30が上記フィードバック制御において求めた昇圧回路電圧目標値Vo*、及びこれに従って制御した場合の昇圧回路電圧検出値Voをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。
【0061】
図8(a)に示すように、昇圧回路電流検出値Iinは、制御処理部30によって、昇圧回路電流指令値Iin*に沿って制御されていることが判る。
また、
図8(b)に示すように、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上記式(6)によって求められるため、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。
昇圧回路電圧検出値Voは、制御処理部30によって、昇圧回路電圧目標値Vo*に沿って制御されていることが判る。
【0062】
図9は、インバータ出力電圧指令値Vinv*の一例を示す図である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。破線は、商用電力系統3の電圧波形を示しており、実線は、インバータ出力電圧指令値Vinv*の波形を示している。
変換装置1は、
図7のフローチャートに従った制御によって、
図9に示すインバータ出力電圧指令値Vinv*を電圧目標値として電力を出力する。
よって、変換装置1は、
図9に示すインバータ出力電圧指令値Vinv*の波形に従った電圧の電力を出力する。
【0063】
図に示すように、両波は、電圧値及び周波数は互いにほぼ同じであるが、インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相の方が、商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相している。
【0064】
本例の制御処理部30は、上述のように、昇圧回路10及びインバータ回路11のフィードバック制御を実行する中で、インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相を、商用電力系統3の電圧位相に対して約3度進相させている。
インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相を商用電力系統3の電圧位相に対して進相させる角度は、数度であればよく、後述するように、商用電力系統3の電圧波形との間で差分を求めたときに得られる電圧波形が、商用電力系統3の電圧波形に対してほぼ90度進んだ位相となる範囲で設定される。例えば、0度より大きくかつ10度より小さい値の範囲で設定される。
【0065】
上記進相させる角度は、上記式(5)に示すように、系統電圧検出値Va、ACリアクトル22のインダクタンスLa、及びインバータ電流指令値Iinv*によって定まる。この内、系統電圧検出値Va、ACリアクトル22のインダクタンスLaは、制御対象外の固定値なので、進相させる角度は、インバータ電流指令値Iinv*によって定まる。
インバータ電流指令値Iinv*は、上記式(4)に示すように、出力電流指令値Ia*によって定まる。この出力電流指令値Ia*が大きくなるほど、インバータ電流指令値Iinv*における進相した成分が増加し、インバータ出力電圧指令値Vinv*の進み角(進相させる角度)が大きくなる。
【0066】
出力電流指令値Ia*は、上記式(2)から求められるため、上記進相させる角度は、直流入力電流指令値Ig*によって調整される。
本例の制御処理部30は、上述のように、インバータ出力電圧指令値Vinv*の位相が、商用電力系統3の電圧位相に対して約3度進相するように、直流入力電流指令値Ig*を設定している。
【0067】
〔1.3 昇圧回路及びインバータ回路の制御について〕
昇圧回路制御部32は、昇圧回路10のスイッチング素子Qbを制御する。また、インバータ回路制御部33は、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御する。
【0068】
昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33は、それぞれ昇圧回路用搬送波及びインバータ回路用搬送波を生成し、これら搬送波を制御処理部30から与えられる指令値である昇圧回路電圧参照値Vbc#、及びインバータ電圧参照値Vinv#で変調し、各スイッチング素子を駆動するための駆動波形を生成する。
【0069】
昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33は、上記駆動波形に基づいて各スイッチング素子を制御することで、昇圧回路電流指令値Iin*、及びインバータ電流指令値Iinv*に近似した電流波形の交流電力を昇圧回路10及びインバータ回路11に出力させる。
【0070】
図10(a)は、昇圧回路用搬送波と、昇圧回路電圧参照値Vbc#の波形とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。なお、
図10(a)では、理解容易とするために、昇圧回路用搬送波の波長を実際よりも長くして示している。
