(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スポイラを支持するとともに該スポイラが車両の外表面から突出する展開位置と前記外表面に形成された収容凹部内に格納される格納位置とをとるように前記スポイラを移動させる可変支持機構と、
前記スポイラを前記可変支持機構に固定する締結部材が挿通されるとともに周面に螺子部を有して互いに螺合する第1及び第2の筒状部材と、を備えた車両用スポイラ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような車両の外表面に形成された収容凹部内にスポイラを格納する構成では、その車両の外表面とスポイラの上面とが面一となることが望ましい。しかしながら、上記リンク機構のようなスポイラの可変支持機構を構成する各部品の製造及び組み付け誤差等により、その車両の外表面とスポイラの上面との間に段差が生ずる可能性がある。そして、これにより、その空力特性及び意匠性が低下するおそれがあることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より高精度にスポイラの位置調整を行うことのできる車両用スポイラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用スポイラ装置は、スポイラを支持するとともに該スポイラが車両の外表面から突出する展開位置と前記外表面に形成された収容凹部内に格納される格納位置とをとるように前記スポイラを移動させる可変支持機構と、前記スポイラを前記可変支持機構に固定する締結部材が挿通されるとともに周面に螺子部を有して互いに螺合する第1及び第2の筒状部材と、を備えることが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、第1及び第2の筒状部材を相対回転させることにより、その螺合関係(螺子対偶)に基づいて、これら第1及び第2の筒状部材がスポイラとリンク機構との間に形成するスペーサ(カラー)の軸長を変更することができる。そして、これにより、高い支持剛性を確保しつつ、簡素な構成にて、精度よく、その締結部材を用いて締結されるスポイラ(の固定部位)とリンク機構(の支持部位)との間隔を調整、即ち締結部材の軸線に沿う方向において、そのリンク機構に支持されたスポイラの位置調整を行うことができる。その結果、その上面が車両の外表面に略面一となる状態でスポイラを収容凹部内に格納することができ、これにより、より優れた空力特性及び高い意匠性を確保することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両用スポイラ装置は、前記第1及び第2の筒状部材の内径は、前記締結部材の直径よりも大径であることが好ましい。
即ち、互いに螺合する第1及び第2の筒状部材には軸ズレが生じ難い。従って、上記構成によれば、高い支持剛性を確保しつつ、簡素な構成にて、その締結部材の軸線に直交する平面上、つまりは、車両の外表面に沿った平面方向におけるスポイラの位置調整を行うことができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用スポイラ装置は、前記第1の筒状部材は、内周面に前記螺子部を有し、前記第2の筒状部材は、外周面に前記螺子部を有するとともに、前記第1の筒状部材内に配置される前記第2の筒状部材の軸方向端部には、前記第1の筒状部材に対する前記第2の筒状部材の回転操作に用いられる係合部が形成されることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、第1の筒状部材の軸方向端部から当該第1の筒状部材内に工具を挿入し、その工具を第2の筒状部材の軸方向端部に設けられた係合部に係合させることにより、これら第1及び第2の筒状部材を相対回転させることができる。そして、これより、その締結部材を用いたスポイラの締結方向から、当該スポイラの位置調整を行うことができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用スポイラ装置は、前記第1及び第2の筒状部材の少なくとも一方には、該筒状部材の回転操作に用いられる把持部が設けられることが好ましい。
