特許第6350086号(P6350086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350086
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】光学的検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20180625BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G01N21/64 Z
   G01N30/74 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-159555(P2014-159555)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-38208(P2016-38208A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−052880(JP,A)
【文献】 特表2013−524169(JP,A)
【文献】 特開2007−046947(JP,A)
【文献】 特開2006−162343(JP,A)
【文献】 特開2010−043983(JP,A)
【文献】 米国特許第04100412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
G01N 15/00−15/14
G01J 3/00− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を流通させるフローセルと、
互いに異なる波長の光を発する複数の発光ダイオードを備えた光源装置と、
前記各発光ダイオードから発せられる光を同一光路上の光として前記フローセルに導く光学系と、
前記フローセルからの光を検出するための光検出器と、
前記各発光ダイオードを互いに異なるタイミングで連続的に点灯させるように構成された光源切替手段を有する制御部と、
前記光検出器で得られた検出信号に基づいて所定の演算を行なう演算部を、前記各発光ダイオードから発せられる光の波長ごとに備えているとともに、前記発光ダイオードから発せられた光の波長に対応した前記演算部にその光が前記フローセルに照射されたときの前記光検出器の検出信号が取り込まれるように、前記光源切替手段による前記発光ダイオードの切替えのタイミングと同期して前記光検出器の検出信号を取り込む演算部を切り替える切替スイッチ回路を備えている演算処理部と、を備えた光学的検出器。
【請求項2】
前記光源装置は、前記複数の発光ダイオードから発せられる光が測定波長範囲内において網羅的に分布するように構成されたものであり、
前記光源切替手段は、前記光源装置から発せられる光の波長が連続的に切り替わるように、前記各発光ダイオードを互いに異なるタイミングで切り替えて点灯させるように構成されたものである、請求項1に記載の光学的検出器。
【請求項3】
前記光学系は、前記各発光ダイオードから発せられる光に基づく参照光を取り出すように構成され、
前記参照光を検出するための参照光検出器をさらに備え、
前記演算処理部は、前記参照光検出器で得られた参照信号に基づいて所定の演算を行なう演算部を、前記各発光ダイオードから発せられる光の波長ごとに備え、
前記切替えスイッチ回路は、前記発光ダイオードから発せられた光の波長に対応した前記演算部にその光が前記フローセルに照射されたときの前記光検出器の検出信号及び前記参照光検出器の検出信号が取り込まれるように、前記光源切替手段による前記発光ダイオードの切替えのタイミングと同期して前記光検出器の検出信号及び前記参照光検出器の検出信号を取り込む演算部を切り替えるように構成されている、請求項1又は2に記載の光学的検出器。
【請求項4】
前記光検出器は前記フローセルを透過した光を受光する位置に設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的検出器。
【請求項5】
前記光検出器は、前記フローセルに照射される光の光軸上の位置から外れた位置に設けられ、前記発光ダイオードから照射される励起光によって励起された前記フローセル内の試料から発せられる蛍光を検出するものであり、
前記フローセルと前記光検出器との間に、励起光成分を除去する蛍光フィルタが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的検出器。
【請求項6】
前記発光ダイオードの発光側に前記発光ダイオードから発せられる光より狭い波長範囲の透過域をもつバンドパスフィルタが配置されている請求項1からのいずれか一項に記載の光学的検出器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばHPLC(高速液体クロマトグラフ)において分離した試料成分を検出するための検出器として用いられる光学的検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ用検出器として用いられる光学的検出器として分光光度計が挙げられる。分光光度計には、前分光方式と呼ばれるものと後分光方式と呼ばれるものがある。