昇圧回路制御部32が生成する昇圧回路用搬送波は、極小値が「0」である三角波であり、振幅A1が制御処理部30から与えられる昇圧回路電圧目標値Vo*とされている。
また、昇圧回路用搬送波の周波数は、制御処理部30による制御命令によって、所定のディーティ比となるように、昇圧回路制御部32によって設定される。
【0071】
なお、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上述したように、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。よって、昇圧回路用搬送波の振幅A1も昇圧回路電圧目標値Vo*に応じて変化している。
【0072】
なお、本例では、直流入力電圧検出値Vgが、250ボルトであり、商用電力系統3の電圧振幅が288ボルトであるとする。
【0073】
昇圧回路電圧参照値Vbc#の波形(以下、昇圧回路用参照波Vbc#ともいう)は、制御処理部30が昇圧回路電流指令値Iin*に基づいて求める値であり、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vgよりも大きな期間W1において、正の値となっている。昇圧回路用参照波Vbc#は、期間Wでは、昇圧回路電圧目標値Vo*が成す波形状と近似するような波形となっており、昇圧回路用搬送波に対して交差している。
【0074】
昇圧回路制御部32は、昇圧回路用搬送波と昇圧回路用参照波Vbc#とを比較し、DCリアクトル15の両端電圧の目標値である昇圧回路用参照波Vbc#が昇圧回路用搬送波以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子Qbを駆動するための駆動波形を生成する。
【0075】
図10(b)は、昇圧回路制御部32が生成したスイッチング素子Qbを駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。横軸は、
図10(a)の横軸と一致するように示している。
この駆動波形は、スイッチング素子Qbのスイッチング動作を示しており、スイッチング素子Qbに与えることで、当該駆動波形に従ったスイッチング動作を実行させることができる。駆動波形は、電圧が0ボルトでスイッチング素子のスイッチをオフ、電圧がプラス電圧でスイッチング素子のスイッチをオンとする制御命令を構成している。
【0076】
昇圧回路制御部32は、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、直流入力電圧検出値Vg以下の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Qbを制御する。
また、各パルス幅は、三角波である昇圧回路用搬送波の切片によって定まる。よって、電圧が高い部分ほどパルス幅が大きくなっている。
【0077】
以上のように、昇圧回路制御部32は、昇圧回路用搬送波を昇圧回路用参照波Vbc#で変調し、スイッチングのためのパルス幅を表した駆動波形を生成する。昇圧回路制御部32は、生成した駆動波形に基づいて昇圧回路10のスイッチング素子QbをPWM制御する。
【0078】
ダイオード16に並列にダイオードの順方向に導通するスイッチング素子Qbu(図示せず。)を設置する場合、スイッチング素子Qbuは、スイッチング素子Qbの駆動波形と反転した駆動波形を用いる。ただし、スイッチング素子Qbとスイッチング素子Qbuが同時に導通することを防ぐため、スイッチング素子Qbuの駆動パルスがオフからオンに移行するときに1マイクロ秒程度のデッドタイムを設ける。
【0079】
図11(a)は、インバータ回路用搬送波と、インバータ電圧参照値Vinv#の波形とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。なお、
図11(a)においても、理解容易とするために、インバータ回路用搬送波の波長を実際よりも長くして示している。
【0080】
インバータ回路制御部33が生成するインバータ回路用搬送波は、振幅中央が0ボルトの三角波であり、その片側振幅が、昇圧回路電圧目標値Vo*(コンデンサ23の電圧目標値)に設定されている。よって、インバータ回路用搬送波の振幅A2は、直流入力電圧検出値Vgの2倍(500ボルト)の期間と、商用電力系統3の電圧の2倍(最大576ボルト)の期間とを有している。
また、周波数は、制御処理部30による制御命令等によって、所定のデューティ比となるように、インバータ回路制御部33によって設定される。
【0081】
なお、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上述したように、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間である期間W2では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。よって、インバータ回路用搬送波の振幅A2も昇圧回路電圧目標値Vo*に応じて変化している。
【0082】