上記構成によれば、把持部を操作入力部とすることにより、その締結部材を用いたスポイラの締結方向に交差する方向から、当該スポイラの位置調整を行うことができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用スポイラ装置は、前記可変支持機構は、前記スポイラが固定される支持部材と、前記支持部材に対して回動可能に連結されるリンク部材と、を備え、前記支持部材は、板材を折曲加工することにより形成されるとともに、前記各リンク部材が連結される側壁部と、前記締結部材が挿通される挿通孔を有した支持部と、を備えるものであって、前記支持部は、前記側壁部の上端を折曲することにより形成された第1の支持板部と、前記側壁部の下端を折曲することにより形成された第2の支持板部と、を備えて構成されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、上方に支持するスポイラについて、高い支持剛性を確保しつつ、装置の小型化を図ることができる。即ち、側壁部の上端を折り曲げてなる第1の支持板部を支持部とし、この支持部の上方に第1及び第2の筒状部材を配置することで、その上方に支持するスポイラについて、高い支持剛性を確保することができる。また、これにより、側壁部には、その支持部を構成する第1の支持板部よりも下方に配置される部分が形成される。そして、その第1の支持板部の下方に配置される部分に、リンク部材との連結点を設定することにより、その連結点と第1及び第2の筒状部材との干渉を回避しつつ、支持部材の小型化を図ることができる。更に、側壁部の下端を折り曲げてなる第2の支持板部を支持部とすることで、リンク部材との連結点を支持部の上方に設定することができる。そして、これにより、上下方向における装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より高精度にスポイラの位置調整を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両用スポイラ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、車両1の後部に設けられたトランクリッド2には、その外表面2s(車両1の外表面S)から突出した展開状態で当該トランクリッド2の上方に支持されるスポイラ3が設けられている。そして、本実施形態の車両1には、そのスポイラ3の展開状態を変更することにより車両1の空力特性を変化させることが可能なスポイラ装置10が設けられている。
【0017】
詳述すると、本実施形態のスポイラ3は、車幅方向(
図2中、左右方向)に延びるウィング状の外形を有している。また、トランクリッド2には、回動可能に設けられたリンク部材11を介して上方にスポイラ3を支持する複数のリンク機構12が設けられている。具体的には、本実施形態のトランクリッド2には、その車幅方向に離間した位置に左右一対のリンク機構12が設けられている。そして、本実施形態のスポイラ装置10は、これらのリンク機構12を駆動することにより、そのスポイラ3の展開状態を変更することが可能となっている。
【0018】
さらに詳述すると、
図1、
図3(a)(b)、及び
図4〜
図7に示すように、これらのリンク機構12は、それぞれ、トランクリッド2に固定されるロアブラケット13と、スポイラ3に固定されるアッパブラケット14と、を備えている。そして、本実施形態のリンク機構12は、これらロアブラケット13とアッパブラケット14との間が二本のリンク部材11(前方リンク15及び後方リンク16)により連結された周知のリンク構造を有している。
【0019】
具体的には、
図1及び
図8に示すように、本実施形態のリンク機構12において、前方リンク15及び後方リンク16は、それぞれ、そのロアブラケット13に対する各連結点X1,X2よりも、そのアッパブラケット14に対する各連結点X3,X4の方が車両前方側(
図1及び
図8中、左側)に配置されるようになっている。
【0020】
即ち、本実施形態のリンク機構12は、アッパブラケット14側の各連結点X3,X4が車両後方側に移動するように、各リンク部材11が、
図1及び
図8中、時計回りに回動することによって、その支持部材としてのアッパブラケット14に固定されたスポイラ3が、上方移動するように構成されている(展開状態)。そして、各連結点X3,X4が車両前方側に移動するように、各リンク部材11が、
図1及び
図8中、反時計回りに回動することによって、そのアッパブラケット14に固定されたスポイラ3が下方移動するように構成されている(折り畳み状態)。
【0021】
また、
