(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される、3以上の層を備える蓄電デバイス用端子フィルムであって、
一方の表面に配置された第1の最外層と、該第1の最外層とは反対側の表面に配置された第2の最外層と、前記第1の最外層と前記第2の最外層との間に配置された中間層と、を備え、
前記第1の最外層は、前記蓄電デバイスにおいて前記金属端子側に配置される、ポリオレフィンランダムコポリマーを含む層であり、
前記第2の最外層は、前記蓄電デバイスにおいて前記蓄電デバイス用端子フィルムの一部及び前記蓄電デバイス本体を覆う包装材側に配置される、ポリオレフィンホモポリマーを含む層であり、
前記中間層は、ポリオレフィンブロックコポリマーを含む層であり、
前記第1の最外層が、前記ポリオレフィンランダムコポリマーとして、エチレン含有量が0.1〜10質量%であるエチレン−プロピレンランダムコポリマーを含む、蓄電デバイス用端子フィルム。
蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される、3以上の層を備える蓄電デバイス用端子フィルムであって、
一方の表面に配置された第1の最外層と、該第1の最外層とは反対側の表面に配置された第2の最外層と、前記第1の最外層と前記第2の最外層との間に配置された中間層と、を備え、
前記第1の最外層は、前記蓄電デバイスにおいて前記金属端子側に配置される、ポリオレフィンランダムコポリマーを含む層であり、
前記第2の最外層は、前記蓄電デバイスにおいて前記蓄電デバイス用端子フィルムの一部及び前記蓄電デバイス本体を覆う包装材側に配置される、ポリオレフィンホモポリマーを含む層であり、
前記中間層は、ポリオレフィンブロックコポリマーを含む層であり、
前記第1の最外層が、前記ポリオレフィンランダムコポリマーとして、酸変性ポリオレフィンランダムコポリマーを含む、蓄電デバイス用端子フィルム。
前記第1の最外層及び前記第2の最外層のいずれか一方の表面に、エンボス加工及び/又は粗面化加工が施されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用端子フィルム。
前記第1の最外層及び前記第2の最外層のいずれか一方が、フィラー及び/又はエラストマーを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用端子フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電デバイスの概略構成を示す斜視図である。
図1では、蓄電デバイス10の一例として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて図示し、以下の説明を行う。なお、
図1に示す構成とされたリチウムイオン二次電池は、電池パック、或いは電池セルと呼ばれることがある。
【0024】
図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14(「タブリード」と呼ばれることもある)と、蓄電デバイス用端子フィルム16(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する。
【0025】
蓄電デバイス本体11は、充放電を行う電池本体である。包装材13は、蓄電デバイス本体11の表面を覆うと共に、蓄電デバイス用端子フィルム16の一部と接触するように配置されている。
【0026】
図2は、
図1に示す包装材の切断面の一例を示す断面図である。
図2において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0027】
ここで、
図2を参照して、包装材13の構成の一例について説明する。包装材13は、蓄電デバイス本体11に接触する内側から、内層21と、内層側接着剤層22と、腐食防止処理層23−1と、金属層であるバリア層24と、腐食防止処理層23−2と、外層側接着剤層25と、外層26と、が順次積層された7層構造とされている。
【0028】
内層21の母材としては、例えば、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等を用いることができる。これらポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、内層21は、必要とされる機能に応じて、単層フィルムや、複数の層を積層させた多層フィルムを用いて構成してもよい。具体的には、例えば、防湿性を付与するために、エチレン−環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムを用いてもよい。さらに、内層21は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0030】
内層21の厚さは、例えば、10〜150μmの範囲内で設定することが好ましいが、30〜80μmがより好ましい。内層21の厚さが10μmよりも薄いと、包装材13同士のヒートシール密着性、蓄電デバイス用端子フィルム16との密着性が低下する恐れがある。また、内層21の厚さが150μmよりも厚いと、包装材13のコスト増加の要因となるため、好ましくない。
【0031】
内層側接着剤層22としては、例えば、一般的なドライラミネーション用接着剤や、酸変性された熱融着性樹脂等、公知の接着剤を適宜選択して用いることができる。
【0032】
図2に示すように、腐食防止処理層23−1,23−2は、バリア層24の両面に形成することが性能上好ましいが、コスト面を考慮して、内層側接着剤層22側に位置するバリア層24の面のみに腐食防止処理層23−1を配置してもよい。
【0033】
バリア層24は、導電性を有する金属層である。バリア層24の材料としては、例えば、アルミニウムやステンレス鋼等を例示することができるが、コストや重量(密度)等の観点から、アルミニウムが好適である。
【0034】
外層側接着剤層25としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等を主剤としたポリウレタン系の一般的な接着剤を用いることができる。
【0035】
外層26としては、例えば、ナイロンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の単層膜、或いは多層膜を用いることができる。外層26は、内層21と同様に、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。また、外層26は、例えば、液漏れ時の対策として電解液に不溶な樹脂をラミネートしたり、電解液に不溶な樹脂成分をコーティングしたりすることで形成される保護層を有してもよい。
【0036】
図3は、
図1に示す蓄電デバイス用端子フィルム及び金属端子のA−A線方向の断面図である。
図3において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0037】
図1及び
図3に示すように、一対(
