(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350087
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】吸気音低減装置
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
F02M35/10 301D
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-159631(P2014-159631)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-37863(P2016-37863A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 慧
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−034543(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/105722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 5/00、11/00
F02M 29/00−29/14、35/00−35/16
F15D 1/00− 1/14
F16J 15/00−15/14
F16L 51/00−55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部について、仮に幅よりも奥行きを長く設定した場合に、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で、前記線状部のうち面積が変化しない第1線状部の奥行きが、前記線状部のうち面積が広くなるように変化する第2線状部の奥行きよりも長く設定されていることを特徴とする吸気音低減装置。
【請求項2】
第1線状部については幅よりも奥行きが長く設定されており、第2線状部については幅と奥行きが等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の吸気音低減装置。
【請求項3】
第2線状部は、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸気音低減装置。
【請求項4】
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部のうち、前記整流ネット部が空気の流れにより変形する際に、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形しない第3線状部の奥行きが、回転する方向に変形する第4線状部の奥行きよりも長く設定されていることを特徴とする吸気音低減装置。
【請求項5】
第3線状部については幅よりも奥行きが長く設定されており、第4線状部については幅と奥行きが等しく設定されていることを特徴とする請求項4に記載の吸気音低減装置。
【請求項6】
第4線状部は、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形であることを特徴とする請求項4または5に記載の吸気音低減装置。
【請求項7】
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部は、径方向に伸びる第5線状部と、周方向に伸びる第6線状部とから構成されており、第5線状部の奥行きが、第6線状部の奥行きよりも長く設定されていることを特徴とする吸気音低減装置。
【請求項8】
第5線状部については幅よりも奥行きが長く設定されており、第6線状部については幅と奥行きが等しく設定されていることを特徴とする請求項7に記載の吸気音低減装置。
【請求項9】
第6線状部は、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形であることを特徴とする請求項7または8に記載の吸気音低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気管内に配置され、吸気音を低減させる吸気音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸気管内には、吸気量を制御するためにスロットルバルブが設けられている。ここで、スロットルバルブが急激に開いた際に、異音が発生する問題がある。このような異音が発生することを抑制するために、網目状に設けられた線状部により構成される整流ネットをスロットルバルブの下流側に設けることで、空気の流れを整流させる技術が知られている。また、この整流ネットを、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケットに設ける技術も知られている。一般的に、このような技術においては、整流ネットは金属などの剛性の高い材料により構成され、ガスケットはゴムなどの弾性体により構成される。しかしながら、この場合には、コストが高くなるため、整流ネットも弾性体により構成し、整流ネット部とガスケット部とを一体に備える吸気音低減装置も知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、整流ネット部が弾性体により構成される場合には、空気の流れに伴って整流ネット部が大きく変形することにより、破損してしまうおそれがある。このような破損を抑制するために、整流ネット部を構成する線状部を太くすることも考えられるが、単に線状部を太くしただけだと、網目が狭くなり、空気の流れを阻害してしまう。空気の流れが阻害されると、流量が低下することにより、エンジンへの必要空気量が確保されずに、燃焼効率を悪化する原因となってしまう。そこで、線状部の幅は狭くして網目を広くしつつ、線状部の厚みを厚くして整流ネット部の変形を抑制することが考えられる。しかしながら、このような構成を採用した場合でも、検証の結果、流量の低下を十分に抑制することが困難なことが分かった。この点について、
