特許第6350043号(P6350043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6350043-光プローブ 図000002
  • 特許6350043-光プローブ 図000003
  • 特許6350043-光プローブ 図000004
  • 特許6350043-光プローブ 図000005
  • 特許6350043-光プローブ 図000006
  • 特許6350043-光プローブ 図000007
  • 特許6350043-光プローブ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350043
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】光プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20180625BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20180625BHJP
   A61B 18/24 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61N5/067
   G02B6/02 421
   A61B18/24
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-138378(P2014-138378)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-15981(P2016-15981A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大
(72)【発明者】
【氏名】佐野 知巳
(72)【発明者】
【氏名】為國 芳享
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/105631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
A61B 18/24
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って延び、コアと、前記コアを覆うクラッド部と、前記クラッド部の周囲を覆う被覆部とを有し、その一端側において前記被覆部が除去されてクラッド部が露出されるとともに、他端側が光源と接続された光ファイバと、
生体適合性を有する材料により構成され、前記光ファイバの前記一端側に対して接着剤によって固定されたフェルールと、
を備える医療用の光プローブであって、
前記フェルールは、
前記フェルールの第1面に形成された第1開口部から前記光軸に沿って延びる孔部と、
前記孔部の前記第1面側の端部とは逆側の端部と連通し、前記フェルールの側面に連通する溝部と、前記第1面とは逆側の第2面に形成される凸型のレンズ部と、を有し、
前記溝部は、前記光軸と交差する第1溝面と、前記第1溝面に対向し、前記孔部と連通する第2開口部が形成される第2溝面と、を有し、
前記光ファイバは、前記逆側の端面が前記第1溝面と当接した状態で、前記溝部及び前記孔部に導入された前記接着剤によって固定され、
前記第2溝面の算術平均粗さは、前記光源から出射され前記光ファイバ中を伝搬する光の波長の10倍以上である光プローブ。
【請求項2】
前記第1溝面の算術平均粗さが、前記第2溝面の算術平均粗さよりも小さい請求項1記載の光プローブ。
【請求項3】
前記フェルールの側面の算術平均粗さが、前記第1溝面の算術平均粗さよりも大きい請求項1又は2又記載の光プローブ。
【請求項4】
前記孔部は、前記第1開口部から前記光軸に沿って延びる第1孔部と、前記第1孔部から連続して前記光軸に沿って延びると共に前記第1孔部から離間するにつれてその径が小さくなる縮径部と、前記縮径部から連続して前記光軸に沿って延び、その径が第1孔部よりも小さく、前記縮径部との接続側とは逆側で前記第2開口部に接続する第2孔部と、を含み、
前記光ファイバは、
前記第1孔部内及び前記縮径部に前記被覆部に覆われた領域の端部が配置されると共に、
前記被覆部が除去された領域の前記クラッド部が前記第2孔部及び前記縮径部に配置され、前記一端側の端面が前記第1溝面と当接した状態で、前記溝部、前記第1孔部、前記縮径部及び前記第2孔部に導入された前記接着剤によって固定される請求項1〜3のいずれか一項に記載の光プローブ。
【請求項5】