【0003】
前分光方式の分光光度計は、回転可能な分光器を光源とフローセルとの間(フローセルの前段側)に配置し、分光器の回転角を調節することによってフローセルに特定の波長の光を照射し、フローセルを透過した光の強度、又はフローセル内の試料から発せられる蛍光の強度を光検出器によって検出することで、フローセルを流れる試料中の特定成分濃度を定量するように構成されている(例えば、特許文献1の図6参照。)。
【0004】
他方、後分光方式の分光光度計は、フローセルの後段側に分光器を配置し、フローセルからの光を分光器で波長成分ごとに分光し、それらの波長成分をフォトダイオードアレイで同時に検出する(例えば、特許文献1の図10参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−220472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、液体クロマトグラフによる分析の高速化が進み、検出器の検出速度(分解能)の向上が求められている。後分光方式の分光光度計は、フローセルからの多波長成分の光の強度をフォトダイオードアレイによって同時に検出することができるという利点がある反面、フローセルに多波長成分を含む強いエネルギーの光を照射するため、試料によってはその成分の変質が起こることがある。
【0007】
前分光方式の分光光度計では、分光器によって分光された光のうち特定の波長成分の光のみをフローセルに照射するため、試料に照射される光エネルギーによる試料の変質の問題は生じにくい。しかし、複数の波長についての光学的測定を同時に行なうためには、分光器を高速で駆動してフローセルに照射される光の波長成分の切替えを行なう必要があり、測定波長の切替速度が分光器の機械的な駆動速度に依存するため、多波長同時測定の分解能を向上させるには限界がある。
【0008】
そこで、本発明は、フローセルを流れる試料の変質を防止しつつ複数の波長についての光学的測定を同時にかつ高分解能で行なうことができる光学的検出器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる吸光度検出器は、試料を流通させるフローセルと、互いに異なる波長の光を発する複数の発光ダイオードを備えた光源装置と、各発光ダイオードから発せられる光を同一光路上の光としてフローセルに導く光学系と、フローセルからの光を検出するための光検出器と、各発光ダイオードを互いに異なるタイミングで連続的に点灯させるように構成された光源切替手段を有する制御部と、光検出器で得られた検出信号に基づいて所定の演算を行なう演算部を、各発光ダイオードから発せられる光の波長ごとに有するとともに、発光ダイオードから発せられた光の波長に対応した演算部にその光がフローセルに照射されたときの光検出器の検出信号が取り込まれるように、光源切替手段による発光ダイオードの切替えのタイミングと同期して光検出器の検出信号を取り込む演算部を切り替えるように構成された切替スイッチ回路を有する演算処理部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、互いに異なる波長の光を発する複数の発光ダイオードを有し、制御部は、それらの発光ダイオードを互いに異なるタイミングで連続的に点灯させるように構成されているので、フローセルに特定の波長成分の光のみを照射することができ、フローセルを流れる試料の変質を防止することができる。発光ダイオードは、点灯状態と消灯状態の瞬時の切替えが可能であるため、フローセルに照射する光の波長の切替えを、分光器の機械的な駆動による波長の切替えよりも高速で行なうことができる。さらに、演算処理部は、各発光ダイオードから発せられる光の波長ごとに演算部を有するとともに、発光ダイオードから発せられた光の波長に対応した演算部にその光がフローセルに照射されたときの光検出器の検出信号が取り込まれるように、光源切替手段による発光ダイオードの切替えのタイミングと同期して光検出器の検出信号を取り込む演算部を切り替えるように構成された切替スイッチ回路を有するので、複数波長についての光学的測定を同時にかつ高分解能で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】光学的検出器の一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の演算制御部の一例を示すブロック図である。
図3】4波長について同時に試料の光学的測定を行なう場合の各光源部の点灯又は消灯のタイミングと、演算手段による信号処理の切替えタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図4】光学的検出器の他の実施例を示す概略構成図である。