インバータ電圧参照値Vinv#の波形(以下、インバータ回路用参照波Vinv#ともいう)は、制御処理部30がインバータ電流指令値Iinv*に基づいて求める値であり、概ね商用電力系統3の電圧振幅(288ボルト)と同じに設定されている。よって、インバータ回路用参照波Vinv#は、電圧値が−Vg〜+Vgの範囲の部分で、昇圧回路用搬送波に対して交差している。
【0083】
インバータ回路制御部33は、インバータ回路用搬送波とインバータ回路用参照波Vinv#とを比較し、電圧目標値であるインバータ回路用参照波Vinv#がインバータ回路用搬送波以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子Q1〜4を駆動するための駆動波形を生成する。
【0084】
図11(b)は、インバータ回路制御部33が生成したスイッチング素子Q1を駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。横軸は、
図11(a)の横軸と一致するように示している。
インバータ回路制御部33は、インバータ回路用参照波Vinv#の電圧が−Vg〜+Vgの範囲W2でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、それ以外の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Q1を制御する。
【0085】
図11(c)は、インバータ回路制御部33が生成したスイッチング素子Q3を駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。
インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q3については、図中破線で示しているインバータ回路用参照波Vinv#の反転波と、搬送波とを比較して駆動波形を生成する。
この場合も、インバータ回路制御部33は、インバータ回路用参照波Vinv#(の反転波)の電圧が、−Vg〜+Vgの範囲W2でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、それ以外の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Q3を制御する。
【0086】
なお、インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q2の駆動波形については、スイッチング素子Q1の駆動波形を反転させたものを生成し、スイッチング素子Q4の駆動波形については、スイッチング素子Q3の駆動波形を反転させたものを生成する。
【0087】
以上のように、インバータ回路制御部33は、インバータ回路用搬送波をインバータ回路用参照波Vinv#で変調し、スイッチングのためのパルス幅を表した駆動波形を生成する。インバータ回路制御部33は、生成した駆動波形に基づいてインバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4をPWM制御する。
【0088】
本例の昇圧回路制御部32は、DCリアクトル15に流れる電流が昇圧回路電流指令値Iin*に一致するように電力を出力させる。この結果、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1(
図10)で昇圧回路10にスイッチング動作を行わせる。昇圧回路10は、期間W1で直流入力電圧検出値Vg以上の電圧をインバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値に近似するように電力を出力する。一方、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が概ね直流入力電圧検出値Vg以下の期間では、昇圧回路制御部32は、昇圧回路10のスイッチング動作を停止させる。よって、直流入力電圧検出値Vg以下の期間では、昇圧回路10は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力を昇圧することなくインバータ回路11に出力する。
【0089】
また、本例のインバータ回路制御部33は、ACリアクトル22に流れる電流が、インバータ電流指令値Iinv*に一致するように電力を出力させる。この結果、インバータ出力電圧指令値Vinv*が概ね−Vg〜+Vgの期間W2(
図11)でインバータ回路11にスイッチング動作を行わせる。つまり、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vg以下の期間でインバータ回路11にスイッチング動作を行わせる。
よって、インバータ回路11は、昇圧回路10がスイッチング動作を停止している間、スイッチング動作を行い、インバータ出力電圧指令値Vinv*に近似する交流電力を出力する。
なお、インバータ回路用参照波Vinv#と、インバータ出力電圧指令値Vinv*とは近似するので、
図11(a)においては重複している。
【0090】
一方、インバータ出力電圧指令値Vinv*の電圧が概ね−Vg〜+Vgの期間W2以外の期間では、インバータ回路制御部33は、インバータ回路11のスイッチング動作を停止させる。この間、インバータ回路11には、昇圧回路10により昇圧された電力が与えられる。よって、スイッチング動作を停止しているインバータ回路11は、昇圧回路10から与えられる電力を降圧することなく出力する。