図5〜
図7を参照して説明する。
【0004】
図5及び
図6は仮想技術に係る吸気音低減装置の平面図であり、
図5は外力が作用していない状態を示し、
図6は空気の流れにより整流ネット部が変形した状態を示している。
図7は仮想技術に係る線状部の模式的断面図であり、
図6中のDD断面図である。この仮想技術に係る吸気音低減装置500は、環状のガスケット部510と、このガスケット部510の内側(径方向の内側)に一体に設けられる整流ネット部520とから構成される。また、吸気音低減装置500は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成される。整流ネット部520は、ガスケット部510の円の中心から外側に向かって径方向に伸びる複数の線状部521と、上記円の中心から同心円状に周方向に伸びるように設けられる複数の線状部522とから構成される。これら複数の線状部521,522は幅に対して奥行きが長くなるように構成されている。
【0005】
以上のように構成される吸気音低減装置500においては、スロットルバルブが開いて空気が流れた状態になると、整流ネット部520はガスケット部510の円の中心付近が空気の流れる方向の下流側に向かって突き出るように変形する。ここで、空気が流れる方向に見て、整流ネット部520が変形する前と空気の流れにより変形した後で、径方向に伸びる複数の線状部521に関しては、面積の変化は(殆ど)ない。これに対して、周方向に伸びる複数の線状部522に関しては、面積が広くなるように変化する。これは、整流ネット部520が空気の流れにより変形する際に、周方向に伸びる複数の線状部522の場合、当該線状部522が伸びる方向を中心軸線として回転する方向(
図7中R方向)に変形することが原因である。なお、
図7においては、線状部522について、変形前を点線で示し、変形後を実線で示している。この図から、空気が流れる方向に見て、整流ネット部520が変形する前は、線状部522の範囲がS1であるのに対して、変形後は線
状部522の範囲S2(>S1)となり、面積が広くなるように変化することが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−14279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、整流ネット部の変形を抑制しつつ、空気の流量の低下の抑制を図ることのできる吸気音低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の吸気音低減装置は、
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部について、仮に幅よりも奥行きを長く設定した場合に、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で、前記線状部のうち面積が変化しない第1線状部の奥行きが、前記線状部のうち面積が広くなるように変化する第2線状部の奥行きよりも長く設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1線状部の奥行きを長く設定できるため、整流ネット部の変形を抑制することができる。また、第1線状部の奥行きを長く設定しても、第1線状部は空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積が変化しないので、網目が狭くなってしまうことも抑制できる。これにより、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【0011】
第1線状部については幅よりも奥行きが長く設定されており、第2線状部については幅と奥行きが等しく設定されているとよい。
【0012】
こうすることで、第1線状部においては、網目を狭くすることを抑制しつつ、空気が流れる方向に対する変形を抑制することができる。また、第2線状部については、空気の流れにより変形しても、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化は殆どないので、網目を狭くしてしまうことを抑制できる。特に、第2線状部を、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形であるようにすれば、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化をなくすことができる。
【0013】
また、本発明の他の吸気音低減装置は、
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる
弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部のうち、前記整流ネット部が空気の流れにより変形する際に、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形しない第3線状部の奥行きが、回転する方向に変形する第4線状部の奥行きよりも長く設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第3線状部の奥行きを長く設定できるため、整流ネット部の変形を抑制することができる。また、第3線状部については、整流ネット部が空気の流れにより変形する際に、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形しない。従って、第3線状部の奥行きを長く設定しても、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積が変化しないので、網目が狭くなってしまうことも抑制できる。これにより、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【0015】