前記第1面の外周縁が丸められている請求項1〜4のいずれか一項に記載の光プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光プローブに関し、特に医療用の光プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
光化学医療の一種として、光線力学的治療法(PDT:Photodynamic Therapy)が知られている。PDTは、腫瘍親和性のある光感受性物質を患者に投与した後、腫瘍組織に対してレーザ光を照射することで、光感受性物質による光化学反応を起こして腫瘍組織の変性又は壊死を導く治療法であり、患者への肉体的な負担が少ないことから注目されている。このようなPDTに用いられる光プローブとして、例えば特許文献1記載では、光ファイバ中を導波したレーザ光を照射するためのポリアミド樹脂製のチップ(フェルール)が光ファイバ端部に装着された構成が示されている。このような光プローブでは、レーザ光は、光ファイバの端面から出射された後、フェルールに形成されたレンズを経て出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−047518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような光プローブの場合、光ファイバから出射されたレーザ光の一部がフェルールのレンズから外方に出射されず反射する場合がある。レンズで反射された光が光ファイバのクラッドに入射し戻り光として光源に到達すると、光源が損傷する可能性がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、光ファイバへの戻り光の入射が抑制された光プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、
(1) 光軸に沿って延び、コアと、前記コアを覆うクラッド部と、前記クラッド部の周囲を覆う被覆部とを有し、その一端側において前記被覆部が除去されてクラッド部が露出されるとともに、他端側が光源と接続された光ファイバと、
生体適合性を有する材料により構成され、前記光ファイバの前記一端側に対して接着剤によって固定されたフェルールと、
を備える医療用の光プローブであって、
前記フェルールは、
前記フェルールの第1面に形成された第1開口部から前記光軸に沿って延びる孔部と、
前記孔部の前記第1面側の端部とは逆側の端部と連通し、前記フェルールの側面に連通する溝部と、前記第1面とは逆側の第2面に形成される凸型のレンズ部と、を有し、
前記溝部は、前記光軸と交差する第1溝面と、前記第1溝面に対向し、前記孔部と連通する第2開口部が形成される第2溝面と、を有し、
前記光ファイバは、前記逆側の端面が前記第1の面と当接した状態で、前記溝部及び前記孔部に導入された前記接着剤によって固定され、
前記第2溝面の表面粗さは、前記光源から出射される光の波長の10倍以上である光プローブ
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ファイバへの戻り光の入射が抑制された光プローブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るPDT装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る光プローブの概略構成図である。
図3】本実施形態に係る光プローブにおける光の進行の例を示す図である。
図4】本実施形態に係る光プローブにおける光の進行の例を示す図である。
図5】本実施形態に係る光プローブにおける光の進行の例を示す図である。
図6】本実施形態に係る光プローブにおける光の進行の例を示す図である。
図7】本実施形態に係る光プローブにおける光の進行の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本願の光プローブは、(1)光軸に沿って延び、コアと、前記コアを覆うクラッド部と、前記クラッド部の周囲を覆う被覆部とを有し、その一端側において前記被覆部が除去されてクラッド部が露出されるとともに、他端側が光源と接続された光ファイバと、生体適合性を有する材料により構成され、前記光ファイバの前記一端側に対して接着剤によって固定されたフェルールと、を備える医療用の光プローブであって、前記フェルールは、前記フェルールの第1面に形成された第1開口部から前記光軸に沿って延びる孔部と、前記孔部の前記第1面側の端部とは逆側の端部と連通し、前記フェルールの側面に連通する溝部と、前記第1面とは逆側の第2面に形成される凸型のレンズ部と、を有し、前記溝部は、前記光軸と交差する第1溝面と、前記第1溝面に対向し、前記孔部と連通する第2開口部が形成される第2溝面と、を有し、前記光ファイバは、前記逆側の端面が前記第1の面と当接した状態で、前記溝部及び前記孔部に導入された前記接着剤によって固定され、前記第2溝面の表面粗さは、前記光源から出射される光の波長の10倍以上であることを特徴とする。
