(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350075
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】樹脂ボトルの搬送処理システム
(51)【国際特許分類】
B67C 3/24 20060101AFI20180625BHJP
B65G 47/86 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
B67C3/24
B65G47/86 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-154929(P2014-154929)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30643(P2016-30643A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100086852
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 守
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】青塚 久和
(72)【発明者】
【氏名】桝本 悟志
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−199309(JP,A)
【文献】
特開2002−302243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/24
B65G 47/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部の下方に、カブラ部と円筒部とフランジが順に形成され、前記カブラ部の上面が前記ねじ部に向かって窄まる傾斜面である首部を有し、前記円筒部の軸方向長さが相対的に短い第1樹脂ボトルと軸方向長さが相対的に長い第2樹脂ボトルを兼用する樹脂ボトルの搬送処理システムであって、
前記樹脂ボトルのフランジの下面側を支持して回転搬送する間に、前記樹脂ボトル内に充填を行うフィラと、
前記フィラから前記樹脂ボトルを受け取り、首部を把持して吊り下げた状態で回転搬送する中間ホイールと、
前記中間ホイールから受け取った樹脂ボトルを、フランジの下面側を支持して回転搬送する間にキャッピングを行うキャッパとを備え、
前記中間ホイールは、回転軸に固定された回転体と、前記回転体に対して上昇位置と下降位置とに昇降可能に配置されるとともに、前記回転体の外周縁を取り囲む環状の昇降部材と、前記昇降部材の円周方向に複数配置されて前記樹脂ボトルの円周部を把持するグリッパと、前記昇降部材を持ち上げる昇降機構と、前記回転体の径方向に進退可能に設けられたスペーサとを備え、
前記グリッパの上方に、前記第1樹脂ボトルおよび第2樹脂ボトルのカブラ部の上面を覆う傾斜面を有するガイドを設け、
前記第1樹脂ボトルを搬送するときは、前記昇降部材を下降位置に位置させて前記グリッパの上面を前記第1樹脂ボトルのカブラ部の下面に当接させるとともに、前記ガイドの傾斜面によって前記第1樹脂ボトルのカブラ部の上面を規制しつつ搬送し、
前記第2樹脂ボトルを搬送するときは、前記昇降機構により前記昇降部材を持ち上げた状態で前記スペーサを前進させて前記昇降部材の下側に挿入し、その後前記昇降機構により前記昇降部材を下降させて前記昇降部材を前記スペーサに当接させることにより上昇位置に位置させて前記グリッパの上面を前記第2樹脂ボトルのカブラ部の下面に当接させるとともに、前記ガイドの傾斜面によって前記第2樹脂ボトルのカブラ部の上面を規制しつつ搬送することを特徴とする樹脂ボトルの搬送処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転式のフィラや回転式のキャッパを備え、樹脂ボトルを回転搬送しつつ所定の処理を行う搬送処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂ボトルを回転搬送しつつ所定の処理を行う搬送処理システムにおいては、樹脂ボトルのフランジの上面側と下面側を交互に把持しながら回転搬送している。フィラとキャッパの回転ホイールは、樹脂ボトルのフランジの下面側を把持して樹脂ボトルを回転搬送しつつ充填やキャッピングを行う。フィラとキャッパの間において樹脂ボトルの受け渡しを行う中間ホイールは、フランジの上面側を把持して樹脂ボトルを回転搬送する。中間ホイールによる樹脂ボトルの搬送時に樹脂ボトルの姿勢が乱れると樹脂ボトル内の充填液がこぼれるので、その姿勢を直立状態に保持することが必要である。
