(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体のガラス原料を収容する原料タンクと、前記原料タンク内のガラス原料を補給する補液タンクと、前記補液タンクから前記原料タンクへ前記ガラス原料を液送する補給管と、前記原料タンクを加熱するヒータと、を備え、前記ガラス原料を前記ヒータで加熱することにより、ガラス原料ガスを反応容器内に供給する原料供給装置であって、
前記補給管の原料タンク側端部はその先端部が前記ガラス原料内に差し込まれ、
前記原料タンク側端部が前記ガラス原料内に差し込まれた部分に、前記原料タンク側端部が前記原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有し、
前記熱交換部は、当該部分を直管にする場合と比較して、前記ガラス原料と接している部分の管の長さが長いまたは表面積が大きい、
原料供給装置。
液体のガラス原料を収容する原料タンクと、前記原料タンク内のガラス原料を補給する補液タンクと、前記補液タンクから前記原料タンクへ前記ガラス原料を液送する補給管と、前記原料タンクを加熱するヒータと、を備え、さらに、前記原料タンク側端部が前記ガラス原料内に差し込まれた部分に、前記原料タンク側端部が前記原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有し、前記熱交換部は、当該部分を直管にする場合と比較して、前記ガラス原料と接している部分の管の長さが長いまたは表面積が大きい原料供給装置を使用して、
前記ガラス原料を前記ヒータで加熱することにより、ガラス原料ガスを反応容器内に供給し、前記反応容器内でガラス母材を製造する、ガラス母材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、原料供給装置では、原料タンク内の液体のガラス原料の温度が変化しないように、補液タンクから補給するガラス原料の温度を加温して原料タンクに送っている。ところが、ガラス原料の沸点以上にまで加熱すると、原料タンク直前の配管は密閉空間になっているため、加熱することで圧力が上がり、配管システムの耐圧を超えると原料がリークしてしまう可能性がある。特に、四塩化珪素などの原料は、熱膨張係数の大きい液体なので、配管内の密閉された空間で温度を上げると、圧力が上昇しやすい。このため、補液タンクから補給する液体のガラス原料は、通常ガラス原料の沸点以下の温度に制御している。しかしながら、補給する液体のガラス原料の温度が低すぎると、補給した際に原料タンク内の温度が下がってしまう。このように温度が下がると、原料タンクの内圧が下がるので、反応容器内に供給する原料ガス流量が変動する虞がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、補液タンクからガラス原料を補給する際、補給するガラス原料により原料タンク内の温度が下がることを防ぐことができる原料供給装置およびガラス母材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る原料供給装置は、液体のガラス原料を収容する原料タンクと、前記原料タンク内のガラス原料を補給する補液タンクと、前記補液タンクから前記原料タンクへ前記ガラス原料を液送する補給管と、前記原料タンクを加熱するヒータと、を備え、前記ガラス原料を前記ヒータで加熱することにより、ガラス原料ガスを反応容器内に供給する原料ガス供給装置であって、
前記補給管の原料タンク側端部はその先端部が前記ガラス原料内に差し込まれ、
前記原料タンク側端部が前記ガラス原料内に差し込まれた部分に、前記原料タンク側端部が前記原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有する。
【0007】
本発明の一態様に係るガラス母材の製造方法は、液体のガラス原料を収容する原料タンクと、前記原料タンク内のガラス原料を補給する補液タンクと、前記補液タンクから前記原料タンクへ前記ガラス原料を液送する補給管と、前記原料タンクを加熱するヒータと、を備え、さらに、前記原料タンク側端部が前記ガラス原料内に差し込まれた部分に、前記原料タンク側端部が前記原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有する原料供給装置を使用して、