図8に示すように、本実施形態では、前方リンク15のリンク長Lf(連結点X1,X3間の長さ)よりも後方リンク16のリンク長Lr(連結点X2,X4間の長さ)の方が長く設定されている(Lf<Lr)。そして、本実施形態のリンク機構12は、これにより、その支持するスポイラ3が上方移動した際、当該スポイラ3の後端部3bが前端部3aよりも上方に持ち上がるように構成されている。
【0022】
ここで、
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、トランクリッド2には、その外表面2sに開口する収容凹部20が設けられている。具体的には、この収容凹部20の開口形状は、スポイラ3の上面形状と略等しい矩形状に形成されている。そして、各リンク機構12は、それぞれ、この収容凹部20内に固定されている。
【0023】
即ち、本実施形態のスポイラ装置10は、その可変支持機構を構成する各リンク機構12が折り畳み状態となることにより、その上方に支持するスポイラ3を収容凹部20内に格納する構成となっている。具体的には、本実施形態のスポイラ3は、この格納位置において、その開口部を閉塞する態様で収容凹部20内に格納される。詳しくは、そのスポイラ3の上面3cがトランクリッド2の外表面2s、即ち車両1の外表面Sと略面一になるように構成されている。そして、本実施形態のスポイラ装置10は、各リンク機構12が展開状態となることにより、その上方に支持するスポイラ3を収容凹部20の外部、即ち車両1の外表面Sから突出した展開位置に移動させることが可能な構成になっている。
【0024】
さらに詳述すると、
図2に示すように、本実施形態のスポイラ装置10は、上記のように車幅方向に離間して設けられた各リンク機構12を連結する連結軸21を備えている。本実施形態では、この連結軸21は、各リンク機構12を構成する前方リンク15の基端部、詳しくは、そのロアブラケット13に対する連結点X1を構成する連結ピン22同士を連結する。尚、
図3(a)及び
図6に示すように、これらの各連結ピン22には、それぞれ、連結軸21の軸方向端部が挿入される連結凹部(四角穴)22aが形成されている。更に、この連結軸21には、モータ23を駆動源とするアクチュエータ25が接続されている。そして、本実施形態のスポイラ装置10は、そのモータ23の駆動力に基づき連結軸21を回転駆動することにより、各リンク機構12の上方に支持するスポイラ3を車両1の外表面Sから突出する位置に展開し及び当該外表面Sに形成された収容凹部20内に格納することが可能となっている。
【0025】
(支持位置調整機構)
次に、本実施形態のスポイラ装置10に設けられたスポイラ3の支持位置調整機構について説明する。
【0026】
図9(a)(b)、
図10(a)(b)及び
図11(a)(b)に示すように、本実施形態では、各リンク機構12を構成するアッパブラケット14は、それぞれ、板材を折曲加工することにより形成されている。尚、本実施形態では、ロアブラケット13も同様に、板材を折曲加工することにより形成されている。そして、各リンク部材11(15,16)もまた、板材を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。
【0027】
具体的には、
図1、及び
図3〜
図7に示すように、本実施形態のロアブラケット13は、収容凹部20の底部20aに固定される基部31と、相対回動可能に上記各リンク部材11(15,16)の基端側(X1,X2)が連結される側壁部32と、を備えた略L字状の折曲形状を有している。そして、アッパブラケット14は、相対回動可能に各リンク部材11(15,16)の先端側(X3,X4)が連結される側壁部42と、その上面43c側にスポイラ3が固定される支持部43と、を備えている。
【0028】
詳述すると、
図1に示すように、本実施形態では、スポイラ3の下面3d側には、当該スポイラ3を各リンク機構12のアッパブラケット14に固定するための固定部45が設けられている。また、
図12に示すように、本実施形態の固定部45には、複数のナット部46が形成されている。そして、本実施形態のスポイラ3は、これにより、その幅方向の両端部近傍がアッパブラケット14の支持部43に締結される構成になっている(
図2参照)。
【0029】
具体的には、
図9〜
図11に示すように、本実施形態のアッパブラケット14において、支持部43は、側壁部42の上端を折り曲げることにより形成された第1の支持板部43aと、側壁部42の下端を折り曲げることにより形成された第2の支持板部43bと、を備えて構成されている。