図1の場合、2つ)の金属端子14は、金属端子本体14−1と、腐食防止層14−2と、を有する。一対の金属端子本体14−1のうち、一方の金属端子本体14−1は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子本体14−1は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子本体14−1は、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が包装材13から露出されている。一対の金属端子本体14−1の形状は、例えば、平板形状とすることができる。
【0038】
金属端子本体14−1の材料としては、金属を用いることができる。金属端子本体14−1の材料となる金属は、蓄電デバイス本体11の構造や蓄電デバイス本体11の各構成要素の材料等を考慮して決めることが好ましい。
【0039】
例えば、蓄電デバイス10がリチウムイオン二次電池の場合、正極用集電体としてアルミニウムが用いられ、負極用集電体として銅が用いられる。この場合、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14−1の材料としては、アルミニウムを用いることが好ましい。また、電解液への耐食性を考慮すると、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14−1の材料としては、例えば、1N30等の純度97%以上のアルミニウム素材を用いることが好適である。さらに、金属端子本体14−1を屈曲させる場合には、柔軟性を付加する目的で十分な焼鈍により調質したO材を用いることが好ましい。蓄電デバイス本体11の負極と接続される金属端子本体14−1の材料としては、表面にニッケルめっき層が形成された銅、もしくはニッケルを用いることが好ましい。
【0040】
金属端子本体14−1の厚さは、リチウムイオン二次電池のサイズや容量に依存する。リチウムイオン二次電池が小型の場合、金属端子本体14−1の厚さは、例えば、50μm以上にするとよい。また、蓄電・車載用途等の大型のリチウムイオン二次電池の場合、金属端子本体14−1の厚さは、例えば、100〜500μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0041】
腐食防止層14−2は、金属端子本体14−1の表面を覆うように配置されている。リチウムイオン二次電池の場合、電解液にLiPF
6等の腐食成分が含まれる。腐食防止層14−2は、電解液に含まれるLiPF
6等の腐食成分から金属端子本体14−1が腐食されることを抑制するための層である。
【0042】
図3に示すように、蓄電デバイス用端子フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置されている。蓄電デバイス用端子フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされている。
【0043】
第1の最外層31は、ポリオレフィンランダムコポリマーを含む層である。第1の最外層31は、金属端子14の外周面を覆うように配置されることで、金属端子14の周方向を封止すると共に、蓄電デバイス用端子フィルム16と金属端子14とを密着させる機能を有する。
【0044】
ポリオレフィンランダムコポリマーは、2種類以上のオレフィンモノマーがランダムに共重合したものである。オレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等が挙げられる。
【0045】
ポリオレフィンランダムコポリマーとして具体的には、例えば、プロピレンとエチレンとの共重合体であるエチレン−プロピレンランダムコポリマー、プロピレンと1−ブテンとの共重合体である1−ブテン−プロピレンランダムコポリマー、プロピレンとエチレンと1−ブテンとの共重合体であるエチレン−ブテン−プロピレンランダムターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、エチレン−プロピレンランダムコポリマーが好ましい。
【0046】
エチレン−プロピレンランダムコポリマーにおいて、エチレン含有量は0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることが更に好ましい。エチレン含有量が0.1質量%以上であると、エチレンを共重合させることによる融点低下効果が十分に得られ、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する傾向がある。エチレン含有量が10質量%以下であると、融点が下がりすぎることを抑制でき、蓄電デバイスを高温環境下で長期間保持した場合の液漏れ防止性が向上する傾向がある。なお、エチレン含有量は、重合時のモノマーの混合比率から算出することが出来る。
【0047】
ポリオレフィンランダムコポリマーの融点は、120〜145℃であることが好ましく、125〜140℃であることがより好ましい。融点が120℃以上であると、蓄電デバイスを高温環境下で長期間保持した場合の液漏れ防止性が向上する傾向がある。融点が145℃以下であると、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する傾向がある。
【0048】
ポリオレフィンランダムコポリマーの重量平均分子量は、融点が上記範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、好ましくは5,000〜10,000,000であり、より好ましくは10,000〜1,000,000である。
【0049】
第1の最外層31は、上記ポリオレフィンランダムコポリマーとして酸変性ポリオレフィンランダムコポリマーを含むことが好ましい。第1の最外層31の構成材料として酸変性ポリオレフィンを用いることにより、金属端子14との密着性をより向上させることができる。酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィンを用いることができる。
【0050】
第1の最外層31は、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性向上の観点から、少なくともポリオレフィンランダムコポリマーを含む。なお、第1の最外層31は、2種以上のポリオレフィンランダムコポリマーを含んでいてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて重合状態の異なる他のポリオレフィンや、ポリオレフィン以外の成分を更に含んでいてもよい。他のポリオレフィンとしては、後述するポリオレフィンブロックコポリマー、ポリオレフィンホモポリマーが挙げられるが、それらの中ではポリオレフィンブロックコポリマーが好ましい。また、他のポリオレフィンを用いる場合、第1の最外層31に含有されるポリオレフィンのうち、ポリオレフィンランダムコポリマーの割合は、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性向上の観点から、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0051】