図5】同実施例の演算制御部の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、光検出器は、フローセルを透過した光を受光する位置に設けることができる。そうすれば、フローセル内を流れる試料の吸光度を測定することができる。
【0013】
また、光検出器は、フローセルに照射される光の光軸上の位置から外れた位置に設けられ、発光ダイオードから照射される励起光によって励起されたフローセル内の試料から発せられる蛍光を検出するものであってもよい。その場合、フローセルと光検出器との間に、励起光成分を除去する蛍光フィルタが設けられる。
【0014】
発光ダイオードなどの発光ダイオードには製造バラツキが存在し、発光ダイオードから発せられる光に測定波長以外の波長の光を含まれていることもあり得る。そこで、発光ダイオードの発光側に発光ダイオードから発せられる光よりも狭い波長範囲の透過域をもつバンドパスフィルタが配置されていることが好ましい。そうすれば、フローセルに不要な波長範囲の光が照射されることが抑制され、試料の変質の防止や測定精度の向上を図ることができる。
【0015】
光学的検出器の1つである吸光度検出器の一実施例について、図1を用いて説明する。
【0016】
この吸光度検出器は、複数の波長成分の光をそれぞれ異なるタイミングで発することができる光源装置2を備えている。光源装置2から発せられた光は試料が流れるフローセル22に照射され、フローセル12を透過した光をフォトダイオード22(光検出器)で受光するようになっている。
【0017】
光源装置2は、互いに異なる波長の光を発する4つの光源部4,6,8及び10を備えている。光源部4は250nm、光源部6は260nm、光源部8は270nm、光源部10は280nmの波長の光をそれぞれ発する。
【0018】
光源部4には波長250nmの光を発する発光ダイオード4aが設けられている。発光ダイオード4aの発光側に250±4nmの波長範囲に透過特性を有するバンドパスフィルタ4bが設けられ、さらにその前方にバンドパスフィルタ4bを透過した光を平行光にするコリメーションレンズ4cが設けられている。発光ダイオード4aから発せられる光は大部分が250nm付近の波長の光であるため、バンドパスフィルタ4bは必ずしも設けられている必要はないが、この実施例では、発光ダイオードの生産バラツキを考慮して設けられている。これは、光源部6,8及び10のバンドパスフィルタ6b,8b及び10bについても同様である。
【0019】
光源部6には波長260nmの光を発する発光ダイオード6aが設けられている。発光ダイオード6aの発光側に260±4nmの波長範囲に透過特性を有するバンドパスフィルタ6bが設けられ、さらにその前方にバンドパスフィルタ6bを透過した光を平行光にするコリメーションレンズ6cが設けられている。
【0020】
光源部8には波長270nmの光を発する発光ダイオード8aが設けられている。発光ダイオード8aの発光側に270±4nmの波長範囲に透過特性を有するバンドパスフィルタ8bが設けられ、さらにその前方にバンドパスフィルタ8bを透過した光を平行光にするコリメーションレンズ8cが設けられている。
【0021】
光源部10には波長280nmの光を発する発光ダイオード10aが設けられている。発光ダイオード10aの発光側に280±4nmの波長範囲に透過特性を有するバンドパスフィルタ10bが設けられ、さらにその前方にバンドパスフィルタ10bを透過した光を平行光にするコリメーションレンズ10cが設けられている。
【0022】
光源部4は、フローセル12に向かって発光ダイオード4aからの光を射出するように配置され、光源部6,8及び10は、光源部4からフローセル12への光の光軸に対して垂直に発光ダイオード6a,8a及び10aからの光を射出するように配置されている。ここで、光源部4,6,8又は10を点灯させるとは、それぞれの発光ダイオード4a,6a,8a又は10aを点灯させることを意味する。
【0023】
光源部4からフローセル12への光の光軸上に、各光源部4,6,8及び10からの光をフローセル12に導く光学系をなすハーフミラー14,16,18が配置されている。ハーフミラー14,16及び18は光源部4からの光の光軸に対して斜めに配置されている。ハーフミラー14は光源部6からの光の光軸を光源部4からの光の光軸と合一化させてフローセル12に導くものである。ハーフミラー16は光源部8からの光の光軸を光源部4及び光源部6からの光の光軸と合一化させてフローセル12に導くものである。ハーフミラー18は光源部10からの光の光軸を光源部4、光源部6及び光源部8からの光の光軸と合一化させてフローセル12に導くものである。
【0024】
フローセル12を透過した光を検出するためのフォトダイオード22がフローセル12を挟んで光源部4とは反対側に設けられている。ハーフミラー18とフローセル12との間に、光源部4,6,8又は10からフローセル12に照射される光の一部を参照光として取り出すビームスプリッタ20が設けられている。ビームスプリッタ20により取り出された光を受光する位置に、参照光強度を検出するためのフォトダイオード25(参照光検出器)が設けられている。