前記ガラス原料を前記ヒータで加熱することにより、ガラス原料ガスを反応容器内に供給し、前記反応容器内でガラス母材を製造する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補液タンクからガラス原料を補給する際、補給するガラス原料により原料タンク内の温度が下がることを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係る原料供給装置は、
(1) 液体のガラス原料を収容する原料タンクと、前記原料タンク内のガラス原料を補給する補液タンクと、前記補液タンクから前記原料タンクへ前記ガラス原料を液送する補給管と、前記原料タンクを加熱するヒータと、を備え、前記ガラス原料を前記ヒータで加熱することにより、ガラス原料ガスを反応容器内に供給する原料ガス供給装置であって、
前記補給管の原料タンク側端部はその先端部が前記ガラス原料内に差し込まれ、
前記原料タンク側端部が前記ガラス原料内に差し込まれた部分に、前記原料タンク側端部が前記原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有する。
【0011】
(1)の構成によれば、補給管の原料タンク側端部のガラス原料内に差し込まれた部分に、原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有する。そのため、補給管で補液するガラス原料の温度を沸点近くまで上げてから原料タンク内に補液することができ、補液タンクからガラス原料を補給する際、補給するガラス原料により原料タンク内の温度が下がるのを防ぐことができる。これにより、ガラス母材を製造する際に、原料タンクの内圧が下がることを防いで反応容器内に供給する原料ガス流量の変動を少なくすることができる。
【0012】
(2) 前記熱交換部は、螺旋形状の管である。
(2)の構成によれば、熱交換部は螺旋形状の管となっているので、原料タンク内の液体のガラス原料と接している管の長さを長くすることができる。これにより、補給管の内外の熱交換の時間を液内で長くすることができ、補液するガラス原料の温度をより原料タンク内の液体原料の温度に近づけることができる。
【0013】
(3) 前記熱交換部は、内径が変動する形状の管である。
(3)の構成によれば、熱交換部は内径が変動する形状の管であり、表面積が直管の場合よりも大きいので、原料タンク内の液体のガラス原料と接する面積を大きくすることができ、補液するガラス原料の温度をより原料タンク内の液体原料の温度に近づけることができる。
【0014】
(4) 前記熱交換部は、折り返し形状の管である。
(4)の構成によれば、熱交換部は折り返し形状の管であるので、原料タンク内の液体のガラス原料と接している管の長さを長くすることができる。これにより、補給管の内外の熱交換の時間を長くすることができ、補液するガラス原料の温度をより原料タンク内の液体原料の温度に近づけることができる。
【0015】
(5) 前記熱交換部の少なくとも一部が、前記ヒータが存在する部分の原料タンク内面に接する。
(5)の構成によれば、熱交換部の少なくとも一部が原料タンクを加熱するヒータが存在する部分の原料タンク内面に接するので、ヒータからの熱を熱交換部に伝えることができ、補液するガラス原料の温度をより原料タンク内の液体原料の温度に近づけることができる。
【0016】
(6) 液体のガラス原料を収容する原料タンクと、前記原料タンク内のガラス原料を補給する補液タンクと、前記補液タンクから前記原料タンクへ前記ガラス原料を液送する補給管と、前記原料タンクを加熱するヒータと、を備え、さらに、前記原料タンク側端部が前記ガラス原料内に差し込まれた部分に、前記原料タンク側端部が前記原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有する原料供給装置を使用して、
前記ガラス原料を前記ヒータで加熱することにより、ガラス原料ガスを反応容器内に供給し、前記反応容器内でガラス母材を製造する。
【0017】
(6)の製造方法によれば、補給管の原料タンク側端部のガラス原料内に差し込まれた部分に、原料タンク内の空間に接触している部分より大きく熱交換を行うことのできる熱交換部を有する原料供給装置を使用する。そのため、補給管で補液するガラス原料の温度を沸点近くまで上げてから原料タンク内に補液することができ、補液タンクからガラス原料を補給する際、補給するガラス原料により原料タンク内の温度が下がることを防ぐことができる。これにより、ガラス母材を製造する際に、原料タンクの内圧が下がることを防いで反応容器内に供給する原料ガス流量の変動を少なくすることができる。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る原料供給装置およびガラス母材の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る原料供給装置の概略構成図である。