第1の最外層31の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。第1の最外層31の厚さが10μmよりも薄いと、金属端子14との密着性が低下する恐れがある。また、第1の最外層31の厚さが100μmよりも厚いと、蓄電デバイス用端子フィルム16のコスト増加の要因となるため、好ましくない。
【0052】
第2の最外層32は、ポリオレフィンホモポリマーを含む層である。第2の最外層32は、包装材13と融着されることで、包装材13内部を密封する機能を有する。
【0053】
ポリオレフィンホモポリマーは、1種類のオレフィンモノマーを単独で重合したものである。ポリオレフィンホモポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ1−ブテン等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0054】
ポリオレフィンホモポリマーの融点は、140〜165℃であることが好ましく、145〜163℃であることがより好ましく、150〜160℃であることが更に好ましい。融点が140℃以上であると、蓄電デバイスを高温環境下で長期間保持した場合の液漏れ防止性が向上する傾向がある。融点が165℃以下であると、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する傾向がある。
【0055】
ポリオレフィンホモポリマーの分子量は、融点が上記範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、好ましくは5,000〜10,000,000であり、より好ましくは10,000〜1,000,000である。
【0056】
第2の最外層32は、包装材に対する密着性を高温環境下で長期間維持する観点から、少なくともポリオレフィンホモポリマーを含む。なお、第2の最外層32は、2種以上のポリオレフィンホモポリマーを含んでいてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて重合状態の異なる他のポリオレフィンや、ポリオレフィン以外の成分を更に含んでいてもよい。他のポリオレフィンとしては、後述するポリオレフィンブロックコポリマー、上述したポリオレフィンランダムコポリマーが挙げられるが、それらの中ではポリオレフィンブロックコポリマーが好ましい。また、他のポリオレフィンを用いる場合、第2の最外層32に含有されるポリオレフィンのうち、ポリオレフィンホモポリマーの割合は、包装材に対する密着性を高温環境下で長期間維持する観点から、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0057】
第2の最外層32の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。第2の最外層32の厚さが10μmよりも薄いと、包装材13との密着性が低下する恐れがある。また、第2の最外層32の厚さが100μmよりも厚いと、蓄電デバイス用端子フィルム16のコスト増加の要因となるため、好ましくない。
【0058】
第1の最外層31及び第2の最外層32に使用するポリオレフィンの好ましい組み合わせとしては、本発明の効果がより十分に得られることから、第1の最外層31/第2の最外層32が、ランダム/ホモ、ランダム/ホモ・ブロック混合物、ランダム・ブロック混合物/ホモ、ランダム・ブロック混合物/ホモ・ブロック混合物である組み合わせが挙げられる。
【0059】
第1の最外層31と第2の最外層32とは、測定角度60°での光沢度の差が10以上であることが好ましい。第1の最外層31と第2の最外層32との間で光沢度に差をつけることで、蓄電デバイス用端子フィルム16の表裏判定が容易となり、蓄電デバイス用端子フィルム16を金属端子14に融着する際に、表裏を間違えることなく確実に第1の最外層31側を金属端子14に融着することができる。蓄電デバイス用端子フィルム16の表裏判定をより容易にする観点から、光沢度の差は15以上であることがより好ましく、20以上であることが更に好ましく、25以上であることが特に好ましい。
【0060】
第1の最外層31及び第2の最外層32の光沢度Gs(60°)は、JIS Z8741−1997 鏡面光沢度−測定方法に基づいて測定することができる。
【0061】
第1の最外層31と第2の最外層32との間で光沢度に差をつける方法は特に限定されないが、例えば、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方の表面に、エンボス加工及び/又は粗面化加工を施す方法、或いは、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方に、フィラー及び/又はエラストマーを添加する方法が挙げられる。
【0062】
エンボス加工は、例えば、押出成形により蓄電デバイス用端子フィルム16を製造する場合に、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方側の冷却ロールをエンボスロールとし、エンボス形状を転写する方法等により行うことができる。エンボス形状としては、格子型、ピラミッド型、斜線型、亀甲型などが挙げられる。
【0063】
粗面化加工は、例えば、押出成形により蓄電デバイス用端子フィルム16を製造する場合に、第1の最外層31及び第2の最外層32のいずれか一方側の冷却ロールを梨地ロール等の表面粗さを有するロールとし、表面粗さを転写する方法や、フィルム表面にブラスト処理を行う方法等により行うことができる。
【0064】
フィラーを添加する場合、添加するフィラーとしては、例えば、金属酸化物(例えば、アルミナやシリカ等)よりなるフィラー、有機材料(例えば、ポリカーボネートやエポキシ樹脂)よりなるフィラー等を用いることができる。蓄電デバイス用端子フィルム16のコストの観点から、フィラーとしては、シリカフィラーが好ましい。フィラーの形状としては、例えば、球形や不定形等を用いることができる。
【0065】
フィラーの平均粒径は、例えば、0.1〜20μmの範囲内にするとよい。フィラーの添加量は、例えば、0.1〜20質量%の範囲内で適宜設定することができる。
【0066】
エラストマーを添加する場合、添加するエラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0067】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、水添スチレン−ブタジエンラバー(HSBR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)等が挙げられる。
【0068】
スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、市販のものを使用することができる。スチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の「タフテック」、JSR社製の「ダイナロン」等が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学社製の「ゼラス」、プライムポリマー社製の「プライムTPO」等が挙げられる。
【0069】
エラストマーの添加量は、例えば、0.1〜20質量%の範囲内で適宜設定することができる。
【0070】
中間層33は、ポリオレフィンブロックコポリマーを含む層であり、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置されている。中間層33は、一方の面が第1の最外層31で覆われており、他方の面が第2の最外層32で覆われている。
【0071】
本発明において、ポリオレフィンブロックコポリマーは、2種類以上のホモポリオレフィン連鎖がブロック状に結合した一般的なブロックコポリマーのほか、ブロックポリプロピレンのようにホモポリプロピレン中にポリエチレンやエチレン−プロピレンゴム(EPR)等が分散した状態のものも含意する。ブロックポリプロピレンの場合、例えば、ホモポリプロピレン中にEPR及びポリエチレンが島状に分散した構成(海島構造)を有している。
【0072】
ポリオレフィンブロックコポリマーを構成するオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等が挙げられる。
【0073】
ポリオレフィンブロックコポリマーとして具体的には、例えば、上述のホモポリプロピレン中にEPR及びポリエチレンが分散したブロックポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが分散したブロックポリプロピレンが好ましい。
【0074】
ブロックポリプロピレンにおいて、エチレン含有量は0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることが更に好ましい。エチレン含有量が0.1質量%以上であると、エチレンを共重合させることによる融点低下効果が十分に得られ、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する傾向がある。エチレン含有量が10質量%以下であると、融点が下がりすぎることを抑制でき、蓄電デバイスを高温環境下で長期間保持した場合の液漏れ防止性が向上する傾向がある。
【0075】
ポリオレフィンブロックコポリマーの融点は、130〜160℃であることが好ましく、135〜155℃であることがより好ましく、140〜150℃であることが更に好ましい。融点が130℃以上であると、蓄電デバイスを高温環境下で長期間保持した場合の液漏れ防止性が向上する傾向がある。融点が160℃以下であると、蓄電デバイス用端子フィルムを金属端子に低温融着した場合の密着性が向上する傾向がある。
【0076】
ポリオレフィンブロックコポリマーの分子量は、融点が上記範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、好ましくは5,000〜10,000,000であり、より好ましくは10,000〜1,000,000である。
【0077】
中間層33は、少なくともポリオレフィンブロックコポリマーを含む。なお、中間層33は、2種以上のポリオレフィンブロックコポリマーを含んでいてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて重合状態の異なる他のポリオレフィンや、ポリオレフィン以外の成分を更に含んでいてもよい。他のポリオレフィンとしては、上述したポリオレフィンランダムコポリマー、上述したポリオレフィンホモポリマーが挙げられる。また、中間層33の絶縁性を向上させたい場合には、ポリオレフィン以外の成分として、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステルや耐熱性樹脂(例えば、ポリカーボネート等)を用いてもよい。また、他のポリオレフィンを用いる場合、中間層33に含有されるポリオレフィンのうち、ポリオレフィンブロックコポリマーの割合は、耐熱性及び低温融着性の両立の観点から、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0078】
中間層33は、単層構造である必要はなく、例えば、接着剤を介して、複数の樹脂層を貼り合せた多層構造にしてもよい。中間層33を多層構造にする場合、耐熱性及び低温融着性をより向上する観点から、第2の最外層32、第2の最外層32側に配置される中間層、第1の最外層31側に配置される中間層、及び、第1の最外層31の順に融点が低くなるように材料を選定し、融点の傾斜構造を形成することが好ましい。
【0079】
中間層33の厚さ(多層構造の場合はその全体の厚さ)は、例えば、10〜200μmの範囲内で適宜設定することができ、20〜100μmが好ましい。なお、中間層33は、金属端子14と第1の最外層31とのバランスが重要であり、第1の最外層31や金属端子14の厚さが厚い場合には中間層33の厚さもそれに応じて厚くしてもよい。
【0080】
第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層は、着色されていることが好ましい。着色は、例えば各層に顔料を添加することで行うことができる。このように、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の1層以上を着色することで、いずれの層にも顔料が添加されていない蓄電デバイス用端子フィルムと比較して、蓄電デバイス用端子フィルム16の視認性を向上させることが可能となる。これにより、蓄電デバイス用端子フィルム16の検査(具体的には、例えば、蓄電デバイス用端子フィルム16が金属端子14に付いているか否かの検査、金属端子14に対する蓄電デバイス用端子フィルム16の取り付け位置の検査等)の精度を向上させることができる。
【0081】
顔料としては、例えば、有機顔料や無機顔料等を用いることができる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン−ペリレン系、イソインドレニン系等が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化フローム系等が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等を用いることができる。
【0082】