【0030】
図9及び
図10に示すように、本実施形態の側壁部42において、図示しない連結ピンが挿入されることによりアッパブラケット14に対する前方リンク15の連結点X3を構成する連結孔47は、その支持部43を構成する各支持板部43a,43bよりも下側(
図10中、下側)となる位置に形成されている。そして、同じく側壁部42において、その後方リンク16の連結点X4を構成する連結孔48は、各支持板部43a,43bよりも上側(
図10中、上側)となる位置に形成されている。
【0031】
また、
図9及び
図11に示すように、これらの各支持板部43a,43bには、それぞれ、締結部材としてのボルト50が挿通される挿通孔51が形成されている。更に、
図3〜
図7、及び
図12に示すように、本実施形態では、これら各支持板部43a,43bが構成する支持部43の下方には、同じく各ボルト50が挿通される一対の挿通孔52を有した締結板53が取着されている。そして、本実施形態のスポイラ装置10は、これらの各挿通孔51,52に挿通されたボルト50を上記固定部45の各ナット部46に螺合させることにより、そのスポイラ3が各リンク機構12の先端に設けられたアッパブラケット14の支持部43に対して固定されるようになっている。
【0032】
ここで、
図12に示すように、本実施形態では、これらスポイラ3の固定部45とアッパブラケット14の支持部43との間には、上記各ボルト50が挿通される第1及び第2の筒状部材61,62が介在されている。具体的には、第1の筒状部材61の内径D1は、第2の筒状部材62の内径D2よりも大径に形成されている(D1>D2)。また、第2の筒状部材62は、その内径D2がボルト50(の螺子軸部分)の直径D0よりも大径(D2>D0)となるように形成されている。更に、第1の筒状部材61は、その内周面61sに螺子部63を有し、第2の筒状部材62は、その外周面62sに螺子部64を有している。即ち、本実施形態では、これら第1及び第2の筒状部材61,62を互いに螺合させることにより、その螺合関係(螺子対偶)に基づき軸長Nを変更可能なカラー(スペーサ)65が形成されるようになっている。そして、本実施形態のスポイラ装置10は、このカラー65を支持位置調整機構70として、そのリンク機構12に支持されたスポイラ3の位置調整を行うことが可能な構成になっている。
【0033】
詳述すると、
図13に示すように、本実施形態では、第1の筒状部材61における一方側の軸方向端部(第1軸方向端部61a)には、上記支持部43に設けられた挿通孔51内に挿入される小径部71が形成されている。また、第1の筒状部材61は、その小径部71を有する第1軸方向端部61a側が、支持部43の上面43cに対して固着されるようになっている。そして、第2の筒状部材62には、当該第2の筒状部材62を第1の筒状部材61に対して回転させるための操作入力部80が設けられている。
【0034】
具体的には、
図14に示すように、第1及び第2の筒状部材61,62が螺合することにより第1の筒状部材61内に配置される第2の筒状部材62の軸方向端部(第1軸方向端部62a)には、その周方向に略180°離間する二位置に、スリット状の係合部72が形成されている。また、
図15(a)(b)に示すように、第2の筒状部材62における他方側の軸方向端部、即ち第1の筒状部材61の外部に突出する第2軸方向端部62b(の外周面62s)には、互いに平行する一対の平面部73a,73bを有した二面幅形状部73が形成されている。そして、本実施形態では、これらの係合部72及び二面幅形状部73を操作入力部80とすることにより、その互いに螺合する第1及び第2の筒状部材61,62を容易に相対回転させることが可能となっている。
【0035】
即ち、本実施形態の支持位置調整機構70は、アッパブラケット14の支持部43に設けられたボルト50の挿通孔51を介して第1軸方向端部61a側から第1の筒状部材61内に工具(例えば、マイナスドライバー等)を挿入することが可能な構成になっている。そして、この工具を第2の筒状部材62の第1軸方向端部62aに係合させることにより、その第1及び第2の筒状部材61,62を相対回転させることが可能となっている。
【0036】
また、本実施形態の支持位置調整機構70は、その二面幅形状部73(を構成する各平面部73a,73b)を把持部とすることによっても、その第1及び第2の筒状部材61,62を相対回転させることが可能である。そして、その螺合関係に基づき第1及び第2の筒状部材61,62が形成するカラー65の軸長Nを変更することで、各リンク機構12に支持されたスポイラ3の位置調整を行うことが可能になっている。
