特許第6349999号(P6349999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6349999ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6349999
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20180625BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180625BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20180625BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20180625BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20180625BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08K5/548
   C08K5/5415
   C08L57/02
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-125965(P2014-125965)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-3318(P2016-3318A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】築島 新
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−014708(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/144577(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/002750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
B60C 1/00
C08K 3/36
C08K 5/5415
C08K 5/548
C08L 57/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを10〜300質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤を前記シリカに対し1〜20質量%、および重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を1〜100質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂が、フェノールで変性したC系石油樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(1)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、R11、R12およびR13は同じかまたは異なり、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水素原子、炭素数6〜30のアリール基または鎖長が4〜30の直鎖ポリエーテル基、R14は炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【請求項4】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(2)で表されるポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (2)
(式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2の有機基、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
【請求項5】
前記シリカのBET比表面積が、100〜300m/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
さらに下記式(3)で表される化合物を配合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【化2】
(式(3)中、R31、R32、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜30のアルキル基、水素原子または炭素数6〜30のアリール基を表す。ただし、R31、R32、R33、R34の少なくとも1つは炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、伸び、耐摩耗性、硬度および発熱性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤは、ラベリング(表示方法)制度が開始され、タイヤの要求性能として転がり抵抗の低減が求められるようになっている。タイヤの低転がり抵抗化に有効な手段として、シリカなどのフィラーを高分散化し、コンパウンドのエネルギーロスを少なくする方法があり、従来のシランカップリング剤よりも反応性の高いメルカプト基を有するシランカップリング剤を用いることでこの目的を達成することができる。しかしながら、この種のシランカップリング剤は、メルカプト基由来のラジカルがポリマー分子鎖を切断し、コンパウンドの伸びが著しく低下してしまう。その結果、耐摩耗性に劣るコンパウンドとなってしまい、実用的ではなくなってしまう。
伸びの低下を補う手法としてプロセスオイルなどの可塑剤を増量する方法があるが、この方法ではコンパウンドの硬度や低発熱性が悪化してしまい、メルカプト基を有するシランカップリング剤を用いるメリットが打ち消されてしまう。
なお、ゴム組成物に液状の樹脂を配合する技術は、下記特許文献1等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−300932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、伸び、耐摩耗性、硬度および発熱性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに対し、シリカの特定量、メルカプト基を有するシランカップリング剤の特定量、および特定の特性を有するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0006】
1.ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを10〜300質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤を前記シリカに対し1〜20質量%、および重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を1〜100質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂が、フェノールで変性したC系石油樹脂であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(1)で表されることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
【0007】
[化1]

【0008】
(式(1)中、R11、R12およびR13は同じかまたは異なり、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水素原子、炭素数6〜30のアリール基または鎖長が4〜30の直鎖ポリエーテル基、R14は炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
4.前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(2)で表されるポリシロキサンであることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (2)
(式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2の有機基、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
【0009】
[化2]
【0010】
(式(3)中、R31、R32、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜30のアルキル基、水素原子または炭素数6〜30のアリール基を表す。ただし、R31、R32、R33、R34の少なくとも1つは炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
