(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軽量骨材が、粒子径が800μm以上の粒子を含まず、且つ粒子径が212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合が85〜100質量%であり、見かけ比重が0.15〜0.8kg/Lである、
請求項3に記載の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<船舶甲板用接着材>
本発明の船舶甲板用接着材の好適な実施形態について以下に説明する。本実施形態の船舶甲板用接着材は、アルミナセメント、細骨材及び無機充填材を含むセメント組成物、及び合成樹脂エマルジョンを含む船舶甲板用接着材である。
【0023】
アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。なかでも、2800〜4000cm
2/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントを用いることが好ましい。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521:1995「耐火物用アルミナセメントの物理試験方法」に準じて求められる。
【0024】
細骨材としては、表面精度の面から7〜8号の使用が適当であり、最大粒子径が425μm以下であり、細骨材100質量%中に300μm超の粒子径を有する粗粒分を5質量%未満含むことが好ましい。このような細骨材として、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等の砂類、スラグ細骨材、再生細骨材、から適宜選択して用いることができる。特に細骨材としては、珪砂、川砂、陸砂、海砂及び砕砂等の砂類から選択したものを好適に用いることができる。
【0025】
細骨材の粒子径は、JIS Z 8801:2006に規定される呼び寸法の異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、本発明において、「300μm超の粒子径を有する粗粒分」とは、300μm篩いを用いたときの篩上残分の粒子の質量割合のことをいう。
【0026】
細骨材中に300μm超の粒子径を有する粗粒分を5質量%以上含む場合、下地接着モルタルの施工性が低下する傾向にある。上記粗粒分の下限値は特に制限がなく、0質量%であってもよい。優れた自己流動性を得るため、細骨材中の上記粗粒分は、
より好ましくは0〜5質量%であり、
さらに好ましくは0〜2質量%であり、
特に好ましくは0〜1質量%である。
【0027】
無機充填材は、特に、酸化チタン等の無機顔料、又はタルク微粉末等の層状珪酸塩であるフィロケイ酸塩鉱物微粉末から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
フィロケイ酸塩鉱物微粉末としては、タルク、蛇紋岩、雲母、パイロフィライを使用することができるが、特にタルクが好ましい。さらに、作業性及び増粘性の面から5〜20μm程度の平均粒子径を持つものの使用が好ましい。平均粒子径が上述の範囲であることによって、良好な強度特性を有する船舶甲板用接着材を得ることができる。
無機顔料としては、酸化チタンやカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0028】
本実施形態の船舶甲板用接着材に含まれるセメント組成物の配合割合は、アルミナセメント100質量部に対して、細骨材150〜300質量部、無機充填材1〜100質量部含むことが好ましく、細骨材170〜280質量部、無機充填材1〜75質量部含むことがより好ましく、細骨材190〜260質量部、無機充填材2〜50質量部含むことが更に好ましく、細骨材200〜250質量部、無機充填材3〜40質量部含むことが特に好ましい。
【0029】
セメント組成物の配合割合が上述の範囲であることによって、より優れた施工性を有する船舶甲板用接着材を得ることができる。また、良好な強度特性の船舶甲板用接着材層を得ることができる。
【0030】
合成樹脂エマルジョンは、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン及び(メタ)アクリル系共重合体エマルジョンから選ばれる成分を少なくとも1種含む合成樹脂エマルジョンである。また、合成樹脂エマルジョンは、本発明の性質を損なわない範囲で、エチレン酢酸ビニル共重合体成分及び(メタ)アクリル系重合体成分以外の他の重合体成分や、他の樹脂エマルジョンを含むことができる。
【0031】
合成樹脂エマルジョンは、合成樹脂を含む固形分を水に分散させたものであり、合成樹脂エマルジョン100質量%中の固形分量が、好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜65質量%、より好ましくは50〜60質量%、特に好ましくは52〜58質量%含むものである。
【0032】
なお、合成樹脂エマルジョンの固形分量とは、合成樹脂エマルジョン中の水分を蒸発させて残った固形分の質量である。合成樹脂エマルジョンから固形分を差し引いたものを合成樹脂エマルジョン中の水分とする。
