特許第6350122号(P6350122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6350122シクロヘキサノンの製造方法及びその触媒
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  • 特許6350122-シクロヘキサノンの製造方法及びその触媒 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6350122
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】シクロヘキサノンの製造方法及びその触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/00 20060101AFI20180625BHJP
   C07C 49/403 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 27/13 20060101ALI20180625BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   C07C45/00
   C07C49/403 A
   B01J23/66 Z
   B01J27/13 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-173375(P2014-173375)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-47804(P2016-47804A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】生田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】吉野 広晃
(72)【発明者】
【氏名】福田 行正
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥史
【審査官】 天野 斉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−117104(JP,A)
【文献】 特開昭55−155746(JP,A)
【文献】 米国特許第04361500(US,A)
【文献】 特開平08−053375(JP,A)
【文献】 触媒便覧,2008年12月10日,618-619頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウムと、銀とを担体に担持させており、且つパラジウムと銀との存在比が重量比で99:1〜95:5である固体触媒存在下、フェノールを水素化するシクロヘキサノンの製造方法。
【請求項2】
担体が、シリカ又はアルミナである請求項1記載のシクロヘキサノンの製造方法。
【請求項3】
パラジウムと、銀とが担体に担持され、且つパラジウムと銀との存在比が重量比で99:1〜95:5であるフェノール水素化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシクロヘキサノンの製造方法に関する。より詳細にはフェノールから一工程でシクロヘキサノンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン原料であるカプロラクタムの原料となるシクロヘキサノンの製造方法として、フェノールの水素化が知られている。
その具体的な方法としては、溶媒にシクロヘキサンや水を用いる方法とフェノール及び主生成物であるシクロヘキサノン以外に溶媒を用いない方法がある。
【0003】
溶媒を用いるフェノールの水素化反応としては、活性炭上にパラジウムを担持した触媒を用い、塩化アルミニウムの存在下で水素化する方法(非特許文献1)や、窒化カーボン上にパラジウムを担持した触媒を用い、溶媒として水を用いて水素化する方法(非特許文献2)などが知られている。
前者は、塩化アルミニウムを使用している為、その処理に伴い多量の廃棄物が発生し問題であり、後者は触媒の調製法が煩雑であり工業的に実施するのに適していない。加えて、溶媒を用いることは反応器の増大や溶媒分離コストの増加を招き工業的な製法としては適さない。
【0004】
一方、フェノール及び主生成物であるシクロヘキサノン以外に溶媒を用いないフェノールの水素化反応としては、膜触媒を用いる方法や固体触媒を用いる方法が知られている。
膜触媒を用いる方法としては、パラジウム膜やパラジウム−銀合金膜による方法が知られている(非特許文献3)。しかし、膜触媒によるフェノール水素化反応はシクロヘキサノンの収率が低い上に、設備や触媒調製コストが高価であり工業的実施には適さない。
他方、固体触媒を用いる方法としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属により処理されたAl上にパラジウムを担持した固体触媒を使用し、水素とフェノールを反応させることによってシクロヘキサノンを得る方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。同反応は、生産性が高く工業的に実施されている。
しかしながら、その反応液中には、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、その他の副生成物及び未反応のフェノールが含まれる。通常、未反応のフェノールは分離され再度フェノールの水素化反応工程へ導入されるが、シクロヘキサノンと共沸組成を形成する為、フェノールの分離・循環には多くの設備コストとエネルギーが必要となる。また、副生成物であるシクロヘキサノールは脱水素反応によりシクロヘキサノンへ誘導可能であるが、同反応は吸熱反応であるため反応を高温で行う必要があり、設備コストならびにエネルギーがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2000/067902号パンフレット
【特許文献2】英国特許第1332211号明細書
【特許文献3】国際公報第2009/134514号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Liu et. al., Science 326 (2009) 1250.
【非特許文献2】Y. Wang et. al., J. Am. Chem. Soc. 133 (2011) 2362.