第3線状部については幅よりも奥行きが長く設定されており、第4線状部については幅と奥行きが等しく設定されているとよい。
【0016】
こうすることで、第3線状部においては、網目を狭くすることを抑制しつつ、空気が流れる方向に対する変形を抑制することができる。また、第4線状部については、空気の流れにより変形しても、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化は殆どないので、網目を狭くしてしまうことを抑制できる。特に、第4線状部を、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形であるようにすれば、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化をなくすことができる。
【0017】
更に、本発明の他の吸気音低減装置は、
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部は、径方向に伸びる第5線状部と、周方向に伸びる第6線状部とから構成されており、第5線状部の奥行きが、第6線状部の奥行きよりも長く設定されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、第5線状部の奥行きを長く設定できるため、整流ネット部の変形を抑制することができる。また、第5線状部については、径方向に伸びる構成であることから、整流ネット部が空気の流れにより変形する際には、線状部が伸びる方向に伸びるだけで、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形しない。従って、第5線状部の奥行きを長く設定しても、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積が変化しないので、網目が狭くなってしまうことも抑制できる。これにより、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【0019】
第5線状部については幅よりも奥行きが長く設定されており、第6線状部については幅と奥行きが等しく設定されているとよい。
【0020】
こうすることで、第5線状部においては、網目を狭くすることを抑制しつつ、空気が流れる方向に対する変形を抑制することができる。また、第6線状部については、空気の流れにより変形しても、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化は殆どないので、網目を狭くしてしまうことを抑制できる
。特に、第6線状部を、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形であるようにすれば、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化をなくすことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、整流ネット部の変形を抑制しつつ、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係る吸気音低減装置の平面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例に係る吸気音低減装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例に係る線状部の模式的断面図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例に係る線状部の模式的断面図である。
【
図5】
図5は仮想技術に係る吸気音低減装置の平面図である。
【
図6】
図6は仮想技術に係る吸気音低減装置の平面図である。
【
図7】
図7は仮想技術に係る線状部の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
(実施例)
図1〜
図4を参照して、本発明の実施例に係る吸気音低減装置について説明する。
図1は本発明の実施例に係る吸気音低減装置の平面図である。
図2は本発明の実施例に係る吸気音低減装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。なお、
図2中の吸気音低減装置は、
図1におけるAA断面図である。
図3は本発明の実施例に係る線状部の模式的断面図であり、
図1中のBB断面図である。
図4は本発明の実施例に係る線状部の模式的断面図であり、
図1中のCC断面図である。
【0025】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成される。そして、この吸気音低減装置100は、環状のガスケット部110と、整流ネット部120とから構成される。整流ネット部120は、ガスケット部110の内側(径方向の内側)に一体に設けられる。なお、金型成形によって、ガスケット部110と整流ネット部120とを一体に備える吸気音低減装置100を成形することができる。金型成形に関する技術は公知であるので、その説明は省略する。
【0026】
そして、ガスケット部110は、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する役割を担っている。また、整流ネット部120は、網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる役割を担っている。
【0027】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、吸気管内においてスロットルバルブ400の下流側(吸気の際において、空気が流れる方向の下流側)に配置される。また、本実施例においては、吸気管を構成するインテークマニホールド200(一方の管)とスロットルボディ300(他方の管)との接続部付近に、吸気音低減装置100が配置される。なお、本実施例においては、スロットルバルブ400の回転軸は水平方向に伸びるように設置される。また、このスロットルバルブ400は、