【0033】
合成樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下、特に好ましくは−20℃以下であることが、低温下での下地追従性に優れているために好ましい。
【0034】
本実施形態の船舶甲板用接着材は、乾燥時間や流動性等を調整するため、本発明の特性を損なわない範囲でさらに添加剤を含むことができる。添加剤としては、一般的に用いられる凝結調整剤、消泡剤、増粘剤又は流動化剤などを挙げることができる。
【0035】
本実施形態の船舶甲板用接着材の調製は、セメント組成物と合成樹脂エマルジョン(固形分量で換算)とを所定の割合で配合して混練することにより調製することができる。必要に応じて、さらに水を添加することもできる。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができ、混練時間は、2〜5分間が好ましい。
【0036】
本実施形態の船舶甲板用接着材に含まれる合成樹脂エマルジョンの含有量は、セメント組成物100質量部に対して、合成樹脂エマルジョン中の固形分1〜50質量部である。また、好ましくは5〜46質量部であり、より好ましくは10〜43質量部であり、更に好ましくは15〜40質量部であり、特に好ましくは20〜37質量部である。合成樹脂エマルジョンの含有量を上述の範囲にすることによって、船舶甲板床との接着性に優れるとともに、より低火炎伝搬性に優れる船舶甲板用接着材を得ることができる。
【0037】
本実施形態の船舶甲板用接着材は、船舶甲板床上面に厚み0mmを超えて、0.45mm以下の範囲で設けられる。好ましくは、0.1〜0.4mmであり、より好ましくは0.15〜0.35mmであり、更に好ましくは0.2〜0.3mmである。船舶甲板用接着材における船舶甲板床上面に設けられる厚みを上述の範囲にすることによって、船舶甲板床との優れた接着性を確保しつつ、低火炎伝搬性についてより優れた接着材層を得ることができる。
【0038】
船舶甲板用接着材の接着材層における低火炎伝搬性の指標として、国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートV A.653(16)の表面燃焼性試験において、消火点での臨界熱流束が、
25kW/m
2以上であることが好ましく、
30kW/m
2以上であることがより好ましく、
35kW/m
2以上であることが更に好ましく、
39kW/m
2以上であることが特に好ましい。
また、持続燃焼に必要な熱量が、
1.5MJ/m
2以上であることが好ましく、
1.6MJ/m
2以上であることがより好ましく、
1.7MJ/m
2以上であることが更に好ましく、
1.75MJ/m
2以上であることが特に好ましい。
また、総放出熱量が、
0.5MJ以下であることが好ましく、
0.1MJ以下であることがより好ましく、
0.05MJ以下であることが更に好ましく、
0.02MJ以下であることが特に好ましい。
また、最大熱放出速度が、
3.0kW以下であることが好ましく、
2.0kW以下であることがより好ましく、
1.0kW以下であることが更に好ましく、
0.05kW以下であることが特に好ましい。
また、炎滴が無いことが好ましい。
【0039】
船舶甲板用接着材の接着材層における接着性の指標として、20℃における材齢7日の接着強度が、
0.6N/mm
2以上であることが好ましく、
0.9N/mm
2以上であることがより好ましく、
1.1N/mm
2以上であることが更に好ましく、
1.2N/mm
2以上であることが特に好ましい。
また、20℃における材齢14日の接着強度が、
0.7N/mm
2以上であることが好ましく、
1.0N/mm
2以上であることがより好ましく、
1.2N/mm
2以上であることが更に好ましく、
1.3N/mm
2以上であることが特に好ましい。
【0040】
<船舶甲板用防熱床構造体の施工方法>
本発明の防熱性床構造体の施工方法の好適な実施形態について以下に説明する。本実施形態の防熱性床構造体の施工方法は、防熱性を必要とする船舶等の床構造体に用いられる施工方法であり、接着材塗布工程と、防熱性モルタル施工工程と、硬化体層形成工程と、を有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【0041】
接着材塗布工程は、上述の船舶甲板用接着材を甲板床上面に塗布して接着材層を形成する工程である。具体的には、まず、船舶甲板床の上面を箒または掃除機等を用いて埃等を清掃する。次に、船舶甲板用接着材を船舶甲板床の上面に塗布(施工)し、乾燥させて接着材層を形成する。塗布にあたっては刷毛やコテ等を適宜選択して用いることができる。船舶甲板用接着材の塗布量は、上述に示す厚みとなる塗布量の範囲が好ましい。上述の範囲にすることによって、船舶甲板床との優れた接着性を確保しつつ、低火炎伝搬性についてより優れた接着材層を得ることができる。
【0042】