図1に示す原料供給装置1は、液体のガラス原料21を収容する原料タンク2と、原料タンク2内のガラス原料21を補給する補液タンク3と、補液タンク3から原料タンク2へガラス原料31を液送する補給管4と、原料タンク2を加熱するヒータ5と、を備えている。そして、補給管4の原料タンク側端部41は、その先端部が原料タンク2内の液体のガラス原料21内に差し込まれている。
【0020】
さらに、本実施形態の原料供給装置1は、補給管4の原料タンク側端部41において、液体のガラス原料21内に差し込まれた部分41aに、原料タンク2内の空間22に接触している部分41bより大きく熱交換を行う熱交換部6を有している。
【0021】
図1に示す原料供給装置1の原料タンク2内の液体のガラス原料21は、原料タンク2の側面に設けられたヒータ5で加熱することにより気化してガラス原料ガスとなる。なお、ヒータ5は、原料タンク2の底面にも設けられていてもよい。そして、発生したガラス原料ガスは、配管7を介して反応容器8に供給される。
【0022】
また、補液タンク3の側面には、補液タンク3を加熱するヒータ9が設けられており、補液タンク3内のガラス原料31を沸点にならない程度の温度まで加熱している。配管10は補液タンク3のガラス原料31を補充するための配管である。なお、各配管(4、7、10)に設けられた弁11〜14は、各配管の流量を調整するためのものである。
【0023】
次に、本実施形態に係るガラス母材の製造方法について
図1を参照して説明する。本実施形態のガラス母材の製造方法は、
図1の原料供給装置を使用して、以下の(1)〜(3)の手順で製造される。
【0024】
(1)原料タンク2からガラス原料ガスを反応容器内8のバーナー(図示せず)に供給する。
(2)反応容器内8内に挿入されたターゲット(図示せず)に対し、バーナーの酸水素火炎により、ガラス微粒子を生成してターゲットに堆積させてガラス微粒子堆積体(ガラス母材)を製造する。
(3)ガラス微粒子の堆積により原料タンク2の液体のガラス原料21が減った分、補液タンク3から原料タンク2に補液する。その際に、熱交換部6を通すことにより、補液するガラス原料31の温度を沸点近くまで上げる。
【0025】
以上のように、本実施形態に係る原料供給装置1は、補給管4の原料タンク側端部41における液体のガラス原料21内に差し込まれた部分に、原料タンク2内の空間22に接触している部分より大きく熱交換を行う熱交換部6を有する。空間22に接触している部分は直管となっており、この部分でも空間に存在する気体(原料ガス)との熱交換が行われる。一方、熱交換部6は、液体のガラス原料21内に差し込まれた部分に存在し、ヒータ5によって沸点近くまで加熱されたガラス原料21との熱交換が行われる。すなわち、熱交換部6は、空間22に接触している部分より大きく熱交換が行われる。そのため、補給管4で補液するガラス原料の温度を沸点近くまで上げてから原料タンク2内に補液することができ、補液タンク3から補給する液体のガラス原料により原料タンク2内の温度が下がることを防ぐことができる。
【0026】
そして、ガラス微粒子堆積体(ガラス母材)を製造する際に、本実施形態に係る原料供給装置1を使用することにより、原料タンク2の内圧が下がることを防いで反応容器内8に供給する原料ガス流量の変動を少なくすることができる。
【0027】
[実施例]
以下、本実施形態の原料供給装置1における熱交換部6について、具体的な実施例1〜5を挙げて説明する。
【0028】
(実施例1)
図2は、本実施形態の原料供給装置1における実施例1の熱交換部61を説明する原料タンク2の模式的な断面図である。
図2に示す実施例1の熱交換部61は、螺旋形状の管である。この熱交換部61は、原料タンク2の液体のガラス原料21内に設けられている。図中の破線21aおよび実線21bは、ガラス原料21の液面の変動範囲を示している。破線21aは液面が最も上昇した位置を示し、実線21bは最も下降した位置を示している。熱交換部61は、ガラス原料21の液面が変動しても常に液内(液体のガラス原料21内)に位置するように設けるのが好ましい。
【0029】
螺旋形状の管である熱交換部61は、この部分を直管にする場合と比較して、原料タンク2内の液体のガラス原料21と接している部分の管の長さを長くすることができる。したがって、液内(ガラス原料21内)での熱交換の時間が直管の場合よりも長くなる。すなわち、熱交換部61は、空間22に接触している部分より大きく熱交換を行うことができる。よって、補液するガラス原料の温度をより原料タンク2内の液体のガラス原料21の温度に近づけることができる。