7.前記1〜6のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジエン系ゴムに対し、シリカの特定量、メルカプト基を有するシランカップリング剤の特定量、および特定の特性を有するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を特定量でもって配合したので、伸び、耐摩耗性、硬度および発熱性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのジエン系ゴムの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはSBRおよびBRがとくに好ましい。なおジエン系ゴムは、水素添加していないものを使用するのが好ましい。
【0014】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカおよび沈降シリカなど、従来からゴム組成物において使用することが知られている任意のシリカを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
なお本発明では、本発明の効果がさらに向上するという観点から、シリカのBET比表面積(ISO5794/1に準拠して測定)は、100〜300m/gであるのが好ましく、150〜300m/gであるのがさらに好ましい。
【0015】
(フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂)
本発明で使用するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、重量平均分子量Mwが200〜1000であり、かつ軟化点が−40〜20℃の範囲にある。また、該C系石油樹脂は、常温で液体である。
系石油樹脂とは、よく知られているように、ナフサの熱分解によって得られるC9 留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂である。典型的なC系石油樹脂は、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン、インデン、メチルインデンおよびジシクロペンタジエンから選択された1種以上をモノマー単位として構成されている。
本発明で使用するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、例えばC留分をフェノール系化合物の存在下でカチオン重合して得ることができる。フェノール系化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等が挙げられ、中でも本発明の効果が向上するという観点から、フェノールが好ましい。
ここで、フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の重量平均分子量Mwが200未満または1000を超えると伸び、耐摩耗性、硬度および発熱性を同時に改善することができない。また、軟化点が−40℃未満または20℃を超えると伸び、耐摩耗性、硬度および発熱性を同時に改善することができない。
前記重量平均分子量は、ポリスチレン換算のGPC法により測定され、軟化点は、JIS K6220−1に規定されたリングアンドボール法により測定される。
なお、本発明で使用するフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂は、市販されているものを使用することができ、例えばRutgers社製ノバレスL100、ノバレスL800、ノバレスA1200、ノバレスLC60等が挙げられる。
フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の配合によって、該樹脂のOH基とシリカのシラノール基が相互作用し、シリカの分散性が高まり、また加硫中に硫黄ラジカルをトラップし、硬度を下げずに、高温での破断伸びを向上させることができ、所望の特性が発現されるものと推測される。
【0016】
(メルカプト基を有するシランカップリング剤)
本発明で使用されるメルカプト基を有するシランカップリング剤は、本発明の効果向上の観点から、下記式(1)および/または下記式(2)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
【0017】
まず、下記式(1)で表されるメルカプト基を有するシランカップリング剤について説明する。
【0018】
[化3]

【0019】
(式(1)中、R11、R12およびR13は同じかまたは異なり、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水素原子、炭素数6〜30のアリール基または鎖長が4〜30の直鎖ポリエーテル基、R14は炭素数1〜30のアルキレン基を表す)
【0020】
式(1)で表されるメルカプト基を有するシランカップリング剤は公知であり、代表的には、3−メルカプトプロピル(トリメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリエトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジエトキシメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリプロポキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジプロポキシメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリブトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジブトキシメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジメトキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(メトキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジエトキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(エトキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジプロポキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(プロポキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジイソプロポキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(イソプロポキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジブトキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ブトキシジメチルシラン)、2−メルカプトエチル(トリメトキシシラン)、2−メルカプトエチル(トリエトキシシラン)、メルカプトメチル(トリメトキシシラン)、メルカプトメチル(トリエトキシシラン)、3−メルカプトブチル(トリメトキシシラン)、3−メルカプトブチル(トリエトキシシラン)、[C1123O(CH2CH2O)5](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)3](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)4](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)5](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)6](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)3](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)4](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)5](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)6](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)3](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)4](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)5](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)6](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1531O(CH2CH2O)5](CH2CH2O)2Si(CH23SH、