【非特許文献3】N. Itoh et. al., Applied Catalysis A:General 107 (1993) 83.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、フェノールから高収率でシクロヘキサノンを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の事項に関する。
1.白金族金属又はその化合物と、銀又はその化合物とが担体に担持され、且つ白金族金属と銀との存在比が99:1〜95:5である固体触媒の存在下、フェノールを水素化するシクロヘキサノンの製造方法。
2.担体が、シリカ、アルミナ、ジルコニア及び活性炭からなる群から選ばれる少なくとも1種である第1項記載のシクロヘキサノンの製造方法。
3.白金族金属又はその化合物と、銀又はその化合物とが担体に担持され、且つ白金族金属と銀との存在比が99:1〜95:5であるフェノール水素化触媒。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシクロヘキサノンの製造方法によれば、高収率でフェノールからシクロヘキサノンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】反応管の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、白金族金属又はその化合物と、銀又はその化合物とが担体に担持され、且つ白金族金属と銀との存在比が99:1〜95:5である水素化触媒存在下、フェノールを水素化するシクロヘキサノンの製造方法及びその触媒に関する。
【0012】
本発明によるシクロヘキサノンの製造は、例えば、白金族金属又はその化合物と、銀又はその化合物とが担体に担持され、且つ白金族金属と銀との存在比が99:1〜95:5である水素化触媒を充填した触媒層と、フェノール導入側に予熱層を有する反応管に、予熱層側より水素ガスを流通させ前処理還元を行った後、水素とフェノールを供給して行われる。
【0013】
本発明に使用される水素化触媒は固体であり、白金族金属又はその化合物と、銀又はその化合物とが担体に担持され、且つ白金族金属と銀との存在比が99:1〜95:5である。
【0014】
白金族金属としてはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金が挙げられるが、好ましくはパラジウムである。なお、これらの白金族金属は、単独又は二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
白金族金属の化合物としては、例えば硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩等の形態が挙げられる。
【0016】
銀の化合物としては、例えば硝酸銀、炭酸銀、酸化銀、酢酸銀等の形態が挙げられる。
【0017】
触媒は、これらの白金族金属又はその化合物及び銀又はその化合物を担体へ担持させて調製されるが、担体への担持は、例えば、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩等の形態が白金族金属及び銀の供給源として用いることができる。
【0018】
白金族金属の化合物及び銀の化合物の担体への担持は、定法で行われる。例えば、担持させる金属の金属塩水溶液に担体を浸漬させる等、接触させて行う事ができる。
【0019】
白金族金属の担体への担持量としては、担体1gに対して、好ましくは0.0005〜0.05g、更に好ましくは0.001〜0.02gである。
【0020】
銀の担体への担持量としては、担体1gに対して、好ましくは0.000005〜0.0025g、更に好ましくは0.00001〜0.001gである
白金族金属及び銀の担持順序に制約はなく、同時担持、逐次担持も問わないが、好ましくは白金族金属を担持した後に銀を担持する順序である。
【0021】
触媒の調製において使用される担体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、ゼオライト及び活性炭からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、ジルコニア及び活性炭からなる群より選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはシリカ及び/又はアルミナである。なお、これらの担体はそのまま用いることも出来るが、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種による修飾など各種修飾を行い用いることも出来る。
【0022】
本発明に使用される担体の修飾法としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の供給源、水、担体を加え、水を蒸発乾固させた後、焼成することによって行われる。
【0023】
アルカリ金属の供給源としては、例えば酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属の供給源としては、例えば酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、リンの供給源としては、例えばリン酸が挙げられる。
【0024】
焼成温度は、好ましくは200〜1000℃、更に好ましくは400〜800℃であり、圧力は特に制限されない。又、焼成雰囲気も特に限定されないが、好ましくは酸素の存在下(例えば、空気中)で行われる。
【0025】
このようにして得られた修飾された担体に、白金族金属の供給源を担持させた後、乾燥、焼成及び還元を行う。その際の焼成温度は、好ましくは200〜1000℃、更に好ましくは400〜800℃であり、圧力は特に制限されない。又、焼成雰囲気も特に限定されないが、好ましくは酸素の存在下(例えば、空気中)で行われる。