有機顔料の具体例としては、例えば、以下の顔料を用いることができる。黄色に着色可能な有機顔料としては、例えば、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、アントラキノン(フラバトロン)、アゾメチン、キサンテン等を用いることができる。橙色に着色可能な有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン、ペリノン、キナクリドン等を用いることができる。赤色に着色可能な有機顔料としては、例えば、アントラキノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ペリレン、インジゴイド等を用いることができる。紫色に着色可能な有機顔料としては、例えば、オキサジン(ジオキサジン)、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン、キサンテン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン等を用いることができる。青色に着色可能な有機顔料としては、例えば、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド等を用いることができる。緑色に着色可能な有機顔料としては、例えば、フタロシアニン、ペリレン、アゾメチン等を用いることができる。
【0083】
無機顔料の具体例としては、例えば、以下の顔料を用いることができる。白色に着色可能な無機顔料としては、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉等を用いることができる。赤色に着色可能な無機顔料としては、例えば、鉛丹、酸化鉄赤等を用いることができる。黄色に着色可能な無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)等を用いることができる。青色に着色可能な無機顔料としては、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリウム)等を用いることができる。黒色に着色可能な無機顔料としては、例えば、カーボンブラック等を用いることができる。
【0084】
第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層に含まれる上記有機顔料及び無機顔料の含有量は、0.01質量%以上3.00質量%以下の範囲内で適宜設定することができる。
【0085】
また、顔料としては、例えば、カーボンブラックを用いることが好ましい。このように、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層にカーボンブラックを添加することで、濃い色合い(具体的には、黒色)で着色することが可能となる。
【0086】
これにより、蓄電デバイス用端子フィルム16の視認性がさらに向上するため、蓄電デバイス用端子フィルム16の検査(具体的には、例えば、蓄電デバイス用端子フィルム16が金属端子14に付いているか否かの検査、金属端子14に対する蓄電デバイス用端子フィルム16の取り付け位置の検査等)をさらに精度良く行うことができる。特に、金属端子14の幅が狭く、蓄電デバイス用端子フィルム16の幅が狭い場合に有効である。
【0087】
顔料となるカーボンブラックの粒径は、例えば、1nm〜1μmの範囲内で適宜選択することができる。第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層に含まれるカーボンブラックの添加量は、例えば、0.01質量%以上3.00質量%以下にするとよい。カーボンブラックの添加量が0.01質量%以上未満であると、各層を濃い色合いで着色することが困難になってしまう。また、カーボンブラックの含有量が3.00質量%よりも多いと、各層の導電性が高くなりすぎるため、各層と金属端子14との間の電気的な絶縁性を十分に確保することが困難となってしまう。
【0088】
よって、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層に含まれるカーボンブラックの添加量を0.01質量%以上3.00質量%以下とすることで、蓄電デバイス用端子フィルム16の視認性を向上できると共に、電気的な絶縁性を十分に確保することができる。
【0089】
また、顔料としてカーボンブラックのような導電性を有する顔料を用いる場合には、第1の最外層31、第2の最外層32及び中間層33の少なくとも1層には顔料を添加しないことが絶縁性確保の観点から好ましい。
【0090】
次に、本実施の形態の蓄電デバイス用端子フィルム16の製造方法について簡単に説明する。蓄電デバイス用端子フィルム16の製造方法には、特に制限はない。蓄電デバイス用端子フィルム16は、例えば、インフレーション成型法を用いる際に使用する丸ダイや押しダイ法を用いる際に使用するTダイ等のダイスを有するフィルム押出製造装置等を用いて製造することができるが、多層のインフレーション成型法が好適である。
【0091】
一般に、蓄電デバイス用端子フィルム16の材料としては、メルトマスフローレイト(以下、「MFR」という)が5g/10min以下の値の材料が用いられる場合が多い。このため、Tダイ法を用いると、製膜が安定せず、製造が困難となる場合が多い。一方、インフレーション成型法では、上記材料(MFRが5g/10min以下の値の材料)でも皮膜を安定して形成することが可能となるので、蓄電デバイス用端子フィルム16の製造に好適である。
【0092】
また、インフレーション成形法で蓄電デバイス用端子フィルム16のロールを作製する場合は、チューブを織り畳んで搬送し、巻取り直前に端部をカットして2ロールに分けて巻き取る事が一般的である。蓄電デバイス用端子フィルム16間の滑り性を向上させることによって、搬送時にチューブの内側での滑り性が向上し、搬送ジワ・折れ等を改善することが可能となるので、インフレーション成形時の製膜性を向上できる。
【0093】
以下の説明では、蓄電デバイス用端子フィルム16の製造方法の一例として、インフレーション成型法(言い換えれば、インフレーション成型装置)を用いて蓄電デバイス用端子フィルム16を製造する場合について説明する。
【0094】
始めに、第1の最外層31、第2の最外層32、及び中間層33の母材を準備する。次いで、上記第1の最外層31、第2の最外層32、及び中間層33の母材をインフレーション成型装置に供給する。次いで、インフレーション成型装置の押し出し部から3層構造(第1の最外層31、第2の最外層32、及び中間層33が積層された構造)となるように、上記3つの母材を押し出しながら、押し出された3層構造の積層体の内側からエア(空気)を供給する。
【0095】
そして、円筒形状にインフレートされた円筒状の蓄電デバイス用端子フィルム16を搬送しながら、ガイド部により扁平状に変形させた後、一対のピンチロールにより蓄電デバイス用端子フィルム16をシート状に折り畳む。織り込んだチューブの両端部をスリットし、1対(2条)のフィルムを巻き取りコアにロール状に巻き取ることで、ロール状とされた蓄電デバイス用端子フィルム16が製造される。
【0096】