[C1123O(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)32(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)42(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1225O(CH2CH2O)62(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)32(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)42(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1327O(CH2CH2O)62(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)32(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)42(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1429O(CH2CH2O)62(CH2CH2O)Si(CH23SH、
[C1531O(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH23SH、等が例示される。
中でも代表的には、C1327O(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH23SHが好適であり、Si363としてエボニックデグサ社から入手可能である。
【0021】
次に、下記式(2)で表されるメルカプト基を有するシランカップリング剤について説明する。
【0022】
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (2)
【0023】
(式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2の有機基、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
【0024】
式(2)で表されるメルカプト基を有するシランカップリング剤(ポリシロキサン)およびその製造方法は、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示され、公知である。
【0025】
上記式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。なかでも、下記式(22)で表される基であることが好ましい。
−(CH2n−Sx−(CH2n (22)
上記式(22)中、nは1〜10の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(22)中、xは1〜6の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(22)中、*は、結合位置を示す。
上記式(22)で表される基の具体例としては、例えば、−CH2−S2−CH2−C24−S2−C24−C36−S2−C36−C48−S2−C48−CH2−S4−CH2−C24−S4−C24−C36−S4−C36−C48−S4−C48などが挙げられる。
【0026】
上記式(2)中、Bは炭素数5〜20の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0027】
上記式(2)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、下記式(23)で表される基であることが好ましい。
−OR2 (23)
上記式(23)中、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(23)中、*は、結合位置を示す。
【0028】
上記式(2)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、下記式(24)で表される基であることが好ましい。
−(CH2m−SH (24)
上記式(24)中、mは1〜10の整数を表し、なかでも、1〜5の整数であることが好ましい。
上記式(24)中、*は、結合位置を示す。
上記式(24)で表される基の具体例としては、−CH2SH、−C24SH、−C36SH、−C48SH、−C510SH、−C612SH、−C714SH、−C816SH、−C918SH、−C1020SHが挙げられる。
【0029】
上記式(2)中、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。
【0030】
上記式(2)中、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。
【0031】
上記式(2)中、aは、本発明の効果が向上するという理由から、0<a≦0.50であることが好ましい。
上記式(2)中、bは、本発明の効果が向上するという理由から、0<bであることが好ましく、0.10≦b≦0.89であることがより好ましい。
上記式(2)中、cは、本発明の効果が向上するという理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(2)中、dは、本発明の効果が向上するという理由から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
【0032】
上記ポリシロキサンの重量平均分子量は、本発明の効果が向上するという理由から、500〜2300であるのが好ましく、600〜1500であるのがより好ましい。本発明における上記ポリシロキサンの分子量は、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求めたものである。
上記ポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550〜700g/molであるのが好ましく、600〜650g/molであるのがより好ましい。
【0033】
上記ポリシロキサンは、本発明の効果が向上するという理由から、シロキサン単位(−Si−O−)を2〜50個有するものであることが好ましい。
【0034】
なお、上記ポリシロキサンの骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない。
【0035】
上記ポリシロキサンの製造方法は公知であり、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示された方法にしたがって製造することができる。
【0036】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを10〜300質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤を前記シリカに対し1〜20質量%、および前記フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を1〜100質量部配合してなることを特徴とする。
前記シリカの配合量が10質量部未満であると、転がり抵抗性が悪化し、300質量部を超えると低燃費性能が悪化する。
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量がシリカに対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると耐摩耗性が悪化する。
前記フェノール系化合物で変性したC9系石油樹脂の配合量が1質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に100質量部を超えると低燃費性能が悪化する。
【0037】
前記シリカのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、50〜200質量部である。
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤のさらに好ましい配合量は、シリカにに対し、5〜15質量%である。