図2中矢印X方向に回転することで、弁
が開くように構成されている。以上の構成により、スロットルバルブ400の開き始めの状態においては、吸気管内の上部側の空気の流れA1と、下部側の空気の流れA2が生じる。
【0028】
本実施例においては、吸気管の管は円筒形状である。そのため、ガスケット部110は円環形状となっている。このガスケット部110は、インテークマニホールド200の端面の内周に沿って形成された環状の切り欠き210とスロットルボディ300の端面の内周に沿って形成された環状の切り欠き310とで形成される環状溝に嵌合されるように配置される。これにより、ガスケット部110は、インテークマニホールド200の端面と、スロットルボディ300の端面との間に挟み込まれることで、これらの端面間の隙間を封止する機能を発揮する。
【0029】
整流ネット部120は、平面形状が円形のガスケット部110の内側に設けられている。そして、整流ネット部120は、ガスケット部110の円の中心から外側に向かって径方向に放射状に伸びる複数の線状部121と、上記円の中心から同心円状に周方向に伸びるように設けられる複数の線状部122とから構成される。なお、本実施例においては、径方向に伸びる線状部121は7本設けられ、周方向に伸びる線状部122は2本設けられている。これら径方向に伸びる複数の線状部121と、周方向に伸びる複数の線状部122によって、網目が形成される。なお、本実施例においては、径方向に伸びる複数の線状部121は、隣り合う線状部121の間の角度がほぼ等しく設定されている。また、周方向に伸びる複数の線状部122は、隣り合う線状部122の径方向の間隔がほぼ等しく設定されている。これにより、整流ネット部120の網目は、ガスケット部110の円の中心付近が細かく、中心から遠ざかるにつれて粗くなっている。なお、径方向に伸びる複数の線状部121は、本発明における「第1線状部」,「第3線状部」及び「第5線状部」のいずれにも相当する。また、周方向に伸びる複数の線状部122は、本発明における「第2線状部」,「第4線状部」及び「第6線状部」のいずれにも相当する。
【0030】
また、本実施例においては、
図2に示すように、スロットルバルブ400と整流ネット部120との間隔が、スロットルバルブ400のバルブ本体部分の長さよりも短い。そのため、スロットルバルブ400が整流ネット部120に突き当たらないように、整流ネット部120は、平面形状が円形であるガスケット部110の内側のほぼ半分の領域を占めるように設けられている。なお、残りのほぼ半円形の領域は空洞となっている。そして、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された状態においては、整流ネット部120が設けられている半円形の領域が上部に配置され、空洞状の半円形の領域が下部に配置される。これにより、スロットルバルブ400が開いても、スロットルバルブ400が整流ネット部120に突き当たることはない(
図2参照)。
【0031】
<線状部の詳細>
特に、
図3及び
図4を参照して、整流ネット部120を構成する線状部について、より詳細に説明する。本実施例に係る整流ネット部120においては、網目状の線状部のうち径方向に伸びる線状部121については、幅W1よりも奥行きW2が長くなるように設定されている(
図3参照)。なお、「幅」とは、空気が流れる方向に線状部を見た場合(
図1に相当)における線状部の幅である。また、「奥行き」は、線状部の表面から裏面までの距離に相当する。また、網目状の線状部のうち周方向に伸びる線状部122については、幅W3と奥行きW4が等しくなるように設定されている。より具体的には、線状部122は、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形となっている(
図4参照)。更に、本実施例においては、幅W1と幅W3が等しくなるように設定されている。従って、径方向に伸びる線状部121の奥行きW2は、周方向に伸びる線状部122の奥行きW4よりも長くなるように設定されている。なお、空気の流量の低下を抑制する観点においては、幅W1及び幅W3は狭いほどよい。また、整流ネット部120の変形を抑制する観点においては
、奥行きW2が長いほどよい。
【0032】
<整流ネット部の挙動>
特に、
図2を参照して、整流ネット部120の挙動について説明する。
図2に示すように、スロットルバルブ400が開くと、吸気管内の上部側の空気の流れA1と、下部側の空気の流れA2が生じる。なお、
図2においては、スロットルバルブ400が閉じた状態を実線で示し、開き始めの状態を点線で示している。スロットルバルブ400は水平状態になるまで開く。スロットルバルブ400が開いて空気が流れた状態になると、整流ネット部120はガスケット部110の円の中心付近が空気の流れる方向の下流側に向かって突き出るように変形する。なお、
図2においては、スロットルバルブ400が閉じていることで空気が流れていない状態の整流ネット部120を実線で示し、スロットルバルブ400が開き始めることにより空気が流れ始めた状態の整流ネット部120を点線で示している。
【0033】
ここで、整流ネット部120を構成する網目状の線状部のうち、径方向に伸びる線状部121の場合には、スロットルバルブ400の開閉により、空気の流れに応じて、
図2中矢印Tに示すように、線状部が伸びる方向に伸び縮みする。このように、径方向に伸びる線状部121は、伸び縮みするものの線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向には変形しない。つまり、ねじり変形は生じない。従って、線状部121については、幅W1よりも奥行きW2が長くなるように設定されているが、空気が流れる方向に見て、整流ネット部120が変形する前と空気の流れにより変形した後で、面積の変化は(殆ど)ない。
【0034】