蓄電デバイス用端子フィルム16を製造する際の押し出し温度は、例えば、170〜300℃の範囲内が好ましく、200〜250℃がより好ましい。押し出し温度が170℃未満の場合、各層を構成する樹脂の溶融が不十分となることで、溶融粘度がかなり大きくなるため、スクリューからの押し出しが不安定になる恐れがある。一方、押し出し温度が300℃を超える場合、各層を構成する樹脂の酸化や劣化が激しくなるため、蓄電デバイス用端子フィルム16の品質が低下してしまう。
【0097】
スクリューの回転数、ブロー比、及び引き取り速度等は、設定膜厚を考慮して適宜設定することができる。また、蓄電デバイス用端子フィルム16の各層の膜厚比は、各スクリューの回転数を変更する事で容易に調整することができる。
【0098】
なお、本実施の形態の蓄電デバイス用端子フィルム16は、接着剤を用いたドライラミネーションや、製膜した絶縁層(絶縁フィルム)同士をサンドウィッチラミネーションにより積層する方法を用いて製造してもよい。
【0099】
ここで、
図3を参照して、本実施の形態の蓄電デバイス用端子フィルム16と金属端子14とを溶融接着する融着処理について説明する。融着処理では、加熱による第1の最外層31の溶融と、加圧による第1の最外層31と金属端子14との密着とを同時に行いながら、蓄電デバイス用端子フィルム16と金属端子14とを熱融着させる。
【0100】
また、上記融着処理では、蓄電デバイス用端子フィルム16と金属端子14との十分な密着性及び封止性を得るために、第1の最外層31を構成する樹脂(ポリオレフィンランダムコポリマー)の融点以上の温度まで加熱を行う。
【0101】
具体的には、蓄電デバイス用端子フィルム16の加熱温度として、例えば、140〜170℃を用いることができる。また、処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、剥離強度と生産性を考慮して決定する必要がある。処理時間は、例えば、1〜60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0102】
なお、蓄電デバイス用端子フィルム16の生産タクト(生産性)を優先する場合には、170℃を超える温度で加圧時間を短時間にして熱融着してもよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170〜200℃を用いることができ、加圧時間としては、例えば、3〜20秒を用いることができる。
【0103】
本発明の蓄電デバイス用端子フィルムによれば、金属端子への熱融着時の温度が、140〜170℃の比較的低温の場合、及び、170〜200℃の比較的高温の場合のいずれの場合でも良好な密着性を示すことができ、且つ、包装材及び金属端子の両方に対する密着性を高温環境下で長期間維持することが可能となる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0105】
例えば、
図3では、3層構造とされた蓄電デバイス用端子フィルム16を例に挙げて説明したが、中間層33と第1の最外層31との間、及び中間層33と第2の最外層32との間に、それぞれ絶縁樹脂等からなる第2の中間層を配置してもよい。
【0106】
このように、中間層33と第1の最外層31との間、及び中間層33と第2の最外層32との間に、それぞれ第2の中間層を配置することで、中間層33と包装材13を構成するバリア層24(金属層)との間の絶縁性、及び中間層33と金属端子14との間の絶縁性を向上させることができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例の蓄電デバイス用端子フィルム16の構成を表1にまとめて示した。
【0108】
(実施例1)
<正極用タブ及び負極用タブの作製>
図3を参照して、実施例1の正極用タブ、及び負極用タブ(言い換えれば、金属端子14(「タブリード」ともいう)及び一対の蓄電デバイス用端子フィルム16(「タブシーラント」ともいう)よりなる構造体)の作製方法について説明する。
【0109】
始めに、正極用の金属端子本体14−1として、幅が5mm、長さが20mm、厚さが100μmのアルミニウム製の薄板部材を準備した。次いで、該アルミニウム製の薄板部材の表面に対してノンクロム系表面処理を実施して、腐食防止層14−2(ノンクロム系表面処理層)を形成することで、アルミニウム製の薄板部材、及びノンクロム系表面処理層を含む正極側の金属端子14(以下、説明の便宜上、「正極用金属端子14A」という)を作製した。
【0110】
次いで、負極用の金属端子本体14−1として、幅が5mm、長さが20mm、厚さが100μmのニッケル製の薄板部材を準備し、次いで、該ニッケル製の薄板部材の表面に対してノンクロム系表面処理を実施して、腐食防止層14−2(ノンクロム系表面処理層)を形成することで、ニッケル製の薄板部材、及びノンクロム系表面処理層を含む負極側の金属端子14(以下、説明の便宜上、「負極用金属端子14B」という)を作製した。
【0111】
次に、蓄電デバイス用端子フィルム16を以下の通り作製した。蓄電デバイス用端子フィルム16の作製に当たり、第1の最外層に融点134℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4.2質量%、重量平均分子量(Mw):21万、無水マレイン酸をグラフト変性)を用い、中間層に融点153℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:2.3質量%、重量平均分子量:23万)を用い、第2の最外層に融点162℃のホモ系ポリプロピレン(重量平均分子量:25万)を用いた。また、第2の最外層には、第2の最外層の母材となるホモ系ポリプロピレンに対して0.1質量%の濃度となるように、顔料として平均粒径が50nmのカーボンブラック(ファーネスブラック)、以下の実施例では単に「顔料」という)を添加した。
【0112】
次いで、住友重機モダン社製のインフレーション式フィルム押出製造装置(Co−OI型)に、第1の最外層の母材、中間層の母材、及び第2の最外層の母材をセットし、該フィルム押出製造装置により、上記3つの母材を押し出すことで積層フィルム(蓄電デバイス用端子フィルム16の母材となるフィルム)を作製した。このとき、上記積層フィルムは、第1の最外層の厚さが30μm、中間層の厚さが40μm、第2の最外層の厚さが30μmとなるように形成した。また、第1の最外層の母材、中間層の母材、及び第2の最外層の母材の溶融温度は210℃とし、ブロー比を2.2とした。更に、第2の最外層側の冷却ロールを、格子型、線数#300、深度20μmのエンボスロールとし、第2の最外層の表面にエンボス形状の転写を行った。
【0113】
次いで、上記積層フィルムを切断することで、幅が9mmで、長さが5mmとされた蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。
【0114】
その後、2枚の蓄電デバイス用端子フィルム16間に、正極用金属端子14Aを挟み込み、2枚の蓄電デバイス用端子フィルム16を加熱温度155℃又は175℃の条件で10秒間加熱し、正極用金属端子14Aと2枚の蓄電デバイス用端子フィルム16とを熱融着させることで、正極用金属端子14A及び2枚の蓄電デバイス用端子フィルム16よりなる正極用タブを作製した。正極用タブは、加熱温度155℃で作製した低温融着品と、加熱温度175℃で作製した高温融着品の2種類を作製した。