前記フェノール系化合物で変性したC系石油樹脂のさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5〜15質量部である。
【0038】
ここで、本発明の効果がさらに高まるという観点から、本発明のゴム組成物には、下記式(3)で表される化合物をさらに配合することができる。
【0039】
[化4]
【0040】
(式(3)中、R31、R32、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜30のアルキル基、水素原子または炭素数6〜30のアリール基を表す。ただし、R31、R32、R33、R34の少なくとも1つは炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
【0041】
式(3)で表される化合物において、炭素数1〜30のアルキル基、水素原子または炭素数6〜30のアリールの中でも、アルキル基を選択するのが好ましく、アルキル基としては炭素数7〜20のものがさらに好ましく、例えば、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられ、中でもオクチル基、ノニル基が好ましい。アルコキシ基としては、エトキシ基が好ましく、分子内に1つのアルキル基および3つのエトキシ基を有するものがとくに好ましい。
【0042】
式(3)で表される化合物は、シリカに対して1〜15質量%配合するのが好ましく、2〜10質量%配合するのがさらに好ましい。
【0043】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0044】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、トレッド、とくにキャップトレッドに適用するのがよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0046】
標準例1−1〜4−1、実施例1−1〜4−2および比較例1−1〜2−3
サンプルの調製
表1〜4に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0047】
ムーニー粘度:上記ゴム組成物を用い、JIS K6300に従い、100℃における未加硫ゴムの粘度を測定した。結果は標準例の値を100として指数表示した。この値が低いほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
硬度(20℃):JIS K6253に基づき、20℃にて測定した。結果は、標準例の値を100として指数で示した。指数が大きいほど剛性に優れることを示す。
tanδ(60℃):JIS K6394に準拠して、岩本製作所社製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、静歪み10%、動歪み±2%、振動数=20Hz、温度60℃の条件下tanδ(60℃)を測定し、この値をもって転がり抵抗性を評価した。結果は、標準例を100として指数で示した。この値が低いほど、転がり抵抗が低いことを示す。
破断伸び:JIS K6251に準拠し、100℃で測定した。結果は、標準例を100として指数で示した。この値が大きいほど、破断伸びが高いことを示す。
耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、室温で測定した。結果は、標準例を100として指数で示した。この値が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
結果を表1〜4に併せて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
*1:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 1723、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:シリカ−1(Solvay社製Zeosil 1165MP、BET比表面積=165m/g)
*4:シリカ−2(Evonik Degussa社製Ultrasil 9000GR、BET比表面積=235m/g)
*5:シリカ−3(Solvay社製Zeosil Premium 200MP、BET比表面積=200m/g)
*6:シリカ−4(Solvay社製Zeosil 115GR、BET比表面積=115m/g)
*7:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製N339、窒素吸着比表面積(NSA)=90m/g)
*8:シランカップリング剤−1(上記式(1)を満たす化合物。エボニックデグサ社製Si363)
*9:シランカップリング剤−2(国際公開WO2014/002750号パンフレットの合成例1に従って合成した、上記式(2)を満たす化合物。組成式=(−C36−S4−C36)0.083(−C8170.667(−OC251.50(−C36SH)0.167SiO0.75、平均分子量=860)
*10:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*11:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸YR)
*12:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*13:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*14:樹脂−1(Rutgers社製ノバレスL800、フェノールで変性したC系石油樹脂、Mw=300、軟化点−40〜−30℃、水酸基価=0.1wt%、常温で液体)
*15:樹脂−2(Rutgers社製ノバレスC30、クマロンインデン樹脂、Mw=500、軟化点20〜30℃、水酸基価=0.0wt%、常温で液体)
*16:樹脂−3(ヤスハラケミカル(株)製YSレジンT−160、テルペンスチレン樹脂、Mw=2000、軟化点155〜165℃、水酸基価=3.0wt%、常温で固体)
*17:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*18:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*19:加硫促進剤−2(Flexsys社製Perkacit DPG)
*20:n−オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−3083)
【0053】
表1において、標準例1−1と比較例1−1を比較すると、可塑剤としてプロセスオイルを15質量部配合した標準例1−1に対して、プロセスオイルを30質量部に増量した比較例1−1では破断伸び、耐摩耗性の向上は見られるものの硬度の低下、tanδ(60℃)の悪化が見られる。
一方、プロセスオイルをフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂に置換した実施例1−1では加工性の悪化を招くことなく全ての特性が向上している。
また、未変性のクマロンインデン樹脂(液体)およびフェノール変性テルペン樹脂(個体)を配合した比較1−2および1−3では、ほとんどの物性が悪化しており、本発明で使用されるフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂の配合により特異的な効果が発揮されることが分かった。
表2に記載の標準例2−1、比較例2−1、実施例2−1、比較例2−2および比較例2−3は、表1に記載の上記式(1)を満たすシランカップリング剤−1を、上記式(2)を満たすシランカップリング剤−2に変更した例であり、上記表1と同様の結果を示した。
表3は、シリカの比表面積を種々変更し、プロセスオイルを配合した各標準例と、本発明で使用されるフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を配合した各実施例とを比較した結果を示している。表3の結果から、高い比表面積を配合した場合であっても、本発明で使用されるフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂を配合することにより、すべての物性が向上することが分かった。
表4は、上記式(3)で表される化合物の配合の有無を比較した結果を示している。標準例4−1と標準例4−2とを比較すると、単に上記式(3)で表される化合物を配合しただけでは、物性の向上効果が確認できないが、実施例4−2に示す通り、本発明で使用されるフェノール系化合物で変性したC系石油樹脂と上記式(3)で表される化合物とを同時に配合することにより、ムーニー粘度の低下、tanδ(60℃)の低下、破断伸びの向上が確認された。