【0026】
還元方法としては、特に制限はないが、例えば、水素を還元剤として用いる方法が挙げられ、その際、触媒層の温度は50〜500℃、好ましくは100〜300℃であり、固体触媒中の白金族金属が充分還元されるだけの水素量、時間にて実施される。なお、水素ガス供給前には、窒素或いはアルゴン等の不活性ガスが導通され反応系内は置換される。続いて、銀の供給源を担持させた後、乾燥及び焼成を行う。
【0027】
固体触媒の形状としては、円柱型、押出し型、球状、粒状、粉末状、ハニカム状等と形態を問わず用いることが出来る。
【0028】
本発明の上記触媒を用いたシクロヘキサノンの製造方法の一態様を以下に示す。
【0029】
[反応装置]
反応管としては、直管が用いられる。材質としては、ステンレス鋼(SUS)、ガラス、石英等が挙げられるが、工業的な製法の見地からステンレス鋼(SUS)が好ましい。
【0030】
反応管には上記固体触媒が充填されるが、反応管に固体触媒を支える通気性を有する皿、網又はパンチングメタル等を設置し、これに石英ウール等を敷き詰め、次いで固体触媒が充填される。これにより固体触媒の抜けが防止される。(図1 反応管の模式図 参照)
【0031】
上記触媒層のフェノール導入側には、予熱層を有する。
予熱層は、反応管に充填された触媒のフェノール導入側(縦型の反応管の場合、充填された触媒の上部)に、例えばガラスビーズ、石英ウール、繊維状のステンレス鋼(SUS)を充填する事により形成する事ができる。また、反応管の予熱層部分を細くする、或いは、外径の細い管を予熱層部位として触媒層が形成された反応管に接続し、これにガラスビーズ、石英ウール、繊維状のステンレス鋼(SUS)を充填して、或いは、反応管を流通するフェノールや水素との熱交換が充分であれば、ガラスビーズ等の充填材を充填する事無く、予熱層とする事もできる。
ガラスビーズを使用する場合、ガラスビーズの粒径は、反応管の直径の1/10程度が目安であり、反応管の直径によるが、例えば、直径1mm又は2mmの球形のものを使用する事ができる。
予熱は、例えば予熱層の管外にヒーターを設置する等して外部加熱によって行われる。(図1 反応管の模式図 参照)
【0032】
[シクロヘキサノンの製法方法]
上記装置の予熱層側からフェノールを触媒層へ供給する事でシクロヘキサノンが製造されるが、フェノールの供給前に気相または液相で固体触媒の還元処理が行われる。
【0033】
気相還元処理としては、例えば、水素を還元剤として用いる方法が挙げられ、その際、触媒層の温度は50〜500℃、好ましくは100〜200℃であり、固体触媒中の白金族金属が充分還元されるだけの水素量、時間にて実施される。なお、水素ガス供給前には、窒素或いはアルゴン等の不活性ガスが導通され反応系内は置換される。
【0034】
液相還元処理の方法としては、例えば、ギ酸、ギ酸のアルカリ金属塩、ホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤の1〜20質量%の水溶液を用いて、同溶液中、室温〜100℃の温度で触媒中の白金族金属を還元する方法が挙げられる。
【0035】
原料であるフェノールはその製法によらず用いることが出来る。例えば、クメン法により得られたフェノール、あるいは特許文献3に記載のあるベンゼンの還元二量化及びその二量化体の分解による得られるフェノールとシクロヘキサノンの混合物を分離することなくそのまま用いることが出来る。使用するフェノールはシクロヘキサノンとの混合物でも問題はなく、その混合比は特に限定されないが、副生成物であるシクロヘキサノールの生成抑制、生産性の観点から、フェノール:シクロヘキサノン比(モル比)は100:0〜30:70であることが好ましい。
【0036】
フェノール又は、フェノールとシクロヘキサノンの混合物は必要に応じ120℃以下で加熱し、液体状態とし、プランジャーポンプ、シリンジポンプ等のポンプによって予熱層へ供給される。
【0037】
フェノールの流速は、反応装置や製造規模、固体触媒中の白金族金属の担持量にもよるが、固体触媒重量当りの供給速度で 0.2〜5 kg・kg−cat−1・h−1である。
【0038】
供給されたフェノールまたはフェノールとシクロヘキサノンの混合物は、予熱層で気化し、同じく供給される水素と混合し、触媒層へ供給される。別法として、液体状のフェノール中に水素ガスを導通し、気化したフェノールを予熱層へ送る方法もある。
【0039】
触媒層へ供給される水素ガスは、反応装置や製造規模、固体触媒中の白金族金属の担持量にもよるが、固体触媒重量当りの供給速度で100〜130000 L・kg−cat−1・h−1であり、予熱層にて加熱される。予熱層での好ましい温度は100〜220℃である。
【0040】
フェノールと水素の混合物は、触媒層の温度が100〜220℃、好ましくは140〜160℃、圧力0〜1MPa(ゲージ圧以下、G)、好ましくは0〜0.3MPa(G)で反応に供される。
水素のフェノールに対するモル比は2〜100、好ましくは4〜50である。
【0041】
反応管からの反応生成物を冷却捕集し、得られた捕集液を、例えば、蒸留等により精製することで目的のシクロヘキサノンを得る事ができる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。(表1反応結果一覧 参照)
フェノールの水素化反応で生成する各成分の収率及びフェノールの転化率は、得られた反応液を冷却し捕集した後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製「GC‐2014」又は「GC−14A」、GCカラム:TC−WAX、GC検出器:FID)を用いて分析を行った。内部標準としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを用い各成分の含有量を求めることにより算出した。