防熱性モルタル施工工程は、接着材層の上面に、防熱性水硬性組成物と水とを混練して調製した防熱性モルタル組成物を施工する工程である。具体的には、防熱性水硬性組成物と水とを所定量配合して混練して防熱性モルタル組成物を調製し、接着材層の上面に施工(流し込み)する。その後、コテあるいはトンボを用いて防熱性モルタル組成物表面が平坦及び平滑になるように表面を均す作業を行い、防熱性モルタル組成物表面を平坦及び平滑にする。混練には、ハンドミキサーやモルタルミキサー等を適宜選択して用いることができる。また、混練時間は、2〜5分間が好ましい。さらに、防熱性モルタル組成物の施工厚みは、好ましくは20〜40mmであり、より好ましくは22〜35mmであり、さらに好ましくは24〜32mmであり、特に好ましくは25〜30mmである。防熱性モルタル組成物の施工厚みが上述の範囲であることによって、防熱性と軽量性をバランス良く得ることができる。ここで用いる防熱性水硬性組成物及び防熱性モルタル組成物については、後述する。
【0043】
硬化体層形成工程は、防熱性モルタル組成物を硬化させて、防熱性モルタル硬化体層を形成する工程である。具体的には、施工した防熱性モルタル組成物の表面硬度が次工程に移行できる程度に硬化し、防熱性モルタル硬化体層を形成する工程である。防熱性モルタル硬化体層をなす防熱性モルタル硬化体については、後述する。
【0044】
本実施形態の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法は、さらに仕上げ材施工工程を好適に用いることができる。具体的には、防熱性モルタル硬化体層の上面に建築用途で用いられるシートやタイル等の張り物及び塗り床材等の仕上げ材を施工する工程である。なかでも難燃性を有する仕上げ材を用いることが好ましい。
【0045】
以上述べたような施工方法により、船舶甲板用防熱性床構造体を得ることができる。この方法によって得られる防熱性モルタル硬化体層は、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さい。また、本実施形態の船舶甲板用接着材からなる接着性に優れた接着材層と組み合わせることにより、浮きやクラックを一段と抑制できると共に低下炎伝搬性に優れる。このため、本実施形態の施工方法により得られる船舶甲板用防熱性床構造体は、船舶甲板床と一体化し耐久性に優れ、防熱性及び低火炎伝搬性に優れる。
【0046】
次に、本実施形態の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物の一例を説明する。本実施形態の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法では、以下に述べるような防熱性水硬性組成物を用いるので、優れた流動性、施工性及び平滑性を有し、さらに、施工後の早期開放(次工程への早期移行)が可能な優れた速硬性を有するとともに、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さい防熱性モルタル硬化体層を有する防熱性床構造体を得ることができる。
【0047】
<防熱性水硬性組成物>
本実施形態の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、高炉スラグ微粉末と、軽量骨材と、流動化剤と、を含む防熱性水硬性組成物である。
【0048】
アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。なかでも、2800〜4000cm
2/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントを用いることが好ましい。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521:1995「耐火物用アルミナセメントの物理試験方法」に準じて求められる。
【0049】
ポルトランドセメントは、水硬性材料として一般的なものであり、いずれの市販品も使用することができる。これらのなかでも、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」で規定されるポルトランドセメントを用いることが好ましい。速硬性の観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント又は超早強ポルトランドセメントの使用が好ましい。
【0050】
石膏は、例えば、二水石膏、半水石膏及び無水石膏が挙げられ、排煙脱硫やフッ酸製造工程等で副産される石膏、又は天然に産出される石膏のいずれも使用することができる。施工性の観点から、無水石膏の使用が好ましい。
【0051】
水硬性成分の配合割合は、水硬性成分100質量%中に、好ましくはアルミナセメント30〜60質量%、ポルトランドセメント15〜50質量%及び石膏10〜40質量%含み、より好ましくはアルミナセメント35〜55質量%、ポルトランドセメント20〜45質量%、無水石膏15〜35質量%含み、さらに好ましくはアルミナセメント40〜50質量%、ポルトランドセメント25〜40質量%、無水石膏18〜30質量%含み、特に好ましくはアルミナセメント41〜47質量%、ポルトランドセメント27〜37質量%、無水石膏20〜28質量%含む。
【0052】