【0003】
このような中間ホイールとして特許文献1、2に開示された構成が従来知られている。特許文献1に開示された構成では、樹脂ボトルのねじ部に中間ホイールの内部側から当接する支持プレートを設けて樹脂ボトルの姿勢を安定させている。特許文献2に開示された構成では、樹脂ボトルのフランジの上方に形成されたカブラ部の外周縁を把持して樹脂ボトルの姿勢を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−281184号公報
【特許文献2】特開2006−199309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂ボトルの首部の形状は一律ではなく、口径の大きさ、カブラ部の形状、カブラ部とフランジの間の距離は様々である。このように大きさや形状が異なる首部を有する樹脂ボトルを1つの搬送処理システムにおいて扱う場合、特許文献1の構成では、首部の大きさや形状に応じて支持プレートを交換しなければならない。また特許文献2の構成では、カブラ部の形状が異なると首部を適切に把持できない可能性があり、樹脂ボトルの姿勢を保持したまま搬送するには強く把持しなければならず、カブラ部の表面を傷つけるおそれがある。
【0006】
本発明は、常に姿勢を安定に保った状態で樹脂ボトルを搬送することができ、また、首部の大きさや形状が異なる樹脂ボトルに対して兼用可能な搬送処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送処理システムは、ねじ部の下方に、カブラ部と円筒部とフランジが順に形成され、カブラ部の上面がねじ部に向かって窄まる傾斜面である首部を有
し、円筒部の軸方向長さが相対的に短い第1樹脂ボトルと軸方向長さが相対的に長い第2樹脂ボトルを兼用する樹脂ボトルの搬送処理システムであって、樹脂ボトルのフランジの下面側を支持して回転搬送する間に、樹脂ボトル内に充填を行うフィラと、フィラから樹脂ボトルを受け取り、首部を把持して吊り下げた状態で回転搬送する中間ホイールと、中間ホイールから受け取った樹脂ボトルを、フランジの下面側を支持して回転搬送する間にキャッピングを行うキャッパとを備え、中間ホイールは、
回転軸に固定された回転体と、回転体に対して上昇位置と下降位置とに昇降可能に配置されるとともに、回転体の外周縁を取り囲む環状の昇降部材と、昇降部材の円周方向に複数配置されて樹脂ボトルの円周部を把持するグリッパと、昇降部材を持ち上げる昇降機構と、回転体の径方向に進退可能に設けられたスペーサとを備え、グリッパの上方に、第1樹脂ボトルおよび第2樹脂ボトルのカブラ部の上面を覆う傾斜面を有するガイドを設け、第1樹脂ボトルを搬送するときは、昇降部材を下降位置に位置させてグリッパの上面を第1樹脂ボトルのカブラ部の下面に当接させるとともに、ガイドの傾斜面によって第1樹脂ボトルのカブラ部の上面を規制しつつ搬送し、第2樹脂ボトルを搬送するときは、昇降機構により昇降部材を持ち上げた状態でスペーサを前進させて昇降部材の下側に挿入し、その後昇降機構により昇降部材を下降させて昇降部材をスペーサに当接させることにより上昇位置に位置させてグリッパの上面を第2樹脂ボトルのカブラ部の下面に当接させるとともに、ガイドの傾斜面によって第2樹脂ボトルのカブラ部の上面を規制しつつ搬送することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常に姿勢を安定に保った状態で樹脂ボトルを搬送することができ、また、首部の大きさや形状が異なる樹脂ボトルに対して兼用可能な搬送処理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態である樹脂ボトルの搬送処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図3】グリッパが樹脂ボトルの首部を把持した状態を示す側面図である。
【
図4】グリッパを開閉駆動する機構を示し、昇降部材が下降位置にある状態を示す断面図である。
【
図5】グリッパを開閉駆動する機構を示し、昇降部材が上昇位置にある状態を示す断面図である。
【
図6】樹脂ボトルの首部の形状とグリッパの構造を示す側面図である。
【
図7】グリッパとガイドを分解して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示された実施形態を参照して本発明を説明する。