【0091】
つまり、本例の変換装置1は、昇圧回路10とインバータ回路11とを交互に切り替わるようにスイッチング動作させ、それぞれが出力する電力を重ね合わせることで、インバータ出力電圧指令値Vinv*に近似した電圧波形の交流電力を出力する。
【0092】
このように、本例では、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、直流入力電圧検出値Vgよりも高い部分の電圧を出力する際には昇圧回路10を動作させ、インバータ出力電圧指令値Vinv*の絶対値が、直流入力電圧検出値Vgよりも低い部分の電圧を出力する際にはインバータ回路11を動作させるように制御される。よって、インバータ回路11が、昇圧回路10によって昇圧された電力を降圧することがないので、電圧を降圧する際の電位差を低く抑えることができるため、昇圧回路のスイッチングによる損失を低減し、より高効率で交流電力を出力することができる。
さらに、昇圧回路10及びインバータ回路11は、共に制御部12が設定したインバータ出力電圧指令値Vinv*(電圧目標値)に基づいて動作するため、交互に切り替わるように出力される昇圧回路の電力と、インバータ回路の電力との間で、ずれや歪が生じるのを抑制することができる。
【0093】
図12は、参照波、及びスイッチング素子の駆動波形の一例とともに、変換装置1が出力する交流電力の電流波形の一例を示した図である。
図12において、最上段から順に、インバータ回路の参照波Vinv#及び搬送波、スイッチング素子Q1の駆動波形、昇圧回路の参照波Vbc#及び搬送波、スイッチング素子Qbの駆動波形、及び変換装置1が出力する交流電力の電流波形の指令値及び実測値を示すグラフを表している。これら各グラフの横軸は、時間を示しており、互いに一致するように示している。
【0094】
図に示すように、出力電流の実測値Iaは指令値Ia*と一致するように制御されていることが判る。
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbのスイッチング動作の期間と、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作の期間とは、概ね互いに交互に切り替わるように制御されていることが判る。
【0095】
また、本例では、
図8(a)に示すように、上記式(7)に基づいて求められる昇圧回路はDCリアクトル15を流れる電流が電流指令値Iin*に一致するように制御される。この結果、昇圧回路とインバータ回路の電圧が、
図8(b)に示す波形となり、昇圧回路10、およびインバータ回路11の高周波スイッチング動作にそれぞれ停止期間があり、概ね交互にスイッチング動作を行う運転が可能になる。
【0096】
〔1.4 出力される交流電力の電流位相について〕
本例の昇圧回路10及びインバータ回路11は、制御部12による制御によって、インバータ出力電圧指令値Vinv*に近似した電圧波形の交流電力を、その後段に接続されたフィルタ回路21に出力する。変換装置1は、フィルタ回路21を介して商用電力系統3に交流電力を出力する。
【0097】
ここで、インバータ出力電圧指令値Vinv*は、上述したように、制御処理部30によって商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相した電圧位相として生成される。
従って、昇圧回路10及びインバータ回路11が出力する交流電圧も、商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相した電圧位相とされる。
【0098】
すると、フィルタ回路21のACリアクトル22(
図2)の両端には、一方が昇圧回路10及びインバータ回路11の交流電圧、他方が商用電力系統3と、互いに数度電圧位相がずれた電圧がかかることなる。
【0099】
図13(a)は、インバータ回路11から出力された交流電圧、商用電力系統3、及びACリアクトル22の両端電圧、それぞれの電圧波形を示したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。
図に示すように、ACリアクトル22の両端が互いに数度電圧位相がずれた電圧がかかると、ACリアクトル22の両端電圧は、ACリアクトル22の両端にかかる互いに数度電圧位相がずれた電圧同士の差分となる。
【0100】
よって、図に示すように、ACリアクトル22の両端電圧の位相は、商用電力系統3の電圧位相に対してほぼ90度進んだ位相となる。
【0101】
図13(b)は、ACリアクトル22に流れる電流波形を示したグラフである。図中、縦軸は電流、横軸は時間を示している。横軸は、
図13(a)の横軸と一致するように示している。
ACリアクトル22の電流位相は、その電圧位相に対して90度遅延する。よって、図に示すように、ACリアクトル22を通して出力される交流電力の電流位相は、商用電力系統3の電流位相に対してほぼ同期することとなる。
【0102】
従って、インバータ回路11が出力する電圧位相は、商用電力系統3に対して数度進相しているが、電流位相は、商用電力系統3の電流位相に対してほぼ一致する。