水硬性成分の配合割合が上述の範囲であることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より優れた速硬性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができ、施工後の早期開放がより確実となる。また、良好な強度特性や低収縮性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
【0053】
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」で規定される高炉スラグ微粉末であることが好ましい。高炉スラグ微粉末を用いることで、強度発現性及び寸法安定性をより高めることができる。また、高炉スラグ微粉末は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従い測定されるブレーン比表面積が、好ましくは3000cm
2/g以上であり、より好ましくは3000〜8000cm
2/gであり、さらに好ましくは3500〜6000cm
2/gであり、特に好ましくは4000〜5000cm
2/gである。ブレーン比表面積が上述の範囲であることによって、寸法安定性及び防熱性に優れ、良好な強度特性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
【0054】
高炉スラグ微粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは30〜200質量部含み、より好ましくは35〜100質量部含み、さらに好ましくは40〜80質量部含み、特に好ましくは45〜75質量部含む。無機粉体の含有量が上述の範囲であることによって、寸法安定性及び防熱性に優れ、良好な強度特性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
【0055】
軽量骨材は、ガラスを主成分とする原料(例えば、ガラスの含有量が80質量%以上)を焼成する焼成工程を有する製造方法によって得られるガラス発泡体からなる軽量骨材(ガラス発泡骨材)であることが好ましい。原料に含まれるガラスとしては、ビンや板ガラス等の廃ガラスを用いることができる。また、ガラス発泡骨材は軽量であり、主成分としてガラスを含有する球状物であるため、強度が高いうえに吸水量も少ない。したがって、モルタル硬化体の強度を確保しながら、一層の軽量化を図ることができる。
【0056】
軽量骨材(ガラス骨材)の製造方法は、例えば、主成分として廃ガラスを含む原料をボールミル等の粉砕機で粉砕して調合する調合工程と、調合した原料を造粒機又はスプレードライヤーで球状化して粒状物を得る球状化工程と、粒状物をロータリーキルン等で焼成する焼成工程と、振動篩機により分級する分級工程と、を有する。
【0057】
軽量骨材の見かけ比重は、好ましくは0.15〜0.8kg/L(リットル)であり、より好ましくは0.2〜0.6kg/Lであり、更に好ましくは0.25〜0.5kg/Lであり、特に好ましくは0.3〜0.45kg/Lである。軽量骨材の見かけ比重を、上述の範囲にすることによって、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。ここで、見かけ比重は、パウダーテスタを用いて測定することにより得られる値である。
【0058】
軽量骨材の吸水率は、吸水時間2時間において、好ましくは9%以下であり、より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは7%以下であり、特に好ましくは6%以下である。また、軽量骨材の吸水率は、給水時間24時間において、好ましくは12%以下であり、より好ましくは11%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは9%以下である。軽量骨材の吸水率を、上述の値以下にすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。ここで、吸水率は、JIS A 1134:2006「構造用軽量細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて求められる。
【0059】
軽量骨材は、粒子径が800μm以上の粒子を含まず、且つ粒子径が212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合が85〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることが更に好ましく、97〜100質量%であることが特に好ましい。軽量骨材の質量割合を、上述の範囲にすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
【0060】
軽量骨材の粒子径は、JIS Z 8801:2006に規定される呼び寸法の異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、本明細書において、「粒子径212μm以上であり且つ600μm未満である粒子の質量割合」とは、篩目600μmの篩いを用いたとき、篩目600μmの篩いを通過し、且つ篩目212μmの篩を用いたとき、篩目212μmの篩上に残る粒子の軽量骨材全体に対する質量割合のことをいう。