【0037】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)スポイラ装置10は、スポイラ3を支持するとともに当該スポイラ3が車両1の外表面Sから突出する展開位置と外表面Sに形成された収容凹部20内に格納される格納位置とをとるようにスポイラ3を移動させる可変支持機構としてのリンク機構12を備える。また、このスポイラ装置10は、周面(61s,62s)に螺子部(63,64)を有して互いに螺合する第1及び第2の筒状部材61,62を備える。そして、スポイラ3は、これら第1及び第2の筒状部材61,62に挿通されたボルト50を締結部材としてリンク機構12に固定される。
【0038】
上記構成によれば、第1及び第2の筒状部材61,62を相対回転させることにより、その螺合関係(螺子対偶)に基づいて、これら第1及び第2の筒状部材61,62がスポイラ3とリンク機構12との間に形成するスペーサ(カラー65)の軸長Nを変更することができる。そして、これにより、高い支持剛性を確保しつつ、簡素な構成にて、精度よく、そのボルト50を用いて締結されるスポイラ3(の固定部45)とリンク機構12(のアッパブラケット43)との間隔を調整、即ちボルト50の軸線に沿う方向において、そのリンク機構12に支持されたスポイラ3の位置調整を行うことができる。加えて、大きな調整ストロークを確保することができる。その結果、その上面3cが車両1の外表面Sに略面一となる状態でスポイラ3を収容凹部20内に格納することができ、これにより、より優れた空力特性及び高い意匠性を確保することができる。
【0039】
(2)各筒状部材61,62は、その内径D1,D2がボルト50の直径D0よりも大径となるように形成される。即ち、互いに螺合する第1及び第2の筒状部材61,62には軸ズレが生じ難い。従って、上記構成によれば、高い支持剛性を確保しつつ、簡素な構成にて、そのボルト50の軸線に直交する平面上、つまりは、車両1の外表面Sに沿った平面方向におけるスポイラ3の位置調整を行うことができる。
【0040】
(3)第1の筒状部材61は、内周面61sに螺子部63を有し、第2の筒状部材62は、外周面62sに螺子部64を有する。そして、第1及び第2の筒状部材61,62が螺合することにより第1の筒状部材61内に配置される第2の筒状部材62の軸方向端部(第1軸方向端部62a)には、その周方向に略180°離間する二位置に、スリット状の係合部72が形成される。
【0041】
上記構成によれば、第1の筒状部材61の軸方向端部から当該第1の筒状部材61内に工具を挿入し、その工具を第2の筒状部材62の第1軸方向端部62aに形成された係合部72に対して係合させることにより、第1及び第2の筒状部材61,62を相対回転させることができる。そして、これより、そのボルト50を用いたスポイラ3の締結方向から、当該スポイラ3の位置調整を行うことができる。
【0042】
(4)第1の筒状部材61の外部に突出する第2の筒状部材62の第2軸方向端部62b(の外周面62s)には、互いに平行する一対の平面部73a,73bを有した二面幅形状部73が形成される。
【0043】
上記構成によれば、把持部としての二面幅形状部73(を構成する各平面部73a,73b)を操作入力部80として、そのボルト50を用いたスポイラ3の締結方向に交差する方向から、当該スポイラ3の位置調整を行うことができる。
【0044】
(5)リンク機構12は、スポイラ3が固定される支持部材としてのアッパブラケット14を備える。また、このアッパブラケット14は、板材を折曲加工することにより、複数のリンク部材11(15,16)が連結される側壁部42と、ボルト50が挿通される挿通孔51を有した支持部43と、を備えて構成される。そして、この支持部43は、側壁部42の上端を折り曲げることにより形成された第1の支持板部43aと、側壁部42の下端を折り曲げることにより形成された第2の支持板部43bと、を備えて構成される。
【0045】