図1は本発明の一実施形態である樹脂ボトルの搬送処理システムを示す平面図であり、樹脂ボトルの搬送方向が矢印により示されている。樹脂ボトルは供給コンベヤ11により連続的に搬送され、供給ホイール12を介してフィラ13に供給される。フィラ13において、樹脂ボトルは回転搬送される間に液体を充填され、中間ホイール14に受け渡される。樹脂ボトルは中間ホイール14によって回転搬送され、キャッパ15に受け渡される。キャッパ15では、樹脂ボトルを回転搬送する間にキャッピングが行われ、樹脂ボトルは排出ホイール16により排出コンベヤ17に受け渡されて、次の工程に搬送される。
【0012】
図2〜
図5を参照して、中間ホイール14に設けられた把持手段20を説明する。把持手段20は中間ホイール14の円周方向に沿って、等間隔に複数列(例えば36個)設けられる。中間ホイール14は、筒状の支持本体21により軸心周りに回転自在に支持された回転軸22によって回転駆動される。回転軸22の上部には回転体18が固定されている。把持手段20は一対のグリッパ23、24を有し、これらのグリッパ23、24は回転体18に嵌合された昇降部材25の先端に設けられる。昇降部材25は回転体18の外周縁を取り囲む環状の板部材であり、回転体18に対して相対的に昇降可能である。昇降部材25の下面にはストッパ31と当接部32が形成される。ストッパ31は回転体18の上面およびスペーサ51に当接可能であり、当接部32は回転体18に形成された穴19に挿通して回転体18の下面から突出する。
【0013】
当接部32の下端面は回転体18の下側に設けられた環状板部材33に当接可能である。環状板部材33は回転体18に同心的であり、シリンダ装置40のピストン41の上面に固定される。シリンダ装置40は支持本体21に固定された水平板34に取付けられる。シリンダ装置40の本体42は、水平板34に形成された取付け穴35に嵌合され、本体42の中はピストン41の基部に設けられた区画部材43によって、圧力室44とばね室45に区画される。区画部材43はばね室45に設けられたばね46により圧力室44側に付勢され、圧力室44には、図示しない圧力源から供給される高圧空気が導かれる。すなわち昇降部材25は、圧力室44内の圧力に応じて上昇するピストン41に押されて上昇する。
【0014】
回転体18の上面には、昇降部材25を上昇位置において固定するためのスペーサ51が設けられる。スペーサ51は回転体18の径方向に変位可能であり、回転体18の上面の中心部分に設けられたシリンダ装置52により進退する。シリンダ装置52の本体53内にはピストン54が回転体18の上面に沿って変位自在に設けられ、ピストン54の先端にはスペーサ51が連結される。本体53内はピストン54の基部に設けられた区画部材55によって圧力室56とばね室57に区画される。区画部材55はばね室57に設けられたばね58により圧力室56側に付勢され、圧力室56には、図示しない圧力源から供給される高圧空気が導かれる。
【0015】
シリンダ装置40は通常休止しており、ピストン41は下降位置にある。昇降部材25は、後述するように、搬送される樹脂ボトルの円筒部の長さに応じて上昇位置または下降位置に定められる。昇降部材25が下降位置に定められるとき、スペーサ51は後退して回転体18の中心側に位置する。このとき昇降部材25のストッパ31は回転体18の上面に当接している(
図4参照)。
【0016】
これに対して昇降部材25を上昇させる場合、シリンダ装置40のピストン41が上昇し、環状板部材33を介して当接部32すなわち昇降部材25が持ち上げられる。そしてシリンダ装置52のピストン54が前進し、スペーサ51は昇降部材25の下側に挿入される。このとき、スペーサ51の先端に形成された突起51aはストッパ31よりも外側に位置する。その後シリンダ装置40のピストン41が下降し、環状板部材33は当接部32から離間する。これにより昇降部材25はストッパ31がスペーサ51の突起51aに係合した状態で上昇位置に定められ、スペーサ51の厚み分だけ昇降部材25および把持手段20は下降位置から上昇した位置に位置決めされる(
図5参照)。なお、ストッパ31と当接部32は円周方向にオフセットして設けられているので、スペーサ51は前進時に当接部32と衝突しない。
【0017】
昇降部材25の先端には支持軸26、27が貫通して設けられ、グリッパ23、24は支持軸26、27の上端に固定される。支持軸26、27は軸心周りに回動自在である。支持軸26、27の昇降部材25より下方の部分にはギヤ28、29がそれぞれ固定され、これらのギヤ28、29は噛合している。支持軸26は、次に述べるようにカム63とカムフォロア62の作用によって軸心周りに回転し、ギヤ28、29が噛合していることにより、グリッパ23、24が連動して開閉する。