【0061】
軽量骨材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは10〜120質量部であり、より好ましくは15〜110質量部であり、さらに好ましくは20〜105質量部であり、特に好ましくは25〜100質量部である。軽量骨材の含有量を上述の範囲にすることによって、より軽量で防熱性に優れる防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
【0062】
流動化剤は、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系及びポリエーテル・ポリカルボン酸系等の市販の流動化剤が、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系及びポリエーテル・ポリカルボン酸系等の市販の流動化剤を用いることが好ましい。
【0063】
流動化剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.05〜1.5質量部であり、さらに好ましくは0.1〜1質量部であり、特に好ましくは0.15〜0.5質量部である。流動化剤の含有量を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
【0064】
本実施形態の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物は、さらに増粘剤、消泡剤、凝結調整剤及び樹脂粉末から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むことが好ましい。
【0065】
増粘剤は、増粘剤としては、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、及び水溶性ポリマー系などの市販品が挙げられる。中でもセルロース系増粘剤は価格や入手のし易さの観点から好ましい。セルロース系増粘剤には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等があり、その種類を問わず組み合わせて用いることができる。増粘剤を用いることで、防熱性水硬性組成物の材料分離抵抗性を向上することができる。
【0066】
増粘剤の20℃における2%水溶液の粘度は、好ましくは20000〜40000mPa・sであり、より好ましくは22000〜38000mPa・sであり、さらに好ましくは24000〜36000mPa・sであり、特に好ましくは25000〜35000mPa・sである。増粘剤の粘度を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性や材料分離抵抗性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。ここで、増粘剤の粘度は、増粘剤を2質量%含む水溶液(20℃)をB型粘度系を用いて測定することにより得ることができる。
【0067】
増粘剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部であり、より好ましくは0.15〜1質量部であり、さらに好ましくは0.2〜0.9質量部であり、特に好ましくは0.25〜0.8質量部である。増粘剤の含有量を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性や材料分離抵抗性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
【0068】
消泡剤は、シリコーン系、アルコール系及び/又はポリエーテル系などの合成物質及び/又は植物由来の天然物質など、公知のものが挙げられる。中でもポリエーテル系消泡剤は価格や入手のし易さの観点から好ましい。消泡剤を用いることで、防熱性水硬性組成物の消泡効果を向上することができる。
【0069】
消泡剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.3質量部であり、より好ましくは0.03〜0.2質量部であり、さらに好ましくは0.04〜0.15質量部であり、特に好ましくは0.05〜0.12質量部である。消泡剤の含有量を上述の範囲にすることによって、より優れた施工性や消泡性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
【0070】
凝結調整剤は、水硬性成分の水和反応を促進する凝結促進剤と水硬性成分の水和反応を遅延する凝結遅延剤があり、使用する水硬性成分の配合に応じてこれらの成分や含有量を適宜選択し、組み合わせて使用することができる。
【0071】
凝結遅延剤は、公知のものを用いることができる。一例として、オキシカルボン酸類等の有機酸や、グルコース、マルトース、デキストリン等の糖類、重炭酸ナトリウムやリン酸ナトリウム等を、それぞれの成分を単独で又は2種以上の成分を併用して用いることができる。
【0072】