上記構成によれば、上方に支持するスポイラ3について、高い支持剛性を確保しつつ、装置の小型化を図ることができる。即ち、側壁部42の上端を折り曲げてなる第1の支持板部43aを支持部43とし、この支持部43の上方に第1及び第2の筒状部材61,62を配置することで、上方に支持するスポイラ3について、高い支持剛性を確保することができる。また、これにより、側壁部42には、その支持部43を構成する第1の支持板部43aよりも下方に配置される部分が形成される。そして、その第1の支持板部43aの下方となる部分に、リンク部材11(前方リンク部材15)との連結点(X3)を設定することにより、その連結点と第1及び第2の筒状部材61,62との干渉を回避しつつ、アッパブラケット14の小型化を図ることができる。更に、側壁部42の下端を折り曲げてなる第2の支持板部43bを支持部43とすることで、リンク部材11(後方リンク部材16)との連結点(X4)を支持部43の上方に設定することができる。そして、これにより、上下方向における装置の小型化を図ることができる。
【0046】
(6)支持部43に当接する第1の筒状部材61の軸方向端部(第1軸方向端部61a)には、その支持部43に形成された挿通孔51内に挿入される小径部71が形成される。このような構成とすることで、容易に、第1の筒状部材61の位置決めを行うことができる。そして、これにより、リンク機構12に対するスポイラ3の固定作業を容易化することができる。
【0047】
(7)支持部43に当接する第1の筒状部材61の軸方向端部(第1軸方向端部61a)は、その支持部43に対して固着される。これにより、第1の筒状部材61を押さえるとなく、第2の筒状部材62を相対回転させることができる。その結果、リンク機構に対するスポイラの固定作業を更に容易化することができる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、車両後部のトランクリッド2上にスポイラ3を支持する所謂リヤスポイラ用のスポイラ装置10に具体化した。しかし、これに限らず、スポイラの設置箇所については任意に変更してもよい。例えば、ルーフパネル上にスポイラを支持する構成に適用してもよい。そして、例えば、車両側面等、車両1の外表面Sにおけるその他の部分に設けられた収容凹部内にスポイラを格納し及び展開させるものに適用してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、その後端部3bが前端部3aよりも上方に持ち上がるようにスポイラ3を展開位置に移動させるリンク機構12を可変支持機構に用いることとした。しかし、これに限らず、可変支持機構の構成は任意に変更してもよい。例えば、その傾斜角度を変更することなく、スポイラ3を車両1の外表面Sから突出させる(持ち上げる)構成であってもよい。また、傾斜角度の変更により、そのスポイラ3(の後端部3b側)を車両1の外表面Sから突出させる構成であってもよい。更に、必ずしも可変支持機構にリンク機構を用いなくともよい。そして、手動によって、その支持するスポイラを展開し及び収容凹部内に格納する構成であってもよい。
【0050】
・上記実施形態では、スポイラ装置10は、車幅方向に離間した位置においてスポイラ3を支持する左右一対のリンク機構12を備えることとした。しかし、これに限らず、可変支持機構を構成するリンク機構12の数は、一つでも3つ以上であってもよい。そして、そのリンク機構12を構成するリンク部材11の数についてもまた、一つでも3つ以上であってもよい。
【0051】
・上記実施形態では、第1及び第2の筒状部材61,62は、アッパブラケット14を構成する支持部43の上方に配置されることとした。しかし、これに限らず、スポイラ3とリンク機構12との間に介在される構成であれば、その第1及び第2の筒状部材61,62の配置については任意に変更してもよい。
【0052】
例えば、
図16(a)に示すように、アッパブラケット14を構成する支持部43の下面43dに第1の筒状部材61が当接する構成としてもよい。また、
図16(b)に示すように、第1の筒状部材61が支持部43を貫通する態様で設けられる構成としてもよい。更に、
図16(c)に示すように、第1の筒状部材61と支持部43とが一体に形成された構成としてもよい。そして、アッパブラケット14の側壁部42に第1の筒状部材61が固着される構成としてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、第1の筒状部材61の軸方向端部(第1軸方向端部61a)は、支持部43に対して固着されることとしたが、その固着方法については、例えば、接着や溶接等、どのようなものでもよい。また、その第1の筒状部材61が支持部43に固着されない構成であってもよい。そして、その支持部43に当接する第1の筒状部材61の軸方向端部に小径部71が形成されない構成であってもよい。