以下の実施例において、パラジウムと銀との「存在比」は重量比を表し、各実施例において示された存在比(重量比)になるように触媒を調製した。
【0043】
[実施例1]
(触媒A−1:1.5wt%Pd−0.015wt%Ag/2wt% Na−Alの製造)
触媒A(比較例1参照)に対し銀金属として0.015wt%(パラジウムと銀との存在比が99:1)となるように硝酸銀水溶液を含浸担持させ、110℃で12h(時間)以上乾燥した後、450℃で3h焼成し触媒A−1(1.5wt%Pd−0.015wt%Ag/2wt% Na−Al)を得た。
【0044】
[実施例2]
(触媒A−2:1.5wt%Pd−0.030wt%Ag/2wt% Na−Alの製造)
触媒Aに対し銀金属として0.030wt%(パラジウムと銀との存在比が98:2)となるように硝酸銀水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥した後、450℃で3h焼成し触媒A−2(1.5wt%Pd−0.030wt%Ag/2wt% Na−Al)を得た。
【0045】
[実施例3]
(触媒A−3:1.5wt%Pd−0.075wt%Ag/2wt% Na−Alの製造)
触媒Aに対し銀金属として0.075wt%(パラジウムと銀との存在比が95:5)となるように硝酸銀水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥した後、450℃で3h焼成し触媒A−3(1.5wt%Pd−0.075wt%Ag/2wt% Na−Al)を得た。
【0046】
[実施例4]
(触媒B−1:0.20wt%Pd−0.010wt%Ag/Ca−P−SiOの製造)
触媒B(比較例3参照)に対し銀金属として0.010wt%(パラジウムと銀との存在比が95:5)となるように硝酸銀水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥した後、450℃で3h焼成し触媒B−1(0.20wt%Pd−0.010wt%Ag/Ca−P−SiO)を得た。
【0047】
[実施例5]
(触媒A−1:1.5wt%Pd−0.015wt%Ag/2wt% Na−Alによるフェノールの水素化反応)
触媒A−1:1.5wt%Pd−0.015wt%Ag/2wt% Na−Al 0.040gと2wt% Na−Al 0.46gの混合物を1/2インチの石英製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(25cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、160 ℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から5hの捕集液を切り捨て、その後1hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は99.4%であり、シクロヘキサノンの収率は97.8%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は1.3%であった。
【0048】
[実施例6]
(触媒A−2:1.5wt%Pd−0.030wt%Ag/2wt% Na−Alによるフェノールの水素化反応)
触媒A−2:1.5wt%Pd−0.030wt%Ag/2wt% Na−Al 0.040gと2wt% Na−Al 0.46gの混合物を1/2インチの石英製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(25cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、160℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から5hの捕集液を切り捨て、その後1hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は99.7%であり、シクロヘキサノンの収率は97.5%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は1.9%であった。
【0049】
[実施例7]
(触媒A−3:1.5wt%Pd−0.075wt%Ag/2wt% Na−Alによるフェノールの水素化反応)
触媒A−3:1.5wt%Pd−0.075wt%Ag/2wt% Na−Al 0.040gと2wt% Na−Al 0.46gの混合物を1/2インチの石英製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(25cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、160℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から5hの捕集液を切り捨て、その後1hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は97.3%であり、シクロヘキサノンの収率は95.4%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は1.6%であった。
【0050】
[実施例8]
(触媒B−1:0.20wt%Pd−0.010wt%Ag/Ca−P−SiOによるフェノールの水素化反応)