【0030】
(実施例2)
図3は、本実施形態の原料供給装置1における実施例2の熱交換部62を説明する原料タンク2の模式的な断面図である。
図3に示す実施例2の熱交換部62は、内径が変動する形状の管である。実施例1と同様に、
図3においても、熱交換部62は、ガラス原料21の液面が変動しても常に液内(液体のガラス原料21内)に位置するように設けるのが好ましい。
【0031】
内径が変動する形状の管である熱交換部62は、この部分を直管にする場合と比較して、原料タンク2内の液体のガラス原料21と接している部分の管の表面積が単純な直管に比べて大きくなる。すなわち、熱交換部62は、空間22に接触している部分より大きく熱交換を行うことができる。これにより、補液するガラス原料の温度をより原料タンク2内の液体のガラス原料21の温度に近づけることができる。
【0032】
(実施例3)
図4は、本実施形態の原料供給装置1における実施例3の熱交換部63を説明する原料タンク2の模式的な断面図である。
図4に示す実施例3の熱交換部63は、少なくとも1回以上横方向に折り返す、折り返し形状の管である。実施例1と同様に、
図4においても、熱交換部63は、ガラス原料21の液面が変動しても常に液内(液体のガラス原料21内)に位置するように設けるのが好ましい。
【0033】
横方向に折り返す、折り返し形状の管である熱交換部63は、この部分を折り返さずに直管にする場合と比較して、原料タンク2内の液体のガラス原料21と接している部分の管の長さを長くすることができる。したがって、液内(ガラス原料21内)での熱交換の時間が直管の場合よりも長くなる。すなわち、熱交換部63は、空間22に接触している部分より大きく熱交換を行うことができる。これによって、補液するガラス原料の温度をより原料タンク2内の液体のガラス原料21の温度に近づけることができる。
【0034】
(実施例4)
図5は、本実施形態の原料供給装置1における実施例4の熱交換部64を説明する原料タンク2の模式的な断面図である。
図5に示す実施例4の熱交換部64は、少なくとも1回以上縦方向に折り返す、折り返し形状の管である。実施例1と同様に、
図5においても、熱交換部64は、ガラス原料21の液面が変動しても常に液内(液体のガラス原料21内)に位置するように設けるのが好ましい。
【0035】
縦方向に折り返す、折り返し形状の管である熱交換部64は、上記の実施例3の場合と同様に、この部分を折り返さずに直管にする場合と比較して、原料タンク2内の液体のガラス原料21と接している部分の管の長さを長くすることができる。したがって、液内(ガラス原料21内)での熱交換の時間が直管の場合よりも長くなる。すなわち、熱交換部64は、空間22に接触している部分より大きく熱交換を行うことができる。これによって、補液するガラス原料の温度をより原料タンク2内の液体のガラス原料21の温度に近づけることができる。
【0036】
(実施例5)
図6は、本実施形態の原料供給装置1における実施例5の熱交換部65aを説明する原料タンク2の模式的な断面図である。
図6に示す実施例5の熱交換部65aは、螺旋形状の管であり、熱交換部65aの少なくとも一部が、ヒータ5が存在する部分の原料タンク内面2aに接している。
原料タンク内面2aに接する部分は、例えば
図7の(a)に示すように、溶接個所2bで溶接されている。なお、熱交換部65aは、断面が円形の管に限定されるものではなく、断面が他の形状であってもよい。例えば
図7の(b)に示す熱交換部65bのように、断面が矩形の管であってもよい。
【0037】
熱交換部65a(65b)は、実施例1と同様に螺旋形状であることにより、この部分を直管にする場合と比較して、原料タンク2内の液体のガラス原料21と接している部分の管の長さを長くすることができる。したがって、液内(ガラス原料21内)での熱交換の時間が直管の場合よりも長くなる。すなわち、熱交換部65a(65b)は、空間22に接触している部分より大きく熱交換を行うことができる。また、熱交換部65a(65b)は、少なくとも一部が、ヒータ5が存在する部分の原料タンク内面2aに接しているので、この部分でヒータ5からの熱を熱交換部65a(65b)に伝えることができる。
よって、熱交換部65a(65b)は、補液するガラス原料の温度をより原料タンク内の液体原料の温度に近づけることができる。
【0038】
なお、実施例1〜4においても、熱交換部61〜64は、断面が円形の管に限定されるものではなく、断面が他の形状(例えば矩形)であってもよい。