【0115】
また、同様な手法により、負極用金属端子14Bと負極用金属端子14Bを挟み込む2枚の蓄電デバイス用端子フィルム16とを熱融着させることで、負極用金属端子14B、及び蓄電デバイス用端子フィルム16よりなる負極用タブ(低温融着品及び高温融着品の2種類)を作製した。
【0116】
<評価用電池パックの作製>
厚さ25μmのナイロン層(外層26)と、厚さ5μmのポリエステルポリオール系接着剤(外層側接着剤層25)と、厚さ40μmのA8079−O材であるアルミニウム箔(バリア層24)と、該アルミニウム箔の一面をノンクロム系表面処理することで形成される第1の腐食防止処理層(腐食防止処理層23−1)と、該アルミニウム箔の他面をノンクロム系表面処理することで形成される第2の腐食防止処理層(腐食防止処理層23−2)と、厚さ30μmの酸変性のポリプロピレン層(内層側接着剤層22)と、厚さ40μmのポリプロピレン層(内層21)と、が積層され、かつサイズが50mm×90mmの長方形とされた包装材13を準備した。
【0117】
次いで、上記包装材13の長辺の中点で2つ折りし、長さ45mmの2つ折り部の一方に、正極用タブ及び負極用タブを挟んで、ヒートシールすることで、包装材13と正極用タブ及び負極用タブとを融着させた。このとき、ヒートシールの条件としては、加熱温度を190℃、処理時間を5秒とした。
【0118】
その後、包装材13内に、ジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合液に6フッ化リン酸リチウムを添加した電解液を2mL充填させた。次いで、包装材13の残りの辺をヒートシール処理した。このときのヒートシールの条件としては、加熱温度を190℃、処理時間を3秒とした。これにより、蓄電デバイス本体11が封入されていない、タブ評価可能な電池パックを作製した。電池パックは、正極用タブ及び負極用タブとして、低温融着品を用いた場合及び高温融着品を用いた場合の2種類を作製した。以下、電池パックについてもそれぞれ低温融着品、高温融着品と呼ぶ。
【0119】
(実施例2)
実施例2では、第1の最外層及び第2の最外層に顔料をそれぞれ0.1質量%の濃度で添加し、第2の最外層の母材を融点160℃のホモ系酸変性ポリプロピレン(重量平均分子量:10万、無水マレイン酸をグラフト変性)に変更し、第2の最外層側の冷却ロールを梨地ロールに変更した以外は、実施例1と同様の手法により、実施例2の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、実施例2の評価用電池パックを作製した。
【0120】
(実施例3)
実施例3では、顔料を第2の最外層に代えて中間層に0.1質量%の濃度で添加し、第2の最外層に熱可塑性エラストマー(三菱化学社製、商品名:ゼラス7053)を5質量%の濃度で添加し、第2の最外層へのエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様の手法により、実施例3の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、実施例3の評価用電池パックを作製した。
【0121】
(実施例4)
実施例4では、第2の最外層と中間層との間に更に、融点160℃のホモ系ポリプロピレン(重量平均分子量:21万)を用いて膜厚30μmの層(第2の中間層)を形成し、4層構成とし、第2の最外層に平均粒径1μmのシリカフィラーを2質量%の濃度で添加し、第2の最外層へのエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様の手法により、実施例4の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、実施例4の評価用電池パックを作製した。
【0122】
(実施例5)
実施例5では、第1の最外層の母材を、実施例1で用いたランダム系酸変性ポリプロピレンと、融点155℃のブロック系酸変性ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:2.1質量%、重量平均分子量:23万、無水マレイン酸をグラフト変性)とを50:50(質量比)で混合したものに変更し、第2の最外層の母材を、実施例1の第2の最外層で用いたホモ系ポリプロピレンと、実施例1の中間層で用いたブロック系ポリプロピレンとを50:50(質量比)で混合したものに変更し、顔料を第2の最外層に代えて中間層に0.1質量%の濃度で添加した以外は、実施例1と同様の手法により、実施例5の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、実施例5の評価用電池パックを作製した。
【0123】
(比較例1)
比較例1では、第1の最外層の母材として融点160℃のホモ系酸変性ポリプロピレン(重量平均分子量:10万、無水マレイン酸をグラフト変性)を、中間層及び第2の最外層の母材として融点162℃のホモ系ポリプロピレン(重量平均分子量:25万)をそれぞれ用い、第2の最外層への顔料添加及びエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様の手法により、比較例1の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例1の評価用電池パックを作製した。
【0124】
(比較例2)
比較例2では、第1の最外層の母材として融点134℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4.2質量%、重量平均分子量:21万、無水マレイン酸をグラフト変性)を、中間層及び第2の最外層の母材として融点140℃のランダム系ポリプロピレン(エチレン含有量:3.9質量%、重量平均分子量:15万)をそれぞれ用いた以外は、比較例1と同様の手法により、比較例2の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例2の評価用電池パックを作製した。
【0125】
(比較例3)
比較例3では、第1の最外層の母材として融点153℃のブロック系酸変性ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:2.3質量%、重量平均分子量:23万、無水マレイン酸をグラフト変性)を、中間層及び第2の最外層の母材として融点155℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:2.1質量%、重量平均分子量:23万)を用いた以外は、比較例1と同様の手法により、比較例3の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例3の評価用電池パックを作製した。
【0126】
(比較例4)