【0018】
すなわち、一方の支持軸26の下端に固定されたレバー61の先端にはカムフォロア62が設けられ、カムフォロア62は、水平板34の外周縁に形成されたカム63に係合する。カム63は樹脂ボトルを受け取る受け取り区間と、樹脂ボトルを受け渡す受け渡し区間に配置されている。支持軸26のギヤ28より下側には連結部材64の一端が固定され、連結部材64の他端に設けられたピン65と昇降部材25の下面に固定されたピン66とはバネ67により連結される。このバネ67により連結部材64の他端は回転体18の中心側に引っ張られ、これによりグリッパ23、24は常時閉鎖方向に付勢されている。カムフォロア62は受け取り区間と受け渡し区間においてカム63と係合する。フィラ13から樹脂ボトルを受け取る受け取り区間においては、樹脂ボトルを受け取る位置の少し手前からグリッパ23、24を開放し、キャッパ15へ樹脂ボトルを受け渡す受け渡し区間においては、樹脂ボトルを受け渡してからグリッパ23、24を開放するように構成されている(
図2参照)。
【0019】
樹脂ボトルの回転搬送は、フィラ13とキャッパ15ではフランジFの下面側を支持して行われるが、後述するように、中間ホイール14では首部の円筒部Cを把持して吊り下げた状態で行われる(
図3参照)。すなわち中間ホイール14による回転搬送の間、グリッパ23、24は樹脂ボトルの円筒部Cを把持して閉鎖状態を維持しており、
図2および
図3に示すように、中間ホイール14からキャッパ15に樹脂ボトルを受け渡すとき、キャッパ15のグリッパ69は樹脂ボトルのフランジFの下面側を把持して樹脂ボトルを受け取る。受け渡しが完了すると、中間ホイール14のグリッパ23、24は開放する。
【0020】
図6は本実施形態の搬送処理システムによって搬送される樹脂ボトルの首部の形状と把持手段20のグリッパ23、24の先端部分を示している。符号(a)は円筒部Cの軸方向長さが相対的に短い第1樹脂ボトルP1を示し、符号(b)は円筒部Cの軸方向長さが相対的に長い第2樹脂ボトルP2を示す。これらの樹脂ボトルP1、P2の首部の基本構成は共通であり、ねじ部Sの下方に、カブラ部Kと円筒部CとフランジFが順に形成され、カブラ部Kの上面K1はねじ部Sに向かって窄まる傾斜面である。
【0021】
グリッパ23、24の上方にはガイド70が設けられる。
図7に示すように、ガイド70は例えばボルト71等によってグリッパ23、24の上面に固定されており、グリッパ23、24と一体的に開閉する。ガイド70は、その先端に、下方を向く傾斜面72を有し、傾斜面72は樹脂ボトルのカブラ部Kの上面を覆う。第1樹脂ボトルP1と第2樹脂ボトルP2では円筒部Cの軸方向長さが異なり、フランジFからのカブラ部Kの高さ位置が異なるため、グリッパ23、24の上面がカブラ部Kの下面に当接するように設定するにはグリッパ23、24の高さ位置を樹脂ボトルごとに調整する必要がある。すなわち、スペーサ51を第1樹脂ボトルP1と第2樹脂ボトルP2の円筒部Cの軸方向長さの差に相当する厚みに設定し、第1樹脂ボトルP1を搬送するとき、昇降部材25は下降位置に定められ(
図4参照)、第2樹脂ボトルP2を搬送するとき、昇降部材25はスペーサ51により上昇位置に定められる(
図5参照)。
【0022】
以上のように本実施形態では、把持手段20の上方に、樹脂ボトルのカブラ部Kの上面K1を覆う傾斜面72を有するガイド70を設け、ガイド70を把持手段20とともに開閉可能としたものである。したがって、樹脂ボトルを中間ホイール14により回転搬送する間に、樹脂ボトルの姿勢が乱れようとしてもがガイド70の傾斜面72によってカブラ部Kの上面を規制するので、この搬送中に樹脂ボトルの姿勢が不安定になることはない。また、昇降部材25を介して把持手段20を昇降可能としたので、円筒部Cの軸方向長さが異なる第1および第2樹脂ボトルP1、P2を兼用することができる。
【0023】
なお上記実施形態では、ガイド70はグリッパ23、24と一体的に開閉可能であったが、ガイド70は開閉する必要はなく、固定されたものであっても上記実施形態と同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0024】
13 フィラ
14 中間ホイール
15 キャッパ
20 把持手段
23、24 グリッパ
70 ガイド
72 傾斜面
F フランジ
K カブラ部
P1 第1の樹脂ボトル
P2 第2の樹脂ボトル
S ねじ部