オキシカルボン酸類は、オキシカルボン酸及びこれらの塩を含む。オキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸等の脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸及びトロパ酸等の芳香族オキシ酸を挙げることができる。
【0073】
オキシカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩及びカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩及びマグネシウム塩等)を挙げることができ、ナトリウム塩がより好ましい。また、特に、酒石酸ナトリウムが、凝結遅延効果、入手容易性及び価格の面から好ましく、重炭酸ナトリウムと併用することが更に好ましい。
【0074】
凝結促進剤としては、公知の凝結を促進する成分を用いることができる。例えば、凝結促進効果を有するリチウム塩、硫酸アルミニウム及び塩化カルシウムを好適に用いることができ、これらを数種組み合わせて使用することができる。
【0075】
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム及び水酸化リチウム等の無機リチウム塩や、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム及びクエン酸リチウム等の有機酸有機リチウム塩を挙げることができる。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性及び価格の面から好ましい。
【0076】
公知の凝結遅延剤及び凝結促進剤を組み合わせて使用する凝結調整剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.0質量部であり、より好ましくは0.05〜0.8質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.7質量部であり、特に好ましくは0.2〜0.6質量部である。凝結調整剤の含有量を上述の範囲で用いることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
【0077】
樹脂粉末は、特にその種類及び製造方法は限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができる。また、樹脂粉末としては、ブロッキング防止剤を主に樹脂粉末の表面に付着しているものを好適に用いることができる。また、樹脂粉末としては、水性ポリマーディスパージョンを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化形の樹脂粉末を用いることができる。本発明では、樹脂粉末として保護コロイドアクリルエマルジョンから製造されたアクリル共重合系の再乳化形樹脂粉末を用いることができる。特に、保護コロイドアクリルエマルジョンから製造されたアクリル酸エステル/メタクリル酸エステル供重合体の再乳化形樹脂粉末を用いることが好ましい。
【0078】
樹脂粉末の1次粒子(エマルジョン)の平均粒子径は、好ましくは0.2〜0.8μmの範囲であり、より好ましくは0.25〜0.75μmの範囲であり、さらに好ましくは0.3〜0.7μmの範囲であり、特に好ましくは0.35〜0.65μmの範囲のものを選択して用いることが好ましい。平均粒子径が上述の範囲であることにより、良好な施工性と、緻密なポリマーフィルムの形成によって得られる優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得ることができる。
【0079】
1次粒子の平均粒子径が上述の範囲の樹脂粉末を用いた防熱性水硬性組成物は、防熱性モルタル組成物の施工作業を行う過程で、より良好な施工性を得ることができる。
【0080】
樹脂粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは2〜7質量部であり、より好ましくは2.5〜6.5質量部であり、さらに好ましくは3〜6質量部であり、特に好ましくは3.5〜5.5質量部である。樹脂粉末の含有量を上述の範囲とすることによって、より優れた施工性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。また、より優れた防熱性や接着性を有する防熱性モルタル硬化体を得ることができる。
【0081】
本実施形態の船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法に用いられる防熱性水硬性組成物は、防熱性を必要とする船舶甲板床に好適に用いることができる。本実施形態の防熱性水硬性組成物を用いて、優れた流動性、施工性、平滑性及び速硬性を有する防熱性モルタル組成物を得ることができる。
【0082】
<防熱性モルタル組成物>
上述の防熱性水硬性組成物と水とを配合し混練することによって防熱性モルタル組成物を調製することができる。防熱性モルタル組成物は、防熱性を必要とする船舶甲板床に好適に用いることができる。水の配合量は、防熱性水硬性組成物100質量部に対し、好ましくは25〜60質量部であり、より好ましくは30〜55質量部であり、さらに好ましくは32〜53質量部であり、特に好ましくは34〜52質量部である。