よって、
図12の最下段に示すグラフのように、変換装置1が出力する電流波形は、商用電力系統3の電圧位相とほぼ一致したものとなる。
【0103】
この結果、商用電力系統3の電圧とほぼ同位相の交流電流を出力することができるので、当該交流電力の力率が低下するのを抑制することができる。
【0104】
《最小変調方式のまとめ》
以上、太陽光発電に基づいて商用電力系統への系統連系に用いられる変換装置1について詳細に説明した。
一方、系統連系を行わない変換装置としは、例えば、自立電源として直流から交流への変換を行う変換装置や、UPSに搭載される変換装置もある。これらも含めて、本発明の実施形態に係る変換装置全般の基本機能を「最小変調方式」と称する。
【0105】
《最小変調方式の変換装置全般について》
図14は、本発明の一実施形態に係る変換装置1の回路図である。
図2との違いは、昇圧回路10の回路構成である。なお、最終的な交流出力は、商用電源との系統連系に限らない。すなわち、この昇圧回路10は、
図2におけるダイオード16の代わりに、例えばFETであるスイッチング素子Qb1を用いている。スイッチング素子Qb1のオン/オフは、制御部12によって制御される。昇圧動作時は、スイッチング素子Qbと、スイッチング素子Qb1とが、交互にオン状態となるように動作する。また、昇圧動作を停止しているときは、スイッチング素子Qbはオフ状態、スイッチング素子Qb1もオフ状態となっている。
【0106】
また、
図14において、DCリアクトル15とスイッチング素子Qb1との直列体に対してバイパス回路を形成するように並列に、スイッチQsが接続されている。スイッチQsの具体例については後述するが、半導体スイッチであり、入力の直流電圧が印加されている電路L
inからDCバスL
Bに至る方向を順方向とするとき、DCバスL
Bから電路L
inへの逆電圧に耐える逆耐圧性能を有している。スイッチQsのオン/オフは、制御部12によって制御される。昇圧回路10の昇圧動作時には、スイッチQsはオフ状態であり、昇圧動作を停止しているときは、オン状態となる。
【0107】
次に、
図15及び
図16は、変換装置1の動作の特徴を簡略に示す波形図である。両図は同じ内容を示しているが、
図15は特に、直流入力から交流出力までの振幅の関係が見やすいように表示し、
図16は特に、制御のタイミングが見やすいように表示している。
図15の上段及び
図16の左欄はそれぞれ、比較のために、最小変調方式ではない従来の変換装置の動作を表す波形図である。また、
図15の下段及び
図16の右欄はそれぞれ、最小変調方式の変換装置1(
図14)の動作を示す波形図である。
【0108】
まず、
図15の上段(又は
図16の左欄)において、従来の変換装置では、直流入力すなわち直流電圧V
DCに対する昇圧回路の出力は、V
DCよりも高い値の等間隔のパルス列状である。この出力は平滑化され、DCバスL
Bに、電圧V
Bとして現れる。これに対してインバータ回路は、PWM制御されたスイッチングを半周期で極性反転しながら行う。この結果、フィルタ回路による平滑化を経て、交流出力としての正弦波の交流電圧V
ACが得られる。
【0109】
次に、
図15の下段の最小変調方式では、交流波形の電圧目標値V
ACの瞬時値と、入力である直流電圧V
DCとの比較結果に応じて、
図14の昇圧回路10とインバータ回路11とが動作する。すなわち、電圧目標値V
ACの絶対値においてV
AC<V
DC(又はV
AC≦V
DC)のときは、昇圧回路10は停止し(図中の「ST」)、V
AC≧V
DC(又はV
AC>V
DC)のときは、昇圧回路10が昇圧動作を行う(図中の「OP」)。昇圧回路10の出力はコンデンサ19(
図14)により平滑化され、DCバスL
Bに、図示の電圧V
Bとして現れる。
【0110】
これに対してインバータ回路11は、電圧目標値V
ACの絶対値と、直流電圧V
DCとの比較結果に応じて、V
AC<V
DC(又はV
AC≦V
DC)のときは、高周波スイッチングを行い(図中の「OP」)、V
AC≧V
DC(又はV
AC>V
DC)のときは、高周波スイッチングを停止する(図中の「ST」)。高周波スイッチングを停止しているときのインバータ回路11は、スイッチング素子Q1,Q4がオン、Q2,Q3がオフの状態と、スイッチング素子Q1,Q4がオフ、Q2,Q3がオンの状態のいずれかを選択することにより、必要な極性反転のみを行う。インバータ回路11の出力はフィルタ回路21により平滑化され、所望の交流出力が得られる。
【0111】
ここで、
図16の右欄に示すように、昇圧回路10とインバータ回路11とは、交互に高周波スイッチングの動作をしており、昇圧回路10が昇圧の動作をしているときは、インバータ回路11は高周波スイッチングを停止し、DCバスL
Bの電圧に対して必要な極性反転のみを行っている。逆に、インバータ回路11が高周波スイッチング動作するときは、昇圧回路10は停止して、電路L
inの電圧を素通りさせている。昇圧回路10が停止している時、電路L
inからスイッチQsを介してDCバスL
Bに電流が流れる。従って、DCリアクトル15の抵抗及びスイッチング素子Qb1のオン抵抗による電力損失は無くなり、スイッチQsのオン抵抗のみによる損失となるので、昇圧回路10の電力損失が低減される。