これに対して、周方向に伸びる線状部122の場合には、整流ネット部120が空気の流れにより変形すると、
図2中、矢印Rに示すように、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形する。つまり、ねじり変形が生じる。従って、仮に、線状部122の幅よりも奥行きを長く設定した場合には、空気が流れる方向に見て、整流ネット部120が変形する前と空気の流れにより変形した後で、線状部122の面積は広くなる。本実施例の場合には、上記の通り、線状部122については、幅W3と奥行きW4が等しくなるように設定されている。より具体的には、線状部122は、線状部が伸びる方向に垂直な断面が円形となっている。従って、空気が流れる方向に見て、整流ネット部120が変形する前と空気の流れにより変形した後で、線状部122の面積は変化しない。
【0035】
<本実施例に係る吸気音低減装置の優れた点>
本発明によれば、径方向に伸びる線状部121の奥行きW2を長く設定できるため、整流ネット部120の変形を抑制することができる。これにより、整流ネット部120が大きく変形することによって、破損してしまうことを抑制することができる。また、線状部121については、径方向に伸びる構成であることから、整流ネット部120が空気の流れにより変形する際には、線状部が伸びる方向に伸びるだけで、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形しない。従って、線状部121の奥行きW2を長く設定しても、空気が流れる方向に見て、整流ネット部120が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積が変化しないので、網目が狭くなってしまうことも抑制できる。これにより、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。従って、エンジンへの必要空気量を確保することができ、燃焼効率の悪化を抑制することができる。
【0036】
また、径方向に伸びる線状部121については、幅W1よりも奥行きW2が長く設定されており、周方向に伸びる線状部122については、幅W3と奥行きW4が等しく設定されている。これにより、径方向に伸びる線状部121においては、網目を狭くすることを抑制しつつ、空気が流れる方向に対する変形を抑制することができる。また、周方向に伸びる線状部122については、空気の流れにより変形しても、空気が流れる方向に見て、
整流ネット部120が変形する前と空気の流れにより変形した後で面積の変化はないので、網目を狭くしてしまうことを抑制できる。
【0037】
(その他)
本実施例においては、整流ネット部を構成する網目状の線状部が、径方向に伸びる複数の線状部と、周方向に伸びる複数の線状部とから構成される場合を示した。しかしながら、整流ネット部を構成する網目状の線状部の配置構成はこれに限られるものではない。網目状の線状部の配置構成が本実施例で示した構成とは異なる場合においても、当該網目状の線状部について、仮に幅よりも奥行きを長く設定した場合に、空気が流れる方向に見て、整流ネット部が変形する前と空気の流れにより変形した後で、網目状の線状部のうち面積が変化しない線状部(第1線状部)の奥行きが、網目状の線状部のうち面積が広くなるように変化する線状部(第2線状部)の奥行きよりも長く設定すればよい。これにより、本実施例に係る吸気音低減装置100の場合と同様の効果を得ることができる。なお、網目状の線状部のうち第1線状部に相当する線状部と第2線状部に相当する線状部の選択手法については、理論的に導くこともできるし、実験的に導くこともできる。
【0038】
整流ネット部を構成する網目状の線状部のうち、整流ネット部が空気の流れにより変形する際に、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形しない線状部(第3線状部)については、上記の第1線状部に相当すると考えられる。また、整流ネット部を構成する網目状の線状部のうち、整流ネット部が空気の流れにより変形する際に、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形する線状部(第4線状部)については、上記の第2線状部に相当すると考えられる。
【0039】
また、本実施例においては、整流ネット部120がガスケット部110の内側の略半円形の領域に設けられる場合を示したが、整流ネット部がガスケット部の内側の全領域に亘って設けられる構成を採用することもできる。この場合には、
図2に示す下部側の空気の流れA2についても整流することが可能となる。ただし、スロットルバルブ400が整流ネット部に接触してしまわないように、スロットルバルブ400と整流ネット部との間隔を、スロットルバルブ400のバルブ本体部分の長さよりも長くする必要がある。
【0040】
ここで、
図2に示すように、スロットルバルブ400が開く際に、スロットルバルブ400の下端は空気が流れる方向に向かって移動する。そのため、下部側の空気の流れA2は、比較的滑らかに流れていくと考えられ、乱流は発生し難いと考えられる。これに対して、スロットルバルブ400が開く際に、スロットルバルブ400の上端は空気が流れる方向と逆方向に向かって移動する。そのため、上部側の空気の流れA1は、乱流が発生し易いと考えられる。従って、上部側の空気の流れA1が異音を発生させる原因となっており、下部側の空気の流れA2については、それほど異音を発生させる原因にはなっていないと考えられる。従って、上記実施例で示した吸気音低減装置100のように、ガスケット部110の内側の領域のうち、上部側の略半円形の領域にのみ整流ネット部120が設けられる構成を採用しても、十分に吸気音を低減させることができる。
【符号の説明】
【0041】
100 吸気音低減装置
110 ガスケット部
120 整流ネット部
121 線状部
122 線状部
200 インテークマニホールド
300 スロットルボディ
400 スロットルバルブ