比較例4では、第2の最外層の母材として融点155℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:2.1質量%、重量平均分子量:23万)を用いた以外は、実施例1と同様の手法により、比較例4の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例4の評価用電池パックを作製した。
【0127】
(比較例5)
比較例5では、第1の最外層の母材として融点153℃のブロック系酸変性ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:2.3質量%、重量平均分子量:23万、無水マレイン酸をグラフト変性)を用いた以外は、実施例1と同様の手法により、比較例5の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例5の評価用電池パックを作製した。
【0128】
(比較例6)
比較例6では、中間層を用いず、第1の最外層及び第2の最外層の2層構成とした以外は、実施例1と同様の手法により、比較例6の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例6の評価用電池パックを作製した。
【0129】
(比較例7)
比較例7では、中間層に融点164℃のホモ系ポリプロピレン(重量平均分子量:28万)を用いた以外は、実施例1と同様の手法により、比較例7の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例7の評価用電池パックを作製した。
【0130】
(比較例8)
比較例8では、中間層に融点132℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4.2質量%、重量平均分子量(Mw):19万、無水マレイン酸をグラフト変性)を用いた以外は、実施例1と同様の手法により、比較例8の蓄電デバイス用端子フィルム16を作製した。その後、実施例1と同様の手法により、比較例8の評価用電池パックを作製した。
【0131】
<密着性の評価試験>
実施例1〜5及び比較例1〜8の評価用電池パックを、低温融着品及び高温融着品それぞれ100検体準備し、それらを温度が80℃又は100℃に保持された室内に、50検体ずつ4週間保管し、封入した電解液の液漏れの有無を確認した。ここでの評価は、液漏れが1検体も確認されなかったものを「A」とし、液漏れが確認された検体の数が1以上5未満のものを「B」、液漏れが確認された検体の数が5以上のものを「C」とした。表2に、実施例及び比較例の評価用電池パックの密着性の評価結果(判定結果)を示す。
【0132】
<絶縁性の評価試験>
絶縁性の評価試験では、高温融着品の評価用電池パックを用いた。始めに、実施例1の評価用電池パックを100検体準備し、次いで、耐電圧・絶縁抵抗試験機(菊水電子工業株式会社製、商品名:TOS9201)を用いて、実施例1の評価用電池パックを構成する負極用金属端子14Bと包装材13との間の絶縁性を測定した。該絶縁性の測定は、上記100検体に対して行った。このとき、ショートが1検体も発生しなかったものを「A」、ショートが確認された検体の数が1以上10未満だったものを「B」、ショートが確認された検体の数が10以上のものを「C」として判定した。
【0133】
次いで、実施例2〜5及び比較例1〜8の評価用電池パックをそれぞれ100検体準備し、実施例1の評価用電池パックの絶縁性評価試験と同様な手法により、絶縁性の評価を行った。表2に、実施例1〜5及び比較例1〜8の評価用電池パックの絶縁性の評価結果(判定結果)を示す。
【0134】
<センシング性の評価試験>
センシング性の評価試験では、低温融着品の評価用電池パックを用いた。始めに、実施例1の評価用電池パックを500検体準備し、次いで、撮像検知器(株式会社キーエンス製、商品名:CV−X100)を用いて、該検知器が検知する負極用タブ及び正極用タブの検知率(センシング性)を求めた。該検知率に関しては、検知率が95%以上のものを「A」、検知率が95%未満90%以上のものを「B」、検知率が90%未満のものを「C」と判定した。
【0135】
次いで、実施例2〜5及び比較例1〜8の評価用電池パックをそれぞれ500検体準備し、実施例1の負極用タブ及び正極用タブのセンシング性評価試験と同様な手法により、実施例2〜5及び比較例1〜8の評価用電池パックを構成する負極用タブ及び正極用タブのセンシング性の評価を行った。表2に、実施例1〜5及び比較例1〜8の負極用タブ及び正極用タブのセンシング性の評価結果(判定結果)を示す。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
<タブシーラントの光沢度及び表裏判断の評価試験>
タブシーラント(蓄電デバイス用端子フィルム16)の第2の最外層への表面加工等による光沢度及び表裏判断への影響を確認するため、以下のサンプル1〜5を準備した。
サンプル1:実施例1の融着前のタブシーラント(蓄電デバイス用端子フィルム16)。
サンプル2:第2の最外層側の冷却ロールを梨地ロールに変更した以外は、実施例1と同様の手法により作製したタブシーラント。
サンプル3:第2の最外層に平均粒径1μmのシリカフィラーを2質量%の濃度で添加し、第2の最外層へのエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様の手法により作製したタブシーラント。
サンプル4:第2の最外層に熱可塑性エラストマー(三菱化学社製、商品名:ゼラス7053)を5質量%の濃度で添加し、第2の最外層へのエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様の手法により作製したタブシーラント。
サンプル5:第2の最外層へのエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様の手法により作製したタブシーラント。
【0139】
上記サンプル1〜5の光沢度を、JIS Z8741−1997 鏡面光沢度−測定方法に基づいて測定した。すなわち、サンプル1〜5のタブシーラントの表裏の光沢度を、BYK Gardner GMBH社製、マイクロトリグロス光沢度計を用い、測定角度は60°にて測定し、光沢度Gs(60°)を求めた。その後、該タブシーラントの表裏を目視にて観察し、表裏判断可能かを確認した。表裏判断可能なものを「A」、困難なものを「C」とした。結果を表3に示す。
【0140】
【表3】
【0141】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜5の構成を用いることにより、低温及び高温で融着を行った場合の密着性に優れ、且つ、絶縁性及びセンシング性に優れたタブシーラントを作製する事が可能となる。また、表3に示した結果から明らかなように、表面加工等を施してタブシーラントの表裏の光沢度を変えることによって、表裏判断を容易にし、正極用タブ及び負極用タブを作製する工程での表裏間違え等のミスを抑制する事が可能となる。