【0112】
図17は、スイッチQsの具体例を示す図である。
(a)に示すスイッチQsは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はFETであるスイッチ素子SとダイオードDとを互いに直列に接続したもの2組を、互いに逆向きの並列に接続して構成されている。
(b)には4種類のスイッチQsを例示している。上段のスイッチQsは、FETである2つのスイッチ素子S(ダイオードDが内在する。)を、互いに逆向きにしつつ、直列に接続して構成されている。ドレイン側を互いに繋ぐドレインコモン(左)、ソース側を互いに繋ぐソースコモン(右)のいずれでもよい。
また、(b)の下段のスイッチQsは、IGBTであるスイッチ素子SにダイオードDを並列接続したもの2組を、互いに逆向きにしつつ、直列に接続して構成されている。コレクタ側を互いに繋ぐコレクタコモン(左)、エミッタ側を互いに繋ぐエミッタコモン(右)のいずれでもよい。
(c)に示すスイッチQsは、順逆耐圧性能を有するIGBT(又はFET)のスイッチ素子Sの2組を、逆向きの並列に接続して構成される。
(d)に示すスイッチQsは、スイッチ素子Sとして例えばFETを1個使用したものである。このスイッチQsの場合、ドレインがDCバスL
Bのプラス側、ソースが太陽光発電パネル2のプラス側に、それぞれ接続される。
【0113】
以上のように、変換装置1における昇圧回路10はそもそも、直流電圧が直接印加される電路L
inからDCバスL
Bまでの間に、DCリアクトル15及びスイッチング素子Qb1を有している。従って、もし、スイッチQsが設けられていない場合は、昇圧回路10が停止状態であっても、DCリアクトル15及びスイッチング素子Qb1による電力損失が生じる。しかしながら、昇圧回路10が停止状態であるとき、上記のスイッチQsはDCリアクトル15及びスイッチング素子Qb1をバイパスして、電路L
inをDCバスL
Bに直結するので、昇圧回路10の電力損失が低減される。
【0114】
《交流から直流への変換装置》
なお、上述の変換装置1は、直流から交流への変換装置であるが、逆に、交流から直流への変換装置にも同様なスイッチ(Qs)を設けることができる。以下、交流から直流への変換装置について説明する。
【0115】
《回路構成》
図18は、交流から直流への変換装置1を備えた蓄電システムの一例を示すブロック図である。図中、変換装置1の出力端には、蓄電池2が接続され、入力端には、商用の交流電源3が接続されている。この蓄電システムは、商用電力系統から提供される電力を、蓄電池2に蓄えるものである。
【0116】
変換装置1は、交流電源3から受電した交流を直流に変換するAC/DCコンバータ11と、AC/DCコンバータ11の出力電圧を降圧する降圧回路10と、これら両回路10,11の動作を制御する制御部12とを備えている。
【0117】
図19は、変換装置1の回路図の一例である。太陽光発電パネルが蓄電池2に置き換わっている以外の回路構成要素(ハードウェア)は
図14と同様である。すなわち、実際には
図14に示した回路の動作を変えることによって、この変換装置1を実現することができる。
【0118】
図19において、変換装置1は、上述の降圧回路10、AC/DCコンバータ11及び制御部12の他、交流電源3の交流電圧(系統電圧)Vaを検出する電圧センサ25、フィルタ回路21、AC/DCコンバータ11の出力を平滑化するコンデンサ19、降圧回路10の出力を平滑化するコンデンサ26、蓄電池2に印加される電圧を検出する電圧センサ17、降圧回路10に流れる電流を検出する電流センサ18を備えている。
【0119】
フィルタ回路21は、2つのACリアクトル22と、ACリアクトル22の入力側に設けられた平滑用のコンデンサ23と、電流センサ24とを備えて構成されている。フィルタ回路21は、AC/DCコンバータ11から交流電源3側に高周波ノイズが出ないようにする機能を有している。また、ACリアクトル22は、AC/DCコンバータ11の動作により昇圧にも寄与する。電流センサ24は、AC/DCコンバータ11に入力される電流Icnv(ACリアクトル22に流れる電流)を検出する。
【0120】
AC/DCコンバータ11は、例えばFETからなるスイッチング素子Q1〜Q4を備えている。これらスイッチング素子Q1〜Q4は、フルブリッジ回路を構成している。各スイッチング素子Q1〜Q4は、制御部12に接続されており、制御部12により制御可能とされている。制御部12は、各スイッチング素子Q1〜Q4についてPWM制御をする他、同期整流をすることができる。また、ACリアクトル22の存在により、昇圧しつつ整流を行うことができる。こうして、AC/DCコンバータ11は、交流電源3から与えられる電力を直流電力に変換する。AC/DCコンバータ11の出力電圧はDCバスL
Bに印加され、コンデンサ19により高周波成分が平滑化される。
【0121】
降圧回路10は、DCリアクトル15と、例えばFETからなるスイッチング素子Qb,Qb1とを備えており、降圧チョッパ回路を構成している。スイッチング素子Qb,Qb1は、制御部12によって制御される。