【0083】
<防熱性モルタル硬化体>
上述の防熱性モルタル組成物を硬化させることによって防熱性モルタル硬化体を得ることができる。防熱性モルタル硬化体は、防熱性を必要とする船舶甲板床に好適に用いることができる。すなわち、上述の防熱性モルタル組成物が硬化して形成される防熱性モルタル硬化体は、軽量で防熱性に優れ、良好な強度特性を有し、収縮が小さい。また、本実施形態の船舶甲板用接着材からなる接着性に優れた接着材層と組み合わせることにより、浮きやクラックを一段と抑制できると共に低火炎伝搬性に優れる。このため、本実施形態の施工方法により得られる船舶甲板用防熱性床構造体は、船舶甲板床と一体化し耐久性に優れ、防熱性及び低火炎伝搬性に優れる。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
以下に実験例を挙げて本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[使用材料]
<船舶甲板用接着材の材料>
船舶甲板用接着材については、以下(1)〜(4)に示す原材料を用いた。
(1)アルミナセメント
・A:(ターナルLC、ブレーン比表面積3100cm
2/g、ケルネオス社製)
・B:(フォンジュ、ブレーン比表面積3100cm
2/g、ケルネオス社製)
(2)無機充填材
・A:タルク(Sタルク、平均粒径9μm、日本滑石製錬社製)
・B:顔料(酸化チタン:TPR−5N、平均粒子径0.26μm、堺化学工業社製)
平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定器により測定した。
(3)細骨材
・A:珪砂7号(市販品、JIS篩を使用して測定した珪砂の粒度構成を表1に示す。)
・B:珪砂8号(市販品、JIS篩を使用して測定した珪砂の粒度構成を表1に示す。)
また、表1の細骨材A+Bは、表2の船舶甲板用接着材1〜4に用いる細骨材の粒度構成である。
(4)合成樹脂エマルジョン
・A:(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン
(固形分55質量%、Tg=−34℃)
・B:エチレン・ 酢酸ビニル共重合体エマルジョン
(固形分55質量%、Tg=−19℃)
【0086】
【表1】
【0087】
上述の(1)アルミナセメント、(2)無機充填材、(3)細骨材、を表2に示す割合で混合し、船舶甲板用接着材用のセメント組成物の配合を調製した。更に、(4)合成樹脂エマルジョン(固形分換算)を表2に示す割合でセメント組成物と混合し、船舶甲板用接着材を調製した。調製方法は後述する。
【0088】
【表2】
【0089】
<防熱性水硬性組成物の材料>
防熱性水硬性組成物については、以下(5)〜(12)に示す原材料を用いた。
(5)水硬性成分
・AC:アルミナセメント(Al
2O
3量39質量%、Fe
2O
3量14質量%、ブレーン比表面積3100cm
2/g、ケルネオス社製)
・PC:ポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積=4500cm
2/g、宇部三菱セメント社製)
・GG:石膏(フッ酸無水石膏、ブレーン比表面積3880cm
2/g、セントラル硝子社製)
【0090】
上記材料を表3に示す割合で配合し、水硬性成分を調製した。
【0091】
【表3】
【0092】
(6)高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積4400cm
2/g)
(7)軽量骨材
・ガラス質骨材(見かけ比重0.38kg/L、吸水率[6%/2時間、9%/24時間]、JIS篩を使用して測定した珪砂の粒度構成を表4に示す。)
【0093】
軽量骨材の見かけ比重は、ホソカワミクロン社製のパウダーテスタE型を用いて測定した。軽量骨材の吸水率は、JIS A 1134:2006「構造用軽量細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて測定した。
【0094】
【表4】
【0095】
(8)流動化剤
・ポリエーテル・ポリカルボン酸系流動化剤(花王社製)
(9)増粘剤
・セルロース系増粘剤(ヒドロキシエチルメチルセルロース、20℃における2%水溶液粘度28800mPa・s、松本油脂社製)
【0096】
増粘剤の粘度は、B型粘度計(東京計器社製デジタル粘度計:DVL−B)を用い、増粘剤を2質量%含む水溶液(20℃)について、ローターNo.4、ローター回転数12rpmの条件で測定した。
【0097】
(10)消泡剤
・ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製)
(11)凝結調整剤
・凝結調整剤(炭酸リチウム、酒石酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム)
(12)樹脂粉末
・アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル供重合体の再乳化形樹脂粉末(1次粒子(エマルジョン)の平均粒子径0.5μm)
【0098】