【0011】
上記の光プローブによれば、光ファイバからフェルールに入射しレンズ部で反射した光は第2溝面で散乱される。したがって、レンズ部で反射した光が光ファイバのコア部を逆進し、光源に入射することを抑制できる。
【0012】
(2)前記第1溝面の表面粗さが、前記第2溝面の表面粗さよりも小さい態様とすることができる。
【0013】
この場合、レンズ部で反射された光が第1溝面において散乱することを防ぐことができるため、第1溝面で再度反射する光を増やすことができる。一方、第1溝面を透過した光が第2溝面に到達した場合には、第2溝面で光を散乱させることができるため、第2溝面に到達した光が局所的に出射されることを防ぐことができる。
【0014】
(3)前記フェルールの側面の表面粗さが、前記第1溝面の表面粗さよりも大きい態様とすることができる。
【0015】
この場合、フェルールの側面が平坦である場合と比較して、フェルール内を伝搬する光がフェルールの側面から出射しやすくすることができる。これにより、フェルール内を逆進した後に光ファイバに戻り光として入射する光を低減することができる。
【0016】
(4)前記孔部は、前記第1開口部から前記光軸に沿って延びる第1孔部と、前記第1孔部から連続して前記光軸に沿って延びると共に前記第1孔部から離間するにつれてその径が小さくなる縮径部と、前記縮径部から連続して前記光軸に沿って延び、その径が第1孔部よりも小さく、前記縮径部との接続側とは逆側で前記第2開口部に接続する第2孔部と、を含み、前記光ファイバは、前記第1孔部内及び前記縮径部に前記被覆部に覆われた領域の端部が配置されると共に、前記被覆部が除去された領域の前記クラッド部が前記第2孔部及び前記縮径部に配置され、前記一端側の端面が前記第1の面と当接した状態で、前記溝部、前記第1孔部、前記縮径部及び前記第2孔部に導入された前記接着剤によって固定される態様とすることができる。
【0017】
この場合、同一径の開口により形成される孔部の場合と比較して、縮径部で光の進行方向を変更させることができる。したがって、縮径部よりも光ファイバ側で、光ファイバに入射する光を減らすことができるため、光ファイバを逆進する戻り光を低減させることができる。また、上記の光ファイバでは、光ファイバのうち被覆部の除去されていない部分が第1孔部及び縮径部で固定されると共に、クラッド部が露出している部分が縮径部、第2孔部及び溝部において固定される。このように、被覆部により覆われた部分もフェルールに挿入して固定することにより、フェルールと光ファイバとの接着強度が向上される。
【0018】
(5)前記第1面の外周縁が丸められている態様とすることができる。
【0019】
この場合、フェルール内を伝搬した光が第1面の外周縁から外方に出射されやすくなり、戻り光として光ファイバに入射する光を低減することができる。
【0020】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明に係る光プローブの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0021】
図1に本発明の一形態に係る光プローブを含む光化学医療用装置であるPDT装置の概略構成を示す。図1に示すように、本実施形態に係るPDT装置1は、フェルール10と光ファイバ20とを含んで構成される光プローブ30と、光プローブ30に接続される光源である半導体レーザ装置40と、を含んで構成される。
【0022】
PDT装置1は、患者の体内の腫瘍等の病巣部に対してレーザ光を照射して治療を行うための装置である。具体的には、PDT(光線力学的治療法)とは、患者に腫瘍親和性のある光感受性物質を投与することで病巣部に光感受性物質を集めた後に、病巣部にレーザ光を照射して病巣部の腫瘍細胞を変性・壊死させる局所治療法である。PDT装置1は、半導体レーザ装置40から出射される光を、光プローブ30を介して病巣部に照射する装置である。このように、光プローブ30は患者の体内に挿入される。
【0023】