【0054】
・上記実施形態では、第1の筒状部材61の外部に突出する第2の筒状部材62の軸方向端部には、当該第2の筒状部材62を第1の筒状部材61に対して相対回転させる際、その回転操作に用いられる把持部となる二面幅形状部73が形成されることとした。しかし、これに限らず、把持部として利用可能であれば、例えば、四角軸状、或いは六角軸状等、その形状は任意に変更してもよい。また、第1の筒状部材61にも、このような把持部が形成された構成であってもよい。そして、このような把持部が第1及び第2の筒状部材61,62の何れにも形成されない構成としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、第1の筒状部材61内に配置される第2の筒状部材62の軸方向端部には、その周方向に略180°離間する二位置に、スリット状の係合部72が形成されることとした。しかし、これに限らず、第2の筒状部材62を第1の筒状部材61に対して相対回転させる際、工具を係合させて、その回転操作に利用可能であれば、形状や数等は、任意に変更してもよい。また、係合部は、凹部ではなく突部であってもよい。そして、このような係合部を有しない構成であってもよい。
【0056】
・上記実施形態では、第1の筒状部材61は、リンク機構12側に配置され、第2の筒状部材62は、スポイラ3側に配置されることとしたが、リンク機構12側に第2の筒状部材62が配置され、スポイラ3側に第1の筒状部材61が配置される構成としてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、側壁部42の上端を折り曲げることにより形成された第1の支持板部43aと、側壁部42の下端を折り曲げることにより形成された第2の支持板部43bと、によりアッパブラケット14の支持部43が形成されることとした。しかし、これに限らず、支持部の一端を折り曲げることにより側壁部を形成する構成であってもよい。尚、上方にスポイラ3を支持する構成においては、その側壁部は、支持部の一端を上方に折り曲げてなるものであることが好ましい。そして、更に、その支持部の一端を下方に折り曲げてなる第2の側壁部を備えるものであることが好ましい。
【0058】
・また、上記実施形態では、ロアブラケット13及びアッパブラケット14は、それぞれ、金属からなる板材を折曲加工することにより形成されることした。しかし、これに限らず、その材質及び加工方法は任意に変更してもよい。
【0059】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記支持部に当接する前記筒状部材の軸方向端部には、前記挿通孔内に挿入される小径部が形成されること、を特徴とする車両用スポイラ装置。このような構成を採用することで、容易に、支持部に当接する筒状部材の位置決めを行うことができる。そして、これにより、リンク機構に対するスポイラの固定作業を容易化することができる。
【0060】
(ロ)前記支持部に当接する前記筒状部材の軸方向端部は、前記支持部に対して固着されること、を特徴とする車両用スポイラ装置。これにより、より容易に第1及び第2の筒状部材を相対回転させることができる。その結果、リンク機構に対するスポイラの固定作業を更に容易化することができる。
【0061】
(ハ)前記可変支持機構は、前記スポイラが固定される支持部材と、前記支持部材に対して回動可能に連結されるリンク部材と、を備え、前記支持部材は、板材を折曲加工することにより形成されるとともに、前記締結部材が挿通される挿通孔を有した支持部と、前記リンク部材が連結される側壁部と、を備え、前記側壁部は、前記支持部の一端を上方に折曲することにより形成されること、を特徴とする車両用スポイラ装置。このような構成を採用することで、リンク部材との連結点を支持部の上方に設定することができる。そして、これにより、支持部の上方に第1及び第2の筒状部材を配置して高い支持剛性を確保しつつ、その上下方向における装置の小型化を図ることができる。
【0062】
(ニ)前記可変支持機構は、複数のリンク部材を備えるものであって、前記支持板部の他端を下方に折曲することにより形成された第2の側壁部を備えること、を特徴とする車両用スポイラ装置。このような構成を採用することで、その支持部の下方に配置される第2の側壁部に、リンク部材との連結点を設定することができる。そして、これにより、その連結点と第1及び第2の筒状部材との干渉を回避しつつ、支持部材を小型化することができる。