また、DCリアクトル15及びスイッチング素子Qb1の直列体に対してバイパス回路を形成するように並列に、スイッチQsが接続されている。スイッチQsのオン/オフは、制御部12によって制御される。降圧回路10の降圧動作時には、スイッチQsはオフ状態であり、降圧動作を停止しているときは、オン状態となる。
【0122】
降圧回路10が降圧動作を停止している時には、DCバスL
BからスイッチQsを介して直流出力電路L
outに電流が流れる。従って、DCリアクトル15の抵抗及びスイッチング素子Qb1のオン抵抗による電力損失は無くなり、スイッチQsのオン抵抗のみによる損失となるので、降圧回路10の電力損失が低減される。
【0123】
電圧センサ17は、蓄電池2に印加される直流電圧(充電電圧)Vgを検出し、制御部12に出力する。電流センサ18は、DCリアクトル15に流れる降圧回路電流Iinを検出し、制御部12に出力する。
【0124】
また、降圧回路10のスイッチング動作は、後述するように、AC/DCコンバータ11との間でスイッチング動作を行う期間が交互に切り替わるように制御される。よって、降圧回路10は、スイッチング動作を行っている期間は、降圧された電圧を蓄電池2に出力し、スイッチング動作を停止(スイッチQsがオン)している期間は、AC/DCコンバータ11の出力を、スイッチQsを介して直流出力電路L
outに出力し、蓄電池2を充電することができる。
【0125】
このようにして、AC/DCコンバータ11は、交流電源3が出力する交流電力を直流電力に変換し、降圧回路10を経由して電力が蓄電池2に蓄えられる。
【0126】
電流センサ24及び電圧センサ25は、検出した交流電圧Va及び交流電流Icnvを制御部12に出力する。なお、電流センサ24は、図のようにコンデンサ23の左側でもよいが、コンデンサ23の右側に設けてもよい。
制御部12は、これら交流電圧Va及び交流電流Icnv(変換装置1への入力)と、上述の直流電圧Vg、電流Iin(変換装置1からの出力)に基づいて、降圧回路10及びAC/DCコンバータ11を制御する。
【0127】
なお、制御部12の機能は、その一部又は全部がハードウェア回路によって構成されてもよいし、その一部又は全部が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータによって実行させることで実現されていてもよい。
制御部12は、AC/DCコンバータ11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御し、指令値に応じた電圧・電流の電力を降圧回路10に出力する。また、制御部12は、降圧回路10のスイッチング素子Qb,Qb1を制御し、指令値に応じた電圧で蓄電池2を充電する。
【0128】
《制御の仕様》
制御部12は、入力電流目標値Ia*及び、下記の式(9)により定められる降圧回路10の電流目標値に基づいて交流電力の入力を制御する。すなわち、降圧回路10の電流目標値Iin*は、
Iin*=
{(Icnv* × Vcnv*)−(s C Vo*)×Vo*}/Vg
・・・(9)
である。
また、AC/DCコンバータ11への入力電流目標値Icnv*は下記式により表される。
Icnv*= Ia*−s CaVa ・・・(10)
【0129】
上記式(9)、(10)において、Ia*は入力電流目標値、
Vcnv*はAC/DCコンバータ11への交流入力電圧目標値、
CaはACリアクトル22の入力側に設けられた入力平滑用のコンデンサ23の静電容量、
Vaは交流電源3の交流電圧、
Cは、降圧回路10とAC/DCコンバータ11との間に設けられたコンデンサ19の静電容量、
Vo*は降圧回路10への入力電圧目標値、
Vgは蓄電池2を充電する直流電圧、
sはラプラス演算子、である。
【0130】
上記AC/DCコンバータ11において、制御部12は、降圧回路10への入力電圧目標値Vo*として、充電のための直流電圧Vg、及び、AC/DCコンバータ11の交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値(瞬時値の絶対値、以下同様)のいずれか大きい方を選択するとともに、AC/DCコンバータ11への交流入力電圧目標値Vcnv*を下記式(11)に基づいて求めることが好ましい。
すなわち、AC/DCコンバータ11への交流入力電圧目標値Vcnv*は、
Vcnv*=Va−s LaIcnv* ・・・(11)
である。ただし、LaはACリアクトル22のインダクタンスである。
【0131】
この場合、制御部12は、AC/DCコンバータ11への交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値が、充電のための直流電圧Vgよりも高い部分の電圧を出力する際には、降圧回路10を動作させ、AC/DCコンバータ11のへ交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値が、直流電圧Vgよりも低い部分の電圧を出力する際にはAC/DCコンバータ11を動作させるように制御される。そのため、AC/DCコンバータ11によって昇圧する際の電位差を低く抑えることができるとともに、AC/DCコンバータ11及び降圧回路10のスイッチング損失を低減し、より高効率で直流電力を出力することができる。