半導体レーザ装置40は、レーザ光を出射する光源である。半導体レーザ装置40には、コネクタ等を介して光ファイバ20が接続されている。半導体レーザ装置40から出射されるレーザ光は、光ファイバ20を介してフェルール10へ導波される。そして、レーザ光はフェルール10の端部から患者の病巣部へ向けて出射される。レーザ光はパルス光であってもよい。
【0024】
次に、図2を参照しながら、フェルール10周辺について説明する。光プローブ30では、光ファイバ20の一方の端部を覆うようにフェルール10固定されている。フェルール10と光ファイバ20とは、接着剤により固定される。
【0025】
光ファイバ20は、光軸Xに沿って延び、光を導波するコアとして(図示せず)と、コアを覆うクラッド部21と、クラッド部21を覆う被覆部22とを含んで構成される。コアおよびクラッド部21は、ガラスにより形成されたものを用いることが好適である。クラッド部21の直径は例えば0.4〜0.5mm程度である。被覆部22は、光ファイバ20の端部近傍においては除去されていて、クラッド部21が露出されている。光ファイバ20も生体内に導入されるため、被覆部22も生体適合性を有する樹脂材料により構成される。このような材料としては、例えば、ポリイミドやアクリル、ナイロンを使用することができる。
【0026】
フェルール10は、光ファイバ20の光軸Xに沿って延びる柱状形状の部材である。フェルール10は、生体適合性を有する材料により構成される。フェルール10は、光軸Xを中心として直径が1mm〜2mm程度であり、光軸X方向の長さが5〜10mm程度とされる。また、フェルール10は、半導体レーザ装置40から出射されるレーザ光を透過可能な材料で形成されることが好ましい。PDTに用いる場合、レーザ光の波長として例えば664nmが選択されるため、610nm〜700nmの波長帯域の光に対する吸収が少ない透明な材料によって構成されることが好ましい。さらに、フェルール10は、可視光に対しても透過率が高いことが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリフェニルサルフォン樹脂を用いることができる。ポリフェニルサルフォン樹脂は、厚さ2mmの場合に、波長664nmの光を90%以上透過することができる。その他、フェルール10には、ポリエーテルイミド等の樹脂や、ガラスを用いることもできる。
【0027】
また、フェルール10は、一方側の第1面11aから光ファイバ20を挿入するための孔部12が形成される。また、孔部12が形成される側とは逆側の第2面11bには、光ファイバ20を導波した光の出射方向を制御するための凸型のレンズ部13が形成される。フェルール10は、凸型のレンズ部13を含めて一体的に形成されることが好ましい。
【0028】
孔部12は、第1孔部16と、縮径部17と、第2孔部18と、を含む。第2孔部18は、縮径部17から連続して光軸Xに沿って延び、その径が第1孔部16よりも小さい。
【0029】
第1孔部16は、第1開口部12aから延びる。第1孔部16の径は、被覆部22を含む光ファイバ20の径と略同一とされる。また、第1孔部16は、第1面11a側の第1開口部12aに向けてその径が大きくなる拡径部16aを備えていてもよい。この場合、光ファイバ20を孔部12へ挿入しやすくなる。
【0030】
縮径部17は、前記第1孔部から連続して光軸Xに沿って延びる。縮径部17の径は、第1孔部16から離間するにつれてその径が小さくなる。なお、縮径部17は、傾斜面を有するテーパ状に構成しても良いし、階段状に構成しても良い。
【0031】
第2孔部18は、縮径部17から連続して光軸Xに沿って延びる。第2孔部18の径は、第1孔部16よりも小さく、光ファイバ20のクラッド部21の径と略同一とされる。
【0032】
第2孔部18の縮径部17の端部と逆側の端部側には、溝部19が形成されている。溝部19は、フェルール10の本体部11の側面から光軸Xに対して交差する方向(図2では上下方向)に切り込まれて形成された溝であり、第2孔部18のうち縮径部17と連続する側とは逆側の端部と連通する第2開口部12bを有する。この溝部19は、後述のように、接着剤を孔部12内に導入させる機能を有する。
【0033】
溝部19は、第1溝面19aと、第2溝面19bと、を有する。第1溝面19aは、光軸Xと直交する。第2溝面19bは、第1溝面19aに対向して設けられ、第2孔部18と連通する。第1溝面19aの表面粗さは、第2溝面19bの表面粗さよりも小さい。光ファイバ20からのレーザ光が、表面粗さが小さい領域である第1溝面19aに入射することで、レーザ光の散乱を抑制することができる。また、第1溝面19aと比較して第2溝面19bの表面粗さが大きい場合、第2溝面19bの接着剤に対する濡れ性が高められ、後述のように、第2開口部12bから孔部12への接着剤の移動が促進される。なお、本実施形態において、表面粗さとは、算術平均粗さをいう。