【0025】
フォトダイオード22の検出信号は、増幅器23及びアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)24を経て、測定信号として演算制御部28に取り込まれる。フォトダイオード25の検出信号は、増幅器26及びA/D変換器27を経て、参照信号として演算制御部28に取り込まれる。
【0026】
演算制御部28は、光源装置2の各光源部4,6,8及び10の点灯と消灯の切替えを制御する制御部としての光源切替手段29、及びフォトダイオード22と25からの信号に基づいてフローセル12を流れる試料の吸光度を求める演算処理部としての演算手段30を備えている。
【0027】
光源切替手段29はフローセル12に照射される光の波長が連続的に切り替えられるように、各発光ダイオード4a,6a,8a及び10aの点灯状態と消灯状態の切替えを行なうように構成されている。各発光ダイオード4a,6a,8a及び10aはそれぞれに対応して設けられたLEDドライバ32,34,36及び38から必要な電流が与えられることで点灯する。各LEDドライバ32,34,36及び38は演算制御部28から与えられる点灯又は消灯の信号に基づいて各発光ダイオード4a,6a,8a及び10aに必要な電流を供給し、又は電流の供給を停止する。
【0028】
演算制御部28の構成の一例について図2を用いて説明する。
【0029】
演算制御部28は、光源切替手段29(図1参照。)をなす時分割制御回路40、フローセル12に照射される光の波長ごとの吸光度を算出するために各波長に対応して設けられた演算部44a‐44d、参照信号を各演算部44a‐44dに振り分ける切替スイッチ回路42a、測定信号を各演算部44a‐44dに振り分ける切替スイッチ回路42b、及び各演算部44a‐44dで求められた測定値を出力する通信部52を備えている。参照信号は、フォトダイオード25で得られた検出信号を増幅器26で増幅し、A/D変換器27でデジタル処理した信号である。測定信号は、フォトダイオード22で得られた検出信号を増幅器23で増幅し、A/D変換器24でデジタル処理した信号である。
【0030】
時分割制御回路40は、点灯する発光ダイオードが連続的に切り替わるように、各発光ダイオード4a,6a,8a及び10aを駆動するLEDドライバ32,34,36及び38に対して点灯信号又は消灯信号を時分割で与えるように構成された回路である。時分割制御回路40は、点灯させる光源を切り替えるタイミングで切替信号を切替スイッチ回路42a及び42bに出力する。
【0031】
切替スイッチ回路42a及び42bは、時分割制御回路40からの切替信号に基づき、測定信号及び参照信号に基づいて吸光度を求める演算処理を実行させる演算部を演算部44a‐44dの間で、フローセル12に照射される光の波長の切替えに同期して切り替える回路である。
【0032】
演算部44a‐44dはそれぞれ光源部4,6,8及び10から発せられる光の波長に対応して設けられている。演算部44aは波長250nmの光に対応し、演算部44bは波長260nmの光に対応し、演算部44cは波長270nmの光に対応し、演算部44dは波長280nmの光に対応する。切替スイッチ42a及び42bは、光源部4(発光ダイオード4a)の点灯時に得られた参照信号及び測定信号が演算部44aに取り込まれ、光源部6(発光ダイオード6a)の点灯時に得られた参照信号及び測定信号が演算部44bに取り込まれ、光源部8(発光ダイオード8a)の点灯時に得られた参照信号及び測定信号が演算部44cに取り込まれ、光源部10(発光ダイオード10a)の点灯時に得られた参照信号及び測定信号が演算部44dに取り込まれるように、参照信号及び測定信号を各演算部44a‐44dに振り分ける。
【0033】
演算部44a‐44dのそれぞれは、参照信号と測定信号のそれぞれの高周波成分を除去するためのデジタルフィルタ46、デジタルフィルタ46を経た参照信号I0でデジタルフィルタ46を経た測定信号Iを除算した値(I/I0)を求める除算部48、吸光度として−log10(I/I0)を求める吸光度算出部50を備えており、吸光度算出部50により求められた−log10(I/I0)が測定値として通信部52を介して外部のモニタ等に出力される。演算部44a‐44dは演算処理手段30(図1参照。)をなしている。
【0034】
演算制御装置28の時分割制御回路40、切替スイッチ回路42a,42b、演算部44a‐44dはソフトウエアにより実現することができる。また、時分割制御回路40、切替スイッチ回路42a,42b及び通信部52をハードウエア、演算部44a‐44dをソフトウエアで実現してもよい。
【0035】
図3に各光源部4,6,8及び10の点灯又は消灯のタイミングと、参照信号及び測定信号を取り込む演算部の切替えタイミングの一例を示す。図3において、各波長の入力信号がオンのときはその波長に対応した演算部に参照信号及び測定信号が取り込まれ、オフのときはその波長に対応した演算部には参照信号及び測定信号が取り込まれないことを意味する。