【0132】
さらに、降圧回路10およびAC/DCコンバータ11は、ともに制御部12が設定した目標値に基づいて動作するため、両回路の高周波スイッチング期間が交互に切り替わるように動作を行っても、AC/DCコンバータ11に入力される交流電流に位相ずれや歪みが生じるのを抑制することができる。
【0133】
《電圧波形の概略》
図20は、変換装置1の動作を概念的に示した電圧波形の図である。
(a)は、AC/DCコンバータ11への交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値の一例を示す。これは、概ね、商用交流の全波整流波形である。二点鎖線は、充電のための直流電圧Vgを示す。(b)に示すように、直流電圧Vgの方が交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値より高い区間(t0〜t1,t2〜t3,t4〜)では、AC/DCコンバータ11がスイッチング動作し、ACリアクトル22との協働により昇圧する。
【0134】
一方、これらの区間(t0〜t1,t2〜t3,t4〜)において降圧回路10は降圧動作を停止し、スイッチQsがオンとなっている。なお、(b)に示す細いストライプは、実際にはPWMパルス列であり、交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値に応じてデューティが異なる。従って、仮に、この状態の電圧が蓄電池2に印加されたとすると、(c)に示すような波形となる。
【0135】
一方、直流電圧Vgの方が交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値より低い区間(t1〜t2,t3〜t4)では、AC/DCコンバータ11はスイッチングを停止し、代わりに、降圧回路10が動作する。なお、ここで言うスイッチングとは、例えば20kHz程度の高周波スイッチングを意味する。AC/DCコンバータ11のスイッチング停止によりスイッチング素子Q1〜Q4が全てオフであるとしても、各スイッチング素子Q1〜Q4の寄生ダイオードを通して整流された電圧が降圧回路10に入力される。但し、導通損失を低減するためには、同期整流を行うことが好ましい。同期整流を行う場合のAC/DCコンバータ11は、制御部12の制御により、交流電圧Vaの符号が正の期間では、スイッチング素子Q1,Q4をオン、スイッチング素子Q2,Q3をオフとし、また、交流電圧Vaの符号が負の期間では、これらのオン/オフを反転する。この反転の周波数は、商用周波数の2倍であるため、高周波スイッチングに比べると、周波数が非常に小さい。従って、オン/オフによる損失も極めて少ない。
【0136】
一方、上記の区間(t1〜t2,t3〜t4)において降圧回路10は降圧動作する。(d)に示す細いストライプは、実際にはPWMパルス列であり、交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値に応じてデューティが異なる。降圧の結果、(e)に示す所望の直流電圧Vgが得られる。
【0137】
以上のように、交流電圧に基づく交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値が直流電圧Vgより低い期間のみAC/DCコンバータ11が動作し、その他の期間ではスイッチングを停止させることで、AC/DCコンバータ11のスイッチング損失を低減することができる。
同様に、交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値が直流電圧Vgより高い期間のみ降圧回路10が動作し、その他の期間ではスイッチングを停止させることで、降圧回路10のスイッチング損失を低減することができる。また、このとき降圧回路10は、スイッチQsのオン抵抗のみによる損失となるので、降圧回路10の電力損失が低減される。
【0138】
こうして、AC/DCコンバータ11と降圧回路10とが、交互にスイッチング動作することになり、一方が動作するときは他方はスイッチングを停止している。すなわちAC/DCコンバータ11及び降圧回路10のそれぞれに、スイッチングの停止期間が生じる。また、AC/DCコンバータ11は、動作時に昇圧を行うが、交流入力電圧目標値Vcnv*の絶対値のピーク及びその近傍を避けることになるので、スイッチングを行う際の電圧が相対的に低くなる。このことも、スイッチング損失の低減に寄与する。こうして、変換装置1全体としてのスイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0139】
《その他》
なお、上記実施形態では、AC/DCコンバータ11を構成するスイッチング素子としてFETを用いた例を示したが、FETに代えてIGBTを用いることもできる。但し、IGBTでは同期整流ができない。従って、AC/DCコンバータ11のスイッチング停止状態では、素子内蔵のダイオードによって、フルブリッジ整流回路として動作することになる。
【0140】
《付記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。