【0034】
また、フェルール10の本体部11の側面11cの表面粗さは、溝部19の第1溝面19a及び第2溝面19bよりも大きい。第2溝面19b及び本体部11の側面11cの表面粗さは、光ファイバ20内で導波するレーザ光の波長の10倍以上であることが好ましい。
【0035】
第2面11bには、レンズ部13が設けられる。レンズ部13の光軸は中央が光軸Xと略一致する。レンズ部13の外径は第2面11bの外径よりも小さい。このため、フェルール10の第2面11b側の端部は、曲面状の表面を有するレンズ部13の周囲に平坦面が設けられた形状となる。なお、レンズ部13の外径は、照射したいビーム径に応じて適宜変更される。
【0036】
本体部11の第1面11a及び第2面11bは、外周縁が本体部11の側面11cにかけて丸められている。また、側面11cと溝部19との境界部分も、外周縁が丸められている。これは、光プローブ30を患者の体内に挿入したり、引き抜く際に、患者を傷つけることを防ぐためである。
【0037】
光ファイバ20は、次に示す方法でフェルール10に取り付けられる。まず、光ファイバ20の端部の被覆部22を一部除去して、クラッド部21を露出する。次に、光ファイバ20をフェルール10の第1開口部12aから挿入し、光ファイバ20の端部を溝部19の第1溝面19aに当接させる。このとき、光ファイバ20は被覆部22を除去する領域の長さが調整され、被覆部22が第1孔部16および縮径部17に配置される。また、クラッド部21が第2孔部18、縮径部17及び溝部19に配置される。また、光ファイバ20の端面は、光軸Xに対して直交する面である。これにより、光ファイバ20の端面を第1溝面19aと密着させることができる。
【0038】
次に、溝部19から接着剤を導入する。接着剤は、生体適合性を有するものである。接着剤は、硬化前は流動性が高く、乾燥硬化型であるものを用いることができる。また、フェルール10をUVに対し高い透過率を有する樹脂や、ガラスで構成した場合には、UV硬化型の接着剤を用いることができる。この場合、硬化時間を短縮できる。また、硬化前の状態での可視光に対する透過率が、フェルール10を構成する材料よりも低いことが好ましく、特に透過率の差が10%以上であることが好ましい。このような構成とすることで、孔部12内を移動する接着剤を、フェルール10の外側から確認することができる。
【0039】
溝部19から導入された接着剤は、毛細管現象によって、溝部19に設けられた第2開口部12bから、第2孔部18、縮径部17、第1孔部16の壁面に沿って広がる。これにより、孔部12内の光ファイバ20と孔部12との間が接着剤で満たされる。このとき、接着剤に気泡等が含まれる場合には光ファイバ20の周辺に残留しないように溝部19から外部に排出することができる。さらに、孔部12の第1開口部12aに到達した接着剤は、第1開口部12a周辺で流動し、光ファイバ20及び第1面11aに沿ってフィレット状に滞留する。
【0040】
この状態で接着剤が硬化することにより、光ファイバ20の外周と孔部12の内面とが、硬化した接着剤によって固定される。特に、被覆部22の端部を縮径部17に配置することにより、被覆部22とクラッド部21の境界が多くの接着剤層41によって満たされる。これにより、光ファイバ20は、フェルール10に対してより強固に固定される。さらに、硬化後の状態での可視光に対する透過率が、フェルール10を構成する材料よりも低いことが好ましく、特に透過率の差が10%以上であることが好ましい。このような構成とすることで、孔部12内が接着剤で十分に満たされたことを、フェルール10の外側から確認することができる。なお、可視光領域の少なくとも一部の波長帯域において、透過率の差を10%以上有していればよく、その波長帯域は材料に応じて適宜選択できる。
【0041】
さらに、フェルール10の第1面11a側では、フィレット状の接着剤が硬化することで、フィレット部42が形成される。これにより、第1面11a側でも光ファイバ20がフェルール10に対して強固に固定される。なお、第1面11aの表面粗さが、第1孔部16の表面粗さよりも大きい場合、第1面11aの接着剤に対する濡れ性が第1孔部16よりも高くなるため、フィレット部42が好適に形成される。また、第1面11aの外周縁が丸められている場合、第1面11aに到達した未硬化の接着剤が外周縁へ広がることが抑制されることから、フィレット部42がより好適に作成される。