【0036】
この例では、測定を開始した後、光源部4を点灯させ、その後一定時間が経過した後に光源部4を消灯させて光源部6を点灯させ、さらに一定時間が経過した後に光源部6を消灯させて光源部8を点灯させ、さらに一定時間が経過した後に光源部10を点灯させる。光源部10を一定時間点灯させた後、光源部10を消灯させ、また光源部4を点灯させる。光源部4を点灯させてから光源部10を消灯させるまでを1サイクルとし、測定中にこのサイクルを連続して繰り返す。1サイクルに要する時間は、例えば25m秒である。
【0037】
測定中に各フォトダイオード22及び25で得られた信号は、光源部4が点灯しているときは波長250nmの光の参照信号及び測定信号として、光源部6が点灯しているときは波長260nmの光の参照信号及び測定信号として、光源部8が点灯しているときは波長270nmの光の参照信号及び測定信号として、光源部10が点灯しているときは波長280nmの光の参照信号及び測定信号として処理され、各波長に対応した演算部44a‐44dにおいて各波長についての吸光度が求められる。
【0038】
次に、光学的検出器としての蛍光検出器の一実施例について図4を用いて説明する。なお、図1の吸光度検出器と同じ構成である箇所には同じ符号を付し、その構成についての説明を省略する。
【0039】
この蛍光検出器は、図1の吸光度検出器と同じ構成を有する光源装置2を備えている。光源装置2の各光源部4,6,8及び10から発せられる250nm、260nm、270nm及び280nmの波長の光をフローセル12内の試料に励起光として照射し、励起された試料から発せられる蛍光をフォトダイオード22aにより検出する。フォトダイオード22aは、フローセル12から出た光のうちフローセル12に照射される励起光の光軸に対して垂直な方向の成分を受光する向きに配置されている。
【0040】
フローセル12とフォトダイオード22aとの間に蛍光フィルタ54が設けられている。蛍光フィルタ54は、フローセル12からの光のうち励起光成分を除去して蛍光成分を抽出するように、励起光の最長波長よりも長い波長(例えば290nm)以下の波長の光をカットする特性を有するフィルタである。
【0041】
測定用の光検出器であるフォトダイオード22aの検出信号は、増幅器23a及びA/D変換器24aを経て測定信号として演算制御部28aに取り込まれる。参照用の光検出器であるフォトダイオード25の検出信号は、増幅器26及びA/D変換器27を経て参照信号として演算制御部28aに取り込まれる。
【0042】
演算制御部28aは図1の実施例の演算制御部28と同様に光源切替手段29aと演算処理手段30aを備えている。光源切替手段29aは励起光を発する光源を光源部4,6,8及び10の間で連続的に切り替えるように構成されており、演算処理手段30aはフォトダイオード22a及び25の検出信号を光源部光源部4,6,8及び10の点灯・消灯のタイミングに同期して時分割で取り込み、各波長の励起光がフローセル12に照射されたときの蛍光強度を求める。
【0043】
図5に演算制御部28aの具体的な構成の一例を示すが、図1の実施例における演算制御部28の構成(図2参照。)とほぼ同じである。演算制御部28aは、フローセル12に各波長の励起光が照射されたときの蛍光強度を求めるための演算処理手段30aとして、各光源部4,6,8及び10に対応した演算部45a‐45dを備えている。励起光の波長は、光源切替手段29aとしての時分割制御回路40により時分割で切り替えられ、参照信号及び測定信号を取り込む演算部が切替スイッチ回路42a,42bによって励起光の波長の切替えに同期して切り替えられる。
【0044】
各演算部45a‐45dはデジタルフィルタ46、除算部48及び蛍光算出部50aを備えており、最終的に蛍光算出部50aによって算出された蛍光強度としての値が通信部52を介して外部モニタ等に出力される。
【0045】
以上の実施例では、4つの光源部4,6,8及び10を時分割で切り替える構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つ、3つ又は5つ以上の光源部を時分割で切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 光源装置
4,6,8,10 光源部
4a,6a,8a,10a 発光ダイオード(発光ダイオード)
4b,6b,8b,10b バンドパスフィルタ
4c,6c,8c,10c コリメーションレンズ
12 フローセル
14,16,18 ハーフミラー
20 ビームスプリッタ
22,22a,25 フォトダイオード
23,23a,26 増幅器
24,24a,27 アナログ/デジタル変換器
28,28a 演算制御部
29,29a 光源切替手段
30,30a 演算手段
32,34,36,38 LEDドライバ
40 時分割制御回路
42a,42b 切替スイッチ回路
44a‐44d,45a‐45d 演算部
46 デジタルフィルタ
48 除算部
50 吸光度算出部
50a 蛍光算出部
52 通信部
図1
図2
図3
図4
図5