上述の(5)水硬性成分、(6)無機粉体、(7)軽量骨材、(8)流動化剤、(9)増粘剤、(10)消泡剤、(11)凝結遅延剤、(12)樹脂粉末を表5に示す割合で防熱性水硬性組成物の配合を調製した。調製方法は後述する。
【0099】
【表5】
【0100】
[船舶甲板用接着材の調製]
1Lのポリ容器に表2に示す配合割合で合計1250gになるように各材料を加えて、ケミスターラーを使用して650rpmの条件下で3分間混合し、船舶甲板用接着材を得た。調製は全て20℃の恒温室にて行い、各材料は20℃恒温室中に12時間以上静置したものを使用した。
【0101】
[防熱性モルタル組成物の調製]
2Lのポリ容器に表5に示す配合割合で、防熱性水硬性組成物1000gに対し、水350gを加えて、ケミスターラーを使用して650rpmの条件下で3分間混合し、防熱性モルタル組成物を得た。調製は全て20℃の恒温室にて行い、各材料は20℃恒温室中に12時間以上静置したものを使用した。
【0102】
[船舶甲板用接着材の評価方法]
調製した船舶甲板用接着材の火炎伝搬性の評価試験及び接着性評価試験を行った。なお、各試験体の作製は全て20℃の恒温室にて行った。また、各測定は以下に示す方法で行った。
【0103】
(1)火炎伝搬性の評価試験
<試験体の作製>
A級仕切りの接着剤としての試験法を適応し、標準基盤として珪酸カルシウム板の上に、調製した船舶甲板用接着材を所定の厚さで塗布したのち、材齢14日以上自然乾燥させて作製した。
【0104】
<消火時の臨界熱流束の評価法>
国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートV A.653(16)の表面燃焼性試験に準拠して表面燃焼試験を行い、消火点での臨界熱流束(kW/m
2)を求めた。この臨界熱流束の値が大きいもの程、火炎伝播性が小さい。結果を表6に示す。
【0105】
<持続燃焼に必要な熱量の評価法>
国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートV A.653(16)の表面燃焼
性試験に準拠して表面燃焼試験を行い、持続燃焼に必要な熱量(MJ/m
2)を求めた。この熱量が大きいほど火炎伝搬性が小さい。結果を表6に示す。
【0106】
<総放出熱量の評価法>
国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートV A.653(16)の表面燃焼
性試験に準拠して表面燃焼試験を行い、総放出熱量(MJ)を求めた。この熱量が小さいほど火炎伝搬性が小さい。結果を表6に示す。
【0107】
<最大熱放出速度の評価法>
国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートV A.653(16)の表面燃焼
性試験に準拠して表面燃焼試験を行い、最大熱放出速度(kW)を求めた。
この最大熱放出速度が小さいほど火炎伝搬性が小さい。結果を表6に示す。
【0108】
<炎滴の有無の評価法>
国際海事機関が定めるIMO FTPコードパートV A.653(16)の表面燃焼
性試験に準拠して表面燃焼試験を行い、炎滴の有無を評価した。炎滴が無いことが低火炎伝搬性の条件となる。結果を表6に示す。
【0109】
(2)接着性評価法
アセトンで油汚れを取り除いた鋼板上に、調製した船舶甲板用接着材を所定の厚さで塗布し、3時間乾燥させた後、その上面に調製した防熱性モルタル組成物を流し込み、硬化させて防熱性モルタル硬化体層を形成させ、試験体を作製した。防熱性モルタル組成物の流し込みは、乾燥した船舶甲板用接着材層の上に、あらかじめ設置した40×40mm四方で深さ25mmの型枠の中へ行った。室温20℃、相対湿度65%の条件下にて材齢7日および14日間養生した後、型枠を外して、建研式引張試験機を用いて接着強度を測定した。結果を表6に示す。
【0110】
【表6】
【0111】
表6に示す通り、船舶甲板用接着材層の厚みが0.45mmを超えて厚い比較例1および比較例2は、火炎伝搬性評価試験の結果において消火時の臨界熱流束が25kW/m
2より小さく、加えて比較例1では炎滴の発生の見られるため、火炎伝搬性に劣る値を示した。また、比較例3は、厚みが0.3mmであるが、セメント組成物100質量部に対する合成樹脂エマルジョン中の固形分が55.1質量部と、50質量部を超えて多いため、消火時の臨界熱流束が25kW/m
2より小さく、火炎伝搬性に劣る値を示した。一方で、実施例1〜実施例3は、火炎伝搬性評価結果が全ての項目で良好な値を示した。また、合成樹脂エマルジョンの成分が実施例1〜実施例3と異なる実施例4も、火炎伝搬性評価結果が全ての項目で良好な値を示した。
【0112】
また、実施例1〜実施例4の接着性評価が、いずれの材齢においても良好な値を示した。
【0113】
以上のことから、本実施形態の船舶甲板用接着材は、低火炎伝搬性に優れ、下地甲板との接着性に優れることが確認された。また、船舶甲板床上面に、上記の船舶甲板用接着材から成る接着材層と、前記接着材層の上面に、防熱性モルタル硬化体層を形成する船舶甲板用防熱性床構造体の施工方法により、防熱性モルタル硬化体層の浮き、クラックの発生を抑制し、防熱性および低火炎伝搬性に優れた船舶甲板用防熱性床構造体を提供することができることが確認された。