【0042】
ここで、光ファイバ20からフェルール10に入射した光の一部は、レンズ部13から外方に出射されずに、レンズ部13において反射する場合がある。この場合、図3に示すように、レンズ部13での反射光L1が光ファイバ20のクラッド部21内に入射してしまうと、戻り光L2として入射してクラッド部21内を逆進する可能性がある。この場合、反射光が半導体レーザ装置40に到達して、半導体レーザ装置40を破損させてしまう可能性がある。
【0043】
これに対して、本実施形態では、表面粗さが光ファイバ20中を伝搬した光の波長の10倍以上である第2溝面19bが設けられる。これにより、図4に示すように、光ファイバ20からフェルール10に入射し、レンズ部13で反射した反射光L1のうち、第2溝面19bに到達した光を、第2溝面19bで散乱させることができる。このように、第2溝面19bで光が散乱されると、光の進行方向が多様になるため、光ファイバ20のクラッド部21を逆進する光を低減することができる。そのため、戻り光を抑制することができる。特に上記作用を満たすには、第2溝面19bの表面粗さが、反射光L1(半導体レーザ装置40からの光)の波長の10倍以上であることが好ましい。これによって反射光L1を好適に散乱させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、第1溝面19aの表面粗さを第2溝面19bの表面粗さよりも小さくしている。これにより、光ファイバ20のクラッド部21の端面21aから出射した光を、第1溝面19aにおいてフェルール10に対して好適に導入することができる。また、レンズ部13側で反射光L1が第1溝面19aにおいて散乱することを防ぐことができるため、第1溝面19aで再度反射する光を増やすことができる。一方、第1溝面19aを透過した光が第2溝面19bに到達した場合には、第2溝面19bの表面粗さが第1溝面19aの表面粗さよりも大きいために、光を散乱させることができる。したがって、第2溝面19bに到達した光が戻り光として光ファイバ20のコアを逆進することを防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態では、フェルール10の側面11cの表面粗さが第2溝面19bの表面粗さよりも大きい。これにより、図5に示すように、レンズ部13で反射し、第1溝面19aを透過し、第2溝面19bで散乱された光を、フェルール10の側面11cでさらに散乱して出射できる。したがって、戻り光L2を低減することができるため、光利用効率を向上させつつ、光プローブ30の安全性をさらに高めることができる。
【0046】
また、本実施形態では、光プローブ30における後方の第1面11aの外周縁が丸められている。これにより、図6に示すように、レンズ部13で反射し、第1溝面19aを透過し、第2溝面19bで散乱された光が、フェルール10内を側面11cにて反射されながら逆進した場合であっても、第1面11aの外周縁から外方に出射されやすくなる。したがって、フェルール10内を逆進した光が戻り光として光ファイバ20に入射する光を低減することができる。
【0047】
また、本実施形態では、孔部12の内部に第1孔部16、縮径部17及び第2孔部18が設けられている場合、同一径の開口により形成される孔部の場合と比較して、特に縮径部17が第1孔部16及び第2孔部18とは異なる角度の面となる。このため、図7に示すように、縮径部17において光の進行方向を変更させることができる。したがって、縮径部17よりも第1面11a側で光ファイバ20に入射する光を減らすことができ、戻り光L2を低減させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る光プローブ30ついて説明したが、本発明に係る光プローブ30は上記実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0049】
例えば、上記実施形態では、孔部12が、第1孔部16、縮径部17及び第2孔部18から構成されている場合について説明したが、孔部12の内径等は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…PDT装置、10…フェルール、11…本体部、12…孔部、13…レンズ部、16…第1孔部、17…縮径部、18…第2孔部、19…溝部、20…光ファイバ、30…光プローブ、40…半導体レーザ装置、41…接着剤層、42…フィレット部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7