触媒B−1:0.20wt%Pd−0.010wt%Ag/Ca−P−SiO 1.0gを1/2インチのSUS製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(10 cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、140℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から50hの捕集液を切り捨て、その後2hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は99.8%であり、シクロヘキサノンの収率は97.7%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は2.0%であった。
【0051】
[比較例1]
(触媒A:1.5wt%Pd/2wt%Na−Alの製造)
酸化アルミニウム(Al:エヌ・イーケムキャット製、円柱状)を破砕し粉体としたものに対し、ナトリウム金属として2wt%となるように酢酸ナトリウムを含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥した後、500℃で3h焼成し、2wt% Na−Alを得た。その後、2wt% Na−Alに対し、パラジウム金属として1.5wt%となるように硝酸パラジウム水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥させた後、450℃で3h加熱した。次に石英管に充填し、上部より水素ガス(50cc/min)を流通させ200℃で2h還元処理を行い、触媒A(1.5wt%Pd/2wt% Na−Al)を得た。
【0052】
(触媒A:1.5wt%Pd/2wt% Na−Alによるフェノールの水素化反応)
触媒A:1.5wt%Pd/2wt% Na−Al 0.040gと2wt% Na−Al 0.46gの混合物を1/2インチの石英製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(25cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、160℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から5hの捕集液を切り捨て、その後1hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は92.9%であり、シクロヘキサノンの収率は90.9%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は1.8%であった。
【0053】
[比較例2]
(触媒A−4:1.5wt%Pd−0.15wt%Ag/2wt% Na−Alの製造)
触媒Aに対し0.15wt%(パラジウムと銀との存在比が90:10)となるように硝酸銀水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥した後、450℃で3h焼成し触媒A−4(1.5wt%Pd−0.15wt%Ag/2wt% Na−Al)を得た。
【0054】
(触媒A−4:1.5wt%Pd−0.15wt%Ag/2wt% Na−Alによるフェノールの水素化反応)
触媒A−4:1.5wt%Pd−0.15wt%Ag/2wt% Na−Al 0.040gをと2wt% Na−Al 0.46gの混合物を1/2インチの石英製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(25cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、160℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から5hの捕集液を切り捨て、その後1hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は84.0%であり、シクロヘキサノンの収率は83.0%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は0.8%であった。
【0055】
[比較例3]
(触媒B:0.20wt%Pd/Ca−P−SiOの製造)
SiO(富士シリシア製、Q−50、球状 1.18−2.36mm)に対し、Ca/Si mol比=0.1、P/Si mol比=0.05となるように硝酸カルシウム水溶液、リン酸水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥させた。その後、空気雰囲気下600 ℃で3h焼成し触媒B前駆体を得た。
触媒B前駆体に、パラジウム金属として0.2wt%となるように硝酸パラジウム水溶液を含浸担持させ、110℃で12h以上乾燥させ、その後石英製の管に充填し、200℃で上部より水素ガスを50cc/minで供給し触媒の還元を行い、触媒B:0.20wt%Pd/Ca−P−SiOを得た。
【0056】
(触媒B:0.20wt%Pd/Ca−P−SiOによるフェノールの水素化反応)
触媒B:0.20wt%Pd/Ca−P−SiO 1.0gを1/2インチのSUS製の管に充填し、その上部にガラスビーズ(直径1mm、球形)を10g入れて予熱層とした。触媒層を200℃に加熱し上部より水素ガス(10cc/min)を流通させ前処理還元を行った後、140℃、0MPa(G)にてフェノール、シクロヘキサノンの混合物(モル比=1:1)を1.0cc/h、水素ガスを10cc/minで供給した。
反応開始から50hの捕集液を切り捨て、その後4hの捕集液を用いてガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った結果、出発原料であるフェノールの転化率は88.5%であり、シクロヘキサノンの収率は87.8%、副生物であるシクロヘキサノールの収率は0.6%であった。







【0057】
【表1】
図1